JPH0639525B2 - 有機重合体のド−ピング方法 - Google Patents

有機重合体のド−ピング方法

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JPH0639525B2
JPH0639525B2 JP60038048A JP3804885A JPH0639525B2 JP H0639525 B2 JPH0639525 B2 JP H0639525B2 JP 60038048 A JP60038048 A JP 60038048A JP 3804885 A JP3804885 A JP 3804885A JP H0639525 B2 JPH0639525 B2 JP H0639525B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は新規な導電性有機重合体を得るための有機重合
体のドーピング方法に関する。
(従来の技術) 殆どの有機物質は電気的に絶縁性であるが、しかし、有
機半導体として知られる導電性を有する有機重合体の一
群が近年、注目を集めている。一般にそれ自体が導電性
である有機物質は3種類に分類される。第1はグラフア
イトである。グラフアイトは厳密には有機物質とはみな
されていないが、有機共役系の極限構造を有するとみる
こともできる。このグラフアイトはそれ自体で既にかな
り高い導電性を有するが、これに種々の化合物をインタ
ーカレートすることにより、一層高い導電性を有せしめ
ることができ、遂には超電導体となる。しかし、グラフ
アイトは二次元性が強く、成形加工が困難であるので、
その応用面において障害となつている。
第2は電荷移動錯体であつて、例えば、テトラチアフル
バレンとテトラシアノキノジメタンをそれぞれ電子供与
体及び電子受容体として得られる結晶性物質は、室温で
400〜500S/cmという非常に大きい電導性を有す
るが、このような電荷移動錯体は重合体でないために、
実用的な応用を図るにはグラフアイトと同様に成形加工
性に難点がある。
第3はポリアセチレンによつて代表されるように、ドー
ピングによつて高導電性を有するに至るπ電子共役系有
機重合体である。ドーピング前のポリアセチレンの電導
度は、トランス型が10-5S/cm、シス型が10-9S/
cmであり、半導体乃至絶縁体に近い性質を有している。
しかし、このようなポリアセチレンに五フツ化ヒ素、ヨ
ウ素、三酸化イオウ、塩化第二鉄等のような電子受容性
化合物或いはアルカリ金属のような電子供与性化合物を
ドーピングすることにより、それぞれp型半導体及びn
型半導体を形成させることができ、更には103S/cm
もの導体レベルの高い導電性を与えることもできる。上
記ポリアセチレンは理論的には興味深い導電性有機重合
体であるが、反面、ポリアセチレンは極めて酸化を受け
やすく、空気中で容易に酸化劣化して性質が大幅に変化
する。ドーピングされた状態では一層酸化に対して敏感
であり、空気中の僅かな湿気によつても電導度が急激に
減少する。この傾向はn型半導体に特に著しい。
また、ポリ(p−フエニレン)やポリ(p−フエニレン
サルフアイド)もドーピング前はその電導度がそれぞれ
10-9S/cm及び10-16S/cmであるが、例えば前記
した五フツ化ヒ素をドーピングすることにより、それぞ
れ電導度は500S/cm及び1S/cmである導電性有機
重合体とすることができる。これらのドーピングされた
有機重合体の電気的性質も程度の差こそあれ、やはり不
安定である。
このようにドーピングされた導電性有機重合体の電気的
性質が一般に環境に対して非常に不安定であることは、
この種の導電性有機重合体に共通する現象であつて、こ
れらの実用的な応用の障害となつている。
以上のように、従来より種々の有機導電性物質が知られ
ているが、その実用的な応用を展開する観点からは成形
加工性にすぐれる重合体形態が好ましい。
一方、酸化染料としてのアニリンの酸化重合体に関する
研究も、アニリンブラツクに関連して古くより行なわれ
ている。特に、アニリンブラツク生成の中間体として、
式(I)で表わされるアニリンの8量体がエメラルデイン
(emeraldine)として確認されており、(A.G.Green et
