JP3770544B2 - グロブリンの影響を回避した乾式分析要素 - Google Patents

グロブリンの影響を回避した乾式分析要素 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、試料中に存在するグロブリンの影響を回避した乾式分析要素に関する。本発明の乾式分析要素は、アルブミンの分析など臨床検査の分野において有用である。
【0002】
【従来の技術】
従来の乾式分析要素の一形態として、透明支持体の上に呈色反応試薬と親水性ポリマーバインダーを含む吸水性の試薬層と、最外層に多孔性展開層とを設けた一体型多層分析要素が多数提案されている。多層分析要素の展開層は、その上側の表面(支持体から遠い側の表面)に点着供給された水性液体試料(例えば、血液、髄液、唾液、リンパ液、尿などの生物体液;飲料水;酒類;河川水;工場廃水など)を、水性液体試料中に含有されている成分を実質的に偏在させることなしに横方向に広げ、単位面積当たりほぼ一定容量の割合で吸水性の親水性ポリマーを含む試薬層又は吸水層に供給する作用(メータリング作用)を有する層である。
【0003】
このような乾式分析要素において、グロブリンを含有する試料を適用した場合、試料中のグロブリンの濃度により試料の粘度が変動し、その結果、試料の展開面積が変動してしまうという欠点があった。即ち、試料中のグロブリンの濃度が変動すると、それに伴って展開面積が変動し、正確な測定値が得られないという問題がある。
【0004】
また、生物体液(例えば、血液、髄液、唾液、リンパ液、尿など)中のアルブミンの測定又は定量のための方法としては、緩衝されたブロムクレゾールグリーン(BCG)溶液又は米国特許第3,533,749号及び米国特許第3,485,587号等に記載の試験片を用いて行なう方法が公知である。BCGは蛋白質と結合して色が変化するスルホンフタレイン色素に属する酸塩基指示薬色素の一種である。BCGは水性液体中に存在する蛋白質(例えば、アルブミン)の量に対応して色が変化する。
【0005】
BCGなどの酸塩基指示薬はアルブミンに特異的ではない。ヒトの体液中に存在するグロブリン、トランスフェリン及び他の蛋白質は酸塩基指示薬色素との結合を競合し、アルブミン分析を妨害し、測定値に誤差を生じさせる。この競合妨害は低濃度レベルのアルブミンに関して特に顕著である。正常なヒト血清の全蛋白質濃度は約6〜8g/dLで、このうち約2.5〜3.5g/dLがグロブリンで、残りがアルブミンである。異常なヒト血清では全蛋白質濃度が約2〜6又は約8〜12g/dLとなることがあり、高グロブリン血症等ではグロブリンが10g/dL以上となることもある。
【0006】
特開昭57−50660(米国特許第4,333,733)には、透明支持体の上にBCGと緩衝剤とを非蛋白性バインダポリマーに分散した試薬層(試薬ゾーン)と多孔性展開層(反応層;反応ゾーン)をこの順に接着積層した構成の競合妨害を低減した乾式一体型多層分析要素が提案されている。この要素は展開層にヒト血清を点着すると、展開層から試薬層に水分が供給されて両層が液体接触状態になり、試薬層からBCGが展開層に拡散移行し、アルブミンと優先的に結合し、BCG−アルブミン結合特有の色に変化するので、変色後の色濃度を測定して比色測定の原理によりアルブミン含有量を求める乾式操作のものである。しかしながら、この要素を用いても測定時間が長引く(約3〜約7分)とグロブリン等の妨害成分の競合妨害による測定誤差が無視できない程度に現われることが判明した。
【0007】
また、特開昭61−243364及び特開昭62−137564には透明支持体の上にpH緩衝剤含有非蛋白性親水性ポリマーバインダー層(pH緩衝剤含有吸水層)とBCG等の指示薬を含浸保持した多孔性展開層(試薬展開層)を接着積層した構造のグロブリンの競合妨害をより低減したアルブミン定量用乾式一体型多層分析要素が提案されている。
特開昭62−27664には前記の要素の改良として、pH緩衝剤含有吸水層のpH緩衝剤としてグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸又はその誘導体等のジカルボン酸を含有させた要素が提案されている。これらの多層分析要素においてもなおグロブリンの競合妨害が現われることが見出された。
