JPH0630201B2 - 導電性複合シ−ト - Google Patents

導電性複合シ−ト

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JPH0630201B2
JPH0630201B2 JP60035800A JP3580085A JPH0630201B2 JP H0630201 B2 JPH0630201 B2 JP H0630201B2 JP 60035800 A JP60035800 A JP 60035800A JP 3580085 A JP3580085 A JP 3580085A JP H0630201 B2 JPH0630201 B2 JP H0630201B2
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porous film
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貞光 佐々木
武 佐々木
正男 阿部
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は新規な導電性複合シートに関する。
(従来の技術) 導電性の不定形炭素や黒鉛、金属粉末等をゴムや樹脂と
混合し、これを押出、圧縮、圧延等の成形方法により、
また、ゴムや樹脂シートの表面に導電性金属を真空蒸着
或いはスパツタ蒸着して、導電性を有するシートを得る
ことは従来より知られている。
しかし、このようにして得られる導電性シートは、前者
の場合は、ゴムや樹脂と導電性物質との混合物をシート
に成形し得るためには、含有される導電性物質の量に自
ずから限界があるため、十分な導電性を得ることは一般
に困難である。また、一方において、従来より樹脂を水
混和性の有機溶剤に溶解した樹脂溶液を適宜の基材上に
流延塗布した後、水中に浸漬する所謂湿式法による多孔
質膜の製造方法が知られているが、樹脂溶液に上記のよ
うに導電性物質を含有させる場合も、製膜し得るために
はその含有量に限界があり、高導電性の多孔質膜を得る
ことは困難である。後者の場合は、表面に導電性を与え
ることはできても、シートは厚さ方向には通常、絶縁性
であり、しかも、可撓性の導電性シートを得ようとすれ
ば、シートの可撓性を保持するために導電性金属の蒸着
厚みが限定されるので、導電性もまたある範囲内に限定
される。
アニリンの酸化重合体のあるものについては、例えば、
アニリンブラツクに関連して古くより知られている。特
に、アニリンブラツク生成の中間体として、式(I)で
表わされるアニリンの8量体がエメラルデイン(emerald
ine)として確認されており、(A.G.Green et al.,J.Che
m.Soc.,97,2388(1910);101,1117(1912))、これは80%
酢酸、冷ピリジン及びN,N−ジメチルホルムアミドに可
溶性である。また、このエメラルデインはアンモニア性
媒体中で酸化されて、式(II)で表わされるニグラニリ
ン(nigraniline)を生成し、これもエメラルデインと類
似した溶解特性を有することが知られている。
更に、近年になつて、R.Buvetらによつてこのエメラル
デインの硫酸塩が高い導電性を有することが見い出され
ている(J.Polymer Sci.,C,16,2931;2943(1967);22,1187
(1969))。
また、既にアニリンの電解酸化重合によつてエメラルデ
イン類似の有機物質を得ることができることも知られて
いる(D.M.Mohilner et al.,J.Amer.Chem.Soc.,84,3618
(1962))。即ち、これによれば、アニリンの硫酸水溶液
を白金電極を用い、水の電気分解を避けるために、標準
カロメル電極に対して+0.8Vの酸化電位にて電解酸化
重合し、80%酢酸、ピリジン及びN,N−ジメチルホル
ムアミドに可溶性である物質が得られる。
そのほか、Diazら(J.Electroanal.Chem.,111,111(1980)
や、小山ら(高分子学会予稿集,30,(7),1524(1981);J.
Electroanal.Chem.,161,399(1984))もアニリンの電解酸
化重合を試みているが、いずれも高分子被覆化学修飾電
極を目的としたものであつて、電解は1V以下の電位で
行なつている。
尚、従来より既に種々の導電性有機重合体が知られてい
るが、一般的な傾向として安定性に劣る。例えば、ポリ
アセチレンは理論的には興味深い導 電性有機重合体であるが、反面、極めて酸化を受けやす
く、空気中で容易に酸化劣化して性質が大幅に変化す
る。ドーピングされた状態では一層酸化に対して敏感で
あり、空気中の僅かな湿気によつても電導度が急激に減
少する。この傾向はn型半導体に特に著しい。
本発明者らは、安定で高導電性を有する有機材料、特
に、導電性有機重合体を得るために、アニリン及びその
誘導体の酸化重合に関する研究を鋭意重ねた結果、アニ
リン及びその誘導体の酸化重合の反応条件を選択するこ
とにより、上記エメラルデインよりも遥かに高分子量を
有し、且つ、既にその酸化重合段階でドーピングされて
いるために、新たなドーピング操作を要せずして安定で
且つ高導電性を有するアニリン及びその誘導体の重合体
を得ることができることを見出した(特願昭58−21
2280号及び特願昭58−212282号)。更に、
本発明者らは、上記のような導電性重合体を多孔質膜に
直接に析出させることによつて、高導電性の多孔質膜を
得ることができることも見出している(特願昭59−2
31848号)。
(発明の目的) 本発明者らはこのような知見に基づき、導電性シートの
製造について鋭意研究した結果、この上記導電性重合体
がキノンジイミン構造を主たる繰返し単位として有する
実質的に線状の高分子量重合体であり、支持体に直接に
化学酸化剤によるアニリン若しくはアニリン誘導体の上
記導電性重合体を析出させる方法、支持体を陽極として
アニリン若しくはアニリン誘導体の電解酸化重合体を支
持体に析出させる方法、又は、これらの方法を組み合わ
せることによつて、導電性を有する支持体を得ることが
でき、更に、このアニリン又はその誘導体の支持体への
析出の前又は後に、上記アニリン又はその誘導体を除い
