JP3635785B2 - ポリエステル組成物及びフイルム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術的分野】
本発明は、ポリエステル組成物に関する。さらに詳しくは、耐摩耗性、表面均一性、および走行性に優れたフイルムを得るのに適したポリエステル組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に熱可塑性ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレートは優れた力学特性、化学特性を有しており、フイルム、繊維などの成型品として広く用いられている。
【0003】
しかしながら、ポリエステルは成型品に加工する際に、走行性不良のため生産性が低下するという問題があった。この様な問題を解決する方法として、従来よりポリエステル中に粒子を分散せしめ、成型品の表面に凹凸を付与する方法が行われている。この方法は、走行性の問題解決には有効であるが、成型品とした場合には耐摩耗性、耐スクラッチ性を満足すべきレベルとすることができない。
【0004】
成型品、例えば磁気テープ用フイルムの耐摩耗性が低い場合、磁気テープの製造工程中にフイルムの摩耗粉が発生し易くなり、磁性層を塗布する工程で塗布抜けが生じ、その結果、磁気記録の抜け(ドロップアウト)などを引き起す。また、磁気テープを使用する際は多くの場合、記録、再生機器などと接触しながら走行させるため、接触時に生じる摩耗粉が磁性体上に付着し、記録、再生時に磁気記録の抜け(ドロップアウト)を生じる。
【0005】
即ち、磁気テープ用フイルムは、磁気テープ製造工程中においても、また磁気テープとして使用する場合に置いても、走行性、耐摩耗性を有することが必要である。
【0006】
従来からこれらの問題を解決すべく、粒子を添加する方法(外粒法)や触媒残渣により粒子を析出させる方法(内粒法)などの検討がなされており、例えば前者では特開昭62ー172031号公報(シリコーン粒子)、特開平5ー3377号公報(球状シリカ、および炭酸カルシウム)、特開平5ー4412号公報 (球状シリカ)、特開平5ー4413号公報(球状シリカ)などが挙げられる。これらの粒子は、均一な表面をつくるには適しているが、その一方でPETとの親和性に乏しく、しばしば脱落してトラブルの原因となることもあるため、表面処理などによって、ポリエステルとの親和性を向上させる検討も行われており、例えば、特開昭63ー221158号公報や特開昭63ー280763号公報 (コロイダルシリカ粒子表面をグリコール基で改質する)、特開昭63ー312345号公報(コロイダルシリカ粒子表面をカップリング剤で改質する)、特開昭62ー235353号公報(炭酸カルシウム粒子をリン化合物で表面処理する)、特開平2ー222887号公報(スルホン酸基、またはカルボキシル基を有する芳香族化合物による表面処理)等が提案されているが、いまだ耐摩耗性、耐スクラッチ性の改良効果は不十分である。このほかにも、特開昭47ー9032号公報(リン酸カルシウム)、特開昭47ー9033号公報(リン酸カルシウム)などが挙げられるが、これらについては、粒子の形状が不定形であり、粒度分布においては粗粒が多く、表面均一性、耐摩耗性などにおいてもいまだ不十分であり、改善の余地がある。
【0007】
また、後者については特開昭34ー5144号公報(アルカリ金属塩)や特開昭40ー3291号公報(テレフタル酸塩)、特開昭48ー61556号公報(リチウム元素含有)、特開昭51ー112860号公報(リチウム元素、カルシウム元素、リン元素を含有)等が提案されており、これらの内粒は特異な表面突起をつくることで知られているが、その表面突起は比較的柔らかく、外粒法に比べて傷がつきやすく、いまだ改善の余地がある。
【0008】
また、近年ではフイルム用途の高品質化が進み、より機能性の高いフイルム原料の開発が望まれるなか、従来の製品では、走行性、耐摩耗性において必ずしも十分とはいいがたく、さらなる改善が求められている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は前記した従来技術の欠点を解消することにあり、特定の粒子をポリエステル中に含有せしめることにより、ポリエステルの成形性、フイルムなどに成形したときの走行性、表面均一性、耐摩耗性に優れたポリエステル組成物を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記した発明の目的は、体積平均粒子径が0.01〜3.0μm、下記に示される相対標準偏差が0.5以下であるリン酸カルシウム粒子を0.001〜10重量%含有することを特徴とするポリエステル組成物により達成される。
