JP2855979B2 - ロックアップクラッチ付き流体伝動装置 - Google Patents

ロックアップクラッチ付き流体伝動装置

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JP2855979B2
JP2855979B2 JP4200588A JP20058892A JP2855979B2 JP 2855979 B2 JP2855979 B2 JP 2855979B2 JP 4200588 A JP4200588 A JP 4200588A JP 20058892 A JP20058892 A JP 20058892A JP 2855979 B2 JP2855979 B2 JP 2855979B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は車両用自動変速機にお
けるトルクコンバータなどのロックアップクラッチを備
えた流体伝動装置に関し、特にダンパー機構に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】周知のようにトルクコンバータなどの流
体伝動装置は、流体を介してトルクの伝達を行うから、
伝達効率が必ずしも良くはなく、そこで最近では、動力
の伝達効率を向上させて燃費を良くするために、トルク
コンバータにロックアップクラッチを内蔵することが広
く行われている。ロックアップクラッチは、トルクコン
バータにおける入力側の部材と出力側の部材とを、機械
的な手段で直接接続するものであるから、入力トルクの
変動に伴う振動をも伝達してしまう。そこで通常、ロッ
クアップクラッチにはダンパー機構を併用している。
【0003】従来一般には、タービンランナを取付けた
ハブなどの出力部材とロックアップクラッチとの間にダ
ンパー機構を設けているが、本出願人は、振動減衰特性
を向上させるために、回転慣性質量の大きいダンパーマ
スを、ダンパースプリングを介してハウジング等の入力
側(駆動側)の部材に連結し、そのダンパーマスに対し
てロックアップクラッチを係合させるよう構成した流体
伝動装置を、特願平3−309835号によって提案し
た。このような構成であれば、入力トルクの変動に対し
てダンパーマスが大きい慣性抵抗として作用するから、
入力トルクの変動をダンパースプリングによって吸収し
て振動を減衰させ、またこもり音の発生を防止すること
ができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上述した流体伝動装置
では、ダンパーマスによる慣性抵抗が大きいために、振
動減衰特性が優れるが、入力トルクの変動が大きい場合
には、ダンパースプリングの撓み量すなわちダンパース
プリングによって蓄えられる弾性エネルギー量が大きく
なる。したがってこのような場合、ダンパースプリング
が弾性エネルギーを放出することによって、ロックアッ
プクラッチを介して自動変速機に大きなトルクが入力さ
れる。その結果、自動変速機の出力軸に波長の長いトル
ク変動が生じ、これが所謂“しゃくり”として体感さ
れ、車両の乗心地を悪化させる可能性があった。
【0005】このような不都合を解消するために、ダン
パーマスの相対回転に対して滑り摩擦を与えて、ダンパ
ー機構におけるヒステリシスを大きくすることが考えら
れる。この種のヒステリシスを生じさせるための摩擦機
構としては、スペース上の制約から薄板状のものを使用
し、それ自体に弾性作用をもたせて所定の面圧を確保す
ることになる。この場合、トルクコンバータはその全体
が一体となって回転するものであるから、薄板状の部材
からなる摩擦機構の軸心をトルクコンバータ全体の軸心
と正確に一致させることが必要となる。すなわち摩擦機
構の軸心が回転中心から外れていれば、偏心回転による
振動や騒音が生じるおそれがあり、また相対的な滑りが
生じた際に、円周方向への滑りに加えて半径方向の滑り
が生じて耐久性の点で不利になったり、また滑り摩擦が
安定しないためにしゃくり防止効果が不安定になったり
するおそれがある。
【0006】このようにトルクコンバータに内蔵したダ
ンパー機構のヒステリシスを増大させる摩擦機構には、
それに特有の技術的な課題があり、従来では上述した課
