JPH0673197A - 近赤外線吸収透明樹脂組成物及びその成形体 - Google Patents

近赤外線吸収透明樹脂組成物及びその成形体

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JPH0673197A
JPH0673197A JP4228725A JP22872592A JPH0673197A JP H0673197 A JPH0673197 A JP H0673197A JP 4228725 A JP4228725 A JP 4228725A JP 22872592 A JP22872592 A JP 22872592A JP H0673197 A JPH0673197 A JP H0673197A
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祐治 三宅
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 透明樹脂 100重量部に対して硫化第二銅0.01
〜5重量部、又は硫化第二銅0.01〜5重量部とチオ尿素
誘導体0.001 〜1重量部及び/又はアミド誘導体0.001
〜1重量部を加熱混練することを特徴とする近赤外線吸
収透明樹脂組成物及びシート又はフィルム状に成形され
てなる近赤外線吸収透明樹脂成形体。 【効果】 褪色などの不安定性はなく、暗所に長期間放
置により褪色するというフォトクロミズムも見られず、
優れた近赤外線吸収能を示すので、光学的フィルター、
熱線吸収性グレージング材等として工業的に有用であ
る。又、得られた近赤外線吸収シートは 800〜2000nmの
近赤外領域全域にわたる強い吸収性を有しているので、
近赤外線カットフィルターなどの光学材料、記録材料、
熱線遮蔽材料、畜熱材料、近赤外線検出センサー等とし
て利用できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は近赤外線吸収材料に関す
る。近赤外線吸収材料は、最近とくに研究開発が盛んに
行われている機能材料であり、近赤外領域の波長を有す
る半導体レーザー光等を光源とする感光材料、光ディス
ク用記録材料などの情報記録材料、赤外線カットフィル
ターやフィルム等の光学材料、熱線吸収性グレージング
材料として利用することができる。
【0002】
【従来の技術】従来、近赤外線吸収性の光透過性材料と
しては、米国特許第3692688 号明細書に示されるように
六塩化タングステン(WCl6)と塩化スズ(SnCl2・2H2O)
をメタクリル酸メチルシラップ(モノマー)に溶解して
重合して得られる実質的にヘイズのない近赤外線吸収能
に優れた材料が知られている。
【0003】更に、このほか、これまでに開発された近
赤外線吸収材料としては、特公昭60−42269 号公報にク
ロム、コバルト錯塩、特公昭60−21294 号公報にチオー
ルニッケル錯体、特開昭61−115958号公報にアントラキ
ノン誘導体、特開昭61−218551号公報には700〜800nmの
領域に極大吸収波長のある新規スクアリリウム化合物が
開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来の近赤外線吸収材
料は、有機系のものは耐久性が悪く環境条件の変化や時
間の経過にともなって初期の能力が劣化してくるという
問題点があり、一方錯体系のものは耐久性があるが近赤
外部のみならず可視部にも吸収があり化合物そのものが
強く着色しているものが多く用途が制限されてしまうと
いった問題があった。更にどちらの系のものも特定の波
長において吸収ピークがみられ、そのピークからはずれ
た波長では殆ど吸収能はないものであった。これらの素
材を利用して、例えば近赤外部の波長を有するレーザー
光を光源とする記録体を考えると、レーザーの波長と材
料の吸収ピークを合わせる必要がある。しかし、レーザ
ーの波長も近赤外吸収材料の吸収波長も限られたものし
か得られないから、レーザーの波長と近赤外線吸収材料
の吸収ピークが合致する組み合わせは極く限られたもの
にならざるを得なかった。
【0005】また、上記従来技術のWCl6と SnCl2・2H2O
をメタクリル酸メチルシラップに溶解した組成物は濃青
色に発色し近赤外線をよく吸収する性質を持っている
が、暗所で長期間放置の間に褪色するという問題点を有
