JPH07281346A - ハロゲン化銀写真感光材料 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】湿度による写真特性への影響が少ない明室用感
光材料に適したハロゲン化銀乳剤を提供することにあ
る。 【構成】少なくとも一層のハロゲン化銀感光層と、支持
体から見て該ハロゲン化銀感光層と同じ側の最外層に親
水性コロイド保護層を有するハロゲン化銀写真感光材料
において、該ハロゲン化銀乳剤層中に有機減感剤を含有
し、かつ支持体から見てハロゲン化銀感光層側の全層に
おいて、２３℃相対湿度５０％と２３℃相対湿度８０％
における１ｍ² あたりの感光材料の重量の差として定義
される吸水量が１００ｍｇ／ｍ²以下であることを特徴
とするハロゲン化銀写真感光材料。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、ハロゲン化銀写真感光
材料に関し、より詳しくは明室用感光材料に適したハロ
ゲン化銀写真感光材料に関する。

【０００２】

【従来の技術】近年、印刷分野においては、印刷物の複
雑さ、スキャナーの発達などにより、返し作業工程の能
率向上が要望されている。そのために従来から使用され
てきた返し用フィルムに比べて、１０^-3〜１０^-5程度の
超低感度の写真フィルムが開発され、明室条件下（紫外
線を除いた白色蛍光灯下）で取扱いが可能な返しフィル
ム、即ち明室用感光材料として実用されている。この様
な明室用感光材料に要求される性能は、硬調で十分な最
高濃度を有し、明室条件下で長時間の取扱いが可能であ
り、プリンター光源に対しては高い感度を有しているこ
と、様々な環境の下で使われてもその性能に変化が少な
い等である。

【０００３】明室感光材料のハロゲン化銀乳剤として
は、特開昭５６−１２５７３４号公報に記載されている
如き塩化銀を主体とするハロゲン化銀に無機減感剤とし
て多量のロジウム塩を使用する方法あるいは直接ポジ用
ハロゲン化銀乳剤で一般的に用いられるピナクリプトー
ルイエローの如き有機減感剤を使用する方法などによっ
て製造される。また、特開昭５９−１７７５３７号公報
に記載されている如くポーラログラフの陽極電位と陰極
電位との和が正である有機減感剤と２−メルカプト安息
香酸類を使用することで明るい室内での取り扱い安全性
を向上させる技術が開示されている。しかしこれらの有
機減感剤を含有するハロゲン化銀乳剤を用いた感光材料
は、高い湿度の下で用いられた場合に著しい感度低下が
見られ、明室用感光材料として満足のいくものではな
く、湿度によって写真特性に影響を受けない明室用感光
材料の開発が望まれている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は湿度に
よる写真特性への影響が少ない明室用に適したハロゲン
化銀感光材料を提供することにある。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明者等は上記目的を
達成すべく鋭意研究を重ねた結果、少なくとも一層のハ
ロゲン化銀感光層と支持体から見て該ハロゲン化銀層と
同じ側の最外層に親水性コロイド保護層を有するハロゲ
ン化銀写真感光材料において、該ハロゲン化銀乳剤層中
に有機減感剤を含有し、かつ支持体から見てハロゲン化
銀感光層側の全層において 、２３℃相対湿度５０％条
件下における感光材料１ｍ²あたりの重量と２３℃相対
湿度８０％条件下における同一感光材料１ｍ² あたりの
重量の差として定義される吸水量を１００ｍｇ／ｍ² 以
下にすることによって上記目的が達成されることを見い
出した。

【０００６】以下、本発明明細書において定義されると
ころの吸水量とは、支持体から見てハロゲン化銀感光層
側全層に含有される水分が暴露されている気体との間で
平衡状態にある事を前提とした、２３℃相対湿度５０％
条件下における感光材料１ｍ²あたりの重量と、２３℃
相対湿度８０％条件下における同一感光材料１ｍ²あた
りの重量の差として定義する。ただし、感光材料には支
持体から見てハロゲン化銀感光層側全層と支持体から見
て反対側のバックコート層が存在するが、このバックコ
ート層に親水性コロイド等を用いた場合には、湿度変化
に伴なうバックコート層自体の含有水分量変化に起因す
る重量変化が吸水量に加算されてしまう。そのため当該
層を暴露された気体中の水分を吸収しない膜で被うか、
あるいは吸水量が既知の膜で被い吸水量を差し引くこと
により、支持体から見てハロゲン化銀感光層側全層の吸
水量のみを測定することが可能となる。

