JPH066168A - 水晶振動子とその製造方法 - Google Patents

水晶振動子とその製造方法

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JPH066168A
JPH066168A JP4164452A JP16445292A JPH066168A JP H066168 A JPH066168 A JP H066168A JP 4164452 A JP4164452 A JP 4164452A JP 16445292 A JP16445292 A JP 16445292A JP H066168 A JPH066168 A JP H066168A
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哲義 小掠
Akihiro Kanahoshi
章大 金星
Yutaka Taguchi
豊 田口
Kazuo Eda
和生 江田
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 熱膨張率の違いによる熱応力の発生を抑え温
度特性を安定させるとともに、接着剤の使用による振動
子の安定性劣化を抑え、高安定な水晶振動子の製造を可
能にする。 【構成】 両面に一対の励振用電極3を有する振動用水
晶板1とそれを保持する熱膨張率が水晶の熱膨張率とほ
ぼ等しい保持用ガラス板2を直接接合技術を用いて接合
する。振動部と保持部に熱膨張率のほぼ等しい材質を用
いることにより熱膨張率の違いによる熱応力が発生せず
温度特性が向上し、さらに、直接接合を用いることによ
り機械的安定性・耐久性を向上することを特徴とする水
晶振動子とその製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は小型高安定な水晶振動子
の構造および製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】水晶振動子は、その高い安定性により、
情報通信に欠かせない重要なデバイスとして用いられて
いる。近年衛星通信や携帯電話などの発達にともない、
各デバイスの小型化、高性能化が一つの大きな目標とさ
れているが、水晶振動子も例外ではない。
【0003】従来の水晶振動子としては、ATカット水晶
板を金属性の支持架により支持したものがある。図7に
これらの水晶振動子の一例を示す。図7において、18
はATカット水晶板であり、3は水晶板1の両面に蒸着さ
れた電極であり、19は水晶板18を保持する保持部で
あり、20は保持部19と水晶板18を接着するための
導電性接着剤である。電極3は導電性接着剤を介してそ
れぞれ別の保持部に電気的に接続されている。
【0004】従来の水晶振動子においては、水晶板を保
持するために、通常、金属の保持部19と導電性接着剤
20を用いる。しかしながら、金属の保持部を用いた場
合、熱膨張率が水晶の熱膨張率と異なるため水晶振動子
の温度が変化すると、保持部と水晶との間に熱応力が発
生する。水晶板の発振周波数は水晶中の応力に大きく依
存するために、このような保持方法では温度変化に対し
不安定な水晶振動子となる。そのため、水晶板における
振動部分に応力がかからないように、電極部分と保持部
分との間を大きくあける構造がとられている。また、導
電性接着剤を用いるために、接着時の接着剤の伸縮によ
る応力が水晶にかかる問題、接着剤と水晶との熱膨張率
の差により熱応力が発生する問題、また接着強度が十分
でなく大きな接着面積が必要であること、導電性接着剤
の耐熱性に問題があるために半田付けにおいて低温での
処理しかできないこと、導電性接着剤の硬化に伴うガス
の放出、機械的振動に対して十分安定でないこと、さら
には接着剤の劣化の問題などにより、水晶振動子の安定
性は悪化することになる。導電性接着剤でなく他の種々
の接着剤を用いる方法もあるが、接着剤を用いる限り基
本的にこの問題は解決されない。
【0005】図8にこの水晶振動子の製造工程例を示
