JPH0668494B2 - アルブミン分析用一体型多層分析要素 - Google Patents

アルブミン分析用一体型多層分析要素

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JPH0668494B2
JPH0668494B2 JP62207259A JP20725987A JPH0668494B2 JP H0668494 B2 JPH0668494 B2 JP H0668494B2 JP 62207259 A JP62207259 A JP 62207259A JP 20725987 A JP20725987 A JP 20725987A JP H0668494 B2 JPH0668494 B2 JP H0668494B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [発明の技術分野] 本発明は水性液体中のアルブミン分析用乾式分析要素に
関し,さらに詳しくは生物体液,例えば血液,髓液,唾
液,リンパ液,尿等の水性液体中のアルブミン定量分析
用の乾式操作可能な一体型多層分析要素に関するもので
ある。
[従来の技術] 生物体液,例えば血液,髓液,唾液,リンパ液,尿等の
水性液体中のアルブミンの測定又は定量は緩衝されたブ
ロムクレゾールグリーン(以下,BCGという)溶液又はU
SP 3 533 749及びUSP 3 485 587(USPは米国特許を表
す)等に記載の試験片を用いて比色法の原理により実施
しうることは周知である。BCGはスルホンフタレイン色
素に属する酸塩基指示薬色素の1種である。
BCG等の酸塩基指示薬はアルブミンに特異的ではない。
ヒトの体液中に存在するグロブリン,トランスフエリン
および他の蛋白質は酸塩基指示薬色素との結合を競合
し,アルブミン分析を妨害し,測定値に誤差を生じさせ
る。この競合妨害は低濃度レベルのアルブミンに関して
特に顕著である。ヒトの血清中の全蛋白質濃度は約6.0
〜約8.0g/dLの範囲で,このうち約2.9g/dLがグロブリン
であり,残りが主にアルブミンである。このアルブミン
濃度においては競合妨害が現われる。
特開昭57-50660(USP 4 333 733)には透明支持体の上にB
CGと緩衝剤とを非蛋白性バインダポリマーに分散した試
薬層(試薬ゾーン)と多孔性展開層(反応層;反応ゾー
ン)をこの順に接着積層した構成の競合妨害を低減した
乾式一体型多層分析要素が提案されている。この要素は
展開層にヒト血清を点着すると,展開層から試薬層に水
分が供給されて両層が液体接触状態になり,試薬層から
BCGが展開層に拡散移行し,アルブミンと優先的に結合
し,BCG−アルブミン結合特有の色に変化するので,変
色後の色濃度を測定して比色測定の原理によりアルブミ
ン含有量を求める乾式操作のものである。しかしながら
この要素を用いても測定時間が長引く(約3〜約7分)
とグロブリン等の妨害成分の競合妨害による測定誤差が
無視できない程度に現われることが判明した。
特開昭61-243364及び特開昭62-137564には透明支持体の
上にpH緩衝剤含有非蛋白性親水性ポリマーバインダー層
(pH緩衝剤含有吸水層)とBCG等の指示薬を含浸保持し
た多孔性展開層(試薬展開層)を接着積層した構造のグ
ロブリンの競合妨害をより低減したアルブミン定量用乾
式一体型多層分析要素が提案されている。特開昭62-276
64には前記の要素の改良として,pH緩衝剤含有吸水層の
pH緩衝剤としてグルタル酸,アジピン酸,ピメリン酸又
はその誘導体等のジカルボン酸を含有させた要素が提案
されている。これらの多層分析要素においてもなおグロ
ブリンの競合妨害が現われることが見出された。
特開昭62-24150には透明支持体の上にpH緩衝剤含有非蛋
白性親水性ポリマーバインダー層(pH緩衝剤含有吸水
層)とBCG等の指示薬を反応性ポリマー等で固化して含
有保持する繊維質多孔性展開層(試薬展開層)を接着積
層した構造のグロブリンの競合妨害をより低減したアル
ブミン定量用乾式一体型多層分析要素が提案されてい
る。この多層分析要素では,指示薬が反応性ポリマー等
で固定化されていて変色反応速度が遅いので,感度が低
いという問題点があることが見出された。
[発明の目的] 本発明の目的はグロブリンその他の蛋白質の妨害による
誤差を低減した乾式操作型アルブミン分析用一体型多層
分析要素を提供することである。
本発明の他の目的は簡単な層構成で製造が容易でグロブ
