JPH07229518A - 玉軸受用玉 - Google Patents

玉軸受用玉

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JPH07229518A JP6319984A JP31998494A JPH07229518A JP H07229518 A JPH07229518 A JP H07229518A JP 6319984 A JP6319984 A JP 6319984A JP 31998494 A JP31998494 A JP 31998494A JP H07229518 A JPH07229518 A JP H07229518A
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勝義 吉村
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 玉軸受の油膜形成能力を改善することによ
り、玉軸受の長寿命化を図ることである。 【構成】 玉軸受用の玉2の表面2aに針状の微小な凹
部5を、一定範囲の中心線平均あらさで、一定範囲の長
さ、幅、数を有するように無数かつランダムに分散形成
した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は玉軸受用の玉に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】玉軸受等の転がり軸受の表面損傷は、一
般に転がり接触部の油膜厚さh、合成あらさσとの比で
表した油膜パラメータ(Λ=h/σ)と関係がある。即
ち油膜パラメータΛが小さいと、転がり軸受の転がり要
素間には直接接触が生じるため表面損傷が発生し、転が
り軸受の寿命が短くなる。
【0003】逆に、油膜パラメータΛが大きいと、転が
り要素間には潤滑膜が形成され、直接接触が発生しない
ため、転がり軸受は長寿命となる。
【0004】従来から、転がり軸受の表面損傷を少なく
し、寿命を長くするため、転がり軸受の構成要素の表面
は、機械加工によりほぼ鏡面に仕上げられている。
【0005】また、表面にピット状の微小な凹部を付け
ることにより、転がり要素間に形成される油膜厚さを増
加させる方法や、表面に運動方向と概ね直角な方向に断
続溝を付けることにより油膜厚さを増加させる方法もあ
る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、近年、転が
り軸受は低粘度油が使用されたり、高温で使用される場
合が増えてきた。これは、転がり軸受を使用する各種機
械の摩擦によるエネルギーロスの低減化や、機械の高性
能化の要求によるものである。
【0007】潤滑油の粘度が小さくなったり、使用温度
が高くなると、転がり要素間に形成される油膜厚さhが
小さくなり、転がり要素間には直接接触が発生しやすく
なる。油膜パラメータΛが1未満の使用条件下では、転
がり要素同士は常に直接接触の状態となる。
【0008】転がり要素間に直接接触が発生する潤滑条
件は一般に、境界潤滑条件又は混合潤滑条件と呼ばれて
いる。
【0009】前述のように、現在の転がり軸受の表面
は、ほぼ鏡面といえるほどあらさが小さくなっているの
で、あらさの大きさを対策することによって転がり要素
間の油膜パラメータΛの値を大きくし、直接接触を回避
する従来の方法では、今日の境界潤滑条件で使用される
転がり軸受の寿命を延ばすことはできない。
【0010】一方、近年の境界潤滑条件下で接触部の油
膜形成を対象とした研究では、表面の微小な凹凸の存在
によって、接触面内の微小領域に油膜が形成される可能
性があることがわかってきた。この微小領域の油膜の形
成は、マイクロEHL効果と呼ばれている。
【0011】マイクロEHL効果を利用した微小表面形
状としては、既に、表面にピットを付けたものがある
が、同表面を有する転動体を組み込んだ玉軸受では、ピ
ットの深さが深いために、ピットを付けない仕上げ面に
比べ音響値が大きくなる問題があった。
【0012】該ピットの深さはバレル研磨法を用いて加
工条件を変更することにより浅くでき、音響の改善は図
れたが、ピットの数が少なくなるために、油膜厚さを向
上させる効果が減少し、優れた油膜形成能力を発揮でき
ない問題があった。
【0013】また、運動方向と概ね直角な方向に断続溝
をつけることによって油膜形成能力を高める方法は、こ
ろ軸受の転動体のように、転がり運動する方向が変化し
ない場合には適用できるが、玉軸受の転動体のように、
回転輪の運動方向に対して、転動体の運動方向が定まっ
ていない場合には、適用できない。
【0014】本発明は、境界潤滑領域で使用される場合
でも、転がり要素間の直接接触を少なくできる玉軸受の
転動体を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】上記のような課題を解決
するために、本発明に係る玉軸受の玉は、その表面に針
状の微小な凹部を、無数かつランダムに分散形成したも
のであって、上記凹部は長さが2.0〜30μm、幅が
0.3〜2.0μm、数が1〜15本/100μm2
あって、玉の中心線平均あらさが0.005μmから
0.012μmである構成を採用したものである。
【0016】
【作用】本発明によると、転がり要素間の接触部内の微
小領域での油膜形成能力が向上し、境界潤滑条件での金
属接触率が低くなり、玉軸受の長寿命化を図ることがで
きる。
【0017】
【実施例】以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて
説明する。図1に、スラスト玉軸受の断面図を示す。図
示のように、この軸受は、回転輪1、固定輪3、回転輪
1と固定輪3の間に介在させた複数の玉2及びその玉2
を円周等配位置で保持する保持器4等の各種軸受部品で
構成されている。