て、化学酸化又は電解酸化によつて導電性重合体を与え
る別の重合性単量体をこの支持体に析出させ、このよう
にして、重合体構造の異なる導電性重合体を重複して支
持体に析出させることにより、一層導電性が高く、且
つ、安定であるうえに、支持体が可撓性を有する場合
は、その可撓性を保持した導電性複合シートを得ること
ができることを見出して、本発明に至つたものである。
従つて、本発明は一般的には導電性複合シートを提供す
ることを目的とし、詳細には、上記した新規な導電性有
機重合体と、これと構造の異なる別異の導電性重合体と
が支持体に重複して析出され、かくして、従来にない高
い導電性を有する新規な導電性複合シートを提供するこ
とを目的とする。
(発明の構成) 本発明による導電性複合シートは、支持体に (a) 一般式 (但し、Rは水素又はアルキル基を示す。) で表わされるキノンジイミン構造を主たる繰返し単位と
して有する実質的に線状の重合体であつて、ドーパント
としての電子受容体を含む導電性重合体、及び (b) 化学酸化又は電解酸化によつて導電性重合体を形
成する重合性単量体(アニリン及びその誘導体を除
く。)からの導電性重合体、 が析出されてなることを特徴とする。
先ず、本発明による導電性複合シートにおいて、支持体
に析出される新規な導電性重合体について説明する。こ
の導電性重合体は、後述する方法に従つてアニリン若し
くはその誘導体を化学酸化して支持体に析出させ、これ
より重合体を剥離して単離することができ、又は支持体
の非存在下にアニリン若しくはその誘導体を所定の条件
下に化学酸化重合し、又は所定の条件下に電解酸化重合
することによつて、粉末として単離することができる。
かかるアニリン若しくはその誘導体を酸化重合により得
られる導電性重合体は、乾燥した粉末状態において、通
常、緑色乃至黒緑色を呈し、一般に導電性が高いほど、
鮮やかな緑色を呈している。しかし、加圧成形した成形
物は、通常、光沢のある青色を示す。
本発明において、アニリン若しくはその誘導体の酸化に
よつて得られる導電性有機重合体(以下、第1の導電性
重合体ということがある。)は、後述する化学酸化法に
よるときは、水及び殆どの有機溶剤に不溶性であるが、
通常、濃硫酸に僅かに溶解し、又は溶解する部分を含
む。他方、後述するように、電解酸化法による導電性有
機重合体は、通常、濃硫酸にも実質的に不溶性である
が、反応条件によつては濃硫酸に極めて僅かに溶解する
部分を含む。このように、本発明における第1の導電性
重合体の濃硫酸への溶解度は、重合体を生成させるため
の反応方法及び反応条件によつても若干異なるが、より
詳細には、アニリン若しくはその誘導体を化学酸化剤で
酸化重合して得られる導電性有機重合体の濃硫酸への溶
解度は、通常、0.2〜10重量%の範囲であり、殆どの
場合、0.25〜5重量%の範囲である。但し、この溶解度
は、特に高分子量の重合体の場合には、重合体が上記範
囲の溶解度を有する部分を含むとして理解されるべきで
ある。前記したように、エメラルデインが80%酢酸、
冷ピリジン及びN,N−ジメチルホルムアミドに可溶性で
あるのと著しい対照をなす。
また、化学酸化法により得られる導電性重合体は、97
%濃硫酸の0.5g/dl溶液が30℃において0.1〜1.0の範
囲の対数粘度を有し、殆どの場合、0.2〜0.6である。こ
の場合においても、特に高分子量の重合体の場合には、
濃硫酸に可溶性の部分が上記範囲の対数粘度を有すると
して理解されるべきである。これに対して、同じ条件下
でのエメラルデイン及びアニリンブラツクの対数粘度は
それぞれ0.02及び0.005であり、化学酸化法による重合
体が高分子量重合体であることが示される。更に、示差
熱分析結果も、化学酸化法による重合体が高分子量重合
体であることを示している。
前記したような化学酸化法と電解酸化法によるそれぞれ
の導電性重合体の濃硫酸への溶解性の相違は、後述する
ように、これら重合体は、赤外線吸収スペクトル及び元
素分析等の比較から実質的に同一であるから、主として
分子量の相違に基づくものとみられる。即ち、電解酸化
法による重合体も、示差熱分析の結果から高分子重合体
であることが示されるが、化学酸化法による重合体に比
べてより高分子量であるとみられる。
第1の導電性重合体の代表例として、アニリンの化学酸
化法による酸化重合によつて得られた導電性重合体の赤
外線吸収スペクトルを第1図に示し、比較のためにエメ
ラルデイン及びアニリンブラツク(市販顔料としてのダ
イヤモンド・ブラツク)の赤外線吸収スペクトルをそれ
ぞれ第2図及び第3図に示す。
前記したように、化学酸化法と電解酸化法による導電性
重合体は、赤外線吸収スペクトルが一致し、また、元素
分析の結果も、両者が同じ化学構造を有することを示
す。従つて、以下の化学酸化法による導電性重合体に関
する議論は、電解酸化法による重合体についても成立つ
ものである。
アニリンからの導電性重合体の赤外線吸収スペクトルは
エメラルデインのそれに類似するが、一方において、ア
ニリンからの導電性重合体においては、エメラルデイン
に明瞭に認められる一置換ベンゼンのC−H面外変角振
動に基づく吸収が殆どみられないのに対して、パラ置換
ベンゼンに基づく吸収が相対的に大きい。しかし、この
アニリンからの導電性重合体のスペクトルはアニリンブ
ラツクとは大幅に異なる。従つて、本発明におけるアニ
リンからの導電性重合体はパラ置換ベンゼンを多数含む
エメラルデイン類似の構造を有する。
本発明における新規な第1の導電性重合体は、アニリン
又はその誘導体の酸化重合の段階で系中に存在する電子
受容体によつてドーピングされており、この結果として
高導電性を有する。即ち、重合体から電子受容体への電
荷移動が生じて、重合体と電子受容体との間に電荷移動
錯体を形成している。かかる重合体を例えばデイスク状
に成形して、これに一対の電極を取付け、これら電極間
に温度差を与えて半導体に特有の熱起電力を生ぜしめる
とき、低温電極側がプラス、高温電極側がマイナスの起
電力を与えるので、本発明における新規な導電性重合体
はp型半導体であることが示される。
更に、本発明における第1の導電性重合体は、アンモニ
ア等にて化学補償することによつて導電性が大幅に減少
し、また、外観的にも緑色乃至黒緑色から紫色に変化
し、これを再度硫酸や塩酸等の電子受容体にてドーピン