リンその他の蛋白質の妨害による誤差を低減した乾式操
作型アルブミン分析用一体型多層分析要素を提供するこ
とである。
本発明の他の目的はアルブミンと指示薬との結合による
発色を多孔性展開層の支持体側(下側)寄りに相対的に
多く生じさせ,グロブリンその他の蛋白質と指示薬との
結合による発色を多孔性展開層の外表面側(支持体から
遠い側,上側)寄りに相対的に多く生じさせることによ
り,妨害成分であるグロブリンその他の蛋白質による誤
差を低減してアルブミンの選択的測定を高精度で実施で
きる乾式操作型アルブミン分析用一体型多層分析要素を
提供することである。
[発明の構成] 本発明は,光透過性水不透過性支持体の上に,少なくと
も1層の親水性ポリマーバインダー層,および指示薬を
含有する多孔性展開層がこの順に一体に積層されている
アルブミン分析用一体型多層分析要素において, 前記展開層中に,親水性ポリマー又は親水性ポリマーと
疎水性ポリマーとの混合物の中に分散されたアルブミン
と結合して色変化する指示薬,及びpH緩衝剤組成物が含
有保持されていることを特徴とするアルブミン分析用一
体型多層分析要素である。
[発明の構成の詳細な説明] アルブミンと結合して色変化する指示薬を親水性ポリマ
ーバインダー中に分散して,又は親水性ポリマーバイン
ダーと疎水性ポリマーバインダーとの混合物中に分散し
て層中に含有保持する多孔性展開層(以下,試薬展開層
という)に用いられる多孔性展開層としては特開昭55-1
64356,特開昭57-66359等に記載の織物展開層(例,ブ
ロード,ポプリン等の平織物),特開昭60-222769等に
記載の編物展開層(例,トリコット編,ダブルトリコッ
ト編,ミラニーズ編等),特開昭57-148250に記載の有
機ポリマー繊維パルプ含有抄造紙からなる展開層,特公
昭53-21677,USP 3 992 158等に記載のメンブランフイル
タ(ブラッシュポリマー層),ポリマーミクロビーズ,
ガラスミクロビーズ,珪藻土が親水性ポリマーバインダ
ーに保持されてなる連続微空隙含有多孔性層等の非繊維
等方的多孔性展開層,特開昭55-90859に記載のポリマー
ミクロビーズが水で膨潤しないポリマー接着剤で点接触
状に接着されてなる連続微空隙含有多孔性層(三次元格
子状粒状構造物層)からなる非繊維等方的多孔性展開層
等を用いることができる。これらの多孔性展開層のうち
で指示薬を分散して保持する親水性ポリマーを含有保持
させやすい点で織物展開層,編物展開層に代表される繊
維質展開層が好ましい。
アルブミンと結合して色変化する指示薬としてI.M.Kolt
hoff著「Acid-Base Indicators」(Mac-Millan社,1937年
発行)350-353頁等に記載の蛋白誤差(protein error)を
示す酸塩基指示薬色素を用いることが好ましい。蛋白誤
差を示す酸塩基指示薬色素の例としてブロムクレゾール
グリーン,ブロムクレゾールパープル,ブロムチモール
ブルー,ブロムフェノールブルー,クロルフェノールレ
ッド,フェノールレッド,クレゾールレッド,チモール
ブルー;クレゾールフタレイン等のスルホンフタレイン
指示薬色素;インジゴカルミン等のインジゴイド色素;
メチルレッド,メチルオレンジ等のアゾ色素系指示薬が
ある。これらの指示薬のうちで,スルホンフタレイン指
示薬色素が好ましく,ブロムクレゾールグリーン(BCG)
とブロムクレゾールパープル(BCP)が最も好ましい。
試薬展開層に含有させる酸塩基指示薬色素の量は1m2
り約0.2gから約3.0g,好ましくは約0.4gから約1.5g
の範囲である。
前記の指示薬を分散して保持する親水性ポリマーとして
は,水性液体試料を展開層に点着供給したときに,液体
試料中の水に徐々に溶解又は膨潤する性質を有してい
て,指示薬と実質的に反応せず,指示薬を実質的に固定
せずに指示薬を分散保持できるものが好ましい。指示薬
を親水性ポリマー中に分散して展開層中に分散保持させ
ることにより,アナライトであるアルブミンと指示薬と
の結合による発色が多孔性展開層の支持体側(下側)寄
りに相対的に多く生じ,妨害成分(グロブリン及び/又
はその他の蛋白質)と指示薬との結合による発色が多孔
性展開層の外表面側(上側)寄りに相対的に多く生じる
ことが見出された。この現象を利用して,要素内の発色
光学濃度を透明支持体側から測光することにより,アル
ブミン−指示薬色素の結合の発色を選択的に測光するこ
とが可能になり,妨害成分による誤差を低減してアルブ
ミンの定量精度を高くすることができる。
