JPH0529553B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

（産業上の利用分野） 本発明は、すぐれた易滑製、透明性及び表面状
態を有する二軸延伸多層ポリエステルフイルムに
関する。 （従来の技術と問題点） ポリエチレンテレフタレートに代表される飽和
線状ポリエステルフイルムは、優れた力学的特
性、耐熱性、耐候性、電気絶縁性、耐薬品性等を
有するため、包装用、写真用、電気部品、磁気テ
ープ等の広い分野において広く使用されている。
ところが、これらのポリエステルフイルムは、摩
擦係数が大きく製造時の工程通過性あるいは巻き
取り、裁断、磁性層等の表面塗布性が悪いため、
摩擦係数が小さく、且つ易滑性の優れたフイルム
の製法の確立が切望されている。 一般にポリエステルフイルムに易滑性を付与す
る方法として、ポリエステルに不溶性の微細粒子
を混入しフイルム表面に微細な凹凸を形成する方
法が採用されており、具体的には、 ポリエステルを製造する際に、二酸化チタ
ン、カオリナイト、タルク、シリカのようなポ
リエステルに対して不活性な微粒子を添加する
所謂外部粒子法、及び、 ポリエステル製造反応中にカルボン酸成分、
オリゴマー或いはリン化合物のいずれかを金属
化合物と反応させて微粒子を形成させる所謂内
部粒子法がある。 しかし、外部粒子法では粒子の微細化、分級お
よび分散のための装置が必要で、粒子の凝集によ
るフイツシユアイを防止するために分散剤の併用
等を行うが、二軸延伸を行う際に粒子とポリエス
テルとのなじみが悪いのでボイドを発生し透明性
が低くなる。又、粒子の粗大ブツを完全に除去す
る事が困難で、表面性に劣るといつた欠点を有す
る。 一方、内部粒子法としては、エステル交換触媒
として使用するアルカリ金属やアルカリ土類金属
等の触媒残渣を利用して微粒子を形成させ、微粒
子の形成量や粒子径をリン化合物の添加によつて
調整する方法が主流を占めている。 しかしながら、この方法には以下に示す様な問
題点があり、市場の要求を十分に満足するものと
は言い難い。 粗大粒子が形成され易く、その結果透明性の
低い製品になることが多い。しかも、粗大粒子
はフイルムのフイツシユアイを生成させ、製品
欠陥の原因となる。 重合缶内でスケールが発生し易く、これが
時々脱落してポリエステル中に混入し、フイツ
シユアイ等の欠陥の原因となる。 また、近年、フイルムの表面特性に対する市場
の要求は多様化しており、たとえば蒸着鏡面用フ
イルムの分野では表面の平滑性が高度に要求さ
れ、かつ透明性の高いことが要求される。 しかるに、以上述べたように表面の平滑度に優
れかつ透明性に優れたフイルムを製造する技術は
確立されていない為妥協的な方法で市場のニーズ
に応じているにすぎない。 （問題点を解決するための手段） 本発明者らは上記の実情に鑑み、粒子を含まな
い無ヘーズレジンに滑性を付与することを目的に
して鋭意検討した結果、上記した、従来のポリエ
ステル組成物からなる二軸延伸フイルムの有する
不透明性、フイツシユアイ等の製品欠陥及び製膜
性などの欠点がない表面性にすぐれた透明易滑二
軸延伸多層ポリエステルフイルムを見い出し、本
発明に到達した。 すなわち、本発明の要旨は、少なくとも２層の
隣接した多層から成り、２層の場合は１層に潤滑
剤（ただし粒子は除く）を含有させ、また３層以
上の場合は最外層の片面又は両面に潤滑剤（ただ
し粒子は除く）を含有させることを特徴とする二
軸延伸多層ポリエステルフイルムに存する。 本発明に係るポリエステルは、その繰り返し単
位の80モル％以上が、アルキレンテレフタレート
またはアルキレンナフタレートからなるものであ
