JPH07300054A - エアバッグ用基布 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】本発明は、エアバッグとして必要な機械的特性
を保持しつつ、軽量で風合いが柔らかく、収納性に優れ
たエアバッグ用基布を提供しようとするものである。 【構成】本発明のエアバッグ用基布は、ポリアミド繊維
織物からなるエアバッグにおいて、該ポリアミド繊維織
物が、単糸繊度５．５〜６．５デニールで、総繊度３０
０〜５００デニールの糸条からなるカバーファクターが
１８００〜２０００の平組織で構成されていることを特
徴とするものであり、また、本発明のエアバッグ用基布
は、かかる織物の表面にシリコーンゴムがコーティング
されていることを特徴とするものである。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、車両衝突時に乗員の衝
撃を吸収し、その保護を図るエアバッグに関するもので
あり、さらに詳しくは、軽量で風合いが柔らかく、かつ
優れた収納性を有するエアバッグ用基布に関するもので
ある。

【０００２】

【従来の技術】近年、自動車における乗員の安全確保の
ためのエアバッグの実用化が急速に高まりつつある。エ
アバッグは、自動車の衝突事故の際、衝突の衝撃を受け
てセンサーが作動し、高温、高圧のガスを発生させ、こ
のガスによって、エアバッグを瞬間的に膨張させ、衝突
時に乗員の顔面、前頭部を保護しようとするものであ
る。

【０００３】従来、エアバッグ用基布には３００〜１０
００デニールのナイロン６・６またはナイロン６フィラ
メント糸を用いた平織物に、耐熱性、難燃性、空気遮断
性などの向上のため、クロロプレンゴム、クロルスルホ
ン化オレフィンゴムを塗布した基布を用い、裁断し、袋
体に縫製して作られていた。

【０００４】しかしながら、クロロプレンゴム、クロル
スルホン化オレフィンゴムを塗布した基布の場合には、
自動車に長期間搭載された状態で、ゴムから塩素が発生
するため、該ゴムに接したポリアミド繊維が脆化する問
題があった。また、クロロプレンゴム、クロルスルホン
化オレフィンゴムを織物の片面に塗布、積層する際、一
般に、ナイフコート、ロールコート、リバースコートな
どによるコーティング方式が採用されているが、該ゴム
をコーティングする場合には、薄くコーティングする
と、極めてピンホールが発生しやすいため、通常織物表
面に９０〜１２０ｇ／ｍ² 程度厚く塗布されるため、か
なり重く、風合いが粗硬で、エアバッグ膨張時に、顔面
が接触すると擦過傷を受けることもあり好ましいもので
はなかった。また収納性の面においても、折りたたみ難
いという欠点を有していた。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、かか
る従来のエアバッグの欠点に鑑み、エアバッグとして必
要な機械的特性を保持しつつ、軽量で風合いが柔らか
く、収納性に優れたエアバッグ用基布を提供しようとす
るものである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達
成するために、次のような構成を有する。すなわち、ポ
リアミド繊維織物からなるエアバッグにおいて、該ポリ
アミド繊維織物が、単糸繊度５．５〜６．５デニール
で、総繊度３００〜５００デニールの糸条からなるカバ
ーファクターが１８００〜２０００の平組織で構成され
ていることを特徴とするものであり、また該織物表面に
シリコーンゴムがコーティングされていることを特徴と
するものである。

【０００７】

【作用】本発明におけるエアバッグ用基布を構成するポ
リアミド繊維としては、ナイロン６・６、ナイロン６、
ナイロン１２、ナイロン４・６、およびナイロン６とナ
イロン６・６共重合体、ナイロンにポリアルキレングリ
コール、ジカルボン酸やアミン類などを共重合したポリ
アミド繊維を挙げることができるが、なかでもナイロン
６・６およびナイロン６がコスト、エアバッグ用基布と
しての機械的特性面から好ましい。またエアバッグ用基
布としての機械的特性面から連続繊維であることが好ま
しい。かかる連続繊維には、原糸糸条の製造工程や加工
工程での生産性あるいは、特性改善のために通常使用さ
れている各種添加剤を含んでいてもよい。たとえば、熱
安定性、酸化防止剤、光安定剤、平滑剤、帯電防止剤、
可塑剤、増粘剤、顔料、難燃剤などを含有せしめること
ができる。織物を構成する単糸繊度は５．５〜６．５デ
ニールであることが好ましく、総繊度は、３００〜５０
０デニールであることが好ましい。単糸繊度が６．５デ
ニールを越える場合には、エアバッグ用基布として必要
な柔軟性に欠けるものとなり、５．５デニール未満の場
合には生産性が低下し、コスト面で好ましくない。一
方、総繊度が５００デニールを越える場合には、エアバ
ッグ用基布として地厚で目付の大きいものになり、特に
収納性の面で好ましいものではない。また、３００デニ
ール未満の場合には、エアバッグ用基布としての機械的
特性の面で不十分なものとなり好ましいものではなかっ
た。カバーファクターは１８００〜２０００であること
が好ましく、２０００を越えるカバーファクターの織物
はエアバッグ用基布として地厚で目付の大きいものにな
り、特に収納性の面で好ましいものではない。カバーフ
ァクターが１８００未満の場合には、エアバッグ用基布
として必要な機械的強力が得られず、コーティング時に
ゴムが裏抜けし、品位面で欠点を有するものであった。
また、エアバッグ用基布を構成する織物の組織は、平組
織であることが、機械的強度が得やすいため好ましい。
平組織以外の組織のものは、同じカバーファクターであ
っても、平組織のものに比べて地厚なものになり、目ず
れもしやすく好ましいものではなかった。

