JPH05479B2 - - Google Patents

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JPH05479B2
JPH05479B2 JP58252135A JP25213583A JPH05479B2 JP H05479 B2 JPH05479 B2 JP H05479B2 JP 58252135 A JP58252135 A JP 58252135A JP 25213583 A JP25213583 A JP 25213583A JP H05479 B2 JPH05479 B2 JP H05479B2
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Japan
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aniline
porous membrane
polymer
conductive
conductivity
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JP58252135A
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Shohei Tamura
Sadamitsu Sasaki
Takeshi Sasaki
Takashi Ichinose
Jun Nakazawa
Keiji Nakamoto
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Nitto Denko Corp
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Nitto Denko Corp
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Priority to EP84116451A priority patent/EP0152632B1/en
Priority to US06/688,119 priority patent/US4556623A/en
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Publication of JPH05479B2 publication Critical patent/JPH05479B2/ja
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  • Coating Of Shaped Articles Made Of Macromolecular Substances (AREA)
  • Manufacture Of Porous Articles, And Recovery And Treatment Of Waste Products (AREA)
  • Laminated Bodies (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は導電性多孔質膜の製造方法に関する。 導電性の不定形炭素や黒鉛、金属粉末等をゴム
や樹脂と混合し、これを押出、圧縮、圧延等の成
形方法により、また、ゴムや樹脂シートの表面に
導電性金属を真空蒸着或いはスパツタ蒸着して、
導電性を有するシートを得ることは従来より知ら
れている。 しかし、このようにして得られる導電性シート
は、前者の場合は、ゴムや樹脂と導電性物質との
混合物をシートに成形し得るためには、含有され
る導電性物質の量に自ずから限界があるため、十
分な導電性を得ることは一般に困難である。ま
た、一方において、従来より樹脂を水混和性の有
機溶剤に溶解した樹脂溶液を適宜の基材上に流延
塗布した後、水中に浸漬する所謂湿式法による多
孔質膜の製造方法が知られているが、樹脂溶液に
上記のように導電性物質を含有させる場合も、製
膜し得るためにはその含有量に限界があり、高導
電性の多孔質膜を得ることは困難である。後者の
場合は、表面に導電性を与えることはできても、
シートは厚さ方向には通常、絶縁性であり、しか
も、可撓性導電性を得ようとすれば、シートの可
撓性を保持するために導電性金属の蒸着厚みが限
定されるので、導電性もまたある範囲内に限定さ
れる。 本発明者らは導電性樹脂シートにおける上記し
た問題を解決し、樹脂シート、特に多孔質膜に導
電性を付与する方法について鋭意研究した結果、
アニリンの所定条件下での化学酸化剤による酸化
重合体及び電解酸化による重合体が特異的に安定
で高い導電性を有し、多孔質膜に直接にこれら重
合体を析出させることにより、高導電性の多孔質
膜を得ることができることを見出した。 アニリンの酸化重合体のあるものについては、
例えば、アニリンブラツクに関連して古くより知
られている。特に、アニリンブラツク生成の中間
体として、式()で表わされるアニリンの8量
体がエメラルデイン(emeraldine)として確認
されており(A.G.Green、et、al.、J.Chem.Soc.、
972388(1910);101、1117(1912))、これは80%酢
酸、冷ピリジン及びN,N−ジメチルホルムアミ
ドに可溶性である。また、このエメラルデインは
アンモニア性媒体中で酸化されて、式()で表
わされるニグラニリン(nigraniline)を生成し、
これもエメラルデインと類似した溶解特性 を有することが知られている。 更に、近年になつて、R.Buvetらによつてこの
エメラルデインの硫酸塩が高い導電性を有するこ
とが見い出されている(J.Polymer Sci.、C、
16、2931;2943(1967);22、1187(1969))。 一方、アニリンの電解酸化によりエメラルデイ
ン類似の有機物質を得ることができることも既に
知られている(D.M.Mohilner et al.、J.Amer.