題を充分に解消し、安定したしゃくり防止効果を生じる
手段が知られていなかった。
【0007】この発明は上記の事情を背景とし、しゃく
り防止効果に優れ、しかも耐久性の良好なロックアップ
クラッチ付き流体伝動装置を提供することを目的とする
ものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】この発明は、上記の目的
を達成するために、流体流を生じさせるポンプインペラ
の外殻と該外殻に一体的に連結されたフロントカバーと
によってハウジングが形成され、そのハウジング内に前
記ポンプインペラと対向してタービンランナが配置さ
れ、さらに前記ハウジングとタービンランナに一体の出
力部材との間で選択的にトルクの伝達を行うロックアッ
プクラッチが前記ハウジング内に設けられ、さらにハウ
ジングに一体回転するよう連結された駆動部材とロック
アップクラッチが係合する従動部材とを円周方向で弾性
を示す弾性体を介して連結したダンパー機構が設けられ
たロックアップクラッチ付き流体伝動装置において、前
記駆動部材と共に回転する入力側の部材と従動部材と共
に回転する出力側の部材とのいずれか一方に摩擦接触す
る環状の摩擦部材と、この摩擦部材を支持し、かつ、前
記入力部材もしくは前記出力部材に対して同一軸線上に
芯出しされた支持部材と、前記摩擦部材を前記一方の部
材に押し付けるよう摩擦部材にその軸線方向に突出させ
て形成された弾性片と、前記摩擦部材を入力側の部材も
しくは出力側の部材と同一軸線上に位置決めするよう前
記支持部材側に嵌合し、かつ、前記摩擦部材にその半径
方向に突出させて形成された嵌合片と、前記駆動部材と
従動部材との相対回転角度が所定角度以上になったとき
に前記摩擦部材を前記入力側の部材と出力側の部材との
他方に係合させる係合機構とを備えていることを特徴と
するものである。
【0009】
【作用】この発明の流体伝動装置では、ロックアップク
ラッチを解放してあれば、ポンプインペラで生じさせた
流体流によってタービンランナを回転させることにより
出力部材にトルクを伝達する。またロックアップクラッ
チは、ダンパー機構における従動部材に係合し、入力ト
ルクは、駆動部材から弾性体を介して従動部材およびロ
ックアップクラッチに伝達される。この状態で入力トル
クにある程度大きい変動が生じると、弾性体の伸縮を伴
う駆動部材と従動部材との相対的な往復回転が生じる。
この駆動部材に一体の入力側部材と従動部材に一体の出
力側部材との間には、摩擦部材が介装されていて、相対
回転角度が所定角度以上になると係合機構によって摩擦
部材の摺動が生じ、それに伴う摩擦力が駆動部材と従動
部材との相対回転を抑制するように作用する。
【0010】この摩擦部材は、軸線方向に突出させて形
成した弾性片によって入力側部材もしくは出力側部材に
押し付けられているから、安定した摩擦力を生じさせ
る。またこの摩擦部材は支持部材により支持されてお
り、この支持部材は入力側部材もしくは出力側部材に対
して同一軸線上に芯出し(センタリング)されている。
さらに、摩擦部材には、半径方向に突出する嵌合片が形
成され、この嵌合片が支持部材側に嵌合することによ
り、摩擦部材が入力側部材もしくは出力側部材と同一軸
線上に芯出しされている。つまり、摩擦部材と入力側部
材もしくは出力側部材とが、支持部材を介して間接的に
同一軸線上に芯出し(言い換えれば半径方向に位置決
め)されている。したがって、摩擦部材は、入力側部材
もしくは出力側部材に対して半径方向に滑ることなく、
周方向での摺動のみが生じ、この点でも摩擦力が安定
し、また耐久性の向上に有利になる。
【0011】
【実施例】つぎにこの発明の実施例を図面を参照して説
明する。図1はこの発明の一実施例を示す断面図であっ
て、ポンプインペラ1のシェル2は、環状をなす延長部
材3を介してフロントカバー4に一体的に連結されてお
り、これらシェル2および延長部材3ならびにフロント
カバー4によってトルクコンバータハウジング5が形成
されている。このハウジング5の内部には、ポンプイン
ペラ1に対向してタービンランナ6が配置されており、
このタービンランナ6はその内周部で出力部材であるハ
ブ7にリベット8により取付けられている。さらにポン
プインペラ1とタービンランナ6との間で、かつそれら