【0008】
さらに、特開昭62−24150には透明支持体の上にpH緩衝剤含有非蛋白性親水性ポリマーバインダー層(pH緩衝剤含有吸水層)とBCG等の指示薬を反応性ポリマー等で固化して含有保持する繊維質多孔性展開層(試薬展開層)を接着積層した構造のグロブリンの競合妨害をより低減したアルブミン定量用乾式一体型多層分析要素が提案されている。この多層分析要素では、指示薬が反応性ポリマー等で固定化されていて変色反応速度が遅いので、感度が低いという問題点があることが見出された。
【0009】
さらに、特公平6−68494には、光透過性水不透過性支持体の上に、少なくとも1層の親水性ポリマーバインダー層、及び指示薬を含有する多孔性展開層がこの順に一体に積層されているアルブミン分析用一体型多層分析要素において、前記展開層中に、親水性ポリマー又は親水性ポリマーと疎水性ポリマーとの混合物の中に分散されたアルブミンと結合して色変化する指示薬、及びpH緩衝剤組成物が含有保持されていることを特徴とするアルブミン分析用一体型多層分析要素が提案されている。しかし、このアルブミン分析用一体型多層分析要素を用いても、高グロブリン血症の被験者の試料の場合にはグロブリンの影響がでてしまう。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した従来技術の問題点を解消することを解決すべき課題とした。即ち、本発明は、グロブリンの濃度により試料の粘度が変動し、試料の展開面積が変動するという欠点を解消した乾式分析要素を提供することを解決すべき課題とした。さらに本発明は、アルブミンと反応して色が変化する試薬と試料中のグロブリンとが反応して正誤差が生じることを回避できる乾式分析要素を提供することを解決すべき課題とした。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、支持体上にグロブリン析出作用を有する試薬を含む層を設けた乾式分析要素を用いて、グロブリン含有試料の測定を行なった結果、上記課題を解決できる優れた乾式分析要素を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明によれば、支持体上にグロブリン析出作用を有する試薬を含む層を有する、乾式分析要素が提供される。
好ましくは、グロブリン析出作用を有する試薬が、硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム又は硫酸アンモニウムである。
好ましくは、本発明の乾式分析要素はアルブミンの検出に用いられる。
好ましくは、本発明の乾式分析要素は、支持体上に、アルブミンと結合して色が変化する試薬を含む層と、グロブリン析出作用を有する試薬を含む層とを有する。
好ましくは、本発明の乾式分析要素は、光透過性水不透過性支持体の上に、少なくとも、アルブミンと反応して発色する試薬を含む層とグロブリン析出作用を有する試薬を含む層とがこの順に一体に積層されている。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施態様及び実施方法について詳細に説明する。
本発明の乾式分析要素は、支持体上にグロブリン析出作用を有する試薬を含む層を有することを特徴とする。
グロブリン析出作用を有する試薬は特に限定されないが、例えば、硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム又は硫酸アンモニウムなどを使用することができる。これらの試薬は1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用することもできる。
グロブリン析出作用を有する試薬の使用量は、用いる試料の種類、測定条件などを勘案して適宜設定することができ、一般的には、0.1〜30g/m2、好ましくは0.5〜10g/m2程度である。
【0014】
本発明の乾式分析要素の用途は特に限定されず、様々な成分の分析のために使用することができる。本発明の乾式分析要素は、その測定の目的に応じて様々な構成を採ることができるが、一般的には、支持体と、その上に塗布される1又は2以上の層を有する構成を有する。本発明では、支持体の上に塗布される層のうちの少なくとも1層に、グロブリン析出作用を有する試薬が含まれている。