Chem.Soc.、84、3618(1962))。即ち、これによ
れば、アニリンの硫酸水溶液を白金電極を用い、
水の電気分解を避けるために、標準カロメル電極
(以下、SCEという。)に対して+0.8Vの酸化電
位にて電解酸化重合し、80%酢酸、ピリジン及び
N,N−ジメチルホルムアミドに可溶性である物
質が得られる。 そのほか、Diazら(J.Electroanal.Chem.、
111、(1980))、小山ら(高分子学会予稿集、30
(7)、1524(1981))もアニリンの電解重合を試みて
いるが、いずれも高分子被覆化学修飾電極を狙つ
たものであり、電解はSCEに対して1V以下の電
位で行なつている。 尚、従来より既に種々の導電性有機重合体が知
られているが、一般的な傾向として安定性に劣
る。例えば、ポリアセチレンは理論的には興味深
い導電性有機重合体であるが、反面、極めて酸化
を受けやすく、空気中で容易に酸化劣化して性質
が大幅に変化する。ドーピングされた状態では一
層酸化に対して敏感であり、空気中の僅かな湿気
によつても電導度が急激に減少する。この傾向は
n型半導体に特に著しい。 本発明者らは、高導電性で、しかも安定なアニ
リン重合体を得るために、アニリンの酸化重合に
関する研究を鋭意重ねた結果、化学酸化剤による
アニリンの酸化重合の反応条件を選択することに
より、また、SCEに対して+1Vよりも高い電解
電位にて所定の電流密度でアニリンを電解酸化重
合することにより、上記エメラルデインよりも高
分子量であつて、且つ、既にその酸化重合段階で
ドーピングされているために、新たなドーピング
操作を要せずして安定で且つ高導電性を有する重
合体を容易に得ることができることを見出した。 本発明者らはこのような知見に基づき、導電性
多孔質膜の製造について鋭意研究した結果、先
ず、多孔質膜に直接に化学酸化剤による導電性ア
ニリン重合体を析出させて、多孔質膜に予め導電
性を付与した後、この多孔質膜を陽極として更に
アニリンの電解酸化重合体を多孔質膜に析出させ
ることにより、非常に高導電性であつて、多孔質
膜が可撓性を有する場合は、その可撓性を保持し
た導電性多孔質膜を容易に得ることができること
を見出して、本発明を完成したものである。 本発明による導電性多孔質膜の製造方法は、ア
ニリン又はアニリン水溶性塩を含浸させた多孔質
膜をプロトン酸と酸化剤とを含有する反応媒体と
接触させ、アニリンを酸化重合させて上記多孔質
膜に析出させ、この多孔質膜に導電性を付与する
第1工程と、アニリンとアニリンに対して当量以
上のプロトン酸を含有するアニリン溶液中に上記
多孔質膜を陽極として浸漬し、電解電位を標準カ
ロメル電極に対して+1V以上、電流密度を0.01
mA/cm2乃至1A/cm2として、アニリンを電解酸
化重合して、上記多孔質膜に導電性アニリン重合
体を析出させる第2工程とからなることを特徴と
する。 先ず、本発明において、多孔質膜に化学酸化剤
によるアニリンの導電性重合体を析出させる第1
工程について説明する。 第1工程において、化学酸化剤によるアニリン
の酸化重合体を析出させるために用いる多孔質膜
は、アニリン、アニリン塩又はこれらの溶液を含
浸し得る程度に多孔質であると共に、これらに対
して濡れ性を有することが必要である。このた
め、アニリンやその水溶性塩の溶液を用いるとき
は、多孔質膜がこれらに濡れ性を有するように溶
剤を選択してもよいが、また、多孔質膜をスパツ
タエツチング処理、紫外線や電子線の照射、コロ
ナ放電処理、アルカリ金属処理等の表面処理を施
し、用いるアニリン溶液に対して濡れ性を付与す
ることもできる。 例えば、アニリンに対して良好な濡れ性を有す
