JPH0557361A - オーステナイト系ステンレス鋼製素材の円筒部のしごき法 - Google Patents

オーステナイト系ステンレス鋼製素材の円筒部のしごき法

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JPH0557361A JP3252949A JP25294991A JPH0557361A JP H0557361 A JPH0557361 A JP H0557361A JP 3252949 A JP3252949 A JP 3252949A JP 25294991 A JP25294991 A JP 25294991A JP H0557361 A JPH0557361 A JP H0557361A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 オーステナイト系ステンレス鋼から成る素材
の円筒部を高い径寸法精度が実現されるように軸方向に
しごいて薄肉化するしごき法を提供する。 【構成】 オーステナイト系ステンレス鋼から成る素材
の円筒部については、しごき成形による板厚減少率を増
加させると径寸法ばらつき値が下に凸の曲線を描いて変
化する性質(板厚減少率が35〜45%のときに径寸法
ばらつき値が最小となる性質)があることを発見した。
この発見に基づき、オーステナイト系ステンレス鋼から
成る板状の素材を絞り成形することによって円筒部を形
成し、その円筒部に対して1回目のしごき成形を板厚減
少率を16〜30%として行い、2回目のしごき成形を
35〜45%として行う。絞り成形による板厚等の軸方
向不均一が1回目のしごき成形により除去され、2回目
のしごき成形により径寸法ばらつき値が20μm程度に
向上させられる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はオーテナイト系ステンレ
ス鋼製素材の円筒部のしごき法に関するものであり、特
に、そのしごき法により取得される円筒部の外径および
内径の寸法精度(以下、単に径寸法精度という)を高め
る技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】例えば容器状の素材など、円筒部の一端
部に底部を有する素材(以下、単に素材という)の円筒
部の径寸法精度を高めるために例えば、円筒部に対して
しごき成形が行われる。このしごき成形は、ポンチと、
ランド部が形成されたダイ穴を有するダイとを用いて行
う成形法であって、ポンチを円筒部の他端部から円筒部
内に挿入してポンチの先端面をその円筒部の底部に押し
当て、この状態でポンチを素材と共にダイ穴に押し込ん
でポンチとランド部との共同によって円筒部をそれの軸
方向にしごいて薄肉化するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】SPCC,銅,アルミ
ニウム等の一般材から成る素材には、円筒部の板厚のし
ごき成形による板厚減少率(しごき率ともいう)が大き
いほど、そのしごき成形により取得される素材円筒部の
径寸法精度が高くなる性質があることが既に知られてお
り、その性質を利用して、希望する径寸法精度が実現さ
れるように板厚減少率が決定されていた。
【0004】しかし、オーステナイト系ステンレス鋼か
ら成る素材については従来、板厚減少率と径寸法精度と
の間に如何なる関係があるのか知られていなかった。そ
こで、本出願人はオーステナイト系ステンレス鋼から成
る素材の円筒部のしごき法について種々の研究を行い、
その結果、板厚減少率と径寸法精度との間に次のような
性質があることを発見した。すなわち、図1のグラフで
表すように、SPCCから成る素材および銅から成る素
材にはそれぞれ、板厚減少率が大きいほど素材円筒部の
径寸法ばらつき値が減少し、径寸法精度が向上するとい
う性質があるのに対し、オーステナイト系ステンレス鋼
から成る素材には、板厚減少率を増加させると径寸法ば
らつき値が下に凸の曲線を描いて変化する性質があるこ
とを発見したのである。
【0005】なお、同図のグラフは板状の素材を図2に
示すようにして絞り成形して容器状の素材とした後にそ
