JPH089662B2 - 導電性材料 - Google Patents

導電性材料

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JPH089662B2
JPH089662B2 JP3804985A JP3804985A JPH089662B2 JP H089662 B2 JPH089662 B2 JP H089662B2 JP 3804985 A JP3804985 A JP 3804985A JP 3804985 A JP3804985 A JP 3804985A JP H089662 B2 JPH089662 B2 JP H089662B2
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  • Macromolecular Compounds Obtained By Forming Nitrogen-Containing Linkages In General (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は新規な導電性材料に関し、詳しくは、アニリ
ン又はその誘導体の酸化重合により得られる重合体をス
ルホン化してなる導電性有機材料に関する。
(従来の技術) 殆どの有機物質は電気的に絶縁性であるが、しかし、
有機半導体として知られる導電性を有する有機重合体の
一群が近年、注目を集めている。一般にそれ自体が導電
性である有機物質は3種類に分類される。第1はグラフ
フアイトである。グラフアイトは厳密には有機物質とは
みなされていないが、有機共役系の極限構造を有すると
みることもできる。このグラフアイトはそれ自体で既に
かなり高い導電性を有するが、これに種々の化合物をイ
ンターカレートすることにより、一層高い導電性を有せ
しめることができ、遂には超電導体となる。しかし、グ
ラフアイトは二次元性が強く、成形加工が困難であるの
で、その応用面において障害となつている。
第2は電荷移動錯体であつて、例えば、テトラチアフ
ルバレンとテトラシアノキノジメタンをそれぞれ電子供
与体及び電子受容体として得られる結晶性物質は、室温
で400〜500S/cmという非常に大きい電導性を有するが、
このような電荷移動錯体は重合体でないために、実用的
な応用を図るにはグラフアイトと同様に成形加工性に難
点がある。
第3はポリアセチレンによつて代表されるように、ド
ーピングによつて高導電性を有するに至るπ電子共役系
有機重合体である。ドーピング前のポリアセチレンの電
導度は、トランス型が10-5S/cm、シス型が10-9S/cmであ
り、半導体乃至絶縁体に近い性質を有している。しか
し、このようなポリアセチレンに五フツ化ヒ素、ヨウ
素、三酸化イオウ、塩化第二鉄等のような電子受容性化
合物或いはアルカリ金属のような電子供与性化合物をド
ーピングすることにより、それぞれp型半導体及びn型
半導体を形成させることができ、更には103S/cmもの導
体レベルの高い導電性を与えることもできる。上記ポリ
アセチレンは理論的には興味深い導電性有機重合体であ
るが、反面、ポリアセチレンは極めて酸化を受けやす
く、空気中で容易に酸化劣化して性質が大幅に変化す
る。ドーピングされた状態では一層酸化に対して敏感で
あり、空気中の僅かな湿気によつても電導度が急激に減
少する。この傾向はn型半導体に特に著しい。
また、ポリ(p−フエニレン)やポリ(p−フエニレ
ンサルフアイド)もドーピング前はその電導度がそれぞ
れ10-9S/cm及び10-16S/cmであるが、例えば前記した五
フツ化ヒ素をドーピングすることにより、それぞれ電導
度は500S/cm及び1S/cmである導電性有機重合体とするこ
とができる。これらのドーピングされた有機重合体の電
気的性質も程度の差こそあれ、やはり不安定である。
このようにドーピングされた導電性有機重合体の電気
的性質が一般に環境に対して非常に不安定であること
は、この種の導電性有機重合体に共通する現象であつ
て、これらの実用的な応用の障害となつている。
以上のように、従来より種々の有機導電性物質が知ら
れているが、その実用的な応用を展開する観点からは成
形加工性にすぐれる重合体形態が好ましい。
一方、酸化染料としてのアニリンの酸化重合体に関す