al.,J.Chem.Soc.,97,2388(1910);101,1117(1912))、
これは80%酢酸、冷ピリジン及びN,N−ジメチルホル
ムアミドに可溶性である。また、このエメラルデインは
アンモニア性媒体中で酸化されて、式(II)で表わされ
るニグラニリン(nigraniline)を生成し、これもエメ
ラルデインと類似した溶解特性を有することが知られて
いる。
更に、近年になつて、R.Buvetらによつてこのエメラ
ルデインの硫酸塩が高い導電性を有することが見い出さ
れている(J.Polymer Sci.,C,16,2931;2943(1967);2
2,1187(1969))。
また、既にアニリンの電解酸化重合によつてエメラルデ
イン類似の有機物質を得ることができることも知られて
いる(D.M.Mohilner et al.,J.Amer.Chem.Soc.,84,3618
(1962))。即ち、これによれば、アニリンの硫酸水溶液
を白金電極を用い、水の電気分解を避けるために、標準
カロメル電極に対して+0.8Vの酸化電位にて電解酸化
重合し、80%酢酸、ピリジン及びN,N−ジメチルホル
ムアミドに可溶性である物質が得られる。
そのほか、Diazら(J.Electroanal.Chem.,111,111(198
0))や、小山ら(高分子学会予稿集,30,(7),1524(1
981);J.Electroanal.Chem.,161,399(1984))もアニリ
ンの電解酸化重合を試みているが、いずれも高分子被覆
化学修飾電極を目的としたものであつて、電解は1V以
下の電位で行なつている。
(発明の目的) 本発明者らは、安定で高導電性を有する有機材料、特
に、導電性有機重合体を得るために、アニリンの酸化重
合に関する研究を鋭意重ねた結果、アニリンの酸化重合
の反応条件を選択することにより、上記エメラルデイン
よりも遥かに高分子量を有し、且つ、既にその酸化重合
段階でドーピングされているために、新たなドーピング
操作を要せずして安定で且つ高導電性を有する重合体を
得ることができることを見出した。(特願昭58−21
2280号及び特願昭58−212281号)。その
後、本発明者らは更に鋭意研究した結果、この重合体が
キノンジイミン構造を主たる繰返し単位として有する実
質的に線状の高分子量重合体であると共に、この重合体
が既に有するドーパントに代えて、新たな種々のドーパ
ントを有するようにドーピングする方法を見出して、本
発明に至つたものである。
(発明の目的) 従つて、本発明は、一般には新規な導電性有機重合体を
提供することを目的とし、特に、アニリン又はその誘導
体の酸化重合によつて得られた導電性有機重合体であつ
て、上記酸化重合時に反応系に存在するプロトン酸によ
つてドーピングされている導電性有機重合体を、その要
求特性や用途等に応じて、新たに選択したドーパントに
てドーピングし、かくして、酸化重合によつて得られた
導電性有機重合体とは異なるドーパントを有せしめる導
電性有機重合体のドーピング方法を提供することを目的
とする。
(発明の構成) 本発明による有機重合体のドーピング方法は、アニリン
若しくはその誘導体の酸化重合によつて得られる一般式 (但し、Rは水素又はアルキル基を示す。) で表わされるキノンジイミン構造を主たる繰返し単位と
して有する実施的に線状の有機重合体であつて、上記酸
化重合時にプロトン酸によつてドーピングされた導電性
有機重合体を塩基にて処理した後、pKaが3.0以下である
プロトン酸を電子受容性ドーパントとして作用させるこ
とを特徴とする。
本発明において用いる有機重合体(以下、単に前駆体と
いう。)は、前記(III)式で表わされる繰返し単位を有
し、アニリン若しくはその誘導体を所定の条件下に化学
酸化剤によつて酸化重合し、又はアニリン若しくはその
誘導体を所定の条件下で電解酸化重合することによつ
て、酸化重合の際に反応系に存在するプロトン酸によつ
てドーピングされた重合体として得ることができる。
このように、アニリン又はその誘導体を酸化重合すると
き、得られる導電性前駆体は、反応系に存在するプロト
ン酸によつてドーピングされており、酸化電位の低いプ
ロトン酸、例えば、有機酸を反応系に共存させても、こ
