JPH07142228A - フェライト樹脂 - Google Patents

フェライト樹脂

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JPH07142228A
JPH07142228A JP5268328A JP26832893A JPH07142228A JP H07142228 A JPH07142228 A JP H07142228A JP 5268328 A JP5268328 A JP 5268328A JP 26832893 A JP26832893 A JP 26832893A JP H07142228 A JPH07142228 A JP H07142228A
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JP
Japan
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ferrite
resin
soft magnetic
ferrite powder
lubricant
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Application number
JP5268328A
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English (en)
Inventor
Hitoshi Shimomukai
仁 下向
Kazuharu Iwasaki
和春 岩崎
Takeshi Hosoya
健 細谷
Hiroshi Ito
洋 伊藤
Yoshimi Takahashi
芳美 高橋
Takaaki Matsuda
隆明 松田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sony Corp
Original Assignee
Sony Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 射出成形によって良好な形状で成形されると
とも、製造装置を摩耗させず、しかも高透磁率を有する
フェライト樹脂を提供する。 【構成】 軟磁性フェライト粉末と樹脂を主体とするフ
ェライトスラリーを射出成形してなるフェライト樹脂に
おいて、樹脂を熱変形温度が200℃以上、曲げ強度が
150MPa以上の熱可塑性樹脂とし、また上記フェラ
イトスラリーの流動値を0.2ml/s以上とする。あ
るいは、軟磁性フェライト粉末の混合重量をP,樹脂の
混合重量をB1 ,滑剤の混合重量をB2 としたときに、
0.06≦(B1 +B2 )/P≦0.11なる条件を満
たすように軟磁性フェライト粉末、熱可塑性樹脂及び滑
剤を含有するフェライトスラリーを用いる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、チョークコイル,マイ
クロインダクタ,ロータリートランス等のモールド材料
として使用されるフェライト樹脂に関する。
【0002】
【従来の技術】フェライト樹脂は、樹脂とフェライト粉
末よりなるものであり、チョークコイル,マイクロイン
ダクタ,ロータリートランス等においてコイルを包み込
みコイルの透磁率を高めるために使用されるモールド材
料である。
【0003】従来、このようなフェライト樹脂は、軟磁
性フェライト粉末と熱可塑性樹脂とを混合,加熱混練し
てフェライトスラリーを調整した後、射出成形によって
所望の形に成形することで製造されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述したチ
ョークコイル等の各種デバイスは、近年、様々な仕様形
態で使用され、用途によっては極めて高い性能が要求さ
れるようになっている。このため、モールド材であるフ
ェライト樹脂においても、高透磁率であることが求めら
れ、透磁率の向上を目的として軟磁性フェライト粉末の
含有率は益々高くなる一方にある。さらに、デバイスと
して機械的特性(電極強度、固着性)、熱的強度(ハン
ダ耐熱性)、耐久性(耐溶剤性、耐振性、耐衝撃性)等
が要求される。
【0005】ここで、フェライト含有率の高いフェライ
ト樹脂を製造するには、当然のことながらフェライト混
合率の高いフェライトスラリーを用いる必要がある。と
ころが、上述のようにして調製されるフェライトスラリ
ーにおいて軟磁性フェライト粉末の混合率を高くすると
流動性が急激に低下し、これに起因して種々の不都合が
生じてくる。
【0006】すなわち、流動性の低いフェライトスラリ
ーを用いると、射出成形が円滑に行われず、射出を高圧
で行わざるを得ない。このため、良好な形状のフェライ
ト樹脂を得るのが難しく、クラック,ウェルド,ショー
ト等を有する欠陥品や、このような欠陥を有さないまで
も内包部形状が歪んでおり、コイル等の被包部品を挿入
したときに被包部品に変形や位置ずれが生じ、これによ
りデバイスの特性不良を誘発するといった準欠陥品が高
い割合で発生する。
【0007】また、流動性の低いフェライトスラリー
は、製造装置との接触部分,例えば混練機のスクリュ
ー,シリンダー,羽根さらには射出成形機のノズルを激
しく摩耗させる。これにより、頻繁な部品交換が必要と
なり、製造コストの増大を招く。
【0008】そこで、本発明はこのような従来の実情に
鑑みて提案されたものであり、射出成形によって良好な
形状で成形されるととも、製造装置を摩耗させず、しか
も高透磁率を有するフェライト樹脂を提供することを目
的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するた
めに、本発明のフェライト樹脂は、軟磁性フェライト粉
末と、熱変形温度が200℃以上、曲げ強度が150M
Pa以上の熱可塑性樹脂を主体としてなり、フェライト
スラリーの流動値を0.2ml/s以上として射出成形
されてなることを特徴とするものである。
【0010】本発明のフェライト樹脂は、その使用目的
から、熱変形温度が200℃以上、曲げ強度が150M
Pa以上と、耐熱性に優れ、強度や剛性が高い樹脂〔例
えばナイロン等のPA(ポリアミド)や、PPS(ポリ
フェニレンサルファイド)等の熱可塑性樹脂〕を使用し
たものである。
【0011】本発明のフェライト樹脂は、フェライトス
ラリーを射出成形することによって所望の形状に成形さ
れてなるものであるが、このとき、流動値が0.2ml
/s以上のフェライトスラリーは、射出成形に際して金
型が比較的複雑な形状であっても円滑に金型内に充填さ
れ良好な形状に成形することができる。
【0012】上記流動値が0.2ml/s以上のフェラ
イトスラリーは、例えば軟磁性フェライト粉末と熱可塑
性樹脂の混合率を選択することにより得られる。すなわ
ち、フェライトスラリーの流動値は、熱可塑性樹脂の混
合率を高くすれば高くなり、逆に軟磁性フェライト粉末
の混合率を高くすると低くなる。したがって、フェライ
トスラリーの流動値を0.2ml/s以上とすること
は、軟磁性フェライト粉末の混合率をある程度低くする
ことで可能である。
【0013】しかし、フェライトスラリーの軟磁性フェ
ライト粉末混合率を低くすると、得られるフェライト樹
脂の透磁率が低下するといった不都合がある。
【0014】そこで、本発明においては、フェライトス
ラリーに軟磁性フェライト粉末,熱可塑性樹脂とともに
滑剤を混合し、この滑剤によって流動性を付加すること
とする。これにより、フェライトスラリーは、軟磁性フ
ェライト粉末の混合率を増大させた場合でも滑剤によっ
て0.2ml/s以上の流動値が維持され、フェライト
含有率が高く、しかも良好な形状に成形されたフェライ
ト樹脂が製造されることとなる。
【0015】上述のような滑剤が混合されたフェライト
スラリーを射出成形して、良好な形状を有し、且つ透磁
率の高いフェライト樹脂を製造するには、フェライトス
ラリーを調製するに際し、結合剤成分と粉末成分の比
(いわゆるB/P比)を適正に規制する必要がある。
【0016】本発明においては、軟磁性フェライト粉
末,熱可塑性樹脂,滑剤を、軟磁性フェライト粉末の混
合重量をP,熱可塑性樹脂の混合重量をB1 ,滑剤の混
合重量をB2 としたときに、 0.06≦(B1 +B2 )/P≦0.11 なる条件を満たすように混合,混練してフェライトスラ
リーを調製する。
【0017】図1〜図4にトータルB/P比〔(B1
2 )/P〕とフェライト樹脂の透磁率の関係を示す。
なお、図1,図2,図3,図4はそれぞれ滑剤としてス
テアリン酸,フッ素系化合物,脂肪酸塩,シリコン系化
合物を用いた場合である。図1〜図4からわかるように
フェライト樹脂の透磁率は(B1 +B2 )/Pが低くな
るほど向上し、逆に、(B1 +B2 )/Pが高くなり
0.11を越えると透磁率が急激に低下する。すなわ
ち、高透磁率を有するフェライト樹脂を得るには、フェ
ライトスラリーの(B1 +B2 )/Pは0.11以下と
することが必要である。
【0018】一方、フェライトスラリーの流動性は、図
5,図6に示すように(B1 +B2)/Pが高い場合程
良好であり、逆に(B1 +B2 )/Pが低くなり0.0
6を下回った場合には流動性が不足して射出成形が困難
となる。すなわち、良好な形状を有するフェライト樹脂
を得るには、フェライトスラリーの(B1 +B2 )/P
を0.06以上とすることが必要である。なお、図5,
図6はそれぞれ焼成温度が異なる軟磁性フェライト粉末
を用いた場合であり、図5は焼成温度1000℃の軟磁
性フェライト粉末を、図6は焼成温度950℃の軟磁性
