JPH07127727A - 自動変速機の油圧制御装置 - Google Patents

自動変速機の油圧制御装置

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JPH07127727A
JPH07127727A JP5294010A JP29401093A JPH07127727A JP H07127727 A JPH07127727 A JP H07127727A JP 5294010 A JP5294010 A JP 5294010A JP 29401093 A JP29401093 A JP 29401093A JP H07127727 A JPH07127727 A JP H07127727A
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真也 鎌田
Yuji Nakahara
祐治 中原
Hiroyuki Matsumoto
裕之 松本
Mitsutoshi Abe
充俊 安部
Toshihisa Marusue
敏久 丸末
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 所定の変速時に締結される摩擦要素に調圧バ
ルブを用いて締結圧を供給するにあたり、エンジンの出
力状態に応じて棚圧の調整を行うだけでなく、変速時に
おける変速機構の回転数の変化に伴う遠心力油圧の変化
を考慮して棚圧調整を行い、実際に摩擦要素に作用する
棚圧の時間変化を適正に補正して、変速ショックの抑制
と短時間内の変速動作完了との両立を目的とする。 【構成】 第1デューティソレノイドバルブ90をデュ
ーティ制御することによって、モデュレータバルブ93
および3−4コントロールバルブ77を制御し、3−4
クラッチ43にライン121を介して供給される作動油
圧を調圧するように構成したうえで、変速時のスロット
ル開度、エンジン水温または油温、タービン回転数など
に基づいてコントローラが上記ソレノイドバルブ90の
デューティ率を決定する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は自動車に搭載される自
動変速機の油圧制御装置、特に所定の変速時に締結され
る摩擦要素に供給される作動油圧の棚圧を制御するよう
に構成された自動変速機の油圧制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に自動車に搭載される自動変速機
は、エンジン出力が入力されるトルクコンバータと、該
コンバータの出力によって駆動される変速機構とを組み
合わせ、この変速機構の動力伝達経路をクラッチやブレ
ーキなどの複数の摩擦要素の選択的作動により切り換え
て、運転状態に応じた最適変速段に自動的に変速するよ
うに構成されたもので、この種の自動変速機において
は、上記各摩擦要素のアクチュエータに対する締結圧の
給排を制御する油圧制御回路が備えられる。この油圧制
御回路には、オイルポンプから吐出される圧力を所定の
ライン圧に調整するレギュレータバルブ、手動によって
レンジを切り換えるマニュアルバルブ、各アクチュエー
タに対する油路を選択的に切り換える複数のシフトバル
ブなどが設けられる。
【0003】ところで、この種の自動変速機では、変速
時に摩擦要素が締結されることにより変速ショックが発
生して乗員に不快感を与えるという問題が生じる。かか
る変速ショックの軽減を図るために、例えば該摩擦要素
の作動圧回路にアキュムレータや、作動油圧を増減調整
する調圧バルブなどを配置することにより、図14に符
号アで示すような所謂棚圧と称する中間圧力状態を変速
時に供給される作動油圧に意識的に形成して、この棚圧
状態のときに摩擦要素を締結することが一般に行われて
いる。
【0004】このとき作動油圧は、図14に示すよう
に、供給が開始されると一旦増大し、その後は、油圧上
昇率が緩やかとなるように調圧されて棚圧が形成され
る。そして、この棚圧が緩やかに増大している間に摩擦
要素を徐々に締結することにより変速ショックの緩和を
図るものである。従って、棚圧形成時においては、その
油圧初期値(図14に示す符号イ)とその後の油圧の傾
き(図14に示す符号ウ)の選択が、かかる目的を達成
するために重要となる。
【0005】すなわち、棚圧初期値が高すぎると、作動
油圧が該初期値に到達する前に急激に上昇している間に
摩擦要素が締結されることとなり、変速時間が短くなり
すぎると共に、大きな変速ショックが発生することとな
る。また、それとは逆に、初期値が低すぎると、摩擦要
素が不必要にスリップして変速時間が徒に長くなり、変
速フィーリングが悪化するばかりでなく、摩擦要素の耐
久性の面からも好ましくない。一方、棚圧初期値が適正
に設定されても、その後の棚圧の傾きが急すぎたり緩や
かすぎたりしても同様の問題が生じる。
【0006】このように、過度の変速ショックを生じさ
せることなく、かつ短時間に変速動作が完了するように
棚圧を設定するためには、その棚圧が緩やかに上昇して
いる途中の油圧が摩擦要素の締結必要圧を通過するよう
に、初期値と傾きとを選択する必要がある。そのため
に、アキュムレータを使用する場合では、その緩衝特性
や作動圧回路に配設されたオリフィスの径等を種々選択
することにより、棚圧初期値および油圧の傾きを設定す
ることとなるが、元圧となるライン圧そのものの変動や
各部材の特性のバラツキ、さらには変速時のエンジン出
力状態によって同じ摩擦要素であってもその締結必要圧
が変化する等の要因から緻密な制御ができず、必ずしも
常に適正な棚圧を設定することができない。
【0007】このような問題に対しては、変速時のエン
ジン出力状態に応じて棚圧レベルを変速ごとに設定する
ことにより、変速時の伝達トルクの大きさに応じた適正
な初期値と傾きを得るようにすることが知られている。
例えば、エンジン出力状態の代表的指標であるスロット
ル開度を変速ごとに検出し、検出されたスロットル開度
を予め設定されたマップに当てはめて、その変速時にお
いて最適の初期値および油圧の傾きを読み出し、供給さ
れる作動油圧がそうして決定された棚圧を形成するよう
に、作動圧回路に配置された調圧バルブをデューティ制
御しようとするものなどがある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、そのよ
うにエンジン出力状態に応じて棚圧レベルを設定しても
次のような問題が生じる。以下、図面を参照して2−3
変速時を例に説明する。
【0009】図1に4速自動変速機の骨子図を示すが、
例えば2−3変速時は、変速機構30に設けられた2−
4ブレーキ45を解放すると共に、3−4クラッチ43
を締結することとなる。この3−4クラッチ43を締結
するためには、入力軸であるタービンシャフト27側に
設けられたクラッチピストン(図示せず)に作動油圧を
締結圧として供給する。そして、該クラッチピストンは
タービンシャフト27と同じ速度で回転しているので、
変速前後のギヤ比の変化に伴ってタービンシャフト27
の回転速度が変化すれば、クラッチピストンの回転速度
も変化することとなる。例えば、2速のギヤ比が1.5
4、3速のギヤ比が1.00とすると、変速前の回転数
が6,000rpmであれば変速後の回転数は3,89
6rpmに減少する。
【0010】ところで、上記クラッチピストンには、バ
ルブボディから供給される作動油そのものの油圧の他
に、該クラッチピストン内に供給された作動油がクラッ
チピストンの回転に伴って同様に回転することにより生
じる遠心力油圧が加わり、それら二つの圧力の和とし
て、3−4クラッチ締結圧(Po)がクラッチピストン
に実際に作用することとなる。そして、この遠心力油圧
は、図15に示すように、回転数の2乗に比例して変化
するため、2−3変速時にクラッチピストンの回転数が
上記のように6,000rpmから3,896rpmに
減少すると、それに伴って遠心力油圧(Pc)も低下す
ることとなる。
【0011】その結果、図16に示すように、バルブボ
ディから供給される作動油圧において、2−3変速時の
エンジン出力状態に応じた棚圧レベルを、例えば図中符
号カで示すように設定しても、実際には遠心力油圧(P
c)が符号キで示すように変化して加わっているので、
3−4クラッチ締結圧(Po)は、符号クで示すよう
に、相対的に変速初期は油圧が高く、後期は低くなるの
である。
【0012】従って、3−4クラッチの伝達トルク容量
が、クラッチピストンの回転速度が高い変速初期に大き
く、その後変速が進むに従って回転数が低下するに伴い
減少することとなり、その結果、出力軸トルク(A)に
