JPH0710232B2 - 脂質分解酵素および該酵素を用いたエステル合成、交換反応方法 - Google Patents

脂質分解酵素および該酵素を用いたエステル合成、交換反応方法

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JPH0710232B2
JPH0710232B2 JP62311550A JP31155087A JPH0710232B2 JP H0710232 B2 JPH0710232 B2 JP H0710232B2 JP 62311550 A JP62311550 A JP 62311550A JP 31155087 A JP31155087 A JP 31155087A JP H0710232 B2 JPH0710232 B2 JP H0710232B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、固定化された脂質分解酵素(リパーゼ、ホス
ホリパーゼ、コレステロールエステラーゼ等、以後酵素
と略称する場合もある)及びそのエステル合成,交換反
応への利用に関するものである。
〔従来の技術〕
エステル類の合成反応は、脂肪族1価アルコールと脂肪
酸によるワックスエステルの合成、モノグリセリド、ポ
リグリセリン脂肪酸エステル、糖エステルといった多価
アルコールと脂肪酸によるエステル合成、コレステリル
パルミテート等のステロイドエステル類、ゲラニルブチ
レート等のテルペンアルコールエステル類の製造方法と
して重要な技術である。
油脂類のエステル交換反応は、マーガリン・ショートニ
ング等の食用加工油脂の改質等に用いられるものとして
水素添加と並ぶ重要な技術である。
リン脂質についても、通常トランスホスファチジレーシ
ョンとして知られる塩基交換反応は有用な生理活性物質
等の製造方法として重要な技術である。
脂質分解酵素の1種であるリパーゼは温和な条件下で反
応すること、位置選択性、アルキル選択性等の特異性を
有することを利用して油脂及びエステル類の合成・交換
反応に利用されている。しかし、これらの反応はリパー
ゼ本来の加水分解反応と異なり水分の限定された系での
み進みうる反応である。一方リパーゼのエステル合成活
性や交換活性を増大せしめるためには、酵素として少量
の水分を必要とする。特開昭55−71797号公報に開示さ
れた低水分系の反応では、充分な反応速度が得られず、
また反応速度を増大させるために必要以上の水分を与え
ると、エステルの分解反応が優先的に進行するという問
題点がある。また特開昭60−19495号公報及び特開昭60
−203196号公報に開示された、反応を多水分系の分解工
程と、水分を除去する合成工程の二段階に分けて行う方
法の提案もあるが、後者の合成反応速度は通常のエステ
ル交換速度に比して充分であるとは言えず、工程操作の
複雑化も避けられない。
以上の問題点を解決し、かつリパーゼを効率的に使用す
る目的で、リパーゼを固定化する試みが行われてきた。
リパーゼの固定化により期待される利点は次の通りであ
る。従来リパーゼを水溶液の状態で使用すると油中に均
一に混合・分散することが困難であったが、リパーゼを
不溶性担体表面に固定化する事により油中に容易に分散
可能となり、かつ担体に適当量の水分を保持できるた
め、低水分下でのエステル合成・交換反応が行いやすく
なる。また触媒としてコストの高いリパーゼの回収再使
用がしやすく、エステル合成反応または交換反応の工業
的実施においても反応装置の連続化が容易となる点等で
ある。
しかし、以上のような利点を有する固定化酵素において
も、リパーゼの合成活性増大のために必要な水分量を保
持する事と、逆反応である加水分解の抑制とを両立する
には至っていない。例えば、Journal of American oil
Chemist's Society,第60巻,291−294(1983)にも微量
