JPH0686680A - 自律複製配列を有するdna断片、同断片を含有するハイブリッドプラスミド、同ハイブリッドプラスミドにより形質転換した大腸菌及び当該dna断片の製造方法 - Google Patents

自律複製配列を有するdna断片、同断片を含有するハイブリッドプラスミド、同ハイブリッドプラスミドにより形質転換した大腸菌及び当該dna断片の製造方法

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JPH0686680A
JPH0686680A JP5162611A JP16261193A JPH0686680A JP H0686680 A JPH0686680 A JP H0686680A JP 5162611 A JP5162611 A JP 5162611A JP 16261193 A JP16261193 A JP 16261193A JP H0686680 A JPH0686680 A JP H0686680A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 ピキア属に属する宿主酵母で自律複製配列活
性を有するDNA断片、同DNA断片を含有するハイブ
リッドプラスミド及び同プラスミドで形質転換された宿
主の提供 【構成】 下記選択図に示す制限酵素地図を有すること
を特徴とするDNA断片を分離し、これをプラスミドの
DNA中に挿入し、得られたハイブリッドプラスミドを
用いてピキア属に属する酵母菌株を形質転換する。 【効果】 形質転換菌株中でのコピー数の多いプラスミ
ドが得られる。かくして所望のポリペプチドが発現され
ることとなる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は組換DNAについての
技術分野に関する。この発明の一つの側面は、ピキア
(Pichia)属の宿主において染色体外要素として
保持されるDNA断片に関する。この発明の他の側面
は、上述のDNA断片を組み込んだベクターの発現に関
する。更にもう一つのこの発明の側面は、上述の発現ベ
クターで形質転換した新規な微生物に関するものであ
る。
【0002】
【関連技術】組換DNA技術において使用される基本的
な技術は当業者には既知のことである。組換DNA技術
の実施に必要な宿主微生物に望まれる要素としては次の
ものがあるが、これのみに限定されるわけではない。 (1)ひとつ以上の所望のポリペプチドの遺伝情報を暗
号化して居り、かつ宿主微生物中で発現するに必要とさ
れる適切な調節配列を有していること。 (2)ベクター、通常はプラスミドであるが、その中に
調節配列を挿入できること。このベクターは細胞中への
遺伝子の導入を可能にし、細胞中でDNA配列を保持す
るのに役立つ。そのベクター中に自律複製配列が含まれ
ている場合は、細胞あたり当該ベクターの多数のコピー
が得られ、上述の遺伝子の発現も高水準となる。 (3)適切なる宿主微生物で、かつこの宿主は所望の遺
伝子を有するベクターで形質転換することができ、また
その宿主微生物は挿入された遺伝子により暗号化されて
いる情報の発現を許す細胞質の器具を有していること。
【0003】組換DNA技術に使用される基本的要素は
プラスミドであり、染色体外で、二重鎖のDNAで、あ
る種の微生物内で見出されたものである。天然に微生物
中に存在するとして見出されたプラスミドの場合、細胞
1個あたり多数のコピーがしばしば存在することが見出
されている。天然に存在するプラスミドに加えて、種々
の人工プラスミドやハイブリッドベクターも作成されて
いる。プラスミドDNA中に暗号化されている情報中に
含まれているもので、娘細胞中でプラスミドを再生する
ときに必要とされるもの、それは自律複製配列である。
一つ又はそれ以上の遺伝子表現型の選抜特性が、プラス
ミドDNA中に暗号化されている情報中に含まれていな
ければならない。この遺伝子表現型の選抜特性は、選抜
培地中で細胞の優先的成育により区別され、選抜されう
る利益を有する当該プラスミドを含有する宿主細胞のク
ローン化を可能とする。
【0004】プラスミドの利用性は、一種又は他の種類
の制限エンドヌクレアーゼ又は制限酵素、いずれも当該
プラスミド上に定まった特異的切断部位を認識するので
あるが、その酵素により特定の個所で切断されるという
事実に存する。切断した後、同属、又は宿主以外の微生
物由来の外来性の、遺伝子、あるいは遺伝子断片を、切
断部位又は切断部位に隣接し再構築された部位で、切断
されたプラスミドと所望の遺伝子材料との末端を結合さ
せることにより挿入する。生成した組換DNAはハイブ
リッドベクターと称することもできる。DNA組換は宿
主微生物の菌体外で行なわれる。生成したハイブリッド
ベクターは形質転換として知られている過程により宿主
微生物へと導入される。形質転換された微生物を成育さ
せることにより大量のハイブリッドベクターを得ること
ができる。遺伝子がそのDNA中に暗号化されている情
報の転写及び翻訳をつかさどるプラスミド中の場所に関
して正しく挿入された場合は、生成したハイブリッドベ
クターは挿入遺伝子をコード化したポリペプタイド配列
の生産を指示するために使用することができる。ポリペ
プチドのこの方法による生産を遺伝子発現という。
【0005】現在まで、種々のポリペプチドを生産する
ために組換DNA技術を商業的に使用しようとする試み
は宿主生物として大腸菌を用いるものに集中している。
しかし、ある場合には大腸菌は宿主として適切でないと
いうことが判明している。例えば、大腸菌は医薬品とし
て有用なポリペプチドから除外しなければならない有害
な発熱因子を多数含有している。この精製が良好に実施
されるための効率は、勿論、特定のポリペプチドにより
異なる。更に、大腸菌の蛋白分解能がある種の有用な製
品の収率を著しく制限する。これら及びその他の点を配
慮し、代替宿主、特にポリペプチドの生産のために真核
生物を使用することに興味の対象が移りつつある。
【0006】真核系すなわち酵母におけるポリペプチド
製品の生産の手段が存在することは、組換DNAにより