おいて、そのトルク波形が乱れ、トルクフェーズからイ
ナーシャフェーズへの移行時に符号ケで示すような急激
なトルクの増大が起こり、過度の変速ショックが発生し
て乗員に不快感を与えることとなり、変速ショックの軽
減という本来の目的が有効に達成できないのである。
【0013】この発明は、所定の変速時に締結される摩
擦要素にその変速中供給される締結圧を制御するように
構成された自動変速機における上記の問題に対処するも
ので、遠心力油圧の変化を考慮し、その変化分を補正す
るように供給油圧の調整を行うことにより、それら双方
の油圧の和として形成される棚圧を適正に設定し、過度
の変速ショックの発生を回避して、この種の油圧制御装
置の信頼性向上を図ることを第1の目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】すなわち、本願の請求項
1の発明(以下、第1発明という)に係る自動変速機の
油圧制御装置は、変速機構の動力伝達経路が複数の摩擦
要素の選択的締結によって切り換えられるように構成さ
れ、かつ所定の変速時に締結される摩擦要素に供給され
る作動油圧に形成される棚圧を調整する調圧手段が備え
られた自動変速機の油圧制御装置であって、上記変速機
構の回転数を検出する回転数検出手段と、該検出手段で
検出される回転数の所定の変速時における変化に基づい
て、上記棚圧の傾きを設定するように上記調圧手段を制
御する油圧制御手段とが設けられていることを特徴とす
る。
【0015】また、本願の請求項2の発明(以下、第2
発明という)に係る自動変速機の油圧制御装置は、上記
第1発明に示す構成において、変速機構の回転数が所定
の変速時に低下するときは、棚圧の傾きが時間経過に対
して上昇方向に設定され、上記回転数が所定の変速時に
増加するときは、棚圧の傾きが時間経過に対して下降方
向に設定されるように油圧制御手段が調圧手段を制御す
ることを特徴とする。
【0016】ところで、クラッチの信頼性確保とシフト
クオリティの向上とを目的として、変速時に自動変速機
に入力されるエンジンの出力トルクを低下させて変速時
のトルク変動を小さくすることにより、変速ショックを
緩和しようとする制御を行うものがある。
【0017】このように、変速時において所謂トルクダ
ウン制御を行う場合は、さらに次のような問題が生じる
こととなる。すなわち、変速時にエンジンの出力トルク
を低下させると、そのような制御を行わないときに比べ
て自動変速機に入力される伝達トルク容量が小さくなる
ので、摩擦要素に対する締結必要圧が低下して変速動作
が早期に完了することとなる。その結果、クラッチピス
トン回転数の減少が短時間のうちに起こると共に、遠心
力油圧の時間あたりの変化率も増大することとなる。こ
のときに、棚圧の傾きをトルクダウン制御に関係なく同
じレベルに設定していると、トルクダウン制御を行うと
きは遠心力油圧の時間あたりの変化率が増大するにもか
かわらず、その増大分の補正が棚圧の調整においてされ
ないので、両者の和としての締結圧が相対的に変速の初
期に高く後期に低くなる問題が解消されないのである。
したがって、出力軸トルクにおいて、トルクダウン制御
を行う場合は全体のトルク容量は低下するものの、やは
りそのトルク波形が乱れて、トルクフェーズからイナー
シャフェーズへの移行時に急激なトルクの増大が起こ
り、変速ショックの発生を効果的に抑制することができ
ないのである。
【0018】この発明は、変速時にトルクダウン制御を
行うように構成された自動変速機における上記の問題に
対処し、トルクダウン制御によって変速時間が変化する
場合においても、バルブボディから供給される作動油圧
とクラッチピストン内に発生する遠心油圧との和が一定
になるように、棚圧の調整をトルクダウン制御量に応じ
て行うことにより、変速中クラッチピストンに作用する
締結圧をより適正に設定し、変速時間の如何にかかわら
ず、過度の変速ショックの発生を常に抑制し得るように
することを第2の目的とする。
【0019】すなわち、本願の請求項3の発明(以下、
第3発明という)に係る自動変速機の油圧制御装置は、
上記第1発明または第2発明のいずれかに示す構成に加
えて、エンジンの出力状態を検出するエンジン出力検出
手段が設けられて、該出力検出手段で検出される所定の
変速時におけるエンジン出力が低いときは、高いときに
比べて、棚圧の傾きが大きく設定されるように油圧制御
手段が調圧手段を制御することを特徴とするものであ
る。
【0020】また、エンジンの出力状態に応じて棚圧初
期値を設定するように構成された自動変速機の場合は、
かかるトルクダウン制御を実行するときは、しないとき
に比べて棚圧初期値が低く設定されるので、その低く設
定された油圧分だけさらに棚圧の傾きを上昇方向に大き
く設定しないと、締結圧がそのクラッチの締結必要圧に
到達するのに余分な時間が費やされ、クラッチが必要以
上にスリップして変速時間が徒に長くなり、変速フィー
リングの悪化やクラッチの耐久性の劣化という問題が有
効に解決されないこととなる。
【0021】したがって、この発明の第3の目的は、変
速時のエンジン出力状態に応じて棚圧初期値を設定する
ように構成された自動変速機における上記の問題に対処
するもので、所定の変速中に供給される棚圧の初期値お
よびその傾きを、その変速時のエンジン出力状態あるい
はトルクダウン制御量に的確に対応させて設定すること
により、変速時のエンジン出力状態が種々変化する場合
においても、変速ショックの抑制と短時間内の変速動作
の完了とを両立し得るようにし、かかる自動変速機の油
圧制御装置の信頼性向上を図ることにある。
【0022】そして、本願の請求項4の発明(以下、第
4発明という)に係る自動変速機の油圧制御装置は、上
記第3発明に示す構成において、エンジン出力検出手段
で検出される所定の変速時におけるエンジン出力が低い
ときは、高いときに比べて、棚圧の初期値が小さく設定
されると共に、変速機構の回転数が所定の変速時に低下
する場合は、その棚圧の傾きが、エンジン出力が高いと
きに設定される棚圧の傾きと、それら二つの傾きの途中
で交差するように設定されることを特徴とする。
【0023】さらに、本願の請求項5の発明(以下、第
5発明という)に係る自動変速機の油圧制御装置は、変
速機構の動力伝達経路が複数の摩擦要素の選択的締結に
よって切り換えられるように構成され、かつ所定の変速
時に締結される摩擦要素に供給される作動油圧に形成さ
れる棚圧を調整する調圧手段が備えられた自動変速機の
油圧制御装置において、上記変速機構の回転数を検出す
る回転数検出手段と、所定の変速時に当該自動変速機の
伝達トルクを低下するようにエンジン出力を制御するエ
ンジン出力制御手段と、上記回転数検出手段で検出され
る変速機構の回転数の所定の変速時における変化に基づ
いて、上記棚圧の傾きを設定するように上記調圧手段を
制御すると共に、上記エンジン出力制御手段による所定
の変速時におけるエンジン出力に対する制御量に応じ
て、棚圧の初期値を設定するように上記調圧手段を制御
する油圧制御手段とが設けられて、上記変速機構の回転
数が所定の変速時に低下するときは、棚圧の傾きが時間
経過に対して上昇方向に設定され、上記回転数が所定の
変速時に増加するときは、棚圧の傾きが時間経過に対し
て下降方向に設定されるように油圧制御手段が調圧手段
を制御し、上記エンジン出力制御手段による所定の変速
時におけるエンジン出力に対する制御量が大きいとき
は、小さいときに比べて、棚圧の初期値が小さく設定さ
れると共にその傾きが大きく設定され、かつ変速機構の
回転数が所定の変速時に低下する場合は、その大きく設
定された棚圧の傾きが、上記エンジン出力に対する制御
量が小さいときに設定される棚圧の傾きと、それら二つ
の傾きの途中で交差するように設定されることを特徴と
する。
【0024】
【作用】上記の構成によれば次のような作用が得られ
る。
【0025】すなわち、第1〜第5発明のいずれにおい
ても、変速時における変速機構の回転数の変化に基づい
て、その変速中に供給される棚圧の傾きを調整するの
で、その変速時に起こる遠心力油圧の変化に影響される
ことのない適正な締結圧を形成することができ、変速時
の急激なトルクの伝達に伴う過度のショックを抑制する
ことができる。
【0026】また、第2発明では、変速機構の回転数が
変速時に低下する場合は、棚圧を時間の経過に伴って増
加させる制御を行う一方で、上記回転数が増加する場合
には、棚圧を低下させる制御を行うので、遠心力油圧が
変速動作の進行に伴って低下し、または増加しても実際
にクラッチピストンに作用する締結圧には、いずれの場
合においてもその変化の影響が加わらず、適正な棚圧の