【０００７】前述したように、有機減感剤を含有するハ
ロゲン化銀乳剤を用いた感光材料は、高い湿度の下で用
いられた場合に著しい感度低下などの写真特性の劣化が
見られ、明室用感光材料として満足のいくものではな
い。この感度低下などの写真特性の劣化は、使用するゼ
ラチンの種類や使用量、塗液のｐＨ、塗布後の膜ｐＨ、
添加剤として使用するラテックスや高分子化合物などの
種類や使用量、硬膜剤の種類や使用量、有機減感剤の種
類や使用量、塗布層構成など、これら各種要因が複雑に
相互作用した結果として生じる。従って、使用するゼラ
チンを規定しても、使用する有機減感剤、硬膜剤、ラテ
ックス等により、全く異なった結果となり、一義的に規
定できるものではない。

【０００８】しかし、前記した様々な要因のために、無
数の組み合わせが存在するにもかかわらず、高い湿度の
下で用いられた場合に著しい感度低下などの写真特性の
劣化が改善されたサンプルにおいては、吸水量に有意な
差が存在することを見い出した 。吸水量において１０
０ｍｇ／ｍ²を境に湿度による写真特性への影響が顕著
に変化し、１００ｍｇ／ｍ²以下さらに好ましくは９０
ｍｇ／ｍ²以下とすることにより、感度低下といった湿
度による写真特性への悪影響が大幅に減少する。この吸
水量を低減せしめる方法としては主に硬膜剤添加量の増
量、支持体からみてハロゲン化銀層側の全層に用いられ
る親水性コロイド量の低減、親水性コロイドの部分的高
分子化合物への代替、塩類の低減等の方法がある。

【０００９】吸水量は、具体的には恒温恒湿室の中に天
秤を持ち込むことにより容易に測定することが出来る。
この吸水量が１００ｍｇ／ｍ²以下の場合 、有機減感剤
を含有する感光材料では 、湿度に対する減感が少なく
なる。逆に１００ｍｇ／ｍ²以上のものでは減感が多く
使用に耐えない。 さらに好ましくは９０ｍｇ／ｍ²以下
とすることにより、湿度による減感が更に少なくなる。
この吸水量は湿度の写真特性に対する影響を低減せしめ
るためには出来る限り少ないことが好ましい。従って吸
水量の下限としては、本発明の目的である湿度の写真特
性に対する影響の減少を満足させうる５０ｍｇ／ｍ²と
する。

【００１０】一方有機減感剤を含有しない感光材料はも
ともと湿度による写真性への影響が少ないが、セーフラ
イトカブリが大きいとか、写真性における足切れが悪い
などの欠点が見られる。従って有機減感剤を含みかつ感
度の湿度依存性が少なければ明室用感光材料として一番
有効な手段となる。

【００１１】本発明に用いられる有機減感剤は、一般に
直接ポジ用ハロゲン化銀乳剤に用いられることが知られ
ているものである。即ち本発明において用いられる有機
減感剤は、そのポーラログラフ半波電位即ち、ポーラロ
グラフィーで決定されるその酸化還元電位によって特徴
づけられる。

【００１２】本発明に有用な有機減感剤は、ポーラログ
ラフ陽極電位とポーラログラフ陰極電位の和が正である
ものである。これらの酸化還元電位の測定法について
は、例えば、米国特許第３，５０１，３０７号明細書に
記載されている。そのような有機減感剤の具体例は、数
多くの特許明細書、文献に記載されており、それらはい
ずれも本発明において同じ作用をもっているものであっ
て、たとえば特公昭３６−１７５９５号、同昭３９−２
０２６１号、同昭４０−２６７５１号、同昭４３−１３
１６７号、同昭４５−８８３３号、同昭４７−８７４６
号、同昭４７−１０１９７号、同昭５０−３７５３０
号、特開昭４８−２４７３４号、同昭４９−８４６３９
号、同昭５６−１４２５２５、米国特許２，２７１，２
２９号、同第２，５４１，４７２号、同第３，０３５，
９１７号、同第３，０６２６５１号、同第３，１２４，
４５８号、同第３，３２６，６８７号、同第３，６７
１，２５４号等の明細書に記載の化合物が使用出来る。
以下に例を示している。

