JP2004222594A - ジグリセリドの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高濃度の高度不飽和脂肪酸含有ジグリセリドを効率良く製造する方法を提供すること。
【解決手段】高度不飽和脂肪酸含有油脂に対し、水とリパーゼの存在下でグリセリンを作用させてグリセロリシス反応を行い、得られた高度不飽和脂肪酸含有部分グリセリドと、脂肪酸又はその低級アルキルエステルとを、固定化部分グリセリドリパーゼの存在下に反応させる高度不飽和脂肪酸含有ジグリセリドの製造方法。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高度不飽和脂肪酸含有ジグリセリドを高濃度に、かつ効率良く製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ジグリセリドは、油脂の可塑性改良用添加剤、食品、医薬品、化粧品等の分野に利用され、最近、ジグリセリドの優れた生理活性に着目した食品が注目されている。一方、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)等の高度不飽和脂肪酸(PUFA)の生理活性も注目されており、特にDHAは、血小板凝集抑制作用、血中中性脂肪低下作用、血中コレステロール低下作用、制癌作用、脳機能向上効果等を有することが知られている。このため、高濃度にPUFAを含有する油脂の製造法が精力的に研究開発されている。
【0003】
一般的にPUFAは天然界においてはトリグリセリドの形で存在しているが、その含有量は低い。PUFAを分離・精製する方法としては、クロマトグラフィー法、尿素付加法、ウインタリング法、分子蒸留法、液液分配法、二重結合への付加物による方法、超臨界抽出法、及びこれらを組合わせた方法が知られている。しかしながら、これらの方法においては、いずれも工程が煩雑で効率が悪く、高コストとなってしまう。
【0004】
そこで、簡便かつ高効率に、直接トリグリセリドの形でPUFA画分を濃縮する方法として、リパーゼを用いてトリグリセリドの加水分解を行う酵素法がある。すなわち、一般にリパーゼはPUFAに対する作用が弱いため、この特性を利用し、トリグリセリド中のPUFA以外の構成脂肪酸のエステル結合を選択的に加水分解し、遊離酸を除去することでPUFA含有トリグリセリドを濃縮できる。例えば、Candida属由来のリパーゼを用いて濃縮する方法(例えば、特許文献1参照)のように、PUFA含有トリグリセリドを濃縮する方法は多数研究されている。
【0005】
一方、PUFA含有ジグリセリドの製造法についての例は僅かである。一例として、PUFA又はその低級アルコールエステルとグリセリンとを耐熱性リパーゼを用いて反応させるPUFA含有グリセリドの製造法があるが(特許文献2参照)、この方法では、反応温度が50〜70℃と酵素反応としてはやや高く、特殊な酵素を使用しており、かつ高濃度にジグリセリドを得ることはできない。また、リパーゼの存在下、油脂とグリセリンを反応させるいわゆる酵素グリセロリシス法として、アルカリ性リパーゼを用い、アルカリ剤の存在下に油脂分解を行いモノグリセライドを得る方法(特許文献3参照)、30℃から5℃まで段階的に温度を下げながら反応を行いPUFA含有部分グリセリドを得る方法が知られている(特許文献4参照)。これら酵素グリセロリシス法は、前記耐熱性リパーゼを用いたエステル化法に比べ短時間で反応を行うことができるが、これらも、主生成物としてジグリセリドを得ようとする方法ではなく、高濃度のジグリセリドを製造することはできない。
【0006】
【特許文献1】
特開昭58−165796号公報
【特許文献2】
特開昭62−91188号公報
【特許文献3】
特開平03−187385号公報
【特許文献4】
特開平08−214892号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、高濃度のPUFA含有ジグリセリドを効率良く製造する方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、PUFA含有油脂をリパーゼの存在下でのグリセロリシス反応に付した後、固定化部分グリセリドリパーゼの存在下に脂肪酸又はそのエステルを反応させることにより、緩和な条件かつ短時間での、高濃度のPUFA含有ジグリセリドを製造することが可能となることを見出した。
【0009】