る多孔質膜の場合は、アニリン又はその有機溶液
を直接に含浸させてもよい。また、多孔質膜が親
水性である場合には、アニリン水溶性塩の水溶液
を多孔質膜に含浸させればよい。かかるアニリン
の親水性塩としては、アニリンのプロトン酸塩が
好適であり、具体例として、例えば、塩酸アニリ
ン、硫酸アニリン、過塩素酸アニリン、硝酸アニ
リン、臭化水素酸アニリン、ホウフツ化水素酸ア
ニリン、リンフツ化水素酸アニリン等を挙げるこ
とができる。しかし、ポリテトラフルオロエチレ
ンからなる多孔質膜のように、アニリンに対して
も、アニリン塩水溶液に対しても良好な濡れ性を
有しない場合は、例えば、ポリテトラフルオロエ
チレンに対して親和性を有する有機溶剤、例え
ば、エタノール等にアニリン又はその塩を溶解さ
せ、これを多孔質膜に含浸させればよい。尚、ア
ニリン又はその塩の溶液を多孔質膜に含浸させた
場合、溶剤が酸化剤により酸化されるものである
ときは、上記含浸後の多孔質膜を乾燥し、溶剤を
除去するのが望ましい。 用いる多孔質膜の素材は特に制限されず、得ら
れる導電性多孔質膜の用途によつて適宜に選択さ
れるが、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体、
セルロース誘導体、エチレン−ビニルアルコール
共重合体、ポリテトラフルオロエチレン及びポリ
フツ化ビニリデン等のフツ素樹脂、ポリスルホ
ン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリア
ミド等を挙げることができる。 本発明において、特に好ましい第1工程をなす
方法は、アニリン又はアニリン水溶性塩を多孔質
膜に含浸させ、これをプロトン酸含有反応媒体中
で酸化剤で酸化重合させてアニリン酸化重合体を
上記多孔質膜に析出させるに際して、上記酸化剤
を含む反応媒体におけるプロトン酸/重クロム酸
カリウムモル比を1.2以上として、電導度が10-6
以上である導電性多孔質膜を得ることを特徴とす
る。 従つて、上記第1工程においては、アニリン又
はアニリン水溶性塩が含浸された多孔質膜がプロ
トン酸と酸化剤とを含有する酸化剤水溶液中に浸
漬され、酸化剤によりアニリンが酸化重合して多
孔質膜中に導電性アニリン重合体を形成するの
で、多孔質膜の微孔を形成する壁体表面を含む多
孔性膜表面に導電性アニリン重合体が析出し、全
体として導電性の多孔質膜を与える。 用いる酸化剤は特に制限されるものではない
が、酸化クロム()や、重クロム酸カリウム、
重クロム酸ナトリウム等の重クロム酸塩が好適で
あり、特に、重クロム酸カリウムが最適である。
しかし、クロム酸、クロム酸塩、酢酸クロミル等
のクロム系酸化剤や過マンガン酸カリウムのよう
なマンガン系酸化剤も必要に応じて用いることが
できる。また、プロトン酸としては、硫酸、塩
酸、臭化水素酸、テトラフロオロホウ酸
(HBF4)、ヘキサフルオロリン酸(HPF6)等が
用いられるが、特に硫酸が好適である。アニリン
水溶性塩を形成するために鉱酸を用いるとき、こ
の鉱酸は上記プロトン酸と同じでも、異なつても
よい。 反応媒体としては水、水混和性有機溶剤及び水
非混和性有機溶剤の1種又は2種以上の混合物を
用いることができるが、アニリン水溶性塩が用い
られるときは、反応媒体には通常、アニリン水溶
性塩を溶解する水、水混和性有機溶剤又はこれら
の混合物が用いられ、また、アニリン自体が用い
られるときは、反応媒体としては、アニリンを溶
解する水混和性有機溶剤又は水非混和性有機溶剤
が用いられる。尚、上記有機溶剤はいずれも用い
る酸化剤によつて酸化されないことが必要であ
る。例えば、水混和性有機溶剤としては、アセト