の内周側の部分には、一方向クラッチ9のアウターレー
スにスプライン嵌合させたステータ10が配置されてい
る。そしてフロントカバー4の内面とタービンランナ6
との間に、ロックアップクラッチ11と回転慣性質量体
であるダンパーマス12とを含むダンパー機構13が配
置されている。
【0012】ロックアップクラッチ11は、タービンラ
ンナ6の背面(図1では左側面)に沿わせて湾曲させた
環状の板状部材であるロックアップピストン14とその
外周側の側面に取付けたライニング材15とから構成さ
れている。そのロックアップピストン14の内周部に
は、円筒部16が形成されるとともに、その円筒部16
の一端部には、トルク伝達のための係合歯として作用す
る複数の突起17が、円周方向において一定間隔をあ
け、かつ内周側に向けて突出するよう形成されている。
【0013】ロックアップピストン14は前記ハブ7
に、軸線方向へ摺動可能に嵌合されている。このハブ7
は、ロックアップピストン14の円筒部16を嵌合させ
るボス部18を有しており、ここに取付けたシールリン
グ19によってロックアップピストン14との間を液密
状態にシールするようになっている。またこのボス部1
8の一側面に、前記突起17と円周方向において係合す
る複数の突部20が形成されている。したがってこれら
の突起17と突部20とによって、ロックアップピスト
ン14とハブ7との間でトルクを伝達するようになって
いる。
【0014】ダンパーマス12は、外径が前記ロックア
ップピストン14とほぼ等しく、かつ内径がロックアッ
プピストン14よりも小さい全体としてほぼ環状をなす
主部材21と、これより内径が大きくて質量の小さい環
状のカバー部材22とから構成されている。これらの主
部材21とカバー部材22とは、互いに対向した状態に
リベット23によって連結されてダンパーマス12を構
成し、ロックアップピストン14とフロントカバー4の
内面との間に配置されている。このダンパーマス12
は、その主部材21の内周部を、フロントカバー4の内
面に突設した環状突部24の外周面に回転可能に嵌合さ
せることにより、ダンパーマス12とハウジング5とが
同一軸線上に芯出し(センタリング)されている。すな
わち、ダンパーマス12が、ハウジング5、具体的には
フロントカバー4に対して芯出しされている。そして、
ダンパーマス12がこの発明の支持部材に相当する。
【0015】さらに主部材21には、前記ロックアップ
ピストン14における円筒部16と等しい内径の環状突
起25が、フロントカバー4の内面に向けて形成されて
いる。この環状突起25は、フロントカバー4の内面に
突設した円筒状部分26に、回転自在に嵌合している。
そしてこの環状突起25と円筒状部分26との間は、円
筒状部分26に取付けたシールリング27によって液密
状態にシールされている。すなわちロックアップピスト
ン14の内周側のシール部の半径R14とダンパーマス1
2の内周側のシール部の半径R12とが等しくなるよう構
成されている。そしてフロントカバー4とダンパーマス
12との間をシールリング27で液密状態にシールする
ことによって、フロントカバー4の内面とダンパーマス
12との間に油圧室28が形成されている。
【0016】ダンパーマス12を形成している主部材2
1とカバー部材22とのそれぞれの対向部には、円周方
向に沿う凹部が一定間隔ごとに複数箇所、形成されてお
り、ここにコイルバネであるダンパースプリング29が
収容されている。また主部材21とカバー部材22との
間には、環状の板状部材であるセンタープレート30
が、ダンパーマス12に対して相対回転可能に挟み込ま
れている。またこのセンタープレート30には、前記ダ
ンパースプリング29を嵌め込ませた窓孔が形成されて
いる。したがってダンパーマス12とセンタープレート
30とが相対的に回転することにより、これらダンパー
マス12とセンタープレート30とによってダンパース
プリング29を圧縮するようになっている。
【0017】さらにセンタープレート30の外周部は、
ハウジング5に円周方向に対して噛み合い、両者の間で
トルクを伝達するようになっている。その噛み合い構造
としては必要に応じて様々な構造を採用することがで
き、例えば、前述したフロントカバー4の外周側先端部
に、軸線方向に突出した歯を形成し、またセンタープレ