【0011】
【数2】
Figure 0003635785
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明におけるポリエステルは、フイルムを形成しうるものならどのようなものでもよく、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンー2,6ーナフタレンジカルボキシレート、ポリエチレンー1,2ービス(2ークロロフェノキシ)エタンー4,4’ージカルボキシレートなどが好ましく挙げられるが、ポリエチレンテレフタレートあるいはポリエチレンー2,6ナフタレンジカルボキシレートが特に好ましい。また、特に機械的強度などが必要な高級用途の場合は、ポリエチレンー2,6ナフタレンジカルボキシレートが好適である。
【0013】
これらのポリエステルには、共重合成分としてアジピン酸、イソフタル酸、セバシン酸、フタル酸、4,4ージフェニルジカルボン酸などのジカルボン酸およびそのエステル形成性誘導体、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリプロピレングリコールなどのジオキシ化合物、p−(βーオキシエトキシ)安息香酸などのオキシカルボン酸およびそのエステル形成性誘導体などを共重合することができるが、その共重合量は、全ポリエステル繰返し単位に対して20mol%以下であることが、ポリエステルの熱安定性、寸法安定性などの点から好ましい。
【0014】
本発明におけるリン酸カルシウム粒子は、耐摩耗性、易滑性等の点から、体積平均粒子径が0.01〜3.0μmであることが好ましく、さらには0.03〜2.0μm、特には0.5〜1.5μmであることが好ましい。また、耐摩耗性、表面均一性などの点から、下記式に示される相対標準偏差が0.5以下であることが好ましく、特に0.2以下であることが好ましい。
【0015】
【数3】
Figure 0003635785
該粒子の含有量としては、表面突起個数、本発明の効果の十分な発現などの点から、0.001〜10重量%であることが好ましく、特に0.005〜5重量%であることが好ましい。また、ポリエステルとの親和性、表面反応性などの点から、比表面積としては10m2 /g以上であることが好ましい。
【0016】
該粒子の組成比としては、ポリエステルとの親和性、表面反応性等の点から、カルシウム原子/リン原子比が1.3〜2.2であることが好ましく、特に1.5〜2.2であることが好ましい。また、該粒子が、水酸基を有する場合には、ポリエステルとの親和性、再溶融時の熱安定性などの点から、水酸基/カルシウム原子のモル比が0.45〜0.55であることが好ましい。さらに、該粒子のポリエステルとの親和性、表面反応性、耐摩耗性等の点から、ポリエステル中の該粒子1gに対し、カルボン酸金属塩を10ー5mol以上該粒子表面に有することが好ましく、特には2×10ー5以上であることが好ましい。
【0017】
このような粒子の強度としては、該粒子を10%変形させたときの強度(S10)が
5kgf/mm2 ≦S10≦40kgf/mm2
の関係を満足することが耐摩耗性、表面突起の強度などの点から好ましく、より好ましくは、
10kgf/mm2 ≦S10≦25kgf/mm2
である。
【0018】
このような粒子の形状としては、表面均一性、走行性、フイルム表面の突起形状の点から、該粒子の70%以上の粒子が、長径/短径比が1.5以上であることが好ましい。
【0019】
また、該粒子は、耐摩耗性、走行性等の点から、球相当平均一次粒子径が0.005〜0.2μmの微細粒子からなる凝集型粒子であることが好ましい。
【0020】
