JPH0670466B2 - 自動変速機の油圧制御装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本発明は車両の自動変速機の油圧制御装置に関するもの
である。

［従来の技術］ 機関の負荷、機関回転数、車速などの入力信号に基づく
マイクロコンピユータの出力により自動的に油圧回路を
制御し、該油圧回路によりクラツチ機構とシフトロツド
を駆動する各油圧アクチユエータを作動させるようにし
た自動変速機は、例えば特開昭54−96659号公報などに
既に提案されている。

しかし、従来の自動変速機では、セレクタレバーをＮレ
ンジでは、油圧切換弁により油圧アクチユエータの動作
を制御する油圧制御回路が油圧源から完全に遮断される
構成となつているために、例えばＤレンジで油圧アクチ
ユエータが所定の変速段にシフトされた状態からセレク
タレバーがＮレンジに切り換えられると、変速機は所定
の変速段にシフトされた状態、すなわち変速歯車が噛み
合つた状態とされる。したがつて、運転者が一般的に認
識する変速機の中立状態（変速歯車の噛合いが解除され
ている状態）と実際の状態が異なり、上述の状態で機関
を停止し、またはその他の機能をすべて停止すると、変
速機の変速歯車が噛み合つた状態にロツクされてしま
う。その機関を始動しようとしても、変速機が噛み合つ
た状態にあるために、歯車の噛合いを解除することが困
難になり、機関を始動できなくなる場合がある。

［発明が解決しようとする課題］ 本発明の目的は上述の課題に鑑み、セレクタレバーをＮ
レンジとすると、シフトロツドを駆動するすべての油圧
アクチユエータが自動的に中立位置へ戻るようにした、
自動変速機の油圧制御装置を提供することにある。

［課題を解決するための手段］ 上記目的を達成するために、本発明の構成は油圧源と複
数のシフトロツドを各別に駆動する３位置動作型の油圧
アクチユエータの各端室との間に、セレクタレバーに連
動して少くともＤとＮレンジに切り換わる共通の油圧切
換弁と１対の電磁切換弁と制御弁とを順に挿入接続した
自動変速機において、制御弁はハウジングに１対の弁体
を嵌挿して中央室と両端室とを区画し、１対の弁体の間
および両端にばねを挟み、両端室を１対の電磁切換弁に
接続し、通常は中央室に接続しかつ１対の弁体により開
閉される１対のポートを油圧アクチユエータの端室に接
続してなり、制御弁は油圧切換弁のＤレンジで少くとも
一方のポートを中央室を経てタンクへ接続し、油圧切換
弁のＮレンジで１対のポートを中央室を経て油圧源へ接
続するものである。

［作用］ 油圧切換弁をＮレンジとすると、油圧源から圧油は電磁
切換弁を経ないで各制御弁の中央室へ送られ、さらに１
対のポートを経て各油圧アクチユエータの両端室へ送ら
れる。各シフトロツドは中立位置へ戻され、変速歯車の
噛合いが解除される。

［発明の実施例］ 第１図に示すように、油圧源12と変速機のシフトロツド
を駆動する油圧アクチユエータの油圧制御回路Ｂとの間
に、油圧切換弁Ａが挿入接続される。油圧切換弁Ａはハ
ウジング３の弁室16にスプール２を嵌合して構成され、
スプール２の端部に設けた穴2aに、図示してないP,R,N,
D,2,Lレンジ（運転モード）の切換えを行うセレクタレ
バーが連結され、セレクタレバーをＤ−Ｎ−Ｒレンジへ
切り換える時、油圧切換弁Ａも切り換えられるようにな
つている。

スプール２を所定のレンジに保持するために、ハウジン
グ３に設けた円筒部にばね４によりスプール２の３つの
くぼみ７へ付勢されるボール６が保持される。弁室16は
油圧源12に接続するポート8,18と、油圧制御回路Ｂに接
続するポート15,15aと、常時タンク17に接続するポート
13,14と、ポート18と相対向するポート19とを備えられ
る。