暗号化されたポリペプチドの生産に大腸菌などの原核系
を使用することと比較して、顕著な利点を提供できるこ
ととなった。酵母は、大腸菌の大規模醗酵が比較的最近
になり到来したのに比し、数世紀にもわたり大規模醗酵
に使用されてきている。酵母は、細菌に比較して一般的
に高い菌体濃度でも成長でき、連続醗酵工程にも応用さ
れている。事実、ピキア パストリスPichia
pastoris)などの酵母は、極めて高い細胞濃
度、すなわち100g/lを越える細胞濃度でも成育で
きることが米国特許第4,414,329号(フィリッ
プス石油(株)所有)にウェグナーにより開示されてい
る。酵母宿主の別の利点の中には、生物の多くの臨界的
機能、例えば酸化的リン酸化反応が細胞機関の中に存在
するので、そのため野性型の宿主細胞にとっては異物で
あるポリペプチドの当該生物による生産により、場合に
よっては起りうる恐ろしい作用にさらされることがない
という事実も含んでいる。真核生物として、酵母は発現
されたポリペプチド生産物をグルコース附加ができ、そ
のグルコース附加はポリペプチド生産物の生物活性にと
っては重要である。真核生物として酵母は高等生物と同
様のコードン優位性を示し、哺乳動物の遺伝子又は例え
ば哺乳動物のmRNAからの逆転写により得られた相補
的DNA(cDNA)由来の発現製品の効率的生産へと
向うこともまた可能である。
【0007】充分に特性が明らかにはされていない酵母
類の宿主/ベクター系としての開発は形質転換条件につ
いての知識の欠如と適用なベクターが存在していないこ
とによりずいぶんと妨害された。更に、栄養要求突然変
異株はしばしば入手出来なく、このため栄養要求的補体
により形質転換体を直接選抜することを不可能としてい
る。もしも、組換DNA技術が充分にその約束をはたせ
たら、DNAの操作を可能とし挿入したDNA配列の発
現を適正化し、その結果、所望のポリペプチド製品が制
御された条件下で、かつ、高収率で調製出来ることとな
る新しい宿主/ベクター系が発明されるにちがいない。
【0008】
【発明の開示】この発明により、本発明者は、染色体外
要素として組換DNA材料を1細胞あたり多数コピー保
持することを助ける自律複製配列の発見、分離及び特性
を明らかにした。その給源を問わずピキア属の酵母中で
自律複製する能力を有するDNA配列を提供するもので
ある。この明細書中では次の略号で使用した制限酵素を
表わした。
【0009】
【表1】省略記号 制限酵素 A AluI Ah AhaIII Av AvaI B BamHI B2 BglII C ClaI H2 HindII H3 HindIII Mb MboII Nr NruI Ps PstI Pv2 PvuII Rs RsaI R1 EcoRI S SalI Sm SmaI Sp SphI S3 Sau3AI T TaqI Xh XhoI
【0010】添付した図面の中で、DNAの操作に使用
した制限部位でリゲーションの際破壊したところは、破
壊部位に対応する省略記号をカッコで囲んで表示した。
核酸配列により予測しうる制限部位ではあるが、実際の
制限酵素処理により立証されていない個所は、星印を当
該制限部位につけて表示した。
【0011】この発明は、ピキア属の宿主中で染色体外
要素としてプラスミドを保持する、自律複製配列を含む
新規なDNA断片を提供するものである。更にこの発明
は、ピキア属の宿主中で自律複製力を有するDNAの配
列を、給源のいかんをとわず、分離する方法を提供する
ものである。この発明の実施に使用することのできる宿
主生物はピキア属に属する様々な種を含む。有用な宿主
のグループとしては栄養要求性の突然変異株である。す
なわち、成長のために一つ以上のアミノ酸、ビタミン又
は他の栄養素を補充する必要のある変異株である。この
ような変異株の形質転換体は、変異株宿主の形質転換に
使用する組換DNA材料の一部として、失われた遺伝子
製品の生産を暗号化しているDNA配列を使用すること
により選抜できる。
【0012】最も好ましい宿主酵母は変異株ピキア
ストリスGS−115株であり、これはヒスチジンを生
産する能力を欠く変異株で、変異株遺伝子型his4を
有していると同定されている。GS−115株はピキア
パストリスNRRL Y−11430より誘導化され
たもので、この発明が特許されたとき公衆が自由に入手
出来ることを確実とするため米国イリノイ州ペオリア市
にある米国農務省の北方地区研究センター(Nothe
rn Regional ResearchCente
r)に寄託している。ピキア パストリスGS−115
株には1984年8月31日現在、NRRL Y158
51の寄託番号が付されている。この特異な宿主は、ヒ
スチジン代謝経路における欠陥を有する栄養要求性変異
株であるので、有用である。勿論、当業者にとってはピ
キアの代謝経路において重要な他の多くの遺伝子に関し
ての変異株が存在し、また分離することができることは
容易に認めうるところである。それ故、他の多くの宿主
ピキア属の形質転換体として(使用)可能であり、変
異株宿主が欠損している遺伝子製品の生産を暗号化して
いる遺伝子が入手可能であるか、その遺伝子を分離する
能力を有しているかにより制限されるにすぎない。
【0013】ピキア パストリスNRRL Y−158
51はヒスチジノール脱水素酵素の生産能を欠く変異株
であると同定されている。この同定は、ヒスチジノール
脱水素酵素の基質、ヒスチジノールの存在下でNRRL
Y−15851の細胞からの蛋白抽出物でニコチン酸
アミド アデニン ジヌクレオチド(NAD)の還元を
測定することにより達成された。エスセレビシエ
S. cerevisiae)に使用されている命名
法にちなんで、NRRL Y−15851における欠損
をhis4C変異と称する。
【0014】パストリスNRRL Y 11340
株から全染色体DNAのSau3Aによる一部消化及び
引き続いての蔗糖濃度勾配遠心法によるHIS4遺伝子
の分離を行なった。エスセレビシエ−大腸菌シャトル
ベクターYEp13(ATCC37115;図2参照)
BamHI切断部位に、5ないし20Kbpの断片を
