JPH06171134A - サーマル階調記録装置 - Google Patents

サーマル階調記録装置

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JPH06171134A
JPH06171134A JP32452492A JP32452492A JPH06171134A JP H06171134 A JPH06171134 A JP H06171134A JP 32452492 A JP32452492 A JP 32452492A JP 32452492 A JP32452492 A JP 32452492A JP H06171134 A JPH06171134 A JP H06171134A
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泰樹 松本
Haruo Yamashita
春生 山下
Shuji Ishihara
秀志 石原
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 少ない演算量で、副走査方向のみならず主走
査方向にも急激な濃度変化を持った画像に対しても、全
階調レベルの濃度が精度よく再現できるようにする。 【構成】 グループ別蓄熱量予測手段104は、サーマ
ルヘッド102の各発熱体に印加する補正された補正パ
ルス幅データを基に、サーマルヘッド102の発熱体基
板の蓄熱量を予測し、補間手段105はグループ化され
た予測蓄熱量を各発熱体に対応した予測蓄熱量に補間す
る。補正値決定手段106は、補間した予測蓄熱量と、
ヘッド温度検出手段103が検出したヘッド基台温度を
用いて、補正値を決定する。パルス幅補正手段107
は、γ補正手段101が出力するパルス幅データに補正
値決定手段106が与える補正値を作用させて得た補正
パルス幅データをサーマルヘッド駆動手段108に出力
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、サーマルヘッドを用い
た階調記録装置における常に安定した濃度再現を行う温
度補償に関するもので、NTSCのテレビ画面や、CG
(コンピュータグラフィックス)ハイビジョン画像など
の高精細な多階調画像の記録装置として広く利用できる
ものである。
【0002】
【従来の技術】近年、感熱記録紙や熱転写フィルムを用
いて熱的に記録を行なうサーマル記録方式は、ピクトリ
アルな画像を記録するハードコピー装置として広く利用
されている。
【0003】サーマル階調記録方式によるカラープリン
タは、1列に発熱体を配列したラインサーマルヘッドと
イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の3色
に塗り分けたインクシートを用いて、1色内は線順次に
記録し、1色毎に受像紙を巻き戻しながら3色面順次に
て記録するのが一般的である。ピクトリアルな画像を記
録するためには、解像度と階調性が両立でき、さらに記
録濃度をコントロールしやすく、滑らかな階調記録を行
なうことができる熱昇華転写方式や集中加熱転写方式が
優れている。
【0004】しかし、これらの両方式は、サーマルヘッ
ド内の発熱体に通電したときの発熱エネルギーを利用し
ていることから、環境の温度変化やサーマルヘッド自体
の蓄熱の影響を受け、常に安定した濃度を再現すること
が難しい。この温度依存性を考慮し、安定した記録濃度
安定性を図ったサーマルヘッドの駆動制御を温度補償と
呼び、これらのプリンタを開発する上で、高画質化を制
限する大きな要素になっている。
【0005】また、面順次によるフルカラー記録を考え
ると、色ごとの環境温度の違いや蓄熱量の差が各色の濃
度バランスを崩し、記録色の色度を変えてしまうことに
なるため、温度補償に対する要求がさらに厳しくなる。
【0006】そこで、第1、第2の従来例として、サー
マルヘッド内の発熱体基板での平均蓄熱量を予測し、サ
ーマルヘッドのヘッド基台温度とサーマルヘッド自体の
蓄熱による温度変化に対し、サーマルヘッドに印加する
エネルギーを補正し、安定した記録濃度を再現するサー
マルプリンタ装置(特開平2−98456号公報)およ
び、階調プリンタ(特願平4−175822号)が提案
されている。さらに、第3、第4の従来例として、1ラ
イン記録周期毎に、サーマルヘッドの主走査方向の蓄熱
量を各発熱体に対して求めるサーマルヘッドの蓄熱補正
回路(特開平2−289364号公報)、サーマルヘッ
ドの蓄熱予測装置(特開平3−24972号公報)が提
案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】一般に用いられる薄膜
型のサーマルヘッドは、ヘッド基台の熱容量と大気への
放熱抵抗が主要因になるヘッド基台への第1の蓄熱、発
熱体基板への第2の蓄熱、および発熱体自身への第3の
蓄熱の3種が存在し、それぞれ数分、数秒、数ミリ秒程
度の大きく異なる時定数を有している。
【0008】階調記録における温度補償は、濃度の補正
精度を階調ステップに相当するレベルまで上げ、如何な
る環境温度で記録しても、各階調ステップの濃度が正確
に再現できることが要求される。
【0009】一般的に、現在ビデオプリンタと呼ばれる
NTSCビデオ画像をハードコピーする比較的記録画像
の小さい(たとえばA6サイズ)熱転写プリンタなどで
は、入力画像の多くが、濃度分布の比較的平均した自然
画であることと、ラインサーマルヘッドの長さが短いこ
とから、主走査方向の蓄熱の影響による画質の低下は少
なく、第1、第2の従来例のように、環境温度の変化お
よび、サーマルヘッド内での主走査方向の蓄熱量を平均
値にて代表して温度補償を行っており、このような分野
でのハードコピーには非常に有効的である。しかしなが
ら、ハイビジョン画像のようなNTSCビデオ画像に比
べ非常に高精細な画像を記録する場合、より精度の高い
階調再現性、色再現性が要求される。また、主走査方向
に急激な濃度変化を持った画像(たとえば、副走査方向
に限らず主走査方向においても急峻な濃度分布をコンピ
ュータグラフィックスなどの画像)の記録においては、
サーマルヘッドの長手方向(画像の主走査方向)の蓄熱