フェライト粉末を用いた場合である。コンパウンド調製
条件,流動性測定条件を以下に示す。
【0019】フェライトスラリーの混合成分 軟磁性フェライト粉末:焼成温度1000℃のフェライ
ト粉末,焼成温度950℃の軟磁性フェライト粉末 1
50g 熱可塑性樹脂:ナイロン 0.045〜0.060(B
1 /P比) 滑剤:ステアリン酸 0.01(B2 /P比)
【0020】フェライトスラリーの混練条件 混練時間:120分 回転数:50回/分 温度:250℃
【0021】流動性測定条件 荷重:1078Pa 温度:270℃ ダイスの直径:1mm ダイスの長さ:2mm
【0022】また、上記組成のフェライトスラリーのう
ち、代表的な組成のフェライトスラリーの流動値及び得
られるフェライト樹脂の透磁率を表1に示す。
【0023】
【表1】
【0024】つまり、本発明において(B1 +B2 )/
Pの範囲として設定した0.06〜0.11はこれらの
点を兼ね合わせて決定されたものである。
【0025】上述したように、上記トータルB/P比
〔(B1 +B2 )/P〕を規制することにより、必要な
透磁率を確保しつつ、流動性を向上させることが可能と
なるが、さらに滑剤の添加量を適正に規制することによ
って優れた流動性付加効果を得ることができる。
【0026】そこで、本発明においては、軟磁性フェラ
イト粉末,熱可塑性樹脂,滑剤を、軟磁性フェライト粉
末の混合重量をP,熱可塑性樹脂の混合重量をB1 ,滑
剤の混合重量をB2 としたときに、 0.06≦(B1 +B2 )/P≦0.11 0.0005≦B2 /P≦0.03 なる条件を満たすように混合,混練してフェライトスラ
リーを調製する。
【0027】十分な流動性付加効果を得るためには、軟
磁性フェライト粉末混合重量に対する滑剤の混合重量B
2 /Pが0.002以上となるように設定することが好
ましい。しかし、B2 /Pが0.03を越えると、今度
は混合に際して撹拌機が滑る(いわゆるスリップを起こ
す)ようになり、見かけ上の流動値が低下して混合が十
分に行われなくなる。また熱可塑性樹脂による接着効果
も不足するようになる。したがって、フェライトスラリ
ーの流動性を向上させるためには、B2 /Pが0.00
2〜0.03となるように設定することが望ましい。
【0028】なお、図7に滑剤となるステアリン酸の混
合重量B2 と軟磁性フェライト粉末の混合重量Pの比B
2 /Pとフェライトスラリーの流動値を関係を示す。コ
ンパウンド調製条件は以下の通りである。
【0029】フェライトスラリーの混合成分 軟磁性フェライト粉末:150g 熱可塑性樹脂:ナイロン 滑剤:ステアリン酸 B1 +B2 /P比:0.08
【0030】フェライトスラリーの混練条件 混練時間:120分(60分経過後に滑剤添加) 回転数:50/回分 温度:250℃
【0031】流動性測定条件 荷重:1078Pa 温度:270℃(通常品)図7中、○で示す。 290℃(高融点タイプ)図7中、△で示す。 300℃(高融点タイプ)図7中、□で示す。
【0032】ダイスの直径:1mm ダイスの長さ:2mm
【0033】図7より、ステアリン酸の混合重量B2
軟磁性フェライト粉末の混合重量Pの比B2 /Pが大き
いほど、流動値が向上しているのがわかる。ナイロンの
分解熱を考慮すると、シリンダー温度が270℃程度で
成形するのが好ましい。また、流動値が0.2ml/s
以上を得るためには、B2 /Pが0.002〜0.03
であることが好ましい。
【0034】また、滑剤の混合重量B2 と軟磁性フェラ
イト粉末の混合重量Pの比B2 /Pを0.002以下と
すると、上述したようにフェライトスラリーの流動性は
劣化してしまうが、作製されたフェライト樹脂の成形体
の機械的強度を向上させることができる。ナイロンの分
解熱を考慮すると、シリンダー温度の上限は300℃程
度と考えられる。測定温度を上げると流動値は向上する
が、300℃でも上記B2 /Pが0.0005より小さ
いと、流動性が低くなりすぎて射出成形性が劣化してし
まう。フェライト樹脂の機械的強度を重視する場合に
は、高温で射出成形することを前提に、滑剤の混合重量
2 と軟磁性フェライト粉末の混合重量Pの比B2 /P
を0.0005〜0.002とすることが好ましい。
【0035】なお、上記フェライトスラリーに混合する
滑剤としては、脂肪酸,脂肪酸エステル,脂肪酸塩,フ
ッ素系化合物,シリコン系化合物等が挙げられる。
【0036】脂肪酸,脂肪酸エステル,脂肪酸塩として
は、炭素数が6〜22のものが用いられる。例えば、脂
肪酸としてはステアリン酸,パルミチン酸,ミリスチン
酸,ラウリン酸等が挙げられ、脂肪酸エステルとしては
ステアリン酸エステル,パルミチン酸エステル,ミリス
チン酸エステル,ラウリン酸エステル等が挙げられる。
また、脂肪酸塩としては、ステアリン酸,オレイン酸,
ミリスチン酸のナトリウム塩,カリウム塩等が挙げられ
る。
【0037】フッ素系化合物としては、パーフルオロア
ルキルエチレンオキシド,パーフルオロポリエーテル
類,パーフルオロアルキルスルホン酸またはそのアンモ
ニウム塩あるいはその金属塩,パーフルオロアルキルカ
ルボン酸またはその金属塩等が挙げられる。
【0038】さらに、シリコン系化合物としては、アミ
ノ変性シリコン,カルボキシ変性シリコン,フッ素変性
シリコン,アルキル変性シリコン,ジメチルポリシロキ
サン等が挙げられる。なお、アミノ変性シリコン,カル
ボキシ変性シリコン,フッ素変性シリコンの一般式を以
下に示す。
【0039】
【化1】
【0040】
【化2】
【0041】
【化3】
【0042】さらに、上記滑剤は、それぞれ特性,流動
性付加効果が異なるので、用いる滑剤によって、混合
率,混合方法は適宜選択することが好ましい。例えば、
脂肪酸,脂肪酸エステル,脂肪酸塩は、他の種類の滑剤
に比べて比較的高い流動性を付加できることからその混
合率は比較的小さくて済む。 その一方、これら脂肪
酸,脂肪酸エステル,脂肪酸塩は、分解温度が170℃
近辺と低く、加熱混練の際の混練温度を低く設定する必
要があるので、熱可塑性樹脂として溶融温度の低いナイ
ロン等を用いる場合に採用するのが好ましい。
【0043】フッ素系化合物,シリコン系化合物は、脂
肪酸等に比べて流動性付加効果はやや劣るものの耐熱性
に優れ、例えばシリコン系化合物は250℃近辺という
高い分解温度を有する。したがって、溶融温度の高いポ
リフェニレンサルファイト(PPS)を熱可塑性樹脂と
して用いる場合にも採用できる。シリコン系化合物のう
ちでは、特にカルボキシ変成シリコンが、このように耐
熱性に優れるとともに流動性付加効果も比較的高いとい
う特長を有する。さらに、シリコン系化合物は、安価で
あり低コスト化にも有利である。
【0044】参考のため、図8〜図10に、フッ素系化
合物としてデムナムSH−2,デムナムSA−2,デム
ナムS−20,デムナムS−200(以上ダイキン工業
社製,商品名),クライトックス(デュポン社製,商品
名)を、脂肪酸としてステアリン酸、脂肪酸エステルと
してエキセパール(商品名)を、脂肪酸塩としてステア
リン酸ナトリウム,ステアリン酸カリウム,オレイン酸
ナトリウム,オレイン酸カリウムを、シリコン系化合物
としてアミノ変性シリコン化合物,カルボキシ変性シリ
コン化合物,フッ素変性シリコン化合物,アルキル変成
シリコン化合物,ジメチルポリシロキサンを滑剤に用い
た場合のフェライトスラリーの流動性及び滑剤を用いな
い場合のフェライトスラリーの流動値を示す。
【0045】なお、フェライトスラリーの調製条件は以
下の通りである。
【0046】フェライトスラリーの混合成分 軟磁性フェライト粉末:150g 熱可塑性樹脂:ナイロン 0.10(B1 /P比) 滑剤:0.01(B2 /P比) (B1 +B2 )/P比:0.11
【0047】フェライトスラリーの混練条件 混練時間:120分 回転数:50回/分 温度:250℃
【0048】また、これら滑剤を混合するに際しては、
その添加のタイミングも重要であり、滑剤の加熱混練に
際する熱分解が問題になる場合には、軟磁性フェライト
粉末と熱可塑性樹脂のみをまずミキサー等の混合機に投
入して予備混合し、該予備混合物を加圧ニーダあるいは
2軸タイプのルーダ等の混練機に投入して1時間程度加
熱混練した後、滑剤を添加するのが良い。これにより、
滑剤に温度がかけられる時間が短縮され、滑剤の分解が
抑えられる。
【0049】滑剤の熱分解が問題にならない場合には、
予備混合時に予め軟磁性フェライト粉末,熱可塑性樹脂
とともに滑剤も添加しておくのが望ましい。滑剤を添加
せずに、軟磁性フェライト粉末,熱可塑性樹脂のみを予
備混合,混練した場合には、剪断熱が発生し、これによ
り温度上昇が起こるため温度調節機が必要となる,ま
た、大きな剪断力が発生し、軟磁性フェライト粉末が小
さく砕ける(通常軟磁性フェライト粉末は、一次粒子が
集まって構成されたものが多く、負荷の大きい混合,混
練を行うことで微粉化すると考えられる)他、粉末内部
も歪み、これにより磁気特性が劣化する,さらに軟磁性
フェライト粉末が小さく砕けて成形性が得難くなり、バ
インダー量を増大させる等の方策が必要となるからであ
る。
【0050】因みに各種粒径の軟磁性フェライト粉末の
インダクタンスを表2に示す。
【0051】
【表2】
【0052】以上のように流動性が0.2ml/s以上
とされたフェライトスラリーは射出成形することにより
形状,磁気特性のともに優れたフェライト樹脂となる
が、実際の射出成形に際しては、金型以外,例えば射出
成形機の射出部と金型を連結する樹脂注入経路部(いわ
ゆる、スプール)にもフェライトスラリーが充填され成