な水分を与えた場合加水分解反応が進行することが指摘
されている。また、水に代えてグリセリンのような多価
アルコールを添加した場合では加水分解反応はある程度
抑制されるが、エステル合成・交換反応は遅くなる。ま
た、酵素水分の保持を狙い多孔質担体、高吸水性樹脂を
キトサンで包括結合後、粉砕した担体を用いる方法(特
開昭59−213390号公報)によっても固定化酵素のエステ
ル合成・交換反応と分解反応を両立させるため、二段階
反応法(特開昭60−203196号公報)を採用している。ま
た特開昭60−98984号公報および特開昭61−202688号公
報には耐熱性を持ち80℃までの反応が可能なエステル交
換、エステル合成を目的とした固定化酵素についての開
示もあるが、その特徴とする60℃〜80℃という温度で
は、ジグリセリドの1,2位から1,3位への酵素的および非
酵素的転移が速く、カカオ脂に類似したグリセリドの2
位にオレイン酸を多く含有する対称型油脂の製造を目的
とする場合には、よりエステル交換反応速度の速い固定
化酵素の開発が望まれる。
〔発明が解決しようとする問題点〕
以上のようにエステル合成および交換反応においては反
応系内の水分を確実にコントロールするか、またはより
エステル合成および交換活性の高い固定化酵素の開発が
望まれる。
エステル交換反応についてみると、水分コントロールに
ついては先に述べた二段階反応(特開昭60−203196号公
報)においても行われているが、装置的にも煩雑である
こと、また第1段の分解工程において1,2−ジグリセリ
ドを選択的、高収率で得ることと、更に第2段で1,2−
ジグリセルドから1,3−ジグリセリドへの転移をさせる
ことなく、選択的にトリグリセリドを合成することは難
しく、特に温度が高くなるほどこの転移の悪影響を抑え
る事は難しくなり、溶剤の使用等が必要となる制約され
た条件に限られる。
またエステル合成反応についてみると、従来の方法では
ほとんどの例がリパーゼを水溶液として使用しており、
分解と合成の平衡関係が大きく分解にかたよっており、
目的とするエステルの収量は低いものにとどまっている
(特開昭51−7754号公報、特開昭61−187795号公報)。
しかし固定化酵素によって反応を行えば、より低水分条
件下においてもエステル合成が行われ、酵素の回収も容
易であるが、この場合においても通常の化学的方法と同
等の反応速度を得るためには、より高活性な固定化酵素
の開発が望まれる。
リパーゼのエステル合成およびエステル交換活性を増加
させる方法として、特開昭60−251884号公報に開示され
たリパーゼに油脂を加え加水分解反応をさせることによ
り、油脂と脂肪酸の共存下で固定化を行う方法や、特開
昭62−134090号公報に開示された脂肪酸誘導体の共存下
に乾燥する方法があるが、こうした方法により得られた
固定化リパーゼのエステル合成活性およびエステル交換
活性は前述の工業的実施にあたっては実質的には未だ充
分であるとは言えない。
一方酵素固定化における、活性収率の面から見ると、特
開昭52−87293号公報に開示されたイオン交換樹脂の有
機金属誘導体を担体としてリパーゼを固定化する方法
や、特開昭53−27787号公報に開示された多糖類の高級
脂肪酸エステルを担体としてリパーゼを固定化する方
法、あるいはEur.J.Appl.Microbiol.Biotechnol.に記載
されたY.Kimura等のイオン交換樹脂にリパーゼを単にイ
オン結合により固定化する方法等の従来の方法ではいず
れも低収率にとどまり、他の夾雑物の共存下でリパーゼ
を選択的に固定化することは極めて困難であると考えら
れていた。
〔問題点を解決するための手段〕
そこで、本発明者らは脂質分解酵素のエステル合成及び
エステル交換活性を増大させる因子について鋭意研究を
重ねた結果、脂質分解酵素にアルコール類、エーテル