量が一様ではなく、画質に与える影響を無視できないレ
ベルとなる。さらには、OA化の発達により記録サイズ
がA4以上の記録に対応するため、ビデオプリンタに比
べ長いサーマルヘッドの使用が不可欠となっている。し
たがって、より高画質、大画面な画像に対するハードコ
ピーにおいては、第1および第2の従来例での温度補償
では、発熱体基板での蓄熱量を主走査方向の平均値によ
り代表し、補正を行っているため、主走査方向に急激な
濃度変化を持った画像を記録する場合、記録濃度の変動
を十分に補正できず、場合によっては過補償となり、画
質を低下させるという問題点を有していた。
【0010】また、第3および第4の従来例では、現実
には測定することが難しいサーマルヘッドの主走査方向
の蓄熱量から如何に印加エネルギーを補正すればよいか
が確立されていないため、実験やシミュレーションなど
による多くのデータから補正値を求めていた。しかし、
その補正値はその記録条件におけるものでしかなく、そ
れ以外の条件における補正値は経験や試行錯誤により決
めざるを得ず、如何なる環境温度で記録しても、全階調
レベルの濃度を正しく再現させることは極めて難しいと
いう問題点を有している。
【0011】さらに、いずれの従来例においても、低速
での記録に対しては影響の少ない発熱体内での第3の蓄
熱を考慮しておらず、より高速記録かつ高画質記録を行
う場合には、この発熱体内での第3の蓄熱による画像の
エッジのなまりなどの画質劣化を生じるという問題点も
有している。
【0012】本発明は上記問題点に鑑み、主走査方向に
急激な濃度変化を持った画像に対しても、環境温度の変
動やサーマルヘッド自体の蓄熱による記録濃度の変動を
精度よく補正し、全階調レベルの濃度が正確に再現でき
るような温度補償を行え、高速記録時に対しては、発熱
体内での第3の蓄熱を考慮し、この第3の蓄熱による画
像のエッジのなまりなどの画質劣化を改善するサーマル
階調記録装置を提供することを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明のサーマル階調記録装置は、複数の発熱体を
ライン状に配列したサーマルヘッドと、このサーマルヘ
ッドのヘッド基台の温度を検出するヘッド温度検出手段
と、記録すべき濃度データを前記各発熱体に印加するパ
ルス幅データに変換するγ補正手段と、前記発熱体を複
数のグループに分割し、前記グループ毎に前記サーマル
ヘッドの発熱体基板での蓄熱量を予測するグループ別蓄
熱量予測手段と、このグループ別蓄熱量予測手段の出力
と前記ヘッド温度検出手段の出力とから前記パルス幅デ
ータに対する補正値を決定する補正値決定手段と、この
補正値を前記パルス幅データに作用させて補正パルス幅
データに補正するパルス幅補正手段と、この補正パルス
幅データに応じて前記サーマルヘッドを駆動するヘッド
駆動手段とを備え、前記グループ別蓄熱量予測手段は、
1ライン周期前に前記各発熱体に印加された前記補正パ
ルス幅データを基に、前記グループ毎の蓄熱量を予測す
るものである。
【0014】さらに、高速記録時に対して、発熱体内で
の第3の蓄熱を考慮し、この第3の蓄熱による画像のエ
ッジのなまりなどの画質劣化を改善するために、パルス
幅補正手段の出力である現ラインの補正パルス幅データ
と前ライン記録時に発熱体に印加された補正パルス幅デ
ータの差に所定の係数を乗じた値を、前記現ラインの補
正パルス幅データに加算し、新たな補正パルス幅データ
を作成する第2のパルス幅補正手段を付加したものであ
る。
【0015】
【作用】上記構成により、本発明のライン状に配列され
た発熱体を有するサーマル階調記録装置では、発熱体の
位置的に離散した条件と、1ライン記録周期毎に記録を
行う時間的にも離散した条件を有しており、この1ライ
ン記録周期内に、各発熱体が発熱により主走査方向の発
熱体基板での蓄熱に影響をおよぼす範囲を含めてそれ以
上の範囲を1グループとしてサーマルヘッドを分割す
る。そして、グループ別蓄熱量予測手段は、この1グル
ープ内での過去の印加エネルギーによる発熱体基板の蓄
熱と、前述した主走査方向の左右のグループ間での熱の
流入出による発熱体基板での蓄熱とを含めた温度上昇を
予測し、ヘッド温度検出手段は、ヘッド基台の蓄熱によ
る温度上昇とサーマルヘッドの置かれている環境の温度
との和をヘッド基台温度として測定する。これらの、環
境の温度およびヘッド基台の蓄熱と発熱体基板の蓄熱に
よる記録濃度の影響を補正するためにパルス幅データに
対する補正値を補正値決定手段によりライン毎に決定
し、この補正値を用いてパルス幅補正手段にて次のライ
ンのパルス幅データを補正するように作用させる。さら
に、発熱体自身の熱時定数により熱的過渡応答がなまる
分を、第2のパルス幅補正手段にて打ち消すように作用
させる。
【0016】
【実施例】以下本発明の一実施例を図面に基づいて説明
する。図1は、入力された濃度データに対して環境温度
や、サーマルヘッド内での蓄熱の影響を考慮して、忠実
にその濃度を記録することを目的とし、パルス幅制御に
より階調を記録する本発明の第1の実施例のサーマル階
調記録装置の構成図である。
【0017】図1において、101は入力される記録す
べき濃度データを変換してパルス幅データを出力するγ
補正手段、102は発熱体をライン状に配列したサーマ
ルヘッド、103はサーマルヘッド102のヘッド基台
の温度を検出するヘッド温度検出手段、104はサーマ
ルヘッド102の多数の発熱体を複数のグループに分割
し、このグループ毎にサーマルヘッド102の発熱体基
板での蓄熱量を予測するグループ別蓄熱量予測手段、1
05はグループ別蓄熱量予測手段104の出力であるグ
ループ毎の予測蓄熱量を各発熱体に対応した予測蓄熱量
に補間する補間手段、106はヘッド温度検出手段10
3の出力と補間手段105の出力とから各発熱体に対応
する補正値を決定する補正値決定手段、107は補正値
決定手段106の補正値をγ補正手段101の出力であ
るパルス幅データに作用させて補正パルス幅データに補
正するパルス幅補正手段、108はパルス幅補正手段1
07の出力の補正パルス幅データに応じてサーマルヘッ
ド102を駆動するサーマルヘッド駆動手段である。
【0018】また、熱転写記録や感熱記録おいて、印加