親水性ポリマーとしては,高分子学会編「高分子材料便
覧」(コロナ社,1973年発行);「化学大辞典」(共立
出版,1960〜1963年発行);中村亦夫監修「水溶性高分
子」(化学工業社,1973年発行);R.L.Davidson,M.Sit
tig編「Water-Soluble Resins 2nd Ed.」(REINHOLD BOOK
CORP.,1968年発行);J.Brandrup,E.H.Immergut編「Poly
mer Handbook」(INTERSCIENCE PUBLISHERS,1966年発行)
等に記載の公知の親水性又は疎水性ポリマーから適宜に
選択して用いることができる。
親水性ポリマーとして親水性セルロース誘導体系ポリマ
ー,親水性ビニル系ポリマー又はコポリマー,親水性ア
クリル酸エステル系ポリマー又はコポリマー等を用いる
ことができる。親水性ポリマーと疎水性ポリマーとの混
合物を用いることでアルブミンと結合して色変化する指
示薬のポリマーからの放出の速度を所望の広い範囲に制
御できる利点がある。
親水性セルロース誘導体ポリマーとして中村亦夫監修
「水溶性高分子」(化学工業社,1973年),R.L.Davids
on,M.Sittig編「Water-Soluble Resins 2nd Ed.」(Reinho
ld Book Corp.,1968年),特開昭60-222770等に記載の
親水性又は水溶性セルロース誘導体がある。親水性又は
水溶性セルロース誘導体のうちで,炭素原子数1から3
の低級アルキル基,又は炭素原子数1から4のヒドロキ
シ基置換低級アルキル基によりヒドロキシル基の一部又
は実質的に全部がエーテル化された水溶性セルロースエ
ーテル類が好ましい。水溶性セルロースエーテルは,一
般に分子量約8千から約100万,好ましくは約1万から
約30万の範囲のものを用いることができる。セルロース
エーテルの例として,メチルセルロース,エチルセルロ
ース,ヒドロキシエチルセルロース,ヒドロキシプロピ
ルメチルセルロース,ヒドロキシブチルメチルセルロー
スがあり,これらのうちでメチルセルロース,ヒドロキ
シプロピルメチルセルロースが好ましい。
親水性ビニル系ポリマー又はコポリマーとして,前記文
献,特開昭59-171864,特開昭60-115859等に記載の広範
囲の親水性又は水溶性ビニル系ポリマーを用いることが
できる。これらのうちではポリビニルアルコール,ポリ
ビニルエーテル,ポリビニルピロリドン等が好ましい。
親水性アクリル酸誘導体系ポリマー又はコポリマーとし
ては,ポリアクリル酸,β−ヒドロキシプロピルアクリ
レート,ポリアクリルアミド等がある。
親水性ポリマーとしては,メタノール,エタノール,β
−メトキシエタノール,ジオキサン,エチレングリコー
ル等の有機溶媒可溶のポリマーが好ましい。
親水性ポリマーの被覆量は約3.0g/m2から約30g/m2,好
ましくは約5.0g/m2から約20g/m2の範囲である。
親水性ポリマーには,少量の疎水性ポリマーを混合して
用いることができる。用いうる疎水性ポリマーとして
は,親水性ポリマーと相溶性を有していて実質的に均一
に混ざり合うようなポリマー,又は逆に相溶性に乏しく
て相分離を起こすようなポリマーいずれをも用いること
ができる。疎水性ポリマーは親水性ポリマーに対して重
量比で約40%以下,好ましくは約33%以下の範囲で用い
ることができる。
親水性ポリマーに混合して用いることができる疎水性ポ
リマーとして,疎水性セルロース誘導体系ポリマー,疎
水性ビニル系ポリマー又はコポリマー,疎水性アクリル
酸誘導体系ポリマー又はコポリマー等がある。
疎水性セルロース誘導体系ポリマーとしては,疎水性セ
ルロースエーテル,セルロースエステルがある。セルロ
ースエーテルの例として,メチルセルロース,エチルセ
ルロース等がある。セルロースエステルの例として,ア
セチルセルロース等がある。
疎水性ビニル系ポリマーとしては,ポリ酢酸ビニル,ポ
リビニルメチルエーテル等がある。
疎水性アクリル酸誘導体系ポリマーとしては,アクリル
酸エステル系ポリマー,メタアクリル酸エステル系ポリ
マー等がある。アクリル酸エステル系ポリマーとして,
ポリアクリル酸メチル,ポリアクリル酸エチル,ポリア
クリル酸ブチル;メタアクリル酸エステル系ポリマーと
して,メタアクリル酸ラウリルエステルコポリマー等が
ある。
展開層には指示薬とともに分析操作時に水性液体試料
(例,全血,血漿,血清,リンパ液,髄液,尿に代表さ
れる生物体液)が点着され展開された領域のpH値を約2.