す。この製造工程においては水晶板の切断を先に行な
い、この後、個別に切り離された水晶板の研磨を行な
う。そのため、小型の水晶振動子を作成するために水晶
板を小さく切断すると研磨工程において非常に小さな水
晶板を扱うことになる。この様な微小な水晶板を研磨す
るには高度な研磨装置を使用しなければならない。その
ため、さらに小さな水晶振動子を精度良く作成するため
にこの製法を用いることは困難である。次に、切断され
た振動部に電極を蒸着し保持部19と結合することにな
る。この時、切断された水晶板を個別に取り扱う必要性
があり、また導電性接着剤を塗付するために、ある程度
以上の大きさが必要とされる。さらにその後、周波数調
整を行ない金属パッケージにて気密封止することにな
る。上記の切断、研磨に関する理由、導電性接着剤に関
する理由により、通常このような構造の水晶振動子で
は、水晶板は幅2ミリ以上、長さ5ミリ以上の大きさが
ないと、高安定な水晶振動子を作成することが困難であ
った。また、水晶板そのものが大きいこと気密封止のた
め別途容器に実装しなければならないことから、水晶振
動子全体ではかなりの大きさが必要とされる。
【0006】保持部の熱応力の問題を解決するために、
例えば特許公開公報(平02−261210号)に振動
用の水晶板を熱膨張のほぼ同じ水晶板で保持する構造が
述べられている。図9にこの例を示す。図9において、
21は振動用水晶片、22は振動用水晶片21の両面に
蒸着された励磁電極、23は振動用水晶片21を保持す
るための保持用水晶片、24は基台、25は振動用水晶
片21と保持用水晶片23を固着する導電性接着剤、2
6は保持用水晶片23と基台24を接着する接着剤であ
る。振動用水晶片21と保持用水晶片23の固着方向
(X−X方向)と、保持用水晶片23と基台24の固着
方向(Z−Z)とを直交する方向にする。こうすると保
持用水晶片23の長手方向は自由端となり、熱に対して
伸縮自在でストレスは生じない。また振動用水晶片21
は長手方向を水晶片23の同方向に一致してその両端側
を固着する。したがって振動用水晶片21の長手方向の
伸縮は保持用水晶片23の影響を受けるが同一材料で熱
膨張係数が等しく熱によるストレスは発生しない。こう
することにより、熱膨張による周波数変化を防止して良
好な温度特性が得られる。しかし、振動用水晶片21と
保持用水晶片23との固定を導電性接着剤を用いて行な
っているので、この導電性接着剤に起因する各種の様々
な問題、接着時の接着剤の伸縮による応力が水晶にかか
る問題、接着剤と水晶との熱膨張率の差により熱応力が
発生する問題、また接着強度が十分でなく大きな接着面
積が必要であること、導電性接着剤の耐熱性に問題があ
るために半田付けにおいて低温での処理しかできないこ
と、導電性接着剤の硬化に伴うガスの放出、機械的振動
に対して十分安定でないこと、さらには接着剤の劣化の
問題は解決されない。そのため、本水晶振動子において
も温度特性および劣化の点で十分な安定性を持つことが
できない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】従来の水晶振動子にお
いては、水晶板と保持部の熱膨張率の差に起因する熱応
力が発振周波数を不安定にするとともに、水晶板と保持
部を接着するための導電性接着剤に起因する、接着時の
接着剤の伸縮による応力が水晶にかかる問題、接着剤と
水晶との熱膨張率の差により熱応力が発生する問題、ま
た十分な接着強度が十分でなく大きな接着面積が必要で
あること、導電性接着剤の耐熱性に問題があるために半
田付けにおいて低温での処理しかできないこと、導電性
接着剤の硬化に伴うガスの放出、機械的振動に対して十
分安定でないこと、さらには接着剤の劣化の問題が存在
し、温度および機械的振動に対して特性が不安定であっ
た。
【0008】また、保持部と水晶の振動部との相互作用
を避けるためと、接着時の製造工程における作業性を確
保するために、水晶板が数ミリ角以上の大きさを持つ必
要があった。さらに、水晶板を気密封止することを考慮