形成が維持されることとなって、変速ショック緩和が有
効に図られることとなる。
【0027】さらに、第3発明では、エンジン出力検出
手段が設けられて、これによって検出されるエンジン出
力状態に応じた棚圧の傾きが設定され、特にエンジン出
力が低いときは棚圧の傾きが大きくなるように設定され
るので、スロットル開度が比較的小さい場合やトルクダ
ウン制御が行われる場合に、変速時間が短くなって遠心
力油圧の変化が短時間のうちに起こるようなときでも、
その急激な遠心力油圧の変化を的確に打ち消すような補
正が可能となり、その結果、変速時間の如何にかかわら
ず常に変速ショックを効果的に低減できることとなる。
【0028】そして、第4発明では、上記エンジン出力
検出手段によって検出されるエンジン出力状態に応じて
棚圧の初期値を設定し、エンジン出力が低いときは初期
値を低くすると共に棚圧の傾きを大きくするので、スロ
ットル開度が小さい場合やトルクダウン制御量が大きい
場合に棚圧レベルが過度に低く設定されることを防止で
き、所定の変速時に締結される摩擦要素が必要以上にス
リップすることによる変速時間の遅延の問題を解消する
ことができる。
【0029】一方、第5発明では、所定の変速時にトル
クダウン制御を行う場合に、その変速時における遠心力
油圧の変化を考慮したうえで、トルクダウン制御量に応
じた棚圧の初期値と傾きとを設定し、さらにその制御量
が大きいときは棚圧の初期値を小さく設定すると同時
に、その傾きを制御量が小さいときに比べて大きく設定
するので、トルクダウン制御に伴う変速時間の変化に影
響されることなく常に変速ショックを効果的に抑制で
き、かつ変速動作の遅延の発生を有効に防止できること
となる。
【0030】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。
【0031】まず、図1により実施例に係る自動変速機
10の機械的構成を説明すると、この自動変速機10
は、主たる構成要素として、トルクコンバータ20と、
該コンバータ20の出力により駆動される変速機構30
と、該機構30の動力伝達経路を切り換えるクラッチや
ブレーキなどの複数の摩擦要素41〜46及びワンウェ
イクラッチ51,52とを有し、これらにより走行レン
ジとしてのD,2,1の各前進レンジとR(後退)レン
ジとが得られ、Dレンジでの1〜4速、2レンジでの1
〜3速及び1レンジでの1,2速とが得られるようにな
っている。
【0032】上記トルクコンバータ20は、エンジン出
力軸1に連結されたケース21内に固設されたポンプ2
2と、該ポンプ22に対向状に配置されて該ポンプ22
により作動油を介して駆動されるタービン23と、該ポ
ンプ22とタービン23との間に介設され、かつ変速機
ケース11にワンウェイクラッチ24を介して支持され
てトルク増大作用を行うステータ25と、上記ケース2
1とタービン23との間に設けられ、該ケース21を介
してエンジン出力軸1とタービン23とを直結するロッ
クアップクラッチ26とで構成されている。そして、上
記タービン23の回転がタービンシャフト27を介して
変速機構30側に出力されるようになっている。ここ
で、上記エンジン出力軸1にはタービンシャフト27内
を貫通するポンプシャフト12が連結され、該シャフト
12により変速機後端部に備えられたオイルポンプ13
が駆動されるようになっている。
【0033】一方、上記変速機構30はラビニョ型プラ
ネタリギヤ装置で構成され、上記タービンシャフト27
上に遊嵌合された小径のスモールサンギヤ31と、該サ
ンギヤ31の後方において同じくタービンシャフト27
上に遊嵌合された大径のラージサンギヤ32と、上記ス
モールサンギヤ31に噛合された複数個のショートピニ
オンギヤ33と、前半部が該ショートピニオンギヤ33
に噛合され、かつ後半部が上記ラージサンギヤ32に噛
合されたロングピニオンギヤ34と、該ロングピニオン
ギヤ34及び上記ショートピニオンギヤ33を回転自在
に支持するキャリヤ35と、ロングピニオンギヤ34に
噛合されたリングギヤ36とで構成されている。
【0034】そして、上記タービンシャフト27とスモ
ールサンギヤ31との間に、フォワードクラッチ41と
第1ワンウェイクラッチ51とが直列に介設され、また
これらのクラッチ41,51に並列にコーストクラッチ
42が介設されていると共に、タービンシャフト27と
キャリヤ35との間には3−4クラッチ43が介設さ
れ、さらに該タービンシャフト27とラージサンギヤ3
2との間にリバースクラッチ44が介設されている。ま
た、上記ラージサンギヤ32とリバースクラッチ44と
の間には、ラージサンギヤ32を固定するバンドブレー
キでなる2−4ブレーキ45が設けられていると共に、
上記キャリヤ35と変速機ケース11との間には、該キ
ャリヤ35の反力を受け止める第2ワンウェイクラッチ
52と、キャリヤ35を固定するローリバースブレーキ
46とが並列に設けられている。そして、上記リングギ
ヤ36が出力ギヤ14に連結され、該出力ギヤ14から
差動装置を介して左右の車輪(図示せず)に回転が伝達
されるようになっている。なお、このとき上記3−4ク
ラッチ43を締結するための3−4クラッチピストン
(図示せず)がタービンシャフト27側に設けられてい
る。
【0035】ここで、上記各クラッチやブレーキなどの
摩擦要素41〜46及びワンウェイクラッチ51,52
の作動状態と変速段との関係をまとめると、次の表1に
示すようになる。
【0036】
【表1】 次に、上記各摩擦要素41〜46のアクチュエータに対
して油圧を給排する油圧制御回路について説明すると、
この自動変速機10には、図2に示すような油圧制御回
路60が備えられている。ここで、上記各アクチュエー
タのうち、2−4ブレーキ45の油圧アクチュエータ4
5aはアプライポート45bとリリースポート45cと
を有するサーボピストンで構成され、アプライポート4
5bのみに油圧が供給されているときに2−4ブレーキ
45を締結し、両ポート45b,45cとも油圧が供給
されていないとき及び両ポート45b,45cとも油圧
が供給されているときに、2−4ブレーキ45を解放す
るようになっている。また、その他の摩擦要素41〜4
4,46のアクチュエータは通常の油圧ピストンで構成
され、油圧が供給されたときに当該摩擦要素を締結す
る。
【0037】この油圧制御回路60には、主たる構成要
素として、図1に示すオイルポンプ13からメインライ
ン110に吐出された作動油の圧力を所定のライン圧に
調整するレギュレータバルブ61と、手動操作によって
レンジの選択を行うマニュアルバルブ62と、変速段に
応じて作動して各摩擦要素(アクチュエータ)41〜4
6に対する油圧の給排を行う第1、第2、第3シフトバ
ルブ63,64,65とが備えられている。
【0038】上記マニュアルバルブ62は、D,2,1
の各前進レンジと、Rレンジと、Nレンジと、Pレンジ
の設定が可能とされており、前進レンジでは、上記メイ
ンライン110を前進ライン111に、Rレンジでは後
退ライン112にそれぞれ接続させるようになってい
る。
【0039】また、上記第1、第2、第3シフトバルブ
63,64,65には、いずれも一端に制御ポート63
a,64a,65aが設けられている。そして,第1、
第2シフトバルブ63,64の各制御ポート63a,6
4aには、それぞれ上記前進ライン111から分岐され
た第1、第2制御圧ライン113,114が接続され、
また第3シフトバルブ65の制御ポート65aには、上
記メインライン110から分岐された第3制御圧ライン
115が接続されていると共に、これらの制御圧ライン
113,114,115には、それぞれ変速用の第1、
第2、第3ソレノイドバルブ66,67,68が設けら
れている。このうち第1、第2ソレノイドバルブ66,
67は、それぞれONのときに対応する制御ポート63
a,64aの制御圧を排圧して、第1、第2シフトバル
ブ63,64のスプールを図面上の左側に位置させ、ま
たOFFのときに上記制御ポート63a,64aに第
1、第2制御圧ライン113,114から制御圧を導入
して、スプールをそれぞれスプリングの付勢力に抗して
右側に位置させるようになっている。また、第3ソレノ
イドバルブ68については、ONのときに対応する制御
ポート65aの制御圧を排圧して、第3シフトバルブ6
5のスプールを図面上の右側に位置させ、またOFFの
ときに上記制御ポート65aに第3制御圧ライン115
から制御圧を導入して、この場合においてもスプリング
の付勢力に抗してスプールを左側に位置させるようにな
っている。
【0040】ここで、これらのソレノイドバルブ66〜
