JPH0617906A - ロックアップクラッチ付き流体伝動装置 - Google Patents

ロックアップクラッチ付き流体伝動装置

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JPH0617906A
JPH0617906A JP20058592A JP20058592A JPH0617906A JP H0617906 A JPH0617906 A JP H0617906A JP 20058592 A JP20058592 A JP 20058592A JP 20058592 A JP20058592 A JP 20058592A JP H0617906 A JPH0617906 A JP H0617906A
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friction
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damper mass
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 振動減衰特性およびこもり音の防止ならびに
しゃくりの防止の各効果に優れた流体伝動装置を提供す
る。 【構成】 ハウジング5に対して相対回転可能でかつロ
ックアップクラッチ11が選択的に係合するダンパーマ
ス12が、ハウジング5およびハウジング5と一体とな
って回転するセンタープレート30を含む駆動側部材に
対してダンパースプリング29を介して連結されること
によりダンパー機構13を構成し、かつ前記ダンパーマ
ス12が駆動側部材に対し所定角度以上相対回転した際
にダンパーマス12と駆動側部材との間で滑り摩擦力を
生じる摩擦機構31が設けられている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は車両用自動変速機にお
けるトルクコンバータなどのロックアップクラッチを備
えた流体伝動装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】周知のようにトルクコンバータなどの流
体伝動装置は、流体を介してトルクの伝達を行うから、
伝達効率が必ずしも良くはなく、そこで最近では、動力
の伝達効率を向上させて燃費を良くするために、トルク
コンバータにロックアップクラッチを内蔵することが広
く行われている。ロックアップクラッチは、トルクコン
バータにおける入力側の部材と出力側の部材とを、機械
的な手段で直接接続するものであるから、入力トルクの
変動に伴う振動をも伝達してしまう。そこで通常、ロッ
クアップクラッチにはダンパー機構を併用している。
【0003】従来一般には、タービンランナを取付けた
ハブなどの出力部材とロックアップクラッチとの間にダ
ンパー機構を設けているが、本出願人は、振動減衰特性
を向上させるために、回転慣性質量の大きいダンパーマ
スを、ダンパースプリングを介してハウジング等の入力
側(駆動側)の部材に連結し、そのダンパーマスに対し
てロックアップクラッチを係合させるよう構成した流体
伝動装置を、特願平3−309835号によって提案し
た。このような構成であれば、入力トルクの変動に対し
てダンパーマスが大きい慣性抵抗として作用するから、
入力トルクの変動をダンパースプリングによって吸収し
て振動を減衰させ、またこもり音の発生を防止すること
ができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上述した流体伝動装置
では、ダンパーマスによる慣性抵抗が大きいために、振
動減衰特性が優れるが、入力トルクの変動が大きい場
合、例えばアクセルを急にオンまたはオフした場合に
は、ダンパースプリングの撓み量すなわちダンパースプ
リングによって蓄えられる弾性エネルギー量が大きくな
ったり、ロックアップクラッチの解放時に弾性エネルギ
ーが急激に放出されたりする。したがってこのような場
合、ダンパースプリングが弾性エネルギーを放出するこ
とによって、ロックアップクラッチを介して自動変速機
に大きなトルクが入力される。その結果、自動変速機の
出力軸に波長の長いトルク変動が生じ、これが所謂“し
ゃくり”として体感され、車両の乗心地を悪化させる可
能性があった。
【0005】この発明は上記の事情を背景としてなされ
たもので、振動の減衰特性に優れるのみならず、しゃく