【0015】
支持体の上に塗布される層としては、
(1)水を吸収して膨潤する親水性ポリマーを主成分として構成される吸水層;(2)検出すべき成分と反応又は結合して当該成分を検出又は定量することを可能にする検出試薬を含む試薬層;並びに
(3)乾式分析要素の上側表面に点着供給された水性液体試料を、水性液体試料中に含有されている成分を実質的に偏在させることなしに横方向に広げ、単位面積当たりほぼ一定容量の割合で吸水性の親水性ポリマーを含む試薬層又は吸水層に供給する作用(メータリング作用)を有する、展開層:
などが挙げられる。また、支持体とその上に設ける層との間、並びに支持体の上に設けられる各層の間には、接着層などの中間層を設けることもできる。
【0016】
本発明の乾式分析要素においては、上記した層の全てが存在する必要はなく、検出・測定の用途・目的に応じて適宜必要な層を設けることができる。
【0017】
また、上記した吸水層、試薬層、展開層はそれぞれ別個の層として設けてもよいが、同一の層に上記した2以上の機能を同時に持たせることにより、一つの層として設けることもできる。例えば、検出試薬を含む試薬層とメータリング作用を有する展開層は同一の層として設けてもよい。
本発明で用いるグロブリン析出作用を有する試薬は、上記した吸水層、試薬層及び展開層とは別に層を設けて塗布してもよいし、あるいは上記した吸水層、試薬層及び展開層の何れか1以上の層に含めて塗布することもできる。好ましくは、グロブリン析出作用を有する試薬は、試薬層又は展開層に含めることができ、特に好ましくは展開層に含めることができる。
【0018】
好ましい態様によれば、本発明の乾式分析要素は、試薬を含む吸水層、グロブリン析出作用を有する試薬を含む展開層とを支持体側からこの順番に有する積層体から成る一体型多層分析要素である。
より好ましい態様によれば、吸水層、試薬を含む展開層、さらにグロブリン析出作用を有する試薬を含む展開層上層部に含ませた一体型多層分析要素である。
以下、本発明の乾式分析要素に存在し得る構成要素について順番に説明する。
【0019】
本発明で用いる支持体は、好ましくは、光透過性水不透過性支持体である。光透過性水不透過性支持体は従来の一体型多層分析要素に用いられる公知のものを用いることができる。その具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ビスフエノールAのポリカルボネート、ポリスチレン、セルロースエステル(例えば、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート等)等のポリマーからなる厚さ約50μmから約1mm、好ましくは約80μmから約300μmの範囲の透明な、例えば、波長約200nmから約900nmの範囲内の少なくとも一部の範囲の波長の電磁輻射線を透過させる、平滑平面状の支持体を用いることができる。支持体の表面には公知の下塗層又は接着層を設けて吸水層との接着を強固にすることができる。
【0020】
吸水層は、水に接触して膨潤し水を吸収できる親水性ポリマーバインダーを主成分とする吸水性の層である。吸水層は分析操作時に展開層に点着された水性液体試料中の水がこの層の上側表面に到達した時に、展開層での水性液体試料の展開を良化させる作用を有している。
【0021】
吸水層に用いられるポリマーバインダーは水に接触時に膨潤して吸水する性質を有する非蛋白性の親水性ポリマーである。非蛋白性の親水性ポリマーの例として、ポリアクリルアミド、アガロース、特開昭57-50660、特開昭58-77664等に記載のアクリルアミド−N−ビニルピロリドンコポリマー等のアクリルアミド系コポリマー、特開昭62-137564に記載のメタリルアルコールとアクリルアミド又はその誘導体、アクリル酸又はその誘導体、メタクリル酸又はその誘導体、又はN−ビニル−2−ピロリドンとの2元又は3元コポリマー等のメタクリルアルコール系コポリマー(メタリルアルコール系コポリマーは架橋硬化可能である。例えば、アクリルアミド−N−ビニル−2−ピロリドン−メタリルアルコール3元コポリマー)がある。
【0022】
これらの非蛋白性親水性ポリマーのうちでは、アクリルアミド−N−ビニルピロリドンコポリマー等のアクリルアミド系コポリマー、アクリルアミド−N−ビニル−2−ピロリドン−メタリルアルコール3元コポリマー等のメタリルアルコール含有コポリマーが好ましい。