エネルギーと記録濃度との間には図2に示すようなγ特
性と呼ぶ非線形な関係があり、精度良い濃度階調を得る
ためには、このγ特性を補正する必要がある。本実施例
のγ補正手段101は、ROMテーブルにより構成して
おり、基準となるヘッド基台温度でかつ基準となる発熱
体基板に対する蓄熱量のときの、入力された濃度データ
に対応した濃度を記録するために必要な一組のパルス幅
データがヘッド基台温度に対応して書き込まれており、
濃度データをこのROMのアドレスに与えると、その濃
度を記録するのに必要な印加エネルギーを与えるための
パルス幅がデータとして読み出されることになる。
【0019】グループ別蓄熱量予測手段104は、パル
ス幅補正手段107から出力されて、サーマルヘッド1
02の各発熱体に印加される補正パルス幅データを基
に、複数のグループ内でのサーマルヘッド102の発熱
体基板の蓄熱量を予測する。補間手段105はグループ
毎の予測蓄熱量を各発熱体に対応した予測蓄熱量に補間
する。補正値決定手段106は、補間手段105から出
力される各発熱体の補間予測蓄熱量と、ヘッド温度検出
手段103が検出したヘッド基台温度を用いて、前述の
基準ヘッド基台温度でかつ発熱体基板の基準蓄熱量の状
態に対する補正値を算出するもので、ヘッド温度と蓄熱
量の増加に対して、補正パルス幅データは単調減少す
る。パルス幅補正手段107は、シートγ補正手段10
1が出力するパルス幅データに補正値決定手段106が
与える補正値を作用させることにより各発熱体に対して
温度補償された補正パルス幅データを出力するよう構成
されている。
【0020】次に、補正値を決定する方法について述べ
る。図3は、サーマルヘッド102の主走査方向に対し
てほぼ中央での断面図を示しており、301は発熱体、
302は発熱体301に電流を通電する電極、303は
セラミックでできた発熱体基板、304はアルミで構成
されたヘッド基台、305はグレーズ層、306は接着
層、307は耐摩耗層、308はヘッド基台の温度を測
定するためのサーミスタである。
【0021】図3に示したサーマルヘッド102の各部
の温度を解明するために、サーマルヘッド102内の熱
の伝達を熱的等価回路でモデル化した。この等価回路モ
デルを図4に示す。この熱的等価回路は、サーマルヘッ
ド102の熱抵抗と熱容量の大きさを考慮した近似を基
にモデル化したもので、電気抵抗は熱抵抗、電気容量は
熱容量、電圧は温度、電流は単位時間あたりのエネルギ
ーを表わしている。
【0022】図4において、C1 は発熱体301に対応
した単位長さあたりの熱容量、C2は発熱体基板303
に対応した単位長さあたりの熱容量、C3 はヘッド基台
304に対応した熱容量、R1 はグレーズ層を中心とし
た発熱体301と発熱体基板303の間の熱抵抗、R2
は発熱体基板303とヘッド基台304の熱抵抗、R 3
はヘッド基台304と周囲の空気との間の熱抵抗(放熱
板等を含む)、R4 は発熱体基板303の主走査方向の
熱抵抗、E0 〜EN-1 は単位時間あたりに各発熱体に加
えた印加エネルギー(電力)、T0 は周囲の空気などの
環境温度、T1, 0 〜T1,N-1 は各発熱体の温度、T2,-n
〜T2,N+n-1 は各発熱体の温度、T3はヘッド基台温
度を表わす。
【0023】ここで、サーマルヘッド102におけるグ
ループ分割を図5に示す。図5において、サーマルヘッ
ド102は画像の主走査サイズに対応するN個の発熱体
301を有しており、これら発熱体301をr0 〜r
N-1 (Nは整数)とし、サーマルヘッド102の両端の
発熱体γ0 および発熱体rN-1 の外側に発熱しない仮想
の発熱体n個(r-n〜r-1、rN 〜rN+n-1 )がそれぞ
れ配置している形となっている。これら発熱体(r-n
N+n-1 )を複数のグループrg0 〜rgN/n+1(nは
各グループ内の発熱体数)に分割する。グループr
0 ,rgN/n+1 は前述のように、記録に関与しない仮
想の発熱体をn個それぞれ配置しているグループであ
る。
【0024】発熱体基板303は記録画像の主走査サイ
ズより長く、この部分への熱の流出による影響を考慮す
ることにより、良好な補正が行える。したがって、図4
に示す熱的等価回路モデルは、サーマルヘッド102の
両端の仮想の発熱体n個は発熱しないため、等価的に熱
容量C1 、熱抵抗R1 を除去した形となる。
【0025】以下、図4に示す等価回路モデルを用い
て、サーマルヘッド102における蓄熱の解析を行う。
各画素に対応する入力データである単位時間当りの印加
エネルギーE(t)i は、図6に示すように、1ライン
の記録周期TLにおいて、振幅est、所望の濃度を記録
するためのmライン目のパルス幅データPw(m)i
矩形波である。発熱体基板303での熱時定数C2 2
と、1ラインの記録周期TLは通常TL≪C2 2 なる
関係にあるので、発熱体基板温度T2 以降の振舞いを求
めるには印加エネルギーE(t)i を1ライン毎の時間
平均値e(t)iとして用いることができ、e(t)i
は図6にも示すように、(1)式で表わせる。ただし、
mは記録ライン数を示す。
【0026】 e(t)i =(Pw(m)i /TL)・est …(1) i:主走査方向の発熱体位置(iは整数、i=0〜N−
1) また、発熱体基板303での蓄熱による温度上昇分P
(t)i を(2)式に示すように定義する。ここで、T
2 (t)i は発熱体基準温度、T3 (t)i はヘッド基
台温である。ただし、ヘッド基台温度T3 (t)i は熱
容量が非常に大きく、主走査方向にほぼ一定となるた
め、(3)式と設定できる。
【0027】 P(t)i =T2 (t)i −T3 (t)i …(2) T3 (t)i =T3 (t) …(3) したがって、図4に示す等価回路モデルにおける、発熱
体基板303での電流の収支を(4)式で表わすことが
できる。
【0028】
【数1】
【0029】このとき、ヘッド基台温度T3 (t)
i は、ヘッド基台304に設置されたサーミスタ308
を用いたヘッド温度検出手段103により1ライン記録
毎に正確に測定することが可能であるため、発熱体基板
温度T2 (t)i は各温度の初期値と印加電力e(t)
i だけで予測するよりも、ヘッド温度検出手段103に
