JP2001015321A - Ni系フェライト焼結体の製造方法 - Google Patents
Ni系フェライト焼結体の製造方法Info
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 比抵抗の高いNi系フェライトにて、損失
(コアロス)が小さく、スイッチング電源等のトランス
用等として使用できるNi系フェライト焼結体の製造方
法を提供する。 【解決手段】 Ni系フェライト焼結体の製造方法であ
って、主成分が最終組成としてFe2O3 48.0〜
50.0mol%、ZnO 28.0mol%〜36.
0mol%、NiO 14.0mol%〜24.0mo
l%(NiOの内12mol%以下をCuOで置換して
もよい)となるように調整したNi系フェライトを成形
し、当該成形体をしかる後に、Ni系フェライト焼結体
の結晶組織におけるPの偏析を1%以下とするような、
かつ平均結晶粒径が3μm〜30μmであり前記平均結
晶粒径の2倍を超える結晶粒子の数が結晶粒子全体の1
0%以下とするような、焼結を施すことを特徴とした。
(コアロス)が小さく、スイッチング電源等のトランス
用等として使用できるNi系フェライト焼結体の製造方
法を提供する。 【解決手段】 Ni系フェライト焼結体の製造方法であ
って、主成分が最終組成としてFe2O3 48.0〜
50.0mol%、ZnO 28.0mol%〜36.
0mol%、NiO 14.0mol%〜24.0mo
l%(NiOの内12mol%以下をCuOで置換して
もよい)となるように調整したNi系フェライトを成形
し、当該成形体をしかる後に、Ni系フェライト焼結体
の結晶組織におけるPの偏析を1%以下とするような、
かつ平均結晶粒径が3μm〜30μmであり前記平均結
晶粒径の2倍を超える結晶粒子の数が結晶粒子全体の1
0%以下とするような、焼結を施すことを特徴とした。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、スイッチング電源、液
晶バックライト等のトランス用等に用いられるNi系フ
ェライト焼結体の製造方法に関する。
晶バックライト等のトランス用等に用いられるNi系フ
ェライト焼結体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】スイッチング電源、液晶バックライト
は、民生機器をはじめOA、産業用機器へと幅広い利用
が進んでおり、現在、小型、薄型、軽量化が図られてい
る。このスイッチング電源や液晶バックライト等に使用
されるトランスには、従来、Mn系のフェライトコアが
使用されていた。
は、民生機器をはじめOA、産業用機器へと幅広い利用
が進んでおり、現在、小型、薄型、軽量化が図られてい
る。このスイッチング電源や液晶バックライト等に使用
されるトランスには、従来、Mn系のフェライトコアが
使用されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】Mn系のフェライトコ
アは、飽和磁束密度、透磁率が大きく、また損失(コア
ロス)が10kW/m3程度(50kHz、50mT)
と小さいという特長があり、これまでスイッチング電源
や液晶バックライト等のトランスに用いられてきた。し
かしながら、比抵抗が10Ω・m程度と比較的低く、コ
アに直接巻線をすると漏れ電流が発生する。このため、
スイッチング電源等のトランス用としては、Mn系のフ
ェライトコアを使用する場合、コアにボビンをかぶせた
り、絶縁被膜等の処理を行ってから巻線を行っており、
製造コストが高く、小型化が難しいという問題があっ
た。これに対し、Ni系のフェライトコアは、一般に比
抵抗が106Ω・m程度と非常に高く、コアに直接巻線
をすることが可能であるが、損失(コアロス)が60k
W/m3(50kHz、50mT)程度と大きいため、
コアが発熱し易く、スイッチング電源等のトランス用と
して適していなかった。本発明は、上記のことを鑑み
て、ことを目的とする。
アは、飽和磁束密度、透磁率が大きく、また損失(コア
ロス)が10kW/m3程度(50kHz、50mT)
と小さいという特長があり、これまでスイッチング電源
や液晶バックライト等のトランスに用いられてきた。し
かしながら、比抵抗が10Ω・m程度と比較的低く、コ
アに直接巻線をすると漏れ電流が発生する。このため、
スイッチング電源等のトランス用としては、Mn系のフ
ェライトコアを使用する場合、コアにボビンをかぶせた
り、絶縁被膜等の処理を行ってから巻線を行っており、
製造コストが高く、小型化が難しいという問題があっ
た。これに対し、Ni系のフェライトコアは、一般に比
抵抗が106Ω・m程度と非常に高く、コアに直接巻線
をすることが可能であるが、損失(コアロス)が60k
W/m3(50kHz、50mT)程度と大きいため、
コアが発熱し易く、スイッチング電源等のトランス用と
して適していなかった。本発明は、上記のことを鑑み
て、ことを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、Ni系フェラ
イト焼結体の製造方法であって、主成分が最終組成とし
てFe2O3 48.0〜50.0mol%、ZnO
28.0mol%〜36.0mol%、NiO 14.