吸水層に用いられるポリマーバイダーの被覆量は1m2当り約5gから約100g、好ましくは約7gから約70gの範囲である。ポリマーバインダーは必要により2種以上を混合して用いることができる。
【0023】
吸水層にはアナライトと結合する検出試薬(指示薬など)の能力に悪影響を及ぼさない諸種の成分を含有させることができる。その例としてノニオン性界面活性剤がある。ノニオン性界面活性剤の具体例として、後述の試薬層又は展開層に含有させることができる界面活性剤と同様のものがある。ノニオン性界面活性剤を吸水層に含有させることにより分析操作時に水性液体試料中の水が吸水層に実質的に一様に吸収されやすくなり、また試薬展開層との液体接触が迅速にかつ実質的に一様になる。また、吸水層には後述する緩衝剤を含有させることができる。
【0024】
吸水層には架橋剤(硬化剤又は硬膜剤ともいわれる)を含有させることができる。架橋剤としては、有機ポリマー化学分野で周知の諸種の無機及び有機架橋剤を用いることができる。ポリビニルアルコール用の有機架橋剤の例としてジメチル尿素、メタリルアルコール含有ポリマー用の有機架橋剤の例としてホルムアルデヒドがある。架橋剤の吸水層中での含有量は、架橋硬化させる吸水層の被覆量と硬化の程度に応じて選択しうるが、一般的に被覆量で約50mg/m2〜約5000mg/m2、好ましくは約100mg/m2〜約2000mg/m2の範囲である。
【0025】
吸水層は必要に応じて2層以上設けることができる。2層以上の吸水層を設ける場合には、試薬展開層に近い層に高分子量のpH緩衝剤又は高分子量の酸を含有させることができる。用いることができる高分子量の酸の例として、公知のカルボキシル基含有ポリマー、スルホン酸基含有ポリマーがある。吸水層を2層設ける場合、支持体に近い吸水層には上記の非蛋白性親水性ポリマーだけでなく、広い範囲の親水性ポリマーを用いることができる。そのような親水性ポリマーの例としては、脱イオンゼラチンがある。
吸水層の乾燥時の厚さは、一般的には約1μmから約100μm、好ましくは約3μmから約50μm程度である。
【0026】
試薬層は、検出すべき成分と反応又は結合して当該成分を検出又は定量することを可能にする検出試薬を含む層である。試薬層は、吸水性又は水浸透性であることが好ましい。試薬層の好ましい例としては、液体試料中の測定対象成分と反応して検出可能な変化を生じさせる少なくとも一つの試薬と親水性ポリマーバインダーを含む、実質的に非孔性で吸水性の層又は微多孔性で水浸透性の層が挙げられる。検出可能な変化とは主として、光学的測定により検出できる変化を意味し、例えば、色変化、発色(呈色)、蛍光発生、紫外線領域における吸収波長の変化、混濁発生などである。
【0027】
試薬層に含有される試薬は、液体試料中の分析対象成分とこの成分を分析するために選択した化学反応によって決まり、選択した化学反応が2種類以上の試薬が関与する反応の場合にはそれらの試薬を一つの試薬層内に混合して含有させることもできるし、必要に応じて2種類以上の試薬を2層以上の別個の層に含有させることもできる。試薬層に含有させる試薬としては、各種の酵素、その他の公知の分析試薬又は臨床生化学診断試薬などが挙げられる。
【0028】
好ましい態様によれば、本発明の乾式分析要素は、アルブミンの検出に用いられる。即ち、本発明の一実施態様によれば、支持体上に、アルブミンと結合して色が変化する試薬を含む層と、グロブリン析出作用を有する試薬を含む層とを有する、乾式分析要素が本発明により提供される。
アルブミンと結合して色が変化する試薬としては、I.M.Kolthoff著「Acid-Base Indicators」(Mac-Millan社,1937年発行)350〜353頁等に記載の蛋白誤差(protein error)を示す酸塩基指示薬色素を用いることが好ましい。蛋白誤差を示す酸塩基指示薬色素の例としてブロムクレゾールグリーン、ブロムクレゾールパープル、ブロムチモールブルー、ブロムフェノールブルー、クロルフェノールレッド、フェノールレッド、クレゾールレッド、チモールブルー;クレゾールフタレイン等のスルホンフタレイン指示薬色素;インジゴカルミン等のインジゴイド色素;メチルレッド、メチルオレンジ等のアゾ色素系指示薬がある。これらの指示薬のうちで、スルホンフタレイン指示薬色素が好ましく、ブロムクレゾールグリーン(BCG)とブロムクレゾールパープル(BCP)が最も好ましい。