68は、後述するコントローラ200からの信号によ
り、当該自動車の車速とエンジンのスロットル開度とに
応じて予め設定されたマップに基づいてON,OFF制
御され、それに伴って各シフトバルブ63〜65のスプ
ールの位置が切り換わって各摩擦要素41〜46に通じ
る油路が切り換わることにより、これらの摩擦要素41
〜46が上記表1に示す組合せで締結され、これにより
変速段が運転状態に応じて切り換えられるようになって
いる。その場合に、D,2,1の前進レンジにおける各
変速段と各ソレノイドバルブ66〜68のON,OFF
の組合せパターンとの関係は、次の表2に示すように設
定されている。
【0041】
【表2】 一方、上記マニュアルバルブ62のスプールをD,2,
1の各前進レンジに設定したときにメインライン110
に連通される前進ライン111からはライン116が分
岐され、このライン116がフォワードクラッチライン
とされて、オリフィス69及びワンウェイオリフィス7
0を介してフォワードクラッチ41に導かれている。し
たがって、D,2,1レンジで、フォワードクラッチ4
1が常に締結されることになる。なお、上記フォワード
クラッチライン116には、上記ワンウェイオリフィス
70の下流側においてライン117を介してN−Dアキ
ュムレータ71が接続されている。
【0042】また、前進ライン111は、上記第1シフ
トバルブ63に導かれ、第1ソレノイドバルブ66がO
Nとなって該シフトバルブ63のスプールが左側に位置
したときにサーボアプライライン118に連通し、オリ
フィス72を介してサーボピストン45aのアプライポ
ート45bに至る。したがって、D,2,1レンジで第
1ソレノイドバルブ66がONのとき、すなわちDレン
ジでの2,3,4速、2レンジの2,3速及び1レンジ
の2速で、上記アプライポート45bに油圧(サーボア
プライ圧)が導入され、リリースポート45cに油圧
(サーボリリース圧)が導入されていないときに2−4
ブレーキ45が締結されることになる。なお、上記サー
ボアプライライン118にはライン119及びアキュー
ムカットバルブ73を介して1−2アキュムレータ74
が接続されている。
【0043】また、上記前進ライン111は、第3シフ
トバルブ65にも導かれ、第3ソレノイドバルブ68が
OFFで、該シフトバルブ65のスプールが左側に位置
するときにコーストクラッチライン120に連通する。
このコーストクラッチライン120は、コーストレデュ
ーシングバルブ75及びワンウェイオリフィス76を介
してコーストクラッチ42に至る。したがって、D,
2,1レンジで第3ソレノイドバルブ68がOFFのと
き、すなわちD,2レンジの3速、2,1レンジの2速
及び1レンジの1速でコーストクラッチ42が締結され
る。
【0044】さらに、前進ライン111は、第2シフト
バルブ64にも導かれている。そして、該ライン111
は、第2ソレノイドバルブ67がOFFで、第2シフト
バルブ64のスプールが右側に位置するときに3−4ク
ラッチライン121に連通する。このライン121は、
さらに3−4コントロールバルブ77を介して3−4ク
ラッチ43に至っている。したがって、D,2,1レン
ジで第2ソレノイドバルブ67がOFFのとき、すなわ
ちDレンジの3,4速及び2レンジの3速で3−4クラ
ッチ43が締結されることになる。
【0045】ここで、上記3−4クラッチライン121
から分岐されたライン122は第3シフトバルブ65に
導かれ、第3ソレノイドバルブ68がOFFで、該シフ
トバルブ65のスプールが左側に位置するときにサーボ
ピストン45aのリリースポート45cに通じるサーボ
リリースライン123に連通する。したがって、D,
2,1レンジで第2,第3ソレノイドバルブ67,68
が共にOFFのとき、すなわちDレンジの3速及び2レ
ンジの3速で、サーボピストン45aのリリースポート
45cにサーボリリース圧が導入され、2−4ブレーキ
45が解放される。
【0046】また、上記前進ライン111からはライン
124が分岐されており、このライン124も第1シフ
トバルブ63に導かれている。このライン124は、第
1ソレノイドバルブ66がOFFで、第1シフトバルブ
63のスプールが右側に位置するときに第2シフトバル
ブ64に通じるライン125に連通する。一方、第2シ
フトバルブ64には、第2ソレノイドバルブ67がON
で、該バルブ64のスプールが左側に位置するときに上
記ライン125に連通するライン126が接続され、こ
のライン126はローレデューシングバルブ79、ボー
ルバルブ78及びライン127を介して第3シフトバル
ブ65に導かれている。そして、このライン127が、
第3ソレノイドバルブ68がOFFで、第3シフトバル
ブ65のスプールが左側に位置するときに、ローリバー
スブレーキ46に通じるローリバースブレーキライン1
28に連通する。したがって、D,2,1レンジで第
1、第2、第3ソレノイドバルブ66〜68が、それぞ
れOFF,ON,OFFのとき、すなわち1レンジの1
速でローリバースブレーキ46が締結される。
【0047】さらに、Rレンジでメインライン110に
連通する後退ライン112は、該ライン112から分岐
されたライン129、オリフィス80、ワンウェイオリ
フィス81、上記ボールバルブ78及びライン127を
介して第3シフトバルブ65に導かれ、第3ソレノイド
バルブ68がOFFで該バルブ65のスプールが左側に
位置するときに上記ローリバースブレーキライン128
に連通する。また、この後退ライン112は、リバース
クラッチライン130とされて、作動油の供給時に開弁
するワンウェイバルブ82を介してリバースクラッチ4
4に至っている。したがって、Rレンジでは、第3ソレ
ノイドバルブ68がOFFのときにローリバースブレー
キ46が締結される一方、リバースクラッチ44が常に
締結されることになる。なお、上記ワンウェイオリフィ
ス81とボールバルブ78との間において上記ライン1
29から分岐されたライン131には、N−Rアキュム
レータ83が接続されている。
【0048】また、この油圧制御回路60には、図1に
示すトルクコンバータ20内のロックアップクラッチ2
6を制御するための第4シフトバルブ84と、ロックア
ップコントロールバルブ85とが備えられている。
【0049】そして、第4シフトバルブ84とロックア
ップコントロールバルブ85とには、レギュレータバル
ブ61からコンバータリリーフバルブ86を介して導か
れたコンバータライン132が接続されていると共に、
第4シフトバルブ84の一端に設けられた制御ポート8
4aには、メインライン110から分岐された制御圧ラ
イン134が接続されている。このライン134にロッ
クアップ用の第4ソレノイドバルブ87が設けられ、該
ソレノイドバルブ87がOFFのときに第4シフトバル
ブ84のスプールが左側に位置することにより、上記コ
ンバータライン132がトルクコンバータ20内のロッ
クアップ解放室26aに通じる解放ライン135に連通
し、これによってロックアップクラッチ26が解放され
てコンバータ状態となる。
【0050】一方、上記第4ソレノイドバルブ87がO
Nとなって、第4シフトバルブ84の制御ポート84a
から制御圧が排圧されることにより、該バルブ84のス
プールが図面上の右側に移動すると、上記コンバータラ
イン132がトルクコンバータ20内のロックアップ締
結室26bに通じる締結ライン136に連通し、これに
よってロックアップクラッチ26が締結される。そし
て、このとき、上記解放ライン135が第4シフトバル
ブ84及び中間ライン137を介してロックアップコン
トロールバルブ85に連通し、該コントロールバルブ8
5で調整された作動圧が、ロックアップ解放圧としてロ
ックアップクラッチ26のロックアップ解放室26aに
供給される。
【0051】つまり、上記ロックアップコントロールバ
ルブ85の一端の制御ポート85aには、メインライン
110からソレノイドレデューシングバルブ88を介し
て導かれた制御圧ライン138が接続されていると共
に、他端側の調圧阻止ポート85bには前進ライン11
1に通じる調圧阻止ライン139が接続されている。そ
して、上記制御圧ライン138に設けられたオリフィス
89の下流側には、第1デューティソレノイドバルブ9
0が設置され、この第1デューティソレノイドバルブ9
0に与えられるデューティ率に応じて、上記ロックアッ
プコントロールバルブ85の制御ポート85aに供給さ
れる制御圧を調整することにより、他端側の調圧阻止ポ
ート85bに調圧阻止ライン139を介してライン圧が
供給されていないことを条件として、コンバータインラ
イン132及び締結ライン136を介してロックアップ