0mol%〜24.0mol%(NiOの内12mol
%以下をCuOで置換してもよい)となるように調整し
たNi系フェライトを成形し、当該成形体をしかる後
に、Ni系フェライト焼結体の結晶組織におけるPの偏
析を1%以下とするような、かつ平均結晶粒径が3μm
〜30μmであり前記平均結晶粒径の2倍を超える結晶
粒子の数が結晶粒子全体の10%以下とするような、焼
結を施すNi系フェライト焼結体の製造方法である。ま
た本発明は、Ni系フェライト焼結体中のP含有量が5
0ppm以下のNi系フェライト焼結体の製造方法であ
る。またNi系フェライト焼結体の比抵抗が1×105
以上であるNi系フェライト焼結体の製造方法である。
前記Ni系フェライト焼結体は添加物として、Mg,C
a,Sr,Ba,Al,Si,Ge,In,Sn,S
b,Te,Tl,Bi,Pb又は遷移金属の1種又は2
種以上を含んでいても良い。
イト焼結体の製造方法であって、主成分が最終組成とし
てFe2O3 48.0〜50.0mol%、ZnO
28.0mol%〜36.0mol%、NiO 14.
0mol%〜24.0mol%(NiOの内12mol
%以下をCuOで置換してもよい)となるように調整し
たNi系フェライトを成形し、当該成形体をしかる後
に、Ni系フェライト焼結体の結晶組織におけるPの偏
析を1%以下とするような、かつ平均結晶粒径が3μm
〜30μmであり前記平均結晶粒径の2倍を超える結晶
粒子の数が結晶粒子全体の10%以下とするような、焼
結を施すNi系フェライト焼結体の製造方法である。ま
た本発明は、Ni系フェライト焼結体中のP含有量が5
0ppm以下のNi系フェライト焼結体の製造方法であ
る。またNi系フェライト焼結体の比抵抗が1×105
以上であるNi系フェライト焼結体の製造方法である。
前記Ni系フェライト焼結体は添加物として、Mg,C
a,Sr,Ba,Al,Si,Ge,In,Sn,S
b,Te,Tl,Bi,Pb又は遷移金属の1種又は2
種以上を含んでいても良い。
【0005】
【作用】従来のNi系フェライト材料では、上述の如
く、損失(コアロス)が60kW/m3程度(50kH
z、50mT)と大きく、スイッチング電源等のトラン
ス用として使用するには適さなかった。本発明者らは、
Ni系フェライト材料で、スイッチング電源等のトラン
ス用として使用できる材料を研究した所、Fe2O 3
48.0〜50.0mol%、ZnO 28.0mol
%〜36.0mol%、NiO 14.0mol%〜2
4.0mol%(NiOの内12mol%以下をCuO
で置換してもよい)となるように調整したNi系フェラ
イトを成形し、当該成形体をしかる後に、Ni系フェラ
イト焼結体の結晶組織におけるPの偏析を1%以下とす
るような、かつ平均結晶粒径が3μm〜30μmであり
前記平均結晶粒径の2倍を超える結晶粒子の数が結晶粒
子全体の10%以下とするような、焼結を施すと、損失
(コアロス)が30kW/m3以下(50kHz、50
mT)で、コアロスの最小値を得る温度を20〜140
℃の範囲に制御できることを知見した。また、Pの偏析
は焼結体中のPの含有量にも関係し、その含有量は50
ppm以下であることが好ましいと判明した。また、Z
nOの含有量が28.0〜36.0mol%のとき、コ
アロスの最小値を得る温度を20〜140℃の範囲に制
御でき、さらに好ましいZnOの含有量は29.0〜3
3.0mol%である。また、添加物として、Mg,C
a,Sr,Ba,Al,Si,Ge,In,Sn,S
b,Te,Tl,Bi,Pb又は遷移金属の1種又は2
種以上を含んでも良く、その添加物の含有量は1wt%
程度までが適当である。また、本発明により製造される
Ni系フェライト焼結体としては、平均結晶粒径が3μ
m〜30μmであり、その平均結晶粒径の2倍を超える
結晶粒子の数が結晶粒子全体の10%以下であるよう
に、Ni系フェライト焼結体の結晶粒径が均一であるこ
とが望ましい。また、平均結晶粒径の更に好ましい範囲
は、4〜20μmであり、平均結晶粒径の2倍を超える
結晶粒子の数が結晶粒子全体の5%以下であることが更
に好ましい。なお、Pの偏析は、フェライト焼結体の断
面を研磨し、930〜1050℃の温度で熱処理した