すなわち本発明は、PUFA含有油脂に対し、水とリパーゼの存在下でグリセリンを作用させてグリセロリシス反応を行い、得られたPUFA含有部分グリセリドと、脂肪酸又はその低級アルキルエステルとを、固定化部分グリセリドリパーゼの存在下に反応させるPUFA含有ジグリセリドの製造方法を提供するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
〔第一段階〕
本発明方法の第一段階である酵素グリセロリシスにおいては、原料としてPUFA含有油脂、リパーゼ、グリセリン及び水を用いる。ここでいう高度不飽和脂肪酸(PUFA)とは、二重結合を3個以上有する炭素数20以上の脂肪酸を意味する。具体的には、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、アラキドン酸(AA)等が好ましいものとして挙げられる。PUFA含有油脂としては、イワシ、サバ、マグロなどの魚油や藻類、菌類などの天然油や、これらをリパーゼ等を用いて選択的加水分解することによりPUFAを濃縮した油脂を使用することもできる。
【0011】
リパーゼとしては、キャンディダ(Candida)属、ムコール(Mucor)属、リゾプス(Rhizopus)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、ペニシリウム(Penicillium)属、バチルス(Bacillus)属、ジオトリカム(Geotrichum)属、サーモマイセス(Thermomyces)属、フサリウム(Fusarium)属等、好ましくはキャンディダ(Candida)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、より具体的にはCandida rugosa、Pseudomonas fluorescence、Pseudomonas cepacia等を起源とするリパーゼを使用することができる。市販品としては、例えば『リパーゼAK「アマノ」』、『リパーゼPS「アマノ」』(いずれも天野エンザイム社)等がある。また、該リパーゼを各種担体(セライト、ケイソウ土、シリカゲル、イオン交換樹脂など)に保持させた固定化リパーゼを使用することもできる。これらのリパーゼ又は固定化リパーゼの多くは市販品として容易に入手することができる。リパーゼの使用量は、反応原料に対し0.1〜30重量%、特に0.5〜10重量%が好ましい。
【0012】
酵素グリセロリシス反応における加水量は、PUFA含有油脂重量の0.2〜10%、特に0.5〜5%が好ましい。また、全脂肪酸基と全グリセリル基の反応モル比〔全脂肪酸基(mol)/全グリセリル基(mol)〕は、0.3〜1.5、特に0.5〜1.0が好ましい。上記反応モル比の範囲内であれば、反応原料中には、PUFA含有油脂とグリセリンと水のほかに、脂肪酸や部分グリセリドが存在してもよい。
【0013】
反応温度は、原料及び生成物の融点、酵素の熱安定性により変化するが、20〜70℃、特に30〜50℃が、反応性及びPUFAの安定性の点で好ましい。
【0014】
〔第二段階〕
第二段階では、第一段階で得られたPUFA含有部分グリセリドに、固定化部分グリセリドリパーゼの存在下、脂肪酸又はその低級アルキルエステルを反応させる。ここで、PUFA含有部分グリセリドとしては、第一段階で得られた生成物から単に余剰グリセリンを除去した反応混合液(トリグリセリドをも含んでいる)を、そのまま第二段階に使用することができる。
【0015】
第二段階で使用する部分グリセリドリパーゼは、モノグリセリド及びジグリセリドの部分グリセリドを加水分解するが、トリグリセリドを加水分解しないリパーゼである。部分グリセリドリパーゼとしては、ラット小腸、ブタ脂肪組織などの動物臓器由来のモノグリセリドリパーゼ又はジグリセリドリパーゼ;バチルス・スピーシーズ(Bacillus sp.)H−257由来モノグリセリドリパーゼ(J. Biochem., 127, 419−425, 2000)、シュードモナス・スピーシーズ(Pseudomonas sp.)LP7315由来モノグリセリドリパーゼ(Journal of Bioscience and Bioengineering, 91(1), 27−32, 2001)、ペニシリウム・サイクロピウム由来リパーゼ(J.Biochem, 87(1), 205−211, 1980)、ペニシリウム・カメンベルティ(Penicillium camembertii)U−150由来リパーゼ(J. Fermentation and Bioengineering, 72(3), 162−167, 1991)等が挙げられ、中でもペニシリウム(Penicillium)属由来のリパーゼが好ましい。市販品としては、例えば『リパーゼG「アマノ」50』(天野エンザイム社)等がある。