る研究も、アニリンブラツクに関連して古くより行なわ
れている。特に、アニリンブラツク生成の中間体とし
て、式(I)で表わされるアニリンの8量体がエメラル
デイン(emeraldine)として確認されており(A.G.Gree
n et al.,J.Chem.Soc.,97,2388(1910);101,1117(19
12))、これは80%酢酸、冷ピリジン及びN,N−ジメチ
ルホルムアミドに可溶性である。また、このエメラルデ
インはアンモニア性媒体中で酸化されて、式(II)で表
わされるニグラニリン(nigraniline)を生成し、これ
もエメラルデインと類似した溶解特性を有することが知
られている。
更に、近年になつて、R.Buvetらによつてこのエメラ
ルデインの硫酸塩が高い導電性を有することが見い出さ
れている(J.Polymer Sci.,C,16,2931;2943(1967);2
2,1187(1969))。
また、既にアニリンの電解酸化重合によつてエメラル
デイン類似の有機物質を得ることができることも知られ
ている(D.M.Mohilner et al.,J.Amer.Chem.Soc.,84,36
18(1962))。即ち、これによれば、アニリンの硫酸水
溶液を白金電極を用い、水の電気分解を避けるために、
標準カロメル電極に対して+0.8Vの酸化電位にて電解酸
化重合し、80%酢酸、ピリジン及びN,N−ジメチルホル
ムアミドに可溶性である物質が得られる。
そのほか、Diazら(J.Electroanal.Chem.,111,111(1
980))や、小山ら(高分子学会予稿集,30,(7),15
24(1981);J.Electroanal.Chem.,161,399(1984))も
アニリンの電解酸化重合を試みているが、いずれも高分
子被覆化学修飾電極を目的としたものであつて、電解は
1V以下の電位で行なつている。
(発明の目的) 本発明者らは、安定で高導電性を有する有機重合体材
料、特に、導電性有機材料を得るために、アニリンの酸
化重合に関する研究を鋭意重ねた結果、アニリンの酸化
重合の反応条件を選択することにより、上記エメラルデ
インよりも遥かに高分子量を有し、且つ、既にその酸化
重合段階でドーピングされているために、新たなドーピ
ング操作を要せずして安定で且つ高導電性を有する有機
重合体材料を得ることができることを見出した(特願昭
58−212280号及び特願昭58−212281号)。その後、本発
明者らは更に鋭意研究した結果、この有機重合体材料が
キノンジイミン構造を主たる繰返し単位として有する実
質的に線状の高分子量重合体からなると共に、この重合
体の芳香環の一部をスルホン化することにより、更に高
い導電性を付与し得ることを見出して、本発明に至つた
ものである。
従つて、本発明は新規な導電性材料を提供することを
目的とする。
(発明の構成) 本発明による導電性材料は、一般式 (但し、Rは水素又はアルキル基を示す。) で表わされるキノンジイミン構造を主たる繰返し単位と
して有する実質的に線状の重合体であつて、且つ、この
重合体の0.5g/dl濃硫酸溶液が30℃において0.10以上の
対数粘度を有する重合体をスルホン化してなるものであ
り、かくして得られる重合体は、その芳香環の一部がス
ルホン酸基を有する。
本発明による導電性材料は、前記(III)式で表わさ
れる繰返し単位を有し、前記所定の対数粘度を有する前
駆体導電性有機重合体(以下、単に前駆体という。)を
常法に従つてスルホン化することにより得ることがで
き、上記前駆体は、アニリン若しくはその誘導体を所定
の条件下に化学酸化剤によつて酸化重合し、又はアニリ
ン若しくはその誘導体を所定の条件下で電解酸化重合す
ることによつて得ることができる。
先ず、上記前駆体について説明する。
この前駆体は、例えば、アニリン若しくはアルキルア
ニリン、又はその水溶性塩をプロトン酸と酸化剤とを含
有する反応媒体中で酸化重合させることによつて得るこ
とができる。アルキルアニリンとしてはo−メチルアニ
リン、m−メチルアニリン、o−エチルアニリン、m−
エチルアニリン等が好ましく用いられる。アニリン及び
これらのアルキルアニリンのなかでは、特に、高導電性
有機重合体を与えるアニリンが好ましく用いられる。
アニリン又はアルキルアニリンの水溶性塩としては、
通常、塩酸、硫酸等の鉱酸塩が好適であるが、これらに