後、SEM(Scanning Electron M
icroscope)又はEDX(Energy Di
spersive−XraySpectromete
r)により加速電圧20kVの条件で、少なくとも16
00μm2以上の範囲についてPの組成分布を調べ、得
られたPのマップ像について画像処理を行い、Pが存在
する部分の面積の合計を全体の面積で割った値を用い
た。また本発明では、比抵抗が1×105Ω・m以上で
あることが望ましい。
く、損失(コアロス)が60kW/m3程度(50kH
z、50mT)と大きく、スイッチング電源等のトラン
ス用として使用するには適さなかった。本発明者らは、
Ni系フェライト材料で、スイッチング電源等のトラン
ス用として使用できる材料を研究した所、Fe2O 3
48.0〜50.0mol%、ZnO 28.0mol
%〜36.0mol%、NiO 14.0mol%〜2
4.0mol%(NiOの内12mol%以下をCuO
で置換してもよい)となるように調整したNi系フェラ
イトを成形し、当該成形体をしかる後に、Ni系フェラ
イト焼結体の結晶組織におけるPの偏析を1%以下とす
るような、かつ平均結晶粒径が3μm〜30μmであり
前記平均結晶粒径の2倍を超える結晶粒子の数が結晶粒
子全体の10%以下とするような、焼結を施すと、損失
(コアロス)が30kW/m3以下(50kHz、50
mT)で、コアロスの最小値を得る温度を20〜140
℃の範囲に制御できることを知見した。また、Pの偏析
は焼結体中のPの含有量にも関係し、その含有量は50
ppm以下であることが好ましいと判明した。また、Z
nOの含有量が28.0〜36.0mol%のとき、コ
アロスの最小値を得る温度を20〜140℃の範囲に制
御でき、さらに好ましいZnOの含有量は29.0〜3
3.0mol%である。また、添加物として、Mg,C
a,Sr,Ba,Al,Si,Ge,In,Sn,S
b,Te,Tl,Bi,Pb又は遷移金属の1種又は2
種以上を含んでも良く、その添加物の含有量は1wt%
程度までが適当である。また、本発明により製造される
Ni系フェライト焼結体としては、平均結晶粒径が3μ
m〜30μmであり、その平均結晶粒径の2倍を超える
結晶粒子の数が結晶粒子全体の10%以下であるよう
に、Ni系フェライト焼結体の結晶粒径が均一であるこ
とが望ましい。また、平均結晶粒径の更に好ましい範囲
は、4〜20μmであり、平均結晶粒径の2倍を超える
結晶粒子の数が結晶粒子全体の5%以下であることが更
に好ましい。なお、Pの偏析は、フェライト焼結体の断
面を研磨し、930〜1050℃の温度で熱処理した
後、SEM(Scanning Electron M
icroscope)又はEDX(Energy Di
spersive−XraySpectromete
r)により加速電圧20kVの条件で、少なくとも16
00μm2以上の範囲についてPの組成分布を調べ、得
られたPのマップ像について画像処理を行い、Pが存在
する部分の面積の合計を全体の面積で割った値を用い
た。また本発明では、比抵抗が1×105Ω・m以上で
あることが望ましい。
【0006】また、Fe2O3が48.0mol%未満
であるとコアロスが大きくなり、また、50.0mol
%を超えると、比抵抗が低くなり、Ni系の特徴である
絶縁性が低くなり、不適当である。ZnOが28.0m
ol%未満であると、コアロスが大きくなり、また3
6.0mol%を超えると、コアロスの最小値を得る温
度が室温以下となり、実際に使用される温度範囲で低損
失とならない。ここでコアロスの最小値を得る温度は、
20〜140℃が適当である。NiOは前記Fe 2O3
とZnOの組成量によって決まるが、NiOを12mo
l%以下をCuOで置換してもよい。置換量が12mo
l%を超えるとコアロスが大きくなり好ましくない。焼
結体中のPの含有量は50ppm以下が好ましく、更に
好ましくは、7ppm以下である。焼結体中のPの含有
量が50ppmを超えると、Pの偏析が面積比で1%を
超えコアロスが大きくなり、好ましくは0.8%以下で
ある。コアロスは30kW/m3が好ましく、これを超
えるとスイッチング電源等のトランス用として使用する
には適さない。結晶粒径が3μm未満であるとコアロス