り現象を有効に防止することのできるロックアップクラ
ッチ付き流体伝動装置を提供することを目的とするもの
である。
【0006】
【課題を解決するための手段】この発明は、上記の目的
を達成するために、流体流を生じさせるポンプインペラ
の外殻と該外殻に一体的に連結されたフロントカバーと
によってハウジングが形成され、そのハウジング内に前
記ポンプインペラと対向してタービンランナが配置さ
れ、さらに前記ハウジングとタービンランナに一体の出
力部材との間で選択的にトルクの伝達を行うロックアッ
プクラッチが前記ハウジング内に設けられたロックアッ
プクラッチ付き流体伝動装置において、前記ハウジング
に対して相対回転可能でかつ前記ロックアップクラッチ
が選択的に係合する回転慣性質量体が、前記ハウジング
およびハウジングと一体となって回転する部材を含む駆
動側部材に対して弾性体を介して連結されることにより
ダンパー機構を構成し、かつ前記回転慣性質量体が駆動
側部材に対し所定角度以上相対回転した際に回転慣性質
量体と駆動側部材との間で滑り摩擦力を生じる摩擦機構
が設けられていることを特徴とするものである。
【0007】
【作用】この発明の伝動装置においても、ポンプインペ
ラとタービンランナとの間で流体を介してトルクの伝達
が行われる。ハウジングを含む駆動側部材に対する入力
トルクが変動すると、回転慣性質量体の慣性抵抗により
駆動側部材と回転慣性質量体との間で相対回転が生じ、
弾性体が弾性変形する。入力トルクの変動幅が小さく、
また周波数が高い場合には、上記のように回転慣性質量
体が大きい慣性抵抗を示すとともに、弾性体が撓んで振
動を吸収する。この場合、弾性体に蓄えられるエネルギ
ーが少ないから、弾性エネルギーが放出されても、しゃ
くり現象が生じず、あるいは問題となるほどのしゃくり
現象は生じない。
【0008】入力トルクの急激な増大や減少あるいはロ
ックアップクラッチの解放などに起因して、回転慣性質
量体と駆動側の部材との間で作用しているトルク(捩り
力)が急に変化すると、回転慣性質量体の駆動側部材に
対する相対回転角度が正方向あるいは負方向に大きくな
る。その相対回転角度が所定角度以上になると、摩擦機
構が作用して、回転慣性質量体と駆動側部材との間に滑
り摩擦力が生じる。したがって弾性体がその蓄積したエ
ネルギーを放出して、回転慣性質量体を相対回転させよ
うとする際に、その放出エネルギーの一部が、回転慣性
質量体と駆動側部材との間の摩擦によって消費される。
その結果、回転慣性質量体の正回転方向と逆回転方向と
の往復回転が早期に抑制され、この回転慣性質量体にロ
ックアップクラッチを係合させていれば、駆動系の波長
の長い振動であるしゃくりが防止される。
【0009】
【実施例】つぎにこの発明の実施例を図面を参照して説
明する。図1はこの発明の一実施例を示す断面図であっ
て、ポンプインペラ1のシェル2は、環状をなす延長部
材3を介してフロントカバー4に一体的に連結されてお
り、これらシェル2および延長部材3ならびにフロント
カバー4によってトルクコンバータハウジング5が形成
されている。このハウジング5の内部には、ポンプイン
ペラ1に対向してタービンランナ6が配置されており、
このタービンランナ6はその内周部で出力部材であるハ
ブ7にリベット8により取付けられている。さらにポン
プインペラ1とタービンランナ6との間で、かつそれら
の内周側の部分には、一方向クラッチ9のアウターレー
スにスプライン嵌合させたステータ10が配置されてい
る。そしてフロントカバー4の内面とタービンランナ6
との間に、ロックアップクラッチ11と回転慣性質量体
であるダンパーマス12を含むダンパー機構13とが配
置されている。
【0010】ロックアップクラッチ11は、タービンラ
ンナ6の背面(図1では左側面)に沿わせて湾曲させた
環状の板状部材であるロックアップピストン14とその
外周側の側面に取付けたライニング材15とから構成さ
れている。そのロックアップピストン14の内周部に
は、円筒部16が形成されるとともに、その円筒部16
の一端部には、トルク伝達のための係合歯として作用す
る複数の突起17が、円周方向において一定間隔をあ
け、かつ内周側に向けて突出するよう形成されている。
【0011】ロックアップピストン14は前記ハブ7
に、軸線方向へ摺動可能に嵌合されている。このハブ7
は、ロックアップピストン14の円筒部16を嵌合させ
るボス部18を有しており、ここに取付けたシールリン
グ19によってロックアップピストン14との間を液密