限定されるものではない。また、酸化剤も特に制限され
るものではないが、酸化クロム(IV)や、重クロム酸カ
リウム、重クロム酸ナトリウム等の重クロム酸塩が好適
であり、特に、重クロム酸カリウムが最適である。ま
た、プロトン酸としては、硫酸、塩酸、臭化水素酸、テ
トラフロオロホウ酸(HBF4)、ヘキサフルオロリン酸
(HPF6)等が用いられるが、特に硫酸が好適である。ア
ニリン又はアルキルアニリンの水溶性塩を形成するため
に鉱酸を用いるとき、この鉱酸は上記プロトン酸と同じ
でも、異なつてもよい。
反応媒体としては水、水混和性有機溶剤及び水非混和
性有機溶剤の1種又は2種以上の混合物を用いることが
できるが、アニリン又はアルキルアニリンの水溶性塩が
用いられるときは、反応媒体には通常、これら水溶性塩
を溶解する水、水混和性有機溶剤又はこれらの混合物が
用いられ、また、アニリンやアルキルアニリン自体が用
いられるときは、反応媒体としては、これらを溶解する
水混和性有機溶剤又は水非混和性有機溶剤が用いられ
る。尚、上記有機溶剤はいずれも用いる酸化剤によつて
酸化されないことが必要である。例えば、水混和性有機
溶剤としては、アセトン、テトラヒドロフラン、酢酸等
のケトン類、エーテル類又は有機酸類が用いられ、ま
た、水非混和性有機溶剤としては四塩化炭素、炭化水素
等が用いられる。
前駆体の好ましい製造方法は、アニリン若しくはアル
キルアニリン又はこれらの水溶性塩をプロトン酸含有反
応媒体中で酸化剤で酸化重合させる方法において、上記
酸化剤を含む反応媒体におけるプロトン酸/重クロム酸
カリウムモル比を1.2以上とする。上限は特に制限され
ないが、通常、50程度である。特に、好ましくは、アニ
リンの有機溶液又はアニリン水溶性塩の水溶液中に攪拌
下にプロトン酸酸性の酸化剤水溶液を滴下し、又は一括
添加して反応を行なわせるものである。
反応温度は溶剤の沸点以下であれば特に制限されない
が、反応温度が高温になるほど、得られる前駆体の導電
性が小さくなる傾向があるので、高い導電性を有する前
駆体を得る観点からは常温以下が好ましい。
上記のような方法によれば、通常、数分程度の誘導期
間を経た後、直ちに重合体が析出する。このように反応
は直ちに終了するが、通常、その後数分乃至数時間、熟
成のために攪拌する。次いで、反応混合物を大量の水中
又は有機溶剤中に投入し、重合体を濾別し、濾液が中性
になるまで水洗した後、アセトン等の有機溶剤にてこれ
が着色しなくなるまで洗滌し、真空乾燥して、前駆体を
得る。
このようにして得られる前駆体は、実質的に前記繰返
し単位からなり、その重合段階で既にプロトン酸によつ
てドーピングされているために、新たなドーピング処理
を要せずして高導電性を有し、しかも、長期間にわたつ
て空気中に放置しても、その導電性は何ら変化せず、従
来より知られているドーピングした導電性有機重合体に
比較して、特異的に高い安定性を有している。即ち、前
駆体は、電導度が10-6S/cm以上、通常、10-3〜101S/cm
である。また、前駆体は、乾燥した粉末状態において、
通常、緑色乃至黒緑色を呈し、一般に導電性が高いほ
ど、鮮やかな緑色を呈している。しかし、この前駆体を
加圧成形するとき、通常、光沢のある青色を示す。
前駆体は水及びほ殆どの有機溶剤に不溶性であるが、
通常、濃硫酸に僅かに溶解し、又は溶解する部分を含
む。濃硫酸への溶解度は、重合体を生成させるための反
応条件によつても異なるが、通常、0.2〜10重量%の範
囲であり、殆どの場合、0.25〜5重量%の範囲である。
但し、この溶解度は、特に高分子量の重合体の場合に
は、重合体が上記範囲の溶解度を有する部分を含むとし
て理解されるべきである。前記しように、エメラルデイ
ンが80%酢酸、冷ピリジン及びN,N−ジメチルホルムア
ミドに可溶性であるのと著しい対照をなす。
また、前駆体は、97%濃硫酸の0.5g/dl溶液が30℃に
おいて0.1〜1.0の範囲の対数粘度を有し、殆どの場合、
0.2〜0.6である。この場合においても、特に高分子量の
重合体の場合には、濃硫酸に可溶性の部分が上記範囲の
対数粘度を有するとして理解されるべきである。これに
対して、同じ条件下でのエメラルデイン及びアニリンブ
ラツクの対数粘度はそれぞれ0.02及び0.005であり、前
駆体が高分子量重合体であることが示される。更に、示