よる実測値を併用する方が精度の点から望ましい。
【0030】ここで、現実の記録動作に即して考え、
(4)式を時間的にライン周期毎に離散化し、位置的に
離散化したものが(5)式である。ただし、各グループ
位置をj(jは整数、j=0〜N/n+1)、サーマル
ヘッド102に印加したパルス幅データPw(m−1)
i の1グループあたりの平均値をPw(m−1)j とす
る。
【0031】
【数2】
【0032】Pg(m)j は発熱体をn個ずつにグルー
プ化した予測蓄熱量である。ここで、発熱体をn個ずつ
まとめて1グループとしたのは、(5)式の発散を抑
え、安定化させるためであり、この(5)式の関数が安
定となる条件は(6)式となる。
【0033】 1/2≧(TL/n2 2 4 1/2 >0 …(6) したがって、1グループ内の発熱体数nは1ラインの記
録周期TLおよび主走査方向の発熱体基板の熱時定数よ
り(6)式を用いて、最適な値を設定する。
【0034】以上のように、(5)式を用いると、1ラ
インに1回だけの演算で安定にグループ別予測蓄熱量P
g(m)j を算出できる。(5)式に示したグループ別
予測蓄熱量Pg(m)j は、連続する3グループにおけ
る中央のグループの発熱体基板の蓄熱量が、1ライン周
期前のこの中央のグループ内の発熱体基板の蓄熱量およ
びこの中央のグループの両隣のグループの発熱体基板の
蓄積と、前記1ライン周期前の前記中央のグループの発
熱体に印加される補正パルス幅データとから定まること
を意味しており、副走査方向に加えて主走査方向の蓄熱
の影響をも考慮した予測蓄熱量を示している。
【0035】ここで、(5)式に示したグループ別予測
蓄熱量Pg(m)j を(7)式に示す各発熱体に対応す
る蓄熱量に線形補間し、そのときの補間蓄熱量をP
(m)iとする。
【0036】 P(m)i =Pg(m)j +{Pg(m)j+1 −Pg(m)j }・i/n …(7) (i:0〜N−1、j:(i/n)の整数部) さらに、(7)式に示した補間蓄熱量P(m)i を用
い、作用すべき補正値について述べる。定性的には、ヘ
ッド基台温度が高く、発熱体基板での蓄熱量が大きくな
ると、発熱体に印加するパルス幅データを減少させる働
きをするもので、実験により、低速記録時では、1グル
ープ毎の補正値は第1の従来例に記載された補正係数K
a(第1の従来例では式(12)で示されている)にお
ける蓄熱量Pmの項を(7)式に置き換えた(8)式に
示す式、高速記録時では、1グループ毎の補正値は第2
の従来例に記載された補正値τh (m)(第2の従来例
では数(5)で示されている)における蓄熱量P(m)
の項を(7)式に置き換えた(9)式に示す式が良好な
特性を示している。
【0037】
【数3】
【0038】 K2(m)i =A3 ・(T3 (m)+P(m)i )+A4 …(9) (A3 ,A4 :定数) そこで、γ補正手段101により得られたパルス幅デー
タPwin(m)i に対して、(8)式、(9)式に示
す補正値K1(m)i およびK2(m)i を、低速記録
時では(10)式、高速記録時では(11)式に示すよ
うに作用させ、ヘッド駆動手段108に出力する補正パ
ルス幅データPw(m)i を算出する。
【0039】 Pw(m)i =K1(m)i ・Pwin(m)i …(10) Pw(m)i =K2(m)i +Pwin(m)i …(11) 以上のように、副走査方向に加えて主走査方向の蓄熱の
影響をも考慮した補正値は一般式の関数として表わすこ
とができるため、サーマルヘッド固有の定数A 1
2 ,A3 ,A4 、を求めれば、様々な画像、駆動条件
に対して、柔軟に対応することができる。そして、(1
0)式、(11)式に示すようにパルス幅データPwi
n(m)i を補正した補正パルス幅データPw(m)i
を基に、サーマルヘッド102を駆動すれば、記録時の
環境温度、ヘッド基台の蓄熱や記録する画像の種類に影
響されない、全濃度範囲の各濃度をそれぞれ一定に保つ
ことができる。
【0040】図7は図1に示す構成の一実現例を示した
回路ブロック図である。図7において、701はCP
U、702はCPU701のプログラムや定数値などが
記憶されているROM、703はスタックや、変数、ワ
ークエリアとして使用するRAM、704は各画素毎の
記録すべき階調に応じた濃度データおよびヘッド温度検
出手段103からのヘッド基台温度を入力する入力ポー
ト、705はヘッド駆動手段108にパルス幅補正デー
タを出力する出力ポート、706aおよび706bはそ
れぞれアドレスバスおよびデータバスである。ROM7
02には、CPU701のプログラムや定数値の他に、
γ補正手段101であるγ補正テーブルがあらかじめ記
憶されている。
【0041】本実施例のサーマル階調記録装置は、サー
マルヘッド102と、図示していないが、イエロー
(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の3色に塗り分
けたインクシートを用いて、1色内は1ライン毎に線順
次に記録し、1色毎に受像紙を巻き戻しながら3色面順
次にて記録する。ここでは、3色の面順次の記録はそれ
ぞれ同様の動作をするため、図8には図7に示した一実
現例の、特に、1色記録時の温度補償動作についてのフ
ローチャートを示す。また図9〜図14は図8に示した
各処理のサブルーチンを具体的に示したものである。以
下、上述した温度補償に必要な各数式をもとに、図1お
よび図8〜図14を用いて環境温度、ヘッド基台に対す
る蓄熱、および発熱体基板における主走査方向の蓄熱の
影響による濃度変化を補正する温度補償動作を詳しく説
明する。
【0042】図8において、まず、1色目の記録開始時
に初期設定処理S1を行う。図9に示すように、初期設
定処理S1では、1ライン目の記録に際し、ライン数を
カウントする変数mを1に初期化し、補正パルス幅デー
タPw(i)、およびグループ化された発熱体基板での
蓄熱量Pg0(j)をゼロにする(S101〜S10
7)。iは発熱体を順次カウントし、jはグループ化し
たグループを順次カウントする変数である。
【0043】記録開始時の初期設定処理S1を完了後、
グループ毎の発熱体基板での蓄熱量を予測するグループ
別蓄熱量予測処理S2を行う。図10に示すように、グ