すると水晶振動子全体の大きさはさらに大きなものとな
っている。
【0009】本発明は、水晶振動子の上記欠点を克服す
るものであり、小型、高安定の水晶振動子の製造を可能
にする。
【0010】
【課題を解決するための手段】振動用水晶板を熱膨張率
が水晶とほぼ同じ保持用ガラス板に直接接合することに
より、振動用水晶板にかかる熱応力を軽減するととも
に、振動用水晶板と保持用ガラス板との固定に接着剤を
用いないため、より高安定な水晶振動子の構造を可能に
し、且つ、小型化に適した製造方法が可能であることを
特徴とする水晶振動子である。
【0011】
【作用】直接接合を用いることにより、機械的に強固
で、劣化しない結合方法を提供するとともに、水晶板を
ガラスを用いて保持することにより、保持部の形状を任
意にしかも安価に加工することが可能となり、又、ガラ
スの熱膨張率が水晶の熱膨張率とほぼ等しくなる成分の
ガラスを保持部として用いることにより、熱膨張率の違
いに起因する熱応力の発生をおさえ、水晶振動子の発振
周波数が変化することを避け、簡略且つ小型化に適した
製造工程を用い水晶振動子を安価に製造することができ
る。
【0012】
【実施例】以下本発明の実施例について、図面を参照し
ながら説明する。
【0013】(実施例1)図1に本発明の第1の実施例
の水晶振動子の構造を示す。図1において、1は振動用
水晶板、2は保持用ガラス板、3は振動用水晶板1の両
面に蒸着された一対の励振用電極であり、4は励振用電
極3と外部との電気的接続のための電極取り出し部であ
る。振動用水晶板1と保持用ガラス板2は直接接合技術
により接着されている。直接接合は水晶とガラスを接着
剤を用いずに直接張り合わせたものである。従来の水晶
振動子においては、水晶と保持部との熱膨張率が異なる
ため熱応力が発生し、水晶振動子の安定性を損なってい
たが、本実施例においては、保持用ガラス板に水晶と熱
膨張率がほぼ同じガラス板を用いることにより熱膨張率
の違いに基づく熱応力はほとんど発生しない。このよう
なガラスとして例えば、フリントガラスがあげられる。
水晶の熱膨張率は異方性を持つために方向により異なる
が、ATカット水晶板における熱膨張率はもっとも大き
な方向でおよそ9×10^(−6)、本実施例のガラス
の熱膨張率は8〜9×10^(−6)でありほぼ同じで
ある。さらに、保持部と振動部の結合に接着剤を使用せ
ずに直接接合を行なうために、水晶振動子の接着剤と水
晶との熱膨張率の差に起因する熱応力の発生や、長期安
定性についても優れたものとなる。さらには、保持部が
ガラスであるために熱膨張率が水晶と等しい他の材質に
較べ、コスト的にも安価なものとなっている。
【0014】水晶振動子の温度特性は理想的には水晶板
のカット角度で決定する。例えば、ATカット水晶振動子
の場合には−20℃から+70℃の温度範囲で±5pp
m程度である。しかし実際の水晶振動子では保持部の影
響があるため、温度特性は理論状態のものよりも悪化す
る。本実施例においては、長辺3ミリ、短辺1ミリの水
晶板に励振用電極を蒸着したものを振動用水晶板として
用いた。この振動用水晶板を用いて従来の構造で保持し
た場合と、本実施例の構造を用い直接接着技術を使用し
て保持した場合とで水晶振動子の安定性を測定したとこ
ろ、本実施例の構造の水晶振動子では温度特性で13p
pmの改善が見られた。これは、保持部に熱膨張率のほ
ぼ等しいガラスを用いたこと、接着剤を使用しないため
接着剤と水晶との熱膨張率の差に起因する熱応力が発生
しないためである。また、長期安定性においても接着剤
を使用しない本実施例においては非常に高安定な結果を
示し、接着時の接着剤の伸縮による応力が水晶にかかる
問題、導電性接着剤の硬化に伴うガスの放出、機械的振
動に対して十分安定でないこと、さらには接着剤の劣化
の問題が発生しなかったことがわかる。また今回は長辺
3ミリ、短辺1ミリの水晶板を用いたが、より小型の水
晶振動子においても本実施例の構造を用いると従来の保
持方法を用いた水晶振動子よりも高安定な水晶振動子が