していた。このように緩やかに進行するフォトクロミズ
ムなどは一定の品質を備えた光学フィルターや熱線吸収
性グレージングなどの工業製品を提供する上で好ましく
ない問題点であった。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、鋭意検討
を重ねた結果、硫化第二銅、又は硫化第二銅とチオ尿素
誘導体及び/又はアミド誘導体とを透明樹脂中に含有せ
しめることによって、800〜2000nmの近赤外領域全体に
一様に吸収がみられ、着色が少なくかつ耐久性が優れた
近赤外線吸収材料が得られることを見出し本発明を完成
した。
【0007】即ち、本発明は、(A) 透明樹脂 100重量部
に対し、(B) 硫化第二銅0.01〜5重量部を配合してなる
近赤外線吸収能に優れた透明樹脂組成物に関する。更
に、本発明は、(A) 透明樹脂 100重量部に対し、(B) 硫
化第二銅0.01〜5重量部、(C)下記一般式(I)
【0008】
【化3】
【0009】(R1,R2,R3は、水素、アルキル基、シク
ロアルキル基、アリール基、アラルキル基及び5員又は
6員の複素環残基からなる群から選ばれた一価基を表
し、各基は1個以上の置換基を有していてもよく、R1
R2又はR2とR3は連結して環を形成してもよい)から選択
された少なくとも1種のチオ尿素誘導体 0.001〜1重量
部及び/又は一般式(II)
【0010】
【化4】
【0011】(R4,R5は、水素、アルキル基、アルケニ
ル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基及
び5員又は6員の複素環残基からなる群から選ばれた一
価基を表すか、又はR5はアルコキシ基を表し、各基は1
個以上の置換基を有していてもよく、R4とR5は連結して
環を形成してもよい)から選択された少なくとも1種の
アミド誘導体 0.001〜1重量部を配合してなる近赤外線
吸収能に優れた透明樹脂組成物に関する。又、本発明
は、これらの近赤外線吸収能に優れた透明樹脂組成物が
シート、フィルム状に成形されてなる近赤外線吸収透明
樹脂成形体を提供する。
【0012】本発明において用いられる透明樹脂として
は、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂、メタク
リル酸エステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリオレフ
ィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、
不飽和ポリエステル系樹脂などを挙げることができる
が、これらに限定されるものではない。
【0013】ポリカーボネート系樹脂とは、2価フェノ
ールとカーボネート前駆体とを溶液法または溶融法で反
応せしめて製造されたものであり、2価フェノールの代
表的な例をあげると 2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニ
ル)プロパン〔ビスフェノールA〕、ビス(4−ヒドロ
キシフェニル)メタン、1,1 −ビス(4−ヒドロキシフ
ェニル)シクロヘキサン、2,2 −ビス(4−ヒドロキシ
−3,5 −ジメチルフェニル)プロパン、2,2 −ビス(4
−ヒドロキシ−3,5 −メチルフェニル)プロパン、ビス
(4−ヒドロキシフェニル)サルファイド、ビス(4−
ヒドロキシフェニル)スルホン等が挙げられる。好まし
い2価フェノールは、ビス(4−ヒドロキシフェニル)
アルカン系、特にビスフェノールAを主原料とするもの
である。又、カーボネート前駆体としてはカルボニルハ
ライド、カルボニルエステル又はハロホルメート等が挙
げられ、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネー
ト、2価フェノールのジハロホルメート及びこれらの混
合物である。
【0014】スチレン系樹脂とは、スチレン系単量体並
びに該単量体と共重合可能な他のビニル単量体からなる
それぞれの群から選ばれる少なくとも一種の単量体を用
い、更に必要に応じて、ゴム状物質をも存在させて得ら
れたものであり、スチレン系単量体とはスチレン、α−
メチルスチレン、及びベンゼン核の水素原子がハロゲン
原子や炭素数1〜2のアルキル基で置換されたスチレン
誘導体などを総称するものであり、かかるスチレン系単