が大きくなり、また30μmを超えると結晶が異常成長
しコアロスが大きくなり、また、その平均結晶粒径の2
倍を超える結晶粒子の数が結晶粒子全体の10%を超え
ると、コアロスが大きくなる。
であるとコアロスが大きくなり、また、50.0mol
%を超えると、比抵抗が低くなり、Ni系の特徴である
絶縁性が低くなり、不適当である。ZnOが28.0m
ol%未満であると、コアロスが大きくなり、また3
6.0mol%を超えると、コアロスの最小値を得る温
度が室温以下となり、実際に使用される温度範囲で低損
失とならない。ここでコアロスの最小値を得る温度は、
20〜140℃が適当である。NiOは前記Fe 2O3
とZnOの組成量によって決まるが、NiOを12mo
l%以下をCuOで置換してもよい。置換量が12mo
l%を超えるとコアロスが大きくなり好ましくない。焼
結体中のPの含有量は50ppm以下が好ましく、更に
好ましくは、7ppm以下である。焼結体中のPの含有
量が50ppmを超えると、Pの偏析が面積比で1%を
超えコアロスが大きくなり、好ましくは0.8%以下で
ある。コアロスは30kW/m3が好ましく、これを超
えるとスイッチング電源等のトランス用として使用する
には適さない。結晶粒径が3μm未満であるとコアロス
が大きくなり、また30μmを超えると結晶が異常成長
しコアロスが大きくなり、また、その平均結晶粒径の2
倍を超える結晶粒子の数が結晶粒子全体の10%を超え
ると、コアロスが大きくなる。
【0007】
【実施例】以下に、本発明に係るフェライト材料の実施
例を詳細に説明する。 (実施例1)Fe2O3、NiO、ZnO、CuOの原
料粉末を所定量秤量し、これに所定量のイオン交換水を
添加したものをボールミルにて4時間混合し、電気炉を
用いて最高温度850℃で1.5時間仮焼した後、これ
を炉冷し、40メッシュのふるいで解砕する。しかる
後、再び所定量のイオン交換水を添加したものをボール
ミルにて6時間粉砕し、粉砕されたスラリー状の原料を
乾燥および解砕する。これにバインダー(ポリビニルア
ルコール)を1wt%加えて造粒し、40メッシュのふ
るいにて整粒した顆粒を乾式圧縮成形機と金型を用い
て、外径16.8mm、内径8.5mm、高さ5.4mmのリ
ング状コアに成形圧150MPaで成形し、これを大気
中、1100℃〜1200℃で1.5時間焼成した。得
られた各試料の成分組成及び焼成密度を測定した後、周
波数50kHz、磁束密度50mTの測定条件において
20〜140℃の温度範囲で損失(コアロス)を測定し
た。また、焼結体の結晶組織(結晶粒径、組成分布)の
観察を行った。また、成分組成は、工程中で変化し、秤
量組成と若干異なるので、最終組成として表1に載せ
る。なお、この表1に示す各試料におけるPの含有量
は、50ppm以下である。
例を詳細に説明する。 (実施例1)Fe2O3、NiO、ZnO、CuOの原
料粉末を所定量秤量し、これに所定量のイオン交換水を
添加したものをボールミルにて4時間混合し、電気炉を
用いて最高温度850℃で1.5時間仮焼した後、これ
を炉冷し、40メッシュのふるいで解砕する。しかる
後、再び所定量のイオン交換水を添加したものをボール
ミルにて6時間粉砕し、粉砕されたスラリー状の原料を
乾燥および解砕する。これにバインダー(ポリビニルア
ルコール)を1wt%加えて造粒し、40メッシュのふ
るいにて整粒した顆粒を乾式圧縮成形機と金型を用い
て、外径16.8mm、内径8.5mm、高さ5.4mmのリ
ング状コアに成形圧150MPaで成形し、これを大気
中、1100℃〜1200℃で1.5時間焼成した。得
られた各試料の成分組成及び焼成密度を測定した後、周
波数50kHz、磁束密度50mTの測定条件において
20〜140℃の温度範囲で損失(コアロス)を測定し
た。また、焼結体の結晶組織(結晶粒径、組成分布)の
観察を行った。また、成分組成は、工程中で変化し、秤
量組成と若干異なるので、最終組成として表1に載せ
る。なお、この表1に示す各試料におけるPの含有量
は、50ppm以下である。
【0008】
【表1】
【0009】表1に示すように、最終組成としてFe2
O3が48.0mol%〜50.0mol%、NiOが
14.0mol%〜24.0mol%、ZnOが28.