クローン化し、大腸菌を形質転換した。約53のコロニ
ーを選抜、一緒にし、全プラスミドDNAを抽出した。
エスセレビシエ 5799−4D株(NRRL Y−
15859)、his4ABC変異株のスフェロプラス
トを約1μgのヒンネン等の方法によるYEp13ピキ
DNAライブラリーと混合し、ヒスチジン欠損培地で
再生させた。全再生スフェロプラスト 5×107 個か
ら、形質転換体としては、約1×103 コロニーの原栄
養性酵母が得られた。DNAなしで培養した比較対照サ
ンプルではコロニーの発生はなかった。20のHis+
コロニーから全酵母DNAを抽出し、大腸菌を逆形質転
換させた。17の酵母DNA調製物がアンピシリン抵抗
性コロニーを形成した。これらのクローン化された断片
は制限酵素(切断物の)大きさ及び地図化並びに比較的
厳格でない条件下で標識されたエスセレビシエHIS
4断片とクロスハイブリダイゼーション(ポストハイブ
リダイゼーション洗浄は55℃でSSCで2回実施)能
により更に特性が明らかとされた。このHIS4含有断
片はそれぞれが1つ以上のエスセレシエHIS4遺
伝子とハイブリッド化した断片を含有していた。そのう
ちの1つのHIS4含有プラスミドを再びクローン化し
て、pYJ8と命名したHIS4含有プラスミドがえら
れたが、それは図4に示している。プラスミドpYJ8
はpBR325配列を含有し、この配列はクロラムフェ
ニコール及びアンピシリン抵抗性遺伝子と更にピキア
IS4遺伝子を含んでいる。
【0015】pYJ8からの6.0KbpピキアDNA
断片をサブクローン化することにより、この2.7Kb
pのDNA断片はピキア又はサッカロミセスをHIS4
A、HIS4B又はHIS4C遺伝子を暗号化させた活
性に欠損を持つ菌株に形質転換する能力を保有している
ことが判明した。それ故、例えばhis4変異株である
ピキア パストリスNRRL Y−15851(GS−
115)株は、プラスミドpYJ30及びpYJ32で
形質転換するとヒスチジンの添加されていない培地中で
も成育できる。(図6及び図7参照)。これらの二つの
プラスミドは、ピキア染色体DNAの2.7Kbp
glII断片をそれぞれ含有し、ともにHIS4遺伝子
機能を暗号化して保有している。
【0016】ピキア パストリアの形質転換操作の実験
的操作は詳細に以下に述べる(実施例I)。ピーパス
トリアの形質転換系の開発のために、栄養要求性変異株
GS−115(NRRL Y−15851)を分離し、
当該菌株が検出しうるヒスチジオール脱水素酸素活性を
有していないことからヒスチジン代謝系において欠点を
有していることが判明した。GS−115(NRRL
Y−15851)はスフェロプラストを生成する細胞壁
の酵素分解により形質転換することが出来る。そのスフ
ェロプラストは形質転換組換DNA材料と混合し、カル
シュウムイオンとポリエチレングリコールの存在下でイ
ンキュベートし、ヒスチジンを欠く淘汰用培地で再生さ
せる。形質転換DNAはHIS4遺伝子を含有し、宿主
株は当該遺伝子を欠くため、使用した淘汰用培地上では
形質転換された細胞のみが生存する。
【0017】この発明のベクターはピキア由来の栄養要
求性の複数の自律複製配列(PARSs)を含有し、G
S−115(NRRL Y−15851)の形質転換頻
度と共にピキア属の酵母中で安定な染色体外要素として
のベクターの保持力を高める。これらの自律複製配列
は、エスセレビシエから分離した公知の自律複製配列
(ARS)はピキア属の宿主では機能しないために、有
用である。それ故、酵母中でのポリペプチド製品の生産
に使用可能な発現系としてピキアを開発するためには、
ピキア中でARS能を有するDNA配列を分離すること
が必要となった。
【0018】ピキア用ARSを探し出すため、Taq
ピキア パストリスNRRL Y−15851由来の
DNAを一部消化し、5ないし10Kbpの断片を分離
し、pYJ8ΔClaの特異的ClaI部位へとクロー
ン化した(図4参照)。プラスミドDNAを大腸菌内で
増幅し、回収し、ピキア パストリスNRRL Y−1
5851の形質転換に使用した。プラスミドDNAを約
10,000のHis + コロニーから回収し、大腸菌を
再形質転換するのに使用した。約10,000のアンピ
シリン抵抗性大腸菌コロニーからプラスミドを分離し、
ピーパストリスNRRL Y−15851(GS−1
15、his4)を逆形質転換した。このサブライブラ
リー形質転換体からの40のHis+ 酵母コロニーを選
抜用培地上に塗布し、それぞれ独立に淘汰培地上で成育
させた。これらの40の培養物から全酵母DNAを抽出
し、大腸菌を形質転換した。二つのプラスミド、PAR
S1を含有するpYA63及びPARS2を含有するp
YA90を更に解析するために選抜した。これらのプラ
スミドは両者ともピキア パストリスNRRL Y−1
5851(GS−115)を非常に高い頻度で形質転換
し、自律要素として保持され、それぞれピーパストリ
DNAの新規断片を含有していた。
【0019】pYA63及びpYA90からの新規な自
律複製配列をプラスミドpYM4の特異的ClaI部位
(図5参照)へとサブクローン化したところプラスミド
pYJ30及びpYJ32がそれぞれ得られた。プラス
ミドpY30は図6に詳細に示し、プラスミドpYJ3
2は図7において同様に示してある。この両プラスミド
で大腸菌宿主を形質転換し、この出願が特許されたとき
大衆が自由に入手出来るようにするためにイリノイ州ペ
オリア市米国農務省北方地区研究センターに寄託してあ
る。寄託した菌株は次の寄託番号が付与されている。
【0020】
【表2】 プラスミド 宿主菌株 NRRL寄託番号 pYJ32 LE392 NRRL B−15891 この発明の自律複製配列、PARS2はpYJ32プラ
スミドを制限酵素EcoRI及びHindIIIで処理
することにより簡単に回収可能である。所望のARS要
素は5′末端(R1 部位の隣り)での約23個の余分の
塩基対と、3′末端での(H3 部位の隣り)で約5個の
余分の塩基対と共に得られる。PARS2は、当業者な