ン、テトラヒドロフラン、酢酸等のケトン類、エ
ーテル類又は有機酸類が用いられ、また、水非混
和性有機溶剤としては四塩化炭素、炭化水素等が
用いられる。 尚、酸化剤水溶液におけるプロトン酸の濃度は
特に制限されるものではないが、通常、1〜10N
の範囲である。但し、第1工程においては、プロ
トン酸を予め多孔質膜にアニリンやアニリン水溶
性塩と共に含浸させることを妨げるものではな
い。 第1工程において、多孔質膜に導電性のアニリ
ン酸化重合体を析出させるための酸化重合の反応
温度は、溶剤の沸点以下であれば特に制限されな
いが、反応温度が高温になるほど、得られる導電
性多孔質膜の導電性が小さくなる傾向があるの
で、高い導電性を有する多孔質膜を得る観点から
は常温以下が好ましい。多孔質膜を酸化剤水溶液
と接触させると、通常、重合体の析出反応は直ち
に終了する。次いで、重合体の析出した多孔質膜
を水中又は有機溶剤中に投入し、濾液が中性にな
るまで水洗した後、アセトン等の有機溶剤にてこ
れが着色しなくなるまで洗滌し、乾燥して、第1
工程による導電性を付与した多孔質膜を得る。 必要に応じて、この導電性多孔質膜に再度、ア
ニリン又はアニリン水溶性塩を含浸させ、これを
プロトン酸含有反応媒体中で酸化剤で酸化重合さ
せて導電性アニリン重合体を多孔質膜に析出さ
せ、洗滌、乾燥する工程を繰り返してもよい。ま
た、得られた導電性多孔質膜をロール圧延等によ
つて加圧圧縮し、導電性アニリン重合体を膜に圧
着することができる。このようなロール圧延はま
た、多孔質膜の膜厚や微孔孔径を調整するのにも
役立つ。更に、多孔質膜に導電性アニリン重合体
を析出させた後、ロール圧延し、これに再び導電
性重合体を析出させる工程を繰り返してもよい。 本発明の方法において、上記第1工程により得
られる導電性多孔質膜の導電性は、アニリンの酸
化重合が行なわれるプロトン酸と酸化剤とを含有
する反応媒体の組成に密接に関連しており、多孔
質膜に高導電性の酸化重合体を析出させるために
は、上記反応媒体の組成を本発明に従つて最適に
選択することが必要である。電導度が10-6S/cm
以上の高導電性の多孔質膜を得るためには、反応
の行なわれる反応媒体におけるプロトン酸/重ク
ロム酸カリウムモル比を1.2、好ましくは2以上
とすることが必要である。通常、このような条件
下での酸化重合によつて電導度が10-6〜101S/cm
である導電性多孔質膜を得ることができる。 本発明の方法においては、第1工程において、
このようにアニリンの酸化重合が行なわれる反応
媒体中におけるプロトン酸/重クロム酸カリウム
モル比が一定であれば、用いる多孔質膜が同一で
あれば、得られる導電性多孔質膜の導電性は実質
的に同じである。即ち、再現性よく所定の導電性
を有する多孔質膜を得ることができる。他方、ア
ニリンに対する重クロム酸カリウムの量は、多孔
質膜において析出される重合体の収率を決定す
る。しかし、重合体の導電性は、用いる重クロム
酸カリウムの量によつては実質的に影響を受けな
い。従つて、所定のプロトン酸/重クロム酸カリ
ウムモル比の酸化剤水溶液を用い、且つ、重クロ
ム酸カリウムをアニリンに対して当量若しくはそ
れ以上用いるとき、所定の導電性を有する多孔質
膜を安定して得ることができる。 上記第1工程において得られる導電性多孔質膜
は、形成された導電性アニリン重合体によつて、
通常、緑色乃至黒緑色を呈し、一般に導電性が高
いほど、鮮やかな緑色を呈している。しかし、こ
の多孔質膜をロール加圧すると、通常、光沢のあ
る青色を示す。 第1工程によつて多孔質膜に形成されたアニリ
ン重合体は、導電性多孔質膜の電導度が10-6S/