0から約4.0,好ましくは約2.5から約3.5の範囲に維持で
きる有機酸又は有機酸を含む酸性pH緩衝剤(以下,緩衝
剤ということがある)を含有させる。有機酸としてはヒ
ドロキシルカルボン酸及びジカルボン酸からなる群から
選択された少なくとも1種の有機酸が用いられる。ヒド
ロキシカルボン酸の例として特開昭57-50660,特開昭61
-243364,特開昭62-27664等に記載の林檎酸,乳酸,コ
ハク酸,マロン酸,枸櫞酸,酒石酸がある。ジカルボン
酸の例としてマロン酸,コハク酸,グルタル酸,アジピ
ン酸,ピメリン酸,3,3−ジメチルグルタル酸がある。
これらのうちで林檎酸が好ましい。前記の有機酸のほか
に日本化学会編「化学便覧基礎編」(東京,丸善,1966
年発行)1312-1320頁,USP 3 438 737等に記載のその他
のpH緩衝剤組成物も用いることができる。緩衝剤の展開
層における含有量は1m2当り約30ミリ当量から約500ミ
リ当量,好ましくは約50ミリ当量から約300ミリ当量の
範囲である。林檎酸の場合の含有量は1m2当り約2.0g
〜約35g,好ましくは約3.5g〜約20gの範囲である。
緩衝剤は指示薬と一緒に親水性ポリマー中に分散させ展
開層に分散保持させることが好ましいが,展開層中にあ
まねく分散保持させることこともできる。
多孔性展開層に指示薬と緩衝剤を分散保持する親水性ポ
リマーを含有させる方法として、指示薬とポリマーを含
む水溶液,水−有機溶媒混合溶媒溶液又は有機溶媒溶液
(有機溶媒の例:メタノール,エタノール,イソプロピ
ルアルコール等の脂肪族アルコール;アセトン,メチル
エチルケトン等のジアルキルケトン;ジメチルエーテル
等のジアルキルエーテル;テトラヒドロフラン,ジオキ
サン等の脂肪族環状エーテル;アセトニトリル;ヘキサ
ン;β−メトキシエタノール;エチレングリコール等)
を展開層の上から公知の方法により実質的に一様に塗布
又は噴霧し乾燥する方法,指示薬,緩衝剤,親水性ポリ
マーを含む溶液に展開層用の素材を浸漬し乾燥又は半乾
燥状態で親水性ポリマーバインダー層(吸水層)の上に
積層し一体化する方法等がある。指示薬,緩衝剤,親水
性ポリマー溶液を展開層の上から塗布又は噴霧する場合
は,三者を溶解する溶剤は吸水層の親水性ポリマー層を
溶解させないもので三者を溶解又は分散しうるものから
適宜に選択して用いることが好ましい。
指示薬,緩衝剤,親水性ポリマーとともに界面活性剤を
含有させて指示薬とポリマーを展開層中に一様に含有保
持させ,水性液体試料点着時の指示薬の放出速度をコン
トロールすることができる。また,水性液体試料の展開
を一様にすることができる。界面活性剤としては,アニ
オン界面活性剤,カチオン界面活性剤,ノニオン界面活
性剤,両性界面活性剤いずれも使用できるが,ノニオン
界面活性剤が好ましい。ノニオン性界面活性剤の具体例
として,p−オクチルフエノキシポリエトキシエタノー
ル,p−ノニルフエノキシポリエトキシエタノール,ポ
リオキシエチレンオレイルエーテル,ポリオキシエチレ
ンソルビタンモノラウレート,p−ノニルフエノキシポ
リグリシドール,オクチルグルコシド等がある。これら
のうちでポリオキシエチレンオレイルエーテルが好まし
い。ノニオン性界面活性剤の展開層における含有量は1
m2当り約20mg〜約10g,好ましくは約30mg〜約5.0gの
範囲である。
親水性ポリマーバインダー層は水に接触して膨潤し水を
吸収できる親水性ポリマーバインダーを主成分とする吸
水性の層である。吸水性という機能に着目して,この層
は吸水層ということがある。吸水層は分析操作時に試薬
展開層に点着された水性液体試料中の水がこの層の上側
表面に到達した時に,試薬展開層での水性液体試料の展
開を良化させる作用を有している。
吸水層に用いられるポリマーバインダーは水に接触時に
膨潤して吸水する性質を有する非蛋白性の親水性ポリマ
ーである。非蛋白性の親水性ポリマーの例としてポリア
クリルアミド,アガロース,特開昭57-50660,特開昭58