一方、スプール２は環状溝11,10,9を備えられ、環状溝1
1はデイテント機構５のボール６にスプール２の右側の
くぼみ７が係合するＲレンジで、ポート18をポート19に
接続するようになつている。また、環状溝９はボール６
にスプール２の左側のくぼみ７が係合するＤレンジで、
ポート８をポート15に接続し、環状溝10はＤレンジでポ
ート15aをポート14に接続するようになつている。さら
に、スプール２は軸方向の通路23と、通路23に連なる径
方向24の通路24とを備えられており、スプール２が図示
のＮレンジにある時ポート19が通路24,23、弁室16の左
端室25、ポート13を経てタンク17へ接続される。

油圧制御回路Ｂは６個の電磁切換弁31〜36から構成され
る。各電磁切換弁31〜36はソレノイド31a〜36aの消磁時
は図示の状態にあり、ソレノイド31a〜36aの励磁時は図
示の状態から切り換わり、かつポート15に連なる通路22
からのパイロツト油圧がスプールに作用するようになつ
ている。

油圧制御回路Ｂにより制御される３位置動作型の油圧ア
クチユエータＣは、４速段と５速段の変速を得るシフト
ロツド54を駆動する油圧アクチユエータ41と、２速段と
３速段の変速を得るシフトロツド55を駆動する油圧アク
チユエータ42と、後進段と１速段の変速を得るシフトロ
ツド56を駆動する油圧アクチユエータ43とから構成され
る。各油圧アクチユエータ41〜43は全く同様の構成をな
すものであるので、油圧アクチユエータ41の場合だけに
ついて説明する。

油圧アクチユエータ41は大径シリンダ62に円筒形の大径
ピストン61が、小径シリンダ58に小径ピストン59がそれ
ぞれ嵌合される。また、大径ピストン61に中間ピストン
61が嵌合され、かつ小径ピストン59と衝合されるかまた
は一体に形成される。小径ピストン59はシフトロツド54
と結合される。油圧源12から圧油が小径シリンダ58の端
室57と大径シリンダ62の端室63の両方へ供給されると、
図示の中立位置に保持される。図示してないが、大径ピ
ストン61と小径ピストン59が互いに離れると両者の間に
生じる中間室はタンク17に常時接続される。

各油圧アクチユエータ41〜43の各端室57,63を油圧源12
またはタンク17へ接続するために、各端室57,63に制御
弁45〜47を介して電磁切換弁31〜36がそれぞれ接続され
る。すなわち、油圧アクチユエータ41の場合のついて説
明すれば、油圧源12に連なる通路22から電磁切換弁32、
制御弁45を経て端室63へ圧油が送られるかまたは端室63
の油がタンク17へ戻される。また、通路22から電磁切換
弁31、制御弁45を経て端室57へ圧油が送られるかまたは
端室57の油がタンク17へ戻される。

各電磁切換弁31,32は戻しばね31b,32bの力により通常は
図示の状態にあつて、制御弁45の両端室をタンク17へ接
続しており、励磁されると戻しばね31b,32bの力に抗し
てスプールが押され、通路22を制御弁45の端室を経て油
圧アクチユエータの端室63,57に接続するように構成さ
れる。

各油圧アクチユエータ41〜43を制御する各対の電磁切換
弁31,32、33,34、35,36との間にそれぞれ挿入接続され
る制御弁45〜47は同じ構成のものである。制御弁45の場
合について説明すると、ハウジング51の内部に１対の弁
体52を嵌装して構成され、１対の弁体52の間にばね69が
介装される。ハウジング51の両端室にポート48が、中央
室67にポート50がそれぞれ備えられる。左側のポート48
は電磁切換弁36に、右側のポート48は電磁切換弁35にそ
れぞれ接続される。中央のポート50は通路28を経てポー
ト15aに接続される。ハウジング51は１対のポート65を
備えられ、一方は油圧アクチユエータ43の端室62に、他
方は端室57にそれぞれ接続される。各弁体52に設けた環
状溝49は内部通路を経て中央室67に接続し、かつ図示の
中立位置ではポート65にも接続する。ハウジング51の中
央部は突壁68を備えられ、弁体52の中央側への移動を制
限される。