cm以上であるときは、その重合体は水及び殆どの
有機溶剤に不溶性であり、特に、N,N−ジメチ
ルホルムアミドにも実質的に不溶性であるが、濃
硫酸には可溶性である。このような重合体は、前
記したように、エメラルデインが80%酢酸、冷ピ
リジン及びN,N−ジメチルホルムアミドに可溶
性であるのと著しい対照をなし、高分子量重合体
であることが確認される。更に、示差熱分析の結
果からも高分子量重合体であることが確認され
る。 本発明の方法において、第1工程により多孔質
膜に形成されるアニリン重合体の構造は未だ確定
されていないが、多孔質膜を存在させないでアニ
リンを上記と同じ条件下で酸化剤により酸化重合
して得られた重合体についての赤外線吸収スペク
トルはエメラルデインのそれに類似する一方、高
分子量であると共に高導電性を有するので、アニ
リンが頭尾結合で連続して重合体鎖を形成する次
式のような実質的に線状のπ電子共役系重合体で
あるとみられる。 以上のように、前記条件下で第1工程によつて
多孔質膜に析出される重合体は、高導電性を有す
るが、これをアンモニアで補償することによつて
導電性が大幅に減少し、再度硫酸でドーピングす
ることによりほぼ当初の高導電性を回復すること
から、重合体は、既にその酸化重合の段階でプロ
トン酸によりドーピングされていることが確認さ
れる。また、重合体をアンモニアで補償した後、
再度硫酸でドーピングした重合体の赤外線吸収ス
ペクトルは、アンモニア補償前の重合体のそれと
実質的に一致することからも、重合体がプロトン
酸によりドーピングされていることが確認され
る。更に、このように重合体がアンモニアで補償
される事実及び熱起電力の符号から、この重合体
はp型である。 以上のように、本発明に従つて、第1工程にお
いてアニリンの酸化重合によつて多孔質膜に析出
された導電性有機重合体は、その重合段階で既に
プロトン酸によつてドーピングされているため
に、新たなドーピング処理を要せずして高導電性
を有し、しかも、長期間にわたつて空気中に放置
しても、その導電性は何ら変化せず、従来より知
られているドーピングした導電性有機重合体に比
較して、特異的に高い安定性を有している。 本発明の方法によれば、上記のようにして第1
工程で得られる導電性多孔質膜を陽極として、こ
れに第2工程としての更に電解酸化による導電性
アニリン重合体を析出させることにより、一層安
定で高導電性の多孔質膜を得ることができる。
尚、通常の白金電極等の陽極に第1工程で得られ
る導電性多孔質膜を密着させ、これを陽極として
アニリン溶液中に浸漬し、アニリンを電解酸化し
て、多孔質膜にアニリン重合体を析出させること
もできる。 第2工程に付す導電性多孔質膜も、これをアニ
リン溶液中に陽極として浸漬したとき、アニリン
溶液が膜を透過し得る程度に多孔質であると共
に、アニリン溶液に対して濡れ性を有することが
必要であるが、第1工程において化学酸化による
アニリン重合体を析出させた多孔質膜は、通常、
アニリン水溶液又は後述するアニリン溶液に対し
て良好な濡れ性を有する。 第2工程であるアニリンの電解酸化において用
いるプロトン酸は、酸化電位が第2工程おける電
解酸化重合の酸化電位よりも高いプロトン酸であ
ることが好ましく、従つて、具体的には、塩酸、
臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、テトラフル
オロホウ酸(HBF4)、ヘキサフルオロリン酸
(HPF6)等が好ましく用いられる。 本発明に従つて10-3S/cm以上の高電導度を有
する導電性多孔質膜を得るためには、上記のプロ
トン酸はアニリンの当量以上、通常、1〜50倍当