このようなリン酸カルシウム粒子は、本発明の効果を妨げない範囲において、表面処理を施すことができる。表面処理剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸リチウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物塩などのアニオン系界面活性剤、ポリオキシフェノールエーテル、ポリエチレングリコールモノステアレート、ステアリン酸モノステアレートなどの非イオン性界面活性剤、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールなどの水溶性の合成高分子、ゼラチン、デンプンなどの水溶性の天然高分子、カルボキシメチルセルロースなどの水溶性の半合成高分子、シラン系や、チタン系のカップリング剤、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸およびこれらの誘導体などのリン化合物など を用いることができる。
【0021】
また、本発明の効果を妨げない範囲において、成形性、透明性、静電キャスト性などの機能性向上のために、ワックス、改質剤、難燃剤などの他の化合物を添加してもかまわない。
【0022】
さらに、本発明におけるリン酸カルシウム粒子以外の粒子を本発明の効果を妨げない範囲において添加しても構わない。この時、好適に用いられる粒子としては、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、ケイ酸アルミニウム、酸化チタン、二酸化ケイ素、球状の各種有機粒子等が挙げられるが、これ以外の粒子を用いても構わない。
【0023】
本発明におけるリン酸カルシウム粒子のポリエステルへの配合に当っては、重合反応系に直接添加する方法以外にも、例えば該粒子を溶融状態のポリエステルへ練り込む方法などでも可能である。前者の重合反応系に添加する際の添加時期は任意であるが、エステル交換反応前、またはエステル交換反応後、およびエステル交換反応後から重合反応の減圧開始直前までの間が好ましい。後者の練り混みの場合は粒子を乾燥してポリエステルに練り込む方法でもスラリー状態で減圧しながら直接練り込む方法でもかまわない。
【0024】
このようにして得られたポリエステル組成物は、目的に応じて、希釈用ポリエステルなどの他のポリエステル組成物とブレンドして用いてもかまわない。
【0025】
本発明のポリエステル組成物は、例えば次のような方法によってフイルムに成形することが得きる。
【0026】
ポリエステル組成物のペレットを十分乾燥した後、直ちに押出機に供給する。このペレットを260〜350℃で溶融し、ダイよりシート状に押出し、キャスティイングロール上で冷却、固化させて未延伸フイルムを得る。次に、この未延伸フイルムを二軸延伸するのが好ましい。延伸方法としては、逐次二軸延伸法、同時二軸延伸法、あるいはこのように延伸したフイルムを再度延伸する方法などを用いてもよい。ポリエステルの組成によるが、例えば、磁気記録媒体用フイルムとして十分な弾性率を得るには最終的な延伸面積倍率(縦倍率×横倍率)を6以上とすることが好ましい。
【0027】
また、フイルムの熱収縮率を小さく保つため、150〜260℃の温度範囲で1〜60秒程度の熱処理を行うことが好ましい。
【0028】
本発明におけるポリエステル組成物は、一般成型品、繊維など特に用途は限定されないが、特に磁気テープ用ベースフイルムに好適である。
【0029】
本発明のポリエステル組成物から得られるフイルムは単層フイルムとして、また積層フイルムとしてでも用いられる。積層フイルムの場合、少なくとも一層を構成するフイルムとして本発明のフイルムを用いると、フイルム表面の耐摩耗性、走行性が良好となるので好ましい。さらには、走行性、ダビング性の点から、本発明のポリエステル組成物からなるフイルムが、積層フイルムの最表層の一つであることが好ましい。フイルムの積層方法としては、溶融共押出しなどの公知の方法を用いることができる。
【0030】
例えば、リン酸カルシウム粒子と、リン酸カルシウム以外の外部添加型粒子(ここでいう外部添加粒子とは、内部析出型粒子以外のすべての外部添加型の粒子であり、その組成は、ポリエステルに不溶であれば、無機、有機を問わない。)として酸化アルミニウム粒子を併用し、かつ、酸化アルミニウム粒子よりリン酸カルシウム粒子の体積平均粒子径が大きいとき、それぞれの粒子が異なる層に含有されていてもよいが、走行性、ダビング性の点から、リン酸カルシウム粒子と酸化アルミニウム粒子が少なくとも片面側の同じ最表層に含有することが好ましく、この時のリン酸カルシウム粒子を含有するフイルムの層の厚さtとしては、走行性、表面均一性などの点からリン酸カルシウム粒子の平均粒径dとの関係が、0.2d≦t≦10dであることが好ましく、より好ましくは0.5d≦t≦5d、特に0.5d≦t≦3dであることが好ましい。