らば図7に示した制限地図を検査することにより容易に
認識できるようにpYJ32を他の制限酵素を種々組合
せて、当該プラスミドを処理することによっても得るこ
とができる。PARS2挿入は制限酵素の地図化により
特性が明らかとされている。このDNA断片は図1に示
してある。これらのDNA断片は比較的小さいため、完
全な配列が明らかになっている。PARS2の核酸配列
は次の通りであると決定されている。
【0021】
【化2】
【0022】当該PARSがピキア中の自律要素として
プラスミドを保持する能力を測定するために、プラスミ
ドpYJ32での形質転換した酵母細胞の培養物を選抜
用培地中で成育させ、定期的にサンプルを採った。細胞
中でのプラスミド配列の状態は放射能で標識したpBR
322と制限酵素を作用させてない酵母のDNAとサザ
ンハイブリダイゼーションにより決定した。プラスミド
pYJ32は、選抜用培地中で少くとも50世代ピキア
中での自律要素として保持されていた。ピキア パスト
リスの細胞あたりの平均プラスミドコピー数は、ピキア
HIS4遺伝子のゲノムコピー数とプラスミド由来のH
IS4遺伝子のそれとの比から導びき出された。pYA
90及びpYJ32(それぞれPARS2を含有)で形
質転換したピキア パストリス細胞の場合では、ピキア
の染色体HIS4遺伝子のコピーに対するピキアHIS
4遺伝子を含むプラスミドの平均コピー数の比は約10
〜15であった。ここに記載した如く、誘導されたコピ
ー数は、細胞あたりのプラスミドコピー数に対する最小
推定値を示すものであることは、当業者には認識されて
いる。
【0023】一般に、ピキア属の宿主中で自律複製能力
を有するDNA配列は、マーカー遺伝子を他のDNA配
列の間に含有しているが、ピキア内でARS能を有する
DNA配列を含まないベクター内に構築されたDNA断
片のライブラリーで、ピキア宿主を形質転換することに
より分離できる。使用したマーカー遺伝子は、宿主の酵
母に選抜しうる遺伝表現型を与える。当該ベクターでの
宿主菌株の形質転換の発生頻度は、ARS能を有するD
NA配列がベクター中に存在するときに、修飾していな
いベクターでの形質転換の発生頻度と比較して、1ない
しそれ以上のオーダーで増加する。それ故、形質転換さ
れた宿主の選抜及び分離は、ARS能を有する挿入DN
A配列をもつプラスミドを保有する生物を提供する。こ
の方法で、ARS能をピキア内で有するDNAはいかな
る給源からのものでも容易に分離することができる。
【0024】実施例 以下の実施例で使用する緩衝液及び溶液は次の組成を有
する。 1モルトリス緩衝液:800mlの水に121.1gの
トリス塩基、pHを所望の値に濃塩酸(35%)を加え
て調整。最終pH調整前に溶液を室温まで冷却し、最終
液量を1リットルとする。 TE緩衝液:1.0ミリモルEDTAを0.01モルの
トリス緩衝液(pH=7.0)に添加 SSC: 0.15モルのNaCl 15ミリモルのクエン酸ソーダ pHをNaOHで7.0に調整 デンハート(Denhardt’s)氏溶液: 5gのファイコール(Ficoll) 5gのポリビニルピロリドン 5gの牛の血精アルブミン(BSA;ペンタックス フ
ラクションV) 水で全量を500mlとする。
【0025】LB(Luria−Bertani)培
地: 5gのバクト−トリプトン 5gのバクト−イースト抽出物 2.5gのNaCl を1リットルの水に含み、pHは7.5にNaOHで調
整 YPD培地: 1%のバクト−イースト抽出物 2%のバクト−ペプトン 2%のデキストローズ SD培地: 6.75gのアミノ酸を含まない酵母用窒素源(DIF
CO製) 2%のデキストローズ を1リットルの水に含む SED: 1モルのソルビトール 25ミリモルのEDTA 50ミリモルのDTT SCE緩衝液: 9.1gのソルビトール 1.47gのクエン酸ソーダ 0.168gのEDTA 50mlのH2 O pHをHClで5.8とする。
【0026】CaS: 1モルのソルビトール 1ミリモルのCaCl2 濾過後、滅菌 PEG溶液: 20%のポリエチレングリコール−3350 10ミリモルのCaCl2 10ミリモルのトリス塩酸塩(pH7.4) 濾過後、滅菌 SOS: 1モルのソルビトール 0.3倍のYPD培地 10ミリモルのCaCl2
【0027】次の略号を実施例で使用しているが、以下
の意味を有するものである。 EDTA=エチレンジアミン テトラ酢酸 SDS=ドデシル硫酸ソーダ DTT=ジチオスレイトール(dithiothrei
tol) 数種類の操作手順をルーチン的に以下に詳細にのべる標
準手順にもとづき用いた。遠心分離は澄明な上澄液が得
られるに充分な回転速度で、充分な時間をかけて行なっ
た。一般には、酵母細胞の遠心分離は少なくとも1,5
00Gで少なくとも5分間行なった。核酸のフェノール
/クロロホルム/イソアミルアルコールでの抽出は、フ
ェノール、クロロホルム及びイソアミルアルコールの、
容量比で58:48:2の混合液を核酸を含む溶液と等
量接触させることを含む。クロロホルム/イソアミルア
ルコールでの抽出は、クロロホルムとイソアミルアルコ
ールの容量比で48:2の混液を処理すべき液と等量接
触させることを含む。
【0028】ゲル、フィルターなどを特定の溶液で洗浄
又は浸漬したと記述している場合は、ゲル、フィルター
などの全体を、当該ゲル、フィルター等の全表面を当該
溶液に接触させるために適当な容器(パン、皿、バイア
ルなど)のなかにひたした。エタノールによる核酸の沈
澱はまず核酸を含む溶液の塩類濃度を調整し、必要に応
じ、二倍量の冷エタノールで溶液を接触させ、次いで遠
心分離により沈澱物を回収することを含む。
【0029】実施例I ピキア パストリスの形質転換手順 A.細胞の成育 1.YPD培地約10ml中へピキア パストリスGS
−115(NRRLY−15851)のコロニーを植え
つけ、30℃で12−20時間振とう培養する。 2.約12−20時間後、OD600 で約0.01から
0.1となるように細胞を希釈し、YPD培地中で30
℃で約6〜8時間細胞を対数増殖期に保持する。 3.約6−8時間後、OD600 で約0.1(又はその相
