JPH062833B2 - 離型フイルム - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本発明は離型フイルムに関し、更に詳しくは離型性付与
被膜としてイソシアネートシラン化合物を出発物として
酸化ケイ素膜をポリエステルフイルム上に設けた、熱可
塑性樹脂シート又はフイルム成形溶離型フイルムに関す
る。

［従来技術］ 離型フイルムは粘着剤，接着剤よりなる粘着面を保護す
る目的，硬化性樹脂例えばウレタン樹脂，エポキシ樹
脂，不飽和ポリエステル樹脂等の硬化反応性，成形性を
保護する目的、或いは塩化ビニール樹脂，ポリアクリル
樹脂，ポリウレタン樹脂等の分散液又は溶解液を流延
し、均一なシート，フイルムを作成する目的等で用いら
れ、その量を拡大しつつある。

かかる離型フイルムとして、従来から(i)ポリエチレン
フイルム，ポリプロピレンフイルム，ポリビニルアルコ
ールフイルム，紙等或いは(ii)ポリエステルフイルムの
少くとも片面にビニルシロキサン基を有するシリコンオ
イルの硬化物よりなる皮膜を設けたものが用いられる。

しかしながら、前記(i)のものは耐熱性に劣り、乾燥，
硬化条件によっては使用が制限される。また前記(ii)の
ものはシリコンオイルの硬化反応が遅く、通常のフイル
ム加工条件では反応を完了させるところまでは行かず、
モノマーのシリコンオイルが被離形面へ転写し、後加工
に支障が生じたりまた、溶液型樹脂の場合、シリコンに
よりハジキ現象が生じ、離型後のシート又はフイルムに
重大な欠点が生じてくる。

［発明の目的］ 本発明の目的は、かか点を改善し、特に塩化ビニール樹
脂，ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂等熱可塑性樹脂の
水分散液又は溶剤溶解液を流延し、シート又はフイルム
状物質を作成する場合均一膜形成が可能で、熱変形が小
さく、耐久性及び離型性に優れた透明な離型フイルムを
提供することにある。

［発明の構成・効果］ 本発明の目的は、本発明によれば、第一に ポリエステルフイルムの片面もしくは両面にイソシアネ
ートシラン化合物を出発物とし酸化ケイ素膜を設けてな
る、流延法での熱可塑性樹脂シート又はフイルム成形に
用いる離型フイルム によって達成される。

本発明においてポリエステルフイルムは延伸フイルム、
特に二軸延伸フイルムが好ましく、またポリエステルと
しては芳香族ポリエステル，特にポリエチレンテレフタ
レートが好ましい。ポリエステルフイルムは、ポリマー
の製造段階で添加、或は析出させた滑剤、例えばクレ
ー，カオリン，シリカ，炭酸カルシュウム，アルカリ金
属−リン含有化合物等の量を調節することによって滑り
性，加工性などを調整することができる。更に二軸配向
されたポリエステルフイルムは、フイルム上にコーティ
ング等を実施する場合に要求される特性、例えば耐溶剤
性，耐熱性，機械的性質等にすぐれている利点を有す
る。

本発明においてポリエステルフイルムの片面もしくは両
面の上に設けられた酸化ケイ素膜はイソシアネートシラ
ン化合物の反応によつて形成され、三次元的に結合され
た酸化ケイ素膜である。この反応は、フイルム上に塗布
されたイソシアネートシラン化合物が該フイルムの上に
付着している水分、雰囲気中の水分等を利用して進行す
る。この反応は次式の如く進むと考えられる。

フイルム表面上の反応物は≡Si-O-の結合を有する酸化
ケイ素膜であって、この反応（加水分解反応）は室温な
いし１２０℃以下の温度で十分に進行すると共に、反応
副成物はガス状となり反応残渣もない利点がある。

イソシアネートシラン化合物としては、例えば次式で示
される化合物が挙げられる。 Si(NCO)₄ RnSi(NCO)_4-n ここで、上式中のRはメチル，エチル，フェニル等の如
き炭化水素基，メトキシ，エトキシ，フェノキシ等のオ
キシ炭化水素基等であり、ｎは１，２又は３である。

これらイソシアネートシラン化合物のうち、特にポリエ
ステルフイルムと酸化ケイ素膜の密着性の点から、イソ
シアネート基の多いメチルトリイソシアネートケイ素，
エトキシトリイソシアネートケイ素等が好ましい。