グすることにより、色も緑色乃至黒緑色に戻ると共に、
当初の高導電性を回復する。この変化は可逆的であり、
化学補償及びドーピングを繰り返して行なつても同じ結
果が得られる。第4図にこの化学補償及び再ドーピング
による重合体の赤外線吸収スペクトルの変化を示す。ス
ペクトルAは当初の重合体、スペクトルBは化学補償し
た重合体、及びスペクトルCは再ドーピングした重合体
を示す。スペクトルCがスペクトルAとほぼ完全に一致
することが明らかであり、従つて、上記化学補償及び再
ドーピングは重合体の骨格構造の変化ではなく、重合体
と化学補償試薬或いは電子受容体との間の電子の授受で
ある。このようにして、本発明における第1の導電性重
合体が酸化重合の段階で電子受容体にてドーピングさ
れ、かくして、重合体はドーパントを含んでいることが
理解される。
本発明における第1の導電性重合体が含むドーパントと
しては、例えば、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン、塩
化第二鉄、四塩化スズ、二塩化銅等のルイス酸、塩化水
素、臭化水素、硫酸、硝酸等の無機酸やピクリン酸、p
−トルエンスルホン酸等の有機酸を挙げることができる
が、これらに限定されるものではない。
本発明における第1の導電性有機重合体の化学構造は、
上記した赤外線吸収スペクトルのほか、重合体の元素分
析によつて確認され、また、重合体をアンモニア等で化
学補償した重合体(以下、補償重合体という。)の元素
分析からも確認され、実質的に、前記繰返し単位からな
る線状高分子重合体であり、π電子共役系がドーパント
を含むことによつて高導電性を有するとみられる。
しかしながら、本発明における重合体は、上記キノンジ
イミン構造からなる繰返し単位と共に、その還元構造で
ある次の繰返し単位(IV) (但し、Rは水素又はアルキル基を示す。) を含んでいてもよい。このような還元構造を含む重合体
は、例えば、本発明における重合体を部分的に還元する
ことによつて容易に得ることができる。
上記のような還元構造を有する重合体は、電子受容体と
して有効な酸化剤により酸化すると共にドーピングする
ことにより、再び前記のようなキノンジイミン構造を有
する導電性重合体とすることもできる。この場合におい
て、酸化剤を選択することによつて、導電性重合体に含
まれるドーパントを変更することができる。このような
酸化剤として、例えば、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲ
ン、塩化第二鉄、塩化第二スズ、塩化第二銅等のルイス
酸を挙げることができる。このように、本発明の導電性
複合シートにおいては、種々のドーパントを含むことが
できる。
以上のように、本発明におけるアニリン又はその誘導体
の化学酸化重合によつて得られる第1の導電性有機重合
体は、好ましくは、実質的に前記繰返し単位からなり、
その重合段階で既にプロトン酸によつてドーピングされ
ているために、新たなドーピング処理を要せずして高導
電性を有し、しかも、長期間にわたつて空気中に放置し
ても、その導電性は何ら変化せず、従来より知られてい
るドーピングした導電性有機重合体に比較して、特異的
に高い安定性を有している。
次に、本発明による導電性複合シートの製造方法につい
て説明する。
本発明による導電性複合シートの製造方法は、第1の単
量体としてのアニリン若しくはその誘導体の化学酸化
法、電解酸化法又はこれらの組合せによつて、支持体に
その酸化重合体である第1の導電性重合体を析出させる
工程と、上記アニリン及びその誘導体を除して、化学酸
化又は電解酸化によつて導電性重合体を形成する第2の
重合性単量体の化学酸化又は電解酸化による第2の導電
性重合体を上記支持体に析出させる工程とを含み、上記
第1及び第2の単量体の支持体への析出の順序は特に限
定されない。
先ず、化学酸化剤によつてアニリン又はその誘導体を酸
化して、第1の導電性重合体を支持体に析出させる化学
酸化法について説明する。
アニリン誘導体としてはアルキルアニリンが好ましく、
例えば、o−メチルアニリン、m−メチルアニリン、o
−エチルアニリン、m−エチルアニリン等が好ましく用
いられる。しかし、アニリン及び上記アルキルアニリン
のなかでは、アニリンが特に高導電性の支持体を与える
ので、好ましく用いられる。
化学酸化法において、化学酸化剤によるアニリンの酸化
重合体を析出させるために用いる支持体は、アニリン若
しくはアルキルアニリン又はその水溶性塩の溶液を含浸
し得ると共に、これらに対して濡れ性を有することが必
要である。このため、アニリンやその水溶性塩の溶液を
用いるときは、支持体がこれらに濡れ性を有するように
溶剤を選択してもよいが、また、支持体をスパツタエツ
チング処理、紫外線や電子線の照射、コロナ放電処理、
アルカリ金属処理等の表面処理を施し、用いるアニリン
溶液に対して濡れ性を付与することもできる。
例えば、アニリンやアルキルアニリンに対して良好な濡
れ性を有する支持体の場合は、アニリンやアルキルアニ
リン又はその有機溶液を直接に含浸させてもよい。ま
た、支持体が親水性である場合には、アニリン水溶性塩
の水溶液を支持体に含浸させればよい。かかるアニリン
やその誘導体の親水性塩としては、これらのプロトン酸
塩が好適であり、具体例として、例えば、塩酸塩、硫酸
塩、過塩素酸塩、硝酸塩、臭化水素酸塩、ホウフツ化酸
塩、フツ化リン酸塩等を挙げることができる。
しかし、ポリテトラフルオロエチレンからなる支持体の
ように、アニリンやアルキルアニリンに対しても、ま
た、これらの塩水溶液に対しても良好な濡れ性を有しな
い場合は、例えば、ポリテトラフルオロエチレンに対し
て親和性を有する有機溶剤、例えば、エタノール等にア
ニリン、その誘導体又はその塩を溶解させ、これを支持
体に含浸させればよい。尚、アニリンやその誘導体、又
はその塩の溶液を支持体に含浸させた場合、溶剤が酸化
剤により酸化されるものであるときは、上記含浸後の支
持体を乾燥し、溶剤を除去するのが望ましい。
化学酸化法において用いる支持体は、上記のようにアニ
リン若しくはその誘導体又はそれらの水溶性塩の溶液に
膨潤し、又はこの溶液を含浸し得るならば、多孔質であ
つても、非多孔質であつてもよいが、特に、多孔質膜が
