JPH0721491B2 - 血液分離用組成物 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は遠心力下での液体物質の成分の分離に用いる液
体分離用組成物に関する。さらに詳しくは、本発明は血
液サンプルを遠心分離することによって、血清または血
漿を含む血液組成物から比較的軽い、通常は液体の血液
相を、例えば赤血球、血小板等のような比較的重い、通
常は固体の血液相から分離することに関する。

臨床検査室で実施される生化学的検査はサンプルとして
の血液血清または血漿の使用を必要とする。検査用サン
プルの調製に関して、血液血清または血漿を固体血液成
分から分離することが必要である。このような分離を実
施するための先行技術の方法は、血液サンプルに血清ま
たは血漿と固体血液成分との中間の比重を有する物質、
物体または両者の組合せを加えることを含む。この物質
は、遠心力下で、血清または血漿と固体血液成分との中
間を移動して、これらの間に分離壁を形成する。

代表的な壁形成性分離用物質には、例えば米国特許第3,
780,935号及び第3,852,194号に開示されている物質があ
る。これらの組成物はゲル組成物またはチキソトロープ
組成物と呼ばれる。分離物質及び／またはバリヤー物質
に関する他の特許には、例えば米国特許第4,230,584号
（1980年10月28日発行）、米国特許第4,148,764号（197
9年４月10日発行）、米国特許第4,534,798号（1985年８
月13日発行）、米国特許第4,457,782号（1984年７月３
日発行）、米国特許第4,172,803号（1979年10月30日発
行）、米国特許第4,101,422号（1978年７月18日発
行）、米国特許第4,310,430号（1982年１月12日発行）
がある。第4,101,422号特許は分離用組成物に有用なポ
リエステル物質に関するが、第4,230,584号特許は第4,1
72,803号特許の組成物を用いる装置に関する。残りの特
許は特定の分離結果を得るための特定成分の分離用組成
物に関する。しかし、これらの特許のいずれも、良好な
安定性の血液分析物（blood analyte）と広範囲の薬物
群とを提供する、本発明におけるような特殊な二成分樹
脂要素に関するものではない。

上記で考察したように、本発明はここに例えばイミプラ
ミンの回収改善に有用であるような新規なチキソトロー
プ組成物を開示する。相分離用バリヤー成分としてチキ
ソトロープゲルを用いる形式の理想的な分離では、ゲル
は遠心力を実質的に加えない場合に組成的に安定で、物
理的に安定であることを特徴とする。さらに、ゲルが分
離することが好ましい成分間に強い凝集バリヤーを形成
すること、及びゲルが化学的に不活性であり、被分離血
液相の密度の中間である密度を有することが適当であ
る。

組成的に安定な組成物は、要素が通常の貯蔵及び／また
は使用の条件下で分離しない分離用ゲルの成分であるこ
とを意味する。組成物は基本的には、不活性な充てん剤
を配合した油または油様の組成物である。しかし、油ま
たは油様物質がそれに分散した不活性充てん剤から浸出
または分離しないほど安定であるべきである。物理的に
安定なバリヤー物質は、遠心力を加えられた場合以外に
は移動しないかまたは形状を変化させない物質である。
化学的に不活性とは、バリヤー物質が分離すべき血液サ
ンプル、その構成成分、または血液血清の診断検査の実
施に通常用いられる試薬と化学的に反応しないことを意
味する。

本発明は、例えばポリ−α−ピネンのような特定の炭化
水素樹脂が疎水性であり、高いPKa値を有する薬物の良
好な回収を可能にすることを発見した点で、先行技術の
チキソロープゲル組成物以上の改善を提供する。しか
し、この炭化水素樹脂は約0.99の低い密度を有し、この
ことがこの物質単独でのバリヤーゲルの可能な候補とし
ての使用を限定する。本発明の出願人は、この炭化水素
と塩素化炭化水素とを混合して二成分樹脂要素を形成す
ることによって、密度が遠心分離に適したチキソロープ
ゲルを形成するレベルにまで増加することを、全く予想
外に発見した。さらに、この炭化水素と塩素化炭化水素
によって、特定用途に要求されるように、最終樹脂要素
の密度が調整される。

本発明のゲル組成物の性質を総合的に考察して、組成物
は好ましくは25℃において約1.00〜1.04の範囲内の調節
された比重を有する、上述のような、樹脂ブレンドの混
合物、放射線安定剤（radiation stabilizer）、組織安
定剤として短鎖多官能性物質（short chain polyfuncti
onal material）及びチキソロープ剤を有する。本発明
の組成物は一般に約1.03〜1.07の範囲内の比重（25℃）
及び1sec^-1のせん断速度において約800,000〜1,800,000
センチポアズの範囲内の粘度（25℃）を有する。