ループ別蓄熱量予測処理S2では前ラインで各発熱体に
印加された補正パルス幅データPw(i)を順次読みだ
し、両端グループを除いた各グループrg1 〜rgN/ n
(グループ内の発熱体数はn)毎に積算し、それをグル
ープ内の発熱体数nで除算する(S201〜S20
6)。すなわち、各グループrg1 〜rgN/n 毎の入力
された平均パルス幅データPwg(j)を算出する。し
たがって、m=1のときは、初期設定処理S1にて設定
した補正パルス幅データPw(i)を積算することにな
る。この各グループrg1 〜rgN/n 毎の平均パルス幅
データPwg(j)を基に、(5)式に示すように、各
グループ毎の発熱体基板での蓄熱量Pg1(j)を導出
する(S207〜S209)。両端のグループrg0
rgN/ n+1 の発熱体基板での予測蓄熱量Pg1(0)お
よびPg1(N/n+1)は以下の条件を考慮し導出す
る(S210)。
【0044】・両端のグループでの発熱体は発熱せずに
画像記録に関与しない。 ・両端のグループのさらに端は発熱体基板が存在しない
ため蓄熱しない。 S201〜S210では現記録ラインでのグループ別予
測蓄熱量Pg1(j)を導出するが、次ラインでの演算
では現記録ラインでのグループ別予測蓄熱量Pg1
(j)を必要とするため、グループ別予測蓄熱量Pg1
(j)の内容をグループ別予測蓄熱量Pg0(j)に転
送し、次ラインの演算に備える(S211〜S21
3)。グループ別蓄熱量予測手段104は、このグルー
プ別蓄熱量予測処理S2にて実現される。
【0045】グループ毎の発熱体基板での蓄熱量の予測
を完了した後、各グループ別予測蓄熱量Pg1(j)を
各発熱体r0 〜rN-1 に対応した予測蓄熱量に補間する
補間処理S3を行う。図11に示すように、補間処理S
3では隣接する各グループ別予測蓄熱量Pg1(j)、
Pg1(j+1)の差をグループ内の発熱体数nで除算
し、1発熱体毎の予測蓄熱量キザミPKを求める。そし
て、この予測蓄熱量キザミPKをグループ別予測蓄熱量
Pg1(i)に1発熱体毎に対応して加算し、各グルー
プ別予測蓄熱量Pg1(j)、Pg1(j+1)間の発
熱体毎の補間を順次行っていく(S301〜S30
7)。特に、両端のグループでの補間を行うにあたって
は、画像記録に寄与しない各両端のグループを考慮した
補間を行っている(S308〜S315)。補間手段1
05は、この補間処理S3にて実現される。
【0046】補間処理S3の終了後、各発熱体の補正値
を決定する補正値決定処理S4を行う。図12に示すよ
うに、補正値決定処理S4ではヘッド温度検出手段10
3よりヘッド基台温度T3 を読み込む(S401)。続
いて、(8)式、(9)式に示すように各発熱体に対す
る補正値K1(i)または補正値K2(i)を導出する
(S402〜S404)。補正値決定手段106は、こ
の補正値決定処理S4にて実現される。
【0047】次に、印加エネルギーと記録濃度との間の
γ特性と呼ぶ非線な関係を補正するγ補正処理S5を行
う。図13に示すように、γ補正処理S5では各画素毎
の記録すべき階調に応じたmライン目の記録濃度データ
D(i)を入力し、あらかじめ記憶されているROM7
02内のγ補正テーブルに与え、その濃度を記録するの
に必要な各発熱体に印加するパルス幅データPwin
(i)を読み出す(S501〜S505)。γ補正手段
101は、γ補正処理S5にて実現される。
【0048】前述した補正値K1(i)または補正値K
2(i)を基に、パルス幅データPwin(i)に対し
て補正を行うパルス幅補正処理S6を行う。図14に示
すように、パルス幅補正処理S6では(10)式、(1
1)式に示すように、補正値K1(i)または補正値K
2(i)をパルス幅データPwin(i)に対して作用
させ、補正パルス幅データPw(i)を導出する(S6
01〜S604)。そして、各発熱体に対する補正パル
ス幅データPw(i)をヘッド駆動手段108に出力
し、サーマルヘッド102を駆動する(S605)。パ
ルス幅補正手段107は、このパルス幅補正処理S6に
て実現される。
【0049】以上の動作にて、1ラインの動作を終了す
るが、2ライン目以降も1ライン目の動作と同様であ
り、1色の画像の副走査方向の所定ライン数(Lライ
ン)記録を終了すると、記録紙を第1ライン目の位置に
搬送し、インクシートの次色の頭出しを行い、1色目の
記録と同様に2色目、3色目の記録を行う。
【0050】ここで、本実施例の効果について従来との
比較を行うため、図15に示すような主走査方向に濃度
分布の急峻な中間調のパターン画像を記録することにつ
いて説明する。図15において、601は高濃度のシア
ン、602は低濃度のシアン、603は中濃度のシアン
を記録するように濃度データを入力する。
【0051】図16(A),(B)は図15に示したパ
ターン画像を入力画像として、それぞれ本実施例と従来
にて記録したときの、○,●,△,▲に示す矢印間での
主走査方向のシアンインクの濃度分布を測定したもので
ある。図17(A),(B)は図15に示したパターン
画像を入力画像として、それぞれ本実施例と従来にて記
録したときの、◇に示す矢印間での主走査方向のシアン
インクの濃度分布を測定したものである。また、記録条
件を(表1)に示す。本実施例では1グループ内の発熱
体数nを64とした。
【0052】
【表1】
【0053】図16(B)の従来例に示す○および△で
は主走査方向の濃度変動が改善されておらず、副走査方
向に対しても○と●、△と▲にそれぞれ濃度差が生じて
おり、十分温度補償が行われていない。それに対して、
図16(A)に示すように、本実施例によると、△では
主走査方向の濃度変動が従来に比べ非常に少なくなり、
副走査方向に対しても○と●、△と▲のそれぞれの濃度
にほとんど差がなく、従来に比べ大きく改善されている
のがよく判る。
【0054】また、図17(A),(B)に示す◇は主
走査方向の画像の端部の濃度を測定したもので、図17
(B)に示すように、従来では主走査方向の画像の端部
での濃度低下を生じており、図17(A)に示すように
本実施例によると、主走査方向の画像の端部での濃度は
低下することなくほぼ一定の記録濃度に改善されてい
る。
【0055】このように、主走査方向の濃度変化の激し