【0016】
本発明で使用する固定化部分グリセリドリパーゼは、上記部分グリセリドリパーゼが、セライト、ケイソウ土、カオリナイト、シリカゲル、モレキュラーシーブス、多孔質ガラス、活性炭、炭酸カルシウム、セラミックス等の無機担体;セルロースパウダー、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、キトサン、イオン交換樹脂、疎水吸着樹脂、キレート樹脂、合成吸着樹脂等の有機高分子等の固定化担体に固定されたものであるが、特にイオン交換樹脂に固定化されたものが好ましい。
【0017】
イオン交換樹脂としては、多孔性の陰イオン交換樹脂が好ましい。樹脂の粒子径は100〜1000μmが望ましく、細孔径は100〜1500Åが望ましい。この細孔が酵素吸着に大きな表面積を与え、より大きな吸着量を得ることができる。樹脂の材質としては、フェノールホルムアルデヒド系、ポリスチレン系、アクリルアミド系、ジビニルベンゼン系等が挙げられる。特にフェノールホルムアルデヒド系樹脂(商品名Duolite A−568)が望ましい。
【0018】
部分グリセリドリパーゼの固定化温度は、酵素の失活の起きない温度であればよく、0〜60℃、特に5〜45℃が好ましい。また固定化に用いる酵素水溶液のpHは、酵素の変性が起きないような範囲であればよく、pH3〜9が好ましい。特に至適pHが酸性とされているリパーゼを用いる場合に最大の活性を得るには、pH4〜6とするのがよい。また酵素水溶液に用いる緩衝液としては、一般的な酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液等を用いることができる。酵素水溶液中の部分グリセリドリパーゼの濃度は、固定化効率の点から、該酵素の溶解度以下で、かつ十分な濃度であることが望ましい。また必要に応じて不溶部を遠心分離により除去し、上清を使用してもよい。また部分グリセリドリパーゼと固定化担体の使用割合は、固定化担体1重量部に対して、部分グリセリドリパーゼ0.05〜10重量部、特に0.1〜5重量部が好ましい。
【0019】
本発明では、高活性を発現するような吸着状態にするため、固定化の前処理として、固定化担体を脂溶性脂肪酸又はその誘導体で処理することが好ましい。またこれらは単一で用いてもよいが、2種以上を組み合わせることで一層の効果が発揮される。これらの脂溶性脂肪酸又はその誘導体と固定化担体の接触法としては、水又は有機溶剤中にこれらをそのまま加えてもよいが、分散性を良くするため、有機溶剤に脂溶性脂肪酸又はその誘導体を一旦分散・溶解させた後、水に分散させた固定化担体に加えてもよい。この有機溶剤としては、クロロホルム、ヘキサン、エタノール等が挙げられる。脂溶性脂肪酸又はその誘導体と固定化担体の比率は、固定化担体1重量部(乾燥重量)に対し、脂溶性脂肪酸又はその誘導体0.01〜5重量部、特に0.1〜2重量部が好ましい。接触温度は、0〜100℃、特に20〜60℃が好ましい。接触時間は、5分〜5時間程度でよい。本処理後濾過して固定化担体を回収するが、この時乾燥してもよい。乾燥温度は室温〜100℃が良く、減圧乾燥を行ってもよい。
【0020】
この固定化担体処理に用いられる脂溶性脂肪酸としては、炭素数4〜24の直鎖又は分岐鎖の、飽和又は不飽和の、水酸基が置換していてもよい脂肪酸が挙げられる。好ましい脂溶性脂肪酸としては、炭素数8〜18の脂肪酸、例えば、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸等の直鎖飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸等の不飽和脂肪酸、リシノール酸等のヒドロキシ脂肪酸、イソステアリン酸等の分岐脂肪酸が挙げられる。脂溶性脂肪酸誘導体としては、炭素数8〜18の脂肪酸と水酸基を有する化合物とのエステルが挙げられ、1価アルコールエステル、多価アルコールエステル、リン脂質、あるいはこれらのエステルに更にエチレンオキサイドを付加した誘導体等が例示される。1価アルコールエステルとしては、メチルエステル、エチルエステル等が、多価アルコールエステルとしては、モノグリセリド、ジグリセリド、及びそれらの誘導体、あるいはポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル等が挙げられる。これらの脂肪酸及びその誘導体は、いずれも常温で液状であることが工程上望ましい。これらの脂溶性脂肪酸又はその誘導体としては、上記脂肪酸の混合物、例えば大豆脂肪酸などの天然由来の脂肪酸を用いることもできる。