【0031】
またリン酸カルシウム粒子と酸化アルミニウム粒子が異なる層に含有される場合のリン酸カルシウム粒子を含有するフイルムの厚さtとしては、走行性、表面均一性などの点から、リン酸カルシウム粒子の粒径dとの関係が、0.2d≦t≦10dであることが好ましく、より好ましくは0.5d≦t≦10d、特に0.5d≦t≦3dであることが好ましい。さらには、走行性、耐摩耗性、ダビング性の点から、リン酸カルシウム粒子を含有するフイルムの層の外側に、酸化アルミニウム粒子を含有する層が最外層として存在していることが好ましく、その最外層の厚さとしては、耐摩耗性、走行性、表面均一性などの点から、0.005〜1.0μmであることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.5μm、特に0.02〜0.3μmであることが好ましい。
【0032】
また、このフイルムは、耐摩耗性、走行性などの点から、少なくとも片面の突起個数が2×103 〜5×105 個/mm2 であることが好ましく、より好ましくは、3×103 〜4×105 個/mm2 であり、特には5×103 〜3×105 個/mm2 であることが好ましい。
【0033】
【実施例】
次に、本発明を実施例および比較例により、さらに詳細に説明する。
【0034】
(A)粒子特性
(1)カルボン酸金属塩の測定
粒子を1重量%含有するポリマー100gをオルソクロロフェノール(OCP)1lに100℃で溶解する。次に、このポリマー溶液を遠心分離器にかけ、粒子を分離する。さらにこの分離粒子に付着しているポリマーをオルソクロロフェノール100ml、100℃で溶解し、遠心分離する。このような操作を3回繰返した後に、残った粒子をアセトンで十分に洗浄するこうして得られた粒子について、BioーRad Digilab社製 FTS60A/896を用いて、FT−IRによる分析を行った。
【0035】
(2)粒径比、体積平均粒子径、球相当平均一次粒子径、粒度分布の測定および相対標準偏差σの計算
粒子をポリエステルに配合し0.2μmの厚みの超薄片にカッティング後、透過型電子顕微鏡で、少なくとも50個の粒子について観察し測定を行った。相対標準偏差σ、平均粒径の計算式は下記のとおりである。
【0036】
【数4】
Figure 0003635785
(3)粒子の強度(S10)の測定
島津製作所(株)の微小圧縮試験機(MCTM−201型)を使用して、負荷速度:0.0145gf/sで、0〜1gfまでの負荷を加えて変形量を測定した。この測定を10回行い、そして、粒子が10%変形したときの荷重P(kgf)の平均値から、下記式の従いS10を計算した。
【0037】
10=2.8P/πd2
ここで、
P:粒子が10%変形したときの荷重の平均値(kgf)
d:体積平均粒径(mm)
である。
【0038】
(4)比表面積の測定
B.E.T.法に従い測定を行った。
【0039】
(5)モース硬度の測定
JIS規格に則り、測定を行った。
【0040】
(6)粒子組成の測定
蛍光X分析法(FLX)にて分析を行った。
【0041】
(B)フイルム特性
(1)表面粗さRa(μm)
JIS B−0601に準じ、サーフコム表面粗さ計を用い、針径2μm、荷重70mg、測定基準長0.25mmの条件下で測定した中心線平均粗さを採用した。
【0042】
(2)耐摩耗性
フイルムを細幅にスリットしたテープ状ロールをステンレス製SUS−304製ガイドロールに一定張力で高速、長時間すり付け、ガイドロール表面に発生する白粉量によって次のようにランク付した。
【0043】
A級・・・・・・・白粉発生全くなし。
B級・・・・・・・白粉発生少量有り。
C級・・・・・・・白粉発生やや多量有り。
D級・・・・・・・白粉発生多量有り。
【0044】
(3)走行性(摩擦係数μk)
フイルムを幅1/2インチのテープ状にスリットしたものをテープ走行試験機SFT−700型(横浜システム研究所(株)製)を使用し、20℃、60%RH雰囲気で走行させ、初期の摩擦係数を下記の式より求めた(フイルム幅は1/2インチとした)。
【0045】
μk=2/πln(T2 /T1