状態にシールするようになっている。またこのボス部1
8の一側面に、前記突起17と円周方向において係合す
る複数の突部20が形成されている。したがってこれら
の突起17と突部20とによって、ロックアップピスト
ン14とハブ7との間でトルクを伝達するようになって
いる。
【0012】ダンパーマス12は、外径が前記ロックア
ップピストン14とほぼ等しく、かつ内径がロックアッ
プピストン14よりも小さい全体としてほぼ環状をなす
主部材21と、これより内径が大きくて質量の小さい環
状のカバー部材22とから構成されている。これらの主
部材21とカバー部材22とは、互いに対向した状態に
リベット23によって連結されてダンパーマス12を構
成し、ロックアップピストン14とフロントカバー4の
内面との間に配置されている。このダンパーマス12
は、その主部材21の内周部を、フロントカバー4の内
面に突設した環状突部24の外周面に回転可能に嵌合さ
せることにより、ハウジング5と同一軸線上に位置決め
されている。すなわちハウジング5に対して芯出しされ
ている。
【0013】さらに主部材21には、前記ロックアップ
ピストン14における円筒部16と同一内径の環状突起
25が、フロントカバー4の内面に向けて形成されてい
る。この環状突起25は、フロントカバー4の内面に突
設した円筒状部分26に、回転自在に嵌合している。そ
してこの環状突起25と円筒状部分26との間は、円筒
状部分26に取付けたシールリング27によって液密状
態にシールされている。すなわちロックアップピストン
14の内周側のシール部の半径R14とダンパーマス12
の内周側のシール部の半径R12とが等しくなるよう構成
されている。そしてフロントカバー4とダンパーマス1
2との間をシールリング27で液密状態にシールするこ
とによって、フロントカバー4の内面とダンパーマス1
2との間に油圧室28が形成されている。
【0014】ダンパーマス12を形成している主部材2
1とカバー部材22とのそれぞれの対向部には、円周方
向に沿う凹部が一定間隔ごとに複数箇所、形成されてお
り、ここにコイルバネであるダンパースプリング29が
収容されている。また主部材21とカバー部材22との
間には、環状の板状部材であるセンタープレート30
が、ダンパーマス12に対して相対回転可能に挟み込ま
れている。またこのセンタープレート30には、前記ダ
ンパースプリング29を嵌め込ませた窓孔が形成されて
いる。したがってダンパーマス12とセンタープレート
30とが相対的に回転することにより、これらダンパー
マス12とセンタープレート30とによってダンパース
プリング29を圧縮するようになっている。
【0015】さらにセンタープレート30の外周部は、
ハウジング5に円周方向に対して噛み合い、両者の間で
トルクを伝達するようになっている。その噛み合い構造
としては必要に応じて様々な構造を採用することがで
き、例えば、前述したフロントカバー4の外周側先端部
に、軸線方向に突出した歯を形成し、またセンタープレ
ート30の外周端に半径方向で外側に突出した歯を形成
し、これらの歯を噛み合わせることにより、ハウジング
5とセンタープレート30との間でトルク伝達するよう
にしてもよい。したがってセンタープレート30はハウ
ジング5と共に駆動側部材となっている。
【0016】図1に示すトルクコンバータは更に摩擦機
構を備えている。この摩擦機構は、ダンパースプリング
29が放出する弾性エネルギーの一部を吸収して所謂し
ゃくりを防止するためのものであって、図1に示す例で
は、フロントカバー4の内面とダンパー機構13との間
に介在させたフリクションプレート31を主体として構
成されている。図2はこのフリクションプレート31の
配置状態を示す部分断面図であり、また図3および図4
はこのフリクションプレート31の形状を示している。
【0017】すなわちフリクションプレート31は全体
として環状をなす皿バネ状のものであって、前述した主
部材21における環状突起25より大きい径のリング部
33の4箇所に、バネ作用をする弓状断面部32が形成
されている。この弓状断面部32は、内周方向と外周方
向とに突出した一対の爪片34を、設置状態でダンパー
機構13側に張り出させて形成したものであり、リング
部33の4箇所に、その爪片34がそれぞれ二対づつ設
けられている。また各弓状断面部32のうち、内周側に
突出した一対の爪片34を挟んだ両側には、フリクショ
ンプレート31に回転力を与えるガイド爪35が爪片3
