JPH0681670A - 自動二輪車用エンジン - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 クランク軸方向に分割形成されたクランクケ
ースにカセット式変速装置を装着するに当たり、クラン
クケースの剛性が低下するのを防ぐ。 【構成】 右側クランクケース本体２０にカセット式変
速装置用脱着口３７を開口させる。左右の各クランクケ
ース本体１９，２０に、クランクケース１４内をクラン
ク室および補機収容室に画成する隔壁２１，２２，３
５，３６を一体成形した。隔壁が各クランクケース本体
１９，２０の実質的な補強用リブとして機能し、剛性が
高められる。単気筒エンジンのクランクケース１４を鋳
造が容易な構造としつつカセット式変速装置２４を採用
することができる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、クランクケースにカセ
ット式変速装置が着脱自在に設けられた自動二輪車用エ
ンジンに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】近年の自動二輪車用エンジンでは、車体
に搭載された状態で変速装置を交換したり、あるいは変
速装置のメンテナンスを行うことができるようにカセッ
ト式変速装置を採用することがある。このカセット式変
速装置は、クランクケースの左右何れか一方の側壁に脱
着口が設けられ、この脱着口に挿抜自在に組込まれてい
た。

【０００３】また、カセット式変速装置を採用するエン
ジンは、クランクケースが車体の前後方向あるいは上下
方向に分割される構造となっていた。これは、脱着口が
形成された方のクランクケース側部は他方に較べて剛性
が低くなるからである。すなわち、クランクケースの左
側部と右側部とを一体に形成することによって、クラン
クケース全体としての剛性を確保していた。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】単気筒エンジンのよう
にクランク軸が比較的短くクランクケースが幅狭になる
場合には、クランクケースを前後あるいは上下方向に分
割形成するよりクランク軸方向に分割形成した方が鋳造
し易いが、カセット式変速装置を採用するためにはその
ような構成を採ることができないという問題があった。
これは、クランクケースをクランク軸方向に分割形成す
ると、一方がカセット式変速装置を組込むための脱着口
によって他方に較べて低剛性になってしまうからであ
る。

【０００５】本発明はこのような問題点を解消するため
になされたもので、クランクケースがクランク軸方向に
分割形成された自動二輪車用エンジンにカセット式変速
装置を採用するに当たり、クランクケースの剛性が低下
するのを防ぐことを目的とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明に係る自動二輪車
用エンジンは、クランク軸方向に分割された２つのクラ
ンクケース本体のうち一方にカセット式変速機の脱着口
を開口させ、各クランクケース本体に、クランクケース
内をクランク室および補機収容室に画成する隔壁を一体
に設けたものである。

【０００７】

【作用】隔壁が各クランクケース本体の実質的な補強用
リブとして機能し、クランクケース本体の剛性が高めら
れる。

【０００８】

【実施例】以下、本発明の一実施例を図１ないし図５に
よって詳細に説明する。図１は本発明に係るエンジンが
搭載された自動二輪車の側面図、図２は本発明に係る自
動二輪車用エンジンの断面図で、同図は図１におけるII
−II線断面図である。図３は左側クランクケース本体の
側面図で、同図は合わせ面側から見た状態を示す。図４
および図５はクランクケースを車体右側から見た側面図
で、図４はカセット式変速装置を取外した状態を示し、
図５はクランクケースカバーおよびクラッチを取外した
状態を示す。

【０００９】これらの図において、１は自動二輪車、２
はこの自動二輪車１のフレームである。このフレーム２
は、前輪３を有するフロントフォーク４を操向自在に支
持するヘッドパイプ部５と、このヘッドパイプ部５から
後下がりに延びる左右一対のメインパイプ６と、このメ
インパイプ６の後端部に設けられたリヤアームブラケッ
ト７等とから構成されている。

【００１０】８は後輪９を支持するリヤアームで、この
リヤアーム８はピボット軸１０を介して前記リヤアーム
ブラケット７に揺動自在に連結されている。１１はリヤ
クッションユニットで、このリヤクッションユニット１
１の下端部はリンク１２を介してリヤアーム８に連結さ
れ、上端部は、左右のリヤアームブラケット７，７間に
横架されたクロスメンバ（図示せず）に枢支されてい
る。

【００１１】１３は本発明に係るエンジンである。この
エンジン１３は、水冷２サイクル単気筒のものが採用さ
れており、クランクケース１４の前部がフレーム２のダ
ウンチューブ２ａに支持されると共に後部がリヤアーム
ブラケット７に支持されている。１５はこのエンジン１
３のシリンダで、前記クランクケース１４の上部に取付
けられている。１６は排気管、１７は気化器である。こ
の気化器１７もクランクケース１４に取付けられてい
る。