れらはアニリン又はその誘導体の酸化重合時に容易に酸
化分解されるため、得られる前駆体にドーパントとして
含有させることができない。しかし、本発明の方法に従
つて、ドーパントを含有する前駆体を化学補償した後、
これに所定のpKa値を有するプロトン酸を作用させるこ
とによつて、これらプロトン酸をドーパントとして含有
する導電性有機重合体を容易に得ることができる。
先ず、上記前駆体について説明する。
この前駆体は、例えば、アニリン若しくはアルキルアニ
リン、又はその水溶性塩をプロトン酸と酸化剤とを含有
する反応媒体中で酸化重合させることによつて得ること
ができる。アルキルアニリンとしてはo−メチルアニリ
ン、m−メチルアニリン、o−エチルアニリン、m−エ
チルアニリン等が好ましく用いられる。アニリン及びこ
れらのアルキルアニリンのなかでは、特に、高導電性有
機重合体を与えるアニリンが好ましく用いられる。
アニリン又はアルキルアニリンの水溶性塩としては、通
常、塩酸、硫酸等の鉱酸塩が好適であるが、これらに限
定されるものではない。また、酸化剤も特に制限される
ものではないが、酸化クロム(IV)や、重クロム酸カリウ
ム、重クロム酸ナトリウム等の重クロム酸塩が好適であ
り、特に、重クロム酸カリウムが最適である。また、プ
ロトン酸としては、硫酸、塩酸、臭化水素酸、テトラフ
ロオロホウ酸(HBF4)、ヘキサフルオロリン酸(HPF6)等が
用いられるが、特に硫酸が好適である。アニリン又はア
ルキルアニリンの水溶性塩を形成するために鉱酸を用い
るとき、この鉱酸は上記プロトン酸と同じでも、異なつ
てもよい。
反応媒体としては水、水混和性有機溶剤及び水非混和性
有機溶剤の1種又は2種以上の混合物を用いることがで
きるが、アニリン又はアルキルアニリンの水溶性塩が用
いられるときは、反応媒体には通常、これら水溶性塩を
溶解する水、水混和性有機溶剤又はこれらの混合物が用
いられ、また、アニリンやアルキルアニリン自体が用い
られるときは、反応媒体としては、これらを溶解する水
混和性有機溶剤又は水非混和性有機溶剤が用いられる。
尚、上記有機溶剤はいずれも用いる酸化剤によつて酸化
されないことが必要である。例えば、水混和性有機溶剤
としては、アセトン、テトラヒドロフラン、酢酸等のケ
トン類、エーテル類又は有機酸類が用いられ、また、水
非混和性有機溶剤としては四塩化炭素、炭化水素等が用
いられる。
前駆体の好ましい製造方法は、アニリン若しくはアルキ
ルアニリン又はこれらの水溶性塩をプロトン酸含有反応
媒体中で酸化剤で酸化重合させる方法において、上記酸
化剤を含む反応媒体におけるプロトン酸/重クロム酸カ
リウムモル比を1.2以上とする。上限は特に制限されな
いが、通常、50程度である。特に、好ましくは、アニ
リンの有機溶液又はアニリン水溶性塩の水溶液中に攪拌
下にプロトン酸酸性の酸化剤水溶液を滴下し、又は一括
添加して反応を行なわせるものである。
反応温度は溶剤の沸点以下であれば特に制限されない
が、反応温度が高温になるほど、得られる酸化重合体の
導電性が小さくなる傾向があるので、高い導電性を有す
る前駆体を得る観点からは常温以下が好ましい。
上記のような方法によれば、通常、数分程度の誘導期間
を経た後、直ちに重合体が析出する。このように反応は
直ちに終了するが、通常、その後数分乃至数時間、熟成
のために攪拌する。次いで、反応混合物を大量の水中又
は有機溶剤中に投入し、重合体を濾別し、濾液が中性に
なるまで水洗した後、アセトン等の有機溶剤にてこれが
着色しなくなるまで洗滌し、真空乾燥して、前駆体を得
る。
このようにして得られる前駆体は、実質的に前記繰返し
単位からなり、アニリン又はその誘導体の酸化重合時に
反応系に存在するプロトン酸によつて既にドーピングさ
れているために、新たなドーピング処理を要せずして高
導電性を有し、しかも、長期間にわたつて空気中に放置
しても、その導電性は何ら変化せず、従来より知られて
いるドーピングした導電性有機重合体に比較して、特異
的に高い安定性を有している。即ち、前駆体は、電導度
が10-6S/cm以上、通常、10-3〜101S/cmであ
る。また、前駆体は、乾燥した粉末状態において、通
常、緑色乃至黒緑色を呈し、一般に導電性が高いほど、