できることは明らかである。さらに、接着剤を用いない
ために、従来の振動子に存在した、接着剤の耐熱温度の
問題は全く発生しないため、半田リフローも可能となっ
ている。
【0015】また、本実施例に用いた以外のガラスにお
いても熱膨張率が水晶の熱膨張率に近ければ同様の効果
が得られることは本実施例の効果より明らかである。
【0016】(実施例2)図2に本発明の第2の実施例
の水晶振動子の構造を示す。図2(a)はその断面図、
(b)は匡体内部、(c)は全体の斜視図である。図2
において、1は振動用水晶板、3は振動用水晶板1の両
面に蒸着された励振用電極、4は励振用電極の引出し
部、5は熱膨張率が水晶とほぼ同じガラスで作られた水
晶振動子ベース部、6は熱膨張率が水晶とほぼ同じガラ
スで作られた水晶振動子蓋部、7は外部電極、8は外部
電極を水晶振動子外部に引き出すための低融点ガラスで
ある。本実施例においては振動用水晶板1と中央部に凹
部を設けた水晶振動子ベース部5、および水晶振動子ベ
ース部5と中央部に凹部を設けた水晶振動子蓋部6とを
それぞれ直接接着した後、水晶振動子内部を気密封止す
るために電極引き出し部分7を低融点ガラスにより封止
している。このため、振動用水晶板1が熱膨張率の大き
く異なる他の材質と接着され、振動用水晶板1に熱応力
がかかることのない構造になっている。また、低融点ガ
ラス8の部分を通して励振用電極を外部に引き出すこと
により水晶振動子内部に接着剤の存在しない構造となっ
ている。また。水晶振動子ベース部5と水晶振動子蓋部
6にガラスを用いていることにより、熱膨張率が水晶と
等しい他の材質に較べ、コスト的にも安価なものとなっ
ている。
【0017】水晶振動子の温度特性は理想的には水晶板
のカット角度で決定する。例えば、ATカット水晶振動子
の場合には−20℃から+70℃の温度範囲で±5pp
m程度である。しかし実際の水晶振動子では保持部の影
響があるため、温度特性は理論状態のものよりも悪化す
る。長辺3ミリ、短辺1ミリの振動用水晶板に励振用電
極を蒸着した従来の水晶振動子の場合と、同じ寸法の振
動用水晶板を用いた本実施例の水晶振動子を比較すると
温度特性で13ppmの改善が見られた。これは、保持
部として熱膨張率のほぼ等しいガラスを用いた水晶振動
子ベース部を使用したこと、接着剤を使用しないため接
着剤と水晶との熱膨張率の差に起因する熱応力が発生し
ないためである。また、長期安定性においても接着剤を
使用しない本実施例においては非常に高安定な結果を示
し、接着時の接着剤の伸縮による応力が水晶にかかる問
題、導電性接着剤の硬化に伴うガスの放出、機械的振動
に対して十分安定でないこと、さらには接着剤の劣化の
問題が発生しなかったことがわかる。さらに、水晶振動
子全体の寸法も、従来の水晶振動子においては保持部お
よび匡体を含めて長辺6ミリ、短辺4ミリの大きさであ
るのに対し本実施例における水晶振動子においては長辺
4.5ミリ、短辺2.5ミリと同じ大きさの振動用水晶板
を用いたにもかかわらず小型の水晶振動子になってい
る。これは従来接着剤を塗付するために必要であったス
ペースが直接接着を用いることにより、小さなスペース
で済むようになったこと、また、従来は熱膨張率の差に
よる熱応力の発生に伴う発振周波数の変化を軽減するた
めに接着部分と振動部分の間に間隙が必要であったが、
本実施例の水晶振動子においては熱膨張率のほぼ等しい
もの同士の直接接合であるため熱応力がほとんど発生せ
ず、この間隙が必要でなくなったためである。また今回
は長辺3ミリ、短辺1ミリの水晶板を用いたが、より小
型の水晶振動子においても本実施例の構造を用いると従
来の保持方法を用いた水晶振動子よりも高安定な水晶振
動子ができることは明らかである。さらに、接着剤を用
いないために、従来の振動子に存在した、接着剤の耐熱
温度の問題は全く発生しないため、半田リフローも可能
となっているまた、本実施例に用いたガラスはその成分
に関係なく、熱膨張率が水晶の熱膨張率に近ければ上記
実施例の効果が得られることは本実施例の効果より明ら
かである。