【００１２】前記クランクケース１４は図２に示すよう
に、クランク軸１８の延設方向に分割形成され、車体左
側に位置する左側クランクケース本体１９と、車体右側
に位置する右側クランクケース本体２０とによって形成
されている。左側クランクケース本体１９は図３に示す
ように、クランクケース１４の内方に向けて突出する隔
壁２１，２２および１４ａ，１４ｂが一体成形により立
設されており、これらの隔壁２１，２２によって内側空
間が５つに分けられている。

【００１３】すなわち、前記クランク軸１８が配置され
るクランク軸収容空間２３と、図２において符号２４で
示すカセット式変速装置が配置されるミッション収容空
間２５と、図２中符号２６で示す冷却水ポンプ，符号２
７で示すオイルポンプの駆動軸２８が配置されるポンプ
軸収容空間２９と、図３において符号Ａで示すバランサ
装着空間と、符号Ｂで示すオイル溜まり部とが左側クラ
ンクケース１９の内側に設けられている。

【００１４】前記冷却水ポンプ２６およびオイルポンプ
２７はそれぞれクランクケース外であってクランク軸１
８の下方となる部分に配置されており、冷却水ポンプ２
６は車体左側に位置づけられ、オイルポンプ２７は車体
右側に位置づけられている。そして、これらのポンプ２
６，２７は、オイルポンプ２７側に設けられた歯車２７
ａが後述するカセット式変速装置２４のポンプ駆動用歯
車に噛合し、エンジン動力によって駆動される構造とな
っている。

【００１５】前記隔壁２１，２２，１４ａ，１４ｂの突
出端は、後述する右側クランクケース本体２０の隔壁に
密接するように扁平に形成されている。そして、この扁
平面は、左側クランクケース本体１９の車体右側の外縁
部に形成された合わせ面１９ａと一連に形成されてい
る。また、前記ミッション収容空間２５とポンプ軸収容
空間２９とを仕切る隔壁２２は、ミッション収容空間２
５の底部に流れてきた潤滑油をポンプ軸収容空間２９へ
導くための切欠き２２ａが形成されている。この切欠き
２２ａは隔壁２２の最下部に部分的に形成されている。
なお、右側クランクケース本体２０に立設された隔壁の
うちクランク軸収容空間２３を他の部分から画成する隔
壁２１以外には、それぞれ切欠きが形成されてオイルを
下方へ流すことができるようになっている。図３におい
て隔壁２２と隔壁１４ｂとの連接部分に符号１４ｃで示
すものは、オイルが通されるオイル通路である。

【００１６】図３中符号３０はクランク軸１８が貫通す
る軸孔、３１はカセット式変速装置のドライブシャフト
が貫通する軸孔、３２は冷却水ポンプ２６，オイルポン
プ２７の駆動軸２８が貫通する軸孔、３３はカセット式
変速装置２４の後述するシフト軸が貫通する軸孔、３４
は後述するバランサの軸部が貫通する軸孔である。

【００１７】右側クランクケース本体２０は、図２に示
すように、前記左側クランクケース本体１９の隔壁２
１，２２と対向する位置に隔壁３５，３６が一体成形に
より立設されている。なお、図示していないが、左側ク
ランクケース本体１９の前記隔壁１４ａ，１４ｂと対向
する隔壁も隔壁３５，３６と同様にして一体成形されて
いる。そして、これらの隔壁３５，３６と、前記隔壁１
４ａ，１４ｂに対向する不図示の隔壁も、右側クランク
ケース本体２０の内側空間を左側クランクケース本体１
９と同様にして５つに分けるように形成されている。な
お、隔壁３６や前記隔壁１４ａ，１４ｂに対向する不図
示の隔壁には、左側クランクケース本体１９の各隔壁２
２，１４ａ，１４ｂに形成されたようなオイル流路とな
る切欠きは、剛性を確保する関係から設けられてはいな
い。

【００１８】また、右側クランクケース本体２０におけ
る前記ミッション収容空間２５と対向する部分には、図
４に示すように、カセット式変速装置２４を脱着させる
ための脱着口３７が開口されている。