量体として代表的なものを例示すれば、スチレン、o−
クロルスチレン、p−メチルスチレン、 2,4−ジメチル
スチレン、又はt−ブチルスチレンなどである。又、前
記した共重合可能な他のビニル単量体として代表的なも
のには、(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリ
ロニトリルもしくはシアン化ビニリデンの如きアクリロ
ニトリル系単量体;(メタ)アクリル酸、(メタ)アク
リル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)ア
クリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メ
タ)アクリル酸−2−エチルヘキシルブチルもしくは
(メタ)アクリル酸−β−ヒドロキシエチルの如き(メ
タ)アクリル酸及びそれらの各種エステル酸;あるいは
酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ビニルピロ
リドン、(メタ)アクリルアミド、無水マレイン酸、無
水イタコン酸、又はマレイミドをはじめ、ビニルケトン
類、又はビニルエーテル類などがある。更に、前記した
ゴム状物質として代表的なものにはポリブタジエン・ゴ
ム、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合ゴ
ム、エチレン・プロピレンターポリマー系ゴム、ブタジ
エン・アクリロニトリル共重合ゴム、ブチルゴム、アク
リル系ゴム、スチレン・イソブチレン・ブタジエン共重
合ゴム、又はイソプレン・アクリル酸エステル系共重合
ゴムをはじめとするイソプレンもしくはクロロプレンの
如き共役 1,3−ジエン系単量体を用いて得られたゴムな
どがあるが、これらは一種あるいは二種以上の組み合わ
せで用いられる。
【0015】メタクリル酸エステル系樹脂とは、重合性
原料としてメタクリル酸メチル又はメタクリル酸メチル
を主成分とする重合性不飽和単量体により製造されたも
のであり、メタクリル酸メチルと共重合可能な重合性不
飽和単量体の例としては(メタ)アクリル酸(アクリル
酸あるいはメタクリル酸の意。以下同様)、アクリル酸
メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル
酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アク
リル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチル
ヘキシル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレー
ト、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テ
トラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリ
メチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチ
ロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリ
スリトールテトラ(メタ)アクリレート、ネオペンチル
グリコールジ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル
酸アリル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等が具
体例として挙げることができる。重合原料としてメタク
リル酸メチルを主成分とする重合性不飽和単量体を使用
する場合、メタクリル酸メチルを50重量%以上、好まし
くは60重量%以上含むことが望ましい。重合原料として
メタクリル酸メチル又はメタクリル酸メチルを主成分と
する重合性不飽和単量体中に該単量体の重合体を含有す
るシラップを得る方法としては、通常行われているよう
に塊状予備重合により部分重合物を得る方法、あるいは
重合物を単量体に溶解する方法が挙げられ、キャスティ
ング時の注入を考慮して35重量%以下の重合体含有率に
調整することが好ましい。又、次のような代表的な重合
方法である懸濁重合、乳化重合、溶液重合を用いて製造
したメタクリル酸エステル系樹脂も使用出来る。
【0016】塩化ビニル系樹脂としては、熱安定性、引