好ましく用いられる。従つて、以下においては、多孔質
膜によつて支持体を代表させて、本発明を説明する。
用いる多孔質膜の素材は特に制限されず、得られる導電
性複合シートの用途によつて適宜に選択されるが、例え
ばエチレン−酢酸ビニル共重合体、セルロース誘導体、
エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリテトラフル
オロエチレン及びポリフツ化ビニリデン等のフツ素樹
脂、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミ
ド、ポリアミド等を挙げることができる。
用いる酸化剤も特に制限されるものではないが、酸化ク
ロム(IV)や、重クロム酸カリウム、重クロム酸ナトリ
ウム等の重クロム酸塩が好適であり、特に、重クロム酸
カリウムが最適である。しかし、クロム酸、クロム酸
塩、酢酸クロミル等のクロム系酸化剤や過マンガン酸カ
リウムのようなマンガン系酸化剤も必要に応じて用いる
ことができる。
化学酸化法において、特に好ましい方法は、アニリン、
アルキルアニリン又はこれらの水溶性塩を支持体、例え
ば、多孔質膜に含浸させ、これをプロトン酸含有反応媒
体中で酸化剤で酸化重合させて、アニリン又はその誘導
体の酸化重合体を上記多孔質膜に析出させるに際して、
上記酸化剤を含む反応媒体におけるプロトン酸/重クロ
ム酸カリウムモル比を1.2以上、好ましくは2〜50と
して、電導度が10-6S/cm以上である導電性多孔質膜
を得るものである。
このような方法によれば、アニリン、その誘導体又はこ
れらの水溶性塩が含浸された多孔質膜がプロトン酸と酸
化剤とを含有する酸化剤水溶液中に浸漬され、酸化剤に
よりアニリン又はその誘導体が酸化重合して多孔質膜中
に導電性重合体を析出形成するので、多孔質膜の微孔を
形成する壁体表面を含む多孔質膜表面に導電性酸化重合
体が析出し、全体として導電性の多孔質膜を与える。
ここに、プロトン酸としては、硫酸、塩酸、臭化水素
酸、テトラフルオロホウ酸(HBF4)、ヘキサフルオロリン
酸(HBF6)等が用いられるが、特に硫酸が好適である。ア
ニリン又はその誘導体の水溶性塩を形成するために鉱酸
を用いるとき、この鉱酸は上記プロトン酸と同じでも、
異なつてもよい。
反応媒体としては水、水混和性有機溶剤及び水非混和性
有機溶剤の1種又は2種以上の混合物を用いることがで
きるが、アニリン又はその誘導体の水溶性塩が用いられ
るときは、反応媒体には通常、上記水溶性塩を溶解する
水、水混和性有機溶剤又はこれらの混合物が用いられ、
また、アニリン又はその誘導体自体が用いられるとき
は、反応媒体としては、アニリン又はアルキルアニリン
のような誘導体を溶解する水混和性有機溶剤又は水非混
和性有機溶剤が用いられる。尚、上記有機溶剤はいずれ
も用いる酸化剤によつて酸化されないことが必要であ
る。例えば、水混和性有機溶剤としては、アセトン、テ
トラヒドロフラン、酢酸等のケトン類、エーテル類又は
有機酸類が用いられ、また、水非混和性有機溶剤として
は四塩化炭素、炭化水素等が用いられる。
尚、酸化剤水溶液におけるプロトン酸の濃度は特に制限
されるものではないが、通常、1〜10Nの範囲であ
る。但し、この化学酸化法においては、プロトン酸を予
め多孔質膜にアニリンやその誘導体の水溶性塩と共に含
浸させることを妨げるものではない。
化学酸化法において、多孔質膜に導電性酸化重合体を析
出させるための酸化重合の反応温度は、溶剤の沸点以下
であれば特に制限されないが、反応温度が高温になるほ
ど、得られる導電性多孔質膜の導電性が小さくなる傾向
があるので、高い導電性を有する多孔質膜を得る観点か
らは常温以下が好ましい。多孔質膜を酸化剤水溶液と接
触させると、通常、重合体の析出反応は直ちに終了す
る。次いで、重合体の析出した多孔質膜を水中又は有機
溶剤中に投入し、濾液が中性になるまで水洗した後、ア
セトン等の有機溶剤にてこれが着色しなくなるまで洗滌
し、乾燥して、化学酸化法による第1の導電性重合体が
析出された多孔質膜を得る。
必要に応じて、このようにして得られた導電性多孔質膜
に再度、アニリン、その誘導体又はこれらの水溶性塩を
含浸させ、これをプロトン酸含有反応媒体中で酸化剤で
酸化重合させて導電性重合体を多孔質膜に析出させ、洗
滌、乾燥する操作を繰り返してもよい。また、得られた
導電性多孔質膜をロール圧延等によつて加圧圧縮し、導
電性重合体を膜に圧着することができる。このようなロ
ール圧延はまた、支持体が多孔質膜の場合であれば、多
孔質膜の膜厚や微孔孔径を調整するのにも役立つ。更
に、このような多孔質膜に導電性重合体を析出させた
後、ロール圧延し、これに再び導電性重合体を析出させ
る操作を繰り返してもよい。
化学酸化法により得られるこのような導電性多孔質膜の
導電性は、アニリン又はその誘導体の酸化重合が行なわ
れるプロトン酸と酸化剤とを含有する反応媒体の組成に
密接に関連しており、多孔質膜に高導電性の酸化重合体
を析出させるためには、上記反応媒体の組成を最適に選
択することが必要である。電導度が10-6S/cm以上の
高導電性の多孔質膜を得るためには、反応の行なわれる
反応媒体におけるプロトン酸/重クロム酸カリウムモル
比を1.2以上、好ましくは2〜50とすることが必要で
ある。通常、このような条件下での酸化重合によつて電
導度が10-6〜10S/cmである導電性多孔質膜を得
ることができる。
このようにアニリン又はその誘導体の酸化重合が行なわ
れる反応媒体中におけるプロトン酸/重クロム酸カリウ
ムモル比が一定であれば、得られる導電性重合体の導電
性は実質的に同じである。即ち、再現性よく所定の導電
性を有する重合体を多孔質膜に析出させることができ
る。他方、アニリン又はその誘導体に対する重クロム酸
カリウムの量は、多孔質膜において析出される重合体の
収率を決定する。しかし、重合体の導電性は、用いる重
クロム酸カリウムの量によつては実質的に影響を受けな
い。従つて、所定のプロトン酸/重クロム酸カリウムモ
ル比の酸化剤水溶液を用い、且つ、重クロム酸カリウム
をアニリン又はその誘導体に対して当量若しくはそれ以
上用いるとき、所定の導電性を有する多孔質膜を安定し
て得ることができる。
化学酸化法によつて得られる第1の導電性重合体を含む