締結室26bに供給される締結圧と、中間ライン137
及び解放ライン135を介してロックアップ解放室26
aに供給される解放圧との差圧が調整されて、ロックア
ップクラッチ26が所定のスリップ状態に制御される。
【0052】一方、ロックアップコントロールバルブ8
5の調圧阻止ポート85bに上記調圧阻止ライン139
を介してライン圧が供給されているときには、該コント
ロールバルブ85のスプールが左側に位置した状態で固
定される。したがって、ロックアップクラッチ26にお
けるロックアップ解放室26aの作動圧が、解放ライン
135、第4シフトバルブ84及び中間ライン137を
介してロックアップコントロールバルブ85のドレンポ
ートから排圧されることになり、ロックアップクラッチ
26が完全に締結されたロックアップ状態となる。その
場合に、上記ドレンポートには、径が適切に設定された
オリフィスが設けられており、これによって締結ライン
136を介してロックアップクラッチ26の締結室26
bに供給されている作動油が連通状態の解放室26aに
流入したとしても過剰に排出されることはない。
【0053】しかも、上記ロックアップコントロールバ
ルブ85の調圧阻止ポート85bに対するライン圧の供
給状態を制御することにより、ロックアップ状態とスリ
ップ状態とが切り換えられることになるので、該コント
ロールバルブ85の調圧レンジを小さく設定して、スリ
ップモードにおけるロックアップクラッチ26の締結力
を緻密に制御することが可能となる。
【0054】ここで、上記第1デューティソレノイドバ
ルブ90の動作特性は、図3に示すように、デューティ
率(D)の増大に伴ってデューティ制御圧が減少する特
性に設定されている。つまり、デューティ率(D)が1
00%のときには、そのドレンポートが常時開放された
状態となり、オリフィス89よりも下流側の制御圧ライ
ン138の圧力レベルが0となる。これに対して、デュ
ーティ率(D)が0のときには、ドレンポートが常時遮
断された状態となって上記圧力レベルが最大圧に保持さ
れることとなる。
【0055】さらに、この油圧制御回路60には、上記
レギュレータバルブ61によって調整されるライン圧の
制御用として、スロットルモデュレータバルブ91及び
該バルブ作動用の第2デューティソレノイドバルブ92
が備えられている。
【0056】上記スロットルモデュレータバルブ91に
は、上記ソレノイドレデューシングバルブ88を介して
メインライン110に通じるライン140が導かれてい
ると共に、一端側の制御ポート91aには周期的に開閉
する第2デューティソレノイドバルブ92によって調整
されたデューティ制御圧が導入され、このデューティソ
レノイドバルブ92のデューティ率に応じたスロットル
モデュレータ圧を生成するようになっている。その場合
に、上記デューティ率は、例えばエンジンのスロットル
開度などに応じて設定されるようになっており、これに
対応するスロットルモデュレータ圧がライン141を介
してレギュレータバルブ61の第1増圧ポート61aに
導入されることにより、該バルブ61で調整されるライ
ン圧がスロットル開度の増大に応じて増圧されるように
なっている。一方、レギュレータバルブ61に設けられ
た第2増圧ポート61bには後退ライン112から分岐
されたライン142が接続されている。これにより、R
レンジではライン圧が更に増圧されることになる。
【0057】そして、この実施例においては、ロックア
ップクラッチ26締結力調整用の第1デューティソレノ
イドバルブ90のデューティ率(D)で制御されたデュ
ーティ制御圧が、モデュレータバルブ93の制御ポート
93aにも供給されるようになっている。このモデュレ
ータバルブ93は、メインライン110からライン14
3を介して供給されるライン圧を上記第1デューティソ
レノイドバルブ90からのデューティ制御圧に応じて調
整することによりモデュレータ圧を生成して、そのモデ
ュレータ圧をライン144を介してN−Rアキュムレー
タ83の背圧室83aなどに供給するようになってい
る。
【0058】ここで、3−4クラッチライン121上の
3−4コントロールバルブ77の制御ポート77aに
は、上記ライン144から分岐されたライン145が接
続されている。したがって、第1デューティソレノイド
バルブ90をデューティ制御すれば、そのデューティ率
(D)に応じたモデュレータ圧が上記モデュレータバル
ブ93で生成されて、上記3−4コントロールバルブ7
7の制御ポート77aにライン144およびライン14
5を介して導入されることとなる。その結果、第2シフ
トバルブ64のスプールが右側に位置したときに、該バ
ルブ64からライン121を介して3−4コントロール
バルブ77に導入されるライン圧を調整できることとな
り、その調整された3−4クラッチ締結圧が前述のよう
にライン121を介して3−4クラッチ43に供給され
る。したがって、3−4クラッチ締結圧は、結局上記第
1デューティソレノイドバルブ90のデューティ率
(D)によって制御されることとなり、2−3変速時に
3−4クラッチ締結圧を3−4クラッチ43に供給する
ときに、上記デューティ率(D)を変化させることで、
3−4クラッチ締結圧に棚圧を形成することができ、か
つその棚圧の初期値および棚圧の傾きを調整することも
可能となる。
【0059】一方、この3−4コントロールバルブ77
には、その一端側に調圧(減圧)動作を阻止する調圧阻
止ポート77bが設けられていると共に、この調圧阻止
ポート77bに切換バルブ94及びライン146を介し
てメインライン110に通じる調圧阻止ライン147が
接続されている。そして、この調圧阻止ライン147が
切換バルブ94を介して上記ライン146に連通してい
るときに、メインライン110のライン圧が3−4コン
トロールバルブ77の調圧阻止ポート77bに供給され
て、該コントロールバルブ77の調圧動作を阻止するよ
うになっている。
【0060】つまり、上記切換バルブ94の一端側の制
御ポート94aには、上記制御圧ライン138における
オリフィス89と第1デューティソレノイドバルブ90
との間から分岐されたライン148が接続されると共
に、他端側のバランスポート94bには、上記オリフィ
ス89の上流側で制御圧ライン138から分岐されたラ
イン149が接続されている。そして、第1デューティ
ソレノイドバルブ90で生成されるデューティ制御圧が
所定値以上のときに、上記切換バルブ94におけるスプ
ールが図面上の左側に位置することになって調圧阻止ラ
イン147がメインライン110に通じるライン146
に連通し、該ライン146を介してメインライン110
のライン圧が上記3−4コントロールバルブ77の調圧
阻止ポート77bに供給されることにより、該コントロ
ールバルブ77の調圧動作が阻止されるのである。一
方、第1デューティソレノイドバルブ90で生成される
デューティ制御圧が所定値よりも低下したときには、上
記切換バルブ94のスプールがスプリング力などに打ち
勝って右側に移動し、これによって調圧阻止ライン14
7が上記ライン146から切り離される。
【0061】ここで、切換バルブ94には、スプールが
右側に位置したときに上記調圧阻止ライン147に連通
されるライン150が接続されている。このライン15
0はロックアップ制御用の第4シフトバルブ84に導か
れて、該シフトバルブ84のスプールが右側に位置する
ときに、メインライン110に通じるライン151に連
通するようになっている。つまり、第4ソレノイドバル
ブ87がONとされて、ロックアップクラッチ26の締
結力が制御可能なときには、メインライン110のライ
ン圧が、ライン151、第4シフトバルブ84及びライ
ン150を介して調圧阻止ライン147に導かれること
になる。なお、第4シフトバルブ84のスプールが左側
に位置するコンバータ状態においては、該シフトバルブ
84に設けられたドレンポートに対して上記ライン15
0が連通するようになっている。
【0062】また、上記切換バルブ94には、第1シフ
トバルブ63のスプールが右側に位置した状態のときに
サーボアプライライン118に連通するドレンライン1
59が接続されている。そして、このドレンライン15
9が絞り量の異なる2つのドレンポートに対して選択的
に連通されるようになっている。なお、この実施例にお
いては、図面上の右側に位置するドレンポートの方が左
側のものよりも小さな絞り量とされている。
【0063】ここで、第1シフトバルブ63には、3−
4コントロールバルブ77用の調圧阻止ライン147か
ら分岐されたライン152が接続されていると共に、第
1ソレノイドバルブ66がONで第1シフトバルブ63