張強度、耐熱性に優れたホモ塩化ビニル樹脂が望ましい
が、少量のコモノマーを共重合させた塩化ビニルを主体
とする塩化ビニル系共重合体、グラフト共重合体、更に
は塩化ビニル系樹脂と相溶性の良い樹脂、例えば塩化ビ
ニリデン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリ
エチレン等を少量含むブレンドポリマーでも差し支えな
い。更に、これらの混合物も有用である。
【0017】ポリオレフィン系樹脂とは、α−オレフィ
ンの単独重合体、α−オレフィンを主成分とする異種単
量体との共重合体であり、例えばポリエチレン、ポリプ
ロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−
ブテン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン
共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−
アクリル酸共重合体等が挙げられる。これらのうち、密
度が 0.910〜0.935 の低密度ポリエチレンやエチレン−
α−オレフィン共重合体及び酢酸ビニル含有量が30重量
%以下のエチレン−酢酸ビニル共重合体が透明性や耐候
性や価格の点から農業用フィルムとして好ましい。更
に、酢酸ビニル含有量が5重量%以上、30重量%以下の
エチレン−酢酸ビニル共重合体はこれらのうちでも透明
性、柔軟性、耐候性等の点でより好ましい。
【0018】ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂と
しては、ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−12、
ナイロン−46、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチ
レンテレフタレート、ポリアクリレート、ポリエーテル
エーテルケトンなどが例示できる。
【0019】本発明に使用する硫化第二銅は常法により
製造された粉末状のものであればよく、その平均粒径が
12μm 以下であることが好ましく、10μm 以下であるこ
とがより好ましく、20μm 以上の粒子が実質的に存在し
ないことが好ましい。平均粒径が該範囲を越えると得ら
れる成形体の外観を悪化させ、表面凹凸による平行光線
透過性を悪化させるのみならず、成形体物性と近赤外線
吸収性も低下するので好ましくない。
【0020】本発明で使用する一般式(I)で示される
チオ尿素誘導体として以下のものを例示できるが、これ
らに限定されるものではない。
【0021】1−エチル−3−フェニルチオウレア、
1,3−ジフェニルチオウレア、 1,3−ジエチルチオウレ
ア、1−エチル−3−p−クロロフェニルチオウレア、
1−エチル−3−(2−ヒドロキシエチル)チオウレ
ア、1−(2−チアゾリル)−3−フェニルチオウレ
ア、 1,3−ジステアリルチオウレア、 1,3−ジベヘニル
チオウレア、1−エチルチオウレア、1−p−ブロモフ
ェニル−3−フェニルチオウレア、1−(2−チオフェ
ニル)−3−フェニルチオウレア、 1,3−ビス(2−ヒ
ドロキシエチル)チオウレア、1−p−アミノフェニル
−3−フェニルチオウレア、1−p−ニトロフェニル−
3−フェニルチオウレア、1−p−ヒドロキシフェニル
−3−フェニルチオウレア、 1,3−ジ−m−クロルフェ
ニルチオウレア、エチレンチオウレア、チオウレア、1
−メチル−3−p−ヒドロキシフェニルチオウレア、1
−フェニルチオウレア、1−m−ニトロフェニルチオウ
レア、1−p−ニトロフェニルチオウレア、1−p−ア
ミノフェニルチオウレア、 1,3−ジメチルチオウレア、
1,3−ジシクロヘキシルチオウレア、1−フェニル−3
−p−クロロフェニルチオウレア、1−フェニル−3−
p−メトキシフェニルチオウレア、1,1 −ジフェニルチ
オウレア、1,1 −ジベンジル−3−フェネチルチオウレ
ア、1−フェニル−3−(2−ヒドロキシエチル)チオ
ウレア。
【0022】本発明で使用する一般式(II)で示される
アミド誘導体として以下のものを例示できるが、これら
に限定されるものではない。
【0023】N−メチルベンツアミド、 N−フェニルベ
ンツアミド、 N−フェニルステアリルアミド、 N−エチ