0mol%〜36.0mol%で、Pの含有量が50p
pmであり、平均結晶粒径が3μm〜30μmであり前
記平均結晶粒径の2倍を超える結晶粒子の数が結晶粒子
全体の10%以下の試料では、30kW/m3以下(5
0kHz、50mT)の優れた損失(コアロス)を得る
ことが出来た。NiOの内一部をCuOで置換した場合
も同様に優れた損失(コアロス)を得た。
O3が48.0mol%〜50.0mol%、NiOが
14.0mol%〜24.0mol%、ZnOが28.
0mol%〜36.0mol%で、Pの含有量が50p
pmであり、平均結晶粒径が3μm〜30μmであり前
記平均結晶粒径の2倍を超える結晶粒子の数が結晶粒子
全体の10%以下の試料では、30kW/m3以下(5
0kHz、50mT)の優れた損失(コアロス)を得る
ことが出来た。NiOの内一部をCuOで置換した場合
も同様に優れた損失(コアロス)を得た。
【0010】(実施例2)実施例1と同様の手順でPの
含有量の異なる試料を作製した。尚、焼成温度は、11
00℃又は1050℃で行った。各試料の測定結果を表
2に示す。この表2に示すように、Pの含有量が50p
pm以下であると、コアロスの最小値が30kW/m3
以下のNi系フェライト焼結体を得る事ができた。この
Pは主にFe2O3の原料粉中に含まれている不純物で
あり、フェライト焼結体中のPの含有量を50ppm以
下とするには、Fe2O3の原料粉中に含まれるPが7
6ppm以下程度とするのが望ましい。
含有量の異なる試料を作製した。尚、焼成温度は、11
00℃又は1050℃で行った。各試料の測定結果を表
2に示す。この表2に示すように、Pの含有量が50p
pm以下であると、コアロスの最小値が30kW/m3
以下のNi系フェライト焼結体を得る事ができた。この
Pは主にFe2O3の原料粉中に含まれている不純物で
あり、フェライト焼結体中のPの含有量を50ppm以
下とするには、Fe2O3の原料粉中に含まれるPが7
6ppm以下程度とするのが望ましい。
【0011】
【表2】
【0012】(実施例3)実施例1と同様の手順でPの
含有量の異なる試料を作製し、焼結体の結晶組織中のP
偏析を調査した。このPの偏析の確認方法は、試料を切
断し、その断面を研磨し、焼成温度より50℃低い温度
で熱処理した後、SEMにより加速電圧20kVの条件
で、少なくとも1600μm2の範囲についてPの組成
分布を調べ、得られたPのマップ像について画像処理を
行い、Pが存在する部分の面積の合計を全体の面積(1
600μm2)で割った値を用いた。この結果を表3に
示す。尚、表3の試料No1,2,3,4,5,6,
7,8は、表2の試料No1,2,3,4,6,7,
8,10に対応している。また、表3中の試料No3に
おけるPの偏析を調べたSEMのマップ像の画像処理し
た模式図を図3に、表3中の試料No4におけるPの偏
析を調べたSEMのマップ像の画像処理した模式図を図
4に示す。この図3に示すNo3の試料では、Pの偏析
は1ケ所(図中番号1)のみであり、その面積比は、
0.8%であった。また、図4に示すNo4の試料で
は、Pの偏析(図中番号1)は多数存在し、その面積比
は、5.4%であった。また、試料No3とNo7はP
の含有量が同一であるが、焼成温度によりPの偏析量が
異なり焼成温度が低いNo7のPの偏析量は0%であっ
た。また本発明の比較例である試料No4、No8で
は、No4のPの含有量が66ppmであり、No8は
Pの含有量が80ppmであるにも係わらず、Pの含有
量が多くても焼成温度が低いNo8の試料の方がPの偏
析量が減少しコアロスも低減した。
含有量の異なる試料を作製し、焼結体の結晶組織中のP
偏析を調査した。このPの偏析の確認方法は、試料を切
断し、その断面を研磨し、焼成温度より50℃低い温度
で熱処理した後、SEMにより加速電圧20kVの条件