4より小さい張り出し寸法で形成されている。そしてリ
ング部33のうち設置状態でフロントカバー4の内面と
対向する面には、摩擦材36が貼り付けられている。
【0018】上記のフリクションプレート31は、ダン
パー機構13におけるセンタープレート30とフロント
カバー4の内面との間に、前記弓状断面部32を弾性変
形させて配置されており、このような配置構造とするた
めに、ダンパーマス12の一方の部材であるカバー部材
22には、フリクションプレート31における弓状断面
部32を入り込ませるための打ち抜き部37が、4箇所
に形成されている。その形状を図5に示し、またフリク
ションプレート31との組付け状態における相対位置を
図6に示してある。
【0019】これらの図に示すように、打ち抜き部37
は、円周方向での幅の狭い(すなわち中心角の小さい)
外周側の部分と、円周方向での幅の広い(すなわち中心
角の大きい)内周側の部分とから形成されている。フリ
クションプレート31における外周側の爪片34は、打
ち抜き部37のうち幅の狭い部分の内側に配置されてセ
ンタープレート30の側面に接触している。また内周側
の爪片34およびガイド爪35は、打ち抜き部37のう
ち幅の広い部分の内側に配置され、その爪片34はセン
タープレート30の側面に接触している。これに対して
ガイド片35は、センタープレート30およびカバー部
材22のいずれにも非接触状態となっている。より具体
的には、ガイド爪35は、打ち抜き部37のうち幅の広
い部分のエッジ38と円周方向でほぼ対向する位置にあ
り、そのエッジ38とガイド爪35の円周方向での外側
のエッジ39との間隔が、中心角度でθに設定されてい
る。したがってダンパーマス12がフロントカバー4や
センタープレート30に対して、角度θ以上相対的に回
転した場合(捩れた場合)に、ダンパーマス12がフリ
クションプレート31に係合して両者が一体となって回
転し、またこれに続けて反対方向に角度2θ以上相対回
転した(捩れた)場合にも同様に、ダンパーマス12と
フリクションプレート31とが一体となって回転するよ
うになっている。
【0020】フリクションプレート31は、上述のよう
にセンタープレート30とフロントカバー4との間に、
軸線方向へ弾性変形させて配置されることにより、その
リング部33に貼り付けた摩擦材36が、フロントカバ
ー4の内面に摩擦接触している。
【0021】上述したトルクコンバータは、ポンプイン
ペラ1で生じさせた流体流すなわちオイルの螺旋流をタ
ービンランナ6に与えてタービンランナ6を回転させる
ことによりトルクの伝達を行うものであり、したがって
ハウジング5の内部はオイルで満されている。またロッ
クアップクラッチ11は、ロックアップピストン14を
挟んだ両側の部分での圧力差に応じて係合・解放するク
ラッチであり、そのためにロックアップピストン14に
対してタービンランナ6側の空間部に油圧を供給する油
路(図1に矢印Aで示す油路)と、ロックアップピスト
ン14とダンパーマス12との間に油圧を供給する油路
(図1に矢印Bで示す油路)とが形成されている。
【0022】また図1に示す構成から知られるように、
ロックアップピストン14が図1の左方向に移動してラ
イニング材15がダンパーマス12にトルク伝達可能に
接触すると、すなわちロックアップクラッチ11が係合
すると、前記油圧室28は、ダンパーマス12とロック
アップピストン14との間に対しては非連通状態になる
が、ロックアップピストン14よりタービンランナ6側
すなわち矢印A方向に油圧が供給される箇所には連通す
るようになっている。換言すれば、ロックアップクラッ
チ11を係合させる油圧が、油圧室28にも作用するよ
うになっている。
【0023】つぎに図1に示すトルクコンバータの作用
について説明する。図1はロックアップ・オフ状態すな
わちロックアップクラッチ11が解放している状態を示
しており、矢印B方向から油圧を供給してロックアップ
ピストン14とダンパーマス12との間の油圧を高くす
ることにより、ロックアップピストン14がダンパーマ
ス12から離れている。この状態でフロントカバー4に
エンジン(図示せず)からトルクが与えられると、ポン
プインペラ1がハウジング5と共に回転してオイルの螺
旋流を生じさせる。その螺旋流がタービンランナ6に与
えられることにより、タービンランナ6にトルクが伝達
されてハブ7と共に回転する。そのトルクはハブ7に嵌
合させてある入力軸(図示せず)を介して自動変速機に