ート30の外周端に半径方向で外側に突出した歯を形成
し、これらの歯を噛み合わせることにより、ハウジング
5とセンタープレート30との間でトルク伝達するよう
にしてもよい。したがってセンタープレート30はハウ
ジング5と共に回転する駆動部材となり、またダンパー
マス12は出力部材と一体になって回転する従動部材と
なっている。
【0018】図1に示すトルクコンバータは更に摩擦部
材を備えている。この摩擦部材は、ダンパースプリング
29が放出する弾性エネルギーの一部を吸収して所謂し
ゃくりを防止するためのものであって、図1に示す例で
は、フロントカバー4の内面とダンパー機構13との間
に介在させたフリクションプレート31を主体として構
成されている。図2はこのフリクションプレート31の
形状を示し、図3はその使用状態での一部を示してい
る。
【0019】すなわちフリクションプレート31は全体
として環状をなすものであって、前述した主部材21に
おける環状突起25より大きい径のリング部33の4箇
所に、バネ作用をする板バネ部32が形成されている。
この板バネ部32は、内周方向と外周方向とに突出した
一対の弾性片34を、設置状態でダンパー機構13側に
張り出させて形成したものであり、リング部33の4箇
所に、その弾性片34がそれぞれに二対づつ設けられて
いる。
【0020】また各板バネ部32のうち、内周側に突出
した一対の弾性片34を挟んだ両側には、半径方向での
位置を決める嵌合片35が形成されている。この嵌合片
35の一つを図3に示してあり、この図に示すように嵌
合片35は、リング部33から内周側に延びた細長い突
出片の先端部を、矩形断面の中空部をなすように折り曲
げて形成したものである。その最内周部の軸線方向に沿
う平坦面の部分は、回転中心からの寸法が、前記主部材
21における環状突起25の外径と等しく設定されてお
り、フリクションプレート31は、この嵌合片35が主
部材21の環状突起25に嵌合することにより、ダンパ
ーマス12と同一軸線上に芯出しされている。そしてリ
ング部33のフロントカバー4の内面と対向する面に、
摩擦材36が貼り付けられ、フロントカバー4との間で
相対回転が生じた際にこの摩擦材36で摩擦力を生じさ
せるようになっている。
【0021】上記のフリクションプレート31は、ダン
パー機構13におけるセンタープレート30とフロント
カバー4の内面との間に、前記板バネ部32を弾性変形
させて配置されており、このような配置構造とするため
に、ダンパーマス12の一方の部材であるカバー部材2
2には、フリクションプレート31における板バネ部3
2を入り込ませるための打ち抜き部37が、4箇所に形
成されている。そのフリクションプレート31との組付
け状態における相対位置を図4に示してある。
【0022】図4に示すように、打ち抜き部37は、円
周方向での幅の狭い(すなわち中心角の小さい)外周側
の部分と、円周方向での幅の広い(すなわち中心角の大
きい)内周側の部分とから形成されている。フリクショ
ンプレート31における外周側の弾性片34は、打ち抜
き部37のうち幅の狭い部分の内側に配置されてセンタ
ープレート30の側面に接触している。また内周側の弾
性片34は、打ち抜き部37のうち幅の広い部分の内側
に配置され、その弾性片34はセンタープレート30の
側面に接触している。
【0023】打ち抜き部37のうち幅の広い部分のエッ
ジ38と嵌合片35の円周方向での両端のエッジ39と
の間隔が、中心角度でθに設定されており、したがって
ダンパーマス12がフロントカバー4やセンタープレー
ト30に対して、角度θ以上相対的に回転した場合(捩
れた場合)に、ダンパーマス12がフリクションプレー
ト31に係合して両者が一体となって回転し、またこれ
に続けて反対方向に角度2θ以上相対回転した(捩れ
た)場合にも同様に、ダンパーマス12とフリクション
プレート31とが一体となって回転するようになってい
る。すなわち打ち抜き部37を嵌合片35のエッジ39
に対して上述した構成とすることにより、係合機構が形
成されている。
【0024】フリクションプレート31は、上述のよう
にセンタープレート30とフロントカバー4との間に、
弾性片34を軸線方向へ弾性変形させて配置されること
により、そのリング部33に貼り付けた摩擦材36が、