試薬層に含有させる酸塩基指示薬色素の量は1m2当り約0.2gから約3.0g、好ましくは約0.4gから約1.5gの範囲である。
【0029】
展開層としては、例えば、特開昭55−164356、特開昭57−66359等に記載の織物展開層(例えば、ブロード、ポプリン等の平織物)、特開昭60−222769等に記載の編物展開層(例えば、トリコット編、ダブルトリコット編、ミラニーズ編等)、特開昭57−148250に記載の有機ポリマー繊維パルプ含有抄造紙からなる展開層、特公昭53−21677、米国特許第3,992,158等に記載のメンブランフイルタ(ブラッシュポリマー層)、ポリマーミクロビーズ、ガラスミクロビーズ、珪藻土が親水性ポリマーバインダーに保持されてなる連続微空隙含有多孔性層等の非繊維等方的多孔性展開層、特開昭55−90859に記載のポリマーミクロビーズが水で膨潤しないポリマー接着剤で点接触状に接着されてなる連続微空隙含有多孔性層(三次元格子状粒状構造物層)からなる非繊維等方的多孔性展開層等を用いることができる。試薬層の場合には、指示薬などの試薬を分散して保持する親水性ポリマーを含有保持させやすい点で、織物展開層、編物展開層に代表される繊維質展開層が好ましい。
【0030】
前記の検出試薬(指示薬)を分散して保持する親水性ポリマーとしては、水性液体試料を展開層に点着供給したときに、液体試料中の水に徐々に溶解又は膨潤する性質を有していて、指示薬と実質的に反応せず、指示薬を実質的に固定せずに指示薬を分散保持できるものが好ましい。指示薬を親水性ポリマー中に分散して展開層中に分散保持させることが好ましい。
【0031】
親水性ポリマーとしては、高分子学会編「高分子材料便覧」(コロナ社,1973年発行);「化学大辞典」(共立出版,1960〜1963年発行);中村亦夫監修「水溶性高分子」(化学工業社,1973年発行);R.L.Davidson,M.Sittig編「Water-Soluble Resins 2nd Ed.」(REINHOLD BOOK CORP.,1968年発行);J.Brandrup,E.H.Immergut編「Polymer Handbook」(INTERSCIENCE PUBLISHERS,1966年発行)等に記載の公知の親水性又は疎水性ポリマーから適宜に選択して用いることができる。
【0032】
親水性ポリマーとして親水性セルロース誘導体系ポリマー、親水性ビニル系ポリマー又はコポリマー、親水性アクリル酸エステル系ポリマー又はコポリマー等を用いることができる。親水性ポリマーと疎水性ポリマーとの混合物を用いることでアルブミンと結合して色変化する指示薬のポリマーからの放出の速度を所望の広い範囲に制御できる利点がある。
【0033】
親水性セルロース誘導体ポリマーとして中村亦夫監修「水溶性高分子」(化学工業社,1973年),R.L.Davidson,M.Sittig編「Water-Soluble Resins 2nd Ed.」(Reinhold Book Corp.,1968年)、特開昭60-222770等に記載の親水性又は水溶性セルロース誘導体がある。親水性又は水溶性セルロース誘導体のうちで、炭素原子数1から3の低級アルキル基、又は炭素原子数1から4のヒドロキシ基置換低級アルキル基によりヒドロキシル基の一部又は実質的に全部がエーテル化された水溶性セルロースエーテル類が好ましい。水溶性セルロースエーテルは、一般に分子量約8千から約100万、好ましくは約1万から約30万の範囲のものを用いることができる。セルロースエーテルの例として、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロースがあり、これらのうちでメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが好ましい。
【0034】
親水性ビニル系ポリマー又はコポリマーとしては、前記文献、特開昭59−171864、特開昭60−115859等に記載の広範囲の親水性又は水溶性ビニル系ポリマーを用いることができる。これらのうちではポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン等が好ましい。