差熱分析結果も前駆体も高分子量重合体であることを示
している。
前駆体の代表例として、アニリンの酸化重合によつて
得られた前駆体の赤外線吸収スペクトルを第1図に示
し、比較のためにエメラルデイン及びアニリンブラツク
(市販顔料としてのダイヤモンド・ブラツク)の赤外線
吸収スペクトルをそれぞれ第2図及び第3図に示す。
前駆体の赤外線吸収スペクトルはエメラルデインのそ
れに類似するが、一方において、前駆体においては、エ
メラルデインに明瞭に認められる一置換ベンゼンのC−
H面外変角振動に基づく吸収が殆どみられないのに対し
て、パラ置換ベンゼンに基づく吸収が相対的に大きい。
しかし、前駆体のスペクトルはアニリンブラツクとは大
幅に異なる。従つて、前駆体はパラ置換ベンゼンを多数
含むエメラルデイン類似の構造を有する。
前駆体は、アニリン又はその誘導体の酸化重合の段階
で系中に存在する電子受容体によつてドーピングされて
おり、この結果として高導電性を有する。即ち、前駆体
から電子受容体への電荷移動が生じて、前駆体と電子受
容体との間に電荷移動錯体を形成している。前駆体を例
えばデイスク状に成形して、これに一対の電極を取付
け、これら電極間に温度差を与えて半導体に特有の熱起
電力を生ぜしめるとき、定温電極側がプラス、高温電極
側がマイナスの起電力を与えるので、前駆体がp型半導
体であることが示される。
更に、前駆体は、アンモニア等にて化学補償すること
によつて導電性が大幅に減少し、また、外観的にも黒緑
色から紫色に変化し、これを再度硫酸等の電子受容体に
てドーピングすることにより、色も黒緑色に戻ると共
に、当初の高導電性を回復する。この変化は可逆的であ
り、化学補償及びドーピングを繰り返して行なつても同
じ結果が得られる。第4図にこの化学補償及び再ドーピ
ングによる前駆体の赤外線吸収スペクトルの変化を示
す。Aは当初の前駆体、Bは化学補償した前駆体、及び
Cは再ドーピングした前駆体を示す。Cのスペクトルが
Aとほぼ完全に一致することが明らかであり、従つて、
上記化学補償及び再ドーピングは前駆体の骨格構造の変
化ではなく、前駆体と化学補償試薬或いは電子受容体と
の間の電子の授受である。このようにして、前駆体が酸
化重合の段階で電子受容体にてドーピングされ、かくし
て、前駆体はドーパントを含んでいることが理解され
る。
前駆体の化学構造は、上記した赤外線吸収スペクトル
のほか、前駆体の元素分析によつて確認され、また、前
駆体をアンモニア等で化学補償した重合体(以下、補償
前駆体という。)の元素分析からも確認され、実質的
に、前記繰返し単位からなる線状高分子重合体であり、
π電子共役系がドーパントを含むことによつて高導電性
を有するとみられる。
本発明による導電性材料は、上記のような前駆体を常
法に従つてスルホン化することにより得ることができ
る。一般に、芳香族重合体のスルホン化については、既
に種々の方法が知られており、本発明においては、かか
る従来の方法を特に制限されることなく採用することが
できる。
例えば、濃硫酸、クロル硫酸、無水硫酸による方法等
によつても、本発明による導電性材料を得ることができ
るが、特に、無水硫酸/リン酸トリエチル錯体を用いる
方法が比較的穏和な条件下で前駆体をスルホン化し得る
ので、好ましく用いることができる。この方法は、例え
ば、ポリスルホンのスルホン化においてよく知られてい
る(J.Appl.Polymer Chem.,20,1885(1976))。
より詳細には、例えば、前駆体を1,2−ジクロロエタ
ンのような適宜の溶剤に分散させ、無水硫酸とリン酸ト
リエチルを溶解させたスルホン化剤溶液を氷冷下に上記
分散液に添加し、反応終了後、スルホン化された前駆体
を濾別し、洗浄すれば、本発明によるスルホン化導電性
有機材料を得ることができる。
本発明によるこのような導電性材料の化学構造は、元
素分析及び赤外線吸収スペクトルによつて確認される。
(発明の効果) 本発明による導電性材料は、本来、高導電性であるア
ニリン又はその誘導体から得られる実質的にキノンジイ
ミン構造からなる導電性有機重合体である前駆体をスル
ホン化してなり、その導電性が一層高められている。ま
た、このような導電性材料は、導電性を有するうえに、
荷電を有する高分子物質として、例えば、電気的手法と
組み合わせた離膜のような機能性高分子重合体として利