伝達される。
【0024】ロックアップクラッチ11を係合させる場
合、すなわちロックアップ・オンとする場合には、図1
の矢印A方向から油圧を供給するとともに、矢印Bとは
反対方向に排圧する。前記ライニング材15と主部材2
1との間隔が狭いから、この部分のオリフィス効果によ
って、ロックアップピストン14と主部材21との間の
空間部分の圧力が下がり、またロックアップピストン1
4の背面側すなわちロックアップピストン14よりター
ビンランナ6側の空間部分の圧力が高くなる。その結
果、ロックアップピストン14がダンパーマス12に相
対的に接近してライニング材15が主部材21の側面に
トルク伝達可能に接触する。
【0025】その場合、油圧室28はシールリング27
によって、ダンパーマス12とロックアップピストン1
4との間の低圧部分に対して液密状態にシールされてお
り、またタービンランナ6側の高圧部分に連通している
から、この油圧室28の圧力は、ロックアップピストン
14をダンパーマス12側に押圧する圧力と等しくな
る。そして油圧室28を区画する内周側のシール部の半
径R12とロックアップピストン14の内周側のシール部
の半径R14とが等しいから、ロックアップピストン14
を図1の左方向に押す荷重とダンパーマス12を図1の
右方向に押す荷重とがバランスし、ダンパーマス12は
フロントカバー4の内面から離れた位置に保たれる。
【0026】したがってフロントカバー4に伝達された
入力トルクは、ダンパー機構13におけるダンパースプ
リング29を介してダンパーマス12に伝達され、さら
にそのダンパーマス12からロックアップピストン14
に伝達される。入力トルクに変動が生じた場合、ダンパ
ーマス12がハウジング5に対して回転自在であるうえ
に、ロックアップピストン14がダンパーマス12にト
ルク伝達可能に接触していて、これらのダンパーマス1
2やロックアップピストン14等の部材が慣性抵抗とし
て作用する。その結果、入力トルクの変動に応じてダン
パースプリング29が圧縮され、ダンパースプリング2
9が振動を吸収する。
【0027】また図1に示す構成では、入力トルクの変
動が大きい場合には、摩擦機構が作用してしゃくり現象
を防止もしくは抑制する。すなわちロックアップクラッ
チ11を係合させてある状態で入力トルクが大きくなっ
た場合、例えば、定常走行状態からアクセルを大きく踏
み込んで加速しようとした場合には、駆動側の部材であ
るセンタープレート30とダンパーマス12との相対回
転角度(ダンパー機構13の捩れ角度)が大きくなる。
この入力トルクと捩れ角との関係を図7に特性線図とし
て示してある。所定の捩れ角の状態で入力トルクの急激
な変動が生じると、ダンパー機構13の捩れ角が大きく
なり、その角度が、前述した打ち抜き部37のエッジ3
8とガイド爪35のエッジ39とのなす中心角θと等し
くなれば、これらのエッジ38,39が互いに接触し、
ダンパーマス12がフリクションプレート31を押しつ
つセンタープレート30およびフロントカバー4に対し
て相対回転する。フリクションプレート31は、前述し
たように、フロントカバー4とセンタープレート30と
の間に弾性変形させて介在させてあり、またフロントカ
バー4に対しては摩擦材36を介して接触しているか
ら、フリクションプレート31がフロントカバー4に対
して摺動することにより、両者の間の摩擦力によってト
ルク伝達が行われる。このようなトルクの伝達状況は、
図7の(B)に示す捩れ剛性線図におけるの過程から
およびの過程に変化することによって表わされる。
【0028】入力トルクが低下する方向への変動が生じ
るとともに、ダンパースプリング29が伸びることによ
る弾性エネルギーの放出が始まると、ダンパー機構13
における捩れ角が減少し始め、その結果、ダンパーマス
12とフリクションプレート31とが離れる。したがっ
て駆動側の部材とダンパーマス12との間のトルクの伝
達は、ダンパースプリング29のみを介して行われるか
ら、この間の状況は、図7の(B)におけるおよび
の過程で表わされる。
【0029】ダンパー機構13の捩れ角が、前述した場
合とは反対方向に増大し、捩れ角の減少の開始からの角
度が2θに達すると、打ち抜き部37の反対側のエッジ
38とこれに対向するガイド爪35のエッジ39とが接
触し、その結果、フリクションプレート31がダンパー
マス12に押されてダンパーマス12と共に回転する。
したがってこの場合も、フロントカバー4とダンパーマ