【０００８】また、ポリアミド繊維の引張強力、破断伸
度はエアバッグ用基布の機械的強力に関係する特性であ
り、いずれも大きいほど好ましいが、引張強力は８．５
ｇ／デニール以上、破断伸度は２０％以上であることが
好ましい。エアバッグ用基布の目付および厚さは、エア
バッグとしての収納性に関係する特性であり、小さいほ
ど好ましいが、エアバッグ用基布としての機械的強力に
も関係する特性であり、コーティング前のエアバッグ用
基布の目付は１６５〜１８５ｇ／ｍ² 、厚さは０．２４
〜０．３０ｍｍであり、コーティング後のエアバッグ用
基布の目付は２００〜２５０ｇ／ｍ² 、厚さは０．３５
ｍｍ以下であることが好ましい。エアバッグ用基布の引
張強力、破断伸度、引裂強力はいずれも機械的強力に関
係する特性であり、大きいほど好ましいが、エアバッグ
のバースト特性の面から、引張強力は１８０ｋｇ／３ｃ
ｍ以上、破断伸度は２０％以上、引裂強力は１５ｋｇ以
上であることが好ましい。本発明ではシリコーンゴムを
織物表面にコーティングされるが、コーティングは織物
の両面にコーティングすることもできるが、通常、織物
の片面にコーティングすることにより、エアバッグ用基
布として充分な特性が得られるため、コスト面、目付、
柔軟性の面からも片面コーティングが好ましい。シリコ
ーンゴムとしては、強力向上剤としてシリカを含有する
分子量３０〜１００万のメチルビニルシリコーンゴム、
ハイドロジェンオルガノシロキサン、白金触媒に、接着
向上剤としてトリメトキシ基含有シランカップリング剤
を用いたものが好ましい。

【０００９】

【実施例】次に実施例により、本発明をさらに詳しく説
明する。なお、実施例中のエアバッグの目付、厚さ、引
張強力、破断伸度、引裂強力、通気度を下記の方法によ
りを測定した。

【００１０】目付 ：ＪＩＳ Ｌ１０９６、６．４．
２により求めた。

【００１１】厚さ ：ＪＩＳ Ｌ１０９６、６．５に
より求めた。

【００１２】引張強力：ＪＩＳ Ｌ１０９６、６．１
２．１．Ａ法（ストリップ法）により求めた。

【００１３】破断伸度：ＪＩＳ Ｌ１０９６、６．１
２．１．Ａ法（ストリップ法）により求めた。

【００１４】引裂強力：ＪＩＳ Ｌ１０９６、６．１
５．１．Ａ−１法（シングルタング法）により求めた。

【００１５】通気度 ：ＪＩＳＬ １０９６、６．２
７．１Ａ法により求めた。 カバーファクター：経糸繊度の平方根と経糸密度の積と
緯糸繊度の平方根と緯糸密度の積との和 剛軟度 ：ＪＩＳＬ １０９６、６．１９．１Ａ法（４
５゜カンチレバー法）により求めた。

【００１６】実施例１、２ 総繊度４２０デニール、７２フィラメント、強度９．３
ｇ／デニール、伸度２３％のナイロン６・６フィラメン
ト糸を用い、経糸と緯糸の織密度がともに４６本／イン
チおよび４８本／インチの平組織の織物を得た。次いで
該織物を通常の方法で精練、熱セットした後、強力向上
剤としてシリカを含有する有効成分３５％の分子量５５
万からなるメチルビニルシリコーンゴム１００部、ハイ
ドロジェンオルガノシロキサンからなる架橋剤２部、白
金触媒０．５部、ベンガラ０．５部からなる塗工液を粘
度が２８０００ｃｐｓになるようにトルエンで調整し、
ナイフコーターで塗工量が４０ｇ／ｍ² になるように織
物の片面にコーティングし、１２０℃乾燥後、１８０℃
で３分間加硫処理を行った。得られたエアバッグ用基布
の特性を表１に示した。