後進・１速段用シフトロツド56を駆動する油圧アクチユ
エータ43に接続する制御弁47は、誤動作防止弁71を備え
られる。誤動作防止弁71はハウジング72に設けた段付シ
リンダ73に段付ピストン77を嵌合させ、ばね78により大
径シリンダ側へ付勢されている。小径シリンダはポート
79を設けられ、電磁切換弁36と接続される。また、大径
シリンダは周壁に相対向するポート74,76を設けられ
る。ポート74は電磁切換弁35に接続され、ポート76は制
御弁47のポート48に接続され、かつ通路26を経て油圧切
換弁Ａのポート19に接続される。段付ピストン77がばね
78の力に抗して左方へ移動すると、段付ピストン77に設
けた環状溝75によりポート74と76が接続される。段付シ
リンダ73の中間室は常時タンク17に接続される。

次に、本発明装置の作動について説明する。通常の走行
時、セレクタレバーはＤレンジとされ、油圧切換弁Ａの
スプール２の左側のくぼみ７がデイテント機構５のボー
ル６に係合される。この時、油圧源12から圧油がポート
８、環状溝９、ポート15を経て通路22へ供給される。ま
た、通路28に連なるポート15aはスプール２の環状溝10
とポート14を経てタンク17へ接続される。油圧制御回路
Ｂを構成する電磁切換弁31〜36は車速、機関回転数、機
関の負荷などに応じてマイクロコンピユータにより選択
的に励磁され、油圧アクチユエータ41〜43の１つが右方
または左方へ駆動されて最適の変速が達せられる。

例えば電磁切換弁36が励磁されると、通路22の圧油が電
磁切換弁36を経て制御弁47の左側のポート48から制御弁
47の左端室へ送られ、弁体52をばね69の力に抗して右方
へ押し、ポート65から油圧アクチユエータ43の端室63へ
送られる。中間ピストン60によりシフトロツド56が右方
へ押され、１速段の歯車の噛合いが達成される。同時
に、通路22の圧油は電磁切換弁36を経て誤動作防止弁71
のポート79から段付ピストン77の通孔80を経て段付ピス
トン77の右端面に圧力を及ぼす。段付ピストン77がばね
78の力に抗して左方へ押され、環状溝75によりポート74
がポート76と接続される。油圧アクチユエータ43の端室
57の油が制御弁47の右側のポート65、環状溝49、中央室
67、ポート50、通路28を経てタンク17へ戻される。

電磁切換弁35と電磁切換弁36が励磁されると、通路22の
圧油が前述のように電磁切換弁36と制御弁47を経て油圧
アクチユエータ43の端室63へ送られ、同時に誤動作防止
弁71に作用してポート74と76を接続する。また、通路22
の圧油が電磁切換弁35、互いに接続されるポート74,76
を経て制御弁47の右側のポート48から右端室へ送られ、
右側の弁体52を左方へ押して右側のポート65から油圧ア
クチユエータ43の端室57へ送られる。したがって、小径
ピストン59によりシフトロツド56が左方へ押され、大径
ピストン61に衝合したところで停止し、中立位置とされ
る。

シフトロツド56が中立位置へ戻る途中で、電磁切換弁36
の通電回路が故障により遮断された場合は、左側の弁体
52が押し戻され、端室63が制御弁47と通路28を経てタン
ク17へ接続されることとなるが、誤動作防止弁71の段付
ピストン77が図示のようにばね78により右方へ押し戻さ
れてポート74と76を遮断するので、通路22の圧油は電磁
切換弁35が励磁されても油圧アクチユエータ43の端室57
へ供給されなくなり、シフトロツド56が中立位置を行き
過ぎて後進段へシフトされることはない。