【００１３】（Ｄ−１）１，３−ジエチル−１´−メチ
ル−２´−フェニルイミダゾ［４，５−ｂ］キノキサリ
ノ−３´−インドロカルボシアニン・アイオダイド （Ｄ−２）ピナクリプトール・イエロー （Ｄ−３）１，１´３，３，３´３´−ヘキサメチル−
５，５´−ジニトロインドカルボシアニン・ｐ−トルエ
ンスルホネート （Ｄ−４）５，５−ジクロロ−３，３´−ジエチル−
６，６´−ジニトロチアカルボシアニン・アイオダイド （Ｄ−５）１，１´−ジメチル−２，２´−ジフェニル
−３，３´−インドロカルボシアニン・ブロマイド （Ｄ−６）１，１´３，３´−テトラエチルイミダゾ
［４，５−ｂ］キノキサリノカルボシアニン・クロライ
ド （Ｄ−７）５−ｍ−ニトロベンジリデンローダニン （Ｄ−８）６−クロロ−４−ニトロ−ベンゾトリアゾー
ル （Ｄ−９）１，１´−ジブチル−４，４´−ビピリジニ
ウム・ジブロマイド （Ｄ−１０）１，１´−エチレン−２，２´−ビピリジ
ニウム・ジブロマイド （Ｄ−１１）４−（ｐ−ｎ−アミロキシフェニル）−
２，６−ジ（ｐ−エチルフェニル）チアピリジニウム・
パークロレート （Ｄ−１２）２−メルカプト−４−メチル−５−ニトロ
チアゾール （Ｄ−１３）２−（ｏ−ニトロスチリル）−３−エチル
ベンゾチアゾリウム・ｐ−トルエンスルホネート （Ｄ−１４）２−（ｐ−ニトロスチリル）キノリン・ｐ
−スルエンスルホネート （Ｄ−１５）フェノサフラニン （Ｄ−１６）ピナクリプトール・グリーン （Ｄ−１７）２，３−ジメチル−６−ニトロ−ベンゾチ
アゾリウム・ｐ−トルエンスルホネート

【００１４】有機減感剤の添加量は、その種類、露光に
用いられる光源の発光波長、強度、その他によりまさに
幅広く変化しうるが、一般的には、粒子全体のハロゲン
化銀１モルあたり、０．０１ｍｇ〜５ｇ、好ましくは
０．１ｍｇ〜３ｇである。

【００１５】本発明に用いられる硬膜剤とは、アルデヒ
ド類（ホルムアルデヒド、グリオキザールなど）、Ｎ−
メチロール化合物（ジメチロール尿素など）、ムコハロ
ゲン酸類（ムコクロル酸など）、ミョウバン類（カリミ
ョウバン、クロムミョウバンなど）、また活性ハロゲン
型としてジクロロ−Ｓ−トリアジン、例えば２，４−ジ
クロロ−６−ヒドロキシ−１，３，５−トリアジン（ア
ルカリ金属塩）、２，４−ジクロロ−６−メトキシ−
１，３，５−トリアジン、２，４−ジクロロ−６−エチ
ルアミノ−１，３，５−トリアジン、２，４−ジクロロ
−６−ヒドロキシメチルアミノ−１，３，５−トリアジ
ンなどを用いることが出来、これらは単独で用いてもよ
いし併用してもよい。これらの硬膜剤はハロゲン化銀乳
剤層、親水性コロイド保護層を含む複数層からなる写真
層に使用することが出来また隣接する写真層へ拡散させ
ることも出来る。使用量は一般にゼラチン１ｇに対し
０．００５〜５ミリモル程度である

【００１６】本発明の親水性コロイドとは主にゼラチン
を意味するが、ポリペプチド及びその誘導体、ポリビニ
ルアルコール及びその誘導体、デキストラン、アラビア
ゴム、ペクチン、寒天等の単一あるいは混合物も用いる
ことが出来る。またゼラチンとしてアルカリゼラチン、
酸性ゼラチン、及びアセチル化・フタル化された変成ゼ
ラチンも用いることが出来、単一あるいは混合物も用い
ることができる。

【００１７】本発明において使用される親水性コロイド
の１ｍ²あたりの使用量 、親水性コロイド１ｇあたりに
添加される硬膜剤の添加量などは特に限定するものでは
ない。吸水量が１ｍ² あたり５０ｍｇ以上１００ｍｇ以
下更に好ましくは５０ｍｇ以上９０ｍｇ以下という条件
を満足させる事により、有機減感剤を含有するハロゲン
化銀乳剤を用いた感光材料の、高い湿度の下で用いられ
た場合における著しい感度低下が改善される。

【００１８】本発明の保護層とはハロゲン化銀層の上層
に塗布するものであり、この層は圧力カブリの低減や擦
れ傷防止などを目的とする。更に保護層にはマット剤を
含有させることが出来る。

【００１９】本発明のハロゲン化銀乳剤は塩化銀、臭化
銀、塩臭化銀、沃臭化銀のいずれでもよいが、明室用感
光材料としては塩化銀が主体のものが好ましい。結晶
形、大きさなどは特に制限はないが、明室用感光材料と
しては単分散性の良い微粒子のものが好ましい。ハロゲ
ン化銀乳剤の調製方法は順混合、逆混合、同時混合など
公知の方法のいずれであってもよい。物理熟成を終えた
乳剤は、脱塩した後に、必要な添加剤を加えて塗布され
ることが望ましいが、脱塩処理は省略することも出来
る。化学増感は実質的に行なわないほうが好ましいが、
所望により施してもよい。