ルエチルアミド、 N−エチル−p−クロルベンツアミ
ド、 N−プロピルベンツアミド、 N−エチルステアリル
アミド、 N−1−(2チアゾリル)ベンツアミド、 N−
ステアリルステアリルアミド、 N−ベヘニルベヘニルア
ミド、アセトアミド、 N−フェニル−p−ブロモベンツ
アミド、 N−ベヘニルアセトアミド、 N−p−アミノフ
ェニルベンツアミド、 N−p−ニトロフェニルベンツア
ミド、 N−p−ヒドロキシフェニルベンツアミド、 N−
m−クロルフェニルベンツアミド、ニコチン酸アミド、
アセトアニリド、O−エチル−N−フェニル(カルバマー
ト)、ベンツアミド、m−ニトロベンツアミド、p−ニ
トロベンツアミド、p−アミノベンツアミド、 N−メチ
ルアセトアミド、 N−シクロヘキシルベンツアミド、 N
−クロロフェニルベンツアミド、 N−p−メトキシフェ
ニルベンツアミド、 N−ステアリルベンツアミド。
【0024】本発明において用いられる硫化第二銅、チ
オ尿素誘導体及び/又はアミド誘導体は、可視及び近赤
外域の透過率の設定によって含有させる量を変化するこ
とができる。硫化第二銅の添加量は、透明樹脂 100重量
部に対して0.01〜5重量部、好ましくは0.02〜3.0 重量
部である。チオ尿素誘導体、アミド誘導体の添加量は、
透明樹脂 100重量部に対して0.001 〜1重量部、好まし
くは0.002 〜0.5 重量部である。又、同じ含有量でも透
過率は本発明で得られる樹脂材料が例えば板であると
き、その板厚によって変化するので最終的には、設定し
た板厚における透過率が得られる様に含有量を決定する
ことができる。
【0025】本発明において透明樹脂 100重量部に対し
て硫化第二銅の添加量が0.01重量部未満で、チオ尿素誘
導体、アミド誘導体の添加量が 0.001重量部未満の場合
には、近赤外線吸収能の向上が十分でなく、一方硫化第
二銅の添加量が5重量部を越える場合、チオ尿素誘導
体、アミド誘導体の添加量が1重量部を越える場合には
近赤外線吸収能の向上は見られず、材料中にヘイズが発
生する恐れがある。
【0026】なお、上記成分の他に、必要に応じて硫化
第二銅の分散をより良好にするために、例えばソルビタ
ンモノステアレートのようなソルビタン脂肪酸エステル
やグリセリンモノステアレートのようなグリセリン脂肪
酸エステルなどの分散剤を本発明の組成物に対して添加
して用いることも有効であり、また適当な添加剤、例え
ば難燃剤、熱安定剤、抗酸化剤、光安定剤、紫外線吸収
剤、滑剤、着色剤、無機充填剤、ガラス繊維等の補強材
などを配合することもできる。
【0027】本発明における透明樹脂、硫化第二銅、チ
オ尿素誘導体及び/又はアミド誘導体の混合方法として
は、特別な手段、順序を要することなく、慣用の混合装
置、例えば、熱ロール、バンバリーミキサー又は押出機
により容易に製造できる。
【0028】フィルム又はシートは、通常の製造法によ
って製造されたもので良い。押出機によるTダイ法、イ
ンフレーション成形法、カレンダー成形法、圧縮成形法
によって製造できる。
【0029】フィルムまたはシートの厚さは、特に制限
はないが、0.01〜10mmの範囲内であるのが好ましい。な
お、更にシートの強度を増加したり、模様を付けるとき
は、例えば、約5mm角の格子状にガラスフィラメントヤ
ーンを編織したガラス繊維ネットやステンレス製金網を
内部に含有させて成形してもよい。
【0030】
【作用】上記の如く、平均粒径が12μm 以下の硫化第二
銅、又は硫化第二銅とチオ尿素誘導体及び/又はアミド
誘導体とを含有した透明樹脂に上記混合方法により加熱
混練することによって 800〜2000nmの全域にわたりほぼ
一様に近赤外線を吸収するようになるが、その詳しい作
用機構は未だ明らかでない。
【0031】
【実施例】以下に実施例を掲げて、本発明の詳細を述べ
るが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、
以下の例における添加割合は全て重量部を示す。
【0032】又、得られた樹脂材料の透過スペクトル
は、分光光度計((株)日立製作所製:323 型)で測定
した。
【0033】近赤外線吸収能の判定は、900 、1000、11
00、1500nmの各波長の吸収値の平均が80%以上のものを
◎、60%以上のものを○、30%以上を△、30%以下を×
とした。
【0034】近赤外線吸収能の熱、湿度、光に対する安