当量)の種培養0.5mlを、YPD培地100mlに
植付ける。30℃で約12−20時間振とう培養する。 4.OD600 が約0.2−0.3となったとき(約16
−20時間後)培養物を1500Gで5分間遠心分離
し、回収する。
【0030】B.スフェロプラストの調製 1.細胞を1度10mlの滅菌水中で洗う(ステップ1
ないし5の遠心分離は、すべて1500G、5分間であ
る)。 2.新たに調製したSED10ml中で細胞を洗う。 3.滅菌1モルソルビトール溶液10ml中で細胞を2
度洗う。 4.10mlのSCE緩衝液に細胞を再分散する。 5.チモリアーゼ60,000(マイルズ ラボラトリ
ーズ社製)ml当り4mg含む溶液を5−10μl加え
る。約30−60分、30℃で細胞をインキュベートす
る。スフェロプラストの調製は形質転換手順において
は、危険をはらんだ工程であるため、スフェロプラスト
の形成を次の如くモニターする必要がある。細胞(を含
む液)100μlを900μlの5%SDS及び900
μlの1モルのソルビトールに、チモリアーゼの添加前
又は添加直後及びインキュベート期間中種々な間隔で加
える。SDS中では細胞が溶解するが、ソルビトール中
では溶解しない点(通常30から60分のインキュベー
ション)でインキュベーションを停める。 6.スフェロプラストを滅菌した1モルのソルビトール
10ml中で、1,000Gで5−10分遠心分離しな
がら二度洗浄する(遠心分離のための時間及び速度は変
動する。スフェロプラストがペレット化するに充分なだ
け遠心分離する、しかし、その力で破壊されるほどであ
ってはならない)。 7.滅菌したCsS 10ml中で1度洗う。 8.全量で0.6mlのCaSに細胞を再分散させる。
【0031】C.形質転換 1.DNAのサンプル(20μlの容量まで)を12×
75mmの滅菌したポリプロピレン管に加える(DNA
は水又はTE緩衝液中に分散されていること;少量のD
NAで最大限の形質転換頻度を上げるためには各サンプ
ルに、超音波処理した大腸菌DNAを5mg/ml含む
溶液1μlを加えるのが好ましい)。 2.100μlのスフェロプラストを各DNAサンプル
に加えて、室温で約20分間インキュベートする。 3.1mlのPEG溶液を各サンプルに1ml加え、室
温で約20分間インキュベートする。 4.サンプルを1500Gで5〜10分間遠心分離し、
PEG溶液をデカンテーションにより除く。 5.サンプルを、SOS150μl中に再分散し、室温
で30分間インキュベートする。 6.滅菌した1モルのソルビトール溶液850μlを加
え、以下に記載した様に少量のサンプルをとり平板培養
する。
【0032】D.スフェロプラストの再生 1.再生用寒天培地の組成 a.寒天−ソルビトール培地;9gのバクト寒天、5
4.6gのソルビトール、240mlの水、高温滅菌す
る。 b.グルコース10倍培地;20gのデキストローズ、
100mlの水、高温滅菌する。 c.SC10倍培地;6.75gのアミノ酸を含まない
酵母窒素源、100mlの水、高温滅菌する(所望のア
ミノ酸又は核酸を200μg/mlの濃度まで高温滅菌
前又はその後に加える) d.30mlのグルコース10倍培地及び30mlのS
C10倍培地を溶解した寒天−ソルビトール溶液に加え
300mlとする。0.2mg/mlのビオチン液0.
2ml、及び所望のアミノ酸又は核酸を20μg/ml
の濃度まで加える。溶解した再生用寒天培地を55−6
0℃に保つ。
【0033】2.形質転換したサンプルの平板培養 形質転換サンプルが用意できる少なくとも30分前に、
プレートあたり10mlの再生用寒天培地よりなる基底
部寒天層を注ぐ。試験管に再生用寒天培地10mlを、
形質転換サンプルがSOS中に入れてある間に、45−
50℃のバス上で、分散させる。再生用寒天培地の入っ
た試験管に適当量の形質転換サンプルを加え、プレート
内の基底部寒天層上に注ぐ。45−50℃に保った溶融
状態の再生用寒天培地10mlにそれぞれのサンプルを
適当量加え、再生用寒天培地よりなる固まった10ml
の基底部寒天層上にそれぞれ注ぐ。 3.スフェロプラスト調製品の品質の決定 1サンプル当り10μlをとり、1Mのソルビトール9
90μlを加えて100倍に希釈する。100倍希釈液
を10μlとり、990μl量の1Mのソルビトールを
再び加えて更に100倍希釈する。調製品中にスフェロ
プラスト化されずに残存している完全細胞の濃度を測定
するために、YPD寒天培地上に上記二つの希釈液10
0μlを塗布する。40μg/mlヒスチジンを加えた
再生寒天10mlに、全再生可能なスフェロプラストを
測定するため核希釈液を100μl加える。形質転換実
験のための良好な値としては、ml当り1−3×107
の全再生可能なスフェロプラストとml当り約1×10
3 の完全細胞である。
【0034】4.平板培地を30℃で3−5日間培養す
る。
【0035】実施例II ピキア パストリス自律複製配列の分離及び特性決定 A.菌株 使用した菌株は次の通りである。 (a)ピキア パストリス NRRL Y−11430
株 (b)ピキア パストリス NRRL Y−15851
(GS−115−his4)、及び (c)大腸菌848株(F- met thi gal
1 R φ80s hsdR- hsdM+ ) B.プラスミド pYA2(図8参照)は、pBR325のPstI部位
に挿入された9.3Kb PstI断片上のエスセレ
ビシエのHIS4遺伝子より構成されて居り、それは
セレビシエHIS4遺伝子断片の給源であり、大腸
菌宿主に移入してあり、NRRL B−15874とし
て公衆が入手可能である。pYJ8ΔCla(図4参
照)はpYJ8の誘導体であり、pYJ8のClaI消
化及びリゲーションにより作り出されたものである。
【0036】C.培地 ピキア パストリスはYPD(富裕)培地又はIMG
(最少)培地で成育させた。IMG最少培地は次のもの
より構成されている。 1.IM1 塩類、最終濃度で36.7ミリモルのKH2
PO4 、22.7ミリモルの(NH4 2 SO4 、2.
