JPH0594532U - 転がり軸受 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 潤滑剤の微量供給を可能として長寿命化を図
り、かつ運転初期の温度上昇を防止する。 【構成】 内輪１の内径部に潤滑剤溜め空間５を設ける
と共に、この空間５から内輪鍔部１ａの外径面に貫通す
る潤滑剤供給孔６を設ける。内輪鍔部１ａの外径面にリ
ング部材を嵌合させる。リング部材７と鍔部１ａとの嵌
合い面には、加工仕上げの面粗さで生じる微小隙間から
なる潤滑剤供給路８を設ける。潤滑剤溜め空間５に充填
されたグリース等の潤滑剤またはその基油等の成分は、
内輪１の回転による遠心力で潤滑剤供給孔６を外径側へ
導かれる。この後、潤滑剤供給路８を毛細管現象で滲み
出して、ころ３の周辺に供給される。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

この考案は、工作機械の主軸やその他種々の機器に組み込まれる円筒ころ軸受 の転がり軸受に関し、特にその潤滑剤供給構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】

従来、工作機械の主軸軸受等として、図５に示す複列円筒ころ軸受が使用され ている。同図の軸受は、鍔付きの内輪４１と外輪４２との間に、保持器４３に保 持されたころ４４を複列に配置したものである。この軸受をグリース潤滑で使用 する場合、内外輪４１，４２，ころ４４，保持器４３等の各部品間で形成される 隙間にグリースを組立時に封入して使用する。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】

グリース潤滑の軸受において、封入するグリース量が多いと、運転初期にグリ ースの攪拌抵抗による発熱によって軸受温度が急上昇する。このような軸受温度 の上昇は、工作機械等では加工精度に大きく影響するため、極力回避する必要が ある。そのため、温度安定化の面からグリース封入量を少なく抑えることが望ま れる。しかし、グリースの封入量を少なくした場合、軸受の長寿命は期待できな い。

【０００４】 グリース潤滑の耐久性向上対策として、保持器にグリース溜まりを設け、細孔 からグリースまたはその基油を自然補給するもの等が提案されている。しかし、 微量供給性等において充分に満足できるものではない。

【０００５】 この考案の目的は、潤滑剤の微量供給が可能で長寿命化が図れ、かつ運転初期 の温度上昇を低下させることのできる転がり軸受を提供することである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】 この考案の転がり軸受は、内輪の内径部に潤滑剤溜め空間を設けると共に、こ の潤滑剤溜め空間から内輪の大径部の外径面に貫通する潤滑剤供給孔を設け、前 記大径部の外径面にリング部材を嵌合させたものである。リング部材と大径部と の嵌合い面には、リング部材の幅面に開通する潤滑剤供給路を設ける。

【０００７】

【作用】

内輪の潤滑剤溜め空間に充填された潤滑剤またはその成分は、内輪の回転によ る遠心力で潤滑剤供給孔内を大径部の外径面側へ導かれる。外径面に達した潤滑 剤またはその成分は、大径部とリング部材との嵌め合い面における潤滑剤供給路 を通って大径部端面に滲み出し、軸受内部の転走面等へ供給される。嵌め合い面 の潤滑剤供給路における潤滑剤の通過は、毛細管現象等により行われるため、流 出潤滑剤の絞り効果が大きく、潤滑剤の供給は微量供給となる。

【０００８】

【実施例】

この考案の一実施例を図１に基づいて説明する。この実施例は、鍔付きの内輪 １と鍔無しの外輪２との間に、保持器４に保持されたころ３を配置した複列円筒 ころ軸受に適用したものである。

【０００９】 内輪１の内径面の中央に、環状溝からなる潤滑剤溜め空間５を形成し、その底 部から大径部である内輪中鍔部１ａの外径面に貫通する潤滑剤供給孔６を、周方 向の２〜８箇所に設けてある。内輪中鍔部１ａの外径面には、リング部材７が焼 ばめまたは圧入により正の締め代を持って嵌合させてあり、その嵌め合い面の全 体が、潤滑剤供給孔６から鍔部１ａの端面に開通する潤滑剤供給路８に形成され ている。この潤滑剤供給路８は、前記嵌め合い面における加工仕上げの面粗さ（ 例えば０．２〜５μｍ）の凹凸で生じる微小隙間により形成される。リング部材 ７の嵌め合いの締め代は、例えば１０〜１００μｍ程度に設定される。なお、保 持器４は、内径面のリング部材７の遊嵌する部分が切り欠かれた断面形状になっ ている。

【００１０】 内輪１の潤滑剤溜め空間５に充填する潤滑剤としては、一般の半固体または固 体状のグリースの他に、液体状グリースや、プラスチックグリース、含油樹脂、 潤滑油を含ませた織布やフェルト等を使用することができる。プラスチックグリ ースは、超高分子量ポリエチレンまたは低分子量ポリエチレン等の樹脂とグリー スとの混合物を加熱溶融させて冷却により固形化した組成物であり、油が徐々に 滲み出すものが開発されている。