のスプールが左側に位置したときに、第1背圧室74a
にメインライン110のライン圧が常時導入されている
1−2アキュムレータ74の第2背圧ポート74bに通
じるライン153と上記ライン152とが連通するよう
に構成されている。したがって、調圧阻止ライン147
にライン圧が供給されているときには、第1シフトバル
ブ63のスプールが左側に位置しているときに限り、こ
のライン圧がライン152及びライン153を介して上
記1−2アキュムレータ74の第2背圧室74bに導入
されることになる。
【0064】また、サーボピストン45aにおけるアプ
ライポート45bに通じるサーボアプライライン118
から分岐されて、上記1−2アキュムレータ74に通じ
るライン119上に設置されたアキュームカットバルブ
73には、その一端側の制御ポート73aに、3−4コ
ントロールバルブ77の下流側で3−4クラッチライン
121から分岐されたライン154が接続されていると
共に、他端側に設けられたアキュームカット阻止ポート
73bには、ボールバルブ95及びライン155を介し
て上記ロックアップコントロールバルブ85の調圧阻止
用の調圧阻止ライン139に通じるライン156が接続
されている。そして、このアキュームカットバルブ73
の中間部分に設けられた中間ポート73cには、第2シ
フトバルブ64に接続されたライン126から分岐され
たライン157が接続されている。
【0065】なお、アキュームカットバルブ73のアキ
ュームカット阻止ポート73bに通じるライン156が
接続された上記ボールバルブ95には、上記切換バルブ
94と第4シフトバルブ84との間に介設されたライン
150から分岐されたライン158も接続されている。
【0066】以上の構成に加えて、この油圧制御回路6
0には、主として変速タイミングの調整用に使用される
第5シフトバルブ96が備えられている。この第5シフ
トバルブ96は、サーボアプライライン118上のオリ
フィス72をバイパスする第1バイパスライン160
と、リバースクラッチライン130上のワンウェイバル
ブ82をバイパスする第2バイパスライン161と、ロ
ックアップコントロールバルブ85の調圧阻止ポート8
5bに導かれるロックアップ用調圧阻止ライン139と
に跨がって設置されていると共に、一端側の制御ポート
96aにはメインライン110から分岐された制御圧ラ
イン162が導かれている。そして、この制御圧ライン
162に設置された第5ソレノイドバルブ97をON,
OFF切り換えすることにより、上記第5シフトバルブ
96のスプールの位置が切り換わって、上記第1、第2
バイパスライン160,161及び調圧阻止ライン13
9が開通もしくは遮断されるようになっている。
【0067】つまり、上記第5ソレノイドバルブ97が
OFFで、第5シフトバルブ96のスプールが図面上の
右側に位置するときには、第1バイパスライン160、
第2バイパスライン161及び調圧阻止ライン139が
それぞれ開通される。このとき、第2バイパスライン1
61の下流部分はオリフィス80及びワンウェイオリフ
ィス81が設けられたライン129に連通して、該ライ
ン129を介してリバースクラッチライン130ないし
後退ライン112に連通される。一方、第5ソレノイド
バルブ97がONとされて、第5シフトバルブ96のス
プールが図面上の左側に移動したときには、第1バイパ
スライン160、第2バイパスライン161及び調圧阻
止ライン139がそれぞれ遮断される。
【0068】また、上記第1バイパスライン160に
は、第5シフトバルブ96よりも下流側に位置して、作
動油の供給方向に絞り作用を行うワンウェイオリフィス
98が設けられていると共に、第5シフトバルブ96よ
りも上流側には通常のオリフィス99が設けられてい
る。そして、このオリフィス99の上流側で上記第1バ
イパスライン160から分岐されたラインには、該オリ
フィス99よりも小さな絞り量に設定されたオリフィス
100と、作動油の供給方向の通過を阻止するワンウェ
イバルブ101とが設けられていると共に、この分岐ラ
インが、第5ソレノイドバルブ97がONで、第5シフ
トバルブ96のスプールが左側に位置したときに、該バ
ルブ96よりも下流側で第1バイパスライン160に合
流されるようになっている。
【0069】そして、この自動変速機10には、図4に
示すように、変速制御用の第1〜第3ソレノイドバルブ
66〜68、ロックアップ用の第4ソレノイドバルブ8
7及び第1デューティソレノイドバルブ90、ライン圧
調整用の第2デューティソレノイドバルブ92並びに第
5ソレノイドバルブ97の作動を制御するコントローラ
200が備えられている。このコントローラ200は、
当該自動車の車速を検出する車速センサ201からの信
号、エンジンのスロットル開度を検出するスロットル開
度センサ202からの信号、当該自動変速機10に備え
られたシフトレバーの位置(レンジ)を検出するシフト
位置センサ203からの信号、エンジン回転数を検出す
るエンジン回転数センサ204からの信号、トルクコン
バータ20のタービン回転数を検出するタービン回転数
センサ205からの信号、作動油の油温を検出する油温
センサ206からの信号などを入力し、これらの信号に
よって示される運転状態や運転者の要求に応じて上記各
ソレノイドバルブの作動を制御することにより当該車両
の変速がなされる。
【0070】また、この実施例においては、所定の変速
時にエンジンの出力を低下することにより、その変速時
に締結される摩擦要素に伝達される入力トルクを低減す
るトルクダウン制御を行うようになされている。すなわ
ち、上記コントローラ200は、各センサからの信号に
基づいて変速を実行するときは、エンジン207側に設
けられたエンジンコントローラ208に変速信号と共に
トルクダウン信号を出力し、そのトルクダウン信号を入
力したエンジンコントローラ208は、スロットル開度
とエンジン水温とを図5に示すようなエンジン制御のパ
ターンに当てはめることにより、燃料噴射制限または点
火時期のリタードを行うのである。このとき図5から明
らかなように、スロットル開度が大きくなるにしたがっ
てエンジンに対する制御量が大きく設定されているが、
スロットル開度が所定値以下の場合は、エンジンの状態
を良好に保つためにトルクダウン制御は行われない。ま
た、エンジン水温が所定値以下の場合においても同様の
理由からトルクダウン制御は実行されないようになって
いる。
【0071】そして、エンジンコントローラ208は、
そのように決定されたトルクダウン制御量の信号を上記
コントローラ200に出力することにより、その信号を
入力したコントローラ200が油圧制御回路に配設され
た上記各ソレノイドバルブの作動を上記トルクダウン制
御量に応じて調整することとなる。
【0072】次に、本発明の特徴部分について、3−4
クラッチ43が締結される2−3変速時を例に説明す
る。
【0073】図6に拡大して示すように、2−3変速時
には変速機構内に設けられた3−4クラッチピストン
(図示せず)に3−4コントロールバルブ77からライ
ン121を介して作動油圧が締結用油圧として供給され
ることにより、3−4クラッチ43が締結される。この
ときに、3−4クラッチピストンに実際に作用する3−
4クラッチ締結圧は、ライン121を介して供給される
作動油圧と、クラッチピストン内で発生する遠心力油圧
との和であることから、2−3変速時に上記変速機構が
ギヤ比の違いによってその回転速度が低下すると、遠心
力油圧が変速の進行に伴って低くなり、3−4クラッチ
締結圧も全体として変速後期に低下してしまう。その結
果、変速初期にトルク伝達が増大して変速ショックが発
生する。
【0074】そして、前述したように、上記バルブ77
から締結用油圧として供給される作動油圧はモデュレー
タバルブ93からライン144およびライン145を介
して制御ポート77aに供給されるモデュレータ圧によ
って制御され、かつそのモデュレータ圧はモデュレータ
バルブ93の制御ポート93aに供給されるデューティ
制御圧に応じて、ライン143を介してメインライン1
10から供給されるライン圧を調圧することにより生成
される。なおかつ、該デューティ制御圧は第1デューテ
ィソレノイドバルブ90のデューティ率(D)により上
記図3のように可変調圧されてモデュレータバルブ93
に供給されるのであるから、結局2−3変速時に変速機
構の回転数が低下することにより遠心力油圧が減少した
分を補うような棚圧、すなわち変速後期に油圧が高くな
る棚圧を形成するように、第1デューティソレノイドバ
ルブ90をデューティ制御することによって、2−3変
速時における3−4クラッチピストンに実際に作用する