多孔質膜は、形成された導電性アニリン又はその誘導体
の重合体によつて、通常、緑色乃至黒緑色を呈し、一般
に導電性が高いほど、鮮やかな緑色を呈している。しか
し、この多孔質膜をロール加圧すると、通常、光沢のあ
る青色を示す。
化学酸化法によつて多孔質膜に形成されたアニリン又は
その誘導体の導電性重合体は、得られた導電性多孔質膜
の電導度が10-6S/cm以上であるときは、その重合体
は水及び殆どの有機溶剤に不溶性であり、特に、N,N−
ジメチルホルムアミドにも実質的に不溶性であるが、濃
硫酸には可溶性である。このような重合体の溶解特性
は、前記したように、エメラルデインの溶解特性と著し
く異なる。
また、本発明においては、アニリン又はその誘導体を電
解酸化し、第1の導電性重合体を多孔質膜に析出させ
て、導電性多孔質膜を得ることもできる。即ち、アニリ
ン又はアルキルアニリンと、これに対して当量以上のプ
ロトン酸を含有するアニリン又はアルキルアニリンの溶
液中において、通常の白金電極等の陽極に多孔質膜を密
着させ、これを陽極として浸漬し、アニリン又はその誘
導体を電解酸化して、多孔質膜に導電性重合体を析出さ
せるのである。
この電解酸化法においても、用いる多孔質膜は、これを
アニリン又はその誘導体の溶液中に陽極として浸漬した
とき、この溶液が膜を透過し得る程度に多孔質であると
共に、アニリン溶液に対して濡れ性を有することが必要
である。但し、この電解酸化法においても、用いる支持
体は多孔質膜に限定されないことは前述したとおりであ
る。
電解酸化法において用いるプロトン酸は、酸化電位が電
解酸化重合の酸化電位よりも高いプロトン酸であること
が好ましく、従つて、具体的には、塩酸、臭化水素酸、
硫酸、硝酸、過塩素酸、テトラフルオロホウ酸(HBF4)、
ヘキサフルオロリン酸(HPF6)等が好ましく用いられる。
電解酸化法によつて10-3S/cm以上の高電導度を有す
る導電性多孔質膜を得るためには、上記のプロトン酸
は、用いるアニリン又はその誘導体の当量以上、通常、
1〜50倍当量の範囲で用いると共に、アニリン又はそ
の誘導体の溶液を標準カロメル電極に対して+1Vより
も高い電解電位にて電解酸化重合させることが必要であ
り、また、電流密度は0.01mA/cm2乃至1A/cm2である
ことが必要である。酸化電解酸化が+1V以下であると
き、又は電流密度が上記範囲外にあるとき、多孔質膜に
析出形成される重合体が低分子量であつて、且つ、導電
性も低いために、高導電性の多孔質膜を得ることができ
ない。
また、アニリン又はその誘導体の溶液におけるその濃度
は1重量%以上であることが望ましい。上記濃度が1重
量%よりも小さいときも、生成する重合体は低分子量で
あつて、導電性も低い。但し、溶液濃度の上限は特に制
限されないが、通常は50重量%までが適当である。
アニリン又はアルキルアニリンの溶液のための溶剤とし
ては、上記プロトン酸及びアニリン又はアルキルアニリ
ンを共に溶解し得ると共に、その分解電位が反応条件下
のアニリン又はアルキルアニリンの電解酸化重合時の酸
化電位において安定である溶剤が好ましく、従つて、具
体的には、メタノール、エタノール等の脂肪族低級アル
コール、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル
類、メチルエチルケトン等のケトン類、N,N−ジメチル
ホルムアミド等のアミド類が好適に用いられる。水はそ
の分解電位が1.23Vであり、採用する電解酸化電位によ
つては、水の分解電位の方が高いが、水を溶剤として用
いるときも、アニリン又はその誘導体の酸化電解電位を
+1Vよりも高くすることにより、高分子量で高導電性
の酸化重合体を多孔質膜に析出生成させることができ
る。
先に説明したように、Mohilnerらは水の電気分解を避け
るために、SCEに対して+0.8Vの酸化電位でアニリ
ンの電解酸化を行なつているが、+1Vよりも高い電解
電位、好ましくは2〜10Vの電解電位にて電解酸化を
行なうことにより、エメラルデインよりも遥かに高分子
量で高導電性のアニリン又はアルキルアニリンの重合体
を多孔質膜に析出させることができるのである。
電解酸化法において、多孔質膜の高導電性のアニリン又
はその誘導体の電解酸化重合体を析出させるためには、
また、前記したように、電解酸化における電流密度も重
要である。電流密度が0.01mA/cm2よりも小さいとき
は、多孔質膜に析出する重合体がN−メチル−2−ピロ
リドンやN,N′−ジメチルホルムアミドに溶解すること
から、低分子量の重合体であるとみられ、また、かかる
重合体はその導電性も小さく、従つて、高導電性多孔質
膜を得ることができない。
電解酸化法においては、アニリン溶液は上記したプロト
ン酸以外の支持電解質を含有していてもよい。具体例と
しては、例えば過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム
等の過塩素酸金属塩や、過塩素酸テトラブチルアンモニ
ウム等の有機塩を挙げることができる。また、上記以外
にも例えば硝酸塩、硫酸塩、塩酸塩、テトラフルオロホ
ウ酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩等のような塩類も支持
電解質として使用することもできる。
また、必要に応じて、アニリン又はその誘導体と、これ
らに対して当量以上のプロトン酸を含有する溶液中に、
上記のようにして得られた導電性多孔質膜を再度、陽極
として浸漬し、アニリン又はその誘導体を電解酸化重合
して、この多孔質膜に導電性重合体を析出させてもよ
い。また、前記したと同じ目的のために、得られた導電
性多孔質膜にロール圧延を施してもよい。更に、多孔質
膜に導電性重合体を析出させた後、ロール圧延し、これ
に再び導電性重合体を析出させる操作を繰り返してもよ
い。
このようにして、アニリン又はその誘導体の電解酸化法
によつて得られる導電性多孔質膜も、前記化学酸化法に
よる導電性多孔質膜と同様に、析出形成された第1の導
電性重合体によつて、通常、緑色乃至黒緑色を呈し、一
般に導電性が高いほど、鮮やかな緑色を呈している。し
かし、この多孔質膜をロール加圧すると、通常、光沢の
ある青色を示す。
電解酸化法によつて多孔質膜に形成される導電性重合体