【００１９】カセット式変速装置２４は従来周知の構造
のものが使用され、図２および図５に示す蓋体３８に、
変速歯車群を有するカウンタシャフト３９，ドライブシ
ャフト４０と、図５に示すシフト機構４１とが支持され
ている。また、この蓋体３８は、脱着口３７を閉塞する
に足りるだけの寸法に形成されており、図５に示すよう
に、脱着口３７より車体前側に位置するオイルポンプ装
着部（軸孔３２の周辺部分）には延在されていない。図
５において、４２は不図示のシフトペダルに連結された
シフト軸、４３は前記シフト軸４２に固着されたシフト
レバー、４４は前記シフトレバー４３が揺動することに
よって回動するシフトドラム、４５は前記シフトドラム
４４によって駆動され支軸４６に沿って移動するシフト
フォークで、これらによって前記シフト機構４１が構成
されている。

【００２０】前記カウンタシャフト３９、ドライブシャ
フト４０、シフトドラム４４およびシフトフォーク用支
軸４６の車体左側の軸端部は、図３に示すように左側ク
ランクケース本体１９に形成された軸受孔３９ａ，４０
ａ，４４ａおよび４６ａにそれぞれ支持されている。ま
た、シフト軸４２は車体左側の端部が前記軸孔３３を通
って左側クランクケース本体１９より車体左側に突出
し、突出端部に不図示のシフトペダルが連結されてい
る。

【００２１】前記カウンタシャフト３９の車体右側の端
部は、図２に示すように、前記蓋体３８を貫通して蓋体
３８より右側に突出しており、その突出部分にクラッチ
４７と、前記冷却水ポンプ２６，オイルポンプ２７を駆
動するためのポンプ駆動用歯車４８とが装着されてい
る。このクラッチ４７は、クラッチアウター４７ａの外
周部に形成された歯４７ｂがクランク軸１８の出力歯車
１８ａに噛合し、カウンタシャフト３９の軸心部に嵌挿
されたプッシュロッド４７ｃによって接続，解放が切り
替えられる従来周知の構造である。また、ドライブシャ
フト４０の車体左側の端部は軸受孔３１を通って左側ク
ランクケース本体１９より車体左側に突出しており、そ
の突出端部に後輪駆動用スプロケット４９が固着されて
いる。

【００２２】このように構成されたカセット式変速装置
２４は、右側クランクケース本体２０の脱着口３７にカ
ウンタシャフト３９，ドライブシャフト４０およびシフ
ト機構４１等を挿入し、蓋体３８を右側クランクケース
本体２０に取付けねじ５０によりねじ止めすることによ
ってクランクケース１４に取付けられる。なお、右側ク
ランクケース本体２０における蓋体３８との合わせ面を
図４中に符号２０ａで示す。

【００２３】すなわち、左側クランクケース本体１９に
右側クランクケース本体２０を合わせて両者を締結さ
せ、カセット式変速装置２４の蓋体３８を右側クランク
ケース本体２０に固定することによって、前記クランク
軸収容空間２３，ミッション収容空間２５およびポンプ
軸収容空間２９のそれぞれの開口部が閉塞されることに
なる。言い換えれば、左右のクランクケース本体１９，
２０の隔壁２１，２２，１４ａ，１４ｂおよび隔壁３
５，３６等によって、クランクケース１４内がクランク
軸収容空間２３によって構成されるクランク室と、ミッ
ション収容空間２５によって構成されるミッション室
と、ポンプ軸収容空間２９によって構成されるポンプ軸
室と、バランサ装着空間Ａによって構成されるバランサ
収容室と、オイル溜まり部Ｂによって構成されるオイル
室とに画成されることになる。本実施例では、ポンプ軸
室，バランサ収容室およびオイル室によって補機収容室
が構成されることになる。

【００２４】図２中符号５１で示すものは右側クランク
ケース本体２０の右側部に露出する各部材を覆うための
クランクケースカバーである。このクランクケースカバ
ー５１は、図４および図５に示すように右側クランクケ
ース本体２０の右側部に形成された合わせ面５２に密着
させて右側クランクケース本体２０にねじ止めされてい
る。

【００２５】また、図４および図５において符号５３は
バランサである。このバランサ５３は、ウエイト５４を
軸部５５の両端に設けて形成され、軸部５５がクランク
軸１８と平行にした状態で左右のクランクケース本体１
９，２０を貫通し、これら左右のクランクケース本体１
９，２０に回転自在に支持されている。なお、軸部５５
は、図３に示すように左側クランクケース本体１９に形
成された軸孔３４およびこの軸孔３４と対向する右側ク
ランクケース本体２０側の軸孔（図示せず）に挿通さ
れ、左右のクランクケース本体１９，２０におけるシリ
ンダ取付部背面に開口する吸気通路１４ｄの下方に配設
されている。そして、軸部５５は、車体右側の端部に軸
装された従動歯車５６をクランク軸１８の軸端部の駆動
歯車５７に噛合させることによってクランク軸１８に連
結されている。