で、少なくとも1600μm2の範囲についてPの組成
分布を調べ、得られたPのマップ像について画像処理を
行い、Pが存在する部分の面積の合計を全体の面積(1
600μm2)で割った値を用いた。この結果を表3に
示す。尚、表3の試料No1,2,3,4,5,6,
7,8は、表2の試料No1,2,3,4,6,7,
8,10に対応している。また、表3中の試料No3に
おけるPの偏析を調べたSEMのマップ像の画像処理し
た模式図を図3に、表3中の試料No4におけるPの偏
析を調べたSEMのマップ像の画像処理した模式図を図
4に示す。この図3に示すNo3の試料では、Pの偏析
は1ケ所(図中番号1)のみであり、その面積比は、
0.8%であった。また、図4に示すNo4の試料で
は、Pの偏析(図中番号1)は多数存在し、その面積比
は、5.4%であった。また、試料No3とNo7はP
の含有量が同一であるが、焼成温度によりPの偏析量が
異なり焼成温度が低いNo7のPの偏析量は0%であっ
た。また本発明の比較例である試料No4、No8で
は、No4のPの含有量が66ppmであり、No8は
Pの含有量が80ppmであるにも係わらず、Pの含有
量が多くても焼成温度が低いNo8の試料の方がPの偏
析量が減少しコアロスも低減した。
【0013】
【表3】
【0014】(実施例4)実施例1と同様の手順でNi
OのCuO置換量を変更した結果を表4に示す。この表
4に示すように、CuOに置換する量が12mol%以
下であれば、コアロスの最小値が30kW/m3以下の
Ni系フェライト焼結体を得る事ができた。
OのCuO置換量を変更した結果を表4に示す。この表
4に示すように、CuOに置換する量が12mol%以
下であれば、コアロスの最小値が30kW/m3以下の
Ni系フェライト焼結体を得る事ができた。
【0015】
【表4】
【0016】(実施例5)実施例1と同様の手順で焼成
温度及び保持時間を変更して、平均結晶粒径及び平均結
晶粒径の2倍を超える結晶粒子が存在する数の割合とコ
アロスの関係を検討した。この結果を表5に示す。この
表5に示すように、平均結晶粒径が、3〜30μmであ
って、その平均結晶粒径の2倍を超える結晶粒子の数が
結晶粒子全体の10%以下であれば、コアロスの最小値
が30kW/m3以下のNi系フェライト焼結体を得る
事ができた。
温度及び保持時間を変更して、平均結晶粒径及び平均結
晶粒径の2倍を超える結晶粒子が存在する数の割合とコ
アロスの関係を検討した。この結果を表5に示す。この
表5に示すように、平均結晶粒径が、3〜30μmであ
って、その平均結晶粒径の2倍を超える結晶粒子の数が
結晶粒子全体の10%以下であれば、コアロスの最小値
が30kW/m3以下のNi系フェライト焼結体を得る
事ができた。
【0017】
【表5】
【0018】(実施例6)実施例1と同様の方法におい
て、ZnOの含有量とコアロスの最小値を得る温度との
関係を検討した。この結果を表6と図2に示す。Cuを
含まない成分のものと、Cuを含む成分のもので多少の
差異はあるものの、ZnOの含有量によって、コアロス
の最小値を得る温度がほぼ決まる。これにより、ZnO
の含有量が28mol%〜36mol%で、コアロスの
最小値を得る温度が140〜20℃の範囲で制御でき
た。
て、ZnOの含有量とコアロスの最小値を得る温度との
関係を検討した。この結果を表6と図2に示す。Cuを
含まない成分のものと、Cuを含む成分のもので多少の
差異はあるものの、ZnOの含有量によって、コアロス
の最小値を得る温度がほぼ決まる。これにより、ZnO
の含有量が28mol%〜36mol%で、コアロスの
最小値を得る温度が140〜20℃の範囲で制御でき
た。
【0019】
【表6】
【0020】(実施例7)本発明の実施例のコアロス
(50kHz、50mT)の温度特性を表7と図1に示
す。また、本発明の実施例(表7、試料No2)と従来