も、化学酸化による重合体と同様に、既にその電解酸化
重合の段階で、用いたプロトン酸によつてドーピングさ
れており、かくして得られる導電性多孔質膜は、通常、
10-3〜10S/cmの範囲の電導度を有する。
アニリン又はアルキルアニリンの電解酸化重合によつて
多孔質膜に析出形成された第1の導電性重合体は、導電
性多孔質膜の電導度が10-3S/cm以上であるときは、
その重合体は水及び殆どの有機溶剤に不溶性であり、特
に、濃硫酸及びN,N−ジメチルホルムアミドやN−メチ
ル−2−ピロリドンにも実質的に不溶性である。
更に、本発明においては、上記導電性多孔質膜は、化学
酸化法により得られた導電性膜を通常の白金電極等に密
着させ、これを陽極としてアニリン又はその誘導体の電
解酸化重合を行ない、導電性重合体を多孔質膜に析出さ
せることによつても得ることができる。また、その逆
に、最初に電解酸化法によつて多孔質膜に導電性重合体
を析出させ、この後に、この導電性膜に化学酸化による
導電性重合体を析出させることによつても得ることがで
きる。このように、多孔質膜にアニリン又はその誘導体
の化学酸化及び電解酸化を順次に適用して得られる導電
性多孔質膜は、一層高い導電性を有する。
上記のようにして得られる導電性多孔質膜は、多孔質膜
に析出された第1の導電性重合体が、化学酸化重合又は
電解酸化重合の段階で既にドーピングされているため
に、新たなドーピング処理を要せずして高導電性を有
し、しかも、長期間にわたつて空気中に放置しても、そ
の導電性は何ら変化せず、従来より知られているドーピ
ングした導電性有機重合体に比較して、特異的に高い安
定性を有している。
しかし、本発明に従つて、かかる導電性多孔質膜に上記
アニリン若しくはその誘導体を除く第2の重合性単量体
を化学酸化又は電解酸化によつて重複して析出させるこ
とにより、一層高導電性で、且つ、安定性にすぐれる導
電性複合シートを得ることができる。
本発明において、第2の重合性単量体とは、アニリン及
びその誘導体を除いて、化学酸化又は電解酸化によつて
導電性重合体を形成し得る単量体であつて、かかる単量
体である限りは、特に限定されることなく、任意の単量
体を用いることができる。例えば、上記第2の単量体と
して、本発明においては、例えば、ピロール、チオフエ
ン、フラン、インドール又はその誘導体のような複素環
式化合物や、フエノール、チオフエノール、又はその誘
導体のような芳査族化合物を挙げることができる。ま
た、本発明においては、芳査族化合物として、アズレン
のような擬似芳香族化合物も含むものとする。かかる第
2の単量体を化学酸化又は電解酸化によつて、導電性重
合体を得る方法は既によく知られており、本発明におい
ては、かかる従来より既に知られている任意の方法に
て、前記した導電性多孔質膜に上記第2の重合性単量体
を酸化重合させることにより、本発明による導電性複合
シートを得ることができる。
以上においては、先ず、多孔質膜にアニリン若しくはそ
の誘導体の化学酸化及び/又は電解酸化による第1の導
電性重合体を析出させ、次いで、第2の単量体からの第
2の導電性重合体をこの導電性多孔質膜に析出させると
して説明したが、逆に多孔質膜に先ず第2の導電性重合
体を析出させ、次いで、第1の導電性重合体を析出させ
てもよい。
(発明の効果) 以上のように、本発明の導電性複合シートによれば、ア
ニリン若しくはその誘導体の化学酸化及び/又は電解酸
化による第1の導電性重合体と共に、アニリン及びその
誘導体を除く第2の単量体の化学酸化及び/又は電解酸
化による第2の導電性重合体が析出されているために、
極めて高い導電性を有すると共に、安定であり、更に、
多孔質膜が可撓性を有する場合には、その可撓性を保持
している。
(実施例) 以下に参考例及び実施例を挙げて本発明を説明するが、
本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではな
い。
参考例1(化学酸化法による導電性重合体の製造) 本実施例においては、アニリンの化学酸化法による第1
の導電性重合体の化学構造を決定すると共に、その他の
物性を評価するために、多孔質膜の非存在下に、先に規
定した条件下にアニリンを化学酸化剤にて酸化重合させ
た。
(1) 重合体の製造 300ml容量のフラスコ中に水45gを入れ、濃塩酸4
mlを加え、更にアニリン5g(0.0537モル)を溶解さ
せ、アニリン塩酸塩水溶液を調製し、氷水でフラスコを
冷却した。
別に、水28.8gに濃硫酸4.61g(0.047モル)を加え、
更に重クロム酸カリウム1.84g(0.00625モル)を溶解
させた酸化剤水溶液(プロトン酸/重クロム酸カリウム
モル比7.5)を調製し、これを氷水で冷却した上記アニ
リンの塩酸塩水溶液中に撹拌下、滴下ろうとから30分
間を要して滴下した。滴下開始後、最初の2〜3分間は
溶液が黄色に着色したのみであつたが、その後、速やか
に緑色固体が析出し、反応液は黒緑色を呈した。
滴下終了後、更に30分間撹拌し、その後、反応混合物
をアセトン400ml中に投じ、2時間撹拌し、次いで、
重合体を濾別した。得られた重合体を蒸留水中で撹拌洗
滌し、濾別し、このようにして濾液が中性になるまで洗
滌を繰り返した。次いで、濾別した重合体をアセトンに
より濾液が着色しなくなるまで洗滌を繰り返した。濾別
した重合体を五酸化リン上、室温で10時間真空乾燥
し、本発明による導電性性有機重合体を緑色粉末として
得た。
(2) 重合体の物性 上で得たアニリン重合体を室温において濃度97%の濃
硫酸に加え、撹拌して、その溶解度を調べたところ、溶
解量は1.2重量%であつた。また、濃度0.5g/dlとしたこ
の重合体の97%濃硫酸溶液の温度30℃における対数
粘度は0.46であつた。比較のために、エメラルデイン及
びダイヤモン・ブラツクの同じ条件下での粘度はそれぞ
れ0.02及び0.005であつた。
更に、上記アニリン重合体及びエメラルデインについて
の空気中における熱重量分析の結果を第5図に示す。昇
温速度は10℃/分である。
次に、上で得たアニリン重合体粉末約120mgを瑪瑙製
乳鉢で粉砕した後、赤外分光光度計用錠剤成形器にて圧
力6000kg/cm2で直径13mmのデイスクに加圧成形
した。幅約1mmの銅箔4本を銀ペースト又はグラフアイ