の容器状の素材を図3に示すようにしてしごき成形した
場合の、板厚減少率と径寸法ばらつき値との間の関係を
示すものであって、それら図においてT0 は素材円筒部
のしごき前の板厚、T1 はしごき後の板厚をそれぞれ意
味している。また、図1のグラフの縦軸においてDmax
は、素材円筒部のしごき後の外周面または内周面の複数
の凹凸に対して想定される複数の同心円のうちの最大の
ものの直径を意味し、一方、Dmin はそれら同心円のう
ち最小のものの直径を意味している。
【0006】請求項1の発明はその発見に基づき、高い
径寸法精度を実現するオーステナイト系ステンレス鋼製
素材の円筒部のしごき法を提供することを課題として為
されたものである。
【0007】請求項2の発明は請求項1の発明の一利用
態様を提供することを課題として為されたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明の要旨
は、円筒部を有してオーテナイト系ステンレス鋼から成
る素材の円筒部を軸方向にしごいて薄肉化するしごき成
形を、1回のしごきによる円筒部の板厚減少率を35〜
45%として行うことにある。
【0009】請求項2の発明の要旨は、オーテナイト系
ステンレス鋼から成る板状の素材が絞り成形されること
によって形成された円筒部を軸方向にしごいて薄肉化す
る1回目のしごき成形をそれによる円筒部の板厚減少率
を35%より小さい値として行い、2回目のしごき成形
を板厚減少率を35〜45%として行うことにある。
【0010】
【作用】本出願人による発見事実、すなわち、オーステ
ナイト系ステンレス鋼から成る素材には、板厚減少率を
増加させると径寸法ばらつき値が下に凸の曲線を描いて
変化する性質があるという事実に基づき、請求項1の発
明におけるオーステナイト系ステンレス鋼製素材の円筒
部のしごき法においては、板厚減少率を、径寸法ばらつ
き値が十分に小さくなる領域内の値、すなわち、35〜
45%内の値として1回のしごき成形が行われる。
【0011】図1のグラフから明らかなように、板状の
素材が絞り成形されることによって取得された容器状の
素材に対して請求項1の発明に係るしごき成形を1回し
か行わない場合には、径寸法ばらつき値を80μmより
小さくすることができない。
【0012】この原因は次のように推定される。すなわ
ち、その容器状の素材においては、図4に示すように、
円筒部の板厚Tの底部の板厚T0 に対する比率である板
厚比が底部から遠ざかるほど大きく、また、図5に示す
ように、円筒部の引張強さも底部から遠ざかるほど大き
い。そのため、この容器状の素材に対してしごき成形を
行うと、その成形の進行につれて成形荷重が急増して型
ひずみ(型の弾性変形量)が軸方向において急変し、そ
の成形荷重の急増により、既に成形が終了した素材のポ
ンチ肩部付近に引張り力が集中し、その部分のみが伸ば
されて薄肉化されて板厚精度が悪化すると推定されるの
である。
【0013】そのため、オーステナイト系ステンレス鋼
製素材の円筒部のしごき成形により80μmより小さな
径寸法精度を実現することが必要である場合には、その
しごき成形の後に、そのしごき成形後の円筒部に対して
切削,研削等の後加工を行わなければならず、製品の製
造コストの上昇も製品の生産能率の低下も避け得ないと
いう問題があった。
【0014】しかし、本出願人はその後の研究により、
しごき成形を複数回に分けて行えば径寸法ばらつき値を
80μmより小さくすることができることを発見した。
本出願人は、絞り成形後にしごき成形を2回行い、1回
目のしごき成形の板厚減少率と2回目のしごき成形の板
厚減少率とをそれぞれ適当に変えて多数の、1回目の板
厚減少率と2回目の板厚減少率との組合せについて個々
に径寸法ばらつき値を取得した。その結果、板厚減少率
の組合せと径寸法ばらつき値との間に図6のグラフで表
される関係があることを発見し、それに基づき、1回目
の板厚減少率を35%より小さい値とし、かつ、2回目
の板厚減少率を35〜45%として2回のしごき成形を
行えば径寸法ばらつき値が約20μm以下に抑えられる
ことを発見したのである。