0ミリモルのMgSO4 ・7H2 O、6.7ミリモルの
KCl、0.7ミリモルのCaCl2 ・2H2 O;10
倍の貯蔵液として調製し、高温滅菌したもの 2.微量塩類、最終濃度で0.2マイクロモルのCuS
4 ・5H2 O、1.25マイクロモルのKI、4.5
マイクロモルのMnSO4 ・H2 O、2.0マイクロモ
ルのNaMoO4 ・2H2 O、0.75マイクロモルの
3 BO3 、17.5マイクロモルのZnSO4 ・7H
2 O、44.5マイクロモルのFeCl 3 ・6H2
400倍貯蔵液として調製し、濾液を滅菌した。 3.0.4μg/mlのビオチン及び 4.2%デキストローズ 大腸菌はLB培地又は2B培地(0.2% NH4 PO
4 、1.2%Na2 HPO4 、0.013%MgSO4
・7H2 O、0.074%CaCl2 ・2H2O、ml
当り1マイクログラムのチアミン及び0.4%デキスト
リン)、100μl/mlのトリプトファン及び0.2
%カザミノ酸を追加添加したもので培養した。
【0037】D.DNA分離 1.酵素DNAの大規模調製 ピキア パストリス及びエスセレビシエ DNA調製
物は酵母細胞をA600が1−2となるまで最小培地10
0mlを成育させ、次いで2,000Gで5分間遠心分
離して細胞を回収する。当該細胞を水、SED、1モル
のソルビトール中でそれぞれ1度洗浄し、次いで1Mの
ソルビトールに分散した細胞を5mlの0.1モルのト
リス−塩酸(pH=7.0)に分散した。細胞をチモラ
ーゼ60,000(マイルズ ラボラトリーズ社製)の
4mg/ml溶液50−100/μlと混合して、細胞
壁を消化するために1時間30℃でインキュベートし
た。スフェロプラスト調製品を1,000Gで5−10
分間遠心分離し、溶菌用緩衝液(0.1%SDS、10
ミリモルのトリス−塩酸(pH7.4)、5ミリモルの
EDTA及び50ミリモルのNaCl)に懸濁した。プ
ロテナーゼK(ベーリンガーマンハイム社製)及びRN
アーゼA(シグマ社製)をそれぞれ100μl/mlの
割合で加え、混合物を37℃で30分間インキュベート
した。DNAは、イソアミルアルコールを含有するクロ
ロホルムを調製物と等量しずかに混合し、蛋白を除き、
各相を12,000Gで20分間遠心分離することによ
り分離した。上の(水)相を新しい試験管に移し、当量
のフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール混
合液で抽出した。各相を前と同様分離し、最上相を2−
3倍量の冷100%エタノールを含む試験管に入れた。
サンプルをしずかに混合し、DNAをプラスチック製棒
の上にまきつけて回収した。当該DNAをただちに1m
lのTE緩衝液に溶解し、100倍量のTE緩衝液で4
0℃で1晩透析した。
【0038】2.小規模酵母DNA調製物600 で1−5でなるまで5mlの酵母の培養物を最少
培地で成長させ、次いで2,000Gで5分間遠心分離
し、回収した。細胞を1mlのSEDに懸濁し、1.5
mlの極小遠心管に移し、1モルのソルビトール中で1
度洗い、1モルのソルビトールに分散させた細胞を0.
1モルトリス塩酸(pH7.4)0.5ml中に懸濁し
た。チモリアーゼ60,000(マイル ラボラトリー
ズ社;4mg/mlの溶液を10μl)各サンプルに加
え、当該細胞を30℃で、30−60分間インキュベー
トした。細胞は次いで1分間遠心分離し、溶菌用緩衝液
中に懸濁し、65−70℃でインキュベートした。15
分後にサンプルを5モルの酢酸カリウム100μlと混
合し、氷浴中に15分間保持し、5分間遠心分離した。
上澄液を100%のエタノール1mlを含む新しい極小
遠心管中へデカンテーションし、混合後ただちに10秒
間遠心分離した。最終的にペレットを10−15分間風
乾し、50μlのTE緩衝液に溶かした。
【0039】3.大規模大腸菌DNAの分離 大規模(0.5−1リットル)のプラスミド調製物用の
大腸菌の培養物は、上述の如く補足され、かつ適当な抗
生物質を含む2B培地中で37℃で振とう培養により成
育させた。pBR322由来のプラスミドを含む細胞の
場合には、A55 0 で約0.7まで培養し、その時点で1
00μg/mlとなるように充分量のクロラムフェニコ
ールを加え、細胞をおおよそ15時間後に回収する。p
BR325由来のプラスミドを含む菌株は、補足された
2Bの培地中に、当初のA550 が約0.01−0.05
となるよう移植し、回収前20−24時間37℃で振と
うインキュベートした。プラスミドをビルンボイム(B
irnboim)及びドーリー(Doly)のアルカリ
溶菌法(1979年)により分離した。
【0040】4.小規模大腸菌DNA調製物 小量の迅速プラスミド分離のために、抗生物質を含み、
補充した2B培地中の2mlの培養物を37℃で振とう
培養し、1.5mlの極小遠心管中で遠心分離により回
収した。プラスミドはビルンボイム及びドーリーのアル
カリ溶菌法(1979年)により分離した。
【0041】E.DNAの制限(酵素)及び断片の分離 制限酵素はニュー・イングランドバイオラボズ及びベセ
スダ(Bethesda)リサーチラボラトリーズから
入手し、消化は常套手段により行なった。制限(酵素)
の地図化は、挿入DNAを有するか又は有しないプラス
ミドの並行消化物の比較により実施した。制限断片はア
ガロースゲルから透析管材料でバックアップされたワッ
トマン3MM紙片への電気溶出により純化した。断片
は、紙及び管材料から0.1モルのNaCl、50ミリ
モルのトリス−塩酸(pH8.0)と1ミリモルのED
TAを含む溶液0.1ないし0.2mlを用い、3〜4
回洗浄し、回収した。最後に、断片をフェノール/クロ
ロホルム/イソアミルアルコールで抽出し、エタノール