用することができる。
(実施例) 以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は
これら実施例により何ら限定されるものではない。
実施例 (1) 前駆体の製造 300ml容量のフラスコ中に水45gを入れ、濃塩酸4mlを
加え、更にアニリン5g(0.0537モル)を溶解させ、アニ
リン塩酸塩水溶液を調製し、氷水でフラスコを冷却し
た。
別に、水28.8gに濃硫酸4.61g(0.047モル)を加え、
更に重クロム酸カリウム1.84g(0.00625モル)を溶解さ
せた酸化剤水溶液(プロトン酸/重クロム酸カリウムモ
ル比7.5)を調製し、これを氷水で冷却した上記アニリ
ンの塩酸塩水溶液中に攪拌下、滴下ろうとから30分間を
要して滴下した。滴下開始後、最初の2〜3分間は溶液
が黄色に着色したのみであつたが、その後、速やかに緑
色固体が析出し、反応液は黒緑色を呈した。
滴下終了後、更に30分間攪拌し、この後、反応混合物
をアセトン400ml中に投じ、2時間攪拌し、次いで、前
駆体を濾別した。得られた前駆体を蒸留水中で攪拌洗滌
し、濾別し、このようにして濾液が中性になるまで洗滌
を繰り返した。次いで、濾別した前駆体をアセトンによ
り濾液が着色しなくなるまで洗滌を繰り返した。濾別し
た前駆体を五酸化リン上、室温で10時間真空乾燥し、前
駆体を緑色粉末として得た。
(2) 前駆体の物性 上で得た前駆体を室温において濃度97%の濃硫酸に加
え、攪拌して、その溶解度を調べたところ、溶解量は1.
2重量%であつた。また、濃度0.5g/dlとしたこの前駆体
の97%濃硫酸溶液の温度30℃における対数粘度は0.46で
あつた。比較のために、エメラルデイン及びダイヤモン
ド・ブラツクの同じ条件下での粘度はそれぞれ0.02及び
0.005であつた。
更に、上記前駆体及びエメラルデインについての空気
中における熱重量分析の結果を第5図に示す。昇温速度
は10℃/分である。
次に、上で得た前駆体粉末約120mgを瑪瑙製乳鉢で粉
砕した後、赤外分光光度計用錠剤成形器にて圧力6000kg
/cm2で直径13mmのデイスクに加圧成形した。幅約1mmの
銅箔4本を銀ペースト又はズラフアイトペーストでデイ
スクの四隅に接着し、空気中でフアン・デル・ポウ法に
従つて測定した結果、電導度は0.40S/cmであつた。この
成形物は、10-2Torrの真空中で測定しても、ほぼ同じ電
導度を示した。このデイスクを4か月間空気中に放置し
たが、電導度は実質的に変化しなかつた。
(3) 前駆体の赤外線吸収スペクトル 上で得た前駆体の赤外線吸収スペクトルを第1図に示
す。比較のために、エメラルデイン及び市販ダイヤモン
ド・ブラツクの赤外線吸収スペクトルをそれぞれ第2図
及び第3図に示す。尚、エメラルデインはA.G.Greenら
の方法によつて調製した(A.G.Green et al.,J.Chem.So
c.,97,2388(1910))。
前駆体の赤外線吸収スペクトルは、エメラルデインの
それと類似するが、同時に大きい差違もある。即ち、エ
メラルデインには一置換ベンゼンに基づくC−H面外変
角振動による690cm-1及び740cm-1の明瞭な吸収が認めら
れるが、前駆体においては、これらの吸収は殆ど認めら
れず、代わりにパラ置換ベンゼンを示す800cm-1の吸収
が強く認められる。これはエメラルデインが低分子量体
であるために、分子末端の一置換ベンゼンに基づく吸収
が相対的に強く現われるのに対して、前駆体は高分子量
体であるために、高分子鎖をなすパラ置換ベンゼンに基
づく吸収が相対的に強く現われるからである。これに対
して、アニリンブラツクの赤外線吸収スペクトルは本発
明による前駆体及びエメラルデインのいずれとも顕著に
相違し、特に、3200〜3400cm-1付近の広幅の吸収、1680
cm-1にあるキノン性カルボニル基と認められる吸収、12
00〜1300cm-1のC−N伸縮振動領域、600cm-1以下の領
域等において異なることが明らかである。
前駆体における赤外線吸収スペクトルの帰属は次のと
おりである。
1610cm-1(シヨルダー、C=N伸縮振動) 1570、1480cm-1(ベンゼン環C−C伸縮振動) 1300、1240cm-1(C−N伸縮振動) 1120cm-1(ドーパントに基づく吸収。ドーパントの種類
