JPH0637696B2 - 高力、耐熱性アルミニウム基合金材の製造方法 - Google Patents

高力、耐熱性アルミニウム基合金材の製造方法

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JPH0637696B2
JPH0637696B2 JP5083421A JP8342193A JPH0637696B2 JP H0637696 B2 JPH0637696 B2 JP H0637696B2 JP 5083421 A JP5083421 A JP 5083421A JP 8342193 A JP8342193 A JP 8342193A JP H0637696 B2 JPH0637696 B2 JP H0637696B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、硬度および強度が高
く、高耐摩耗性を有し、かつ、高耐熱性に優れたアルミ
ニウム基合金材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のアルミニウム基合金には、Al−
Cu系、Al−Si系、Al−Mg系、Al−Cu−S
i系、Al−Zn−Mg系等の成分系の合金が知られて
おり、その材料特性に応じて、例えば、航空機、車輌、
船舶等の部材として、また、建築用外装材、サッシ、屋
根材等として、あるいは海水機器用部材、原子炉用部材
等として、広範囲の用途に供されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来のアルミニウム基
合金は一般に硬度が低く、また耐熱性も低い。また、近
時はアルミニウム基合金を急冷凝固させることにより、
組織を微細化して強度等の機械的性質や耐食性等の化学
的性質を改善する試みもなされている。
【0004】例えば特開昭62−37335号公報に
は、Ni,CuおよびMnの群から選ばれるいずれか1
種又は2種以上の元素と、Si,Ti,ZrおよびNb
からなる群から選ばれるいずれか1種又は2種以上の合
計が0.2原子%以上15原子%以下含み、残部は実質
的にAlからなり、超急冷凝固によって作製される高耐
食高強度アルミニウム合金について開示されている。こ
のものは超急冷凝固によりα−Al相中に過飽和に合金
元素を固溶させることにより耐食性と強度とを向上させ
ることに関する。又、特開昭60−248860号公報
には、一般式AlbalFeab(X=Zn,Co,N
i,Cr,Mo,V,Zr,Ti,Y,Si,Ceのう
ちの少なくとも1つ、a:7〜15wt%、b=1.5
〜10wt%)で表わされ、106℃/sec以上の冷
却速度で(超急冷凝固)で作製される高力Al合金につ
いて開示されている。このものは超急冷凝固により少な
くとも70%がミクロ共晶であるミクロ組織をもつ合金
とすることにより、強度、展延性を改善することに関す
る。しかしながら、現在までに知られている急冷凝固ア
ルミニウム基合金においても強度や耐熱性などの特性が
充分ではない。
【0005】本発明は上記に鑑み、高硬度、高強度およ
び耐摩耗性を有し、高力、耐熱性に優れた新規なアルミ
ニウム基合金材の製造方法を提供するものである。
【0006】
〔ただし、M:Cu,Ni,Co,Feから選ばれる一種もしくは二種以上の金属元素、 Q:Mn,Cr,Mo,W,V,Ti,Zrから選ばれる一種もしくは二種以上の金属元素、 X:Nb,Ta,Hf,Yから選ばれる一種もしくは二種以上の金属元素であり、 a,b,c,dおよびeは原子パーセントで、 45≦a≦90 5≦b≦40 0<c≦12 0.5≦d≦15 0.5≦e≦10〕
で示される組成を有し、少なくとも体積率で50%の非
晶質を含むアルミニウム基合金を結晶化温度±100℃
の温度範囲で押出し加工、プレス加工又は熱間鍛造する
ことを特徴とする高力、耐熱性アルミニウム基合金材の
製造方法である。
【0007】本発明に用いるアルミニウム基合金は、上
記組成を有する合金の溶湯を液体急冷法で急冷凝固する
ことにより得ることができる。この液体急冷法とは、溶
融した合金を急速に冷却させる方法をいい、例えば単ロ
ール法、双ロール法、回転液中紡糸法などが特に有効で
あり、これらの方法では104〜106K/sec程度の
冷却速度が得られる。この単ロール法、双ロール法等に
より薄帯材料を製造するには、ノズル孔を通して約30