鮮やかな緑色を呈している。しかし、この前駆体を加圧
成形するとき、通常、光沢のある青色を示す。
前駆体は水及び殆どの有機溶剤に不溶性であるが、通
常、濃硫酸に僅かに溶解し、又は溶解する部分を含む。
濃硫酸への溶解度は、重合体を生成させるための反応条
件によつても異なるが、通常、0.2〜10重量%の範囲
であり、殆どの場合、0.25〜5重量%の範囲である。但
し、この溶解度は、特に高分子量の重合体の場合には、
重合体が上記範囲の溶解度を有する部分を含むとして理
解されるべきである。前記したように、エメラルデイン
が80%酢酸、冷ピリジン及びN,N−ジメチルホルムア
ミドに可溶性であるのと著しい対照をなす。
また、前駆体は、97%濃硫酸の05g/dl溶液が30℃
において0.1〜1.0の範囲に対数粘度を有し、殆どの場
合、0.2〜0.6である。この場合においても、特に高分子
量の重合体の場合には、濃硫酸に可溶性の部分が上記範
囲の対数粘度を有するとして理解されるべきである。こ
れに対して、同じ条件下でのエメラルデイン及びアニリ
ンブラツクの対数粘度はそれぞれ0.02及び0.005あり、
前駆体が高分子量重合体であることが示される。更に、
示差熱分析結果も前駆体が高分子量重合体であることを
示している。
前駆体の代表例として、アニリンの酸化重合によつて得
られた前駆体の赤外線吸収スペクトルを第1図に示し、
比較のためにエメラルデイン及びアニリンブラツク(市
販顔料としてのダイヤモンド・ブラツク)の赤外線吸収
スペクトルをそれぞれ第2図及び第3図に示す。
前駆体の赤外線吸収スペクトルはエメラルデインのそれ
に類似するが、一方において、前駆体においては、エメ
ラルデインに明瞭に認められる一置換ベンゼンのC−H
面外変角振動に基づく吸収が殆どみられないのに対し
て、パラ置換ベンゼンに基づく吸収が相対的に大きい。
しかし、前駆体のスペクトルはアニリンブラツクとは大
幅に異なる。従つて、前駆体はパラ置換ベンゼンを多数
含むエメラルデイン類似の構造を有する。
前駆体は、アニリン又はその誘導体の酸化重合の段階で
系中に存在する電子受容体によつてドーピングされてお
り、この結果として高導電性を有する。即ち、重合体か
ら電子受容体への電荷移動が生じて、重合体と電子受容
体との間に電荷移動錯体を形成している。前駆体を例え
ばデイスク状に成形して、これに一対の電極を取付け、
これら電極間に温度差を与えて半導体に特有の熱起電力
を生ぜしめるとき、低温電極側がプラス、高温電極側が
マイナスの起電力を与えるので、前駆体がp型半導体で
あることが示される。
次に、前駆体の化学補償について説明する。化学補償
は、ドーパントを含有する前駆体を塩基を含有する溶
液、即ち、化学補償溶液にて処理することをいう。ここ
に、塩基としては、水酸化物、特に、アルカリ金属及び
アルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア、メチルアミ
ン、エチルアミン、トリエチルアミン等の低級脂肪族ア
ミン類等が好ましく用いられる。処理後の塩基の除去の
観点からはアンモニアが特に好ましい。かかる塩基を含
有する溶液のための溶剤としては、一般に水が用いられ
るが、上記塩基を溶解させる溶剤であれば、特に制限さ
れることなく、任意の有機溶剤を用いることもできる。
また、化学補償溶液における塩基の濃度は、前駆体の有
するドーパントに対して当量以上あれば、特に制限され
ない。しかし、余りに低濃度では処理に長時間を要する
ので、通常、化学補償溶液は、処理前にpH値で14以上
のアルカリ性を有し、且つ、処理終了後もpHが14以上
であるように選ばれる。
化学補償は、本質的に中和反応であるので、反応速度は
速く、前駆体の化学補償に要する時間は短時間でよい。
通常、30分も処理すれば十分である。処理後は、前駆
体を十分に水洗した後、適宜の有機溶剤で前駆体を洗浄
し、真空乾燥して、ドーピングに供する。
本発明における前駆体は、アンモニア等にて化学補償す
ることによつて導電性が大幅に減少し、また、外観的に
も黒緑色から紫色に変化し、これを再度硫酸等の電子受
容体にてドーピングすることにより、色も黒緑色に戻る
と共に、当初の高導電性を回復する。この変化は可逆的