【００１１】 この構成によると、内輪１を固定した軸の回転による遠心力で潤滑剤溜め空間 ５内の潤滑剤またはその成分が潤滑剤供給孔６内を内輪中鍔部１ａの外径面に導 かれる。潤滑剤がグリースである場合は、主にその基油が分離して潤滑剤供給孔 ６に導かれる。鍔部外径面に達した潤滑剤またはその成分は、リング部材７の嵌 め合い面の隙間からなる潤滑剤供給路８を通り、両側のころ３の周辺に供給され る。この場合に、潤滑剤またはその成分は、嵌め合い面の隙間からなる潤滑剤供 給路８を毛細管現象で滲み出すことにより供給されるため、微量供給となる。供 給流量は、嵌め合い面の面粗さを変えることによって調整できる。

【００１２】 この円筒ころ軸受は、このように潤滑剤溜め空間５に充填した潤滑剤またはそ の成分が微量供給されるため、軸受の長寿命化が図れる。また、このため軸受内 部に多量の潤滑剤を充填しておく必要がなく、潤滑剤の攪拌抵抗による発熱が防 止できて回転初期から軸受温度が安定する。さらに、軸の回転による遠心力を利 用するため、潤滑剤の供給用の駆動源が不要で、構造が簡単であり、低コストで 実施できる。

【００１３】 なお、前記実施例では潤滑剤溜め空間５を断面半円状の溝としたが、図２に示 すテーパ底の溝状としても良く、また図３に示すような断面矩形の溝としても良 い。さらに、潤滑剤溜め空間５は、必ずしも環状のものでなくても良く、周方向 の複数箇所に配置した部分的な凹部であっても良い。

【００１４】 図４はこの考案のさらに他の実施例を示す。この例は、単列の円筒ころ軸受に 適用したものであり、片側の内輪鍔部１ｂの内径面に、幅面に開口した切欠溝状 の潤滑剤溜め空間９を設け、この空間９から内輪鍔部１ｂの外径面に貫通する潤 滑剤供給孔１０を設けてある。また、内輪鍔部１ｂの外径面にはリング部材１１ を嵌合させ、その嵌め合い面を前記実施例と同様に潤滑剤供給路１２としてある 。このように単列の円筒ころ軸受に適用した場合も、前記と同様に潤滑剤の微量 供給による軸受寿命の向上と、初期発熱の防止とが図れる。

【００１５】 なお、前記各実施例ではリング部材７，１１の嵌め合い面における潤滑剤供給 路８，１２を、面粗さの隙間のみによって生じるものとしたが、前記嵌め合い面 に軸方向の微小溝を形成することにより潤滑剤の供給量を増やすこともできる。 微小溝は、回転が止まっている間に、潤滑剤が自らの表面張力により流れ出すこ となく保持される程度の深さとすることが望ましく、例えば０．０３〜０．０５ mm程度の溝深さで、０．２mm程度の溝幅に形成される。また、前記嵌め合い面に は、クロス目の研削加工を施し、さらにプラトホーニング加工等によって仕上げ 面粗さ形状を凸部が滑らかな平滑面となるように加工しても良く、これにより供 給量のバラツキが緩和できる。

【００１６】 また、深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受といった玉軸受の内輪肩部（ランド）か らなる内輪大径部にリング部材を嵌合し、内輪内部から潤滑剤の微量供給を行う ようにもできる。

【００１７】

【考案の効果】

この考案の転がり軸受は、内輪の内径部に設けた潤滑剤溜め空間から内輪大径 部の外径面に開通する潤滑剤供給孔を設け、前記大径部にリング状部材を嵌合さ せたものであるため、潤滑剤またはその成分の微量供給が行われ、軸受の長寿命 化が図れる。また、このため軸受内部に多量の潤滑剤を充填しておく必要がなく 、潤滑剤の攪拌抵抗による発熱が防止できて回転初期から軸受温度が安定する。

【図面の簡単な説明】

【図１】この考案の一実施例の半裁断面図である。

【図２】他の実施例における内輪およびリング部材の断
面図である。

【図３】さらに他の実施例における内輪およびリング部
材の断面図である。

【図４】さらに他の実施例の半裁断面図である。

【図５】従来例の断面図である。

【符号の説明】

１…内輪、１ａ…内輪中鍔部（大径部）、２…外輪、３
…ころ、５…潤滑剤溜め空間、６…潤滑剤供給孔、７…
リング部材、８…潤滑剤供給路、９…潤滑剤溜め空間、
１０…潤滑剤供給孔、１１…リング部材、１２…潤滑剤
供給路

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 内輪の内径部に潤滑剤溜め空間を設け、
   この潤滑剤溜め空間から内輪の大径部の外径面に貫通す
   る潤滑剤供給孔を設け、前記大径部の外径面にリング部
   材を嵌合させ、このリング部材と前記大径部との嵌合い
   面に、前記リング部材の幅面に開通する潤滑剤供給路を
   設けた転がり軸受。