ス12との間で、摩擦力によるトルクの伝達が生じる。
これは、所謂負方向へのトルクの伝達となり、図7の
(B)におけるねじれ剛性線図においては、前述した
,,の過程とほぼ対称となる,,の過程で
表わされる。そして、このような負方向への捩れが限界
に達した後は、駆動側の部材からトルクを与える正方向
へのトルク伝達および捩れが生じ、その角度が2θに達
すると、前述したように、フリクションプレート31と
ダンパーマス12とが係合して一体となって回転し、ダ
ンパーマス12とフロントカバー4との間に摺動抵抗が
生じる。これは図7の(B)にの過程で示される。
【0030】このように図1に示すトルクコンバータで
は、ダンパー機構13における捩れ角が、所定の角度以
上になると、駆動側の部材と出力側の部材との間で摺動
抵抗が生じる。その結果、入力トルクの変動が大きい場
合には、ダンパースプリング29を圧縮する方向に作用
する動力の一部およびダンパースプリング29が放出す
る動力の一部が、フリクションプレート31による滑り
摩擦によって吸収され、ダンパースプリング29の圧縮
・伸長によるしゃくりを抑制し、あるいは防止すること
ができる。
【0031】つぎにこの発明の他の実施例について説明
する。図8はこの発明の第2の実施例を示す部分断面図
であって、ここに示す例は、前述したフリクションプレ
ート31に替えて、係合ピン40および摩擦材41を有
する円板状のフリクションディスク42を、主部材21
における環状突起25より内周側に設け、他の構成は図
1に示す構成と同一としたものである。
【0032】すなわちフリクションディスク42は、主
部材21の環状突起25の内径より小さい外径で、かつ
フロントカバー4の環状突部24の外径より大きい内径
の環状の部材であって、内周部分に軸線方向に向けて形
成した折り返し部によって主部材21に回転自在に嵌合
している。またそのフロントカバー4側の面に摩擦材4
1が貼り付けられており、その摩擦材41をフロントカ
バー4の内面に押し付けるように主部材21とフロント
カバー4との間にフリクションディスク42が挟み込ま
れている。係合ピン40は、フリクションディスク42
の前記摩擦材41を貼り付けた面とは反対側の面の4箇
所に突設されている。そしてこの係合ピン40と遊嵌す
る長孔43が、主部材21に形成されている。図9はそ
の長孔43と係合ピン40との嵌合状態を示している。
この図から知られるように、長孔43は円弧状に湾曲し
た孔として形成され、その長さは、係合ピン40の相対
的な最大許容回動角度が2θとなるように設定されてい
る。
【0033】したがって摩擦機構を図8および図9に示
すように構成した場合であっても、ダンパーマス12が
フロントカバー4に対して2θ以上の角度で相対的に回
転した場合には、必ず係合ピン40が長孔43の端部に
係合してフリクションディスク42がダンパーマス12
と共に回転し、その結果、フロントカバー4とフリクシ
ョンディスク42との間で滑り摩擦が生じる。したがっ
てダンパーマス12のフロントカバー4に対する大きな
往復回転すなわち振れに対する摩擦力が大きくなるの
で、入力トルクの変動が大きい場合のしゃくりを抑制も
しくは防止することができる。
【0034】図10に示す例は、図1に示す構成に板バ
ネ50を更に付け加えたものである。この板バネ50
は、図10の(B)に示すように、弓状断面もしくは
「く」の字形断面をなす弾性板であって、凸面となる3
箇所に摩擦材51が貼り付けられている。一方、センタ
ープレート30の外周部には、板バネ50よりも円周方
向での長さが長い貫通孔52が形成されており、板バネ
50はこの貫通孔52の内部に収容され、かつ主部材2
1とカバー部材22とで、板厚方向に弾性変形させられ
て挟み込まれている。したがって各摩擦材51が主部材
21とカバー部材22とに押し付けられて接触してい
る。また板バネ50とこれを収容した貫通孔52との円
周方向での隙間は、両者の相対的な最大許容回動角度が
2θとなるように設定されている。
【0035】したがって図10に示す構成では、ダンパ
ー機構13を介したトルクの伝達状態に大きな変化がな
ければ、すなわち入力トルクの急激な増大もしくは低下
などが生じなければ、板バネ50はダンパーマス12に
保持されて貫通孔52内の中間部にあって特には作用し
ないが、入力トルクの急変などによってトルクの伝達状
態が急激に変化した場合には、ダンパーマス12がセン
タープレート30に対して正方向もしくは負方向に大き