3−4クラッチ締結圧に、遠心力油圧の変化に影響され
ない理想的な棚圧を形成することができ、変速初期に発
生するショックを解消できることとなる。
【0075】図6に示すモデュレータバルブ93のスプ
ールの位置において、図中の下の位置は、第1デューテ
ィソレノイドバルブ90のデューティ率(D)が、例え
ば0%で最大圧のデューティ制御圧が制御ポート93a
に供給されている場合を示し、この場合は上記スプール
が左側に位置するので、ライン143を介してメインラ
イン110から供給されるライン圧がモデュレータバル
ブ93によって調圧されることなく、ライン144およ
びライン145を介して3−4コントロールバルブ77
の制御ポート77aにモデュレータ圧として供給され
る。
【0076】その結果、3−4コントロールバルブ77
のスプールが左側に位置(図中の下の位置)するので、
該バルブ77を挟んだ3−4クラッチライン121の連
通状態が全開となって3−4クラッチ43に供給される
作動油圧が最大となる。
【0077】一方、第1デューティソレノイドバルブ9
0のデューティ率(D)が、例えば100%の場合は、
前述のようにデューティ制御圧の圧力レベルが0となる
ので、モデュレータバルブ93のスプールは右側に位置
(図中の上の位置)し、ライン143を介したライン圧
の供給が遮断されると共に、ライン144がモデュレー
タバルブ93に設けられたドレンに接続される。その結
果、3−4コントロールバルブ77の制御ポート77a
内のモデュレータ圧が排圧され、3−4コントロールバ
ルブ77のスプールは右側に位置(図中の上の位置)す
る。したがって、3−4クラッチ43に供給されていた
作動油圧が上記ライン121を介し該バルブ77に設け
られたドレンから排圧されるので、3−4クラッチ締結
圧がが低く調整される。
【0078】次に、変速時にトルクダウン制御を併せて
行う場合の上記コントローラ200の制御動作に基づい
て本発明をさらに詳しく説明する。
【0079】図7に示すように、まずコントローラ20
0はステップS1で2−3変速指令であるか否かを判定
し、2−3変速であればステップS2において各種信号
を読み込む。この各種信号とは、上記各センサ201〜
206からの信号と、スロットル開度およびエンジン水
温が共に所定値以上で実際にトルクダウン制御が行われ
るときのエンジンコントローラ208からのトルクダウ
ン制御量の信号である。
【0080】そして、次にステップS3において、読み
込まれたトルクダウン制御量(TD)を図8に示すマッ
プに当てはめて第1油圧上昇率(α)を決定する。この
第1油圧上昇率(α)は、トルクダウン制御を実行する
ときの3−4コントロールバルブ77から供給される棚
圧の上昇率であって、この上昇率(α)によって棚圧の
傾きが設定される。そして、トルクダウン制御量(T
D)が大きくなるにしたがって棚圧の傾きが大きくなる
ように設定されているので、後述するように棚圧初期値
が低く設定されて棚圧レベルが全体に低下する場合でも
変速時間の遅延を防止できることとなり、適正な時間内
に変速動作が完了することとなる。
【0081】次に、ステップS4において、読み込まれ
たタービン回転数(NT)を図9に示すマップに当ては
めて第2油圧上昇率(β)を決定する。この第2油圧上
昇率(β)は、3−4クラッチピストンが設けられてい
る側のタービンの回転数(NT)の変化に応じて設定さ
れ、該回転数が大きいほど上記上昇率(β)が増して棚
圧の傾きが大きくなるように設定されている。変速開始
時のタービン回転数が大きい場合は、それだけ変速終了
後のタービン回転数との変化の差が大きいので、遠心力
油圧の低下率も大きくなる。図9に示すような第2油圧
上昇率(β)の設定は、かかる遠心力油圧の大きな変化
を考慮したものである。その結果、3−4クラッチピス
トンに作用する締結圧において、遠心力油圧の変化スピ
ードに影響されることなく、常に良好な棚圧の形成が図
られることとなる。
【0082】次に、ステップS5において、読み込まれ
たスロットル開度(TVO)を図10に示すマップに当
てはめて3−4クラッチベース圧(Pb)を決定する。
この3−4クラッチベース圧(Pb)は、スロットル開
度(TVO)をパラメータとして、例えば図10に示す
ような値になるように予め設定されたもので、棚圧の初
期値を定める値である。全体としてスロットル開度(T
VO)が大きくなるにしたがって3−4クラッチベース
圧(Pb)も大きくなるように設定されている。スロッ
トル開度が大きくなるに伴ってエンジン出力が増大する
結果、3−4クラッチの締結必要圧が高くなることを考
慮したものである。
【0083】次に、ステップS6において、読み込まれ
たトルクダウン制御量(TD)を図11に示すマップに
当てはめて初期圧調整値(ΔP)を決定する。この初期
圧調整値(ΔP)は、ステップS5で決定されたベース
圧(Pb)、すなわち棚圧初期値をトルクダウン制御量
に応じて補正するもので、エンジンコントローラ208
が行うトルクダウン制御が大きいほど上記調整値(Δ
P)を大きく設定して棚圧初期値を低くしようとするも
のである。トルクダウン制御量が大きく、エンジン出力
が大幅に低減されるときは、3−4クラッチの締結必要
圧が低くなることを考慮して上記ステップS5で決定さ
れたベース圧(Pb)をトルクダウン制御量(TD)に
応じてさらに補正することにより、変速時のエンジン状
態に的確に対応した棚圧初期値の設定が可能となり、上
記ステップS3で決定された棚圧の傾きと併せて適正な
棚圧が形成されることとなる。
【0084】そして、ステップS7でタイマーをリセッ
トした後、ステップS8において、上記のようにそれぞ
れ決定された各値を計算式に代入することにより、ライ
ン121から3−4クラッチ43に供給されるべき作動
油圧(P)を算出する。次に、ステップS9で、そうし
て算出された作動油圧(P)となるデューティ率(D)
を、例えば上記図3に示すようなマップから決定し、そ
の決定されたデューティ率(D)を、ステップS10に
おいて、第1デューティソレノイドバルブ90に出力す
る。その結果、前述のように、そのデューティ率(D)
に応じて生成されたデューティ制御圧がモデュレータバ
ルブ93に供給され、該バルブで調圧されたライン圧が
モデュレータ圧として3−4クラッチコントロールバル
ブ77に供給されて該バルブ77を制御し、そこで調圧
制御された3−4クラッチ圧が上記作動油圧(P)とな
って3−4クラッチ43に供給される。
【0085】このようにして、2−3変速時の遠心力油
圧の変化およびエンジンの出力状態に的確に対応した棚
圧が3−4クラッチ締結圧(Po)に形成されることと
なる。
【0086】そして、ステップS11において、まだ変
速が終了していないときは、ステップS12で上記タイ
マーを加算することにより棚圧の制御を変速終了まで続
行することとなる。
【0087】以上のように構成することにより、図12
に示すように、作動油圧(P)の棚圧が相対的に変速初
期に低く、変速後期に高くなるように設定されるので
(符号サの状態)、遠心力油圧(Pc)の減少変化(符
号シ)を打ち消して、3−4クラッチ締結圧(Po)に
おいて適正な棚圧が形成される(符号ス)。その結果、
出力軸トルク(B)は、イナーシャフェーズにおいてト
ルク変動のない理想的なトルク波形となり、効果的な変
速ショックの抑制を図ることができる。
【0088】また、トルクダウン制御量が大きいとき
は、図13に示すように、棚圧初期値を低く設定すると
共に棚圧の傾きが大きくなるように作動油圧(P)を調
整し(図中実線に対する符号タの状態)、トルクダウン
制御量が小さいときは、棚圧初期値を高く設定すると共
に棚圧の傾きが小さくなるように調整する(破線に対す
る符号チの状態)ので、3−4クラッチの締結必要圧の
変動に伴って締結に要する時間が変化しても適正な時間
内に変速動作が完了し、かつその締結時間の変化によっ
て遠心力油圧の変化率が変動しても、その変化率に的確
に対応して作動油圧(P)の棚圧の傾きを設定するの
で、トルクダウン制御量が大きいときでも(実線に対す
る符号ツ)、小さいときでも(実線に対する符号テ)、
その出力軸トルクにおいて理想的なトルク波形を常に維
持することができ、締結時のショックが有効に緩和され
ることとなる。
【0089】なお、この実施例では、一例としてクラッ
チピストンがタービンシャフト側に設けられた場合を説
明したが、変速中にその回転数が変化する変速機構内の
いずれの部材に設けられてもよいことはいうまでもな
い。
【0090】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、変速時に