親水性アクリル酸誘導体系ポリマー又はコポリマーとしては、ポリアクリル酸、β−ヒドロキシプロピルアクリレート、ポリアクリルアミド等がある。
親水性ポリマーとしては、メタノール、エタノール、β−メトキシエタノール、ジオキサン、エチレングリコール等の有機溶媒可溶のポリマーが好ましい。
親水性ポリマーの被覆量は約0.1g/m2から約30g/m2、好ましくは約0.5g/m2から約20g/m2の範囲である。
【0035】
親水性ポリマーには、少量の疎水性ポリマーを混合して用いることができる。用いうる疎水性ポリマーとしては、親水性ポリマーと相溶性を有していて実質的に均一に混ざり合うようなポリマー、又は逆に相溶性に乏しくて相分離を起こすようなポリマーいずれをも用いることができる。疎水性ポリマーは親水性ポリマーに対して重量比で約40%以下、好ましくは約33%以下の範囲で用いることができる。
【0036】
親水性ポリマーに混合して用いることができる疎水性ポリマーとしては、疎水性セルロース誘導体系ポリマー、疎水性ビニル系ポリマー又はコポリマー、疎水性アクリル酸誘導体系ポリマー又はコポリマー等がある。
疎水性セルロース誘導体系ポリマーとしては、疎水性セルロースエーテル、セルロースエステルがある。セルロースエーテルの例として、メチルセルロース、エチルセルロース等がある。セルロースエステルの例として、アセチルセルロース等がある。
疎水性ビニル系ポリマーとしては、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルメチルエーテル等がある。
疎水性アクリル酸誘導体系ポリマーとしては、アクリル酸エステル系ポリマー、メタアクリル酸エステル系ポリマー等がある。アクリル酸エステル系ポリマーとして、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル;メタアクリル酸エステル系ポリマーとして、メタアクリル酸ラウリルエステルコポリマー等がある。
【0037】
また、吸水層、試薬層、及び展開層には指示薬とともに分析操作時に水性液体試料(例えば、全血、血漿、血清、リンパ液、髄液、尿に代表される生物体液)が点着され展開された領域のpH値を約2.0から約4.0、好ましくは約2.5から約3.5の範囲に維持できる有機酸又は有機酸を含む酸性pH緩衝剤(以下、緩衝剤ということがある)を含有させることができる。有機酸としてはヒドロキシルカルボン酸及びジカルボン酸からなる群から選択された少なくとも1種の有機酸が用いられる。ヒドロキシカルボン酸の例としては、特開昭57−50660、特開昭61−243364、特開昭62−27664等に記載のリンゴ酸、乳酸、コハク酸、マロン酸、枸櫞酸、酒石酸がある。ジカルボン酸の例としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、3,3−ジメチルグルタル酸がある。これらのうちでリンゴ酸が好ましい。前記の有機酸のほかに日本化学会編「化学便覧基礎編」(東京,丸善,1966年発行)1312-1320頁,米国特許3 438 737等に記載のその他のpH緩衝剤組成物も用いることができる。緩衝剤の吸水層、試薬層又は展開層における含有量は1m2当り約30ミリ当量から約500ミリ当量、好ましくは約50ミリ当量から約300ミリ当量の範囲である。リンゴ酸の場合の含有量は1m2当り約0.5g〜約35g、好ましくは約0.5g〜約20gの範囲である。緩衝剤は試薬と一緒に親水性ポリマー中に分散させ、吸水層、試薬層及び/又は展開層に分散保持させることが好ましい。
【0038】
試薬層又は展開層に指示薬と緩衝剤を分散保持する親水性ポリマーを含有させる方法としては、指示薬とポリマーを含む水溶液、水−有機溶媒混合溶媒溶液又は有機溶媒溶液(有機溶媒の例:メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のジアルキルケトン;ジメチルエーテル等のジアルキルエーテル;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の脂肪族環状エーテル;アセトニトリル;ヘキサン;β−メトキシエタノール;エチレングリコール等)を公知の方法により実質的に一様に、展開層の上から塗布又は噴霧し乾燥する方法、並びに、指示薬、緩衝剤、親水性ポリマーを含む溶液に展開層用の素材を浸漬し乾燥又は半乾燥状態で吸水層(親水性ポリマーバインダー層)の上に積層し一体化する方法等がある。指示薬、緩衝剤、親水性ポリマー溶液を展開層の上から塗布又は噴霧する場合は、三者を溶解する溶剤は吸水層の親水性ポリマー層を溶解させないもので三者を溶解又は分散しうるものから適宜に選択して用いることが好ましい。