定性を下記の方法で測定した。 耐熱性、耐湿性:近赤外線吸収性シートを80℃、 100%
RHのオーブン中に 480時間放置した後、近赤外線吸収性
を再度分光光度計(1000nm)で測定した。その保存性
は、下記式により算出した結果で評価した。
【0035】
【数1】
【0036】耐光性:近赤外線吸収性シートをUVテスタ
ー(大日本プラスチックス(株)製超促進耐光試験機)
で 200時間光照射した後、近赤外線吸収性を再度分光光
度計(1000nm)で測定した。その保存性は、下記式によ
り算出した結果で評価した。
【0037】
【数2】
【0038】熱安定性は、射出成形機を用いてポリカー
ボネート系樹脂は 280℃、ポリスチレン系樹脂及びメタ
クリル酸エステル系樹脂は 230℃、塩化ビニル系樹脂及
びポリオレフィン系樹脂は 150℃の設定温度で滞留時間
20分後成形を実施し、得られたサンプルの色調変化を日
本電色(株)製色差計にて測定し、L.a.b.法により色差
(ΔE)を求め、以下のように判定した。
【0039】◎:優秀 ○:良好 △:ヤケ無(黄色変化大) ×:ヤケ有 実施例1〜18 表1に示す組み合わせと重量部で平均粒径8μm の硫化
第二銅などをビスフェノールAからなるポリカーボネー
ト樹脂 100重量部に添加し、タンブラーミキサーで20分
間混合し、40mmφ押出成型機によって 300℃で混練後、
ペレットにした。次いでこのペレットを乾燥し、射出成
型機を用いて厚さ3mmのヘイズのない緑色の透明樹脂板
を作成した。得られたこれらの板について透過スペクト
ルを測定し、表4に 800〜2000nmにおける結果を示す
が、近赤外域の吸収能に優れていた。
【0040】実施例19〜23 表2に示す組み合わせと重量部で平均粒径8μm の硫化
第二銅などをポリスチレン樹脂及びアクリロニトリル−
スチレン共重合体 100重量部に添加し、タンブラーミキ
サーで20分間混合し、40mmφ押出成型機によって 220℃
で混練後、ペレットにした。次いでこのペレットを乾燥
し、射出成型機を用いて厚さ3mmのヘイズのない緑色の
透明樹脂板を作成した。得られたこれらの板について透
過スペクトルを測定し、表4に 800〜2000nmにおける結
果を示すが、近赤外域の吸収能に優れていた。
【0041】実施例24〜26 表2に示す組み合わせと重量部で平均粒径8μm の硫化
第二銅などをメタクリル酸メチル樹脂 100重量部に添加
し、タンブラーミキサーで20分間混合し、40mmφ押出成
型機によって 220℃で混練後、ペレットにした。次いで
このペレットを乾燥し、射出成型機を用いて厚さ3mmの
ヘイズのない緑色の透明樹脂板を作成した。得られたこ
れらの板について透過スペクトルを測定し、表4、5に
800〜2000nmにおける結果を示すが、近赤外域の吸収能
に優れていた。
【0042】実施例27〜29 表2に示す組み合わせと重量部で平均粒径8μm の硫化
第二銅などを塩化ビニル樹脂(重合度 P=1000) 100重
量部に添加し、その他の塩化ビニル樹脂添加剤として錫
系安定剤(ジブチル錫マレート)3重量部、滑剤(ステ
アリン酸)0.8重量部、加工助剤1重量部を添加し、タ
ンブラーミキサーで20分間混合し、40mmφ押出成型機に
よって 170℃で混練後、ペレットにした。次いでこのペ
レットを乾燥し、射出成型機を用いて厚さ3mmのヘイズ
のない緑色の透明樹脂板を作成した。得られたこれらの
板について透過スペクトルを測定し、表5に 800〜2000
nmにおける結果を示すが、近赤外域の吸収能に優れてい
た。
【0043】実施例30〜34 表2に示す組み合わせと重量部で平均粒径8μm の硫化
第二銅などをエチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニ
ル含有量15重量%) 及び低密度ポリエチレン樹脂 100重
量部に添加し、タンブラーミキサーで20分間混合し、40
mmφ押出成型機によって 170℃で混練後、ペレットにし
た。次いでこのペレットを乾燥し、射出成型機を用いて
厚さ3mmのヘイズのない緑色の透明樹脂板を作成した。
得られたこれらの板について透過スペクトルを測定し、
表5に 800〜2000nmにおける結果を示すが、近赤外域の
吸収能に優れていた。
【0044】実施例35 実施例2の配合をタンブラーミキサーで20分間混合し、
40mmφ押出成型機によって 300℃でTダイ成形法により