【００２０】本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤は、
安定剤、カブリ防止剤、カバリングパワー向上剤、膜物
性改良剤、硬膜剤、界面活性剤、現像主薬等の一般写真
用乳剤に用いられる添加剤を含むことが出来、公知の支
持体上に塗布される。

【００２１】本発明により得られる明室用感光材料は主
として印刷分野で用いられる紫外光に富んだ光源、例え
ば水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライド等により露光
される。

【００２２】

【実施例】

実施例１

【００２３】塩化銀９５モル％を含む平均粒径０．１３
μｍの立方体結晶よりなる塩臭化銀乳剤をダブルジェッ
ト法により調製し、フロキュレーション法により脱塩、
水洗、再溶解した後、有機減感剤としてピナクリプトー
ルイエローをハロゲン化銀１モルあたり５０ｍｇ、安定
剤としてベンゾトリアゾールを同２００ｍｇ、カブリ防
止剤としてチオサリチル酸を２００ｍｇ加え、更に硬膜
剤として２，４−ジクロロ−６−ヒドロキシ−１，３，
５−トリアジン（Ｎａ塩）、界面活性剤を加えた後ＰＨ
を６に調製し 、ポリエステルフィルム上に硝酸銀とし
て３．５ｇ／ｍ²となるように保護層用親水性コロイド
としてのゼラチン液と共に重層塗布し、乾燥した。

【００２４】親水性コロイドとして用いられるゼラチン
の、支持体からみてハロゲン化銀層側の１ｍ²あたりの
乳剤層に用いられる量を表１の如く変化させた。 保護
層に用いられる親水性コロイドとしてのゼラチンは１ｍ
²あたり１ｇと統一した。 硬膜剤は乳剤層および保護層
に共に２，４−ジクロロ−６−ヒドロキシ−１，３，５
−トリアジン（Ｎａ塩）を用い、乳剤層および保護層と
もにゼラチン１ｇあたりの添加量を表１の如く変化させ
た。各々のサンプルについて２３℃相対湿度５０％と２
３℃相対湿度８０％における支持体から見て該ハロゲン
化銀感光層と同じ側の全層１ｍ²あたりの重量差を測定
し吸水量とした。また 、各々のサンプルについて露光
時における湿度の影響を見るために２３℃相対湿度５０
％の環境下および、２３℃相対湿度８０％の環境下で、
大日本スクリーン社製明室プリンターＰ−６２７−ＦＭ
を用いて光学ウエッヂを通してセンシトメトリー用露光
を施した。該サンプルは三菱製紙社製ＭＲＡ−ＣＤ−１
１１現像液、同ＭＲＡ−ＣＦ−７１１定着液を使用し、
３８℃２０秒現像、定着、水洗、乾燥を自動現像機（大
日本スクリーン社製ＬＤ−２２１ＱＴ）を用いて行なっ
た。現像処理したサンプルはマクベス透過濃度計（ＴＲ
９２７）で透過濃度を測定し、写真特性を算出した。

【００２５】その結果を表１に示した。ここで２３℃相
対湿度５０％において露光しそのまま現像処理したサン
プルの感度を１００とし、２３℃相対湿度８０％のもと
で露光したサンプルの相対感度を示した。

【００２６】

【表１】

【００２７】実施例２ 実施例１について硬膜剤のみを保護アルデヒド系である
スミテックスレジンＳＲ−９０１に代替し、その結果を
表２に示した。感度、吸水量等全て実施例１に準じる。
スミテックスレジンＳＲ−９０１の添加量は含有される
有効成分の重量で示した。

【００２８】

【表２】

【００２９】

【発明の効果】表１・２の結果より、本発明の乳剤は、
湿度による減感が顕著に改善されたことがわかる。また
表１・２の比較より、硬膜剤の種類にはよらず、支持体
から見て該ハロゲン化銀感光層と同じ側の全層１ｍ² あ
たりの吸水量が５０ｍｇ以上１００ｍｇ以下、更に好ま
しくは５０ｍｇ以上９０ｍｇ以下とすることが、有機減
感剤を含有するハロゲン化銀乳剤を用いた感光材料湿度
における湿度による減感を改善するために重要であるこ
とがわかる。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 少なくとも一層のハロゲン化銀感光層
   と、支持体から見て該ハロゲン化銀感光層と同じ側の最
   外層に親水性コロイド保護層を有するハロゲン化銀写真
   感光材料において、該ハロゲン化銀乳剤層中に有機減感
   剤を含有し、かつ支持体から見てハロゲン化銀感光層側
   の全層において、２３℃相対湿度５０％と２３℃相対湿
   度８０％における１ｍ² あたりの感光材料の重量の差と
   して定義される吸水量が１００ｍｇ／ｍ² 以下であるこ
   とを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。