この新しいゲル組成物は、組合せると高疎水性になると
いう理由で選択した炭化水素原料物質を主成分とする。
さらに、この新しいゲル組成物は低い比重と高い粘度と
を有する。この新しいゲル組成物は1,000G力での遠心分
離において赤血球取込み（entrapment）が最小である完
全な固体バリヤーを形成する。これは血液分析物の安定
性を保証する。さらに、これは良好な薬物回収と広範囲
な薬物の安定性とを保証する。

本発明の組成物を一般的に考察すると、典型的な組成物
はポリテルピン樹脂と塩素化αオレフィンとの、上記の
ような樹脂ブレンドを含む。この組成物はエム アンド
ティ ケミカルス社（Ｍ＆T Chemicals Inc.）（ニュー
ジャーシー州ローウェイ）の製品であるガンマシールド
（Gamma Shield）401または801のような放射線安定剤ま
たはエポシシ化大豆油、例えばグリセリン、エチレンジ
アミン、プロピレングリコールまたエチレングリコール
のような組成安定剤、例えばシリカのようなチキソトロ
ープ剤及び例えば二酸化チタンのような顔料を含む。

本発明による好ましい組成物は、約67〜約86重量％の範
囲内のポリテルピン、約13〜約24重量％の範囲内の塩素
化炭化水素、約２〜約６重量％の範囲内のシリカ、約0.
15〜0.8重量％の範囲内の短鎖多官能性安定剤、約0.015
〜0.03重量％の範囲内の二酸化チタン及び約2.3〜15重
量％の範囲内のエポキシ化大豆油を混合することを含
む。組成物に用いる塩素化炭化水素は最低50％の塩素を
含むように選択する。ポリテルピン樹脂（ポリ−α−ピ
ネン）の特別な供給源はドーバーケミカル コーポレー
ション（Dover Chemical Corporation）の製品の塩素化
オクタデセンであるDC8618である。

添付図は本発明のゲル組成物の使用を説明する排気容器
（evacuated container）の縦断面図である。

図面には、本発明によるゲル組成物11を含む、ストッパ
ー12によって閉じる排気管10を示す。問題の血液のサン
プルはストッパー12にカニューレによって穿孔すること
によって、技術上周知のように、管10に移すことができ
る。次に、管10を通常のやり方で遠心機に入れ、下記で
さらに説明するように、遠心力に暴露させる。これによ
って、組成物11は非チキソトロープ性になり、導入した
サンプルを重い分画と軽い分画とに分割する点まで移動
する。この一般的方法をさらに詳細に考察するために
は、米国特許第4,350,593号（1982年９月21日発行）を
参照すること。

本発明のゲル組成物に有用な物質の範囲を説明するもの
として、次の範囲を挙げることができる： 本発明によって得られた、強化された結果を単に説明す
るものとして、本発明による組成物を排気採血管用チキ
ソトロープゲルバリヤー媒質として調製する、下記の例
を挙げる。この組成物は調製して、ガラス管内に入れ、
次に管にストッパーを施し、管を排気する。血液サンプ
ルを、用意した管に導入し、遠心力下に置く。比較のた
めの対照としては、市販されている他の管を用いた。

例 下記の物質を記載重量％で混合して、本発明による代表
的な組成物を形成した： Ａ ポリ−α−ピネン 75.66％ Ｂ 塩素化オクタデセン 13.24％ Ｃ エポキシ化大豆油 5.67％ Ｄ 短鎖多官能性安定剤 0.40％ Ｅ フユームドシリカ 5.00％ Ｆ 二酸化チタン 0.03％ 組成物の形成方法は、物質A,B及びＣを混合容器に供給
し、Ｄを加えることを含んだ。次に、混合物を加熱し
て、60℃に維持した。次に、混合物を減圧条件下でブレ
ンドした。ブレンド後に、ＥとＦを加え、再び減圧下で
ブレンドした。

このようにして形成されたゲル物質を、血液サンプル分
離方法に用いる通常のガラス管20本に分配した。これに
関連して、形成されたゲル１〜2gを各管に入れ、次に各
管を排気し、通常のようにストッパーを施し、1.5MRの
ガンマー線照射に暴露させることによって殺菌した。

この時点で、典型的な血液サンプルを管に導入した。実
際の条件をシミュレートするための30分間の滞留時間後
に、管に対して100G力での遠心分離を実施した。管内の
ゲルは血液細胞（blood cell）と血清との間のバリヤー
を形成した。管を逆さにしても、ゲルバリヤーは細胞を
血清中に移動させなかった。遠心分離後に、各管を厳密
に検査したところ、全ての管は本発明のゲルが導入サン
プルの血液細胞成分と血清成分との間に透明なバリヤー
を形成したことを示した。血液細胞が血清中に移動した
ことは示されなかった。