【0018】(実施例3)図3に、本発明の構造の水晶
振動子の製造方法の実施例を示す。図3において、1は
振動用水晶板、2は保持用ガラス板、3は励振用電極、
4は引き出し電極、9は振動用水晶素板、10は振動用
水晶板1の下面に蒸着された励振用電極、11は保持用
ガラス素板、12は振動用水晶板1の下面に蒸着された
励振用電極および同時に蒸着される引き出し電極であ
る。また、図3(a)に本実施例により製造される水晶
振動子の構造を、図3(b)から(g)にその製造工程
を示す。
【0019】本実施例では、前記水晶素板9、ガラス素
板11には厚さ350μm、大きさ3インチのATカッ
ト水晶板を用いた。
【0020】前記振動用水晶素板9は、振動用水晶板1
の形状を多数残して深さ80μmまでエッチングによっ
て削り、振動用水晶素板9に一方の励振用電極10を真
空蒸着によって形成する。本実施例の場合、クロムを厚
さ0.1ミクロン、金を厚さ2ミクロンに真空蒸着して
形成した。その様子を図3(b)に示す。また、保持用
ガラス素板11の状態を図3(c)に示す。前記ガラス
素板11と前記水晶素板9の接触部分を鏡面に研磨し、
アンモニア水と過酸化水素水と水の混合液を60℃に加
熱した溶液を用いて表面を親水化処理し、水洗いした。
その後注意深く洗浄して前記振動用水晶板1と前記保持
用ガラス板2とが接触する部分にはゴミが存在しないよ
うにした。次に、前記水晶素板9と前記ガラス素板11
とを、表面を清浄に保ったまま接触させた。この状態を
図3(d)に示す。このままでもかなりの接着強度があ
るが、後に行なう研磨ができるまでの強度以上にするた
めに、加熱処理を施した。なお、水晶の結晶転移温度が
870℃、ガラスの軟化点が580℃であるために、前
記加熱処理温度はこの温度以上に加熱することはできな
い。このため本実施例では、前記加熱処理温度を500
℃とした。
【0021】直接接合は、親水処理によって、それぞれ
の基板表面に付着した水酸基や水素などの分子間力によ
って基板同士が吸着し、その後の熱処理によって、接合
界面から次第に水酸基などが抜けていき、それに伴い、
水晶及びガラスの構成元素である珪素と酸素の結合が強
まった結合と考えられる。したがって接合強度は熱処理
温度が高いほど強くなる。実際には100℃の熱処理で
も有効であった。高温側は、水晶の結晶転移温度または
ガラスの軟化温度が限界であった。本実施例では、軟化
温度580℃のフリント系ガラスを用いたので、500
℃で熱処理を実施したが、軟化温度のさらに高いガラス
を用いればもっと高温で熱処理することもできる。
【0022】前記振動用水晶板1を一つ一つ分離するた
めに、前記ガラス素板11に直接接合された前記水晶素
板9を、前記ガラス素板11を保持して研磨した。この
状態を図3(e)に示す。
【0023】前記振動用水晶板1が接合されている側か
ら、前記水晶素板9の前記振動用水晶板1のほぼ中央付
近に前記励振用電極12を真空蒸着によって形成する。
この状態を図3(f)に示す。
【0024】最後に、前記ガラス素板11を一つ一つ切
り離し、水晶振動子を得た。この状態を図3(g)に示
す。
【0025】前記振動用水晶板1には熱による応力がほ
とんど加わらず、温度変化に起因する応力による周波数
の変化を非常に小さく抑えることができ、周波数安定性
が向上する。また、固定には接着剤を必要としないの
で、熱や振動に対する安定性、信頼性が向上する。更に
前記振動用水晶板1、前記水晶保持部2は、フォトリソ
グラフィーやエッチングなどの半導体加工技術を応用す
ることによってその寸法を非常に精密に加工しているた
めに、非常に小型で精度がよく、高性能な水晶振動子が
得られる。
【0026】(実施例4)図4に本発明の水晶振動子の
第3の実施例を示す。図4において、1は振動用水晶
板、2は保持用ガラス板、3は励振用電極、4は励振用
電極の引出し部、13は水晶振動子の匡体もしくは基
板、14は励振用電極を励振するための外部電極であ
る。また、振動用水晶板1と保持用ガラス板2は直接接
