JP2788525B2 - 二軸配向積層ポリエステルフィルム - Google Patents

二軸配向積層ポリエステルフィルム

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JP2788525B2
JP2788525B2 JP924490A JP924490A JP2788525B2 JP 2788525 B2 JP2788525 B2 JP 2788525B2 JP 924490 A JP924490 A JP 924490A JP 924490 A JP924490 A JP 924490A JP 2788525 B2 JP2788525 B2 JP 2788525B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は,二軸配向積層ポリエステルフィルムに関
し,更に詳しくは電磁変換特性,走行性,対摩耗性およ
び高速作業時のハンドリング性に優れた磁気記録媒体用
二軸配向積層ポリエステルフィルムに関する。
(従来の技術) ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステ
ルは,物理的および化学的特性に優れているため,繊維
や成形品としての用途以外に,磁気記録媒体用をはじ
め,包装用,写真用,コンデンサー用のフィルムとして
も多く用いられている。そのなかでも,特に磁気テープ
等の磁気記録媒体用ベースフィルムとして用いる場合に
は,表面の平坦性と易滑性とが重要視される。そして,
易滑性を向上させる方法としては,フィルム中にカオリ
ナイト,シリカ,炭酸カルシウム等の粒子を添加した
り,ポリエステル製造反応中にカルボン酸成分,オリゴ
マー,リン化合物等を金属化合物と反応させて得られる
粒子を利用してフィルム表面を粗面化する方法が一般的
である。しかしながら,フィルム表面の粗面化は,電磁
変換特性の悪化をもたらすため好ましくない。
これらの相反する平坦性と易滑性とを両立させ得る方
法として,異種の粒子や,粒子径の異なるものを組み合
わせる方法が提案されているが,この方法では磁性層を
形成させる面とその反対面とが基本的に同一であるた
め,本質的な解決策とはなりえない。
そこで,フィルム両面の粗度を異にした積層フィルム
によって,平坦性と易滑性とを両立させる方法がいくつ
か提案されている。例えば特開昭62−70047号公報,同6
2−248131号公報,特開平1−206082号公報等では,そ
れぞれの表面突起分布等を一定の範囲内とすることが提
案されている。
(発明が解決しようとする課題) しかしながら,従来の方法においては,粗面と平坦面
とが別々に取扱われているため,易滑面の粗度が磁性層
表面に転写して平坦面(磁性層下地面)の電磁変換特性
の向上効果が不十分になったり,また必要以上に下地面
を平坦化する結果,特に高速作業時におけるフィルムの
ハンドリング性が不良になる場合が多かった。また,フ
ィルムのハンドリング性,特に巻き上げ特性は,フィル
ムの弾性率や腰強さ,厚さ,表面粗さ等の要因が複雑に
絡み合った現象であり,特に積層フィルムのように表裏
の性状が異なる場合は,そのハンドリング性を予測し,
それを調節することは極めて困難であった。
本発明は,磁気記録媒体用ベースフィルムとして,電
磁変換特性,走行性,対摩耗性に優れ,高速作業時にお
いても常に優れたハンドリング性を有する二軸配向積層
ポリエステルフィルムを提供するものである。
(課題を解決するための手段) 本発明の二軸配向積層ポリエステルフィルムは,滑剤
を含み,表面に微細な多数の突起を有する二軸配向積層
ポリエステルフィルムにおいて,該フィルムの露出する
一方の面(A面)は,平均粗さ(RaA)が0.01〜0.03μ
mである易滑面を与え,該フィルムの露出する他方の面
(B面)は,平均粗さ(RaB)が0.15μm未満であり,
かつRaB<RaAである平坦面を与え,かつ二枚のフィルム
間での空気抜け速さが300秒以内であり,そのことによ
り上記目的が達成される。
本発明のポリエステルフィルムを構成するポリエステ
ルは,その繰返し単位の80モル%以上がエチレンテレフ
タレートからなるものであり,他の共重合成分としては
イソフタル酸,p−β−オキシエトキシ安息香酸,2,6−ナ
フタレンジカルボン酸,4,4′−ジカルボキシルジフェノ
ール,4,4′−ジカルボキシベンゾフェノン,ビス(4−
カルボキシルフェニール)エタン,アジピン酸,セバシ
ン酸,5−ナトリウムスルホイソフタル酸等のジカルボン
酸成分等が挙げられる。また,グリコール成分としては
プロピレングリコール,ブタンジオール,ネオペンチル