これらのシラン化合物は、通常エチルアルコール，イソ
プロピルアルコール，ｎ−ブタノール，酢酸エチル，ｎ
−ヘキサン，メチルエチルケトン等の如き有機溶剤に溶
解し、塗料として調合する。その際、塗料に、例えばγ
−アミノプロピルトリエトキシシラン，Ｎ−（β−アミ
ノ・エチル）−γ−アミノプロピルトリエトキシシラ
ン，γ−メルカプトプロピレントリメトキシシラン等の
如きシランカップリング剤、ジイソプロポキシビスアセ
チルアセトチタネート等の如きチタンカップリング剤等
を添加し、塗膜のレベリング効果、密着性効果を向上さ
せることができる。塗料での固形分濃度は、コーティン
グ方法にもよるが、数％であることが好ましい。

これらシラン化合物からなる有機溶剤系塗料をプラスチ
ックフイルム上にコーティングする方法としては、例え
ばバーコート法，ドクタープレート法，リバースコート
法，グラビアコート法等が利用できる。その際、塗布量
としては、塗液量（ウエット量）で5.0〜20.0ｇ／m²，
乾燥後の塗膜厚みが0.05〜0.5μｍ，特に0.1〜0.3μｍ
となる割合が好ましい。コート後の乾燥は80〜150℃，
ポリエステルフイルムの熱変形を出来るだけ小さくする
ために80〜120℃の温度下で行なうのが好ましい。この
乾燥処理においてイソシアネートシラン化合物の反応が
進み、酸化ケイ素膜が形成される。

本発明の離型フイルムは、耐熱性，耐久性，透明性，離
型性等にすぐれたフイルムであり、熱可塑性樹脂例えば
塩化ビニール樹脂，ポリアクリル樹脂，ポリウレタン樹
脂等のエマルジョンまたは溶剤系溶液を離型フイルム上
に流延し、加熱成形した後に剥離する場合、容易に剥離
しうるすぐれた離型特性を示す。

［実施例］ 以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明する。

なお、離型フイルムの性能を評価するため、以下の樹脂
含有塗料を離型フイルム上に流延し、フイルム形成を行
ない、次いで剥離を行った。

(1) 塩化ビニール含有エマルジョン 日本ゼオン（株）商品名“ゼオン−576”（固形分：55
％，溶剤：水）を塗布厚み（ドライ換算）15μｍとなる
様に流延し、120℃20分間の乾燥，硬化反応を行う。

(2) ポリウレタン溶解液 日本ポリウレタン（株）商品名“ニッポラン2301”（固
形分：３０％，溶剤：メチルエチルケトン溶解液）を塗
布厚み（ドライ換算）10μｍになる様に流延し、温度13
0℃で２分間乾燥する。

(3) ポリアクリル含有エマルジョン 東亜合成工業（株）商品名“アロンＡ−90”（固形分：
40％，溶剤：微量エチルセロリルプ含有水）を塗布厚み
（ドライ換算）10μｍになる様に流延し、温度130℃で
２０分間乾燥する。

比較例１及び２ 厚み100μｍのポリエステルフイルム（帝人（株）商品
名“Ｓ−100”）そのものを離型フイルムとして用いた
場合を比較例１とする。

上記ポリエステルフイルムの表面に、付加重合型シリコ
ン（信越化学（株）商品名“ＫＳ−772）100重量部に触
媒“ＰＬ−３”３重量部及びトルエン897重量部を混合
した塗料をドライ厚み0.1〜0.5μｍとなるように塗工
し、150℃、１分間の条件で乾燥硬化を行ったものを離
型フイルムとして用いた場合を比較例２とする。

これら離型フイルムの上に樹脂エマルジョンを流延した
ときの特性を表−１に示す。実施例１ テトライソシアネート・シラン（松本製薬工業（株）商
品名“オルガチックスＳＩ−400”）を10重量％含有す
る酢酸エチル塗液を、透明なポリエステルフイルム（帝
人（株）商品名“Ｓ−100”）の片面に乾燥後の塗布厚
みが0.2μｍになる様にバーコートにて塗工し、120℃で
30秒乾燥した。

得られたフイルムの表面（塗膜面）に樹脂エマルジョン
を流延し、乾燥後の外観，剥離後の外観，剥離力を測定
した。この結果を表−１に示す。

実施例２ エトキシシラントリイソシアネート（松本製薬工業
（株）商品名“オルガチックスＳＩ−720”）を10重量
％含有する酢酸エチル塗液90重量部にエチルシリケート
（日本コルコート（株）商品名“エチルシリケート2
8”）10重量％を含有するエタノール溶液10重量部を混
合撹拌して塗液を調製した。この塗液を透明なポリエス
テルフイルムの片面に乾燥後の塗布厚みが0.2μｍにな
る様にバーコートにて塗工し、120℃30秒間乾燥を行っ
た。得られたフイルムの離型特性を実施例１と同様に測
定した。この結果を表−１に示す。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】ポリエステルフイルムの片面もしくは両面
   にイソシアネートシラン化合物を出発物とした酸化ケイ
   素膜を設けてなる、流延法での熱可塑性樹脂シート又は
   フイルム成形に用いる離型フイルム。