であり、化学補償及びドーピングを繰り返して行なつて
も同じ結果が得られる。第4図にこの化学補償及び再ド
ーピングによる重合体の赤外線吸収スペクトルの変化を
示す。Aは当初の重合体、Bは化学補償した重合体、及
びCは再ドーピングした重合体を示す。Cのスペクトル
がAとほぼ完全に一致することが明らかであり、従つ
て、上記化学補償及び再ドーピングは重合体の骨格構造
の変化ではなく、重合体と化学補償試薬或いは電子受容
体との間の電子の授受である。このようにして、前駆体
が酸化重合の段階で電子受容体にてドーピングされ、か
くして、前駆体はドーパントを含んでいることが理解さ
れる。
前駆体の化学構造は、上記した赤外線吸収スペクトルの
ほか、前駆体の元素分析によつて確認され、また、前駆
体をアンモニア等で化学補償した重合体(以下、補償前
駆体という。)の元素分析からも確認され、実質的に、
前記繰返し単位からなる線状高分子重合体であり、π電
子共役系がドーパントを含むことによつて高導電性を有
するとみられる。
本発明による有機重合体のドーピング方法は、上記のよ
うなドーパントを含有する前駆体を化学補償した後、こ
れにpKaが3.0以下であるプロトン酸を電子受容性ドーパ
ントとして作用させるものである。pKaが3.0以下である
プロトン酸は、無機酸又は有機酸のいずれであつてもよ
く、具体例として、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、過塩素
酸等の無機酸、酒石酸、シユウ酸、p−トルエンスルホ
ン酸、ピクリン酸等を挙げることができるが、これらに
限定されるものではない。
ドーピングの具体的な方法の一例として、化学補償した
前駆体をpKaが3.0以下であるプロトン酸の所定濃度の溶
解中に浸漬し、必要に応じて攪拌する方法を挙げること
ができる。プロトン酸溶液の濃度は前駆体の繰返し単位
を当量として、当量以上あれば特に制限されないが、通
常、1〜5Nである。また、プロトン酸溶液のための溶
剤も、ドーパントを溶解させるものであれば任意であ
る。ドーピング反応も速い速度で進行する。前駆体をプ
ロトン酸溶液に浸漬すれば、直ちに前駆体表面は紫色か
ら黒緑色に変色する。しかし、前駆体の内部まで十分に
ドーパントを拡散さるためには、ある程度の時間を必要
とするので、通常、前駆体を数十分乃至数日間浸漬する
のが望ましい。尚、前駆体の形状は、粉末や成形物等、
いずれであつてもよい。
化学補償した前駆体は、電導度が低く、且つ、一般に紫
色を呈しているが、この前駆体に上記のようなプロトン
酸をドーピングすることにより、重合体は黒緑色に変色
すると共に、その電導度が向上する。しかし、pKaが3.0
よりも大きいプロトン酸の場合には、重合体は変色せ
ず、電導度も変わらないので、ドーピングが起こらない
ことが理解される。
本発明の方法によつて前駆体が新たにドーパントを有す
ることは、前駆体又は酸化重合の段階で既にドーピング
された前駆体と、新たにドーピングされた有機重合体の
赤外線吸収スペクトルを比較することによつて確認され
る。
(発明の効果) 以上のように、アニリン又はその誘導体の酸化重合によ
つて得られる導電性前駆体は、その酸化重合の段階で用
いたプロトン酸によつて既にドーピングされているが、
本発明の方法によれば、この前駆体を化学補償した後、
pKaが3.0以下であるプロトン酸を電子受容性ドーパント
として作用させることにより、これらプロトン酸を新た
にドーパントとして有せしめることができ、且つ、ドー
パントを選択することによつて、得られる導電性有機重
合体の電導度を制御することができる。
従つて、本発明の方法は、特に、酸化電位の低い有機酸
をドーパントとして有する導電性有機重合体の製造のた
めに有用である。
また、アニリン又はその誘導体の酸化重合によつて得ら
れるドーパントを含有する有機重合体は、本来、高導電
性あり、且つ、安定性にすぐれるが、本発明の方法によ
つて得られる新たなドーパントを有する導電性有機重合
体もまた、高導電性であると共に、非常に安定である。
(実施例) 以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこ
れら実施例により何ら限定されるものではない。