フロントカバー4の内面に押し付けられている。その場
合、フリクションプレート31の内周側の弾性片34と
外周側の弾性片34とが共にセンタープレート30に弾
性変形した状態で接触しており、したがってリング部3
3には、これらの弾性片34による弾性力が内周側と外
周側との両方に作用し、その結果、リング部33に貼り
付けた摩擦材36が、そのほぼ全面でフロントカバー4
の内面に接触し、相対的な滑りが生じた場合には、充分
な滑り摩擦力を発生する。
【0025】また内周側の弾性片34を軸線方向に押圧
して弾性変形させることにより、その先端部の半径方向
での位置が変化するが、フリクションプレート31は嵌
合片35を介して主部材21の環状突起25によって支
持されているから、前記弾性片34の先端部の回転中心
からの寸法を主部材21の環状突起25の外径より充分
大きくしておくことができ、したがって弾性片34の先
端部と環状突起25との干渉を容易に避けることができ
る。また弾性片34の半径方向での寸法に特別な正確さ
を要求されないので、その製造・加工が容易になる。
【0026】上述したトルクコンバータは、ポンプイン
ペラ1で生じさせた流体流すなわちオイルの螺旋流をタ
ービンランナ6に与えてタービンランナ6を回転させる
ことによりトルクの伝達を行うものであり、したがって
ハウジング5の内部はオイルで満されている。またロッ
クアップクラッチ11は、ロックアップピストン14を
挟んだ両側の部分での圧力差に応じて係合・解放するク
ラッチであり、そのためにロックアップピストン14に
対してタービンランナ6側の空間部に油圧を供給する油
路(図1に矢印Aで示す油路)と、ロックアップピスト
ン14とダンパーマス12との間に油圧を供給する油路
(図1に矢印Bで示す油路)とが形成されている。
【0027】また図1に示す構成から知られるように、
ロックアップピストン14が図1の左方向に移動してラ
イニング材15がダンパーマス12にトルク伝達可能に
接触すると、すなわちロックアップクラッチ11が係合
すると、前記油圧室28は、ダンパーマス12とロック
アップピストン14との間に対しては非連通状態になる
が、ロックアップピストン14よりタービンランナ6側
すなわち矢印A方向に油圧が供給される箇所には連通す
るようになっている。換言すれば、ロックアップクラッ
チ11を係合させる油圧が、油圧室28にも作用するよ
うになっている。
【0028】つぎに図1に示すトルクコンバータの作用
について説明する。図1はロックアップ・オフ状態すな
わちロックアップクラッチ11が解放している状態を示
しており、矢印B方向から油圧を供給してロックアップ
ピストン14とダンパーマス12との間の油圧を高くす
ることにより、ロックアップピストン14がダンパーマ
ス12から離れている。この状態でフロントカバー4に
エンジン(図示せず)からトルクが与えられると、ポン
プインペラ1がハウジング5と共に回転してオイルの螺
旋流を生じさせる。その螺旋流がタービンランナ6に与
えられることにより、タービンランナ6にトルクが伝達
されてハブ7と共に回転する。そのトルクはハブ7に嵌
合させてある入力軸(図示せず)を介して自動変速機に
伝達される。
【0029】ロックアップクラッチ11を係合させる場
合、すなわちロックアップ・オンとする場合には、図1
の矢印A方向から油圧を供給するとともに、矢印Bとは
反対方向に排圧する。前記ライニング材15と主部材2
1との間隔が狭いから、この部分のオリフィス効果によ
って、ロックアップピストン14と主部材21との間の
空間部分の圧力が下がり、またロックアップピストン1
4の背面側すなわちロックアップピストン14よりター
ビンランナ6側の空間部分の圧力が高くなる。その結
果、ロックアップピストン14がダンパーマス12に相
対的に接近してライニング材15が主部材21の側面に
トルク伝達可能に接触する。
【0030】その場合、油圧室28はシールリング27
によって、ダンパーマス12とロックアップピストン1
4との間の低圧部分に対して液密状態にシールされてお
り、またタービンランナ6側の高圧部分に連通している
から、この油圧室28の圧力は、ロックアップピストン
14をダンパーマス12側に押圧する圧力と等しくな
る。そして油圧室28を区画する内周側のシール部の半