り、他の共重合成分としては、ジカルボン酸成分
としてイソフタル酸、グリコール成分としてエチ
レングリコール、プロピレングリコール、ブタン
ジオール等が挙げられる。又、重合完結前あるい
は後に適当な１種又は２種以上の第３成分を添加
し、共重合又は混合ポリエステルとなしたもので
もよい。又、該ポリマー中にリン酸、亜リン酸及
びそれらのエステル類等、あるいは、安定剤、微
細シリカ粒子等が含まれていてもよい。好ましい
固有粘度は0.5〜1.0であり、更に好ましくは0.55
〜0.80である。 本発明の二軸延伸多層ポリエステルフイルム
は、上記ポリエステルを多層ダイより冷却ドラム
上に溶融押出し、これを二軸方向に延伸して配向
したものであり最外層に潤滑剤を含有するポリエ
ステル層を設けることを特徴とするものである。
最外層は表裏２面あるが、潤滑剤を含有する層
は、２層の場合は片面、３層以上の場合は、両面
であつても片面であつてもよい。 使用される潤滑剤の量は、潤滑剤含有層として
使用されるポリマーに対し、50〜2000ppmの範囲
が好ましく、更に好ましくは、200〜1000ppmで
あり、フイルム全体に対しては３〜500ppm、好
ましくは３〜200ppmである。二軸延伸ポリエス
テルフイルムを経済的に製造するには、横延伸す
る際の耳部に再生品を原料チツプに混入する必要
があるが、潤滑剤がフイルム全体に高濃度に含ま
れていると、再生品の粘度低下及び着色の原因と
なり、再生品の混入に支障をきたすので好ましく
ない。また、潤滑剤はフイルム表面にブリードア
ウトする事が認められ、表面に濃縮される性質が
あり、滑性を高める事が判明した。 したがつて、本発明によれば、ポリエステルフ
イルムの表面層のみに潤滑剤を含有したポリエス
テル層を設けることにより、該耳部を再生品とし
て使用しても極限粘度の低下、着色が極めて少
く、品質を劣化させることなく再生品を混入して
製品を製造することができ、経済的に極めて有用
である。又、中間層に潤滑剤等の添加物や滑り性
付与の為の粒子を含有する必要もない事から極め
て高透明のポリエステルフイルムの製造が可能で
ある。 本発明で用いる潤滑剤は、日本化成(株)製商品名
スリパツクスZHS（ヘキサメチレンビスステアリ
ルアミド）、日本油脂(株)製商品名アルフロH50S
（エチレンビスステアリルアミド）、Ｎ，N′−ジ
ステアリルテレフタルアミド、ライオン油脂(株)製
商品名アーモソツクスEBS（ヘキサメチレンビス
ステアリルアミド）等高級脂肪酸アミド類；花王
石鹸(株)製商品名スパン65（ソルビタントリステア
レート）、ヘキスト(株)製商品名ヘキストワツクス
Ｅ（モンタン酸EGエステル）等長鎖脂肪酸エステ
ル類；その他、アルキルスルホン酸ソーダ等が挙
げられる。 （実施例） 以下、本発明を実施例により更に詳細に説明す
るが、本発明は、その要旨を越えない限り、これ
らの実施例に限定されない。なお、フイルムの諸
性質の測定方法は以下の通りである。 (1) 摩擦係数（μ）（Ｃ型μd） 固定した硬質クロムメツキ金属ロール（直径
６mm、2S）にフイルムを巻き付き角135゜（θ）
で接触させ、53ｇ（T₂）の荷重を一端にかけ
て１ｍ／minの速度でこれを走行させて他端の
抵抗力（T₁）を測定し、次式により第１回走
行時の摩擦係数（μd）を求めた。 μd＝１／θln（T₁／T₂）＝0.424ln（T₁／53） (2) 滑り性 平滑なガラス板上にフイルム同志を２枚重
ね、その上にゴム板を更にその上に荷重を載
せ、２枚のフイルムの接圧を２ｇ／cm²として20
mm／minでフイルム同志を滑らせて摩擦力を測
定した。５mm滑らせた点での摩擦係数を動摩擦