ここで、T1 :入側張力、T2 :出側張力である。ガイド径は6mmφであり、ガイド材質はSUS27(表面祖度0.2S)、巻付け角は90°、走行速度は3.3cm/秒である。この測定によって得られたμkが0.3以下の場合は摩擦係数:良好、0.3を越える場合は摩擦係数:不良と判定した。
【0046】
(4)フイルム表面の突起個数
2検出方式の走査型顕微鏡(EMS−3200、エリオニクス(株)製)と断面測定装置(PMS−1、エリオニクス(株)製)において、フイルム表面の平面の高さを0として走査したときの突起高さ測定値を画像処理装置(IBAS2000、カールツァイス(株)製)に送り、画像処理装置状にフイルム表面突起画像を再構築する。次に、この表面突起画像で突起部分を2値化して得られた個々の突起部分の中で最も高い値を突起の高さとし、これを個々の突起について求める。この測定を場所を変えて500回繰返し20nm以上の高さのものを突起とし、突起個数を求めた。また走査型電子顕微鏡の倍率は1000〜8000倍の間を選択する。なお、場合によっては、高精度干渉式3次元表面解析装置(WYKO社製TOPOー3D、対物レンズ:40〜200倍、光解像度カメラ使用が有効)を用いて得られる高さ情報を上記SEMの値に読み替えて用いてもよい。
【0047】
実施例1
体積平均粒子径0.5μm、S10が20kgf/mm2 、比表面積が20m2 /g、カルシウム原子/リン原子比が1.67であるリン酸カルシウム粒子を10重量部、エチレングリコール90重量部を混合して常温下2時間ヂィゾルバーで撹拌処理し、リン酸カルシウム粒子のエチレングリコールスラリー(A)を得た。
【0048】
球相当平均一次粒子径0.03μm、体積平均粒子径0.1μm、比表面積が120m2 /gである酸化アルミニウム粒子を10重量部、エチレングリコール90重量部を常温下2時間ディゾルバーで撹拌処理し酸化アルミニウム粒子のエチレングリコールスラリー(B)を得た。
【0049】
体積平均粒子径0.6μm、架橋度80重量%、熱分解温度が390℃であるスチレンージビニルベンゼン共重合体粒子を10重量部、エチレングリコール90重量部を常温下2時間ディゾルバーで撹拌処理し、スチレンージビニルベンゼン共重合体スラリー(C)を得た。
【0050】
他方、ジメチルテレフタレート、エチレングリコールに、触媒として酢酸マグネシウムを加えてエステル交換反応を行った後、反応生成物に先に調整したスラリー(A)、スラリー(B)、スラリー(C)、触媒の三酸化アンチモン、および耐熱安定剤としてトリメチルホスフェートを加え重縮合反応を行い、ポリエチレンテレフタレートを得た。
【0051】
ポリエチレンテレフタレート組成物を290℃で溶融、押出し、その後、90℃で縦横それぞれ3倍延伸し、さらにその後、220℃で15秒間熱処理し、厚さ15μmのポリエチレンテレフタレート二軸延伸フイルムを得た。
【0052】
このフイルムを評価したところ、Ra=0.022μm、摩擦係数μk=0.24、耐摩耗性評価A級、表面突起個数20000個/mm2 であり、耐摩耗性および走行性が非常に優れたフイルムであった。また、透過型電子顕微鏡による評価を行ったところ、リン酸カルシウムの体積平均粒子径は0.5μm、相対標準偏差σは0.13、球相当平均一次粒子径が0.05μm、長径/短径比が1.55であった。
【0053】
また、同様の重合方法により、リン酸カルシウムを1重量%含有するポリエチレンテレフタレートを生成させ、実施例(A)(1)にある方法でカルボキシレート量を測定した結果2.8×10ー4molであった。
【0054】
実施例2〜5
ポリエチレン組成物中の粒子種、平均粒子径、粒子添加量、各種触媒などを変更し、実施例1と同様の方法で二軸延伸ポリエステルフイルムを得た。これらの結果を表1に示した。これらのフイルムが良好な耐摩耗性および走行性を有していることがわかる。
【0055】
実施例6
ポリエステルが、ポリエチレンー2,6ーナフタレンジカルボキシレートである以外は、実施例1と同様にして二軸延伸フイルムを得た。
【0056】
実施例7
粒子として、リン酸カルシウム、酸化ジルコニウムの2種のみを添加する以外は全く実施例1と同様にしてポリエチレンテレフタレート組成物(X)を得た。
【0057】
粒子として、スチレンージビニルベンゼン共重合体のみを添加する以外は全く実施例1と同様にしてポリエチレンテレフタレート組成物(Y)を得た。