【0039】
また、指示薬、緩衝剤、親水性ポリマーとともに界面活性剤を含有させて指示薬とポリマーを展開層中に一様に含有保持させ、水性液体試料点着時の指示薬の放出速度をコントロールすることができる。また、水性液体試料の展開を一様にすることができる。界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤いずれも使用できるが、ノニオン界面活性剤が好ましい。ノニオン性界面活性剤の具体例として、p−オクチルフエノキシポリエトキシエタノール、p−ノニルフエノキシポリエトキシエタノール、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、p−ノニルフエノキシポリグリシドール、オクチルグルコシド等がある。これらのうちでポリオキシエチレンオレイルエーテルが好ましい。ノニオン性界面活性剤の展開層における含有量は1m2当り約20mg〜約10g、好ましくは約30mg〜約5.0gの範囲である。
【0040】
本発明の乾式分析要素は、本明細書中上記した特許明細書に記載の公知の方法により調製することができる。
本発明の乾式分析要素は一辺約15mmから約30mmの正方形又はほぼ同サイズの同形等の小片に裁断し、特公昭57−28331、実開昭56−142454、特開昭57−63452、実開昭58−32350、特表昭58−501144等に記載のスライド枠に収めて化学分析スライドとして用いることが、製造、包装、輸送、保存、測定操作等諸種の観点の好ましい。使用目的によっては、長いテープ状でカセット又はマガジンに収めて用いること、又は小片を開口のあるカードに貼付又は収めて用いることなどもできる。
【0041】
本発明の多層分析要素は前述の諸特許明細書等に記載の操作により液体試料中のアナライト(例えば、アルブミンなど)の定量分析を実施できる。例えば、約5μLから約30μL、好ましくは約8μLから約15μLの範囲の全血、血漿、血清、リンパ液、尿等の水性液体試料を展開層に点着し、約20℃から約40℃の範囲の実質的に一定の温度で、好ましくは37℃近傍の実質的に一定の温度で約1分から約10分、好ましくは約2分から約7分の範囲でインキュベーションし、光透過性支持体側から、乾式分析要素内の色変化、発色などの検出可能な変化を反射測光し、比色測定法の原理により液体試料中の測定対象成分の含有量を求めることができる。例えば、アルブミンを分析する場合には、アルブミン−酸塩基指示薬色素結合の吸収極大波長又はその近傍の波長の光を用いて試薬展開層の光学濃度を反射測光し、予め作成した検量線を用いて比色測定法の原理により液体試料中のアルブミン含有量を求めることができる。点着する水性液体試料の量、インキュベーション時間と温度は一定にすることにより測定対象成分の定量分析を高精度で実施できる。測定操作は特開昭60−125543、特開昭60−220862、特開昭61−294367、特開昭58−161867等に記載の化学分析装置により極めて容易な操作で高精度の定量分析を実施できる。
以下の実施例により本発明をより具体的に説明するが、以下の実施例は本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0042】
【実施例】
実施例1:
ゼラチンで下塗りした180μmのポリエチレンテレフタレート無色透明平滑フィルムに下記組成の水溶液を、乾燥後の厚さが40μmになるように塗布し、乾燥した。
(Q層)
ポリマーAam−VP−NAOH 40.0g/m2
リンゴ酸 5.0g/m2
界面活性剤 1.0g/m2
ここで、ポリマーAam−VP−NAOHは、ポリアクリルアミド−N−ビニル−2−ピロリドン−メタリルアルコール3元コポリマー(モノマーモル比57:38:5(富士写真フイルム社製))を示す。