【0018】上記玉2の表面2aには、図2に概略的に
示すように、針状の微小な凹部5を、無数かつランダム
に分散形成される。
【0019】なお、本発明は、上記スラスト玉軸受のほ
か、深溝玉軸受、アンギュラー玉軸受、などの玉軸受の
玉にも適用できる。
【0020】<実験1>図1に示したスラスト玉軸受の
玉を用いて、寿命の比較実験を行った。該スラスト玉軸
受は、内径φ30mm、外径φ47mm、玉の直径φ
6.35mmである。実験に供した玉は、従来品、本発
明品及び比較品の3種類である。
【0021】本発明品は、微小な針状凹部を無数かつラ
ンダムに付けるため、粒度の小さい砥石を用いて削っ
た。具体的には粒径#2000〜#6000の砥石で加
工した。
【0022】また、針状の凹部を作製するために、砥石
と玉の加工部の面積を小さくするように、加工圧力など
の加工条件を設定した。
【0023】表1は5種類の本発明品1〜5について、
中心線平均あらさRa、凹部の長さ、凹部の幅、凹部の
数及び従来品を1とした場合の10%寿命比の実験結果
を比較例1〜3と共に示すものである。なお、「10%
寿命」は、累積破損確率が10%の時の寿命時間をい
う。
【0024】
【表1】
【0025】実験条件は、潤滑油は40℃の動粘度が
1.5mm2 /sの低粘度油、潤滑方法は油浴潤滑、油
量は回転輪1が潤滑油面より下になる量で、具体的には
30ccとした。回転数は1000rpmとし、転動疲
労寿命を加速的に発生させるために、最大接触面圧は
4.4GPaとした。温度は60℃であった。
【0026】表1からわかるように、本発明品1〜5は
従来品及び比較例1〜3に比べ10%寿命が相当改善さ
れることがわかる。
【0027】なお、本発明品1に関するワイブル線図を
図3に示す。同図から、本発明の玉は、10%寿命なら
びに50%寿命とも、従来品に比べて長いことを確認し
た。
【0028】比較例1のように、あらさが大きい場合に
は、油膜形成が充分に行われず、短寿命となる。
【0029】比較例2は比較例1に比べ、あらさが小さ
いので、寿命比が大きいが、幅が広く、長さが長いた
め、油膜形成の向上が少ないため、本発明と比べ、寿命
の向上比が小さい。
【0030】比較例3は、比較例2に比べ、あらさを小
さくしたものであるが、長さや幅が大きいと、十分な寿
命向上が期待できないと言える。
【0031】これらの結果から、玉の表面につけた微小
な傷によるマイクロEHL効果により形成される油膜の
厚さよりあらさが大きい場合には、寿命の改善ができな
いことがわかる。
【0032】また、油膜厚さの向上には、あらさの大き
さだけではなく、微小な長さ・幅からなる凹部が適して
いると言える。これは、マイクロEHL効果を発揮する
箇所が多い方が、接触部全体としての油膜形成に有効で
あるためである。
【0033】なお、本発明の玉を組み込んだ軸受は、凹
部の深さを浅くしたので、音響値は、凹部を付けない従
来の仕上げ面の玉を組み込んだ軸受と同じ値であった。
【0034】<実験2>本発明品の油膜形成能力を知る
ため、前掲の本発明品1を用いて、境界潤滑条件下にお
ける油膜の電気抵抗を測定し、金属接触率を算出した。
【0035】実験条件は、最大接触圧力が2.9GP
a、潤滑油は40℃の動粘度が1.5mm2 /sの低粘
度油、潤滑方法は油浴潤滑、油量は回転輪1が潤滑油面
より下による量で、具体的には30ccとした。温度は
室温であった。実験は、所定の荷重を負荷した後、回転
輪1を駆動した。
【0036】回転輪1は静止状態から回転数1600r
pmまで、5分間かけて直線的に増速した。試験中の玉
2と軌道輪間との油膜の形成状態は、直流電気抵抗法を
用いて測定した。
【0037】具体的には、回転輪1を駆動したスピンド
ルの端部に水銀スリップリングを取り付け、同水銀スリ
ップリングと固定輪3を組み込んだハウジングとの間の
電気抵抗を測定した。
【0038】この測定系では、玉2と回転輪1および固
定輪3が直接接触した場合に電気抵抗が零となり、玉2
と回転輪1または固定輪3のどちらか、あるいは両方が
油膜で隔てられた場合には、電気抵抗は無限大となる。
【0039】電気抵抗の測定結果から液体金属接触率を
従来品と比較して図4に示す。金属接触率は、電気抵抗
が零となった時間をT1 、電気抵抗が無限大となった時
間をT2 とした時、次式で定義される。
【0040】 金属接触率(%)=100×T1 /(T1 +T2 ) 図4に示す測定結果より、本実験条件の潤滑状態は、転
がり要素間に直接接触が発生する境界潤滑条件であると
いえる。図4より、本発明の玉は、従来の転動体に比
べ、境界潤滑条件下において、油膜形成能力に優れてい
ることがわかる。この油膜形成能力の向上は、玉の表面
に付けた針状の微小な傷によるマイクロEHL効果によ
るものである。
【0041】
【発明の効果】以上のように、この発明によると、境界
潤滑条件下で使用される玉軸受の油膜形成能力を改善す
ることができ、玉軸受の長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】転がり軸受の一部断面図
【図2】本発明の玉の拡大正面図
【図3】転動疲労寿命を比較した試験の結果のワイブル
線図
【図4】油膜形成能力を比較した試験の結果の図表
【符号の説明】
1 回転輪 2 玉 2a 玉の表面 3 固定輪 4 保持器 5 凹部

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 表面に針状の微小な凹部を無数かつラン
    ダムに分散形成した玉軸受用玉であって、上記凹部は長
    さが2.0〜30μm、幅が0.3〜2.0μm、数が
    1〜15本/100μm2 であって、玉の中心線平均あ
    らさが0.005μmから0.012μmである玉軸受
    用玉。
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