類、カルボニル化合物類、ハロゲン化アルキル類から選
ばれた1種もしくは2種以上の油溶性化合物を共存させ
ることにより、分解活性のみならずエステル合成及びエ
ステル交換活性の増大が見られる事実を発見した。更に
本発明者らはこの事実をもとに、前記化合物と共に脂質
分解酵素を種々の不溶性担体上に吸着させる事に応用
し、本発明を完成するに到ったのである。
即ち、本発明は、アルコール類、エーテル類、カルボニ
ル化合物類、ハロゲン化アルキル類から選ばれた1種も
しくは2種以上の油溶性化合物の存在下で不溶性担体に
固定化された脂質分解酵素、この脂質分解酵素を用いた
エステル合成反応方法及びエステル交換反応方法に係わ
るものである。
本発明は、具体的には脂質分解酵素を含む溶液に不溶性
担体を添加し該担体上に脂質分解酵素を固定化する際
に、予め脂質分解酵素に前記油溶性化合物を接触結合さ
せるか、又は予め不溶性担体に前記油溶性化合物を吸着
させた後、乾燥もしくは乾燥せずそのまま酵素を固定化
させる事により、酵素の選択的吸着と分解活性のみなら
ずエステル合成活性およびエステル交換活性の著しい上
昇が見られたのである。
本発明の方法の最も好ましい点としては、第一に前記油
溶性化合物を脂質分解酵素に接触結合させておくことに
より著しく活性化できる点である。これは前述した様に
界面で働く脂質分解酵素は、界面に配向した時に活性を
発現する高次構造をとる。この高活性な状態を作り出す
のに必要な水不溶性の物質として比較的炭素数の大きな
アルコール、エーテル、カルボニル化合物、ハロゲン化
アルキルの様に分子内に疎水基と官能基を併せ持つ物質
が非常に良好であり、かつただ単にパラフィン類のよう
な非極性の界面を作る物質ではその効果がほとんどない
ことがわかった。
第二にリパーゼ等の脂質分解酵素においては、当然のこ
とながら水と油脂の界面で働くため、水溶液で使用した
場合には、界面と水溶液中に酵素の分散する平衡が存在
すると考えられ、水溶液中の酵素を全て有効に使用でき
ない。しかし固定化により不溶性担体表面上に並べるこ
とができれば、用いた酵素を効率良く利用する事が可能
となる。
第三に前記油溶性化合物を予め不溶性担体上に吸着させ
ておくことにより、酵素を含む培養液など他の夾雑蛋白
質や他の物質の中から酵素を短時間かつ選択的に高収率
で固定化できる点である。
すでに本発明者らはこれらの知見を応用して、少量の水
と油脂の共存下でリパーゼと不溶性担体を接触させ、界
面に配向させると同時に固定化を行うという発明を完成
し特許出願した(特開昭60−251884号公報)。今回本発
明者らは、さらにこれらの事実を解明し、各種の不溶性
担体に前記油溶性化合物を予め吸着させることに応用
し、該担体と酵素を接触固定化する際に、酵素を活性化
すると同時に短時間でかつ高濃度に該担体上に固定化が
可能となり、高活性な固定化酵素を製造できるという本
発明の完成に至ったものである。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の方法においては、脂質分解酵素にアルコール
類、エーテル類、カルボニル化合物類、ハロゲン化アル
キル類から選ばれた1種もしくは2種以上の油溶性化合
物を水溶液中で接触させて、活性化し、次いで該溶液に
不溶性担体を加えて接触させるか、或いは予め該油溶性
化合物を吸着させた不溶性担体に酵素液を接触させるこ
とにより該担体上に酵素を吸着固定化する。次いで該溶
液より不溶性担体を濾過し水または緩衝液により洗浄す
る。こうして得られた固定化酵素を必要に応じて乾燥さ
せ本発明の固定化酵素を得る。
本発明に用いる脂質分解酵素としては、リパーゼ、ホス
ホリパーゼ、コレステロールエステラーゼ、および各種
のエステラーゼが挙げられる。これらのうちリパーゼと
しては、位置選択性に優れたリゾプス(Rhizopus)属、
アスペルギルス(Aspergillus)属、ムコール(Mucou