い画像に対して、従来、対応しきれずに生じる濃度変動
および、主走査方向の画像の端部での濃度低下が大きく
改善されている。
【0056】以上のように第1の実施例によれば、サー
マルヘッドの発熱体をグループ毎に分割して主走査方向
の発熱体基板のグループ毎の蓄熱量を予測するグループ
別蓄熱量予測手段104により、全発熱体に対して予測
する場合に比べ、ほぼ1/nに演算量を削減することが
できる。
【0057】また、予測すべきグループ毎の蓄熱量の演
算に(5)式なる漸化式を用いることにより、過去の全
ラインの影響による蓄熱量を、1ライン毎の少量の演算
で、精度よく求めることができる。
【0058】さらに、グループ別の予測蓄熱量を各発熱
体に対応した予測蓄熱量に補間する補間手段105によ
り、温度補償精度をより向上させ、副走査のみならず主
走査方向の発熱体基板の蓄熱量を予測していることか
ら、急激な濃度変化を持った画像に対しても、環境温度
の変動やサーマルヘッド自体の蓄熱による記録濃度の変
動を精度よく補正するため、全階調レベルの濃度が正確
に再現でき、常に、入力画像の種類に左右されることな
く高画質な画像を記録することができる。
【0059】そして、グループ別蓄熱量予測手段104
では、サーマルヘッド102の両端の記録に関与しない
それぞれn個ずつの仮想の発熱体を設定した発熱体基板
の領域を考慮した蓄熱量の算出により、記録する画像の
両端での濃度の低下を補正することができる。
【0060】また、補正値決定手段106は主走査方向
の蓄熱の影響をも考慮した補正値を一般式として表わし
たことにより、基準となるγ補正手段とヘッドの特性と
印加エネルギーから、計算により極めて精度よく補正値
を決定できるなど多くの効果を得ることができる。
【0061】次に、本発明の第2の実施例について図面
を参照しながら説明する。図18は本発明の第2の実施
例を示すサーマル階調記録装置の構成図である。図18
において、101〜108は第1の実施例と同様である
が、補正値決定手段106はヘッド温度検出手段103
の出力とグループ別蓄熱量予測手段104の出力とから
グループ毎の補正値を決定し、補間手段105は補正値
決定手段105の出力を各発熱体に対応した補正値に補
間する。
【0062】ここで、前述した(5)式に示したグルー
プ別予測蓄熱量Pg(m)j を用い、パルス幅データに
作用させる補正値について説明する。第1の実施例で述
べたように、低速記録時では、(12)式に示す式、高
速記録時では、(13)式に示す式が良好な特性を示し
ている。
【0063】
【数4】
【0064】 K4(m)j =A3 ・(T3 (m)+Pg(m)j )+A4 …(13) また、(12)式、(13)式に示したグループ毎の補
正値K3(m)j 、K4(m)j を(14)式、(1
5)式に示す各発熱体に対応するように線形補間し、そ
のときの補間補正値をそれぞれK3(m)i 、K4
(m)i とする。
【0065】 K3(m)i =K3(m)j +{K3(m)j+1 −K3(m)j }・i/n (i:0〜N−1、j:(i/n)の整数部) …(14) K4(m)i =K4(m)j +{K4(m)j+1 −K4(m)j }・i/n (i:0〜N−1、j:(i/n)の整数部) …(15) そこで、γ補正手段101により得られたパルス幅デー
タPwin(m)i に対して、(14)式、(15)式
に示す補正値K3(m)i およびK4(m)iを、低速
記録時では(16)式、高速記録時では(17)式に示
すように作用させ、ヘッド駆動手段108に出力するパ
ルス幅補正データPw(m)i を算出する。
【0066】 Pw(m)i =K3(m)i ・Pwin(m)i …(16) Pw(m)i =K4(m)i ・Pwin(m)i …(17) 第2の実施例の構成の一実現例は、第1の実施例と同様
に図7に示されており、図19は図7に示した一実現例
の、1色記録時の温度補償動作についてのフローチャー
トを示す。図19において、S1〜S8は第1の実施例
と同様の処理を行うが、補間処理S3と補正値決定処理
S4が第1の実施例とは処理順序が逆の形となってい
る。
【0067】以下、上述した温度補償に必要な各数式を
もとに、図18および図19を用いて温度補償動作につ
いて詳しく説明する。第2の実施例では、図19に示す
ように、第1の実施例と同様に初期設定処理S1を行
い、グループ毎の発熱体基板での蓄熱量の予測(S2)
を完了した後、各グループ別予測蓄熱量Pg1(j)か
ら各グループ毎の補正値を決定する補正値決定処理S4
を行う。このグループ毎の補正値の算出は、図12に示
した補正値決定処理S4のサブルーチンにおいて、各発
熱体毎の蓄熱量P(i)をグループ毎の蓄熱量Pg1
(j)に、発熱体位置カウント変数iをグループ位置カ
ウント変数jに、ループカウント数をNから(N/n+
2)に設定すれば、第1の実施例と同一の処理で実現で
きる。
【0068】そして、グループ化された補正値から各発
熱体に対応した補正値に補間する補間処理S3を行う。
この各発熱体に対応する補正値の算出は、図11に示し
た補間処理S3のサブルーチンにおいても、各グループ
毎の蓄熱量Pg1(i)を各発熱体毎の補正値Kg3
(i)またはKg4(i)に変換すれば第1の実施例と
同一の処理で実現できる。
【0069】さらに、γ補正処理S5、パルス幅補正処
理S6と続くが、第1の実施例と同様の処理を行い、1
ラインの動作を終了する。2ライン目以降も1ライン目
の動作と同様であり(mは記録ライン数をカウントする
変数)、1色の画像の副走査方向の所定ライン数(Lラ
イン)記録を終了すると、記録紙を第1ライン目の位置
に搬送し、インクシートの次色の頭出しを行い、1色目
の記録と同様に2色目、3色目の記録を行う。
【0070】以上のように第2の実施例によれば、各グ
ループ毎に予測した蓄熱量から、補正値決定手段106
により各グループ毎の補正値を求める処理では、第1の
実施例における各発熱体に対する補正値を決定する処理
に比べ、演算量を低減することができるので、1ライン
周期の短い高速記録に対応できる。また、グループ別の
補正値を各発熱体に対応した補正値に補間する補間手段
105により、グループ毎の分割のみによる温度補償に