-77664等に記載のアクリルアミド−N−ビニルピロリド
ンコポリマー等のアクリルアミド系コポリマー,特開昭
62-137564に記載のメタリルアルコールとアクリルアミ
ド又はその誘導体,アクリル酸又はその誘導体,メタク
リル酸又はその誘導体,又はN−ビニル−2−ピロリド
ンとの2元又は3元コポリマー等のメタクリルアルコー
ル系コポリマー(メタリルアルコール系コポリマーは架
橋硬化可能である。例,アクリルアミド−N−ビニル−
2−ピロリドン−メタリルアルコール3元コポリマー)
がある。これらの非蛋白性親水性ポリマーのうちでは,
アクリルアミド−N−ビニルピロリドンコポリマー等の
アクリルアミド系コポリマー,アクリルアミド−N−ビ
ニル−2−ピロリドン−メタリルアルコール3元コポリ
マー等のメタリルアルコール含有コポリマーが好まし
い。吸水層に用いられるポリマーバイダーの被覆量は1
m2当り約5gから約100g,好ましくは約7gから約70
gの範囲である。ポリマーバインダーは必要により2種
以上を混合して用いることができる。
吸水層にはアナライトであるアルブミンと結合する指示
薬の能力に悪影響を及ぼさない諸種の成分を含有させる
ことができる。その例としてノニオン性界面活性剤があ
る。ノニオン性界面活性剤の具体例として,前述の試薬
含有展開層に含有させることができる界面活性剤と同様
のものがある。ノニオン性界面活性剤を吸水層に含有さ
せることにより分析操作時に水性液体試料中の水が吸水
層に実質的に一様に吸収されやすくなり,また試薬展開
層との液体接触が迅速にかつ実質的に一様になる。ま
た,吸水層にも前述の緩衝剤を含有させることができ
る。
吸水層には架橋剤(硬化剤又は硬膜剤ともいわれる)を
含有させることができる。架橋剤としては,有機ポリマ
ー化学分野で周知の諸種の無機及び有機架橋剤を用いる
ことができる。ポリビニルアルコール用の有機架橋剤の
例としてジメチル尿素,メタリルアルコール含有ポリマ
ー用の有機架橋剤の例としてホルムアルデヒドがある。
架橋剤の吸水層中での含有量は,架橋硬化させる吸水層
の被覆量と硬化の程度に応じて選択しうるが,一般的に
被覆量で約50mg/m2〜約1000mg/m2,好ましくは約80mg/m
2〜約800mg/m2の範囲である。
吸水層は必要に応じて2層以上設けることができる。2
層以上の吸水層を設ける場合には,試薬展開層に近い層
に高分子量のpH緩衝剤または高分子量の酸を含有させる
ことができる。用いることができる高分子量の酸の例と
して,公知のカルボキシル基含有ポリマー,スルホン酸
基含有ポリマーがある。
吸水層を2層設ける場合,支持体に近い吸水層には上記
の非蛋白性親水性ポリマーだけでなく,広い範囲の親水
性ポリマーを用いることができる。そのような親水性ポ
リマーの例として,脱イオンゼラチンである。
光透過性水不透過性支持体は従来の一体型多層分析要素
に用いられる公知のものを用いることができる。その具
体例としては,ポリエチレンテレフタレート,ビスフエ
ノールAのポリカルボネート,ポリスチレン,セルロー
スエステル(例,セルロースジアセテート,セルロース
トリアセテート,セルロースアセテートプロピオネート
等)等のポリマーからなる厚さ約50μmから約1mm,好
ましくは約80μmから約300μmの範囲の透明な,例え
ば,波長約200nmから約900nmの範囲内の少なくとも一部
の範囲の波長の電磁輻射線を透過させる,平滑平面状の
支持体を用いることができる。支持体の表面には公知の
下塗層または接着層を設けて吸水層との接着を強固にす
ることができる。
本発明の多層分析要素においては,指示薬色素を親水性
ポリマー中に分散して展開層中に分散保持させることに
より,支持体側から反射測光した場合のアルブミンに関
する発色の分配比率が高くなる。
本発明の多層分析要素の好ましい実施態様においては,
下記の発色の分配比率評価用水性液体試料を用いて評価
