JP4089131B2 - 自動二輪車の4サイクルエンジンのブリーザ構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動二輪車のエンジンの潤滑装置に関し、特に、4サイクルエンジンのブリーザ構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、4サイクルエンジンでは、クランクケース内の各動作部に供給される潤滑油は、一部が飛散してオイルミストとなりクランクケース内に充満する。特に、吸排気弁を動作するための動弁装置を駆動するカムチェーンに充分給油が行われる場合には、潤滑油が飛散してカムチェーン室にオイルミストが多く充満する。
そこで、オイルミストを分離するために、従来のエンジンのブリーザ構造は、一般に、図5に示すように、エンジン100のクランクケース101に形成されたブリーザ室102の入口にオイルセパレータ103を設けることにより、該ブリーザ室102に入るブローバイガス中のオイル量を低減するようにしたものが知られている。図中の矢印はブローバイガスの流れを示す。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の方法によると、オイルセパレータをエンジン本体とは別体で設ける必要があり、部品点数の増加とともに、コストアップになるという問題点があった。
また、エンジン本体近傍にオイルセパレータを取付けるスペースを確保する必要があり、ブリーザ室の入口を設置する自由度が低いという問題点があった。
【0004】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、オイルセパレータを別体で取付けることなく、省スペースで、従来よりも部品点数を削減するとともにコストの削減を図り、しかも簡単な構成でオイルミストを低減できる自動二輪車の4サイクルエンジンのブリーザ構造を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、エンジンのクランクケースのクランク軸軸方向一方側にVベルト自動変速機を収納した動力伝達ケースを一体的に備える一方、該クランクケースのクランク軸軸方向他方側にエンジンの動弁装置に動力を伝達するタイミングチェーンを配置して、該タイミングチェーンを収納するタイミングチェーン室のクランク軸側外側にケースカバーを配置して、該ケースカバーの外側に配置するクランク軸軸端にエンジン冷却用冷却ファンを備えた自動二輪車の4サイクルエンジンにおいて、前記クランクケースの上部にブリーザ室を一体的に形成するとともに、前記ケースカバーを前記ブリーザ室壁部と隙間を有して配置し、前記ブリーザ室壁部に前記ケースカバーと対向する位置に開口部を設け、該開口部を介して該ブリーザ室内とクランクケース内とを連通することを特徴とする自動二輪車の4サイクルエンジンのブリーザ構造である。
【0006】
また、前記ブリーザ室壁部と前記ケースカバーとの隙間は、前記タイミングチェーンの軌道位置よりクランク軸軸方向外側に形成することが好ましい。
また、前記ケースカバーの内側に、前記隙間のクランクケース内側の開口部と対向して隔壁部を連続的に突出形成することが好ましい。
【0007】
また、動力伝達ケース上に、吸気をエンジン本体に供給する吸気装置のエアクリーナを配置するとともに、前記ブリーザ室を前記クランクケースのクランク軸軸方向両側に亘り形成し、前記ブリーザ室壁部の動力伝達ケース側に、前記エアクリーナおよび通気径路に連通する連通孔を形成することが好ましい。
【0008】
本発明によれば、クランクケースの上部にブリーザ室を一体的に形成することにより、オイルセパレータを別体で設ける必要がないので、省スペースで、従来よりも部品点数を削減するとともにコストの削減を図ることができる。また、ケースカバーをブリーザ室壁部と隙間を有して配置して、前記ブリーザ室壁部に前記ケースカバーと対向する位置に開口部を設けることにより、ブリーザ室への入口となる該開口部に潤滑油の飛沫が直接飛び込むことを防止し、ブリーザ性能の向上を図ることができる。
【0009】