0〜10000rpmの範囲の一定速度で回転している
直径30〜3000mmの例えば銅あるいは鋼製のロ−
ルに溶湯を噴出する。これにより幅が約1〜300mm
で厚さが約5〜500μmの各種薄帯材料を容易に得る
ことができる。また、回転液中紡糸法により細線材料を
製造するには、ノズル孔を通し、アルゴンガス背圧に
て、約50〜500rpmで回転するドラム内に遠心力
により深さ約1〜10cmの溶液冷媒層中に溶湯を噴出
して、細線材料を容易に得ることができる。この際のノ
ズルからの噴出溶湯と冷媒面とのなす角度は、約60〜
90度、噴出溶湯と溶液冷媒面の相対速度比は約0.7
〜0.9であることが好ましい。
【0008】なお上記方法によらずスパッタリング法に
よって薄膜を、また高圧ガス噴霧法などの各種アトマイ
ズ法やスプレー法により急冷粉末を得ることができる。
得られた急冷アルミニウム基合金が非晶質であるかどう
かは通常のX線回折法によって非晶質組織特有のハロー
パターンが存在するか否かによって知ることができる。
更に、この非晶質組織は加熱すると特定の温度以上で結
晶に分解する。(この温度を結晶化温度と呼ぶ) 上記一般式(I)で示される本発明のアルミウム基合金
において、aを45〜90%の範囲に、またbを5〜4
0%の範囲にそれぞれ限定したのは、その範囲から外れ
ると非晶質化しにくくなり、前記液体急冷等を利用した
工業的な急冷手段では、少なくとも50%(体積率)の
非晶質を有する合金を得ることができなくなるからであ
る。また、dを0.5〜15%の範囲に限定したのは、
X元素であるNb,Ta,Hf,Yの一種または二種以
上を添加することにより、高硬度と耐熱性を著しく向上
させる効果があるためであり、15%を越えると少なく
とも50%(体積率)の非晶質を有する合金を得ること
ができなくなるからである。
【0009】また、上記一般式(II)で示される本発明
のアルミニウム基合金において、aを45〜90%の範
囲に、bを5〜40%の範囲にそれぞれ限定したのは、
その範囲から外れると非晶質化しにくくなり、前記液体
急冷等を利用した工業的な急冷手段では、少なくとも5
0%(体積率)の非晶質を有する合金を得ることができ
なくなるからである。また、cを12%以下の範囲およ
びeを0.5〜10%の範囲に限定したのは、Q元素で
あるMn,Cr,Mo,W,V,Ti,Zrから選ばれ
る一種または二種以上の金属元素と、X元素であるN
b,Ta,Hf,Yの一種または二種以上の金属元素を
組合せることにより合金の高硬度と耐熱性が著しく向上
するためであり、cを12%以下およびeを10%以下
に限定する理由は、それを越えると少なくとも50%
(体積率)の非晶質を有する合金を得ることができなく
なるからである。
【0010】以上に記述したように、本発明に用いるア
ルミニウム基合金は、Al中にM元素(Cu,Ni,C
o,Fe)とX元素(Nb,Ta,Hf,Y)とを添加
した組成のものと、Al中にM元素とX元素にさらにQ
元素(Mn,Cr,Mo,W,V,Ti,Zr)を添加
した組成のものの2つの系列の合金であり、この中でM
元素は非晶質形成能を向上させる効果を持ち、Qおよび
X元素は非晶質形成能を損なわずに硬度と強度を著しく
向上させると共に、結晶化温度を著しく上昇させて耐熱
性を付与する効果を有する。
【0011】かかる本発明におけるアルミニウム基合金
は、結晶化温度近傍(結晶化温度±100℃)におい
て、超塑性現象を示すので、容易に押出し加工やプレス
加工、熱間鍛造等の加工を行うことができる。したがっ
て、薄帯、線、板状あるいは粉末の形態で得られた上記
アルミニウム基合金を結晶化温度±100℃の温度範囲
内で押出し加工、プレス加工、熱間鍛造に付することに
よりバルク材を製造することができる。さらに、本発明
におけるアルミニウム基合金は高度の粘さを有し、18
0°密着曲げ可能なものもある。
【0012】
【実施例】次に実施例によって本発明合金の特徴を説明
する。まず、本発明に用いるアルミニウム基合金につい
て述べる。高周波溶解により所定の成分組成を有する溶
融合金3をつくり、これを図1に示す先端に小孔5(孔
径:0.5mm)を有する石英管1に装入し、加熱溶解
した後、その石英管1を銅製の直径20cmのロール2
の直上に設置し、回転数5000rpmの高速回転下、
石英管1内の溶融合金3をアルゴンガスの加圧下(0.