合により接合されている。また、保持用ガラス板2は熱
膨張率が水晶とほぼ等しいガラスからなり、その形状は
細長い棒状で基板5からの応力が振動用水晶板1に伝わ
りにくい構造になっている。基板5の材質にはセラミッ
ク基板等が用いられる。しかしながら、水晶とセラミッ
ク基板とでは熱膨張率が異なるため、温度が変化する
と、基板5と保持用ガラス板2との接合部分で、熱応力
が発生する。この熱応力が振動用水晶板1に加わると、
発振周波数が変化し安定した発振ができない。当実施例
においては振動用水晶板1を保持用ガラス板2を用いて
保持しているため、振動用水晶板1と保持用ガラス板2
の間には熱応力はほとんど発生しない。また、保持用ガ
ラス板2と基板5の間には熱応力が発生するものの、保
持用ガラス板2が細長い棒状になっているために振動用
水晶板1にはこの応力は加わらない、このため振動用水
晶板1は熱応力の影響を受けずに安定に発振することが
可能となる。さらに、前述のセラミック基板等に較べ、
ガラスはエッチング加工が容易に利用でき、保持部をよ
り複雑な形状に加工し、より応力の伝わりにくい形状に
することが可能となっている。また、振動用水晶板1と
保持用ガラス板2は直接接合により接合されているた
め、機械的強固性や長期安定性についても優れたもので
あり、さらに、小型かつ安易な加工が可能となってい
る。
【0027】水晶振動子の温度特性は理想的には水晶板
のカット角度で決定する。例えば、ATカット水晶振動子
の場合には−20℃から+70℃の温度範囲で±5pp
m程度である。しかし実際の水晶振動子では保持部の影
響があるため、温度特性は理論状態のものよりも悪化す
る。本実施例においては、基板5としてセラミック基板
を用い、長辺3ミリ、短辺1ミリの水晶板に励振用電極
を蒸着したものを振動用水晶板として用いた。この振動
用水晶板を用いて従来の構造の水晶振動子を作成した場
合と、本実施例の構造を用い直接接着技術を使用して作
成した水晶振動子の場合とで水晶振動子の安定性を測定
したところ、本実施例の構造の水晶振動子では温度特性
で10ppmの改善が見られた。これは、保持部に熱膨
張率のほぼ等しいガラスを用いたこと、接着剤を使用し
ないため接着剤と水晶との熱膨張率の差に起因する熱応
力が発生しないためである。また、長期安定性において
も接着剤を使用しない本実施例においては非常に高安定
な結果を示し、接着時の接着剤の伸縮による応力が水晶
にかかる問題、導電性接着剤の硬化に伴うガスの放出、
機械的振動に対して十分安定でないこと、さらには接着
剤の劣化の問題が発生しなかったことがわかる。また今
回は長辺3ミリ、短辺1ミリの水晶板を用いたが、より
小型の水晶振動子においても本実施例の構造を用いると
従来の保持方法を用いた水晶振動子よりも高安定な水晶
振動子ができることは明らかである。さらに、接着剤を
用いないために、従来の振動子に存在した、接着剤の耐
熱温度の問題は全く発生しないため、半田リフローも可
能となっているまた、本実施例において保持用ガラス板
2は細長い棒状としたが、保持用ガラス板2と基板5と
の間に発生する熱応力が振動用水晶板1に伝わりにくい
構造の水晶板であれば同様の効果が得られることは明ら
かである。また、基板5としてセラミック基板を用いた
が、セラミック基板に限らず、他のどのような基板であ
っても本実施例における効果が損なわれないことは明ら
かである。
【0028】また、本実施例に用いたガラスはその成分
に関係なく、熱膨張率が水晶の熱膨張率に近ければ上記
実施例の効果が得られることは本実施例の効果より明ら
かである。
【0029】(実施例5)図5に本発明の実施例4にお
ける水晶振動子を示す断面図である。図5において、1
は振動用水晶板、2は保持用ガラス板、3は励振用電
極、4は励振用電極引き出し部分、15は水晶振動子匡
体のベース部分、16は水晶振動子匡体のカバー部分、
17は匡体のカバーとベースを接合する低融点ガラスで
ある。振動用水晶板1と保持用ガラス板2は直接接合さ
れている。また、振動用水晶板1の両面に蒸着された励