形体本体以外に不必要なフェライト樹脂が形成される。
【0053】このような不必要なフェライト樹脂は、あ
るいは失敗成形品はクラッシャーにより粉砕し、再び熱
可塑性樹脂,滑剤と混合,混練することでフェライトス
ラリーとすることができ、リサイクルが可能である。し
かし、リサイクル回数が3回目になると流動性の良いフ
ェライトスラリーが得られなくなり(これは、軟磁性フ
ェライト粉末表面に表面処理剤として被着した表面処理
剤が蒸発して失われるからと推測される。)、射出成形
が困難になる。したがって、リサイクル回数は2回を限
度とすることが好ましい。
【0054】ところで、上述の方法で製造するフェライ
ト樹脂には、高透磁率であることが求められるが、単に
透磁率が高いばかりでなく、キュリー点も高いことが望
ましい。これは、例えばチョークコイル等のデバイスに
おいては、使用時にデバイス自身が発熱するため、フェ
ライト樹脂のキュリー点があまり低いとデバイスの特性
を損なうことになるからである。
【0055】このような観点から、使用する軟磁性フェ
ライト粉末としては、Ni−Cu−Zn系フェライト粉
末が好適である。具体的には、原料組成がFe23
ZnO,NiO+CuOの三元組成図(図11)上でA
(Fe23 :49.5mol%,ZnO:31.5m
ol%,NiO+CuO:19mol%)、B(Fe2
3 :51mol%,ZnO:31.5mol%,Ni
O+CuO:17.5mol%)、C(Fe23 :5
1mol%,ZnO:29mol%,NiO+CuO:
20mol%)、D(Fe23 :49.5mol%,
ZnO:28mol%,NiO+CuO:22.5mo
l%)、E(Fe23 :48mol%,ZnO:28
mol%,NiO+CuO:24mol%)、F(Fe
23 :48mol%,ZnO:30.5mol%,N
iO+CuO:21.5mol%)なる6点に囲まれる
領域内にあり、且つNiO及びCuOがそれぞれ4mo
l%以上含有されてなる軟磁性フェライト粉末が挙げら
れる。
【0056】上記のようなNi−Cu−Zn系軟磁性フ
ェライト粉末において、原料組成が上記範囲から外れる
と、得られるフェライト樹脂の透磁率及びキュリー点が
低下し、好ましくない。また、フェライト樹脂におい
て、上記軟磁性フェライト粉末の含有量を樹脂に対して
体積比60%未満とすると得られるフェライト樹脂の透
磁率が低下し、好ましくない。
【0057】本発明者等は、フェライト樹脂中のフェラ
イト粉末の原料組成と該フェライト樹脂の透磁率,キュ
リー点の関係について調査した。
【0058】フェライト粉末は、一般に原材料の秤量,
混合,脱水,乾燥,仮焼成,粉砕,本焼成,粉砕,分級
の工程を経て製造される。本発明者等のこれまでの検討
により、フェライト粉末の仮焼成温度を800℃以上と
し、本焼成温度T2 (℃)を該フェライト粉末のバルク
状焼成時の最適本焼成温度T1 (℃)に対してT1 +5
0℃≦T2 ≦T1 +150℃とすることによってこれら
のフェライト粉末を用いて作製されるフェライト樹脂の
透磁率を著しく向上させることが可能であることが確認
されている。
【0059】本発明者等が本焼成温度を変化させてフェ
ライト粉末を作製し、これをバルク状に成形して透磁率
μb を測定したところ、本焼成温度がある温度T1
(℃)に達するまでは透磁率μb は上昇するが、それ以
降は透磁率μb は変化しないことがわかった。ところ
が、本焼成温度がバルク状成形時の最適本焼成温度T1
(℃)以上であるフェライト粉末を用いたフェライト樹
脂の透磁率μe を測定したところ、本焼成温度T2
(℃)がT1 (℃)に対してT1 +50℃≦T2 ≦T1
+150℃の範囲であるフェライト粉末を用いたフェラ
イト樹脂の透磁率μe が著しく向上していることが確認
された。
【0060】そこで、表3及び表4に示すようにNi−
Cu−Zn系フェライト粉末の原料組成を変化させて混
合し、上記工程に従って製造を行い、フェライト粉末サ
ンプル1〜21及びフェライト粉末比較サンプル1〜1
0を得た。なお、仮焼成は、仮焼成温度を800℃とし
て空気中で4時間行い、本焼成は、本焼成温度T2 を各
サンプルのフェライト粉末のバルク状成形時の最適本焼
成温度T1 (℃)に対してT1 +50℃≦T2 ≦T1
150℃となるようにし、空気中で4時間行った。
【0061】
【表3】
【0062】
【表4】
【0063】次に、これらのフェライト粉末サンプル1
〜21とフェライト粉末比較サンプル1〜10を樹脂と
混練してフェライト樹脂サンプル1〜21及びフェライ
ト樹脂比較サンプル1〜10を得た。そして、フェライ
ト樹脂サンプル1〜21及びフェライト樹脂比較サンプ
ル1〜10を射出成形し、成形物の透磁率μ及びキュリ
ー点Tcの測定を行った。尚、透磁率μは1kHzの磁
界を印加した時のものとした。結果を表5,表6に示
す。
【0064】
【表5】
【0065】
【表6】
【0066】表5,6の結果を見てわかるように、フェ
ライト粉末中の原料組成が、図11に示すようなFe2
3 ,ZnO,NiO+CuOの三元組成図上でA(F
23 :49.5mol%,ZnO:31.5mol
%,NiO+CuO:19mol%)、B(Fe2
3 :51mol%,ZnO:31.5mol%,NiO
+CuO:17.5mol%)、C(Fe23 :51
mol%,ZnO:29mol%,NiO+CuO:2
0mol%)、D(Fe23 :49.5mol%,Z
nO:28mol%,NiO+CuO:22.5mol
%)、E(Fe23 :48mol%,ZnO:28m
ol%,NiO+CuO:24mol%)、F(Fe2
3 :48mol%,ZnO:30.5mol%,Ni
O+CuO:21.5mol%)なる6点で囲まれる図
中斜線部で示される領域内に含まれるフェライト樹脂サ
ンプル1〜21においては、透磁率μ及びキュリー点T
cが高いものとなった。
【0067】フェライト樹脂がモールド材料として使用
されるチョークコイル等においては使用時にチョークコ
イル自身が発熱し、その温度が100℃近辺にまで上昇
する可能性がある。よってモールド材料として使用され
るフェライト樹脂のキュリー点は110℃以上であるこ
とが望ましい。さらに、このようなチョークコイルにお
いては、コイルの巻き数を考慮するとモールド材料であ
るフェライト樹脂の透磁率μは25以上であることが望
ましい。表5の結果を見てわかるように、上記のような
フェライト樹脂サンプル1〜21においてはこれらの条
件を充分に満たすことができる。
【0068】また、フェライト樹脂サンプル6〜9とフ
ェライト樹脂比較サンプル6の結果を比較すると、フェ
ライト粉末の図11に示されるような三元組成図上にお
けるFe23 ,ZnO,NiO+CuOの原料組成は
同一であるが、NiOとCuO含有の割合が異なること
からキュリー点Tcの差が生じていることがわかる。さ
らに、フェライト樹脂サンプル10〜14とフェライト
樹脂比較サンプル7においてもフェライト粉末の図11
に示されるような三元組成図上におけるFe23 ,Z
nO,NiO+CuOの原料組成は同一であるが、Ni
OとCuO含有の割合が異なることから透磁率μに差が
生じていることがわかる。すなわち、フェライト樹脂の
キュリー点を110℃以上とし、透磁率μを25以上と
するためには、フェライト樹脂に含有されるフェライト
粉末中のNiO及びCuOの含有量をそれぞれ4mol
%以上とすることが望ましい。
【0069】また、先にも述べたように、本発明者等が
鋭意検討した結果、軟磁性フェライト粉末の仮焼成温度
及び本焼成温度が得られる軟磁性フェライト粉末のイン
ダクタンスに影響し、形成されるフェライト樹脂の透磁
率に影響を及ぼすことを見出した。さらに、本焼成の後
に再焼成を行うこと、及びこの際の再焼成温度が、得ら
れる軟磁性フェライト粉末のインダクタンスに影響し、
フェライト樹脂の透磁率に影響を及ぼすことを見出し
た。
【0070】そこで、仮焼成した後、粉砕し、本焼成を
行って軟磁性フェライト粉末を製造するに際して、フェ
ライト粉末の仮焼成温度を800℃以上とし、本焼成温
度T2 (℃)をバルク状焼成時の最適本焼成温度T1
(℃)に対してT1 +50℃≦T2 ≦T1 +150℃な
る範囲に設定することが好ましい。この時、バルク状焼
成時の最適本焼成温度T1 (℃)は、仮焼成したフェラ
イト粉末をバルク状に成形し、本焼成した際の透磁率が
上限に達する本焼成温度を示している。
【0071】また、上述のようなフェライト粉末の製造
方法においては、本焼成の後に少なくとも1回以上の再
焼成を行い、再焼成温度T3 (℃)を本焼成温度T2
(℃)に対してT2 −100℃≦T3 ≦T2 の範囲とす
ることが好ましい。
【0072】本発明者等は、先ず仮焼成温度について検
討した。仮焼成は、混合した原材料をある程度酸化さ
せ、本焼成時に分解ガスが発生しないようにする目的で
行われるものであり、仮焼成温度が高すぎると、焼成後
の特性に影響を及ぼしてしまう。本発明者等が各種フェ
ライト粉末の仮焼成温度について検討を行った結果、8
00〜1000℃の範囲であれば、焼成後のフェライト
粉末の特性に影響を及ぼさないことが確認された。な
お、仮焼成の際には、160℃/hの昇温速度で昇温
し、所定の仮焼成温度にて保持し、その後徐冷した。
【0073】次に、製造されるフェライト粉末の特性に
本焼成温度が及ぼす影響を調査した。先ず、表7に示す
ような割合でNi−Cu−Zn系フェライト粉末の原材
料を混合し、脱水,乾燥の後、800℃,4時間の条件
で空気中にて仮焼成を行い、これを粉砕し、サンプル1
〜3を得た。
【0074】
【表7】