また、ブリーザ室壁部とケースカバーとの隙間を、タイミングチェーンの軌道位置よりクランク軸軸方向外側に形成することにより、該タイミングチェーンの遠心力により飛散した潤滑油の飛沫が前記隙間に直接飛び込むことがないのでブリーザ性能の向上を図ることができる。
【0010】
また、ケースカバーの内側に、ブリーザ室壁部とケースカバーとの隙間に対向して隔壁部を連続的に突出形成したことにより、オイルミストの流れを一旦隔壁部に当てて、気液分離作用の向上を図ることができる。
【0011】
また、動力伝達ケース上に、吸気をエンジン本体に供給する吸気装置のエアクリーナを配置するとともに、前記ブリーザ室を前記クランクケースのクランク軸軸方向両側に亘り形成し、前記ブリーザ室壁部の動力伝達ケース側に、前記エアクリーナおよび通気径路に連通する連通孔を形成することにより、ブリーザ室とエアクリーナとを連結するブリーザホースの長さを短縮できるとともに、ブリーザホースの配設スペースを節約することができ、しかも、ブリーザ室の容積を大きくすることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態に係る自動二輪車の4サイクルエンジンのブリーザ構造が用いられたユニットスイング型エンジンが搭載された自動二輪車の全体の構成を示す説明図、図2は前記エンジンの構成を示す側面部分断面図、図3は前記エンジンの構成を示す平面断面図、図4は本実施形態に係るブリーザ構造の構成を示す詳細断面図である。
【0013】
本実施形態に係るの4サイクルエンジンのブリーザ構造は、図1に示すように、小型自動二輪車であって、いわゆるスクータ型自動二輪車1に搭載される強制空冷型のユニットスイング型4サイクルエンジン20に採用したものである。
前記スクータ型自動二輪車1には、フロントカバー2とシート3の下方を覆うボディカバー4との間に足載せのフロア部5が形成されている。
車体前部には、前輪6を軸支するフロントフォーク7がヘッドパイプ8に枢支され、該ヘッドパイプ8からフレームパイプ9が下方へ延出し、さらに後方へ屈曲してフロア部5を延設するとともに後部フレーム10に接合している。
前記後部フレーム10の立上り部より後方へ向かいエンジンハンガー11が突出して設けられている。該エンジンハンガー11の先端部には後述するスイングユニット12の前端のエンジンマウント13が枢支され、該スイングユニット12を揺動自在に支持している。
【0014】
スイングユニット12は、図1〜3に示すように、車体下方左側に配置され、その内部にはエンジン20の動力を後輪30に伝達する伝達機構として後述するVベルト自動変速機42が内蔵されている。
前記スイングユニット12は、その前部には前記エンジン20が一体的に設けられ、また、その後部と後部フレーム10との間にはクッション15が介装されるとともに、その後部には後輪30が軸支され、かつ、その後部の上側に沿ってエアクリーナ25が配設されている。
【0015】
前記エンジン20は、図1に示すように、シリンダブロック21を前方に傾けて水平に近い状態で配置されており、該シリンダブロック21の上側に形成された吸気口22から後方へ吸気管23が延出し、該シリンダブロック21上方に配置されたキャブレタ24に接合されている。さらに、該キャブレタ24より後方にコネクティングチューブ26が延出してさらに後方に配置されたエアクリーナ25に連結され、吸気系が構成されている。
【0016】
一方、排気系を構成するマフラー31は、図3に示すように、前記エンジン20を中心に車体右側に配設されている。前記シリンダブロック21の下側に形成された排気口(図示省略)から下向きに延出した排気管33は、車体方向右側に偏向し屈曲して後方へ向けて延設されて前記マフラー31の膨出部に嵌挿されている。前記マフラー31から後方へテールパイプ(図示省略)が突出している。
【0017】
前記エンジン20は、図2、図3に示すように、クランク軸40の反駆動伝達側の軸端40aに冷却ファン50が設けられる強制空冷方式のエンジンである。クランクケース41のクランク軸40の駆動伝達側の軸端40bには、エンジンの負荷に応じて無段階に変速されるVベルト自動変速機42が設けられ、該Vベルト自動変速機42を収納した動力伝達ケース43が一体的に設けられている。前記冷却ファン50が設けられる反駆動伝達側には、該冷却ファン50の外周を覆うとともに、シリンダブロック21およびシリンダヘッド44を覆うように冷却風カウリング45が取付けられている。