量の範囲で用いると共に、アニリン溶液を標準カ
ロメル電極に対して+1Vよりも高い電解電位に
て電解酸化重合させることが必要であり、また、
電流密度は0.01mA/cm2乃至1A/cm2であること
が必要である。酸化電解電位が+1V以下である
とき、又は電流密度が上記範囲外にあるとき、多
孔質膜に形成される重合体が低分子量であつて、
且つ、導電性も低いために、高導電性の多孔質膜
を得ることができない。 また、アニリン溶液におけるアニリン濃度は1
重量%以上であることが望ましい。アニリン濃度
が1重量%よりも小さいときも、生成する重合体
は低分子量であつて、導電性も低い。但し、アニ
リン濃度の上限は特に制限されないが、通常は50
重量%までが適当である。 アニリン溶液のための溶剤としては、上記プロ
トン酸及びアニリンを共に溶解し得ると共に、そ
の分解電位が本発明の方法での条件下のアニリン
の電解酸化重合時の酸化電位において安定である
溶剤が好ましく、従つて、具体的には、メタノー
ル、エタノール等の脂肪族低級アルコール、アセ
トニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類、メ
チルエチルケトン等のケトン類、N,N−ジメチ
ルホルムアミド等のアミド類が好適に用いられ
る。水はその分解電位が1.23Vであり、場合によ
つては、本発明における電解酸化電位よりも高い
が、本発明においては、水を溶剤として用いると
きも、アニリンの酸化電解電位を+1Vよりも高
くすることにより、高分子量で高導電性のアニリ
ン酸化重合体を多孔質膜に生成させることができ
る。 先に説明したように、Mohlinerらは水の電気
分解を避けるために、SCEに対して+0.8Vの酸
化電位でアニリンの電解酸化を行なつているが、
本発明によれば、+1Vよりも高い電解電位、好ま
しくは2〜10Vの電解電位にて電解酸化を行なう
ことにより、エメラルデインよりも遥かに高分子
量で高導電性のアニリン重合体を多孔質膜に析出
させることができるのである。 第2工程において、多孔質膜に高導電性のアニ
リン電解酸化重合体を析出させるためには、ま
た、前記したように、電解酸化における電流密度
も重要である。電流密度が0.01mA/cm2よりも小
さいときは、多孔質膜に生成する重合体がN−メ
チル−2−ピロリドンや、N,N−ジメチルホル
ムアミドに溶解することから、低分子量の重合体
であるとみられ、また、かかる重合体はその導電
性も小さく、従つて、高導電性多孔質膜を得るこ
とができない。 第2工程の反応においては、アニリン溶液は上
記したプロトン酸以外の支持電解質を含有してい
てもよい。具体例としては例えば過塩素酸リチウ
ム、過塩素酸ナトリウム等の過塩素酸金属塩や、
過塩素酸テトラブチルアンモニウム等の有機塩を
挙げることができる。また、上記以外にも例えば
硝酸塩、硫酸塩、塩酸塩、テトラフルオロホウ酸
塩、ヘキサフルオロリン酸塩等のような塩類も支
持電解質として使用することもできる。 また、第2工程においては、必要に応じて、ア
ニリンとアニリンに対して当量以上のプロトン酸
を含有するアニリン溶液中に、上記のようにして
得られた導電性多孔質膜を再度、陽極として浸漬
し、アニリンを電解酸化重合して、この多孔質膜
に導電性アニリン重合体を析出させてもよい。ま
た、前記したと同じ目的のために、得られた導電
性多孔質膜にロール圧延を施してもよい。更に、
多孔質膜に導電性アニリン重合体を析出させた
後、ロール圧延し、これに再び導電性重合体を析
出させる工程を繰り返してもよい。 このようにして第1工程及び第2工程を経て得
られる本発明による導電性多孔質膜は、形成され