した場合に, アルブミンに関する発色の分配比率KA≧1.0, グロブリンに関する発色の分配比率KG≦0.6 である。すなわち, 25℃においてpH6.8〜7.4,好ましくは7.0〜7.2の範囲に
緩衝されており,含有される塩類濃度が実質的に生理的
塩類溶液の塩類濃度に相当する水溶液(生理的塩類溶
液), アルブミンを1.0g/dLから8.0g/dLの範囲で含有する前記
と同様の生理的塩類溶液, グロブリンを0.5g/dLから6.0g/dLの範囲で含有する前記
と同様の生理的塩類水溶液 の各10μLを本発明の多層分析要素の展開層に,それぞ
れ別個に点着し,30℃〜40℃の範囲内の一定温度,好ま
しくは37℃で,6分インクベーションし,直ちに又は約
10秒経過する間に前記温度で中心波長約640nm,半値幅
が約10nmより大きい可視光で透明支持体側及び展開層側
から要素内の発色を反射測光した場合に,下記の式によ
り定義される アルブミンに関する発色の分配比率KA, グロブリンに関する発色の分配比率KG の値が,前記評価用水性液体試料中の前記グロブリン含
有量範囲,及びアルブミン含有量範囲において KA≧1.0かつKG≦0.6 である。ここで, PSA:アルブミン含有生理的塩類溶液点着要素の透明支
持体側から測定した色光学濃度値 PSG:グロブリン含有生理的塩類溶液点着要素の透明支
持体側から測定した色光学濃度値 PPS:生理的塩類溶液点着要素の透明支持体側から測定
した色光学濃度値 SSA:アルブミン含有生理的塩類溶液点着要素の展開層
側から測定した色光学濃度値 SSG:グロブリン含有生理的塩類溶液点着要素の展開層
側から測定した色光学濃度値 SPS:生理的塩類溶液点着要素の展開層側から測定した
色光学濃度値 KA=(PSA-PPS)/(SSA-SPS) KG=(PSG-PPS)/(SSG-SPS) である。
発色の分配比率評価用水性液体試料として用いられる生
理的塩類水溶液としては,「岩波 生物学辞典第3版」
(岩波書店,1983年)707-708頁;「生化学ハンドブッ
ク」(丸善,1984年)491-493頁等に記載の諸種の生理
的塩類水溶液,第6改正〜第10改正日本薬局方に記載の
生理食塩液(Solutio natrii chloridi isotonica)を用
いることができる。生理的塩類溶液にはpH緩衝剤成分が
含有されているが,さらに,生理的塩類溶液に前記のpH
範囲のpH緩衝剤組成物又はpH緩衝剤水溶液を添加した水
溶液を用いることもできる。pH緩衝剤組成物又はpH緩衝
剤水溶液としては,前述のpH緩衝剤組成物のうちから適
宜に選択して用いることができる。好ましい生理的塩類
溶液の例として,日本薬局方に記載の生理食塩液,リン
ゲル液がある。また,好ましいpH緩衝剤水溶液添加生理
的塩類溶液の例として,塩化ナトリウム0.70w/v%含有p
H7.0〜7.2燐酸緩衝水溶液がある。
本発明のアルブミン分析用一体型多層分析要素は前述の
諸特許明細書に記載の公知の方法により調製することが
できる。
本発明の多層分析要素は一辺約15mmから約30mmの正方形
またはほぼ同サイズの同形等の小片に裁断し,特公昭57
-28331,実開昭56-142454,特開昭57-63452,実開昭58-
32350,特表昭58-501144等に記載のスライド枠に収めて
化学分析スライドとして用いることが,製造,包装,輸
送,保存,測定操作等諸種の観点の好ましい。使用目的
によっては,長いテープ状でカセット又はマガジンに収
めて用いること,または小片を開口のあるカードに貼付
又は収めて用いることなどもできる。
本発明の多層分析要素は前述の諸特許明細書等に記載の
操作により液体試料中のアナライトであるアルブミンの
定量分析を実施できる。例えば,約5μLから約30μ
L,好ましくは約8μLから約15μLの範囲の全血,血
漿,血清,リンパ液,尿等の水性液体試料を展開層に点
着し,約20℃から約40℃の範囲の実質的に一定の温度
で,好ましくは37℃近傍の実質的に一定の温度で約1分