また、界面活性剤は、ポリオキシ(2−ヒドロキシ)プロピレンノニルフェニルエーテル(Surfactant 10G、オーリン社製)を用いた。
【0043】
次に、上記フィルム上に約30g/m2の供給量で水を全面に供給して湿潤させた後、50デニール相当のポリエチレンテレフタレート紡績糸を36ゲージ編みしたトリコット編み物布地を軽く圧力をかけて積層し、乾燥させた。
次に、下記組成のエタノール溶液(OC1)を各々の成分が下記の量になるように、そして乾燥後の厚さが5μmになるように塗布し、乾燥させ、さらに硫酸アンモニウムを含有する水溶液(OC2)を塗布し、乾燥させ、一体型多層分析要素を作製した。
【0044】
(OC1)
エタノール 6.2g/m2
BCG 1.0g/m2
リンゴ酸 1.0g/m2
ポリビニルピロリドン 5.0g/m2
界面活性剤 0.5g/m2
ここで、界面活性剤は、ポリオキシエチレンオレイルエーテル(BO−7、日本ケミカルズ社製)を用いた。
【0045】
(OC2)
精製水 30.0g/m2
エタノール 25.0g/m2
硫酸アンモニウム 3.0g/m2
リンゴ酸 5.0g/m2
ポリビニルピロリドン 1.0g/m2
界面活性剤 0.1g/m2
上記の一体型多層分析要素を12mm×13mm四方のチップに切断し、スライド枠(特開昭57−63452号公報に記載)に収めて、本発明のアルブミン分析用乾式スライド(1)を作製した。
【0046】
比較例1
OC2として硫酸アンモニウムを処方しないこと以外は、実施例1と同様にて、比較用のアルブミン分析用乾式スライド(2)を作製した。
【0047】
測定例1
グロブリン濃度が2.5又は7g/dLのなるように調製した試料を上記実施例1及び比較例1で作製したアルブミン分析用乾式スライド(1)及び(2)に10μL点着した。試料が展開した面積を測定した。結果を以下の表1に示す。表1中の数値の単位は、cm2を示す。
表1の結果から分かるように、本発明のアルブミン分析用乾式スライド(1)を用いた場合には、比較例のアルブミン分析用乾式スライド(2)を用いた場合と比較して、グロブリン濃度が向上しても展開面積の変動は小さかった。
【0048】
【表1】
Figure 0003770544
【0049】
測定例2
グロブリン濃度が3、5又は9g/dLのなるように添加した血清を上記実施例1及び比較例1で作製したアルブミン分析用乾式スライド(1)及び(2)に10μL点着した。その後、37℃で5分間インキュベートしながら、約10秒おきに625nmにおける反射濃度を富士ドライケム5000(富士写真フイルム社製)により測定した。そのときの5分の反射濃度を求めた。結果を以下の表2に示す。表2中の数値の単位は、反射光学濃度を示す。
表2の結果から分かるように、本発明のアルブミン分析用乾式スライド(1)を用いた場合には、比較例のアルブミン分析用乾式スライド(2)を用いた場合と比較して、グロブリンの濃度によるアルブミン測定値の変動は小さかった。
【0050】
【表2】
Figure 0003770544
【0051】
【発明の効果】
本発明の技術によれば、試料中のグロブリンを布上で析出させることにより、グロブリンの存在による展開面積の変動を抑制することができ、またグロブリンと、アルブミンと反応して色が変化する試薬との結合を阻害してアルブミン値を正確に測定することが可能になる。また、本発明では、試料が布下への移動が早くなり、感度が向上するという効果もある。
即ち、本発明により、グロブリンの濃度により試料の粘度が変動し、試料の展開面積が変動するという問題点を解消でき、かつアルブミンと反応して色が変化する試薬と試料中のグロブリンとが反応して正誤差を生じることを回避できる、乾式分析要素を提供することが可能になった。

Claims (2)

  1. 支持体上に、アルブミンと結合して色が変化する試薬を含む層と、グロブリン析出作用を有する試薬として硫酸アンモニウムを含む層とを有する、アルブミンの検出に用いるための乾式分析要素。
  2. 光透過性水不透過性支持体の上に、少なくとも、アルブミンと反応して発色する試薬を含む層とグロブリン析出作用を有する試薬として硫酸アンモニウムを含む層とがこの順に一体に積層されている、請求項1に記載の乾式分析要素。
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