実施例 (1)前駆体の製造 300ml容量のフラスコ中に水45gを入れ、濃塩酸4
mlを加え、更にアニリン5g(0.0537モル)を溶解さ
せ、アニリン塩酸塩水溶液を調製し、氷水でフラスコを
冷却した。
別に、水28.8gに濃硫酸4.61g(0.047モル)を加え、
更に重クロム酸カリウム1.84g(0.00625モル)を溶解
させた酸化剤水溶液(プロトン酸/重クロム酸カリウム
モル比7.5)を調製し、これを氷水で冷却した上記アニ
リンの塩酸塩水溶液中に攪拌下、滴下ろうとから30分
間を要して滴下した。滴下開始後、最初の2〜3分間は
溶液が黄色に着色したのみであつたが、その後、速やか
に緑色固体が析出し、反応液は黒緑色を呈した。
滴下終了後、更に30分間攪拌し、この後、反応混合物
をアセトン400ml中に投じ、2時間攪拌し、次いで、
重合体を濾別した。得られた重合体を蒸留水中で攪拌洗
滌し、濾別し、このようにして濾液が中性になるまで洗
滌を繰り返した。次いで、濾別した重合体をアセトンに
より濾液が着色しなくなるまで洗滌を繰り返した。濾別
した重合体を五酸化リン上、室温で10時間真空乾燥
し、前駆体を緑色粉末として得た。
(2)前駆体の物性 上で得た前駆体を室温において濃度97%の濃硫酸に加
え、攪拌して、その溶解度を調べたところ、溶解量は1.
2重量%であつた。また、濃度0.5g/dlとしたこの重合
体の97%濃硫酸溶液の温度30℃における対数粘度は
0.46であつた。比較のために、エメラルデイン及びダイ
ヤモンド・ブラツクの同じ条件下での粘度はそれぞれ0.
02及び0.005であつた。
更に、上記前駆体及びエメラルデインについての空気中
における熱重量分析の結果を第5図に示す。昇温速度は
10℃/分である。
次に、上で得た前駆体粉末約120mgを瑪瑙製乳鉢で粉
砕した後、赤外分光光度計用錠剤成形器にて圧力600
0kg/cm2で直径13mmのデイスクに加圧成形した。幅
約1mmの銅箔4本を銀ペースト又はグラフアイトペース
トでデイスクの四隅に接着し、空気中でフアン・デル・
ポウ法に従つて測定した結果、電導度は0.40S/cmであ
つた。この重合体成形物は、10-2Torrの真空中で測定
しても、ほぼ同じ電導度を示した。このデイスクを4か
月間空気中に放置したが、電導度は実質的に変化しなか
つた。
(3)前駆体の赤外線吸収スペクトル 上で得た前駆体の赤外線吸収スペクトルを第1図に示
す。比較のために、エメラルデイン及び市販ダイヤモン
ド・ブラツクの赤外線吸収スペクトルをそれぞれ第2図
及び第3図に示す。尚、エメラルデインはA.G.Greenら
の方法によつて調製した(A.G.Green et al.,J.Chem.So
c.,97,2388(1910))。
前駆体の赤外線吸収スペクトルは、エメラルデインのそ
れと類似するが、同時に大きい差違もある。即ち、エメ
ラルデインには一置換ベンゼンに基づくC−H面外変角
振動による690cm-1及び740cm-1の明瞭な吸収が認
められるが、前駆体においては、これらの吸収は殆ど認
められず、代わりにパラ置換ベンゼンを示す800cm-1
の吸収が強く認められる。これはエメラルデインが低分
子量体であるために、分子末端の一置換ベンゼンに基づ
く吸収が相対的に強く現われるのに対して、前駆体は高
分子量体であるために、高分子鎖をなすパラ置換ベンゼ
ンに基づく吸収が相対的に強く現われるからである。こ
れに対して、アニリンブラツクの赤外線吸収スペクトル
は本発明による重合体及びエメラルデインのいずれとも
顕著に相違し、特に、3200〜3400cm-1付近の広
幅の吸収、1680cm-1にあるキノン性カルボニル基と
認められる吸収、1200〜1300cm-1のC−N伸縮
振動領域、600cm-1以下の領域等において異なること
が明らかである。
前駆体における赤外線吸収スペクトルの帰属は次のとお
りである。
1610cm-1(シヨルダー、C=N伸縮振動) 1570、1480cm-1(ベンゼン環C−C伸縮振動) 1300、1240cm-1(C−N伸縮振動) 1120cm-1(ドーパントに基づく吸収。ドーパントの
種類によらず、ほぼ同じ位置に吸収を有する。) 800cm-1(パラ置換ベンゼンC−H面外片角振動) 740、690cm-1(一置換ベンゼンC−H面外変角振