【0075】そして、この仮焼成した各サンプルの粉末
をバルク状に成形し、本焼成温度を変化させて4時間の
本焼成を行った。なお、本焼成の際にも、160℃/h
の昇温速度で昇温し、所定の本焼成温度にて保持し、そ
の後徐冷した。これらのバルク状のサンプルの透磁率を
測定したところ、本焼成温度と得られるバルク状焼成時
の透磁率には、図12に示されるような関係があること
がわかった。すなわち、いずれのサンプルにおいても、
図12に示されるように、本焼成温度がある温度T1
(℃)に達するまでは透磁率μb は上昇するが、本焼成
温度がT1 (℃)よりも高い場合には透磁率μb は変化
しなくなる。
【0076】そこで、サンプル1〜3のうち、各サンプ
ルの仮焼成後に得られるフェライト粉末をバルク状に成
形し、本焼成した際の透磁率が上限に達する温度、すな
わちバルク状成形時の最適本焼成温度T1 (℃)以上の
本焼成温度により本焼成された各サンプルより得られる
フェライト粉末を用いてフェライト樹脂を製造し、この
フェライト樹脂の射出成形物の透磁率μe を測定した。
なお、サンプル1におけるT1 (℃)は950℃、サン
プル2におけるT1 (℃)は900℃、サンプル3にお
けるT1 (℃)は1150℃である。用いたサンプル1
〜3の本焼成温度と得られたフェライト粉末をバルク状
に焼成した際の透磁率μb 及び該フェライト粉末を用い
たフェライト樹脂の射出成形物の透磁率μe を表8に示
す。
【0077】
【表8】
【0078】表8の結果から、サンプル1〜3の各サン
プルにおいて、得られるフェライト粉末をバルク状に成
形した際の透磁率μb が同一であるにもかかわらず、射
出成形物の透磁率μe に差が生じていることがわかっ
た。
【0079】次に、表8に示されるサンプル1〜3より
形成されるフェライト粉末の硬さ及びインダクタンスを
評価した。フェライト粉末の硬さは目視により評価し
た。また、フェライト粉末のインダクタンスは、図13
に示すようにプラスチック製の注射器1の筒部3に綿巻
銅線を100ターン巻回してコイル2を形成し、この筒
部3内に図示しないフェライト粉末を充填してコイル2
に接続される図示しないインピーダンスアナライザーに
て測定した。なお、この際、筒部3の先端に設けられた
空気穴3aより空気以外が抜けないように筒部3の先端
に脱脂綿5を詰めた。また、筒部3に充填するフェライ
ト粉末の量を20gとし、その充填圧を一定とするため
にピストン部4の先端に設けられるゴム6の後端部6a
がコイルの後端部2aと一致するようにピストン部4を
筒部3に挿入し、フェライト粉末の充填圧を一定とし
た。結果を表8に併せて示す。
【0080】表8の結果から、サンプル1〜3の各サン
プル中の射出成形物の透磁率μe の差は、各サンプルの
フェライト粉末のインダクタンスの差に由来するもので
あることがわかった。また、本焼成温度があまり高いと
フェライト粉末が硬くなってしまい、インダクタンスが
低下することもわかった。
【0081】従って、これらの結果から、透磁率の高い
フェライト樹脂を形成するには、インダクタンスの高い
フェライト粉末を用いれば良く、フェライト粉末の本焼
成温度がフェライト粉末のインダクタンスに大きく影響
することから、インダクタンスの高いフェライト粉末を
得るためには、サンプル1においては、本焼成温度を1
000〜1100℃の範囲とし、サンプル2において
は、本焼成温度を950〜1050℃の範囲とし、サン
プル3においては、本焼成温度を1200〜1300℃
の範囲とすれば良いことがわかった。すなわち、各サン
プル共に、各サンプルをバルク状に成形し、焼成した際
の透磁率が上限に達する本焼成温度、バルク状焼成時の
最適本焼成温度をT1 (℃)とした場合、本焼成温度T
2 (℃)をT1 +50℃≦T2 ≦T1 +150℃の範囲
とすることにより、高いインダクタンスを有するフェラ
イト粉末を得ることが可能であり、透磁率の高いフェラ
イト樹脂を形成できることが確認された。
【0082】また、このように、フェライト粉末のイン
ダクタンスを向上させれば、フェライト樹脂中のフェラ
イト粉末の充填量を上げることなくフェライト樹脂の透
磁率を向上させることができ、該フェライト樹脂の射出
成形性を損なうこともない。
【0083】なお、フェライト樹脂の射出成形性はフェ
ライト粉末の大きさに因るところも大きく、本発明者等
が仮焼成後の粉砕工程の必要性について検討したとこ
ろ、粉砕しなかった場合にはフェライト粉末中に大きな
固まりが残存し、本焼成後の作業性を低下させる原因と
なることがわかった。さらに、フェライト粉末の粒径が
350μm以上になると射出成形性が著しく低下するた
め、粒径が350μm未満のフェライト粉末を使用する
ことが好ましい。
【0084】さらに本発明者等は、本焼成の後の再焼成
が、得られるフェライト粉末及びフェライト樹脂の特性
に及ぼす影響についても調査を行った。すなわち、原材
料の秤量,混合,脱水,乾燥,仮焼成,粉砕,本焼成,
粉砕の工程を経て製造されるフェライト粉末について、
再焼成を繰り返し行い、再焼成がフェライト粉末及びフ
ェライト樹脂の特性に及ぼす影響について調査を行っ
た。
【0085】先ず、表9に示すような割合でNi−Cu
−Zn系フェライト粉末の原材料を混合し、脱水,乾燥
の後、800〜1000℃,4時間の条件で空気中で仮
焼成を行い、これを粉砕し、本焼成を行った後に粉砕し
てサンプル4〜6を得た。この際、本焼成は先に述べた
ような、各サンプルを用いたフェライト樹脂の射出成形
物の透磁率μe が最も高くなるような本焼成温度で行っ
た。すなわち、サンプル4においては1050℃、サン
プル5においては1000℃、サンプル6においては1
200℃とし、それぞれ空気中で4時間焼成を行った。
【0086】次に、上記サンプル4〜6に本焼成と同一
条件で再焼成を0回から6回にわたって行い、各サンプ
ルより得られるフェライト粉末のインダクタンス、該フ
ェライト粉末のバルク状焼成時の透磁率μb 、これらを
用いたフェライト樹脂の射出成形物の透磁率μe の測定
を行った。なお、この際、焼成を行う度に粉砕を行っ
た。これは粉砕工程を省略すると、フェライト粉末が硬
くなってしまい、再焼成の効果の確認が困難となるため
である。結果を表9に示す。
【0087】
【表9】
【0088】表9の結果を見てわかるように、再焼成に
よって各サンプルより得られるフェライト粉末のバルク
状焼成時の透磁率μb が上昇することはないが、該フェ
ライト粉末のインダクタンス,該フェライト粉末を用い
たフェライト樹脂の射出成形物の透磁率μe が上昇する
ことが確認された。射出成形物の透磁率μe において
は、従来のフェライト樹脂の透磁率が18前後であった
のに対して30前後の透磁率を得ることができた。従っ
て、本焼成の後の再焼成によって得られるフェライト粉
末のインダクタンスが向上し、これを用いたフェライト
樹脂の透磁率も向上されることが確認された。
【0089】次に、再焼成温度についての検討を行っ
た。すなわち、サンプル4〜6について再焼成温度を変
更して再焼成を行い、各サンプルのフェライト粉末及び
これを用いたフェライト樹脂の特性を評価した。例えば
サンプル5の本焼成温度は1000℃であるが、再焼成
温度を本焼成温度よりも150℃低い850℃、100
℃低い900℃、50℃低い950℃として繰り返し再
焼成を行った。なお、この際、焼成を行う度に粉砕を行
うものとした。その結果、再焼成温度を900℃,95
0℃とした場合においては、再焼成の効果が見られ、フ
ェライト粉末及びフェライト樹脂の特性が向上された
が、再焼成温度を850℃とした場合においては再焼成
の効果が見られなかった。また、サンプル4,6におい
ても同様であり、再焼成温度が、本焼成温度よりも10
0℃低い温度よりも低いものである場合においては、再
焼成の効果が見られなかった。このような再焼成による
効果は、粉砕時にフェライト粉末に加わる歪みが焼成時
の熱によって緩和されることによるものと思われる。従
って、再焼成温度があまり低いと効果が得られないこと
が推察される。すなわち、本焼成の後の再焼成の際の再
焼成温度T3 (℃)を本焼成温度T2 (℃)に対してT
2 −100℃≦T3 ≦T2 の範囲とすることにより、イ
ンダクタンスの高いフェライト粉末を得ることが可能で
あり、透磁率の高いフェライト樹脂を形成できることが
確認された。
【0090】さらに、本発明で使用する軟磁性フェライ
ト粉末においては、その粒度分布を規制すること、粒径
毎に焼成温度を決定することにより、形成されるフェラ
イト樹脂の射出成形性,透磁率を向上させることが可能
である。
【0091】すなわち、軟磁性フェライト粉末を高分子
材料に混練してなるフェライト樹脂においては、軟磁性
フェライト粉末の平均粒径GA が、70μm≦GA ≦1
30μmであり、且つ粒径G1 ,G2 ,G3 ,G4 がG
1 <G2 <G3 <G4 なる関係を有する軟磁性フェライ
ト粉末が含有されており、粒径G1 がG1 ≦GA −50
μmである軟磁性フェライト粉末が0〜30重量%、粒
径G2 がGA −50μm<G2 ≦GA である軟磁性フェ
ライト粉末が30〜50重量%、粒径G3 がGA <G3
≦GA +50μmである軟磁性フェライト粉末が30〜
50重量%、粒径G4 がGA +50μm<G4 である軟
磁性フェライト粉末が0〜20重量%の割合で含有され
ていることが好ましい。この時、フェライト樹脂中の軟
磁性フェライト粉末の粒度分布が上記範囲より外れ、粒
径の小さなものに偏っていると射出成形時に粉末の分離
が発生し、また粒度分布が粒径の大きいものに偏ってい