グリコール,ジエチレングリコール,シクロヘキサンジ
メタノール,ビスフェノールAのエチレンオキサイド付
加物等を任意に選択使用することができる。その他の共
重合成分としては少量のアミド結合,ウレタン結合,エ
ーテル結合,カーボネート結合等を含んでもよい。上記
ポリエステルの製造方法としては,芳香族ジカルボン酸
とグリコールとを直接反応させるいわゆる直接重合法,
および芳香族ジカルボン酸のジメチルエステルとグリコ
ールとをエステル交換反応させる,いわゆるエステル交
換法など任意の製造方法を採用することができる。
本発明の積層フィルムは,少なくとも二層以上の積層
構造を有するものであるが,特に二層構造が好ましい。
三層以上の積層構造を有するフィルムの場合は,最外層
が上述のA面およびB面の特性を有していればよく,そ
の際,中間層の特性は何ら制限されない。
本発明の積層フィルムの製造は,従来公知の方法によ
って製造される。例えば,A面およびB面を構成するポリ
エステルをそれぞれ溶融して積層し,共押出することに
よって得られる。
本発明の二軸配向積層ポリエステルフィルムは,上記
の方法で製造された積層フィルムを,従来公知の方法で
二軸延伸,熱処理することによって得られる。例えば,
二軸延伸の方法としては,縦延伸および横延伸を同時に
行う同時二軸延伸法の他,縦延伸および横延伸を別々に
行う逐次二軸延伸法,さらに同時二軸延伸と逐次二軸延
伸と組み合わせた方法等を適用することができる。そし
て逐次二軸延伸法を用いる場合には、縦・横延伸法の
他,横・縦,縦・横・縦,横・縦・横等の任意の方法を
採用することができ,要求される強度,弾性率,寸法安
定性等の諸性能に応じて適宜選択される。また,フィル
ムの延伸方法は,フィルム表面の破裂ボイドと密接に関
係する。フィルムの耐摩耗性を優れたものにするために
は,易滑面(A面)に存在する破裂ボイドを1個/mm2
満にすることが好ましいが,このためには,例えば第1
段の縦延伸温度を通常の延伸温度よりも10〜30℃高く設
定することが好ましい。また,第1段の縦延伸倍率を通
常の倍率よりも若干低く設定することが好ましい。ま
た,縦延伸を2回行った後横延伸を行うことができ,こ
の場合においても,第1段の延伸温度は通常の逐次二軸
延伸における延伸温度よりも10〜30℃高く設定すること
が好ましい。
この二軸配向積層ポリエステルフィルムの熱処理は,
上記の方法で二軸延伸されたフィルムに対して,従来公
知の方法で行うことができる。例えば熱処理の方法とし
ては,ステンター中で行うことができる。また,熱処理
条件とフィルムの結晶化度とは密接に関係し,一般に熱
処理温度を高くすればするほど,また熱処理時間を長く
すればするほど結晶化度が増加する。そして,結晶化度
が低すぎると寸法安定性が不良になり,磁気記録媒体用
フィルムとして好ましくない。逆に結晶化度が高すぎる
とフィルムの耐摩耗性が不良になる。フィルムの結晶化
度はその密度から推定することができ,上述の観点か
ら,フィルムの密度は1.385〜1.395g/cm3,特に1.387〜
1.392g/cm3であることが好ましい。上記の密度を得るた
めに好ましい熱処理温度および熱処理時間は,それぞれ
180℃〜230℃および120〜2秒である。
この発明に使用される滑剤は,ポリエステルに対して
不活性の微粒子,いわゆる外部粒子,またはポリエステ
ル製造反応中にカルボン酸成分,オリゴマーまたはリン
化合物のいずれかを金属化合物と反応させて得られる微
粒子,いわゆる内部粒子のいずれでもよく,外部粒子と
してはシリカ,二酸化チタン,タルク,カオリナイト等
の金属酸化物,炭酸カルシウム,リン酸カルシウム,硫
酸バリウム等の金属の塩または有機ポリマーからなる粒
子等が例示される。そして,これらの滑剤は,いずれか
一種を単独で用いてもよく,また2種以上を併用しても
よい。また,A面(易滑面)を構成するポリエステルに用
いられる滑剤は,滑剤粒子の外接円に対する面積率(粒
子の投影断面積と粒子に外接する円の面積との比)が60
%以上特に70%以上であることが好ましい。上記面積率
が60%未満であると,易滑性および耐摩耗性が低下す
る。また,上記の滑剤粒子は,平均粒径が0.05〜3μm,
特に0.1〜2μmのものが好ましく,0.05μm未満では易
滑性が低下し,反対に3μmを超えると電磁変換特性が
不良になる。なお,外部粒子を用いる場合には,添加す
る滑剤粒子の表面を任意の手段で処理し,ポリエステル
との親和性を改良して用いるのが好ましい。一方,B面
(平坦面)を構成するポリエステルに用いられる滑剤
は,平均粒径が0.05〜0.5μmであるものが好ましく,0.