係数とした。 (3) 極限粘度〔η〕測定及び粘度低下率 極限粘度〔η〕は、試料200mgをフエノー
ル／テトラクロロエタン＝50／50の混合溶液20
mlに加え、約110℃で１時間加熱溶解後、30℃
で測定した。 また、粘度低下率は次の式で求めた。 低下率（％）＝原料チツプ〔η〕−再生品〔η〕／原料
チツプ〔η〕× 100 (4) 中心線平均表面粗さ（Ra） 小坂研究所社製表面粗さ測定器（SE−3FK）
によつて次のように求めた。触針の先端半径は
2μｍ、荷重は30mgであり。フイルム断面曲線
からその中心線の方向に基準長さＬ（2.5mm）の
部分を抜き取り、この抜き取り部分の中心線を
Ｘ軸、縦倍率を方向をＹ軸として、粗さ曲線ｙ
＝ｆ(x)で表わした時、次の式で与えられた値を
μｍで表わす。但し、カツトオフ値は80μｍ。
Raは縦方向に５点、横方向に５点の計10点の
平均値を求めた。 １／Ｌ∫^L _p｜ｆ(x)｜dx (5) フイルムヘーズ JIS−K6714に準じ日本電色工業社製積分球
式濁度計NDH−20Dにより表面ヘーズと内部
ヘーズを求めた。 参考例 (1) ポリエステルチツプの製造法 ジメチルテレフタレート100部、エチレング
リコール70部、及び酢酸カルシウム−水塩0.07
部を反応器にとり加熱昇温すると共にメタノー
ルを留去させエステル交換反応を行ない、反応
開始後約４時間半を要して230℃に達せしめ、
実質的にエステル交換反応を終了した。 次にリン酸0.04部及び三酸化アンチモン
0.035部を添加し、常法に従つて重合した。即
ち反応温度は徐々に昇温し、最終的に280℃と
し、一方、圧力は徐々に減じ最終的に0.5mmHg
とした。４時間後反応を終了し、常法に従いチ
ツプ化してポリエステルを得た。 (2) 製膜 本発明による二軸延伸フイルムは、ポリエス
テルの重ね合わせた溶融層によつて形成され、
同時押出ラミネートを、例えば、冷却した回転
ドラム上に受け、次いで、慣用の縦一横二軸延
伸を施し、ヒートセツトして得られる。 実施例 １ 厚さ25μｍで３層からなり（膜の構成比（外
層／内層／外層の厚さの比率）は１：４：１）、
外層部が両面共に潤滑剤として日本化成(株)製商品
名スリパツクスZHB500ppmを含有する二軸延伸
ポリエステルフイルムを次のようにして製膜し
た。 まず、外層部への潤滑剤添加は練込みによるマ
スターバツチ方式で行つた。あらかじめ１％濃度
で練込みを行つたマスターバツチを１：20の比で
希釈し、外層部用に潤滑剤の濃度を500ppmに調
整したポリエステルチツプと潤滑剤を含まない無
ヘーズレジンをそれぞれあらかじめ常法の手段で
乾燥し、２台の押出機を通して押出を行い、２種
３層構造でダイより回転冷却体上で冷却固化して
未延伸ポリエステルシートを形成した。この際常
法の静電印加、冷却法を用いた。この様にして得
たフイルムの第１軸方向に85℃にて3.8倍に延伸
し、次に第２軸方向に95℃に予熱し3.8倍に延伸
した後、220℃にて3.5秒間処理を行い該フイルム
を得た。 一般的に300ppm以上の潤滑剤の添加を行うと
黄色に着色するが該フイルムでは、潤滑剤層の厚
さが全体の1/3であり通常品に比べ着色はわずか
であつた。また、アルミ蒸着して裏面より観察し
た所、極めて平滑で光沢にすぐれ窓貼り用として
外観の著るしい向上が見られた。 一般的に300ppm以上の潤滑剤の添加した製品
の耳部を再生使用すると著しく着色するが、本実
施例では、再生チツプ化して利用しても、添加剤
なしのものと比べて粘度低下、着色の点でほとん
ど差が認められず、再生利用可能であつた。測定
結果を表−１に示す。 なお、練込み及び無ヘーズレジンに用いたポリ