動) また、上記前駆体をアンモニアにて化学補償したときの
赤外線吸収スペクトルを第4図(B)に示し、これを5
N硫酸で再びドーピングした後の赤外線吸収スペクトル
を第4図(C)に示す。この再ドーピング後のスペクト
ルは第4図(A)に示す当初のそれとほぼ完全に同じで
あり、更に、電導度もアンモニア補償前と同じである。
また、電導度の変化は、補償前(A)は0.40S/cm、補
償後(B)は1.6×10-8S/cm、再ドーピング後
(C)は0.31S/cmであつた。従つて、本発明による重
合体は、その酸化重合の段階で用いたプロトン酸によつ
て既にドーピングされていることが示される。
(4)前駆体の化学構造 上で得た前駆体の元素分析値を示す。尚、重合体を水洗
及びアセトン洗滌によつて精製しても、元素分析後に無
水酸化クロム(Cr2O3)の緑色粉末が残渣として残ること
が認められるので、実測元素分析値と共に、その合計を
100としたときのそれぞれの換算値を併せて示す。換
算値が理論値と一致することが認められる。
また、アンモニアにて化学補償した重合体についても結
果を示す。
(a)硫酸をドーパントとして含む重合体 C12H8N2(H2SO4)0.58 尚、理論式における硫酸量は、イオウの実測値から算出
し、この硫酸量に基づいて理論値における酸素量を算出
した。また、測定値における酸素量は、イオウの測定値
から硫酸量を算出し、この硫酸量から算出した。
(b)補償重合体 C12H8N2 (5)前駆体のドーピング (1)で得た前駆体を細かく粉砕し、これをpH14以上の
アンモニア水中に懸濁させ、30分間攪拌し、アンモニ
ア水のpHが14以上であることを確認した後、重合体を
濾別し、濾液が完全に中性になるまで蒸留水にて洗浄
し、この後、室温で8時間乾燥して、化学補償した前駆
体を得た。この化学補償前駆体は、紫色を呈し、前記と
同様にして成形した成形体の電導度は、1.6×10-8
/cmであつた。
この化学補償された前駆体を所定濃度のプロトン酸溶液
中に懸濁させ、室温で30分間攪拌して、ドーピングを
行なつた。用いたプロトン酸、そのpKa値、及び得られ
た新たなドーパントを有する 導電性有機重合体の電導度を表に示す。また、ピクリン
酸をドーピングして得た導電性有機重合体の赤外線吸収
スペクトルを第6図に示す。
【図面の簡単な説明】
第1図は前駆体の赤外線吸収スペクトル、第2図及び第
3図はそれぞれエメラルデイン及びアニリン・ブラツク
の赤外線吸収スペクトル、第4図は前駆体を化学補償し
たときの赤外線吸収スペクトルの変化を示す。第5図は
前駆体及びエメラルデインの加熱による重量残存率を示
すグラフである。 第6図は本発明の方法に従つて、前駆体にピクリン酸を
ドーピングして得た導電性有機重合体の赤外線吸収スペ
クトルを示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特公 平3−30618(JP,B2) 英国特許1216549(GB,A)

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アニリン若しくはその誘導体の酸化重合に
    よつて得られる一般式 (但し、Rは水素又はアルキル基を示す。) で表わされるキノンジイミン構造を主たる繰返し単位と
    して有する実質的に線状の有機重合体であつて、上記酸
    化重合時にプロトン酸によつてドーピングされた導電性
    有機重合体を塩基にて処理した後、pKaが3.0以下である
    プロトン酸を電子受容性ドーパントとして作用させるこ
    とを特徴とする有機重合体のドーピング方法。
  2. 【請求項2】有機重合体の0.5g/dl濃硫酸溶液が30
    ℃において0.10以上の対数粘度を有することを特徴とす
    る特許請求の範囲第1項記載の有機重合体のドーピング
    方法。
  3. 【請求項3】塩基がアンモニアであることを特徴とする
    特許請求の範囲第1項記載の有機重合体のドーピング方
    法。
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