【0015】そのため、請求項2の発明に係るオーステ
ナイト系ステンレス鋼製素材の円筒部のしごき法におい
ては、その発見に基づき、オーテナイト系ステンレス鋼
から成る板状の素材が絞り成形されることによって形成
された円筒部に対して1回目のしごき成形が板厚減少率
を35%より小さい値として行われ、続いて、2回目の
しごき成形が板厚減少率を35〜45%として行われ
る。絞り成形に基づく板厚変動および強度変動(素材円
筒部の軸方向における板厚および強度のばらつき)が1
回目のしごき成形によって緩和され、そのように板厚変
動等が緩和された素材に対して2回目のしごき成形が行
われるから、素材円筒部の径寸法精度が十分に高められ
るのである。
【0016】
【発明の効果】このように、請求項1または2の発明に
従えば、オーステナイト系ステンレス鋼製素材の円筒部
のしごき成形により高い径寸法精度が実現され、製品の
品質が向上するという効果が得られる。
【0017】後加工として切削加工を行う場合には素材
円筒部の板厚を薄くするには限度がある。切削加工時に
素材円筒部に発生する切削抵抗に負けない剛性が素材円
筒部に対して要求されるからである。しかし、請求項2
の発明に従えば、高い径寸法精度を実現する場合であっ
ても切削,研削等の後加工を完全に、または部分的に省
略することができ、ひいては、素材円筒部の板厚に対す
る制約が緩和されるため、例えば0.3mm以下の板厚
を有する素材円筒部の径寸法精度もしごき成形によって
高めることができるという効果が得られる。
【0018】
【実施例】以下、請求項1および2の発明に共通の一実
施例であるしごき法を図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】本しごき法は、オーステナイト系ステンレ
ス鋼から成る円板状の素材を絞り成形して容器状の素材
とした後、それに対してしごき成形を2回行う形式の絞
り・しごき装置において実施される。
【0020】その絞り・しごき装置は図7に示すよう
に、ポンチ10とダイ12としわ押さえ14とノックア
ウト16とを備えている。ポンチ10は図示しない上型
に、ダイ12は下型18にそれぞれ固定されている。ダ
イ12はポンチ10が挿入されるダイ穴20を備えてい
る。このダイ穴20には、ポンチ10の進行方向に沿っ
て絞り成形部22,第1しごき成形部26および第2し
ごき成形部28が並んで形成されている。なお、図にお
いて符号30は、しわ押さえ14をダイ12側に付勢す
る複数本のロッドを示している。
【0021】以上のように構成された絞り・しごき装置
の作動を説明する。まず、円板状の素材40(図におい
て二点鎖線で示す)がダイ12の上面に位置決めされて
載せられ、その後、素材40はしわ押さえ14によりダ
イ12の上面に押し付けられて固定される。
【0022】この状態でポンチ10のダイ穴20内への
進入が開始され、これにより、素材40の中央部が絞り
成形部22とポンチ10との共同による絞り成形によっ
て凹まされる。そして、ポンチ10の先端が第1しごき
成形部26の手前の位置に到達したときに絞り成形が終
了する。なお、図において符号42は絞り成形後の素材
を示している。
【0023】絞り成形終了後ポンチ10がさらに前進さ
せられれば、素材42の円筒部は第1しごき成形部26
を通過する際に、ポンチ10と第1しごき成形部26と
の共同によって1回目のしごき成形を受ける。このしご
き成形は、絞り成形による素材42の円筒部の軸方向に
おける板厚変動および強度変動を緩和させ、円筒部の板
厚および引張強さを軸方向において均一化する。
【0024】ポンチ10がさらに前進させられれば、素
材42の円筒部は第2しごき成形部28を通過する際
に、ポンチ10と第2成形部28との共同による2回目
のしごき成形を受ける。このしごき成形は、素材42の
外径および内径を精度よく調製する。なお、図において
符号46は2回目のしごき成形終了後の素材を示してい
る。
【0025】そして、本出願人は、1回目のしごき成形
を板厚減少率を16〜30%(これが請求項2の発明に
おける「35%より小さい値」の具体例である)とし
て、2回目の板厚減少率を35〜45%としてそれぞれ