【0018】
前記クランクケース41の反駆動伝達側には、クランク軸40の回転に連動してシリンダヘッド44内の動弁装置46に動力を伝達するタイミングチェーン47が配置され、該タイミングチェーン47を収納するタイミングチェーン室48のクランク軸40側外側にケースカバー51が配置されている。
前記ケースカバー51の外側に配置するクランク軸40の軸端40aには、前記冷却ファン50を備えたフライホイールマグネトー53が取付けられている。
【0019】
前記クランクケース41の上部には、図3、図4に示すように、ブリーザ室54がクランク軸40軸方向両側、すなわち、駆動伝達側から反駆動伝達側に亘り一体的に形成され、反駆動伝達側には、前記ケースカバー51がブリーザ室壁部55と隙間56を有して配置されている。
一方、駆動伝達側には、前記ブリーザ室壁部55の動力伝達ケース43側に、外部に連通する連通孔54aが形成されている。前記連通孔54aには、接続用のニップル60が取付けられ、該ニップル60には、ブリーザホース61が連結されて前記エアクリーナ25と連通している。
【0020】
前記ブリーザ室壁部55には、前記ケースカバー51と対向する位置に開口部57が形成され、該開口部57を介して該ブリーザ室54内とクランクケース41内とを連通している。
前記壁部55と前記ケースカバー51との隙間56は、前記タイミングチェーン47の軌道位置よりクランク軸40軸方向外側に形成されている。
前記ケースカバー51の内側には、隔壁部58が前記隙間56のクランクケース41内側の開放部56aと対向するとともに隙間を有して連続的に突出形成されている。
【0021】
次に、本実施形態の作用について説明する。
エンジン20内の各動作部に供給された潤滑油は、各部位を潤滑するとともにクランク軸40の回転により動作するタイミングチェーン47の遠心力により飛散して、一部がオイルミストとなりクランクケース41内に充満する。これにより、ブローバイガス中にオイルミストが含まれる状態となる。
【0022】
このブローバイガスがクランクケース41からブリーザ室54に流れ込む時、隔壁58に当たり、更に、クランクケース41内空間から狭くなる開放部56aを介して隙間56を通って開口部57よりブリーザ室54内に流れ込む。この時、隔壁58やケースカバー51およびブリーザ室壁部55の表面でオイルミストが液状となり、ブローバイガス中のオイルミスト量を削減することができる。
そして、ブリーザ室54内を通過して開口部57と反対側に形成された連通孔54aより吸気径路に送気されるので、さらにブローバイガス中のオイルミストを効果的に削減できる。
【0023】
以上のような構成により、本実施形態によると、クランクケース41の上部にブリーザ室54を駆動伝達側から反駆動伝達側に亘り一体的に形成し、ケースカバー51をブリーザ室壁部55と隙間を有して配置して該ケースカバー51とブリーザ室壁部55との間に送気通路を形成するようにしたので、ブローバイガス中のオイルミストを効果的に削減できる。
また、前記ブリーザ室壁部55に前記ケースカバーと対向する位置に開口部57を設けたので、該開口部57からブリーザ室54内へ潤滑油の飛沫が直接飛び込むことを防止し、ブリーザ性能の向上を図ることができる。
【0024】
また、ブリーザ室壁部55とケースカバー51との隙間56、すなわち、送気通路をタイミングチェーン47の軌道位置よりクランク軸40方向外側に形成したので、該タイミングチェーン47の遠心力により飛散した潤滑油の飛沫が前記隙間に直接飛び込むことがないという効果を有する。
【0025】
また、ケースカバー51の内側に、ブリーザ室壁部55と該ケースカバー51との隙間56に対向して隔壁部58を連続的に突出形成したことにより、オイルミストの流れを一旦隔壁部に当てて、気液分離作用の向上を図ることができる。また、該隔壁部58をケースカバー51に一体的に形成したので、ブリーザ構造を構成する部品点数を削減でき、組付け作業性の向上を図ることができる。