薬物を回収するためには、他のバッチの20本の管を上記
のように用意し、レッドトップヴァキュティナー（Red
Top Vacutainer） ブランド管〔ベクトン ジキンソン
ヴァキュティナーシステム（Becton Dickinson Vacut
ainer Systems）、ニュージャーシー州ラザーフォー
ド〕と呼ばれる、非ゲル管20本の対照セットを用いた。
管に血液サンプルを導入した後に、¹⁴Cイミプラミン、
¹⁴Cリドカイン、¹⁴Cフェノバルビトール、¹⁴Cキニジン
及びトリチウムデスメチルイミプラミンを含む放射能標
識薬物を加えた。管の中味をおだやかに混合した。次に
管に対して1000G力での遠心分離を実施した。存在する
薬物の放射能を液体シンチレーションカウンターによっ
て測定し、対照管と本発明の組成物を含む管との回収率
を比較した。

本発明の組成物を含む管の回収率は、バリヤー形成後
に、対照と比較して被験薬物95〜99％（管20本の平均）
であることが判明した。

従って、上記説明から明らかなように、本発明による方
法と組成物によって、炭化水素原料物質を主成分とし、
高疎水性である、血液成分分離用の新しいチキソトロー
プゲル組成物が提供される。この組成物は、遠心力下の
組成物に適当な制御密度レベルを与える塩素化炭化水素
と平衡化した、血液分析物の良好な安定性を可能にする
樹脂要素を含む。さらにゲル組成物中の樹脂ブレンドの
化学的性質とゲルが低密度かつ高粘性であることのため
に、特定の遠心力において赤血球取込みが最小である、
より完全な固体バリヤーが得られる。

ここに開示した方法と組成物は本発明の好ましい実施態
様を形成するが、本発明はこれらの特定の方法と組成物
に限定されることなく、特許請求の範囲で定義した本発
明の範囲から逸脱することなく、変更を行うことが可能
である。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明のゲル組成物の使用を説明する排気容器
の縦断面図である。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 フーチュン・リン アメリカ合衆国ニュージャージ州ウェイ ン，ウィッティグ・テラス 22 (56)参考文献 特開 昭57−42850（ＪＰ，Ａ) 特開 昭64−6863（ＪＰ，Ａ) 特開 昭57−141558（ＪＰ，Ａ) 特開 昭57−149964（ＪＰ，Ａ) 特開 昭58−35464（ＪＰ，Ａ) 特開 昭53−51189（ＪＰ，Ａ) 特開 昭59−221666（ＪＰ，Ａ)

Claims (8)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】（ａ）低密度のポリ−α−ピネンと共に高
   密度の塩素化オクタデセンを含む、二成分樹脂要素； （ｂ）放射線安定剤； （ｃ）組織安定剤； （ｄ）チキソトロープ剤；および （ｅ）顔料； を含む、チキソトロープゲルを形成する混合物である、
   血液分離用組成物。
2. 【請求項２】ポリ−α−ピネンが約67〜86重量％の範囲
   内で存在し、塩素化オクタデセンが約13〜24重量％の範
   囲内で存在する、請求項１記載の組成物。
3. 【請求項３】塩素化オクタデセンが少なくとも50％の塩
   素含有量を有する、請求項１記載の組成物。
4. 【請求項４】（ａ）ポリ−α−ピネンと塩素化オクタデ
   センの樹脂ブレンド； （ｂ）エポキシ化大豆油； （ｃ）短鎖多官能基組織安定剤； （ｄ）シリカ；および （ｅ）二酸化チタン； を含む、チキソトロープゲルを形成する混合物である、
   血液分離用組成物。
5. 【請求項５】25℃において1.03から1.07の範囲内の比重
   を有する、請求項４記載の組成物。
6. 【請求項６】800,000〜1,800,000の範囲内のセンチポア
   ズの粘度を有する、請求項４記載の組成物。
7. 【請求項７】（ａ）約67〜86重量％の範囲内のポリ−α
   −ピネンと共に、約13〜24重量％の塩素化オクタデセン
   を含む、二成分樹脂要素； （ｂ）約２〜６重量％の範囲内のチキソトロープ剤； （ｃ）約0.015〜0.03重量％の範囲内の顔料； （ｄ）約0.15〜0.8重量％の範囲内の組織安定剤；およ
   び （ｅ）約2.3〜15重量％の範囲内の放射線安定剤； を含む、チキソトロープゲルを形成する混合物である、
   血液分離用組成物。
8. 【請求項８】次の構成要素： （ａ）閉鎖端部および開放端部を有する排気管； （ｂ）上記開放端部を閉鎖して上記排気管を真空にする
   ためのエラストマーストッパー；および （ｃ）（１）低密度のポリ−α−ピネンと共に高密度の
   塩素化オクタデセンを含む、二成分樹脂要素； （２）放射線安定剤； （３）組織安定剤； （４）チキソトロープ剤；および （５）顔料； を含む、上記排気管内の血液分離用組成物 からなる、採血アッセンブリ。