次に、セレクタレバーをＮレンジとすると、油圧切換弁
Ａのスプール２の中央のくぼみ７がデイテント機構５の
ボール６に係合される。この時、油圧源12から圧油がポ
ート８、環状溝９、ポート15aを経て通路28へ供給され
る。したがつて、通路28の圧油は各制御弁45〜47のポー
ト50から中央室67へ送られる。さらに、圧油は左右の弁
体52の環状溝49、ポート65を経て各油圧アクチユエータ
41〜43の両端室63,57へそれぞれ送られ、シフトロツド5
4〜56が何れのシフト位置にあつても中立位置へ戻さ
れ、変速歯車の噛合いが解除される。

なお、電磁切換弁36または全ての電磁切換弁の通電回路
が故障した場合は、車両を退避させるために、セレクタ
レバーによりスプール２の右側のくぼみ７がデイテント
機構５のボール６に係合するＲレンジとすると、油圧源
12に連なるポート８がポート15と遮断され、ポート18が
環状溝11によりポート19と接続され、ポート15aが環状
溝10、ポート14を経てタンク17へ接続される。したがつ
て、圧油が通路26から制御弁47の右側のポート48を経て
右端室へ送られ、弁体52を左方へ押して右側のポート65
から油圧アクチユエータ43の端室57へ送られ、シフトロ
ツド56が後進段へシフトされる。この時、端室63の油は
制御弁47と通路28を経てタンク17へ戻される。

［発明の効果］ 本発明は上述のように、油圧源と複数のシフトロツドを
各別に駆動する３位置動作型の油圧アクチユエータの各
端室との間に、セレクタレバーに連動して少くともＤと
Ｎレンジに切り変わる共通の油圧切換弁と１対の電磁切
換弁と制御弁とを順に挿入接続した自動変速機におい
て、制御弁はハウジングに１対の弁体を嵌挿して中央室
と両端室とを区画し、１対の弁体の間および両端にばね
を挟み、両端室を１対の電磁切換弁に接続し、通常は中
央室に接続しかつ１対の弁体により開閉される１対のポ
ートを油圧アクチユエータの端室に接続してなり、制御
弁は油圧切換弁のＤレンジで少くとも一方のポートを中
央室を経てタンクへ接続し、油圧切換弁のＮレンジで１
対のポートを中央室を経て油圧源へ接続するから、次の
ような効果が得られる。駐車する場合に油圧切換弁をＮ
レンジへ操作すると、油圧源から圧油が油圧応動制御弁
の通常開かれた通路を経て油圧アクチユエータの両端室
へ送られるので、油圧アクチユエータによりシフトロツ
ドが中立位置へ戻され、変速歯車の噛合いが解除され
る。したがつて、シフトロツドがシフトされた状態にロ
ツクされ、発車の際に機関を始動できなくなるという不
具合を回避できる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明に係る自動変速機の油圧制御装置の構成
図である。 A:油圧切換弁、B:油圧制御回路、2:スプール、5:デイテ
ント機構、8,14,15,15a,19:ポート、9,11:環状溝、17:
タンク、22,26,28:通路、31〜36:電磁切換弁、41〜43:
油圧アクチユエータ、45〜47:制御弁、54〜56:シフトロ
ツド

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】油圧源と複数のシフトロツドを各別に駆動
   する３位置動作型の油圧アクチユエータの各端室との間
   に、セレクタレバーに連動して少くともＤとＮレンジに
   切り換わる共通の油圧切換弁と１対の電磁切換弁と制御
   弁とを順に挿入接続した自動変速機において、制御弁は
   ハウジングに１対の弁体を嵌挿して中央室と両端室とを
   区画し、１対の弁体の間および両端にばねを挟み、両端
   室を１対の電磁切換弁に接続し、通常は中央室に接続し
   かつ１対の弁体により開閉される１対のポートを油圧ア
   クチユエータの端室に接続してなり、制御弁は油圧切換
   弁のＤレンジで少くとも一方のポートを中央室を経てタ
   ンクへ接続し、油圧切換弁のＮレンジで１対のポートを
   中央室を経て油圧源へ接続することを特徴とする、自動
   変速機の油圧制御装置。