るとフェライト樹脂の流動性が低下し、射出成形性が低
下してしまう。
【0092】また、粒径G1 ,G2 ,G3 ,G4 である
軟磁性フェライト粉末のそれぞれの焼成温度T1 ,T
2 ,T3 ,T4 がT4 ≦T3 ≦T2 ≦T1 であることが
好ましい。
【0093】以下、フェライト樹脂中の軟磁性フェライ
ト粉末の粒径及び粒度分布と形成されるフェライト樹脂
の射出成形性と透磁率の関係について説明する。これら
の関係を調べるために、本発明者等は次のような実験を
行ったが、この実験においては、フェライト樹脂として
Ni−Cu−Zn系フェライト樹脂を用いた。該フェラ
イト樹脂は、先ず、フェライト粉末を作製し、これを高
分子材料に混練することにより得た。
【0094】上記フェライト粉末は、原材料の秤量,混
合,脱水,乾燥,仮焼成,粗粉砕,焼成,粉砕の工程を
経て作製した。この際用いたフェライトの組成は表3の
サンプル1(表7のサンプル1,4に同じ)で、焼成温
度を1050℃とし、得られたフェライト粉末をその粒
径G5 がG5 ≦50μm,粒径G6 が50μm<G6
100μm,粒径G7 が100μm<G7 ≦150μ
m,粒径G8 が150μm<G8 μmである4分級に分
級した。
【0095】先ず、フェライト粉末の粒径と形成される
フェライト樹脂の射出成形性と透磁率の関係を調べるた
めに、上記の分級したフェライト粉末をそれぞれ高分子
材料に混練してフェライト樹脂を形成した。次にこれら
フェライト樹脂を射出成形し、その射出成形性を評価
し、射出成形物の透磁率をトロイダルリングを用いて測
定した。それと同時に分級したフェライト粉末のそれぞ
れのインダクタンスも測定した。結果を表10に示す。
なお、インダクタンスの測定方法は上述した通りであ
る。
【0096】
【表10】
【0097】表10の結果をみてわかるように、フェラ
イト粉末の粒径があまり小さいと、フェライト粉末自体
のインダクタンスが良好でなく、射出成形物中にフェラ
イト粉末の分離が発生し、射出成形性が良好でなかっ
た。また、フェライト粉末の粒径があまり大きくても形
成されるフェライト樹脂の流動性が悪く、射出成形する
ことが不可能であった。
【0098】次に、フェライト粉末の粒度分布と形成さ
れるフェライト樹脂の射出成形性と透磁率の関係を調べ
るために、上記の分級したフェライト粉末を表11に示
されるような割合で混合し、これを高分子材料に混練し
てフェライト樹脂(サンプル11〜17,比較サンプル
11〜14)を形成した。
【0099】
【表11】
【0100】表11に示されるサンプル11〜17及び
比較サンプル11〜14を用いて射出成形を行い、その
射出成形性を評価し、射出成形物の透磁率を測定した。
それと同時に各サンプルに用いたフェライト粉末のイン
ダクタンスの測定も行った。結果を表12に示す。な
お、これらの平均粒径GA と粒度分布を併せて示す。
【0101】
【表12】
【0102】表12の結果を見てわかるように、各サン
プルのように、軟磁性フェライト粉末の平均粒径GA
70μm≦GA ≦130μmであり、粒径G1 ,G2
3,G4 がG1 <G2 <G3 <G4 なる関係を有する
軟磁性フェライト粉末が含有されており、粒径G1 がG
1 ≦GA −50μmである軟磁性フェライト粉末が0〜
30重量%、粒径G2 がGA −50μm<G2 ≦GA
ある軟磁性フェライト粉末が30〜50重量%、粒径G
3 がGA <G3 ≦GA +50μmである軟磁性フェライ
ト粉末が30〜50重量%、粒径G4 がGA +50μm
<G4 である軟磁性フェライト粉末が0〜20重量%の
割合で含有されているフェライト樹脂においては、軟磁
性フェライト粉末のインダクタンスが高く、且つ射出成
形性が良好で射出成形物の透磁率も良好である。一方、
上記の範囲より外れた割合で軟磁性フェライト粉末が構
成されている各比較サンプルにおいては、軟磁性フェラ
イト粉末のインダクタンス,射出成形性及び射出成形物
の透磁率が良好でなく、特に粒径の小さいフェライト粉
末を多く含む比較サンプル11,12,13において
は、射出成形物中でフェライト粉末の分離が発生し、粒
径の大きなフェライト粉末を多く含む比較サンプル14
においては流動性の低下が起き、成形性の著しい低下が
生じた。
【0103】なお、フェライト粉末の粒径が大きくなる
とフェライト樹脂の射出成形物は脆くなるが、使用可能
なフェライト粉末の粒径の上限を調査したところ、粒径
350μm程度までが使用可能であることがわかった。
【0104】よって、フェライト樹脂中のフェライト粉
末の平均粒径GA が、70≦GA ≦130μmであり、
フェライト粉末中に粒径G1 ,G2 ,G3 ,G4 がG1
<G2 <G3 <G4 なる関係を有するフェライト粉末が
含有されており、粒径G1 がG1 ≦GA −50μmであ
るフェライト粉末が0〜30重量%、粒径G2 がGA
50μm<G2 ≦GA であるフェライト粉末が30〜5
0重量%、粒径G3 がGA <G3 ≦GA +50μmであ
るフェライト粉末が30〜50重量%、粒径G4 がGA
+50μm<G4 であるフェライト粉末が0〜20重量
%の割合で含有されている場合において、射出成形性が
良好で透磁率の高いフェライト樹脂を得ることが可能で
あることが確認された。
【0105】次に、フェライト粉末の焼成温度とフェラ
イト粉末のインダクタンスの関係及び形成されるフェラ
イト樹脂の透磁率の関係について調査した。
【0106】軟磁性フェライト粉末は、前述の実験と同
様に、表3のサンプル1(表7のサンプル1,4に同
じ)の組成で、原材料の秤量,混合,脱水,乾燥,仮焼
成,粗粉砕,焼成,粉砕の工程を経て作製した。この
際、焼成温度を950℃,1000℃,1050℃,1
100℃,1150℃とし、それぞれをサンプルA,
B,C,D,Eとした。そして得られた各サンプルの一
部をその粒径G1 がG1 ≦50μm,粒径G2 が50μ
m<G2 ≦100μm,粒径G3 が100μm<G3
150μm,粒径G4 が150μm<G4 ≦350μm
である4分級に分級した。
【0107】そして、分級していない各サンプルのイン
ダクタンスを測定し、各サンプルをバルクとした場合の
透磁率を測定し、また各サンプルを高分子材料と混練し
たフェライト樹脂の射出成形物の透磁率を測定した。さ
らに、分級した各サンプルのそれぞれのインダクタンス
を測定した。結果を表13に示す。
【0108】
【表13】
【0109】表13の結果を見てわかるように、各サン
プルのフェライトをバルクとした場合の透磁率は各サン
プル間で同等であるが、各サンプルを用いたフェライト
樹脂の射出成形物の透磁率は大きく異なっている。これ
は、各サンプルのインダクタンスの差に起因するもので
あり、これは各サンプルの焼成温度の差によるものと思
われる。
【0110】一方、分級した各サンプルのインダクタン
スを見てみると、同一の焼成温度によって作成したフェ
ライト粉末中において、その粒径によりインダクタンス
が異なっていることがわかる。すなわち、その粒径毎に
インダクタンスを向上させる最適な焼成温度が有り、そ
の傾向としては、フェライト粉末の粒径G1 ,G2 ,G
3 ,G4 がG1 <G2 <G3 <G4 である時、粒径G
1 ,G2 ,G3 ,G4 であるフェライト粉末のそれぞれ
の焼成温度T1 ,T2 ,T3 ,T4 がT4 ≦T3≦T2
≦T1 である傾向があることがわかる。
【0111】よって、フェライト樹脂の透磁率を現行の
フェライト樹脂の透磁率(16〜18)よりも高くする
ためには、フェライト樹脂中のフェライト粉末のインダ
クタンスを向上させれば良く、サンプルC,D,Eのフ
ェライト粉末を用い、更に向上させるためには、サンプ
ルC,D,E中の分級された軟磁性フェライト粉末を組
み合わせれば良いことがわかる。
【0112】そこで、サンプルEの粒径G1 がG1 ≦5
0μmであるフェライト粉末、サンプルDの粒径G2
50<G2 ≦100μm,粒径G3 が100<G3 ≦1
50μmであるフェライト粉末、サンプルCの粒径G4
が150<G4 ≦350μmであるフェライト粉末を表
14に示す割合で混合しフェライト粉末を得、このフェ
ライト粉末のインダクタンスを測定し、このフェライト
粉末を高分子材料と混練して得られたフェライト樹脂の
射出成形物の透磁率を測定した。結果を表14に示す。
【0113】
【表14】
【0114】このフェライト樹脂の透磁率は30であ
り、現行のフェライト樹脂の透磁率よりも大きく向上さ
せることができた。よって、フェライト樹脂中の軟磁性
フェライト粉末の粒径G1 ,G2 ,G3 ,G4 がG1
2 <G3 <G4 である時、粒径G1 ,G2 ,G3 ,G
4 である軟磁性フェライト粉末のそれぞれの焼成温度T
1 ,T2 ,T3 ,T4 をT4 ≦T3≦T2 ≦T1 とした
場合に形成されるフェライト樹脂の透磁率が向上される
ことが確認された。
【0115】上述の軟磁性フェライト粉末を用いてフェ
ライト樹脂を製造する場合、高透磁率化を図り射出成形
性を向上させるためには、軟磁性フェライト粉末と熱可
塑性樹脂との親和性を高めることが必要である。
【0116】そのための手段としては、例えば、何らか
の表面処理を施すことによって軟磁性フェライト粉末の
表面を改質することが考えられる。ただし、表面処理工
程を経る間にフェライト粉末が本来有しているインダク
タンスを劣化させてしまっては透磁率の向上は望めない
ので、インダクタンスを劣化させないように条件を適正
化することが必要である。
【0117】そこで、軟磁性フェライト粉末,表面処理
剤,純水を湿式撹拌機によって混合して得られた処理ス