1mm厚にシート化した。冷却ロールの温度は、120℃で
あった。得られたこれらの板について透過スペクトルを
測定し、表5に 800〜2000nmにおける結果を示すが、近
赤外域の吸収能に優れていた。
【0045】比較例1〜10 表3に示す組み合わせと重量部で平均粒径8μm の硫化
第二銅又は金属銅などを各々単独で樹脂 100重量部に添
加し、タンブラーミキサーで20分間混合し、40mmφ押出
成型機によって300 ℃で混練後、ペレットにした。次い
でこのペレットを乾燥し、射出成型機を用いて厚さ3mm
のヘイズのない緑色の透明樹脂板を作成した。得られた
これらの板について透過スペクトルを測定し、表5に 8
00〜2000nmにおける結果を示すが、全て30%以下の近赤
外線吸収能しかなかった。
【0046】表4,5によれば硫化第二銅を混練した透
明樹脂のシートは、強い近赤外線吸収性シートとなるこ
とが明らかである。又、この近赤外線吸収性は、加熱や
加湿あるいは露光によって殆ど低下せず、取り扱いや保
存の環境条件の変化に対し安定性が高いものであること
がわかる。
【0047】金属銅を単独に混練した透明樹脂のシート
は、近赤外線吸収性を実質的に示さなかった。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】
【表5】
【0053】
【発明の効果】本発明は、以上述べたように、透明樹脂
100重量部に対して硫化第二銅0.01〜5重量部、又は硫
化第二銅0.01〜5重量部とチオ尿素誘導体 0.001〜1重
量部及び/又はアミド誘導体 0.001〜1重量部を加熱混
練することを特徴とする近赤外線吸収透明樹脂組成物及
びシート又はフィルム状に成形されてなる近赤外線吸収
透明樹脂成形体であるから、得られた樹脂材料は褪色な
どの不安定性はなく、暗所に長期間放置により褪色する
というフォトクロミズムも見られず、優れた近赤外線吸
収能を示すので、光学的フィルター、熱線吸収性グレー
ジング材等として工業的に有用である。
【0054】又、得られた近赤外線吸収シートは 800〜
2000nmの近赤外領域全域にわたる強い吸収性を有してい
る。これらの性質を利用することによって近赤外線カッ
トフィルターなどの光学材料、記録材料、熱線遮蔽材
料、畜熱材料、近赤外線検出センサー等として利用でき
る。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (A) 透明樹脂 100重量部に対し、(B) 硫
    化第二銅0.01〜5重量部を配合してなる近赤外線吸収能
    に優れた透明樹脂組成物。
  2. 【請求項2】 (A) 透明樹脂 100重量部に対し、(B) 硫
    化第二銅0.01〜5重量部、(C) 下記一般式(I) 【化1】 (R1,R2,R3は、水素、アルキル基、シクロアルキル
    基、アリール基、アラルキル基及び5員又は6員の複素
    環残基からなる群から選ばれた一価基を表し、各基は1
    個以上の置換基を有していてもよく、R1とR2又はR2とR3
    は連結して環を形成してもよい)から選択された少なく
    とも1種のチオ尿素誘導体 0.001〜1重量部及び/又は
    一般式(II) 【化2】 (R4,R5は、水素、アルキル基、アルケニル基、シクロ
    アルキル基、アリール基、アラルキル基及び5員又は6
    員の複素環残基からなる群から選ばれた一価基を表す
    か、又はR5はアルコキシ基を表し、各基は1個以上の置
    換基を有していてもよく、R4とR5は連結して環を形成し
    てもよい)から選択された少なくとも1種のアミド誘導
    体 0.001〜1重量部を配合してなる近赤外線吸収能に優
    れた透明樹脂組成物。
  3. 【請求項3】 硫化第二銅の粒径が平均12μm 以下で粒
    径20μm 以上の粒子が実質的に存在しないことを特徴と
    する請求項1又は2記載の透明樹脂組成物。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3の何れか1項記載の近赤外
    線吸収能に優れた透明樹脂組成物がシート、フィルム状
    に成形されてなる近赤外線吸収透明樹脂成形体。
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