【００１７】比較例１ 実施例１と同様のナイロン６・６フィラメント糸を用
い、経糸と緯糸の織密度がともに４２本／インチの平組
織の織物を得た。次いで該織物を通常の方法で精練、熱
セットした後、実施例１と同様の条件でシリコーンゴム
によるコーティングを行った。得られたエアバッグ用基
布の特性を表１に示した。

【００１８】比較例２ 総繊度４２０デニール、６０フィラメント、強度９．２
ｇ／デニール、伸度２４％のナイロン６・６フィラメン
ト糸を用い、経糸と緯糸の織密度がともに４６本／イン
チの平組織の織物を得た。次いで該織物を通常の方法で
精練、熱セットした後、実施例１と同様の条件でシリコ
ーンゴムによるコーティングを行った。得られたエアバ
ッグ用基布の特性を表１に示した。得られたエアバッグ
用基布の特性を表１に示した。

【００１９】比較例３ 総繊度５５０デニール、７２フィラメント、強度９．０
ｇ／デニール、伸度２４％のナイロン６・６フィラメン
ト糸を用い、経糸と緯糸の織密度がともに４４本／イン
チの平組織の織物を得た。次いで該織物を通常の方法で
精練、熱セットした後、実施例１と同様の条件でシリコ
ーンゴムによるコーティングを行った。得られたエアバ
ッグ用基布の特性を表１に示した。得られたエアバッグ
用基布の特性を表１に示した。

【００２０】

【表１】 表１から明らかなように、比較例１のカバーファクター
が１８００未満のエアバッグ用基布は引張強力が充分で
はなく、かつ、コーティング時に織物の裏面までシリコ
ーンゴムが裏抜けし、コーティング通過性に劣るばかり
でなく、コーティング品位も不良であった。比較例２の
単糸繊度が６．５デニールを越えるエアバッグ用基布は
風合が粗硬であり、収納性に劣るものであった。比較例
３の総繊度が５００デニールを越え、単糸繊度が６．５
デニールを越えるエアバッグ用基布は目付、厚さが大き
いものであり、収納性に劣り、かつ、風合が粗硬なもの
であった。して好ましいものではなかった。これに対し
て本発明品は十分な機械的強力を有し、軽量、柔軟でコ
ンパクトな収納ができ、エアバッグ用基布として優れた
特性を有するものであった。

【００２１】

【発明の効果】本発明によれば、エアバッグ用基布とし
ての必要な機械的強力を保持しつつ、柔軟、軽量で収納
性に優れ、かつ、エアバッグ膨張時の顔面擦過傷を軽減
できるエアバッグ用基布を提供できる。また従来のクロ
ロプレンゴム、クロルスルホン化オレフィンゴムをコー
ティングした基布で問題であった長期間搭載された状態
での塩素によるポリアミド繊維の脆化がなく、かつ、従
来のクロロプレンゴム、クロルスルホン化オレフィンゴ
ムに比べて、耐熱性、耐オゾン性に優れたエアバッグ用
基布を提供可能になり、エアバッグによる乗員保護シス
テムを普及促進させることができる。

Claims (6)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ポリアミド繊維織物からなるエアバッグ
   において、該ポリアミド繊維織物が、単糸繊度５．５〜
   ６．５デニールで、総繊度３００〜５００デニールの糸
   条からなるカバーファクターが１８００〜２０００の平
   組織で構成されていることを特徴とするエアバッグ用基
   布。
2. 【請求項２】 ポリアミド繊維織物からなるエアバッグ
   において、該ポリアミド繊維織物が、単糸繊度５．５〜
   ６．５デニールで、総繊度３００〜５００デニールの糸
   条からなるカバーファクターが１８００〜２０００の平
   組織で構成されており、かつ、該織物表面にシリコーン
   ゴムがコーティングされていることを特徴とするエアバ
   ッグ用基布。
3. 【請求項３】 ポリアミド繊維が、ナイロン６・６また
   はナイロン６繊維である請求項１および２記載のエアバ
   ッグ用基布。
4. 【請求項４】 ポリアミド繊維が、引張強力８．５ｇ／
   デニール以上、破断伸度２０％以上であることを特徴と
   する請求項１および２記載のエアバッグ用基布。
5. 【請求項５】 エアバッグ用基布が、１６５〜１８５ｇ
   ／ｍ² の目付で、０．２４〜０．３０ｍｍの厚さを有
   し、引張強力が１８０ｇ／３ｃｍ以上、破断伸度が２０
   ％以上、引裂強力が１５ｋｇ以上である物性を有するも
   のである請求項１記載のエアバッグ用基布。
6. 【請求項６】 エアバッグ用基布が、２００〜２５０ｇ
   ／ｍ² の目付で、０．３５ｍｍ以下の厚さを有し、引張
   強力が１８０ｇ／３ｃｍ以上、破断伸度が２０％以上、
   引裂強力が１５ｋｇ以上である物性を有するものである
   請求項２記載のエアバッグ用基布。