例の60℃におけるコアロスの周波数特性を図5に示
す。尚、図1のグラフのA材が、表7の試料No1であ
り、同じくB材が試料No2、C材が試料No3であ
る。A材は、高温で低損失な材料であり、B材は、80
℃付近を最低値とし、20〜100℃でコアロスが30
kW/m3以下となっている。また、C材は、100℃
付近が最低値となっている。本発明の実施例が広い温度
範囲で低損失となっている事がわかる。また、図5よ
り、本発明の実施例は、広い周波数範囲(f=25kH
z〜1MHz)及び広い磁束密度範囲(Bm=50mT
〜150mT)で低損失となっている事がわかる。この
本発明の実施例は、電源用コアとして十分使用可能な特
性を有している。尚、本発明の実施例では、焼成密度が
理論密度の95%以上(約5.1×103kg/m3以
上)であることが、実用上望ましい。また本発明の実施
例では、特にPの含有量を記載していないものは、Pの
含有量は50ppm以下を満足しており、実質的には、
Pの含有量は7ppm以下となっている。
(50kHz、50mT)の温度特性を表7と図1に示
す。また、本発明の実施例(表7、試料No2)と従来
例の60℃におけるコアロスの周波数特性を図5に示
す。尚、図1のグラフのA材が、表7の試料No1であ
り、同じくB材が試料No2、C材が試料No3であ
る。A材は、高温で低損失な材料であり、B材は、80
℃付近を最低値とし、20〜100℃でコアロスが30
kW/m3以下となっている。また、C材は、100℃
付近が最低値となっている。本発明の実施例が広い温度
範囲で低損失となっている事がわかる。また、図5よ
り、本発明の実施例は、広い周波数範囲(f=25kH
z〜1MHz)及び広い磁束密度範囲(Bm=50mT
〜150mT)で低損失となっている事がわかる。この
本発明の実施例は、電源用コアとして十分使用可能な特
性を有している。尚、本発明の実施例では、焼成密度が
理論密度の95%以上(約5.1×103kg/m3以
上)であることが、実用上望ましい。また本発明の実施
例では、特にPの含有量を記載していないものは、Pの
含有量は50ppm以下を満足しており、実質的には、
Pの含有量は7ppm以下となっている。
【0021】
【表7】
【0022】
【発明の効果】本発明のNi系フェライト焼結体の製造
方法によれば、コアロスが30kW/m3以下という非
常に低損失なフェライト焼結体を得る事が出来、しかも
Ni系フェライトの特有の比抵抗の高いフェライト焼結
体が得られ、スイッチング電源等のトランス用として有
用であり、トランスの小型化及び製造コストの低減に大
いに役立つものである。
方法によれば、コアロスが30kW/m3以下という非
常に低損失なフェライト焼結体を得る事が出来、しかも
Ni系フェライトの特有の比抵抗の高いフェライト焼結
体が得られ、スイッチング電源等のトランス用として有
用であり、トランスの小型化及び製造コストの低減に大
いに役立つものである。
【図1】本発明に係る実施例のコアロスの温度特性を示
すグラフである。
すグラフである。
【図2】本発明に係る実施例のZnOの含有量とコアロ
スの最小値を得る温度との関係を示すグラフである。
スの最小値を得る温度との関係を示すグラフである。
【図3】本発明に係る実施例のPの偏析を示すSEMの
マップ像の画像処理した模式図である。
マップ像の画像処理した模式図である。
【図4】本発明に係る比較例のPの偏析を示すSEMの
マップ像の画像処理した模式図である。
マップ像の画像処理した模式図である。
【図5】本発明に係る実施例と従来例のコアロスの周波
数特性のグラフである。
数特性のグラフである。
1 Pの偏析
Claims (4)
- 【請求項1】 Ni系フェライト焼結体の製造方法であ
って、主成分が最終組成としてFe2O3 48.0〜
50.0mol%、ZnO 28.0mol%〜36.
