JPH0592538U - ころ軸受 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 封入潤滑剤の微量供給が行えて、初期発熱の
防止と潤滑寿命の向上とが図れるものとする。 【構成】 ころ４Ａを中空して内部空間５にグリース等
の潤滑剤を充填する。この中空ころ４Ａの端面の開口部
に、嵌め合い面７が潤滑剤の流出路となるキャップ６を
圧入させる。中空ころ４Ａは、内輪１と外輪２間に組込
まれる一部のころであっても全部のころであっても良
い。キャップ６の嵌め合い面７は、加工仕上げの面粗さ
による凹凸のために微小な隙間が形成されている。この
隙間から潤滑剤またはその成分が、中空ころ４Ａの自転
や公転による遠心力と、毛細管現象等でころ端面に滲み
出し、軸受内各部の潤滑に利用される。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

この考案は、グリース等の潤滑剤を運転に伴って自然供給する円筒ころ軸受等 のころ軸受に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】

一般のグリース潤滑のころ軸受では、軌道輪に組込まれた全個数のころにグリ ースが塗布されている。この方式では、運転初期にグリースが多すぎるため、攪 拌抵抗によって発熱が大きくなる。そのため、発熱を低いレベルに落ち着かせる ために、なじみ運転が必要になる。また、グリースの拡散も大きいため、定めら れた期間毎にグリース補給が行われている。特に、工作機械に使用するような場 合、軸受における発熱は加工精度に影響するため、発熱を極力低下させる必要が ある。

【０００３】 このような初期発熱とグリース補給の欠点を改善するため、各ころを端面が開 口した中空形状とし、内部にグリースを充填したものが提案されている。これに よれば、ころ内に充填されたグリースが運転に伴って自然供給され、グリースを 無補給で運転できる期間が長くなる。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】

しかし、前記の中空ころでは、ころ内のグリースはころ端面の開口から流出す るため、流出流量が大きくなりすぎ、ころ内から供給されたグリースが有効に潤 滑に利用されずに拡散してしまう。そのため、グリースを無補給で運転できる期 間を充分に長くすることができない。

【０００５】 この考案の目的は、封入潤滑剤の微量供給が行えて、初期発熱の防止と、潤滑 剤の無補給運転期間の向上とが図れるころ軸受を提供することである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】

この考案のころ軸受は、ころを中空として内部空間に潤滑剤を充填し、この中 空ころの端面の開口部にキャップを圧入させたものである。キャップの外径の嵌 め合い面が潤滑剤の流出路となる。中空ころは、内輪と外輪間に組込まれる一部 のころであっても全部のころであっても良い。

【０００７】

【作用】

軸受が回転すると、ころの自転や公転による遠心力と、毛細管現象とにより、 ころ内の潤滑剤またはその成分が、ころの開口部とキャップとの嵌め合い面を通 り、ころ端面に滲み出して来る。滲み出した潤滑剤またはその成分は、軸受内に 飛散して各部の潤滑に寄与する。このように、嵌め合い面で潤滑剤の流出量の絞 り効果が得られて、潤滑剤の微量供給が行われるため、長期にわたる潤滑剤の供 給が可能となる。

【０００８】

【実施例】

この考案の一実施例を図１ないし図３に基づいて説明する。この実施例は、円 筒ころ軸受に適用したものであり、鍔１ａを有する内輪１と、鍔無しの外輪２と の間に、保持器３に保持されたころ４が組込まれている。これらのころ４のうち 、一部のもの、例えば図３に示すように１個おきのころ４Ａを、図２に拡大して 示す厚肉円筒形状の中空ころとしてある。中空ころ４Ａの内部空間５には潤滑剤 を充填し、両端面の開口に円板状のキャップ６を圧入してある。中空ころ４Ａの 材質は、他のころ４と同様に軸受鋼等で形成してある。

【０００９】 中空ころ４Ａに充填する潤滑剤としては、この実施例では一般の半固体または 固体状のグリースを使用しているが、この他に、液体状グリースや、含油樹脂、 潤滑油を含ませた織布やフェルト、あるいはプラスチックグリース等を使用する ことができる。プラスチックグリースは、超高分子量ポリエチレンまたは低分子 量ポリエチレンとグリースとの混合物を適宜の温度で加熱して固形化した組成物 であり、油の滲み出しが徐々に安定的に行われるものが開発されている。

【００１０】 この構成によると、軸受の回転に伴い、中空ころ４Ａの自転と公転の遠心力に より、中空ころ４Ａ内のグリースの基油が分離する。分離した基油は、前記の遠 心力と毛細管現象とにより、キャップ６と中空ころ４Ａとの嵌め合い面７を通り 、ころ端面に滲み出す。嵌め合い面７には、加工仕上げの面粗さによる凹凸のた めに微小隙間が形成されており、この隙間から前記の基油の滲み出しが行われる 。中空ころ４Ａの端面に滲み出した基油は、軸受内において、鍔１ａや、内外輪 １，２の転走面、保持器３等に飛散し、各部の潤滑に寄与する。

【００１１】 このころ軸受は、このようにキャップ６の嵌め合い面７で潤滑剤流出量の絞り 効果が得られるため、中空ころ４Ａ内の潤滑剤を微量ずつ供給できて潤滑寿命が 向上し、また微量潤滑のために発熱が低下する。さらに、潤滑剤の微量供給によ って高速化にも対応できる。図３では、中空ころ４Ａを１個おきに組み込んだも のとしたが、中空ころ４Ａの個数を変えることにより、軸受全体の潤滑剤供給量 を調整できる。

【００１２】 なお、前記実施例では嵌め合い面７の面粗さによる微小隙間から潤滑剤を滲み 出させるようにしたが、嵌め合い面７に微小な溝等を加工し、潤滑剤の流出量を 増加させるようにしても良い。 また、前記実施例では中空ころ４Ａを軸受鋼からなるものとしたが、樹脂製と しても良い。このように中空ころ４Ａを樹脂製とした場合、保持器３を省略した 総ころ軸受におけるスペーサ用のころに、前記の中空ころ４Ａを用いることもで きる。 また、この考案は内輪鍔付きの円筒ころ軸受に限らず、外輪鍔付ころ軸受や、 鍔無しの円筒ころ軸受にも適用でき、さらに円すいころ軸受等、ころ軸受一般に 適用することができる。複列のころ軸受にも適用できる。

【００１３】

【考案の効果】

この考案のころ軸受は、ころを中空して潤滑剤を充填し、ころ端面の開口部に キャップを圧入したものであるため、ころの自転や公転による遠心力と、毛細管 現象とにより、ころ内の潤滑剤またはその成分が、ころの開口部とキャップとの 嵌め合い面を通って滲み出す。そのため、ころ内の潤滑剤を微量ずつ供給できて 潤滑寿命が向上し、また微量潤滑によって初期発熱を低下させることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この考案の一実施例にかかるころ軸受の部分断
面図である。

【図２】その中空ころの断面図である。

【図３】図１のＡ−Ａ断面図である。

【符号の説明】

１…内輪、２…外輪、４Ａ…中空ころ、６…キャップ、
７…嵌め合い面

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 内輪と外輪間に組込まれる一部または全
   部のころを、潤滑剤の充填された中空ころとし、この中
   空ころの端面の開口部に、嵌め合い面が潤滑剤の流出路
   となるキャップを圧入させたころ軸受。