r)属、脂肪酸特異性を有するジオトリケム(Geotrichu
m)属、特異性を示さないキャンディダ(Candida)属、
シュードモナス(Pseudomonas)属、ペニシリウム(Pen
icillium)属、クロモバクテリウム(Chromobacteriu
m)属等の微生物起源のリパーゼ及び膵臓リパーゼ等の
動物リパーゼが挙げられる。これらのうち、特に合成活
性の増加し易いリパーゼとしては中鎖以上のアルキル基
に活性位の強いリゾプス属、ムコール属、クロモバクテ
リウム属起源のリパーゼが一層好ましい。
コレステロールエステラーゼの例としては、キャンディ
ダ(Candida)属等の微生物起源のものが挙げられる。
また、ホスホリパーゼの例としては、キャベツ、ピーナ
ッツ、ニンジン等の植物由来のもの、およびストレプト
マイセス属等の微生物起源のものが挙げられる。
本発明に用いられる不溶性の担体としては、水およびア
ルコール、各種有機溶剤、油脂類に不溶性の担体なら何
れでも良く、セライト、ケイソウ土、カオリナイト、モ
レキュラーシーブ、多孔質ガラス、活性炭、炭酸カルシ
ウム、セラミックス等の無機担体、およびセルロースパ
ウダー、ポリビニルアルコール、キトサン、イオン交換
樹脂、吸着樹脂等の有機高分子の様なリパーゼ活性に影
響を与えず、操作上から物理的・化学的に安定なもので
あれば何れも使用できる。特に、不溶性担体内に疎水性
の部分を持つもの、例えば樹脂中の−CH2−部分の多い
もの、官能基にアルキル基の入ったものが、脂質分解酵
素の吸着性や基質としての脂質との相性からも好まし
い。また担体の形状としては、粉末状、顆粒状、繊維
状、スポンジ状等種々あるが、そのいずれでも使用でき
る。特に工程操作上の面からは400〜1000μmの粒径を
有し、細孔径100〜1500Åの多孔性の担体を用いるもの
が好適である。特にこの種の固定化担体として、マクロ
多孔性の吸着樹脂および弱アニオン交換樹脂が挙げられ
る。
本発明に用いる油溶性化合物とは、室温でエタノール、
アセトン、エーテル、クロロホルム、n−ヘキサン等の
有機溶剤のいずれかに可溶で水に不溶もしくは難溶の物
質をいい、疎水基部分として通常合計炭素数4〜36、好
ましくは8〜24の炭化水素基を有する物質をいう。
本発明で用いる油溶性のアルコールとしては特に規定は
ないが、炭素数4〜36、好ましくは8〜24の直鎖もしく
は分岐の脂肪族1価アルコール、例としてはオクチルア
ルコール、ラウリルアルコール等の飽和アルコール、オ
レイルアルコール等の不飽和アルコール、もしくは5−
デカノール、イソステアリルアルコール等の分岐状のも
のでもよい。さらにヘキサメチレングリコール等の2価
アルコールや多価アルコールも有効である。
このほかに、アルキル置換フェノール等のフェノール化
合物や、コレステロール、スチグマステロール、ブラシ
カステロール、カンベステロール等のステロール類が挙
げられる。又、フィトール、ゲラニオール、ファルネソ
ール、リナロール等のテルペンアルコール類、レチノー
ル、トコフェロール等の脂溶性ビタミン類も有効であ
る。
エーテルの例としては、ジオクチルエーテル等の長鎖の
エーテル類、チミルアルコール、バチルアルコール等の
グリセリルエーテル類、またはグリシジルエーテル等の
グリセリド類似化合物、トリエチレングリコールモノメ
チルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエー
テル等のポリオキシ化合物、前記アルコールのトリメチ
ルシリルエーテル誘導体、ポリメチルシロキサン等のシ
リコン化合物もよい。
カルボニル化合物の例としては、2,4−デカジエナー
ル、デカナール、ヘキサデカナール等の脂肪族アルデヒ
ド類、レチナール等のテルペン系アルデヒド類、2−オ
クタノン、2−デカノン、オクチルデシルケトン等の脂
肪族ケトン類等が挙げられる。