から約10分,好ましくは約2分から約7分の範囲でイン
クベーションし,光透過性支持体側からアルブミン−酸
塩基指示薬色素結合の吸収極大波長またはその近傍の波
長の光を用いて試薬展開層の光学濃度を反射測光し,予
め作成した検量線を用いて比色測定法の原理により液体
試料中のアルブミン含有量を求めることができる。点着
する水性液体試料の量,インクベーション時間と温度は
一定にすることによりアルブミンの定量分析を高精度で
実施できる。測定操作は特開昭60-125543,特開昭60-22
0862,特開昭61-294367,特開昭58-161867等に記載の化
学分析装置により極めて容易な操作で高精度の定量分析
を実施できる。
実施例1 厚さ180μmの無色透明ポリエチレンテレフタレート(PE
T)フイルム(支持体)の上に下記の被覆量になるように
して水溶液から塗布し,70℃で48時間乾燥して架橋硬化
させた吸水層を設けた。
吸水層の被覆量(1m2当り) アクリアミド−N−ビニル−2−ピロリドン− メタリルアルコール3元コポリマー (モノマーモル比58:38:4; 20w%水溶液40℃における粘度400cp) 58g p−ノニルフェノキシポリグリシドール (平均10グリシドール単位含有) 70mg 30%ホルムアルデヒド水溶液 2g 吸水層の表面に水を30g/m2の割合でほぼ一様に供給して
湿潤させたのち,洗浄して親水化したPET紡績糸(太さ5
0デニール)からなるニット編物生地(平均厚さ250μ
m)を圧着ラミネートして多孔性展開層を設けた。
別に,ポリビニルピロリドン(親水性ポリマー),ブロ
ムクレゾールグリーン,林檎酸,ポリオキシエチレンオ
レイルエーテルの混合物のエタノール溶液から下記の被
覆量になるようにして展開層の上から塗布乾燥させてア
ルブミン定量用一体型多層分析要素を調製した。
指示薬含有親水性ポリマー組成物の被覆量 (1m2当り) ポリビニルピロリドン(平均分子量36万) 8.3g ブロムクレゾールグリーン 690mg 林檎酸 13.3g ポリオキシエチレンオレイルエーテル (オキシエチレン単位平均7含有) 3.2g 比較例1 展開層にブロモクレゾールグリーン,林檎酸,ポリオキ
シエチレンオレイルエーテルのエタノール溶液(親水性
ポリマー不含)から実施例1と同じ被覆量で展開層に含
浸したほかは,実施例1と同様にして従来技術による比
較用アルブミン定量用一体型多層分析要素を調製した。
性能評価試験1 水性液体試料として4%人アルブミンを含む生理食塩水
(塩化ナトリウム900mgを全量が100mLになるようにして
精製水に溶解した水溶液),4%人アルブミンと5%人
グロブリンを含む生理食塩水を調製した。これらの液体
試料の10μLを各要素の試薬展開層に点着し,37℃で6
分インクベーションした後,直ちに中心波長640nmの可
視光でPET支持体側から試薬展開層の色光学濃度を反射
測光して第1表に示す結果が得られた。
ここで,Dは色光学濃度値で, D:アルブミン含有燐酸緩衝水溶液(pH7.0)による
値 DA+G:アルブミンとグロブリン含有生理食塩水によ
る値 誤差は式[(DA+G−D)/D]×100(%)に
よる値を示す。
第1表に示す結果から本発明の多層分析要素が従来技術
である比較例の多層分析要素に比べて液体試料中に共存
するグロブリンによる誤差が極めて少ない(約1/7で,
実質的に誤差がない)ことが明らかである。
性能評価試験2 発色の分配比率試験用水性液体試料として次の生理的塩
類溶液を調製した。
燐酸緩衝剤添加生理的食塩溶液(燐酸塩濃度50mmol;塩
化ナトリウム0.70w/v%含有;25℃でpH7.0)(塩化ナト
リウム0.70w/v%含有燐酸二水素一カリウム50mmol水溶
液と塩化ナトリウム0.70w/v%含有燐酸一水素二カリウ
ム50mmol水溶液を25℃でpH7.0になるように混合して調
製した。) 人アルブミンを下記の濃度で含有する燐酸緩衝剤添加生
理的食塩溶液(燐酸塩濃度50mmol;塩化ナトリウム0.70