おける変速機構の回転数の変化に基づいて、その変速中
に供給される棚圧の傾きを調整するので、その変速時に
起こる遠心力油圧の変化に影響されることのない適正な
締結圧を形成することができ、変速時の過度のショック
の発生を抑制することができる。
【0091】また、変速機構の回転数が変速時に低下す
る場合は、棚圧を時間の経過に伴って増加させる制御を
行う一方で、上記回転数が増加する場合には、棚圧を低
下させる制御を行うので、遠心力油圧が変速動作の進行
に伴って低下する場合においても増加する場合において
も、実際にクラッチピストンに作用する締結圧にはその
遠心力油圧の変化の影響が加わらず、適正な棚圧の形成
が維持されることとなって、変速ショック緩和が有効に
図られることとなる。
【0092】さらに、エンジン出力検出手段が設けられ
て、これによって検出されるエンジン出力状態に応じた
棚圧の傾きが設定され、特にエンジン出力が低いときは
棚圧の傾きが大きくなるように設定されるので、スロッ
トル開度が比較的小さい場合やトルクダウン制御が行わ
れる場合に、変速時間が短くなって遠心力油圧の変化が
短時間のうちに起こるようなときでも、その急激な遠心
力油圧の変化を的確に打ち消すような補正が可能とな
り、その結果、締結に必要な時間の変化にかかわらず常
に変速ショックを効果的に低減できることとなる。
【0093】そして、上記エンジン出力検出手段によっ
て検出されるエンジン出力状態に応じて棚圧の初期値を
設定し、エンジン出力が低いときは初期値を低くすると
共に棚圧の傾きを大きくするので、スロットル開度が小
さい場合やトルクダウン制御量が大きい場合に棚圧レベ
ルが過度に低く設定されることを防止でき、所定の変速
時に締結される摩擦要素が必要以上にスリップすること
による変速時間の遅延の問題を解消することができる。
【0094】一方、所定の変速時にトルクダウン制御を
行う場合に、その変速時における遠心力油圧の変化を考
慮したうえで、トルクダウン制御量に応じた棚圧の初期
値と傾きとを設定し、さらにその制御量が大きいときは
棚圧の初期値を小さく設定すると同時に、その傾きを制
御量が小さいときに比べて大きく設定するので、トルク
ダウン制御に伴う締結時間の変化に影響されることなく
常に変速ショックを効果的に抑制でき、かつ棚圧レベル
の変動に伴う変速動作の遅延の発生を有効に防止できる
こととなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例に係る自動変速機の骨子図である。
【図2】 実施例における自動変速機の油圧制御回路を
示す回路図である。
【図3】 実施例における調圧バルブの制御に関する説
明図である。
【図4】 図2の油圧回路における各ソレノイドバルブ
に対する制御システム図である。
【図5】 実施例におけるトルクダウン制御の説明図で
ある。
【図6】 2−3変速中における油圧制御回路の要部の
拡大図である。
【図7】 2−3変速時においてコントローラが行う制
御動作を示すフローチャートである。
【図8】 同じく2−3変速時の油圧制御に用いる特性
図である。
【図9】 同じく2−3変速時の油圧制御に用いる特性
図である。
【図10】 同じく2−3変速時の油圧制御に用いる特
性図である。
【図11】 同じく2−3変速時の油圧制御に用いる特
性図である。
【図12】 実施例における2−3変速時の各種油圧お
よびトルク波形の変化を示すタイムチャート図である。
【図13】 実施例における2−3変速時の作動油圧お
よびトルク波形の変化を示すタイムチャート図である。
【図14】 従来の問題点の説明図である。
【図15】 従来の問題点の説明図である。
【図16】 従来の問題点の説明図である。
【符号の説明】
10 自動変速機 30 変速機構 43 3−4クラッチ 45 2−4ブレーキ 77 3−4コントロールバルブ 90 第1デューティソレノイドバルブ 93 モデュレータバルブ 121 3−4クラッチライン 200 コントローラ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 安部 充俊 広島県安芸郡府中町新地3番1号 マツダ 株式会社内 (72)発明者 丸末 敏久 広島県安芸郡府中町新地3番1号 マツダ 株式会社内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 変速機構の動力伝達経路が複数の摩擦要
    素の選択的締結によって切り換えられるように構成さ
    れ、かつ所定の変速時に締結される摩擦要素に供給され
    る作動油圧に形成される棚圧を調整する調圧手段が備え
    られた自動変速機の油圧制御装置であって、上記変速機
    構の回転数を検出する回転数検出手段と、該検出手段で
    検出される回転数の所定の変速時における変化に基づい
    て、上記棚圧の傾きを設定するように上記調圧手段を制
    御する油圧制御手段とが設けられていることを特徴とす
    る自動変速機の油圧制御装置。
  2. 【請求項2】 変速機構の回転数が所定の変速時に低下
    するときは、棚圧の傾きが時間経過に対して上昇方向に
    設定され、上記回転数が所定の変速時に増加するとき
    は、棚圧の傾きが時間経過に対して下降方向に設定され
    るように油圧制御手段が調圧手段を制御することを特徴
    とする請求項1に記載の自動変速機の油圧制御装置。
  3. 【請求項3】 エンジンの出力状態を検出するエンジン
    出力検出手段が設けられて、該出力検出手段で検出され
    る所定の変速時におけるエンジン出力が低いときは、高
    いときに比べて、棚圧の傾きが大きく設定されるように
    油圧制御手段が調圧手段を制御することを特徴とする請
    求項1または請求項2のいずれかに記載の自動変速機の
    油圧制御装置。
  4. 【請求項4】 エンジン出力検出手段で検出される所定
    の変速時におけるエンジン出力が低いときは、高いとき
    に比べて、棚圧の初期値が小さく設定されると共に、変
    速機構の回転数が所定の変速時に低下する場合は、その
    棚圧の傾きが、エンジン出力が高いときに設定される棚
    圧の傾きと、それら二つの傾きの途中で交差するように
    設定されることを特徴とする請求項3に記載の自動変速
    機の油圧制御装置。
  5. 【請求項5】 変速機構の動力伝達経路が複数の摩擦要
    素の選択的締結によって切り換えられるように構成さ
    れ、かつ所定の変速時に締結される摩擦要素に供給され
    る作動油圧に形成される棚圧を調整する調圧手段が備え
    られた自動変速機の油圧制御装置であって、上記変速機
    構の回転数を検出する回転数検出手段と、所定の変速時
    に当該自動変速機の伝達トルクを低下するようにエンジ
    ン出力を制御するエンジン出力制御手段と、上記回転数
    検出手段で検出される変速機構の回転数の所定の変速時
    における変化に基づいて、上記棚圧の傾きを設定するよ
    うに上記調圧手段を制御すると共に、上記エンジン出力
    制御手段による所定の変速時におけるエンジン出力に対
    する制御量に応じて、その棚圧の初期値を設定するよう
    に上記調圧手段を制御する油圧制御手段とが設けられ
    て、上記変速機構の回転数が所定の変速時に低下すると
    きは、棚圧の傾きが時間経過に対して上昇方向に設定さ
    れ、上記回転数が所定の変速時に増加するときは、棚圧
    の傾きが時間経過に対して下降方向に設定されるように
    油圧制御手段が調圧手段を制御し、上記エンジン出力制
    御手段による所定の変速時におけるエンジン出力に対す
    る制御量が大きいときは、小さいときに比べて、棚圧の
    初期値が小さく設定されると共にその棚圧の傾きが大き
    く設定され、かつ変速機構の回転数が所定の変速時に低
    下する場合は、その大きく設定された棚圧の傾きが、上
    記エンジン出力に対する制御量が小さいときに設定され
    る棚圧の傾きと、それら二つの傾きの途中で交差するよ
    うに設定されることを特徴とする自動変速機の油圧制御
    装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2008106892A (ja) * 2006-10-27 2008-05-08 Denso Corp 自動変速機の制御装置

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