ハロゲン化アルキルの例としては、オレイルクロライ
ド、オクチルクロライド、オクチルブロマイドのような
長鎖アルキルハライド等が挙げられる。
上記の油溶性の化合物はいずれも常温で液状であること
が工程操作上好ましいがこれに限定されるものではな
い。またこれらは単体で用いてもよいが、適当な組み合
せにより一層の効果が発揮される場合もある。
前記油溶性化合物と脂質分解酵素との接触方法として
は、水溶液中にこれらの物質をそのまま加えても良い
が、分散性を良くするため溶剤に油溶性化合物を一旦分
散・溶解させた後に酵素を加えることもよい。適当な溶
剤としてはクロロホルム、n−ヘキサン、ジエチルエー
テル等があげあれる。油溶性化合物と酵素の比率は、酵
素1重量部(乾燥重量)に対し油溶性化合物0.001〜
1、好ましくは0.01〜0.5重量部が適当であるが、これ
に限定されるものではない。適当な接触温度としては0
〜100℃、好ましくは5〜60℃がよい。適当な処理時間
としては5分〜5時間程度で良い。次いでこれらの接触
処理をした後の酵素液に必要に応じて各種不溶性担体を
加えて固定化を行なう。
本発明の他の方法としては、前記油溶性化合物を各種不
溶性担体に予め吸着させておくことが出来る。吸着方法
としては不溶性担体を水溶液中に分散させ、該水溶液中
に前記油溶性化合物をそのまま加えても良いが、分散性
を良くするため溶剤に一旦分散・溶解させた後に加える
こともよい。適当な溶剤としてはクロロホルム、n−ヘ
キサン、ジエチルエーテル等があげられる。これらの油
溶性化合物と不溶性担体の比率は、担体1重量部(乾燥
重量)に対し油溶性化合物0.001〜1、好ましくは0.01
〜0.5重量部が適当であるが、これに限定されるもので
はない。以上の処理をした担体は必要に応じて一旦該溶
液より濾過した後乾燥する。こうして処理した不溶性担
体を、酵素の水性溶液あるいは酵素を含む発酵液と接触
させることにより固定化を行なう。
本発明において、酵素と担体を接触させる時間としては
5分〜20時間、このましくは30分〜2時間が適当であ
る。接触処理した後該溶液より濾別し必要に応じて乾燥
する。適当な乾燥温度としては室温〜80℃が良く、減圧
下での乾燥が乾燥速度の点から好ましいが、これに限定
されるものではない。
本発明において固定化を行う温度としては、酵素の失活
の起きない温度であればよく、0〜60℃、好ましくは20
〜40℃がよい。また酵素溶液のpHは酵素の変性が起きな
いような範囲であればよく、pH3〜9であればよい。特
に至適pHが酸性とされている酵素を用いる場合に最大の
活性を得るには、pH4〜6とすることがよい。また酵素
溶液に用いる緩衝液の種類は特に規定しないが、一般的
な酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液等を用
いることができる。
本発明における固定化方法において、水溶液中の酵素濃
度は特に限定されないが、固定化効率の点から前記酵素
の溶解度以下でかつ充分な濃度であることが望ましい。
また必要に応じて不溶部を遠心分離により除去し、上澄
を使用しても良い。また酵素と固定化担体の使用割合は
固定化担体1重量部に対して、酵素0.01〜10、好ましく
は0.05〜5重量部が適当であるが、特にこれに限定され
るものではない。
本発明において、固定化前の担体に、多官能性試薬を用
いて架橋することにより、固定化酵素の繰り返し使用に
おける耐久性向上をはかることができる。多官能性の架
橋試薬としては、グリオキザール、グルタルアルデヒ
ド、マロンアルデヒド、スクシニルアルデヒドなどのポ
リアルデヒド類が好ましく、ヘキサメチレンジチオイソ
シアネート、N,N′−エチレンビスマレイミドなども使
用可能である。また、カルボジイミド類も使用できる。
本発明における固定化酵素を用いたエステル合成反応の
例として、通常のメタノール、エタノール、プロパノー