w/v%含有;25℃でpH7.0): 2.0g/dL 3.8g/dL 5.6g/dL 6.4g/dL 人グロブリンを下記の濃度で含有する燐酸緩衝剤添加生
理的食塩溶液(燐酸塩濃度50mmol;塩化ナトリウム0.70
w/v%含有;25℃でpH7.0): 1.8g/dL 4.2g/dL 5.8g/dL 7.2g/dL 9.2g/dL 上記10種類の試験用水性液体試料について各10μLを各
要素の試薬展開層に点着し,37℃で6分インクベーショ
ンした後,直ちに中心波長640nmの半値幅約20nmの可視
光でPET支持体側と展開層側からそれぞれ試薬展開層の
色光学濃度を反射測光し,発色の状態を調べたところ,
アルブミンによる発色はPET支持体側からの反射光学濃
度値が大きく,一方グロブリンによる発色は展開層から
の反射光学濃度値が大きかった。反射光学濃度測定値か
ら発明の詳細な説明の欄に記載の定義による,アルブミ
ンに関する発色の分配比率KA及びグロブリンに関する発
色の分配比率KGを求めたところ,第2表に示す結果が得
られた。
第2表のデータは本発明のアルブミン定量用多層分析要
素においては,アルブミンに対する選択度を表わすKA
が常に1.0より大きく,かつグロブリンによる妨害の排
除度を表わすKG値が常に0.6より小さいことを示してい
る。このデータから,本発明のアルブミン定量用一体型
多層分析要素を用いてPET支持体側から要素内の発色の
反射光学濃度値を測定すればグロブリンの競合妨害の影
響を実質的に排除してアルブミンの定量が可能であるこ
とが明らかになった。
実施例2 展開層に含浸保持させるポリマーをヒドロキシプロピル
セルロース(親水性ポリマー)とエチルセルロース(疎
水性ポリマー)との混合物(混合比率重量比で3:1;
被覆量8.3g/m2)に変えたほかは実施例1と同様にし
て,アルブミン定量用一体型多層分析要素を調製した。
実施例1の性能評価試験と同様にして評価試験を実施し
たところ,実施例1と同様の結果が得られた。
実施例3 吸水層の親水性ポリマーをアクリルアミド−N−ビニル
−2−ピロリドンコポリマーに変え,吸水層の成分被覆
量を下記のように変え,約23℃〜約26℃の範囲で自然乾
燥させたほかは実施例1と同様にして,アルブミン定量
用一体型多層分析要素を調製した。実施例1の性能評価
試験と同様にして評価試験を実施したところ,実施例1
と同様の結果が得られた。
吸水層の被覆量(1m2当り) アクリアミド−N−ビニル−2−ピロリドン コポリマー (モノマー重量比1:1;平均分子量10万) 45g p−ノニルフェノキシポリグリシドール (平均10グリシドール単位含有) 60mg

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】光透過性水不透過性支持体の上に,少なく
    とも1層の親水性ポリマーバインダー層,および指示薬
    を含有する多孔性展開層がこの順に一体に積層されてい
    るアルブミン分析用一体型多層分析要素において, 前記展開層中に,親水性ポリマー又は親水性ポリマーと
    疎水性ポリマーとの混合物の中に分散されたアルブミン
    と結合して色変化する指示薬,及びpH緩衝剤組成物が含
    有保持されていることを特徴とするアルブミン分析用一
    体型多層分析要素。
  2. 【請求項2】前記指示薬が蛋白誤差を示す酸塩基指示薬
    色素である特許請求の範囲1に記載の分析要素。
  3. 【請求項3】前記酸塩基指示薬色素がブロムクレゾール
    グリーンまたはブロムクレゾールパープルである特許請
    求の範囲2に記載の分析要素。
  4. 【請求項4】前記親水性ポリマーバインダー層の親水性
    ポリマーがメタリルアリコールをモノマーの1成分とし
    て含有するコポリマーである特許請求の範囲1ないし3
    に記載の分析要素。
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