径R12がロックアップピストン14の内周側のシール部
の半径R14と等しいから、ロックアップピストン14を
図1の左方向に押す荷重とダンパーマス12を図1の右
方向に押す荷重とがバランスし、ダンパー機構13はフ
ロントカバー4から離れた位置に保持される。
【0031】エンジンからフロントカバー4に伝達され
た入力トルクは、ダンパー機構13におけるダンパース
プリング29を介してダンパーマス12に伝達され、さ
らにそのダンパーマス12からロックアップピストン1
4に伝達される。入力トルクに変動が生じた場合、ダン
パーマス12がハウジング5に対して回転自在であるう
えに、ロックアップピストン14がダンパーマス12に
トルク伝達可能に接触しているから、これらのダンパー
マス12やロックアップピストン14等の部材が慣性抵
抗として作用する。その結果、入力トルクの変動に応じ
てダンパースプリング29が圧縮され、ダンパースプリ
ング29が振動を吸収する。またダンパーマス12とハ
ウジング5との間の摺動抵抗が少ないので、入力回転数
が高回転数の場合のこもり音を防止することができる。
【0032】また図1に示す構成では、入力トルクの変
動が大きい場合には、フリクションプレート31が作用
してしゃくり現象を防止もしくは抑制する。すなわちロ
ックアップクラッチ11を係合させてある状態で入力ト
ルクが大きくなれば、駆動側の部材であるセンタープレ
ート30とダンパーマス12との相対回転角度(ダンパ
ー機構13の捩れ角度)が大きくなる。所定の捩れ角の
状態で入力トルクの急激な変動が生じると、ダンパー機
構13の捩れ角が更に大きくなり、その角度が、前述し
た打ち抜き部37のエッジ38と嵌合片35のエッジ3
9とのなす中心角θに等しくなれば、これらのエッジ3
8,39が互いに接触し、ダンパーマス12がフリクシ
ョンプレート31を押しつつセンタープレート30およ
びフロントカバー4に対して相対回転する。フリクショ
ンプレート31は、前述したように、弾性片34が撓む
ことによる弾性力でフロントカバー4に押し付けられて
いるから、フリクションプレート31がフロントカバー
4に対して摺動することにより、両者の間の摩擦力によ
ってトルク伝達が行われる。すなわちダンパー機構13
の捩れを抑える方向に抵抗力が発生する。
【0033】入力トルクが低下する方向への変動が生じ
るとともに、ダンパースプリング29が伸びることによ
る弾性エネルギーの放出が始まると、ダンパー機構13
における捩れ角が減少し始め、その結果、ダンパーマス
12とフリクションプレート31とが離れる。そしてダ
ンパー機構13の捩れ角が、前述した場合とは反対方向
に増大し、捩れ角の減少の開始からの角度が2θに達す
ると、打ち抜き部37の反対側のエッジ38とこれに対
向する弾性片34のエッジ39とが接触し、その結果、
フリクションプレート31がダンパーマス12に押され
てダンパーマス12と共に回転する。したがってこの場
合も、フロントカバー4とダンパーマス12との間で、
ダンパー機構13の捩れを抑える方向の抵抗力が生じ
る。これは、所謂負方向へのトルクの伝達となり、この
ような負方向への捩れが限界に達した後は、駆動側の部
材からトルクを与える正方向へのトルク伝達および捩れ
が生じ、その角度が2θに達すると、前述したように、
フリクションプレート31とダンパーマス12とが係合
して一体となって回転し、ダンパーマス12とフロント
カバー4との間に摺動抵抗が生じる。
【0034】このように図1に示すトルクコンバータで
は、ダンパー機構13における捩れ角が、所定の角度以
上になると、駆動側の部材と出力側の部材との間で摺動
抵抗が生じる。その結果、入力トルクの変動が大きい場
合には、ダンパースプリング29を圧縮する方向に作用
する動力の一部およびダンパースプリング29が放出す
る動力の一部が、フリクションプレート31による滑り
摩擦によって吸収され、ダンパースプリング29の圧縮
・伸長によるしゃくりを抑制し、あるいは防止すること
ができる。
【0035】フリクションプレート31は、入力トルク
の変動が大きいことに伴ってダンパー機構13の捩れ角
が大きくなると、ダンパーマス12に押されてフロント
カバー4等の入力側の部材と共に回転する。その際のフ