ル、オレイルアルコール等の1価アルコール、ないしは
プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトールおよ
びポリグリセリン等の多価アルコール、またはゲラニオ
ール、シトロネロール、メントール等のテルペンアルコ
ール、あるいはコレステロール等のステロールと、炭素
数2〜24の脂肪酸とのエステル化反応が挙げられる。
エステル合成反応な20〜90℃、より好ましくは30〜80℃
で無溶剤、もしくは炭化水素、エーテル等の不活性溶剤
中で行う。またアルコールと脂肪酸の量はこれらの価
数、目的物に応じ適宜調整する。例えばジグリセリドの
合成を目的とする場合はグリセリン1モルに対し、脂肪
酸約2モル、モノグリセリドの合成を目的とするときは
グリセリン1モルに対し、脂肪酸約1モルを反応させ
る。
またエステル交換反応の例としては、エステルと脂肪酸
によるアシドリシス反応、エステルとアルコールによる
アルコリシス反応、エステル同士によるインターエステ
ル化反応、リン脂質と各種アルコールとのトランスホス
ファチジレーション等の反応が挙げられる。
本発明のエステル交換反応に用いる油脂としては大豆
油、オリーブ油、パーム油等の植物油脂、牛脂、豚脂、
魚油等の動物油脂が挙げられる。これらの油脂は単独で
用いてもよいが2種以上の油脂を用いるか(インターエ
ステル化反応)、油脂と高級脂肪酸(アシドリシス反
応)あるいは油脂と高級脂肪酸の低級アルコールエステ
ル間(インターエステル化反応)でエステル交換するこ
とが好ましい。特定の油脂と他の油脂、脂肪酸もしくは
その誘導体間でエステル交換する場合、両者の量比は特
定の油脂1重量部に対し他の物質は0.05〜20重量部、好
ましくは0.1〜10重量部でないと油脂の改良効果は得ら
れにくい。特に好ましいのは、パーム油等の2位にオレ
イン酸残基を多く有する油脂とステアリン酸とのエステ
ル交換である。この反応においてはステアリン酸の融点
が高く、油脂の粘度が高いため、カラム反応で連続エス
テル交換反応を無溶剤で行うためには、反応系の温度を
60〜90℃に保つ必要がある。本発明の固定化酵素はこの
目的に好適であり、また得られる油脂はチョコレート用
として有用なものである。
〔発明の効果〕
本発明の方法は、リパーゼ等の脂質分解酵素の持つ合成
活性を十分に発揮させる為のものであり、油溶性のアル
コール、エーテル、カルボニル化合物、ハロゲン化アル
キルから選ばれた1種もしくは2種以上を酵素と接触結
合させるか、或いは不溶性担体上に予め吸着させておく
ことにより、酵素の活性化と選択的吸着固定化が同時に
可能となり、分解活性のみならずエステル交換活性、合
成活性の増大が起こる事を発見した結果から得たもので
ある。
本発明の効果として、特に位置選択性リパーゼを本発明
の方法で固定化して得た固定化リパーゼは著しい活性を
有し、グリセリドの2位にオレイン酸を多く含有する油
脂と、飽和の脂肪酸とのアシドリシス反応により、天然
のカカオ脂に類似した構造を有する対称型の油脂の製造
を目的とした場合に、ジグリセリドの副生および非対称
型への転移とそれに伴う三飽和グリセリドの副生の低減
が可能となる。
またエステル類の合成においては、従来の酵素法では反
応の進行に伴って生成する水分により反応が平衡に到達
するため、エステル化が進行しなくなる。そこで反応系
を減圧にする等の脱水操作によってエステル化をさらに
進めようとするが、こうした操作により酵素のエステル
合成活性の低下は避けられない。こうした場合に本発明
の方法による固定化酵素を用いると、低水分条件下にお
いても十分なエステル合成活性を保持しているため、短
時間の間に高いエステル化率が達成され、反応の長時間
化による着色および異臭の生成等、品質の低下が見られ
ないという利点を有する。
以上のように本発明により、脂質分解酵素を界面での活