で沈澱させ、少量のTE緩衝液に再溶解した。
【0042】F.ピー・パストリス自律複製配列ライブ
ラリーの大腸菌での構築 ピキア パストリスDNA−pYJBΔClaライブラ
リー構築のために、50μgのpYJBΔClaをCl
Iで完全に消化し、仔牛の腸アルカリン フォスファ
ターゼで処理し、DNAから末端の5′ホスフェートを
除去した。ピキア パストリスNRRL Y−1585
1からのDNA100μgを、全量で1mlとし、20
単位のTaqIを用いて、65℃で5分間インキュベー
トすることにより一部消化を行なった。5ないし10K
bpの断片を0.5%アガロースゲルから電気溶出によ
り(本実施例、E項参照)大きさにより分離した。当該
ベクターの1μgと2μgのピキア TaqI断片と
を、総容量200μl中でT4DNAリガーゼ(ベセス
ダ リサーチ ラボラトリーズ)の20単位と混合し、
4℃で1晩インキュベートした。当該リゲートしたDN
Aで大腸菌を、同848菌細胞液2mlに全リゲーショ
ン反応混液を加え、0℃で15分間インキュベートする
ことにより形質転換した。混合物を5分間で37℃まで
に加温し、その時間経過後LB培地40mlを加え、3
7℃のインキュベーションを更に1時間つづけた。次い
でアンピシリンを加え、全濃度で100μl/mlと
し、インキュベーションを再び1時間つづけた。最後
に、細胞を3,000Gで10分間遠心分離し、新しい
LB培地1ml中に再び懸濁させ、100μg/mlの
アンピシリンを含む10個のLB寒天平板培地上に等量
づつ広ろげた。結果として約10,000コロニーが発
生したが、それを平板培地からかき取り、細胞の1部分
を、当初のA550 が約0.1となるまで500mlの補
充した2B培地に植えた。培養物を成育させ、プラスミ
ドを上述の方法により抽出した。
【0043】G.サザンハイブリダイゼーション ハイブリダイゼーションはサザンの方法(1975年)
により実施した。大きい、又はスーパーコイル型DNA
分子のニトロセルローズへの移転には、アルカリ変性に
先立って、アガロースゲルを10分間0.25モルのH
Cl中に浸漬することによりDNAをまず一部加水分解
した。エスセレビシエのHIS4遺伝子由来の標識し
た断片の、ピキア パストリス DNAへのハイブリダ
イゼーションは50%のホルムアミド、6倍のSSC、
5倍のデンハルト氏液、0.1%SDS 1ミリモルの
EDTA、100μg/mlの変性したニシンの精子D
NAの存在下で42℃で行なった。ハイブリダイゼーシ
ョン後の洗浄は、2倍のSSC、1ミリモルのEDT
A、0.1%のSDS及び1.0%のピロリン酸ソーダ
中で55℃で行なった。
【0044】H. 32P−標識 ニック翻訳はリグビイ(Rigby)らの方法(197
7)で実施した。 I.DNA配列の決定 DNA配列の決定はサンガー(Sanger)等のジデ
オキシヌクレオチドチェーン ターミナーション方法
(1980年)によった。
【0045】J.ピキアの自律複製配列 上記F項に記載した如く構築されたピキア ライブラリ
ーを用いてピキア パストリス NRRL Y−158
51を形質転換した。プラスミドDNAを大腸菌内で増
幅し、回収し、ピキア パストリス NRRL Y−1
5851を形質転換するのに使用した。プラスミドは、
次いで、約10,000のHis + ピキア コロニーか
ら回収し、大腸菌の形質転換に用いた。10,000の
アンピシリン抵抗性大腸菌コロニーを分離し、ピー
ストリスNRRL Y−15851(GS−115;h
is4)へと逆形質転換した。このサブライブラリー形
質転換体から40のHis+ 酵母コロニーを選抜用培地
に別々に塗布し、独立して選抜用培地中で成育させた。
全酵母DNAをこの40の培養物の各々から抽出し、大
腸菌を形質転換した。一つのプラスミド、すなわち、P
ARS2を含むpYA90を更に解析するために選抜し
た。このプラスミドはピキア パストリスNRRL Y
−15851(GS−115)を高頻度で形質転換で
き、自律要素として保持され、ピーパストリスDNA
の新規断片を含有していた。
【0046】K.自律複製配列に関するピキア パスト
リス形質転換体の解析 ピキア ARS含有プラスミドをピキア パストリス
胞中での自律要素として保持されうる能力について次の
如き方法で決定した。形質転換体のコロニーを再生寒天
平板培地からとり、SD寒天培地上に塗布し、液体IM
G培地へと移植した。そのSD平板培地を30℃で3日
間培養し、その時点で一つのコロニーを平板培地からつ
まみとり、再びSD平板培地上に塗布し、IMG培地を
含むフラスコへ再度植え継いだ。この過程を3回繰返し
た。この3個のIMG培養物を30℃でA600 で約1−
2となるまで振とうしながら成育させ、次いで遠心分離
により収集した。この酵母培養物からのDNAを上述の
方法により抽出し、30ボルト、30ミリアンペアで1
0ないし15時間0.8%アガロースゲルへと電気泳動
し、次いでニトロセルロースへと移転させ、上述の如く
32P−標識のpBR322又はpBR325にハイブリ
ダイゼーションした。対照として大腸菌から分離したプ
ラスミド10ngを含むサンプルと形質転換してない
キア パストリスNRRL Y−15851(GS−1
15)DNAを1−2μg含むサンプルを実験サンプル
と一緒に電気泳動させた。検査したピキア PARS含
有プラスミド形質転換体とは、標識したプローブは、大
腸菌から分離したプラスミドと同一のパターンで、ハイ
ブリッド化した。対照として、pYJ8ΔCla(ピキ
ア中ではARS活性を有する統合的形質転換ベクター)
で形質転換した場合、標識したプローブはピキア パス
トリスNRRL Y−15851(GS−115)から
の大きな分子量の染色体DNAにハイブリダイゼーショ