行い、これにより、素材46の円筒部の径寸法ばらつき
値が20μm以下に抑えられるという事実を得た。
【0026】このように、本実施例においては、切削,
研削等の後加工なしで径寸法精度の高い製品が取得され
るため、製品の製作コストの削減も生産能率の向上も容
易に図り得るという効果が得られる。
【0027】さらに、後加工としての切削加工を完全に
省略することができるため、製品の板厚に対する制約が
緩和され、例えば板厚が0.3mm以下の製品の径寸法
精度もしごき成形によって高めることができるという効
果も得られる。
【0028】また、このように薄肉化かつ高精度化が容
易となるため、例えばソレノイドバルブ等に用いられる
スリーブ等であって運動応答性の向上が要求される筒状
の運動部品に対して本しごき法を実施すれば、運動部品
の薄肉化による運動部品の軽量化,小型化等によって、
運動部品の運動応答性が向上するという効果も得られ
る。
【0029】また、オーステナイト系ステンレス鋼が持
つ非磁性を利用し、かつ、筒状または円柱状の運動部品
の外側に嵌合されてそれの運動方向をガイドする筒状の
ガイド部品に対して本しごき法を実施すれば、薄肉化に
よる磁気透過率向上により、運動部品の運動応答性が向
上するという効果も得られる。
【0030】以上、本発明の一実施例を図面に基づいて
詳細に説明したが、この他にも、特許請求の範囲を逸脱
することなく、当業者の知識に基づいて、種々の変形,
改良を施した態様で本発明を実施することができるのは
もちろんである。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1および2の発明が用いるオーステナイ
ト系ステンレス鋼から成る素材の、板厚減少率と径寸法
ばらつき値との間の関係を、SPCCから成る素材およ
び銅から成る素材の各々の、板厚減少率と径寸法ばらつ
き値との間の関係と共に示すグラフである。
【図2】図1に示す関係を取得する際に実施された絞り
成形を説明するための正面断面図である。
【図3】図1に示す関係を取得する際に実施されたしご
き成形を説明するための正面断面図である。
【図4】オーステナイト系ステンレス鋼から成る円板状
の素材が絞り成形されることによって取得された容器状
の素材の円筒部の板厚の底部の板厚に対する比率である
板厚比が軸方向において変化する様子を説明するための
グラフである。
【図5】オーステナイト系ステンレス鋼から成る円板状
の素材が絞り成形されることによって取得された容器状
の素材の円筒部の引張強さが軸方向において変化する様
子を説明するためのグラフである。
【図6】オーステナイト系ステンレス鋼から成る素材の
円筒部のしごき成形を2回行う場合の、1回目の板厚減
少率と2回目の板厚減少率との組合せと径寸法ばらつき
値との間の関係を説明するためのグラフである。
【図7】請求項1および2の発明に共通の一実施例であ
るしごき法を実施するのに好適な絞り・しごき装置を示
す正面断面図である。
【符号の説明】
10 ポンチ 12 ダイ 40 絞り成形前の素材 42 絞り成形後の素材 46 2回目のしごき成形後の素材

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 円筒部を有してオーテナイト系ステンレ
    ス鋼から成る素材の円筒部を軸方向にしごいて薄肉化す
    るしごき成形を、1回のしごきによる円筒部の板厚減少
    率を35〜45%として行うことを特徴とするオーステ
    ナイト系ステンレス鋼製素材の円筒部のしごき法。
  2. 【請求項2】 オーテナイト系ステンレス鋼から成る板
    状の素材が絞り成形されることによって形成された円筒
    部を軸方向にしごいて薄肉化する1回目のしごき成形を
    それによる円筒部の板厚減少率を35%より小さい値と
    して行い、2回目のしごき成形を板厚減少率を35〜4
    5%として行うことを特徴とするオーステナイト系ステ
    ンレス鋼製素材の円筒部のしごき法。
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