【0021】
第二段階において、PUFA含有部分グリセリドに反応させる脂肪酸としては、炭素数4〜22の飽和又は不飽和脂肪酸が好ましく、例えば酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ゾーマリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ガドレン酸、アラキン酸、ベヘン酸、エルカ酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸等を用いることができる。また上記脂肪酸とエステルを形成する低級アルコールとしては、炭素数1〜6の低級アルコール類が好ましい。炭素数1〜3の低級アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノールなどが挙げられる。これらの脂肪酸又はその低級アルキルエステルは、2種以上を併用することもできる。また、上記脂肪酸の混合物、例えば大豆脂肪酸などの天然由来の脂肪酸を用いることもできる。
【0022】
この反応において、脂肪酸又はそのエステルの使用量は、R=〔脂肪酸又はその低級アルキルエステル及びPUFA含有部分グリセリド(モノグリセリド+ジグリセリド)中の脂肪酸基(mol)〕/〔PUFA含有部分グリセリド(モノグリセリド+ジグリセリド)中のグリセリル基(mol)〕としたときに、Rが1.5〜2.6、特に1.7〜2.4となる範囲が好ましい。
【0023】
反応温度は、原料及び生成物の融点、酵素の熱安定性により変化するが、20〜70℃、特に30〜50℃が反応性及びPUFAの安定性の点で好ましい。
【0024】
本発明方法によれば、PUFA含有ジグリセリドを、ジグリセリド濃度〔ジグリセリド/全グリセリド×100〕60重量%以上で製造することができる。
【0025】
得られるグリセリドのジグリセリド濃度をより高めるために、反応は、反応液の酸価(AV)を経時的に測定しながら行い、ジグリセリド濃度60重量%以上を達成するためには、酸価が、50R−55>AV>70R−150(ただし、AV>0)を満たす範囲内で、反応を終了させることが好ましい。
【0026】
本条件に従うことにより、原料仕込み比、反応温度、酵素濃度等の条件が変わった場合にも、当該変更に影響なく、高濃度のジグリセリドを製造することができる。すなわち、酸価が上記範囲外の時点で反応を終了させた場合には、充分なジグリセリド濃度が得られず、好ましくない。
【0027】
【実施例】
固定化酵素製造例
Duolite A−568(Rohm & Hass社)10gを0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液100mL中で1時間攪拌した後、100mLの蒸留水で1時間洗浄し、500mMの酢酸緩衝液(pH5)100mLで2時間、次いで50mMの酢酸緩衝液(pH5)100mLで2時間ずつ2回、pHの平衡化を行った。濾過して担体を回収し、エタノール50mLでエタノール置換を30分間行った。濾過した後、リシノール酸を10g含むエタノール50mLを加え30分間、リシノール酸を担体に吸着させた。濾過して担体を回収し、50mMの酢酸緩衝液(pH5)50mLで4回洗浄し、エタノールを除去した後、濾過して担体を回収した。この担体に、市販の部分グリセリドリパーゼ(リパーゼG「アマノ」50,天野エンザイム社)20gを50mMの酢酸緩衝液(pH5)180mLに溶解した酵素液を2時間接触させ、固定化を行った。濾過し、固定化酵素を回収して、50mMの酢酸緩衝液(pH5)50mLで洗浄を行い、固定化していない酵素や蛋白を除去した。以上の操作はいずれも20℃で行った。固定化後の酵素液の残存活性と固定化前の酵素液の活性差より固定化率を求めたところ、95%であった。その後、大豆脂肪酸40gを加え、40℃下で減圧脱水を行った後、濾過して大豆脂肪酸と分離し、固定化酵素とした。こうして得られた固定化酵素を、使用前に実際に反応を行う基質で洗浄した。
【0028】
実施例1