【0058】
この(X)を(Y)の上に溶融押出して積層未延伸フイルムを得た。この時の押出し温度は290℃とした。その後、90℃で縦横にそれぞれ3倍延伸し、さらにその後、220℃で20秒間熱処理し、積層二軸延伸フイルムを得た。
【0059】
(X)、(Y)各層の厚みはそれぞれ、0.3μm、8μmであった。
【0060】
このフイルムを評価したところ、表2に示すようにRa=0.021μm、耐摩耗性評価A級、摩擦係数μk=0.21であり、耐摩耗性および走行性に非常に優れたフイルムであった。
【0061】
実施例8
ポリエステルがポリエチレンー2,6ーナフタレンジカルボキシレートである以外は、実施例7と同様にして二軸延伸フイルムを得た。
【0062】
比較例1〜3
粒子種、平均粒子径、粒子含有量を変更し、実施例1と同様の方法で二軸延伸ポリエステルフイルムを得た。これらのフイルムの評価結果を表3に示した。これらのフイルムは、耐摩耗性、走行性をともに満足できるフイルムではなかった

【表1】
Figure 0003635785
【表2】
Figure 0003635785
【表3】
Figure 0003635785
【0063】
【発明の効果】
本発明のポリエステル組成物は、特にフイルムとした場合、耐摩耗性、走行性に優れ磁気記録媒体用途などに好適である。

Claims (13)

  1. 体積平均粒子径が0.01〜3.0μm、下記に示される相対標準偏差が0.5以下であるリン酸カルシウム粒子を0.001〜10重量%含有することを特徴とするポリエステル組成物。
    Figure 0003635785
  2. リン酸カルシウム粒子の比表面積が10m2 /g以上であることを特徴とする請求項1記載のポリエステル組成物。
  3. リン酸カルシウム粒子中のカルシウム原子/リン原子の比が1.3〜2.2であることを特徴とする請求項1または2記載のポリエステル組成物。
  4. カルボン酸金属塩をリン酸カルシウム粒子1gに対し、10ー5mol以上有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリエステル組成物。
  5. リン酸カルシウム粒子を10%変形させたときの強度(S10)が、
    5kgf/mm2 ≦S10≦40kgf/mm2
    の関係を満足することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリエステル組成物。
  6. リン酸カルシウム粒子の70%以上が、長径/短径比1.5以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリエステル組成物。
  7. リン酸カルシウム粒子が球相当平均一次粒子径0.005〜0.2μmの微細粒子からなる凝集型粒子であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリエステル組成物。
  8. ポリエステルがポリエチレンー2,6ーナフタレンジカルボキシレートであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリエステル組成物。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリエステル組成物からなるフイルム。
  10. 請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリエステル組成物からなるフイルム層を少なくとも一層有する積層フイルム。
  11. リン酸カルシウム粒子を含有するフイルム層の中で、最も体積平均粒子径の大きい外部添加型粒子の粒径dと、該粒子を含有するフイルム層の厚みtの関係が下記式を満足することを特徴とする請求項10に記載の積層フイルム。
    0.2d≦t≦10d
  12. 請求項10または11記載のフイルム層が最表層の少なくとも一層を形成してなる積層フイルム。
  13. フイルム表面の突起数が2×103 〜5×105 個/mm2 であることを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項に記載のポリエステルフイルム。
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