性剤にした状態で固定化することによりエステル合成お
よびエステル交換活性が増大することを発見し、工業的
実施にあたって簡便かつ廉価に固定化酵素を製造するこ
とができる。
〔実施例〕
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本
発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1 市販のリパーゼ〔リゾプス・ジャポニカス(Rhizopus・
japonicus)起源のリパーゼ製剤、商品名:リパーゼ・A
10、大阪細菌研究所株式会社製、35,000Unit/g〕10gをp
H5.0の10mMの酢酸緩衝液100mlに溶解した。
該溶液にオクチルアルコール(試薬、東京化成製)2gを
加え、20℃で30分間接触させた。
次いで福本等の方法(J.Gen.Appl.Microbiol.,98,353
(1963))に従い、オリーブ油乳化液5mlと0.1M燐酸緩
衝液4mlに、所定量のリパーゼ溶液を加え、37℃にて30
分間反応したときに生成する脂肪酸の量をオレイン酸と
して1μmol/minに相当するものを1unitとしてリパーゼ
活性を測定した所、オクチルアルコールを添加処理しな
い場合に比べて1.5倍の活性上昇が見られた。
このオクチルアルコールとリパーゼの混合溶液100ml
に、市販の弱アニオン交換樹脂〔フェノールホルムアル
デヒド系樹脂、商品名:デュオライト(Duolite)A−5
68、ダイヤモンドシャムロック社製〕10gを加え30分攪
拌する事によりオレイルアルコールの結合したリパーゼ
を該担体上に吸着させた。次ぎに該樹脂を溶液から濾別
した後イオン交換水にて洗浄した。このとき濾液のリパ
ーゼ活性から、92%のリパーゼが固定化されていた。こ
うして得られた樹脂を水分5%となる様に常温にて減圧
乾燥して固定化酵素を得た。
実施例2 市販の弱アニオン交換樹脂〔フェノールホルムアルデヒ
ド系樹脂、商品名:デュオライト(Duolite)A−568、
ダイヤモンドシャムロック社製〕10gを100mlのイオン交
換水に加え、次いでオクチルアルコール(試薬、東京化
成製)2gを加え30℃で30分攪拌した。次ぎに該樹脂を溶
液から濾別した後イオン交換水にて洗浄した。
実施例1で用いた市販のリパーゼ10gをpH5.0の10mMの酢
酸緩衝液100mlに溶解した。この溶液に先に調整した樹
脂を全量加え2時間攪拌した。次に該懸濁液より樹脂を
濾別し、水で洗浄した。このとき濾液中のリパーゼ活性
より求めた活性収率は96%となり、加えたリパーゼのほ
とんどが吸着固定化されている事が分かった。次いで水
分5%となるように常温にて減圧乾燥を行い固定化リパ
ーゼを得た。
比較例1 実施例2で用いた市販の樹脂をそのまま無処理で用いた
以外は実施例2と同様な方法を行い固定化リパーゼを得
た。
実施例3 実施例2でオクチルアルコールに代えてオレイルアルコ
ールを用いた以外は全く同様の操作を行い固定化リパー
ゼを得た。
実施例4 実施例1ないし3及び比較例1で得られた固定化リパー
ゼ各々1gを、オレイルアルコール(試薬、東京化成製)
9.8g及びオレイン酸(試薬、東京化成製)10.2gと混合
し、65℃にて攪拌しながらエステル化反応を行なった。
反応開始10分後に反応液の一部を試料として取り出し、
基準油脂分析試験法に従って試料の酸価を測定した。試
料の酸価より次式によりエステル化速度を求めた。
ここでAV:10分後の試料の酸価 SW:試料の重量(g) EW:酵素の重量(g) をあらわす。
これらの結果は第1表に示した。
実施例5 この例では実施例2において、ネクチルアルコールにか
えて、オレイルクロライド(試薬、東京化成製)を用い
た以外は全く同様の操作を行って固定化酵素を得た。
実施例6 実施例1〜3、5及び比較例1で得られた固定化リパー
ゼをそれぞれ1g用いて、パーム油中融点部(沃素価32.