PUFA含有油脂(DHA−46G,日本化学飼料社,DHA含有率46重量%)100gとグリセリン36.4g(モル比で脂肪酸基/グリセリル基=0.6)、蒸留水1.7g(加水量1.7重量%(対油脂))を混合し、リパーゼPS「アマノ」を4g添加し、温度40℃、窒素気流下で攪拌しながら22時間グリセロリシス反応させた(第一段階)。反応終了後、余剰グリセリンを除去し、グリセロリシス反応混合液とした。その後、該反応混合液100gにPUFA含有脂肪酸(DHA含有率44重量%)10g〔(脂肪酸、モノグリセリド及びジグリセリド中の脂肪酸基)/(モノグリセリド及びジグリセリド中のグリセリル基)のモル比R=2.05〕と洗浄した固定化リパーゼG11g(乾燥重量)を混合し、温度40℃、減圧下で、反応液の酸価を経時的に測定しながら、エステル化反応を70時間行った(第二段階)。このときの反応液の酸価は3.3であった。反応液をHPLCで分析し、グリセリド組成及び未反応物の分析を行った。また反応液をTLCプレートに展開(展開溶媒:クロロホルム/アセトン/メタノール=93.5/4.5/2.0vol%)して各グリセリドに分画、酢酸エチルで溶離させ、脱溶剤後、GCで脂肪酸組成分析を行った。結果を表1に示す。DG濃度は60.7重量%と高濃度であり、DG中のDHA含有率も40重量%と高かった。
【0029】
比較例1
PUFA含有脂肪酸(DHA含有率44重量%)とグリセリン80g(モル比で脂肪酸基/グリセリル基=2.36)に市販の固定化酵素である1,3位選択性リパーゼ:Lipozyme RM IM(Novozymes社)4gを添加し、50℃、減圧下で、反応液の酸価を経時的に測定しながら、エステル化反応を48時間行った。このときの反応液の酸価は45.2であった。
DG濃度は37.6重量%と低く、高濃度にDGを製造できなかった。
【0030】
比較例2
実施例1で得られたグリセロリシス反応混合液100gにPUFA含有脂肪酸(DHA含有率44重量%)10g〔(脂肪酸、モノグリセリド及びジグリセリド中の脂肪酸基)/(モノグリセリド及びジグリセリド中のグリセリル基)のモル比R=2.05〕と市販の固定化酵素である1,3位選択性リパーゼ:Lipozyme RM IM(Novozymes社)5.5gを混合し、温度50℃、減圧下で、反応液の酸価を経時的に測定しながら、エステル化反応を70時間行った。このときの反応液の酸価は8.8であった。
DG濃度は44.7重量%と低く、高濃度にDGを製造できなかった。
【0031】
【表1】
Figure 2004222594
【0032】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、高濃度のPUFA含有ジグリセリドが効率良く得られる。

Claims (5)

  1. 高度不飽和脂肪酸含有油脂に対し、水とリパーゼの存在下でグリセリンを作用させてグリセロリシス反応を行い、得られた高度不飽和脂肪酸含有部分グリセリドと、脂肪酸又はその低級アルキルエステルとを、固定化部分グリセリドリパーゼの存在下に反応させる高度不飽和脂肪酸含有ジグリセリドの製造方法。
  2. グリセロリシス反応における加水量が、高度不飽和脂肪酸含有油脂重量の0.2〜10%である請求項1記載の製造方法。
  3. グリセロリシス反応における全脂肪酸基と全グリセリル基の反応モル比〔全脂肪酸基(mol)/全グリセリル基(mol)〕が、0.3〜1.5である請求項1又は2記載の製造方法。
  4. 固定化部分グリセリドリパーゼが、脂溶性脂肪酸又はその誘導体で前処理された固定化担体に部分グリセリドリパーゼを固定化したものである請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 高度不飽和脂肪酸含有ジグリセリドを、ジグリセリド濃度〔ジグリセリド/全グリセリド×100〕60重量%以上で得るものである請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN105395925A (zh) * 2015-11-27 2016-03-16 杭州海王生物工程有限公司 一种以降血脂为基础的具有降血压和减肥功效的组合物
WO2019234057A1 (en) 2018-06-05 2019-12-12 Dsm Ip Assets B.V. Process for the production of diglycerides
WO2022211017A1 (ja) * 2021-04-01 2022-10-06 花王株式会社 油脂組成物

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