く相対回転し、その角度がθあるいは2θを越えると、
板バネ50が貫通孔52の端部に当接してそれ以上の移
動が規制され、ダンパーマス12に対して滑りが生じ
る。そのため図10に示す摩擦機構を有していれば、入
力トルクの変動が大きい場合に、フリクションプレート
31による摩擦力および板バネ50による摩擦力が、ダ
ンパー機構13におけるヒステリシスとして作用するの
で、より効果的にしゃくりを防止することができる。
【0036】なお、上記の実施例では、フリクションプ
レート31等の弾性力を生じる部材に摩擦材を直接貼り
付けた構成としたが、この発明は上記の実施例に限定さ
れないのであって、摩擦材を貼り付けたバックアッププ
レートを弾性体によって押圧するよう構成してもよい。
またこの発明は、ダンパー機構の捩れ角が所定の角度以
上になった場合に、ダンパーマスすなわち回転慣性質量
体と駆動側部材との間で摩擦機構により滑り摩擦が生じ
る構成であればよいので、その摩擦機構の構成および配
置は上記の各実施例で示した構成および配置に限定され
ない。さらにこの発明はトルクコンバータに限らず、ト
ルクの増幅のない流体継手にも適用することができる。
【0037】
【発明の効果】以上の説明から明らかなようにこの発明
によれば、入力トルクの変動が大きいことに伴ってダン
パー機構に大きな捩れ角が生じた場合、回転慣性質量体
の駆動側部材に対する相対回転を規制する摩擦力が、摩
擦機構によって生じるので、ダンパー機構に蓄えられた
弾性エネルギーが放出されることに伴うしゃくりを有効
に防止もしくは抑制できる。また、回転慣性質量体を弾
性体を介して駆動側の部材に連結し、かつこの回転慣性
質量体に対してロックアップクラチを係合させるように
構成してあるから、振動減衰特性に優れかつこもり音を
有効に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例を示す断面図である。
【図2】フリクションプレートの配置状態を示す部分断
面図である。
【図3】フリクションプレートの正面図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】カバー部材の正面図である。
【図6】(A)はフリクションプレートの組付け状態を
示す部分正面図、(B)はそのB−B線に沿う断面図で
ある。
【図7】(A)はねじれ特性線図、(B)はその特性線
のB部を拡大して示すねじれ剛性線図である。
【図8】摩擦機構を替えた第2の実施例を示す部分断面
図である。
【図9】第2の実施例における係合ピンと長孔との相対
位置を示す部分正面図である。
【図10】(A)は摩擦機構に板バネを加えた第3の実
施例を示す部分断面図、(B)はその板バネの一例を示
す概略的な斜視図である。
【符号の説明】
1 ポンプインペラ 2 シェル 4 フロントカバー 5 トルクコンバータハウジング 6 タービンランナ 11 ロックアップクラッチ 12 ダンパーマス 13 ダンパー機構 29 ダンパースプリング 30 センタープレート 31 フリクションプレート 42 フリクションディスク 50 板バネ

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 流体流を生じさせるポンプインペラの外
    殻と該外殻に一体的に連結されたフロントカバーとによ
    ってハウジングが形成され、そのハウジング内に前記ポ
    ンプインペラと対向してタービンランナが配置され、さ
    らに前記ハウジングとタービンランナに一体の出力部材
    との間で選択的にトルクの伝達を行うロックアップクラ
    ッチが前記ハウジング内に設けられたロックアップクラ
    ッチ付き流体伝動装置において、 前記ハウジングに対して相対回転可能でかつ前記ロック
    アップクラッチが選択的に係合する回転慣性質量体が、
    前記ハウジングおよびハウジングと一体となって回転す
    る部材を含む駆動側部材に対して弾性体を介して連結さ
    れることによりダンパー機構を構成し、かつ前記回転慣
    性質量体が駆動側部材に対し所定角度以上相対回転した
    際に回転慣性質量体と駆動側部材との間で滑り摩擦力を
    生じる摩擦機構が設けられていることを特徴とするロッ
    クアップクラッチ付き流体伝動装置。
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