7kg/cm2)により石英管1の小孔5から噴射し、
ロ−ル2の表面と接触させることにより急冷凝固させて
合金薄帯4を得る。
【0013】上記製造条件により表1に示す組成(原子
%)を有する49種の合金薄帯(幅:1mm、厚さ:2
0μm)を得て、それぞれX線回折に付した結果、いず
れも非晶質金属に特有のハローパターンが確認された。
また、各供試薄帯につき、硬度(Hv)、電気抵抗値
(ρ)および結晶化温度(Tx)を測定し、表1右欄に
示す結果を得た。硬度(Hv)は、25g荷重の微小ビ
ッカ−ス硬度計による測定値(DPN)であり、電気抵
抗(ρ)は、直流四端子法による測定値(μΩ・cm)
である。また、結晶化温度(Tx)は、40K/min
で加熱した走査示差熱曲線における最初の発熱ピーク開
始温度(K)である。なお、組織におけるaは非晶質、
cは結晶を表わし、数値は体積率(%)を示す。
【0014】
【表1】
【0015】
【表2】
【0016】
【表3】
【0017】表1に示すように、本発明におけるアルミ
基合金の硬さは通常のアルミニウム基合金がHv:50
−100DPN程度であるのに対し、約450−105
0DPNと極めて高い硬度を有している。また電気抵抗
でも、通常のアルミニウム基合金では、100〜300
μΩ・cm程度であるのに対し、本発明の非晶質合金
は、約400μΩ・cm以上の高い電気抵抗を示した。
特に注目すべきは結晶化温度Txが600K以上と高く
耐熱性を示すことである。
【0018】更に、表1のNo.12合金の強度をインス
トロン引張試験機で測定した結果、引張強度は約95k
g/mm2、降伏強度は約80kg/mm2であった。こ
の値は従来の時効硬化型アルミニウム基合金(Al−S
i−Fe)の最高引張強度約45kg/mm2、最高降
伏強度約40kg/mm2の約2.1倍であった。
【0019】実施例1 Al70Fe20Hf10およびAl70Ni20Hf10の母合金
を真空高周波炉にて溶解後高圧ガスアトマイズ法により
非晶質粉末を作成した。この粉末を温度:100〜55
0℃、加圧力:940MPaで30分焼結し、それぞれ
直径5mm、高さ5mmの円柱材を得た。各円柱材をそ
れらの合金の結晶化温度に近い400℃で30分間ホッ
トプレスして得られた焼結体は約95%の充填率であ
り、高さは約850DPN、電気抵抗値は約500μΩ
・cmであった。また、耐摩耗性は従来のアルミニウム
基合金と比べて約100倍であった。
【0020】
【発明の効果】本発明におけるアルミニウム基合金は、
少なくとも体積率で50%の非晶質を含む合金であるの
で、硬度、強度、耐熱性などの機械的特性、電気抵抗な
どの電気的特性、耐食性などの化学的特性に優れてお
り、高硬度材料、高強度材料、高電気抵抗材料、耐摩耗
材料、ろう付け材料として有用である。さらに、結晶化
温度近傍で超塑性現象を示し、押出し加工やプレス加工
等の加工ができ、高硬度および高引張強度を持つため高
力、高耐熱性材料として種々の用途に供することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明合金を急冷凝固して薄帯を作る時に使用
した単ロ−ル装置の説明図である。
【符号の説明】
1 石英管 2 銅ロ−ル 3 溶融合金 4 急冷薄帯 5 小孔
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大寺 克昌 富山県黒部市犬山203−7 (72)発明者 小口 昌弘 長野県岡谷市本町1丁目9番3号 (56)参考文献 特開 昭62−37335(JP,A) 特開 昭60−248860(JP,A)

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式:Alabd 〔ただし、M:Cu,Ni,Co,Feから選ばれる一
    種もしくは二種以上の金属元素、 X:Nb,Ta,Hf,Yから選ばれる一種もしくは二
    種以上の金属元素であり、 a,bおよびdは原子パーセントで、 45≦a≦90 5≦b≦40 0.5≦d≦15〕 で示される組成を有し、少なくとも体積率で50%の非
    晶質を含むアルミニウム基合金を結晶化温度±100℃
    の温度範囲で押出し加工、プレス加工または熱間鍛造す
    ることを特徴とする高力、耐熱性アルミニウム基合金材
    の製造方法。
  2. 【請求項2】 一般式:Alabce 〔ただし、M:Cu,Ni,Co,Feから選ばれる一
    種もしくは二種以上の金属元素、 Q:Mn,Cr,Mo,W,V,Ti,Zrから選ばれ
    る一種もしくは二種以上の金属元素、 X:Nb,Ta,Hf,Yから選ばれる一種もしくは二
    種以上の金属元素であり、 a,b,cおよびeは原子パ―セントで、 45≦a≦90 5≦b≦40 0<c≦12 0.5≦e≦10〕 で示される組成を有し、少なくとも体積率で50%の非
    晶質を含むアルミニウム基合金を結晶化温度±100℃
    の温度範囲で押出し加工、プレス加工または熱間鍛造す
    ることを特徴とする高力、耐熱性アルミニウム基合金材
    の製造方法。
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