リクションプレート31とダンパーマス12との係合
は、カバー部材22における打ち抜き部37のエッジ3
8と嵌合片35のエッジ39とが当接することによって
行われる。その嵌合片35は、図3に示すようにリング
部33の突出片を矩形中空状に折り曲げて形成したもの
であるから、打ち抜き部37のエッジ38と接触する面
積が広くなる。そのためこれらのエッジ38,39にお
ける面圧が小さくなり、この部分の摩耗や欠損を防いで
耐久性を向上させることができる。
【0036】ところでフリクションプレー31は、ダン
パー機構13における捩り角が大きい場合すなわち入力
トルクの変動が大きい場合に作用して、ダンパースプリ
ング29に対する入力側の部材とダンパースプリング2
9に対する出力側の部材との間で滑り摩擦を生じさせる
ものであるから、それより入力トルクの変動が小さい場
合には、フリクションプレー31による滑り摩擦は可及
的に小さいことが好ましい。図5に示す例は、このよう
な目的のために、フリクシンョンプレート31を駆動側
の部材であるセンタープレート30によって支持した例
である。
【0037】すなわちセンタープレート30の内周部の
うちフリクションプレート31の嵌合片35に対応する
部分には、フロントカバー4側に向けた突起30aが形
成されている。また嵌合片35の先端部は、前記突起3
0aとは反対方向にほぼ直角に折り曲げられている。そ
してフリクションプレー31は、嵌合片35が突起30
aの外周側の面に密着されており、フリクションプレー
ト31は、センタープレート30を介して間接的に主部
材21により支持されている。このようにして、フリク
ションプレート31がフロントカバー4の中心軸線と同
一軸線上に芯出しされている。したがってこの図5に示
す構成では、ダンパー機構13の捩れ角が所定の角度以
上になるまでは、フリクションプレート31が従動部材
に接触しないので、入力トルクの変動が小さい状態での
駆動部材から従動部材への振動の伝達を防止し、こもり
音を更に低減することができる。
【0038】また図5に示す構成においても、軸線方向
への弾性力を生じさせるための弾性片34と所謂芯出し
のための嵌合片35とが独立して設けられているので、
フリクションプレート31を駆動側部材と同一軸線上に
正確に芯出しし、安定したしゃくり防止効果を得ること
ができる。
【0039】なお、上記の実施例では、ダンパー機構1
3とフロントカバー4との間に摩擦部材であるフリクシ
ョンプレート31を介在させた構成としたが、この発明
は、上記の実施例に限定されないのであって、摩擦部材
はダンパー機構13の内部に組込んで、捩れ角が所定角
度以上になった場合には、ダンパー機構13における駆
動部材と従動部材との間で滑り摩擦を生じさせるよう構
成してもよい。また摩擦部材は、通常時は従動部材ある
いは出力側の部材に接触させてその部材と一体に回転さ
せておき、ダンパー機構13の捩れ角が所定角度以上に
なった場合に、摩擦部材が従動側あるいは出力側の部材
に対して摺動することにより滑り摩擦を生じさせるよう
に構成してもよい。さらに上記の実施例では、打ち抜き
部37と嵌合片35とで係合機構を構成したが、この発
明における係合機構は要は、ダンパー機構の捩れ角が所
定角度以上になった場合に、摩擦部材と他の部材とを連
結する構成であればよいのであり、したがって例えば長
孔とその長孔内に移動可能に挿入したピンとで構成して
もよい。
【0040】
【発明の効果】以上説明したようにこの発明によれば、
入力側の部材もしくは出力側の部材に押し付けられると
ともに、その部材に対して相対回転することのある摩擦
部材に、軸線方向への押し付け力を生じさせる弾性片
と、所謂芯出しのための嵌合片とを互いに独立して形成
したので、弾性力を生じさせるための変形が摩擦部材の
芯出し精度に影響しない。また、摩擦部材は支持部材に
より支持されており、この支持部材が入力側部材もしく
は出力側部材に対して同一軸線上に芯出し(センタリン
グ)されている。さらに、摩擦部材には、半径方向に突
出する嵌合片が形成され、この嵌合片が支持部材に嵌合
することにより、摩擦部材が入力側部材もしくは出力側
部材と同一軸線上に芯出しされている。つまり、摩擦部
材と入力側部材もしくは出力側部材とが、支持部材を介
して間接的に同一軸線上に芯出し(言い換えれば半径方