05μm未満ではフィルムのハンドリング性が不良になり
やすく,反対に0.5μmを超えるとフィルム表面に粗大
突起を生じる原因となり,電磁変換特性が悪化する。ま
た,上記滑剤粒子径のばらつき度(標準偏差と平均粒子
径と比率)は25%以下であることが好ましく,粒子径の
ばらつき度が25%を超えると,フィルム表面の平坦性を
が損なわれ易くなる。また,上記滑剤粒子の面積率(粒
子の投影断面積と粒子に外接する円の面積との比)は60
%以上であることが好ましく,面積率が60%未満の場合
は,フィルム表面の突起の形態が不規則になり,表面性
状を微調整して所望の効果を得ることが困難になる。ま
た,上記滑剤粒子の添加量は,B面を構成するポリエステ
ルに対して0.005〜0.5重量%であることが好ましい。上
記滑剤粒子の添加量が0.005重量%未満の場合は,ポリ
マー中の粒子量が少なすぎ,フィルム表面の突起密度が
低下してハンドリング性が不十分になり,反対に0.5重
量%を超えると,粒子が多すぎてポリマー中で凝集しや
すく,そのため粗大突起が生じる。
本発明の二軸配向積層ポリエステルフィルムは,その
易滑面(A面)の平均粗さ(RaA)が0.01〜0.03μmで
あるので,易滑性と電磁変換特性とを共に優れたものに
することができる。すなわち,RaAが0.01μm未満ではフ
ィルムの易滑性が不良となり,磁気記録媒体の走行性が
不良になる。反対にRaAが0.03μmを超えると,フィル
ム表面が粗くなり過ぎ,磁性層表面にその粗さが転写
し,電磁変換特性が不良となる。また,A面を触針式3次
元表面粗さ計を用いて測定したとき,面積0.01mm2の区
域内で最も高い突起の高さh(max)が0.2〜0.5μmで
あることがより好ましい。これは,h(max)を0.2μm以
上とすることによって,磁気記録装置等の金属製案内ロ
ーラなどとの間の接触面積を低減し,摩擦抵抗や摩耗を
低減させることができるからであり,またh(max)が
0.5μmを超えると,電磁変換特性が不良になるからで
ある。
本発明の二軸配向積層ポリエステルフィルムは,その
平坦面(B面)の平均粗さ(RaB)が0.15μm未満であ
り,かつRaB<RaAであるため,B面磁気記録層の下地面と
して用いた場合,下地面の平坦効果により,電磁変換特
性を優れたものとし,かつA面の易滑効果を期待するこ
とができる。また,B面には高さ0.54μm以上の高い突起
が実質的に存在しないことが好ましく,これにより,メ
タル塗布型や蒸着型のビデオテープ,デジタルオーディ
オテープ等の高密度磁気記録媒体とした場合,磁気記録
信号の欠落,すなわちドロップアウトが生じ難くなる。
また,非接触光学式3次元表面粗さ計で測定した高さ0.