トペーストでデイスクの四隅に接着し、空気中でフアン
・デル・ポウ法に従つて測定した結果、電導度は2.0S
/cmであつた。この重合体成形物は、10-2Torrの真空
中で測定しても、ほぼ同じ電導度を示した。このデイス
クを4か月間空気中に放置したが、電導度は実質的に変
化しなかつた。
尚、以下においても、導電性重合体及び導電性多孔質膜
の電導度の測定は上記四端子法によつた。
また、この重合体は、熱起電力の符号が正であつて、p
型半導体であつた。
(3) 重合体の赤外線吸収スペクトル 上で得たアニリン重合体の赤外線吸収スペクトルを第1
図に示す。比較のために、エメラルデイン及び市販ダイ
ヤモンド・ブラツクの赤外線吸収スペクトルをそれぞれ
第2図及び第3図に示す。尚、エメラルデインはA.G.Gr
eenらの方法によつて調製した(A.G.Green et al.,J.Che
m.Soc.,97,2388(1910))。
上記アニリン重合体の赤外線吸収スペクトルは、エメラ
ルデインのそれと類似するが、同時に大きい差違もあ
る。即ち、エメラルデインには一置換ベンゼンに基づく
C−H面外変角振動による690cm-1及び740cm-1
明瞭な吸収が認められるが、本発明におけるアニリン重
合体においては、これらの吸収は殆ど認められず、代わ
りにパラ置換ベンゼンを示す800cm-1の吸収が強く認
められる。これはエメラルデインが低分子量体であるた
めに、分子末端の一置換ベンゼンに基づく吸収が相対的
に強く現われるのに対して、本発明におけるアニリン重
合体は高分子量体であるために、高分子鎖をなすパラ置
換ベンゼンに基づく吸収が相対的に強く現われるからで
ある。これに対して、アニリンブラツクの赤外線吸収ス
ペクトルは本発明による重合体及びエメラルデインのい
ずれとも顕著に相違し、特に、3200〜3400cm-1
付近の広幅の吸収、1680cm-1にあるキノン性カルボ
ニル基と認められる吸収、1200〜1300cm-1のC
−N伸縮振動領域、600cm-1以下の領域等において異
なることが明らかである。
本発明におけるアニリン重合体における赤外線吸収スペ
クトルの帰属は次のとおりである。
1610cm-1(シヨルダー、C=N伸縮振動) 1570、1480cm-1(ベンゼン環C−C伸縮振動) 1300、1240cm-1(C−N伸縮振動) 1120cm-1(ドーパントに基づく吸収。ドーパントの
種類によらず、ほぼ同じ位置に吸収を有する。) 800cm-1(パラ置換ベンゼンC−H面外片角振動) 740、690cm-1(一置換ベンゼンC−H面外変角振
動) また、上記アニリン重合体をアンモニア補償したときの
赤外線吸収スペクトルを第4図Bに示し、これを5N硫
酸で再びドーピングした後の赤外線吸収スペクトルを第
4図Cに示す。この再ドーピング後のスペクトルは第4
図Aに示す当初のそれとほぼ完全に同じであり、更に、
電導度もアンモニア補償前と同じである。また、電導度
の変化は、補償前Aは2.7S/cm、補償後Bは3.5×10
-8S/cm、再ドーピング後Cは0.87S/cmであつた。従
つて、本発明による重合体は、その酸化重合の段階で用
いたプロトン酸によつて既にドーピングされていること
が示される。
(4)重合体の化学構造 上で得た化学酸化法による体1の導電性アニリン重合体
の元素分析値を示す。尚、重合体を水洗及びアセトン洗
滌によつて精製を繰り返しても、元素分析後に無水酸化
クロム(Cr2O3)の緑色粉末が残渣として残ることが認め
られるので、実測元素分析値と共に、その合計を100
としたときのそれぞれの換算値を併せて示す。換算値が
理論値と一致することが認められる。
また、アンモニアにて化学補償した重合体についても結
果を示す。
(a)硫酸をドーパントとして含む重合体 C12H8N2(H2SO4)0.58 尚、理論式における硫酸量は、イオウの実測値から算出
し、この硫酸量に基づいて理論値における酸素量を算出
した。また、測定値における酸素量は、イオウの測定値
から硫酸量を算出し、この硫酸量から算出した。
(b)補償重合体 C12H8N2 参考例2(電解酸化法による導電性重合体の製造) 本実施例においては、アニリンの電解酸化法による第1
の導電性重合体を多孔質膜の非存在下に調製し、その化
学構造の決定と物性の評価を行なつた。
(1) 重合体の製造 アニリン濃度が10重量%であり、塩酸をアニリンに対
して当量含有する水溶液中に白金からなる陽極及び陰極
を挿入し、SCEに対する初期電解電位+1.8V、定電
流密度5mA/cm2にて8時間通電して電解酸化重合し
た。
尚、電解重合をこのように定電流密度で行なう場合、電
解電位が漸次増大することはよく知られているところで
あり、従つて、電解電位は上記のように初期電位で示さ
れるのが普通である。
上記の反応において陽極に生成したアニリン重合体を剥
離し、粉砕した後、蒸留水中で撹拌洗滌し、濾別し、次
いで、濾別した重合体をアセトンにより洗滌した。濾別
した重合体を五酸化リン上、室温で10時間真空乾燥
し、導電性重合体を緑色粉末として得た。
尚、第6図にアニリンの電解酸化におけるサイクリツク
・ボルタモグラムを示す。
(2) 物性の評価 上で得た重合体を室温において濃度97%に加え、撹拌
してその溶解度を調べた結果、化学酸化法による重合体
よりは溶解性が劣るが、超音波処理等によつて溶解は促
進され、1重量%まで溶解した。しかし、重合体の一部
は未溶解のままであつたため、重合体溶液をガラスフイ
ルターにて濾過して、未溶解重合体を除去した後、この
濾液を大量のアセトン中に注いて再沈殿させ、沈殿を濾
別、洗浄、乾燥して、濃硫酸に溶解する重合体のみを単
離し、これを0.5g/dlとなるように濃硫酸に溶解し、3
0℃における対数粘度を測定したところ、0.40であつ
た。尚、ガラスフイルター上に残つた不溶性重合体は僅
少であつて、溶解性重合体量に比べて無視し得るもので
あつた。従つて、上記濃硫酸に対する溶解度及び対数粘
度は実質的に電解酸化重合による導電性重合体の溶解度
及び対数粘度とすることができる。
また、上記重合体についての空気中における熱重量分析
の結果を第5図に示す。昇温速度は10℃/分である。
次に、上で得た重合体粉末約120mgを実施例1と同様
にデイスクに形成し、空気中でフアン・デル・ポウ法に
よつて電導度を測定した結果、4.5S/c、であつた。1