ンすることが見出された。プローブは形質転換されてい
ないNRRL Y−15851からのDNAとハイブリ
ダイゼーションしなかった。ピキア中で自律要素として
プラスミドを保持するためのPARS活性のより定量的
手段として、pYJ32プラスミドで形質転換した酵母
の培養株を選抜用培地で成育させ、定期的にサンプル採
取した。細胞中のプラスミド配列の状態は、制限酵素未
処理の酵母のDNAを放射能で標識したpBR322に
サザンハイブリダイゼーションすることにより、決定し
た。プラスミドpYJ32は、ピキア中ですくなくとも
50世代選抜用培地中で自律要素として保持された。
【0047】L.プラスミドコピー数の決定 ピーパストリス細胞あたりの平均コピー数は、ピー
パストリスHIS4のゲノムコピーの量とプラスミド由
来のHIS4遺伝子の量の比から導びき出された。検査
対象菌株は、ピキア HIS4遺伝子を含むプラスミド
を含有しているので、DNAを抽出し、制限エンドヌク
レアーゼで消化し、ニトロセルローズフィルターに移転
し、ピキア HIS4遺伝子を含有する2.7Kbpの
32P−標識のBglIII断片でハイブリダイゼーショ
ンした。ポストハイブリダイゼーションの洗浄後、一連
のX−線フィルムを一定時間フィルターに曝露し、平板
ゲルのためのコムプセットモジュール(Compuse
t Module)でプログラム化したベックマンDU
−8Bスペクトロホトメーター上で走査した。結果は第
1表にまとめて示す。
【0048】
【表3】 第1表 PARS含有ピキア パストリス形質転換体の特性 プラスミド 自律複製配列 参照図 自律要素としての世代数 コピー数 pYM4 − 6 − − pYJ32 PARS2 8 50 13
【0049】下記の文献を本明細書中で引用した。 ビルボイム及びドーリー(1979年)核酸研究7巻、
1513−1523頁〔Birnboim and D
oly(1979)Nucl.Acids Res.
,1513−1523;〕 ヒンネン等(1978年)米国国立教養学会大会講演
集、75巻、1929−1933頁〔Hinnen e
t al(1978)Proc.Nat.Acad.S
ci.,USA 75,1929−1933〕 リグビイ等(1977年)分子微生物学誌、113巻、
237頁〔Rigby et al(1977)J.M
ol.Biol.113,237〕 サザン(1975年)分子微生物学誌、98巻、503
−517頁〔Southern(1975)J.Mo
l.Biol.98,503−517〕 サンガー等(1980年)分子微生物学誌、143巻、
161−178頁〔Sanger et al(198
0)J.Mol.Biol.143,161−178〕
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の自律複製配列(PARS2)の制限
酵素地図である。
【図2】プラスミドYEp13の制限酵素地図である。
【図3】プラスミドpYJ8の制限酵素地図である。
【図4】プラスミドpYJ8ΔClaの制限酵素地図で
ある。
【図5】プラスミドpYM4の制限酵素地図である。
【図6】プラスミドpYJ30の制限酵素地図である。
【図7】プラスミドpYJ32の制限酵素地図である。
【図8】プラスミドpYA2の制限酵素地図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 //(C12N 1/19 C12R 1:84) (C12N 1/21 C12R 1:19)

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ピキア属の宿主内で、染色体外要素とし
    て1細胞あたり数多くのコピー数のプラスミドを保持す
    る自律複製配列よりなるDNA断片であって、当該DN
    A断片を含むベクターでの当該宿主の形質転換頻度を当
    該DNA断片を含まないベクターでの当該宿主のそれと
    比較して増加させることができ、以下の制限地図を有す
    ることを特徴とするDNA断片: 【図1】
  2. 【請求項2】 当該自律複製配列が酵母由来である特許
    請求の範囲第1項記載のDNA断片。
  3. 【請求項3】 当該酵母がピキア属より選ばれたもので
    ある特許請求の範囲第2項記載のDNA断片。
  4. 【請求項4】 当該酵母がピキア パストリス種の一員
    である特許請求の範囲第3項記載のDNA断片。
  5. 【請求項5】 当該酵母がピキア パストリスNRRL
    Y 11430である特許請求の範囲第4項記載のD
    NA断片。
  6. 【請求項6】 当該断片が次のヌクレオチド配列か、機
    能的同等物又はそれらの合理的変形である特許請求の範
    囲第1〜5項のいずれか1項に記載のDNA断片。 【化1】
  7. 【請求項7】 ピキア属の宿主を形質転換でき、当該宿
    主内に染色体外要素として保持されている特許請求の範
    囲第1項〜第6項のいずれか1項に記載された自律複製
    配列を含むハイブリッドプラスミド。
  8. 【請求項8】 当該プラスミドが図7に示す制限地図
    (pYJ32)を有することを特徴とする特許請求の範
    囲第7項記載のハイブリッドプラスミド。
  9. 【請求項9】 ピキア パストリス種に属する宿主を請
    求項第7項又は請求項第8項に記載のハイブリッドプラ
    スミドで形質転換したものである酵母菌株。
  10. 【請求項10】 大腸菌NRRL B−15891(L
    E392−pYJ32)。
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