【００２６】上述したように構成された自動二輪車用エ
ンジン１３においてカセット式変速装置２４を取外すに
は、先ず、図２に示す組立状態からクランクケースカバ
ー５１を取外し、次いでクラッチ４７を取外す。そし
て、オイルポンプ２７の歯車２７ａを取外した状態でカ
セット式変速装置２４の蓋体３８を右側クランクケース
本体２０から外し、このカセット式変速装置２４を車体
右側へ引き出すようにしてクランクケース１４から取外
す。なお、カセット式変速機２４を引き出す以前に、車
体左側に位置する後輪駆動用スプロケット４９をドライ
ブシャフト４０から取外しておく。このようにしてカセ
ット式変速装置２４を車載状態のエンジン１３から取外
すことができる。また、カセット式変速装置２４をエン
ジン１３に取付けるには上述した手順とは逆の手順によ
って行う。

【００２７】したがって、クランクケース１４内を５室
に画成する隔壁２１，２２，１４ａ，１４ｂ，３５，３
６等を左右のクランクケース本体１９，２０に一体成形
したため、クランクケース１４内に左右のクランクケー
ス本体１９，２０からなる実質的な箱部分が５個形成さ
れてそれらの箱部分が互いに結合された構造になる。こ
のため、隔壁２１，２２，１４ａ，１４ｂ，３５，３６
等が各クランクケース本体１９，２０の実質的な補強用
リブとして機能して左右のクランクケース本体１９，２
０の剛性が高められるから、クランクケース１４をクラ
ンク軸方向に分割する構造としつつカセット式変速装置
を採用することができる。

【００２８】なお、本実施例では左右のクランクケース
本体１９，２０の隔壁どうしを対接させることによって
クランクケース１４内をクランク室や補機収容室に画成
した例を示したが、補機収容室を画成する隔壁は、必ず
しも左右のクランクケース本体１９，２０に形成された
ものどうしを対接させなくてもよい。すなわち、補機収
容室を左右のクランクケース本体１９，２０に個別に設
ける構造にすることもできる。このようにしてもクラン
クケース１４の剛性を高めることができる。

【００２９】

【発明の効果】以上説明したように本発明に係る自動二
輪車用エンジンは、クランク軸方向に分割された２つの
クランクケース本体のうち一方にカセット式変速機の脱
着口を開口させ、各クランクケース本体に、クランクケ
ース内をクランク室および補機収容室に画成する隔壁を
一体に設けたため、隔壁が各クランクケース本体の実質
的な補強用リブとして機能し、クランクケース本体の剛
性が高められる。

【００３０】したがって、クランクケースをクランク軸
方向に分割して鋳造が容易な構造としつつ、カセット式
変速装置を採用することができる。このため、カセット
式変速機が装着される単気筒エンジンに本発明を適用す
ると、製造コストを低く抑えることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係るエンジンが搭載された自動二輪車
の側面図である。

【図２】本発明に係る自動二輪車用エンジンの断面図
で、同図は図１におけるII−II線断面図である。

【図３】左側クランクケース本体の側面図で、同図は合
わせ面側から見た状態を示す。

【図４】クランクケースを車体右側から見た側面図で、
同図はカセット式変速装置を取外した状態を示す。

【図５】クランクケースを車体右側から見た側面図で、
同図はクランクケースカバーおよびクラッチを取外した
状態を示す。

【符号の説明】

１３ エンジン １４ クランクケース １８ クランク軸 １９ 左側クランクケース本体 ２０ 右側クランクケース本体 ２１ 隔壁 ２２ 隔壁 ２３ クランク軸収容空間 ２４ カセット式変速装置 ２５ ミッション収容空間 ２６ 冷却水ポンプ ２７ オイルポンプ ２８ 駆動軸 ２９ ポンプ軸収容空間 ３７ 脱着口

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 カセット式変速装置を備えた自動二輪車
   用エンジンにおいて、クランクケースをクランク軸方向
   に分割される２つのクランクケース本体によって形成
   し、一方のクランクケース本体に前記カセット式変速機
   の脱着口を開口してなり、各クランクケース本体に、ク
   ランクケース内をクランク室および補機収容室に画成す
   る隔壁を一体に立設したことを特徴とする自動二輪車用
   エンジン。