【0026】
また、ブリーザ室54の動力伝達ケース43側に、連通孔54aを形成したので、該ブリーザ室54とエアクリーナ25とを連結するブリーザホース61の長さを短縮できるとともに、該ブリーザホース61の設置スペースを節約することができ、しかも、ブリーザ室54の容積を大きくすることができる。
【0027】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明による請求項1〜4記載の自動二輪車のエンジンのブリーザ構造によれば、クランクケースの上部にブリーザ室を一体的に形成することにより、オイルセパレータを別体で設ける必要がなく、省スペースで、従来よりも部品点数を削減するとともにコストの削減を図ることができる。また、ケースカバーをブリーザ室壁部と隙間を有して配置して、前記ブリーザ室壁部に前記ケースカバーと対向する位置に開口部を設けることにより、ブリーザ室への入口となる該開口部に潤滑油の飛沫が直接飛び込むことを防止し、ブリーザ性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係る自動二輪車の4サイクルエンジンのブリーザ構造が用いられたユニットスイング型エンジンが搭載された自動二輪車の全体の構成を示す説明図である。
【図2】 前記エンジンの構成を示す側面部分断面図である。
【図3】 前記エンジンの構成を示す平面断面図である。
【図4】 本実施形態に係るブリーザ構造の構成を示す詳細断面図である。
【図5】 (a)は従来のブリーザ構造の構成を示す側面断面図、(b)は(a)のA−A断面矢視図である。
【符号の説明】
1 スクータ型自動二輪車
20 エンジン
21 シリンダブロック
24 キャブレタ
25 エアクリーナ
40 クランク軸
40a クランク軸の反駆動伝達側の軸端
40b クランク軸の駆動伝達側の軸端
41 クランクケース
42 Vベルト自動変速機
43 動力伝達ケース
47 タイミングチェーン
48 タイミングチェーン室
50 冷却ファン
51 ケースカバー
54 ブリーザ室
54a 連通孔
55 ブリーザ室壁部
56a 開放部
56 隙間
57 開口部
58 隔壁
60 ニップル
61 ブリーザホース
Claims (4)
- エンジンのクランクケースのクランク軸軸方向一方側にVベルト自動変速機を収納した動力伝達ケースを一体的に備える一方、該クランクケースのクランク軸軸方向他方側にエンジンの動弁装置に動力を伝達するタイミングチェーンを配置して、該タイミングチェーンを収納するタイミングチェーン室のクランク軸側外側にケースカバーを配置して、該ケースカバーの外側に配置するクランク軸軸端にエンジン冷却用冷却ファンを備えた自動二輪車の4サイクルエンジンにおいて、
前記クランクケースの上部にブリーザ室を一体的に形成するとともに、前記ケースカバーを前記ブリーザ室壁部と隙間を有して配置し、前記ブリーザ室壁部に前記ケースカバーと対向する位置に開口部を設け、該開口部を介して該ブリーザ室内とクランクケース内とを連通することを特徴とする自動二輪車の4サイクルエンジンのブリーザ構造。 - 前記ブリーザ室壁部と前記ケースカバーとの隙間は、前記タイミングチェーンの軌道位置よりクランク軸軸方向外側に形成することを特徴とする請求項1に記載の自動二輪車の4サイクルエンジンのブリーザ構造。
- 前記ケースカバーの内側に、前記隙間のクランクケース内側の開口部と対向して隔壁部を連続的に突出形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の自動二輪車の4サイクルエンジンのブリーザ構造。
- 動力伝達ケース上に、吸気をエンジン本体に供給する吸気装置のエアクリーナを配置するとともに、前記ブリーザ室を前記クランクケースのクランク軸軸方向両側に亘り形成し、前記ブリーザ室壁部の動力伝達ケース側に、前記エアクリーナおよび通気径路に連通する連通孔を形成することを特徴とする請求項1、2または3に記載の自動二輪車の4サイクルエンジンのブリーザ装置。
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