比べ、補償精度を向上でき、従来に対しても、第1の実
施例と同様の効果を得ることができる。
【0071】次に、本発明の第3の実施例について図面
を参照しながら説明する。図20は本発明の第3の実施
例を示すサーマル階調記録装置の構成図である。図20
において、101〜108は第1の実施例と同様であ
る。1301はパルス幅補正手段107の出力の補正パ
ルス幅データに対し1次微分処理を行う第2のパルス幅
補正手段であり、パルス幅補正手段107とヘッド駆動
手段108の間に介装されている。
【0072】第3の実施例の構成の一実現例は第1の実
施例と同様に図7に示されており、図21,22は図7
に示した一実現例の、1色記録時の温度補償動作につい
てのフローチャートを示す。図21において、S1〜S
5、S7、S8は第1の実施例と同様の処理を行い、図
22は図21に示したパルス幅補正処理S1400のサ
ブルーチンを具体的に示したものである。
【0073】ここで、パルス幅データの補正を行うパル
ス幅補正処理S1400は、第1の実施例におけるパル
ス幅補正処理S6の内のS602とパルス幅補正データ
Pw(i)に対する1次微分処理を行う第2のパルス幅
補正処理S1402を一体化して施すことにより実現す
る。
【0074】S1400は、すなわち、現ラインの補正
パルス幅データ{K1(i)・Pwin(i)}または
{K2(i)+Pwin(i)}と前ライン記録時に前
記発熱体に印加された補正パルス幅データPw(i)の
差に、所定の係数Bを乗じた値を現ラインの補正パルス
幅データ{K1(i)・Pwin(i)}または{K2
(i)+Pwin(i)}に加算した新たな第2の補正
パルス幅データPwn(i)を算出し、ヘッド駆動手段
108に出力し、サーマルヘッド102を駆動する。パ
ルス幅補正手段107および第2のパルス幅補正手段1
301はパルス幅補正処理S1400にて実現できる。
【0075】以上の動作にて、1ラインの温度補償動作
を終了するが、第1の実施例と同様に、2ライン目以降
も1ライン目の記録動作と同様であり(mは記録ライン
数をカウントする変数)、1色の画像の副走査方向の所
定ライン数(Lライン)記録を終了すると、記録紙を第
1ライン目の位置に搬送し、インクシートの次色の頭出
しを行い、1色目の記録と同様に2色目、3色目の記録
を行う。
【0076】図23(A),(B)は高濃度から低濃度
さらに高濃度をそれぞれ第3の実施例と従来にて記録し
たときの副走査方向に濃度分布を測定したものである。
また、記録条件を(表2)に示す。本実施例では1グル
ープ内の発熱体数nを64、パルス幅補正処理S140
0での係数Bを0.3とした。
【0077】
【表2】
【0078】図23(A),(B)に示すように、本実
施例によると、発熱体自体の熱時定数によって決まる熱
的過渡応答のなまりにより生じる第3の蓄熱による濃度
の立ち上がりおよび立ち下がりのなまりが、急峻となり
改善されているのがよく判る。
【0079】このように第3の実施例によれば、より高
速な記録では、第2のパルス幅補正手段1301を設け
ることにより、発熱体内での第3の蓄熱による画像の劣
化をも除去でき、画質的にはエッジでの濃度のなまりに
よる画像のボケを改善することができる。
【0080】さらに、本発明の第4の実施例について説
明する。図24は本発明の第4の実施例を示すサーマル
階調記録装置の構成図である。図24において、101
〜108は第2の実施例と同様であり、第2のパルス幅
補正手段1301は第3の実施例と同様に動作する。し
たがって、第4の実施例においても、第3の実施例と同
様に、より高速な記録では、第2のパルス幅補正手段1
301を設けることにより、発熱体内での第3の蓄熱に
よる画像の劣化をも除去でき、画質的にはエッジでの濃
度のなまりによる画像のボケを改善することができる。
【0081】ここで、第3、第4の実施例では第2のパ
ルス幅補正手段1301はパルス幅補正手段107の出
力のパルス幅補正データに対して、1次微分を施してい
るが、γ補正手段101の出力の補正パルス幅データに
対して、第2のパルス幅補正手段1301により1次微
分を施す構成としてもよい。
【0082】なお、本発明の各実施例ではγ補正手段1
01を図7に示す一実現例のROM702内に、テーブ
ルとしてを構成したが、外部に独立したROM、RAM
を用いたテーブルとしてもよい。また、γ補正手段10
1の入力は濃度データとしているが、輝度データでもよ
いことは言うまでもない。
【0083】また、本発明の各実施例では補間手段10
5では補間を線形補間としているが、この補間はたとえ
ばスプライン補間など、非線形補間を行ってもよい。さ
らに、本発明の各実施例ではマイクロコンピュータによ
る一実現例を示したが、ロジックによる構成にて実現し
てもよい。
【0084】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、サーマル
ヘッドの発熱体をグループ毎に分割して主走査方向の発
熱体基板のグループ毎の蓄熱量を予測するグループ別蓄
熱量予測手段により、全発熱体に対して予測する場合に
比べ演算量を大幅に削減することができ、予測すべきグ
ループ別の蓄熱量の演算に(5)式なる漸化式を用いる
ことにより、過去の全ラインの影響による蓄熱量を、1
ライン毎の少量の演算で、精度よく求めることができ
る。さらに、副走査方向のみならず主走査方向の発熱体
基板の蓄熱量を予測していることから、急激な濃度変化
を持った画像に対しても、環境温度の変動やサーマルヘ
ッド自体の蓄熱による記録濃度の変動を補正できるた
め、全階調レベルの濃度が正確に再現でき、常に、入力
画像の種類に左右されることなく高画質な画像を記録す
ることができる。
【0085】また、補正値決定手段は主走査方向の蓄熱
の影響をも考慮した補正値を一般式で表わしたことによ
り、基準となるγ補正手段とヘッドの特性と印加エネル
ギーから、計算により極めて精度よく補正値を決定でき
る。
【0086】そして、第2のパルス幅補正手段により得
た新たな第2の補正パルス幅データでサーマルヘッドを
駆動することにより、第3の蓄熱による画像のエッジの
なまりなどの画質劣化を改善することができるなど様々