0mol%、NiO 14.0mol%〜24.0mo
l%(NiOの内12mol%以下をCuOで置換して
もよい)となるように調整したNi系フェライトを成形
し、当該成形体をしかる後に、Ni系フェライト焼結体
の結晶組織におけるPの偏析を1%以下とするような、
かつ平均結晶粒径が3μm〜30μmであり前記平均結
晶粒径の2倍を超える結晶粒子の数が結晶粒子全体の1
0%以下とするような、焼結を施すことを特徴とするN
i系フェライト焼結体の製造方法。 - 【請求項2】 前記Ni系フェライト焼結体中のP含有
量が50ppm以下であることを特徴とする請求項1に
記載のNi系フェライト焼結体の製造方法。 - 【請求項3】 前記Ni系フェライト焼結体の比抵抗が
1×105Ω・m以上であることを特徴とする請求項1
又は2に記載のNi系フェライト焼結体の製造方法。 - 【請求項4】 前記Ni系フェライト焼結体は添加物と
して、Mg,Ca,Sr,Ba,Al,Si,Ge,I
n,Sn,Sb,Te,Tl,Bi,Pb又は遷移金属
の1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項1乃
至3のいずれかに記載のNi系フェライト焼結体の製造
方法。
Applications Claiming Priority (2)
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JP7249794 | 1994-03-16 | ||
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Publication Number | Publication Date |
---|---|
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---|---|---|---|
JP2000158047A Pending JP2001015322A (ja) | 1994-03-16 | 2000-05-29 | 低損失Ni系フェライト焼結体およびこれを用いた磁心 |
JP2000158046A Pending JP2001015321A (ja) | 1994-03-16 | 2000-05-29 | Ni系フェライト焼結体の製造方法 |
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---|---|---|---|
JP2000158047A Pending JP2001015322A (ja) | 1994-03-16 | 2000-05-29 | 低損失Ni系フェライト焼結体およびこれを用いた磁心 |
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---|---|
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JP (2) | JP2001015322A (ja) |
KR (1) | KR100371982B1 (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US6628190B2 (en) * | 1999-12-16 | 2003-09-30 | Tdk Corporation | Powder for magnetic ferrite, magnetic ferrite, multilayer ferrite components and production method thereof |
JP2003300774A (ja) * | 2002-04-04 | 2003-10-21 | Hitachi Metals Ltd | 低損失Ni−Zn系フェライト |
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---|---|---|---|---|
US7195717B2 (en) | 2003-07-28 | 2007-03-27 | Kyocera Corporation | Ferrite core for RFID application, method of manufacturing the same, and ferrite coil using the same |
JP3907642B2 (ja) * | 2004-05-21 | 2007-04-18 | Tdk株式会社 | フェライト材料及びフェライト材料の製造方法 |
JP5699540B2 (ja) * | 2010-10-29 | 2015-04-15 | Tdk株式会社 | フェライト組成物、フェライトコアおよび電子部品 |
JP5699542B2 (ja) * | 2010-11-02 | 2015-04-15 | Tdk株式会社 | フェライト組成物、フェライトコアおよび電子部品 |
JP5831254B2 (ja) * | 2012-01-26 | 2015-12-09 | Tdk株式会社 | フェライト組成物、フェライトコアおよび電子部品 |
JP5831256B2 (ja) * | 2012-01-26 | 2015-12-09 | Tdk株式会社 | フェライト組成物、フェライトコアおよび電子部品 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US2933565A (en) * | 1953-04-15 | 1960-04-19 | Siemens Ag | Magnetic transducers |
US3573208A (en) * | 1968-09-19 | 1971-03-30 | Philips Corp | Method of manufacturing ferrites of high resistivity |
US4059664A (en) * | 1971-12-14 | 1977-11-22 | Thomson-Csf | Method of manufacturing ferrimagnetic material for recording, read out and erase heads utilized in magnetic layer devices |
JP2729486B2 (ja) * | 1988-07-09 | 1998-03-18 | 富士電気化学株式会社 | 電波吸収体用ニッケル−亜鉛系フェライト材 |
US5198138A (en) * | 1989-04-19 | 1993-03-30 | Toda Kogyo Corp. | Spherical ferrite particles and ferrite resin composite for bonded magnetic core |
-
1995
- 1995-03-13 KR KR1019950005082A patent/KR100371982B1/ko not_active IP Right Cessation
- 1995-03-13 US US08/402,693 patent/US5618464A/en not_active Expired - Lifetime
-
2000
- 2000-05-29 JP JP2000158047A patent/JP2001015322A/ja active Pending
- 2000-05-29 JP JP2000158046A patent/JP2001015321A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US6628190B2 (en) * | 1999-12-16 | 2003-09-30 | Tdk Corporation | Powder for magnetic ferrite, magnetic ferrite, multilayer ferrite components and production method thereof |
JP2003300774A (ja) * | 2002-04-04 | 2003-10-21 | Hitachi Metals Ltd | 低損失Ni−Zn系フェライト |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
KR950031992A (ko) | 1995-12-20 |
US5618464A (en) | 1997-04-08 |
KR100371982B1 (ko) | 2003-03-19 |
JP2001015322A (ja) | 2001-01-19 |
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