振用電極3は引出し部4を通じ、低融点ガラス7の部分
を通して、水晶振動子の外部に引き出されている。本実
施例では振動用水晶板1と保持用ガラス板2が直接接合
技術を用いて作成されているため、安価に小型の振動用
水晶板を作成することができる。そのため、水晶板を密
閉する匡体についても非常に小型の匡体を用いることが
可能であり、水晶振動子全体の大きさは従来の数ミリ角
に対し、2ミリ以下の非常に小型の水晶振動子を作成す
ることができる。さらに、振動用水晶板1とそれを保持
する保持用ガラス板2とが熱膨張率のほぼ等しい材料か
らなり立っているため、この2つの間に熱応力はほとん
ど発生しない、そのため非常に高安定な水晶振動子を作
成することが可能となる。
【0030】図6に、従来のセラミック基板に直接水晶
を接着した水晶振動子の断面図を示す。1は振動用水晶
板、3は励振用電極、4は引き出し電極、15は水晶振
動子匡体ベース部、16は水晶振動子匡体カバー部、1
7は匡体のカバーとベースを接合する低融点ガラス、1
8は振動用水晶板1と匡体ベース部とを接合する導電性
接着剤である。振動用水晶板1の両面に蒸着された励振
用電極3は引出し部4と導電性接着剤18を通じ、低融
点ガラス7の部分を通して、水晶振動子の外部に引き出
されている。
【0031】水晶振動子の温度特性は理想的には水晶板
のカット角度で決定する。例えば、ATカット水晶振動子
の場合には−20℃から+70℃の温度範囲で±5pp
m程度である。しかし実際の水晶振動子では保持部の影
響があるため、温度特性は理論状態のものよりも悪化す
る。本実施例においては、長辺3ミリ、短辺1ミリの水
晶板に励振用電極を蒸着したものを振動用水晶板として
用いた。この振動用水晶板を用いて従来の構造の水晶振
動子を作成した場合と、本実施例の構造を用い直接接着
技術を使用して作成した水晶振動子の場合とで水晶振動
子の安定性を測定したところ、本実施例の構造の水晶振
動子では温度特性で10ppmの改善が見られた。これ
は、保持部に熱膨張率のほぼ等しいガラスを用いたこ
と、接着剤を使用しないため接着剤と水晶との熱膨張率
の差に起因する熱応力が発生しないためである。また、
長期安定性においても接着剤を使用しない本実施例にお
いては非常に高安定な結果を示し、接着時の接着剤の伸
縮による応力が水晶にかかる問題、導電性接着剤の硬化
に伴うガスの放出、機械的振動に対して十分安定でない
こと、さらには接着剤の劣化の問題が発生しなかったこ
とがわかる。また今回は長辺3ミリ、短辺1ミリの水晶
板を用いたが、より小型の水晶振動子においても本実施
例の構造を用いると従来の保持方法を用いた水晶振動子
よりも高安定な水晶振動子ができることは明らかであ
る。さらに、接着剤を用いないために、従来の振動子に
存在した、接着剤の耐熱温度の問題は全く発生しないた
め、半田リフローも可能となっているさらに、本実施例
においては長辺3ミリ、短辺1ミリの水晶板を用いた
が、直接接着技術を用いることによりより小型の水晶振
動子の作成が可能であり、従来の水晶振動子の構造より
もより小型化に適した構造であることは明らかである。
【0032】また、本実施例においては電極材料として
金とクロムの2層構造としたが、どちらか片方の単層構
造でも同様の効果があることは明らかである。さらに
は、金やクロム以外の材質であっても、それらの多層構
造の電極であっても全く同じ効果があることは本実施例
の効果より明らかである。
【0033】また、本実施例に用いたガラスはその成分
に関係なく、熱膨張率が水晶の熱膨張率に近ければ上記
実施例の効果が得られることは本実施例の効果より明ら
かである。
【0034】最後に、上記の実施例における各効果は振
動用水晶板と保持用ガラス板の間に無機、有機の接着剤
が関与しないこと、つまり直接接合により接合されてい
ることに起因するものであり、水晶板の大きさおよびカ
ット角、どのような大きさ、またどのような振動の水晶
振動子であろうとも、さらには電極構造にも全く関係な
く上記の効果があることは明らかである。
【0035】