エチレンテレフタレートは、参考例(1)の方法に従
つて得た極限粘度0.63のものである。 比較例 １ 実施例１において、３層を単層とした以外は実
施例１と全く同様にしてフイルムを成膜した。こ
の場合フイルムヘーズがやや悪化するものの、そ
の他のフイルム特性としては実施例１と同一であ
り製品としては遜色ない。しかしフイルムの耳部
を再生利用してフイルムを製膜した場合、粘度の
低下が著るしく、製膜中に破断が多かつた。又着
色も大きく同一銘柄のレジンとして再生利用する
ことは不可能であつた。測定結果を表−１に示
す。 比較例 ２ 比較例１において潤滑剤を添加せずに単層でフ
イルムを成膜した。表面粗度、ヘーズは、実施例
１と同等であるが、フイルム同志の摩擦係数が著
るしく大きく、製膜時にフイルム表面にキズが入
り易く、又、フイルムを良好な外観に捲き取る事
が不可能であつた。測定結果を表−１に示す。 比較例 ３ 比較例１において、潤滑剤の代わりに平均粒径
0.6〜0.7μの粒子を4000ppm添加してフイルムに
滑性を与えた。フイルム同志の摩擦係数も低く、
捲き取り特性も良好であつた。しかしヘーズが高
く、アルミ蒸着を行い、裏面（反対面）から観察
した所、実施例１に比較して白つぽく見え、光沢
も悪かつた。測定結果を表−１に示す。 実施例 ２ ＃ 75番手（厚さ75μｍ）にて外層両面に潤滑剤
を500ppm添加し、厚みの比率が外層／内層／外
層＝１／13／１の二軸延伸ポリエステルフイルム
を実施例１の同様に製膜し、物性を測定した所、
フイルム／フイルムの滑性に優れ、巻き取り特性
も良好であつた。又、このものの再生品利用につ
いては実施例１と同様に全く問題なかつた。透明
性、光沢度等も極めて良好であつた。このフイル
ムは製板用、マスキングフイルム等に優れた性能
を有していた。測定結果を表−１に示す。 実施例 ３ ＃ 75番手にて実施例２の外層部の潤滑剤の添加
量は1000ppmとした以外は実施例２と全く同様に
して製膜したところ、極めて滑り性の良いフイル
ムが得られた。このフイルムは、実施例２の用途
の外に、メンブレンスイツチ用としても外観が極
めて鮮明であり、実用上極めて有用である。測定
結果を表−１に示す。 比較例 ４ 実施例３において、３層を単層とした以外は実
施例３と全く同様にしてフイルムを得たところ、
滑性は良好であつたが、再生チツプの粘度低下率
が20％近くあり、再生レンジとして使用すること
は、品質上及び操業安定性の上で不可能であつ
た。従つて、性能的には満足するものであつて
も、経済的に康価に製造することができない。測
定結果を表−１に示す。 比較例 ５ 比較例４において潤滑剤を添加せずに単層で製
膜を行つたところ、滑りは捲取り可能な値であつ
たが、フイルムのヘーズが高すぎる為、製版用フ
イルムとしての使用は出来なかつた。測定結果を
表−１に示す。

【表】 ＊ 着色の程度：判定は、フイルムロール端面にて目
視判定で行つた。
（発明の効果） 本発明の二軸延伸多層ポリエステルフイルム
は、易滑製、透明性に優れ、写真・製版用、蒸着
窓貼り用、OHP用、スタンピング用等に有用で
あり、また、品質を劣化させることなく再生品と
して混入することができるので、経済上極めて有
利なポリエステルフイルムを提供できる。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 少なくとも２層の隣接した多層から成り、２
   層の場合は１層に潤滑剤（ただし粒子は除く）を
   含有させ、また３層以上の場合は最外層の片面又
   は両面に潤滑剤（ただし粒子は除く）を含有させ
   ることを特徴とする二軸延伸多層ポリエステルフ
   イルム。