ラリーを脱水濾過,乾燥して凝集フェライトを得た後、
この凝集フェライトを粉砕することにより表面改質軟磁
性フェライト粉末を作製し、これを軟磁性フェライト粉
末として用いることが好ましい。
【0118】表面処理剤としては、無機質材料であるフ
ェライト粉末と熱可塑性樹脂を化学結合により連結させ
る,いわゆるカップリング剤等が使用でき、中でもシラ
ンカップリング剤が好ましい。このとき使用されるシラ
ンカップリング剤としては特に限定されず、用いられる
高分子材料の種類によって適宜選択すればよい。
【0119】さらに、上記表面処理剤(シランカップリ
ング剤)の混合率は0.02〜0.10重量%であるこ
とが好ましい。この混合率はフェライト粉末の粒径や比
表面積によって多少異なるが、少なすぎると表面処理の
効果が発揮されないため、フェライト樹脂スラリーの流
動性が改善されず射出成形が困難となるため、0.02
重量%を下限とする、。逆に多すぎると、フェライト粉
末への吸着量が飽和し過剰なシランカップリング剤は見
かけ上の流動性を悪化させるため、0.10重量%を上
限とする。
【0120】図14にシランカップリング剤の添加量と
フェライト粉末への吸着量との関係を示すが、0.1重
量%を越えると、フェライト粉末への吸着量が飽和して
いることがわかる。
【0121】また、上記表面処理剤として、ステアリン
酸,ミリスチン酸,オレイン酸,脂肪酸エステルから選
ばれる少なくとも1種、もしくは、ステアリン酸のナト
リウム塩,ステアリン酸のカリウム塩,ミリスチン酸の
ナトリウム塩,ミリスチン酸のカリウム塩,オレイン酸
のナトリウム塩,オレイン酸のカリウム塩,脂肪酸エス
テルのナトリウム塩,脂肪酸エステルのカリウム塩から
選ばれる少なくとも1種を用いてもよい。
【0122】この場合、表面処理剤(上述の脂肪酸又は
脂肪酸塩)の混合率は0.01〜0.05重量%である
ことが好ましい。この混合率はフェライト粉末の粒径や
比表面積によって多少異なるが、0.01重量%未満で
あると表面改質効果が十分に発揮されないため、フェラ
イト粉末には熱可塑性樹脂との親和性が十分に付加され
ず、得られるフェライト樹脂スラリーは流動性が不十分
なものとなる。一方、混合率が0.05重量%を越える
場合には、フェライト粉末に表面処理剤が過度に付着し
ていることによって撹拌機が滑る(いわゆるスリップを
起こす)ようになり、見かけ上の流動性が低下してやは
り均一な混練は難しい。また、これにより得られるフェ
ライト樹脂も透磁率が低いものとなる。
【0123】図15に脂肪酸の混合率と混練トルクとの
関係を示し、図16に脂肪酸塩の混合率と混練トルクと
の関係を示すが、混合率が0.05重量%を越えると混
練トルクが急激に低下し、スラリーとしての分散性が劣
化していることがわかる。
【0124】なお、フェライト粉末,表面処理剤,純水
を混合する際には、湿式撹拌機(いわゆるアジター)を
用いて15〜30分間混合することが好ましい。上記ア
ジターによる混合は、従来行われているボールミルによ
る混合に比べてフェライト粉末に与える衝撃が小さく、
フェライト粉末の形状劣化を小さく抑えられる。したが
って、フェライト粉末は良好な形状を維持したまま表面
改質されることとなる。
【0125】また、混合時間は短かすぎると滑剤が均一
に分散しなかったり、フェライト粉末に対して吸着不足
となるので、最低15分は処理を行う。逆に、吸着平衡
に達した後、処理を続けても吸着量は増加しないので、
30分を上限とする。
【0126】表面処理剤としてシランカップリング剤を
用いた場合、混合時間とフェライト粉末への吸着量との
関係は図17に示されるようになり、30分以上混合し
ても吸着量に変化がないことがわかる。
【0127】さらに、図18は上記脂肪酸又は脂肪酸塩
を表面処理剤として表面処理を行った際の処理時間と混
練トルクとの関係を示すものである。処理時間が15分
以下では混練トルクが高く、滑剤が均一に分散されてい
ないことがわかる。また、処理時間が30分を越えると
混練トルクが安定し、均一に分散していることがわか
る。
【0128】なお、上記脂肪酸又は脂肪酸塩を表面処理
剤として表面処理を行った場合、処理温度は、70℃以
上とすることが好ましい。
【0129】上述のように混合して得られた処理スラリ
ーは、脱水濾過,乾燥して凝集フェライトとするのであ
るが、ここで、シランカップリング剤を用いて表面処理
された処理スラリーを乾燥する際、乾燥温度は、80〜
150℃とすることが好ましい。乾燥温度が低すぎると
水分を蒸発させるのに時間がかかりすぎて作業効率が悪
く、乾燥温度を高くしすぎるとシランカップリング剤が
分解してしまうためである。
【0130】そして、乾燥した凝集フェライトを粉砕す
る際には、らいかい機を用いて2〜5分間粉砕すること
が好ましい。上記粉砕は、乾式混合機(いわゆるスーパ
ーミキサー)で行ってもよい。このスーパーミキサーは
らいかい機よりも粉砕能力に優れることから、粉砕時間
は50〜100秒に設定すればよい。
【0131】凝集フェライトを粉砕する際に、上述のよ
うに粉砕時間も適正化することによって、フェライト粉
末の微細化,形状劣化が防止できる。
【0132】
【作用】少なくとも軟磁性フェライト粉末,熱可塑性樹
脂が混練されてなるフェライトスラリーを射出成形して
フェライト樹脂を作製するに際して、流動値が0.2m
l/s以上のフェライトスラリーを用いると、フェライ
トスラリーが良好な成形性を発揮し、強度,形状に優れ
たフェライト樹脂が得られる。
【0133】このときフェライトスラリーに滑剤を添加
すると、フェライトスラリーは、この滑剤によって流動
性が付加される。これにより、フェライトスラリーは、
軟磁性フェライト粉末の混合率を増大させても上記流動
値を容易に維持し、強度,形状に優れるとともにフェラ
イト含有率が高く高透磁率を有するフェライト樹脂とな
る。滑剤としては、脂肪酸,脂肪酸エステル,脂肪酸
塩,フッ素系化合物,シリコン系化合物が好適である。
【0134】なお、滑剤によって上記作用を得るには、
フェライトスラリーの各成分の混合量を、軟磁性フェラ
イト粉末の混合重量をP,熱可塑性樹脂の混合重量をB
1 ,滑剤の混合重量をB2 としたときに(B1 +B2
/Pが0.06〜0.11の範囲となり、B2 /Pが
0.002〜0.03の範囲となるように設定する必要
がある。
【0135】また、上記滑剤は、軟磁性フェライト粉末
の混合重量をP,滑剤の混合重量をB2 としたときにB
2 /Pが0.0005〜0.002としてもよく、これ
によって、作成されたフェライト樹脂の強度が向上す
る。
【0136】
【実施例】以下、本発明の好適な実施例について実験結
果に基づいて説明する。
【0137】軟磁性フェライト粉末の表面処理 粒径45〜350μmのNi−Cu−Zn系軟磁性フェ
ライト粉末1000g、表面処理剤となるシランカップ
リング剤(商品名 A1100)50g、純水2リット
ルをアジターに投入し、撹拌,混合した。そして、この
混合物を脱水ろ過機を用いて、充分に水分を取り除き、
乾燥機に入れてさらに水分を取り除き所定の大きさに粉
砕した。このようにして得られた表面処理済軟磁性フェ
ライト粉末を用いて以下の実施例,比較例を行った。
【0138】実験1 本実験においては、フェライトスラリーの流動性及び透
磁率について検討するものとする。
【0139】先ず、滑剤として脂肪酸を用いて、以下の
ようにしてフェライトスラリー、さらにはフェライト樹
脂コアを作製した。
【0140】上述のようにして表面処理を施した軟磁性
フェライト粉末とナイロン#6樹脂(ユニチカ社製、商
品名A1020LP)及び滑剤となるステアリン酸を予
備混合、加熱混練してフェライトスラリーを調製した。
なお、フェライトスラリーは、P,B1 /P,B2
P,(B1 +B2 )/P(P:軟磁性フェライト粉末の
混合重量,B1 :熱可塑性樹脂の混合重量,B2 :滑剤
の混合重量)が表15に示す値となるように調製した。
【0141】このフェライトスラリーを射出成形して、
内径18mm,外径25mm,高さ5mmの円筒型フェ
ライト樹脂コア(実施例1,2)を得た。
【0142】
【表15】
【0143】次に、滑剤としてフッ素系化合物を用い
て、以下のようにしてフェライトスラリー、さらにはフ
ェライト樹脂コアを作製した。
【0144】表面処理を施した軟磁性フェライト粉末,
ナイロン樹脂及び滑剤となるフッ素系化合物を予備混
合、加熱混練してフェライトスラリーを調製した。な
お、フェライトスラリーは、P,B1 /P,B2 /P,
(B1 +B2 )/P(P:軟磁性フェライト粉末の混合
重量,B1 :熱可塑性樹脂の混合重量,B2 :滑剤の混
合重量)が表16に示すような値となるように調製し
た。
【0145】このフェライトスラリーを射出成形して内
径18mm,外径25mm,高さ5mmの円筒型フェラ
イト樹脂コア(実施例3,4)を作製した。
【0146】
【表16】
【0147】さらに、滑剤として脂肪酸塩を用いて、以
下のようにしてフェライトスラリー、さらにはフェライ
ト樹脂コアを作製した。
【0148】表面処理を施した軟磁性フェライト粉末,
ナイロン樹脂及び滑剤となるステアリン酸ナトリウムを
混合、加熱混練してフェライトスラリーを調製した。な
お、フェライトスラリーは、P,B1 /P,B2 /P,
(B1 +B2 )/P(P:軟磁性フェライト粉末の混合
重量,B1 :熱可塑性樹脂の混合重量,B2 :滑剤の混
合重量)が表17に示すような値となるように調製し
た。
【0149】このフェライトスラリーを射出成形して内
径18mm,外径25mm,高さ5mmの円筒型フェラ