5、ジグリセリド含量4.6%)10gと市販のステアリン酸
〔商品名ルナックS−90,ステアリン酸純度93%,花王
株式会社製〕10gを加え70℃で5時間反応を行った。反
応後カラムクロマトグラフィー(固定相フロリジル、フ
ロリジン社製、展開溶剤:ヘキサン/エチルエーテル=
2/3)によりグリセリド画分を分離し、グリセリド中に
含まれるステアリン酸含量をガスクロマトグラフィーに
より分析し、次式で示される平衡値を100%とした反応
率を算出した。
上の式において、 St:t時間後の油脂中のステアリン酸含量 So:原料油脂中のステアリン酸含量 S∞:1,3ランダム平衡時のステアリン酸含量を意味す
る。
結果は第2表にまとめて示した。いずれの実施例の場合
も5時間でほぼ反応が平衡に到達し、副生物の生成も比
較例に比べ少なかった。
実施例7 実施例1で用いた市販のリパーゼ10gをpH5の50mM酢酸緩
衝液100mlに溶解させた。該溶液に油溶性のテルペンア
ルコールとして、ファルネソール(試薬:和光純薬工業
株式会社製)、ゲラニオール(高砂香料株式会社製)、
フィトール(試薬:東京化成株式会社製)を各々2g加
え、20℃にて30分間攪拌した。次いで実施例1で用いた
市販の弱アニオン交換樹脂10gを前記酵素・油溶性化合
物混合溶液中に加え、2時間攪拌した。次ぎに該溶液よ
り樹脂を濾別し、イオン交換水で洗浄した。次いで水分
5%となるように常温にて減圧乾燥を行い固定化リパー
ゼを得た。
このときの酵素吸着率は第3表に示したが、何れも高収
率で固定化されている事が確かめられた。
こうして得られた固定化酵素を用いて、実施例4及び実
施例6と同様に各々エステル合成反応、エステル交換反
応を行なった結果、何れも高い活性を示した。
各々の結果は第4表及び第5表に示した。
実施例8 実施例2で用いたオクチルアルコールに代えて、オレイ
ルアルコールのトリメチルシリル(TMS)エーテルを用
いた以外は全く同様の操作を行い固定化リパーゼを得
た。
ここで得られた固定化リパーゼを用いて実施例6と同様
にエステル交換反応を行なった。結果は第6表に示し
た。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アルコール類、エーテル類、カルボニル化
    合物類、ハロゲン化アルキル類から選ばれた1種もしく
    は2種以上の油溶性化合物の存在下で不溶性担体に固定
    化された脂質分解酵素。
  2. 【請求項2】油溶性化合物の疎水基部分が合計炭素数4
    〜36の炭化水素基である特許請求の範囲第1項記載の脂
    質分解酵素。
  3. 【請求項3】油溶性化合物が不溶性担体上もしくは不溶
    性担体内に予め存在するものである特許請求の範囲第1
    項又は第2項記載の脂質分解酵素。
  4. 【請求項4】アルコール類、エーテル類、カルボニル化
    合物類、ハロゲン化アルキル類から選ばれた1種もしく
    は2種以上の油溶性化合物の存在下で不溶性担体に固定
    化された脂質分解酵素を用いることを特徴とするエステ
    ル合成反応方法。
  5. 【請求項5】アルコール類、エーテル類、カルボニル化
    合物類、ハロゲン化アルキル類から選ばれた1種もしく
    は2種以上の油溶性化合物の存在下で不溶性担体に固定
    化された脂質分解酵素を用いることを特徴とするエステ
    ル交換反応方法。
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