【発明の効果】以上の実施例から明らかなように本発明
は、水晶板と保持部の熱膨張率の差に起因する熱応力が
発振周波数を不安定にすることのない、水晶板と保持部
を接着するための導電性接着剤に起因する、接着時の接
着剤の伸縮による応力が水晶にかかる問題、接着剤と水
晶との熱膨張率の差により熱応力が発生する問題、また
十分な接着強度が十分でなく大きな接着面積が必要であ
ること、導電性接着剤の耐熱性に問題があるために半田
付けにおいて低温での処理しかできないこと、導電性接
着剤の硬化に伴うガスの放出、機械的振動に対して十分
安定でないこと、さらには接着剤の劣化の問題、温度お
よび機械的振動に対して特性が不安定になるなどの問題
が存在しない、その上より小型化に適した高安定な水晶
振動子の製造が可能となるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例における水晶振動子の斜
視図
【図2】(a)は本発明の第2の実施例における水晶振
動子の断面図 (b)は同水晶振動子の匡体内部を示す図 (c)は同水晶振動子の斜視図
【図3】(a)は本発明の第3の実施例における水晶振
動子の斜視図 (b)は同水晶振動子の製造方法を示す図 (c)は同水晶振動子の製造方法を示す図 (d)は同水晶振動子の製造方法を示す図 (e)は同水晶振動子の製造方法を示す図 (f)は同水晶振動子の製造方法を示す図 (g)は同水晶振動子の製造方法を示す図
【図4】本発明の第4の実施例における水晶振動子の斜
視図
【図5】本発明の第5の実施例における水晶振動子の断
面図
【図6】従来の水晶振動子を示す断面図
【図7】従来の水晶振動子の斜視図
【図8】従来の水晶振動子の製造工程図
【図9】従来の水晶振動子の斜視図
【符号の説明】
1 振動用水晶板 2 保持用ガラス板 3 励振用電極 4 電極取り出し部 5 水晶振動子ベース部 6 水晶振動子蓋部 7 外部電極 8 低融点ガラス 9 振動用水晶素板 10 励振用電極 11 保持用ガラス素板 12 励振用電極および引き出し電極 13 水晶振動子匡体もしくは基板 14 外部電極 15 水晶振動子匡体ベース部 16 水晶振動子匡体カバー部 17 低融点ガラス 18 ATカット水晶板 19 保持部 20 導電性接着剤 21 振動用水晶片 22 励磁電極 23 保持用水晶片 24 基台 25 導電性接着剤 26 接着剤
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 江田 和生 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】振動用水晶板が直接接合された熱膨張率が
    水晶とほぼ同じガラス板により保持されたことを特徴と
    する水晶振動子。
  2. 【請求項2】振動用水晶板が直接接合された熱膨張率が
    水晶とほぼ同じガラス板により保持され、かつ前記保持
    用ガラス板により実質的に機密封止されたことを特徴と
    する水晶振動子。
  3. 【請求項3】振動用水晶板と保持用ガラス板の表面を親
    水処理をし、接触させ、熱処理後においても水晶が圧電
    性を示す温度もしくは前記保持用ガラス板の軟化温度い
    ずれか低い方の温度以下で熱処理することにより、前記
    振動用水晶板と前記保持用ガラス板を直接接合させたこ
    とを特徴とする水晶振動子の製造方法。
  4. 【請求項4】振動用水晶板が直接接合されたガラス板に
    より保持され、該振動部に基板からの応力の加わりにく
    い形で前記保持用ガラス板が基板に固定されたことを特
    徴とする水晶振動子。
  5. 【請求項5】振動用水晶板が直接接合されたガラス板に
    より保持され、該振動部に基板からの応力の加わりにく
    い形で前記保持用ガラス板が基板に固定され、該基板に
    より密閉されたことを特徴とする水晶振動子。
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