-2Torrの真空中で測定しても、ほぼ同じ電導度を示し
た。このデイスクを4か月間空気中に放置したが、電導
度は実質的に変化しなかつた。
この重合体は、熱起電力の符号が正であつて、p型半導
体であつた。
(3) 重合体の赤外線吸収スペクトル 上で得た重合体の赤外線吸収スペクトルを第7図に示
す。第3図に示す赤外線吸収スペクトルと実質的に一致
しており、従つて、電解酸化法による導電性アニリン重
合体は化学酸化法による導電性アニリン重合体と実質的
に同一である。
また、この電化酸化によるアニリン重合体も、化学補償
前後の赤外線吸収スペクトルの変化から、その電解酸化
重合の段階で用いたプロトン酸によつて既にドーピング
されていることが示される。
(4) 重合体の化学構造 上で得た電解酸化重合による導電性アニリン重合体の元
素分析値を示す。また、アンモニアにて化学補償した重
合体についても結果を示す。
(a)塩酸をドーパントとして含む重合体 C12H8N2(HCL)1.5 尚、理論式における塩酸は、塩素の実測値から算出し
た。
(b)補償重合体 C12H8N2 実施例1 ポリテトラフルオロエチレンからなる多孔質膜(ダイキ
ン工業(株)製ポリフロンペーパー)を10重量%塩酸
アニリンのエタノール溶液に室温で30分間浸漬した
後、60℃で30分間乾燥させた後、重クロム酸カリウ
ムの硫酸酸性水溶液(重クロム酸カリウム/硫酸/水重
量比=5/15/75、プロトン酸/重クロム酸カリウ
ムモル比=9.0)に25℃で10分間浸漬し、アニリン
を酸化重合させて、多孔質膜に析出させた。
次いで、多孔質膜を水洗し、アセトンが無色透明になる
までアセトンによる洗滌を繰り返した後、60℃の温度
で1時間乾燥し、5.5×10-3S/cmの電導度を有する
導電性多孔質膜を得た。尚、導電性多孔質膜の電導度測
定は四端子法によつた。以下も同じである。
次に、アニリン塩酸塩10重量%の水溶液中に上で得た
導電性多孔質膜を陽極として、陰極と共に挿入し、SC
Eに対する初期電解電位+2V、定電流密度10mA/
cm2にて1時間通電して、多孔質膜に更に導電性アニリ
ン重合体を析出させた。
この後、膜を蒸留水中で撹拌洗滌した後、アセトンによ
り洗滌し、次いで、更に五酸化リン上、室温で10時間
真空乾燥し、第1の導電性重合体を析出させた導電性多
孔質膜を得た。この膜は2.0×10-1S/cmの電導度を
示した。
次いで、この導電性多孔質膜を陽極として、0.1モル/
の過塩素酸銀を含むアセトニトリル溶液中にてピロー
ルを0.8mA/cm2のの定電流密度にて1時間電解酸化重
合し、第2の導電性重合体としてのポリピロールを上記
導電性多孔質膜に析出させた。
このようにして得られた本発明による導電性複合シート
は、42S/cmの電導度を示した。
実施例2 実施例1において得られた導電性多孔質膜を陽極とし
て、0.1モル/のホウフツ化リチウム(LiBF4)を含むア
セトニトリル溶液中にて、チオフエンを20mA/cm2
の定電流密度にて1時間電解酸化重合し、第2の導電性
重合体としてのポリチオフエンを上記導電性多孔質膜に
析出させた。
このようにして得られた本発明による導電性複合シート
は、23S/cmの電導度を示した。
実施例3 実施例1において得られた導電性多孔質膜に0.5モル/
のピロール水溶液を含浸させた後、これを40重量%
硝酸セリウム(IV)アンモニウム水溶液に浸漬して、第2
の導電性重合体としてのポリピロールを上記導電性多孔
質膜に析出させた。
このようにして得られた本発明による導電性複合シート
は、0.27S/cmの電導度を示した。
【図面の簡単な説明】
第1図はアニリン化学酸化法による導電性有機重合体の
赤外線吸収スペクトル、第2図及び第3図はそれぞれエ
メラルデイン及びアニリン・ブラツクの赤外線吸収スペ
クトル、第4図は化学酸化法による導電性重合体を化学
補償したときのスペクトル変化を示す。第5図は化学酸
化法及び電解酸化法によるそれぞれのアニリン重合体及
びエメラルデインの加熱による重量残存率を示すグラフ
である。 第6図はアニリンの電解酸化におけるサイクリツク・ボ
ルタモグラム、第7図は電解酸化法による導電性有機重
合体の赤外線吸収スペクトルである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 阿部 正男 大阪府茨木市下穂積1丁目1番2号 日東 電気工業株式会社内 (72)発明者 中本 啓次 大阪府茨木市下穂積1丁目1番2号 日東 電気工業株式会社内 (56)参考文献 特開 昭61−157522(JP,A)

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】支持体に (a) 一般式 (但し、Rは水素又はアルキル基を示す。) で表わされるキノンジイミン構造を主たる繰返し単位と
    して有する実質的に線状の重合体であつて、ドーパント
    としての電子受容体を含む導電性重合体、及び (b) 化学酸化又は電解酸化によつて導電性重合体を形
    成する重合性単量体(アニリン及びその誘導体を除
    く。)からの導電性重合体、 が析出されてなることを特徴とする導電性複合シート。
  2. 【請求項2】キノンジイミン構造を主たる繰返し単位と
    して有する実質的に線状の重合体であつて、ドーパント
    としての電子受容体を含む導電性重合体が、濃硫酸の0.
    5g/dl溶液としたとき、対数粘度が0.10以上であること
    を特徴とする特許請求の範囲第1項記載の導電性複合シ
    ート。
  3. 【請求項3】重合性単量体が複素環式化合物又は芳香族
    化合物であることを特徴とする特許請求の範囲第1項記
    載の導電性複合シート。
  4. 【請求項4】複素環式化合物がピロール、チオフエン、
    フラン、インドール又はその誘導体であることを特徴と
    する特許請求の範囲第3項記載の導電性複合シート。
  5. 【請求項5】芳香族化合物がフエノール、チオフエノー
    ル、アズレン又はその誘導体であることを特徴とする特
    許請求の範囲第3項記載の導電性複合シート。
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