向に位置決め)されている。したがってこの発明によれ
、摩擦部材は入力側部材もしくは出力側部材に対して
半径方向の滑りが抑制され、摩擦部材の摺動が円周方向
への摺動のみとなり、その結果、必要十分な摩擦力を安
定して得られ、しゃくり防止効果が安定するとともに、
過剰な摩耗を防止して耐久性を向上させることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例を示す断面図である。
【図2】そのフリクションプレートの正面図である。
【図3】フリクションプレートの使用状態での一部を示
す部分拡大断面図である。
【図4】フリクションプレートをダンパー機構に組付け
た状態の部分正面図である。
【図5】この発明の他の実施例を示す部分断面図であっ
て、図3と同様な部分拡大断面図である。
【符号の説明】
1 ポンプインペラ 2 シェル 4 フロントカバー 5 ハウジング 6 タービンランナ 11 ロックアップクラッチ 12 ダンパーマス 21 主部材 22 カバー部材 29 ダンパースプリング 30 センタープレート 34 弾性片 35 嵌合片 37 打ち抜き部 38,39 エッジ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) F16H 45/02 F16F 15/12 F16D 11/00 - 23/14

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 流体流を生じさせるポンプインペラの外
    殻と該外殻に一体的に連結されたフロントカバーとによ
    ってハウジングが形成され、そのハウジング内に前記ポ
    ンプインペラと対向してタービンランナが配置され、ま
    た前記ハウジングとタービンランナに一体の出力部材と
    の間で選択的にトルクの伝達を行うロックアップクラッ
    チが前記ハウジング内に設けられ、さらにハウジングに
    一体回転するよう連結された駆動部材とロックアップク
    ラッチが係合する従動部材とを円周方向で弾性を示す弾
    性体を介して連結したダンパー機構が設けられたロック
    アップクラッチ付き流体伝動装置において、 前記駆動部材と共に回転する入力側の部材と従動部材と
    共に回転する出力側の部材とのいずれか一方に摩擦接触
    する環状の摩擦部材と、この摩擦部材を支持し、かつ、
    前記入力部材もしくは前記出力部材に対して同一軸線上
    に芯出しされた支持部材と、前記摩擦部材を前記一方の
    部材に押し付けるよう摩擦部材にその軸線方向に突出さ
    せて形成された弾性片と、前記摩擦部材を入力側の部材
    もしくは出力側の部材と同一軸線上に位置決めするよ
    前記支持部材側に嵌合し、かつ、前記摩擦部材にその半
    径方向に突出させて形成された嵌合片と、前記駆動部材
    と従動部材との相対回転角度が所定角度以上になったと
    きに前記摩擦部材を前記入力側の部材と出力側の部材と
    の他方に係合させる係合機構とを備えていることを特徴
    とするロックアップクラッチ付き流体伝動装置。
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EP93305076A EP0577389B1 (en) 1992-07-03 1993-06-29 Fluid coupling power transmission with lockup clutch
US08/083,538 US5388678A (en) 1992-07-03 1993-06-30 Fluid coupling power transmission with lockup clutch

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GB2255395A (en) 1991-05-02 1992-11-04 Luk Lamellen & Kupplungsbau Hydraulic transmission with torsion damper

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