によらず、ほぼ同じ位置に吸収を有する。) 800cm-1(パラ置換ベンゼンC−H面外片角振動) 740、690cm-1(一置換ベンゼンC−H面外変角振動) また、上記前駆体をアンモニア補償したときの赤外線
吸収スペクトルを第4図(B)に示し、これを5N硫酸で
再びドーピングした後の赤外線吸収スペクトルを第4図
(C)に示す。この再ドーピング後のスペクトルは第4
図(A)に示す当初のそれとほぼ完全に同じであり、更
に、電導度もアンモニア補償前と同じである。また、電
導度の変化は、補償前(A)は0.40S/cm、補償後(B)
は1.6×10-8S/cm、再ドーピング後(C)は0.31S/cmで
あつた。従つて、本発明による前駆体は、その酸化重合
の段階で用いたプロトン酸によつて既にドーピングされ
ていることが示される。
(4) 前駆体の化学構造 上で得た前駆体の元素分析値を示す。尚、前駆体を水
洗及びアセトン洗滌によつて精製しても、元素分析後に
無水酸化クロム(Cr2O3)の緑色粉末が残渣として残る
ことが認められるので、実測元素分析値と共に、その合
計を100としたときのそれぞれの換算値を併せて示す。
換算値が理論値と一致することが認められる。
また、アンモニアにて化学補償した前駆体についても
結果を示す。
(a)硫酸をドーパントとして含む前駆体 C12H8N2(H2SO40.58 尚、理論式における硫酸量は、イオウの実測値から算
出し、この硫酸量に基づいて理論値における酸素量を算
出した。また、測定値における酸素量は、イオウの測定
値から硫酸量を算出し、この硫酸量から算出した。
(b)補償前駆体 C12H8N2 (5) 前駆体のドーピング (1)で得た前駆体0.99gを乳鉢で細かく粉砕した
後、これを1,2−ジクロロエタン中に分散させた。別
に、1,2−ジクロロエタン16g中にリン酸トリエチル2.00
g(0.011モル)を溶解させ、更に、固体無水硫酸1.76g
を溶解させて、スルホン化剤溶液を調製した。前記前駆
体の分散液に氷水で冷却しつつ、これに上記スルホン化
剤溶液を20分間を要して滴下した。
滴下終了後、冷却下に1時間攪拌を続け、次いで、ス
ルホン化された前駆体を濾別し、1,2−ジクロロエタン
で十分に洗浄した後、室温にて8時間乾燥して、導電性
材料1.36gを得た。この導電性材料の電導度は5.5S/cmで
あつた。この導電性材料を更に水酸化ナトリウム水溶液
でよく洗浄した後、室温にて8時間乾燥した。
このようにして得たスルホン化された導電性材料の赤
外線吸収スペクトルを第6図に示す。導電性材料がスル
ホン酸基を有することは、1060cm-1及び1140cm-1の吸収
によつて確認される。また、元素分析の結果を以下に示
す。従つて、前記繰返し単位5個当りに約1個のスルホ
ン酸基が結合されている。
C12H7.8N2(SO3Na)0.2 尚、理論式におけるスルホン酸ナトリウム基の量は、
イオウの元素分析値から算出し、これを基づいて酸素及
びナトリウム量を算出した。また、測定値における酸素
及びナトリウムは、イオウの測定値からSO3Naとして算
出した。
【図面の簡単な説明】
第1図は前駆体の赤外線吸収スペクトル、第2図及び第
3図はそれぞれエメラルデイン及びアニリン・ブラツク
の赤外線吸収スペクトルを示す。第4図は前駆体をアン
モニア補償したときの赤外線吸収スペクトルの変化を示
す。第5図は駆体及びエメラルデインの加熱による重量
残存率を示すグラフである。 第6図は本発明による導電性材料の赤外線吸収スペクト
ルである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 一瀬 尚 大阪府茨木市下穂積1丁目1番2号 日東 電気工業株式会社内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一般式 (但し、Rは水素又はアルキル基を示す。) で表わされるキノンジイミン構造を主たる繰返し単位と
    して有する実質的に線状の重合体であつて、且つ、この
    重合体の0.5g/dl濃硫酸溶液が30℃において0.10以上の
    対数粘度を有する重合体をスルホン化してなる導電性材
    料。
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