た導電性アニリン重合体によつて、通常、緑色乃
至黒緑色を呈し、一般に導電性が高いほど、鮮や
かな緑色を呈している。しかし、この多孔質膜を
ロール加圧すると、通常、光沢のある青色を示
す。 第2工程の反応によつて多孔質膜に形成される
アニリン重合体も、化学酸化によるアニリン重合
体と同様に、既にその電解酸化重合の段階で用い
たプロトン酸によつてドーピングされており、か
くして本発明に従つて得られる導電性多孔質膜
は、通常、10-3〜101S/cmの範囲の電導度を有す
る。 アニリンの電解酸化によつて多孔質膜に形成さ
れたアニリン重合体は、導電性多孔質膜の電導度
が10-3S/cm以上であるときは、その重合体は水
及び殆どの有機溶剤に不溶性であり、特に、濃硫
酸及びN,N−ジメチルホルムアミドやN−メチ
ル−2−ピロリドンにも実質的に不溶性である。
このような重合体は、前記したように、エメラル
デインが80%酢酸、冷ピリジン及びN,N−ジメ
チルホルムアミドに可溶性であるのと著しい対照
をなし、高分子量重合体であることが確認され
る。更に、濃硫酸に不溶性である重合体は、熱重
量分析結果からも高分子量重合体であることが確
認される。 アニリンの前記所定条件下での電解酸化によつ
て多孔質膜に形成されるアニリン重合体の構造も
未だ確定されていないが、多孔質膜を存在させな
いでアニリンを電解酸化重合して得られた重合体
についての赤外線吸収スペクトルはエメラルデイ
ンのそれに類似する一方、高分子量であると共に
高導電性を有するので、アニリンが頭尾結合で連
続して重合体鎖を形成する前記()式で表わさ
れるπ電子共役系重合体であるとみられる。 また、このアニリン重合体も、アンモニアで補
償することによつて導電性が大幅に減少し、再度
塩酸でドーピングすることによりほぼ当初の高導
電性を回復することから、既にその酸化重合の段
階でプロトン酸によりドーピングされていること
が確認される。また、重合体をアンモニアで補償
した後、再度塩酸でドーピングした重合体の赤外
線吸収スペクトルは、アンモニア補償前の重合体
のそれと実質的に一致することからも、重合体が
プロトン酸によりドーピングされていることが確
認される。更に、このように重合体がアンモニア
で補償される事実及び熱起電力の符号から、この
重合体はp型である。 以上のように、本発明に従つて、第1工程及び
第2工程を経て多孔質膜に折出された導電性アニ
リン酸化重合体は、そのいずれの重合段階でも既
にプロトン酸によつてドーピングされているため
に、新たなドーピング処理を要せずして高導電性
を有し、しかも、長期間にわたつて空気中に放置
しても、その導電性は何ら変化せず、従来より知
られているドーピングした導電性有機重合体に比
較して、特異的に高い安定性を有している。従つ
て、本発明による導電性多孔質膜は安定で、且つ
高導電性を有するので、例えば、電池正極材料や
エレクトロクロミツク・デイスプレイ素子対向極
用導電性複合材料電極、或いはドーピング、脱ド
ーピングを利用したイオンの膜分離システム等に
おける多孔質膜電極として好適に用いることがで
きる。 以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本
発明はこれら実施例により何ら限定されるもので
はない。 実施例 1 ポリテトラフルオロエチレンからなる多孔質膜
(ダイキン工業(株)製ポリフロンペーパー)を10重
量%塩酸アニリンのエタノール溶液に室温で30分
間浸漬した後、60℃で30分間乾燥させた後、重ク
ロム酸カリウムの硫酸酸性水溶液(重クロム酸カ
リウム/硫酸/水重量比=5/15/75、プロトン