イト樹脂コア(実施例5,6)を作製した。
【0150】
【表17】
【0151】また、滑剤としてシリコン系化合物を用い
て、以下のようにしてフェライトスラリー、さらにはフ
ェライト樹脂コアを作成した。
【0152】表面処理を施した軟磁性フェライト粉末,
熱可塑性樹脂及び滑剤となるカルボキシ変性シリコンを
混合、加熱混練してフェライトスラリーを調製した。こ
のフェライトスラリーを射出成形して内径18mm,外
径25mm,高さ5mmの円筒型フェライト樹脂コアを
作製した。なお、フェライトスラリーは、P, B1
P,B2 /P,(B1 +B2 )/P(P:軟磁性フェラ
イト粉末の混合重量,B1 :熱可塑性樹脂の混合重量,
2 :滑剤の混合重量)が表18に示す値となるように
調製した。
【0153】このフェライトスラリーを射出成形して内
径18mm,外径25mm,高さ5mmの円筒型フェラ
イト樹脂コア(実施例7,8)を作製した。
【0154】
【表18】
【0155】さらにまた、滑剤を用いずに、以下のよう
にしてフェライトスラリー、さらにはフェライト樹脂コ
アを作製した。
【0156】表面処理を施した軟磁性フェライト粉末,
熱可塑性樹脂を混合、加熱混練してフェライトスラリー
を調製した。なお、フェライトスラリーは、P, B1
/P,B2 /P,(B1 +B2 )/P(P:軟磁性フェ
ライト粉末の混合重量,B1:熱可塑性樹脂の混合重
量,B2 :滑剤の混合重量)が表19に示す値となるよ
うに調製した。
【0157】このフェライトスラリーを射出成形して、
内径18mm,外径25mm,高さ5mmの円筒型フェ
ライト樹脂コア(比較例1)を作製した。
【0158】
【表19】
【0159】そして、上述の実施例1〜実施例8及び比
較例1において作製されるフェライト樹脂について、フ
ェライトスラリーの流動性及び透磁率を測定した。その
結果を表20に示す。なお、流動性の測定は、島津製作
所社製,商品名フローテスターCFT−500を用い、
ダイスの長さを2mm,ダイスの直径を1mm,荷重を
1078Paに設定して行った。
【0160】また、透磁率の測定は、JIS2561に
準じて行った。すなわち、作製したフェライト樹脂コア
に0.3mm径のエナメル線を20回巻回して周波数1
kHzの電流を供給したときの値をヒューレットパッカ
ード社製,商品名インピーダンスアナライザー4192
Aを用いて測定した。
【0161】
【表20】
【0162】表20を見て明らかなように、実施例1〜
実施例8において調製したフェライトスラリー,すなわ
ち滑剤が混合されているフェライトスラリーは、いずれ
も比較例1において調製した滑剤が混合されていないフ
ェライトスラリーに比べて高い流動性を示し、滑剤とし
てフッ素系化合物を用いた場合には5倍、脂肪酸,脂肪
酸塩,シリコン系化合物を用いた場合には、10倍もの
流動性を示す。特に、実施例2,実施例4,実施例6,
実施例8において調製したフェライトスラリーは、(B
1 +B2 )/Pが0.06と低いにもかかわらず、同じ
滑剤で(B1 +B2 )/Pが0.11で0.11にて調
製したフェライトスラリーとほぼ同程度の流動性を示
す。
【0163】このことから、B2 /Pの値が0.002
〜0.03となるように滑剤を用いることは流動性が高
く、且つ軟磁性フェライト粉末の混合率が高いフェライ
トスラリーの調製を可能にし、透磁率の高いフェライト
樹脂を高い良品率で製造する上で有効であることがわか
った。
【0164】実験2 本実験では、フェライト樹脂の強度について検討を行っ
た。先ず、滑剤として脂肪酸又はフッ素系化合物を用い
て、以下のようにしてフェライトスラリー、さらにはフ
ェライト樹脂コアを作製した。
【0165】上述のようにして表面処理を施した軟磁性
フェライト粉末とナイロン#6樹脂(ユニチカ社製、商
品名A1020LP)及び滑剤となるステアリン酸又は
フッ素系化合物を予備混合、加熱混練してフェライトス
ラリーを調製した。なお、フェライトスラリーは、(B
1 +B2 )/P(P:軟磁性フェライト粉末の混合重
量,B1 :熱可塑性樹脂の混合重量,B2 :滑剤の混合
重量)を0.08とし、B2 /Pの値を種々に変化させ
たものを調製した。
【0166】このとき、上記フェライトスラリーにおい
て、B2 /Pの値と流動性との関係を調べたところ、図
19のようになった。なお、流動性の測定条件は実験1
で行ったものと同様である。また、図中、滑剤として脂
肪酸を用いたものを○印で示し、滑剤としてフッ素系化
合物を用いたものを△印で示す。上記B2 /Pの値が
0.0005未満では流動性が低くなりすぎ、射出成形
が困難となるため、上記B2 /Pの値は0.0005以
上とすべきことがわかる。
【0167】さらに、上記フェライトスラリーを射出成
形してフェライト樹脂コアを得た。ここでは、上記フェ
ライト樹脂コアを図20に示すような四角柱のテストピ
ース11として作成し、L=36mm,b=4.0±
0.1mm,d=3.0±0.1mmとした。そして、
作製されたテストピース11について、図21に示す試
験具を用いて曲げ強さを測定した。すなわち、テストピ
ース11を2つの支点12,13で支え、そのテストピ
ース11に荷重14を懸けることによって測定した。
【0168】この結果をB2 /Pの値と曲げ強さとの関
係として図22に示す。なお、図中、滑剤として脂肪酸
を用いたものを○印で示し、滑剤としてフッ素系化合物
を用いたものを△印で示す。これより、軟磁性フェライ
ト粉末に対する滑剤の添加量が少ないほど、曲げ強さに
優れていることがわかる。特に、軟磁性フェライト粉末
に対する滑剤の添加量が0.002以下であると、作製
されたフェライト樹脂コアの曲げ強さを250kgf /cm
2 以上とすることができることがわかる。
【0169】したがって、フェライト樹脂の機械的強度
を重視したい場合には、滑剤の混合重量B2 と軟磁性フ
ェライト粉末の混合重量Pとの比B2 /Pを0.000
5〜0.002とすることが好ましいことがわかった。
【0170】実験3 本実験では、フェライトスラリーを調製するに際し、滑
剤を添加するタイミングについて検討を行った。
【0171】表面処理を施した軟磁性フェライト粉末,
ナイロン樹脂,滑剤となるステアリン酸を予備混合し、
得られた予備混合物をニーダに投入して加熱混練し、フ
ェライトスラリーを調製した。なお、フェライトスラリ
ーは、ナイロン樹脂と軟磁性フェライト粉末の混合比B
1 /Pが0.06、ステアリン酸と軟磁性フェライト粉
末の混合比B2 /Pが0.002〜0.005となるよ
うに調製した。
【0172】このフェライトスラリーを射出成形して内
径18mm,外径25mm,高さ5mmの円筒型フェラ
イト樹脂コアを作製した。
【0173】次に、表面処理を施した軟磁性フェライト
粉末,ナイロン樹脂を予備混合した。得られた予備混合
物をニーダに投入して1時間加熱混練した後、さらに滑
剤となるステアリン酸をニーダに投入し、1時間加熱混
練してフェライトスラリーを調製した。なお、フェライ
トスラリーは、ナイロン樹脂と軟磁性フェライト粉末の
混合比B1 /Pが0.06、ステアリン酸と軟磁性フェ
ライト粉末の混合比B 2 /Pが0.002〜0.005
となるように調製した。
【0174】このフェライトスラリーを射出成形して内
径18mm,外径25mm,高さ5mmの円筒型フェラ
イト樹脂コアを作製した。
【0175】このようにして作製したフェライト樹脂コ
アについて上述と同様にして初透磁率μ´を測定した。
その結果を表21に示す。
【0176】
【表21】
【0177】表21を見てわかるように、作製されたフ
ェライト樹脂コアは、いずれも高い初透磁率を示すが、
特に予備混合時に軟磁性フェライト粉末,熱可塑性樹脂
とともに滑剤を混合したフェライト樹脂は高い透磁率を
示す。このことから、滑剤は、加熱混練の途中で添加す
るよりも予備混合時に軟磁性フェライト粉末,熱可塑性
樹脂とともに予め混合しておく方が、高い透磁率のフェ
ライト樹脂を得る上で好ましいことがわかった。
【0178】実験4 本実施例では、フェライト樹脂のリサイクルについて検
討を行った。 表面処理を施した軟磁性フェライト粉
末,ナイロン樹脂を予備混合した。得られた予備混合物
をニーダに投入して温度250℃,1時間加熱混練した
後、さらに滑剤となるステアリン酸をニーダに投入し、
1時間加熱混練した。この混練物をクラッシャー(樹脂
粉砕機)に投入して成型用の大きさ(3φmm×5m
m)とし、フェライトスラリーを得た。なお、フェライ
トスラリーは、B1 +B2 /Pが0.06となるように
調製した。
【0179】調製したフェライトスラリーを、先ず、射
出成形機(三菱重工業社製)にて円筒型フェライト樹脂
コアを射出成形し、該成形体をリサイクル回数0のフェ
ライト樹脂とした。なお、射出成形は、保圧を78.3
MPaに設定して行った。このフェライト樹脂につい
て、透磁率,成形性,強度の評価を行った。
【0180】評価後、フェライト樹脂をクラッシャーに
より再粉砕した。そして、この再粉砕物に、ナイロン樹
脂を予備混合した。得られた予備混合物をニーダに投入
して上述と同条件で1時間加熱混練した後、さらに滑剤
となるステアリン酸をニーダに投入し、1時間加熱混練
した。さらに、この混練物をクラッシャー(樹脂粉砕
機)に投入して成形用の大きさ(3φmm×5mm)と
し、フェライトスラリーを得た。
【0181】調製したフェライトスラリーを射出成形機
(三菱重工業社製)にて円筒型フェライト樹脂コアを射
出成形し、該成形体をリサイクル回数1のフェライト樹
脂とした。このフェライト樹脂について、透磁率,成形