な大きな効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例のサーマル階調記録装置
の構成図
【図2】印加エネルギーと記録濃度との間のγ特性と呼
ぶ非線形な関係を示す図
【図3】本発明の第1の実施例のサーマル階調記録装置
におけるサーマルヘッド102の断面図
【図4】サーマルヘッド102内における熱的等価回路
モデル図
【図5】サーマルヘッド102におけるグループ分割を
示す図
【図6】各発熱体に対応する単位時間当りの印加エネル
ギーを示す図
【図7】本発明の第1、第2、第3、第4の実施例にお
ける一実現例を示す回路ブロック図
【図8】本発明の第1の実施例の一実現例の、特に、1
色記録時の温度補償動作についてのフローチャートを示
す図
【図9】図8における初期設定処理S1のサブルーチン
を示す図
【図10】図8におけるグループ別蓄熱量予測処理S2
のサブルーチンを示す図
【図11】図8における補間処理S3のサブルーチンを
示す図
【図12】図8における補正値決定処理S4のサブルー
チンを示す図
【図13】図8におけるγ補正処理S5のサブルーチン
を示す図
【図14】図8におけるパルス幅補正処理S6のサブル
ーチンを示す図
【図15】主走査方向に濃度分布の急峻な中間調のパタ
ーン画像を記録することについて説明する図
【図16】図15のパターン画像を入力画像として、そ
れぞれ本実施例と従来にて記録したときの、○,●,
△,▲での主走査方向のシアンインクの濃度分布を示す
【図17】図15のパターン画像を入力画像として、そ
れぞれ本実施例と従来にて記録したときの、◇での主走
査方向のシアンインクの濃度分布を示す図
【図18】本発明の第2の実施例のサーマル階調記録装
置の構成図
【図19】本発明の第2の実施例の一実現例の、特に、
1色記録時の温度補償動作についてのフローチャートを
示す図
【図20】本発明の第3の実施例のサーマル階調記録装
置の構成図
【図21】本発明の第3の実施例の一実現例の、特に、
1色記録時の温度補償動作についてのフローチャートを
示す図
【図22】図21におけるパルス幅補正処理S1400
のサブルーチンを示す図
【図23】高濃度から低濃度さらに高濃度をそれぞれ本
実施例と従来にて記録したときの副走査方向の濃度分布
を示す図
【図24】本発明の第4の実施例のサーマル階調記録装
置の構成図
【符号の説明】
101 γ補正手段 102 サーマルヘッド 103 ヘッド温度検出手段 104 グループ別蓄熱量予測手段 105 補間手段 106 補正値決定手段 107 パルス幅補正手段 108 ヘッド駆動手段 1301 第2のパルス幅補正手段

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複数の発熱体をライン状に配列したサー
    マルヘッドと、このサーマルヘッドのヘッド基台の温度
    を検出するヘッド温度検出手段と、記録すべき濃度デー
    タを前記各発熱体に印加するパルス幅データに変換する
    γ補正手段と、前記発熱体を複数のグループに分割し、
    前記グループ毎に前記サーマルヘッドの発熱体基板での
    蓄熱量を予測するグループ別蓄熱量予測手段と、このグ
    ループ別蓄熱量予測手段の出力と前記ヘッド温度検出手
    段の出力とから前記パルス幅データに対する補正値を決
    定する補正値決定手段と、この補正値を前記パルス幅デ
    ータに作用させて補正パルス幅データに補正するパルス
    幅補正手段と、この補正パルス幅データに応じて前記サ
    ーマルヘッドを駆動するヘッド駆動手段とを備え、前記
    グループ別蓄熱量予測手段は、1ライン周期前に前記各
    発熱体に印加された前記補正パルス幅データを基に、前
    記グループ毎の蓄熱量を予測することを特徴とするサー
    マル階調記録装置。
  2. 【請求項2】 グループ毎の値を各発熱体に対応する値
    に補間する補間手段を備え、グループ別蓄熱量予測手段
    の出力を前記補間手段に入力し、グループ毎の予測蓄熱
    量を前記各発熱体に対応する蓄熱量に補間し、この補間
    手段の出力を補正値決定手段に入力することを特徴とす
    る請求項1記載のサーマル階調記録装置。
  3. 【請求項3】 グループ毎の値を各発熱体に対応する値
    に補間する補間手段を備え、補正値決定手段の出力を前
    記補間手段に入力し、グループ毎の補正値を前記各発熱
    体に対応する補正値に補間し、この補間手段の出力をパ
    ルス幅補正手段に入力することを特徴とする請求項1記
    載のサーマル階調記録装置。
  4. 【請求項4】 グループ別蓄熱量予測手段は、サーマル
    ヘッド内のライン状に配列された記録に寄与する発熱体
    の外側に発熱しない仮想の発熱体を想定した新たなグル
    ープを設定し、この新たなグループも含めて発熱体基板
    の蓄熱量を予測することを特徴とする請求項2または3
    記載のサーマル階調記録装置。
  5. 【請求項5】 グループ別蓄熱量予測手段は、連続する
    3グループにおける中央のグループの発熱体基板の蓄熱
    量を、1ライン周期前の前記中央のグループ内の前記発
    熱体基板の蓄熱量および前記中央のグループの両隣のグ
    ループの前記発熱体基板の蓄熱量と、前記1ライン周期
    前の前記中央のグループの発熱体に印加された補正パル
    ス幅データとから定まる漸化式により、各グループ毎の
    前記発熱体基板の蓄熱量を予測することを特徴とする請
    求項4記載のサーマル階調記録装置。
  6. 【請求項6】 パルス幅補正手段の出力である現ライン
    の補正パルス幅データと1ライン周期前に発熱体に印加
    された補正パルス幅データの差に、前記発熱体内の熱時
    定数により定まる係数を乗じた値を、前記現ラインの補
    正パルス幅データに加算し、新たな補正パルス幅データ
    を作成する第2のパルス幅補正手段を付加することを特
    徴とする請求項1記載のサーマル階調記録装置。
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