酸/重クロム酸カリウムモル比=9.0)に25℃で
10分間浸漬し、アニリンを酸化重合させて、多孔
質膜に析出させた。 次いで、多孔質膜を水洗し、アセトンが無色透
明になるまでアセトンによる洗滌を繰り返した
後、60℃の温度で1時間乾燥し、5.5×10-3S/cm
の電導度を有する導電性多孔質膜を得た。尚、導
電性多孔質膜の電導度測定は四端子法によつた。
以下も同じである。 次に、アニリン塩酸塩10重量%の水溶液中に、
上記方法により得た導電性多孔質膜を陽極として
挿入し、一方、白金からなる陰極を陽極に接触し
ないように挿入した後、SCEに対する初期電解電
位+2V、定電流密度10mA/cm2にて1時間通電
して、多孔質膜にアニリン重合体を析出させた。
尚、電解重合をこのように定電流密度で行なう場
合、電解電位が漸次増大することはよく知られて
いるところであり、従つて、電解電位は上記のよ
うに初期電位で示されるのが普通である。 この後、膜を蒸留水中で撹拌洗滌し、アセトン
により洗滌し、五酸化リン上、室温で10時間真空
乾燥し、本発明による導電性多孔質膜を得た。こ
の膜は2.0×10-1S/cmの電導度を示した。 実施例 2 実施例1において、アニリンの電解酸化を定電
流密度1mA/cm2で行なつた以外は、実施例1と
全く同様にして導電性多孔質膜を得た。この膜は
2.0×10-1S/cmの電導度を示した。 実施例 3 実施例1において、同じポリテトラフルオロエ
チレンからなる多孔質膜にナトリウム金属処理を
5分間施し、この多孔質膜に塩酸アニリンの水溶
液を用いた以外は実施例1と全く同様にしてアニ
リンの化学酸化重合、次いで、アニリンの電解酸
化重合を行なつて、電導度9.6×10-1S/cmを有す
る導電性多孔質膜を得た。 実施例 4 実施例1において、多孔質ポリプロピレン膜
(ポリプラスチツク(株)製ジユラガード)を用いた
以外は実施例1と全く同様にして、2.8×10-2S/
cmの電導度を有する多孔質膜を得た。 実施例 5 実施例1において、多孔質ポリスルホン膜(日
東電気工業(株)製NTU−3100)を用いた以外は実
施例1と全く同様にして、1.7×10-1S/cmの電導
度を有する多孔質膜を得た。 実施例 6 実施例1において、多孔質ポリイミド膜(日東
電気工業(株)製)を用いると共に、重クロム酸カリ
ウムの硫酸酸性水溶液(重クロム酸カリウム/硫
酸/水重量比=10/25/80、プロトン酸/重クロ
ム酸カリウムモル比=7.5)を用いた以外は、実
施例1と全く同様にしてアニリンの酸化重合を行
ない、次いで、この膜に実施例1と同様にしてア
ニリンの電解酸化重合体を析出させて、2.5×
10-1S/cmの電導度を有する多孔質膜を得た。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 1 アニリン又はアニリン水溶性塩を含浸させた
    多孔質膜をプロトン酸と酸化剤とを含有する反応
    媒体と接触させ、アニリンを酸化重合させてて記
    多孔質膜に析出させ、この多孔質膜に導電性を付
    与する第1工程と、アニリンとアニリンに対して
    当量以上のプロトン酸を含有するアニリン溶液中
    に上記多孔質膜を陽極として浸漬し、電解電位を
    標準カロメル電極に対して+1V以上、電流密度
    を0.01mA/cm2乃至1A/cm2として、アニリンを
    電解酸化重合して、上記多孔質膜に導電性アニリ
    ン重合体を析出させる第2工程とからなることを
    特徴とする導電性多孔質膜の製造方法。
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