性,強度の評価を行った。
【0182】さらにこのリサイクル回数1のフェライト
樹脂を上述と同様にして再粉砕、ナイロン樹脂,滑剤と
の加熱混練,射出成形を繰り返し行うことでリサイクル
回数2〜リサイクル回数5のフェライト樹脂を作製し、
透磁率の測定,成形性,強度の評価を行った。
【0183】各フェライト樹脂の評価結果を表22に示
す。
【0184】
【表22】
【0185】表22からわかるように、フェライト樹脂
はリサイクル2回までは初期の強度,透磁率,成形性を
ほぼ維持している。しかし、リサイクルが3回目になる
と、成形性が不足し、強度の不十分な成形体しか得られ
なくなる。(このとき、保圧を±30MPaで変化させ
たがやはり十分な成形性は得られなかった。)そして、
リサイクル回数が4回,5回に至ると、成形性はさらに
劣化し、成形体を得ることすら困難になる。
【0186】したがって、このことからフェライト樹脂
は、上記方法によってリサイクルが可能であるが、その
リサイクル回数は2回までに抑えることが好ましいこと
がわかった。
【0187】
【発明の効果】以上の説明からも明らかなように、本発
明においては、軟磁性フェライト粉末,熱可塑性樹脂,
滑剤を、その混合重量が所定の条件を満たすように混
合,混練してフェライトスラリーを調製し、該フェライ
トスラリーを射出成形することによってフェライト樹脂
を作製するので、混練機,射出成形機等の製造装置を摩
耗させずに、良好な形状を有し且つ透磁率の高いフェラ
イト樹脂を得ることが可能である。
【0188】また、本発明を適用することによって、強
度の大きいフェライト樹脂を得ることも可能であり、加
工時の割れや欠けが防止できる。また、落下や振動等の
対衝撃性も向上するため、信頼性の高い成形品を提供す
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】滑剤としてステアリン酸を用いた場合につい
て、フェライトスラリーの(B1+B2 )/Pとフェラ
イト樹脂の透磁率の関係を示す特性図である。
【図2】滑剤としてフッ素系化合物を用いた場合につい
て、フェライトスラリーの(B1 +B2 )/Pとフェラ
イト樹脂の透磁率の関係を示す特性図である。
【図3】滑剤として脂肪酸塩を用いた場合について、フ
ェライトスラリーの(B1 +B2 )/Pとフェライト樹
脂の透磁率の関係を示す特性図である。
【図4】滑剤としてシリコン系化合物を用いた場合につ
いて、フェライトスラリーの(B1 +B2 )/Pとフェ
ライト樹脂の透磁率の関係を示す特性図である。
【図5】軟磁性フェライト粉末として焼成温度1000
℃の軟磁性フェライト粉末を用いた場合について、フェ
ライトスラリーの(B1 +B2 )/Pと流動値の関係を
示す特性図である。
【図6】軟磁性フェライト粉末として焼成温度950℃
の軟磁性フェライト粉末を用いた場合について、フェラ
イトスラリーの(B1 +B2 )/Pと流動値の関係を示
す特性図である。
【図7】フェライトスラリーのB2 /Pと流動値の関係
を示す特性図である。
【図8】滑剤としてフッ素系化合物,脂肪酸を用いた場
合のフェライトスラリーの流動値を示す特性図である。
【図9】滑剤として脂肪酸塩を用いた場合のフェライト
スラリーの流動値を示す特性図である。
【図10】滑剤としてシリコン系化合物を用いた場合の
フェライトスラリーの流動値を示す特性図である。
【図11】Fe23 ,ZnO,NiO+CuOの三元
組成図である。
【図12】フェライト粉末の本焼成温度と該フェライト
粉末をバルク状に成形した場合の透磁率μb の関係を示
す図である。
【図13】フェライト粉末のインダクタンスの測定に用
いる測定装置を示す側面図である。
【図14】シランカップリング剤の混合量とフェライト
粉末への吸着量の関係を示す特性図である。
【図15】脂肪酸系滑剤の混合量と混練トルクの関係を
示す特性図である。
【図16】脂肪酸塩系滑剤の混合量と混練トルクの関係
を示す特性図である。
【図17】混合時間とフェライト粉末への吸着量の関係
を示す特性図である。
【図18】混合時間と混練トルクの関係を示す特性図で
ある。
【図19】滑剤の添加量と流動性との関係を示す特性図
である。
【図20】曲げ強さを測定するためのテストピースを示
す正面図及び側面図である。
【図21】曲げ強さを測定するための試験具を示す模式
図である。
【図22】滑剤の添加量と曲げ強さとの関係を示す特性
図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 H01F 1/34 (72)発明者 伊藤 洋 東京都品川区北品川6丁目7番35号 ソニ ー株式会社内 (72)発明者 高橋 芳美 東京都品川区北品川6丁目7番35号 ソニ ー株式会社内 (72)発明者 松田 隆明 東京都品川区北品川6丁目7番35号 ソニ ー株式会社内

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 軟磁性フェライト粉末と樹脂を主体とす
    るフェライトスラリーを射出成形してなるフェライト樹
    脂において、 上記樹脂は熱変形温度が200℃以上、曲げ強度が15
    0MPa以上の熱可塑性樹脂であって、 且つ上記フェライトスラリーの流動値が0.2ml/s
    以上であることを特徴とするフェライト樹脂。
  2. 【請求項2】 軟磁性フェライト粉末と樹脂を主体とす
    るフェライトスラリーを射出成形してなるフェライト樹
    脂において、 上記樹脂は熱変形温度が200℃以上、曲げ強度が15
    0MPa以上の熱可塑性樹脂であって、 且つ上記フェライトスラリーが、軟磁性フェライト粉末
    の混合重量をP,樹脂の混合重量をB1 ,滑剤の混合重
    量をB2 としたときに、 0.06≦(B1 +B2 )/P≦0.11 なる条件を満たすように軟磁性フェライト粉末、熱可塑
    性樹脂及び滑剤を含有することを特徴とするフェライト
    樹脂。
  3. 【請求項3】 軟磁性フェライト粉末の混合重量Pと滑
    剤の混合重量B2 の比B2 /Pが 0.0005≦B2 /P≦0.03 なる条件を満たすことを特徴とする請求項2記載のフェ
    ライト樹脂。
  4. 【請求項4】 軟磁性フェライト粉末の混合重量Pと滑
    剤の混合重量B2 の比B2 /Pが 0.002≦B2 /P≦0.03 なる条件を満たすことを特徴とする請求項3記載のフェ
    ライト樹脂。
  5. 【請求項5】 軟磁性フェライト粉末の混合重量Pと滑
    剤の混合重量B2 の比B2 /Pが 0.0005≦B2 /P≦0.002 なる条件を満たすことを特徴とする請求項3記載のフェ
    ライト樹脂。
  6. 【請求項6】 滑剤が脂肪酸あるいは脂肪酸エステルで
    あることを特徴とする請求項2または請求項3記載のフ
    ェライト樹脂。
  7. 【請求項7】 滑剤が脂肪酸塩であることを特徴とする
    請求項2または請求項3記載のフェライト樹脂。
  8. 【請求項8】 滑剤がフッ素系化合物であることを特徴
    とする請求項2または請求項3記載のフェライト樹脂。
  9. 【請求項9】 滑剤がシリコン系化合物であることを特
    徴とする請求項2または請求項3記載のフェライト樹
    脂。
  10. 【請求項10】 軟磁性フェライト粉末が表面処理剤に
    より表面処理されたれ軟磁性フェライト粉末であること
    を特徴とする請求項1,2又は3記載のフェライト樹
    脂。
  11. 【請求項11】 表面処理剤がシランカップリング剤、
    脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸金属塩より選ばれた少
    なくとも1種であることを特徴とする請求項10記載の
    フェライト樹脂。
  12. 【請求項12】 軟磁性フェライト粉末が、原料組成が
    Fe23 ,ZnO,NiO+CuOの三元組成図上で
    A(Fe23 :49.5mol%,ZnO:31.5
    mol%,NiO+CuO:19mol%)、B(Fe
    23 :51mol%,ZnO:31.5mol%,N
    iO+CuO:17.5mol%)、C(Fe23
    51mol%,ZnO:29mol%,NiO+Cu
    O:20mol%)、D(Fe23 :49.5mol
    %,ZnO:28mol%,NiO+CuO:22.5
    mol%)、E(Fe23 :48mol%,ZnO:
    28mol%,NiO+CuO:24mol%)、F
    (Fe23 :48mol%,ZnO:30.5mol
    %,NiO+CuO:21.5mol%)なる6点に囲
    まれる領域内にあり、且つNiO及びCuOがそれぞれ
    4mol%以上含有されてなる軟磁性フェライト粉末で
    あることを特徴とする請求項1,2又は3記載のフェラ
    イト樹脂。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006282412A (ja) * 2005-03-31 2006-10-19 Tdk Corp フェライトコアの製造方法
JP2010111812A (ja) * 2008-11-07 2010-05-20 Asahi Kasei E-Materials Corp ポリマー組成物及び該ポリマー組成物を含むノイズ抑制シート

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