2μm以上の突起を,200個/mm2以上とすることによって,
B面の易滑性を向上し,B面がフリーロール上を通過する
ときに生じるシワが低減され,良好なハンドリング性が
得られ易くなり,また2000個/mm2以下とすることによっ
て,高密度磁気記録媒体用ベースフィルムとして用いた
場合,優れた電磁変換特性が得られるからである。ま
た,同様に測定したB面の高さ0.025μm以上0.2μm未
満の突起が20000個/mm2以上であることが好ましく,こ
れにより,やはりハンドリング性を良好にすることが容
易になる。
この発明の二軸配向積層ポリエステルフィルムは,二
枚のフィルム間での空気抜け速さが300秒以内であるの
で,高速作業時のハンドリング性を常に優れたものとす
ることができる。なお,本発明で規定する空気抜け速さ
は,後述の実施例で示すように,直径が10cmの面積につ
いて,二枚のフィルムを小間隙(2mm)を介して平行に
配設すると共に,一方のフィルムのA面と他方のフィル
ムのB面とを対向させ,二枚のフィルムにそれぞれ張力
を与えて平坦にした後,両フィルム間の空気を外周部か
ら真空ポンプで吸引し,フィルムの外周部に干渉縞が生
じてからフィルムの全面にわたる干渉縞が出現してその
働きが停止するまでの時間を空気抜け速さとする。本発
明の進歩性はこの点にある。すなわち,フィルムのハン
ドリング性,特にフィルムの巻き上げ特性は,フィルム
の弾性率や腰強さ,厚さ,表面粗さ等の要因が複雑に絡
み合った現象であるが,本発明者らはこのハンドリング
性,特にフィルムの巻き上げ特性に関して鋭意研究した
結果,それはフィルムを通過する空気の移動速度に最も
大きく依存し,従って上記の空気抜け速さを調節するこ
とにより,常に優れたハンドリング性を有する二軸配向
積層ポリエステルフィルムが得られることを見いだして
本発明に至ったものである。この二枚のフィルム間での
空気抜け速さは,240秒以下が好ましく,180秒以下がさら
に好ましい。
(実施例) 次に,本発明を実施例によって更に具体的に説明す
る。なお,フィルムの平均粗さ,空気抜け速さ等の諸性
状の測定方法は以下の通りとした。
(1)平均粗さ(RaA,RaB) サーフコム300A型表面粗さ計(東京精密製)を用い,
針径2μm,荷重0.07g,測定基準長0.8mm,カットオフ0.08
mmの条件で測定した中心線平均粗さ(RaA(μm))で
表示する。
(2)A面とB面との間での空気抜け速さ 第1図に示す測定装置を用意する。この装置は,内周
部に環状の嵌合突部1aが設けられた台盤1と,内周部に
環状の嵌合凹部2bが設けられたフィルム押さえ2と,こ
のフィルム押さえ2の上面に載せられる別の環状のフィ
ルム押さえ8と,フィルム押さえ2に設けられた空洞2a
および細孔2cにパイプ7を介して接続される真空ポンプ
6と,を有している。フィルム押さえ2の嵌合凹部2bは
台盤1の嵌合突部1aに上方より嵌合するよう構成され,
台盤1及びフィルム押さえ2,8に設けられたネジ孔8e,2
e,1eにネジ8を螺合することによりそれらは固着される
ようになっている。
まず,台盤1の上にフィルム4をB面(平坦面)を上
にして載せる。次いで,フィルム押さえ2をフィルム4
の上から台盤1に載せることによってフィルム4に張力
を与えながらフィルム4を台盤1とフィルム押さえ2と
の間で固定する。次いで,フィルム押さえ2の上に,別
のフィルム5をA面(易滑面)を下にして載せる。次い
で,そのフィルム5の上に別のフィルム押さえ8を載
せ,更にネジ3を用いてフィルム押さえ8,2及び台盤1
を固定する。次に,フィルム押さえ2に設けられた空洞
2aと真空ポンプ6とを,フィルム押さえ2に設けられた
細孔2cおよびパイプ7を介して接続する。そして,真空
ポンプ6を駆動すると,フィルム5には,空洞2aに吸い
付けられることによる張力が加わる。また,同時にフィ
ルム4とフィルム5間も,フィルム押さえ2の内周に適
宜間隔をおいて設けられた複数の細孔2dを介して減圧さ
れ,台盤1内のフィルム4とフィルム5はその外周部か
ら密着し始める。密着する様子は,フィルム5の上部か
ら干渉縞を観察することによって容易に知ることができ
る。そして,フィルム4とフィルム5の重合面(重ね合
わさった面)の外周部に干渉縞が生じてから重合面の全
面に干渉縞が拡がり,その動きが止まるまでの時間
(秒)を測定し,この時間(秒)をもって空気抜け速さ
とする。なお,二枚のフィルム4と5の重合面部分の直
径は10mmに設定され,二枚のフィルム4と5の間の間隔
は2mmに設定され,真空ポンプ6は5〜200ml/分の吸引
力を有するものを使用する。また,フィルム4,5に作用
する張力,真空ポンプ6の吸引力によってこの空気抜け
速さの値が変わることはない。
(3)面積0.01mm2の区域内で最も高い突起の高さh(m
ax) ファージ表面を(株)小坂研究所製3次元粗さ計(SE
−3AK)を用い,針径2μm荷重0.03gの条件下に、フィ
ルム長手方向にカットオフ0.25mmで,1mmにわたって測定
し,2μmピッチで500点に分割し,各点の高さを3次元
粗さ解析装置(SPA−11)に記憶させる。これと同様の
操作をフィルム幅方向について2μm間隔で連続的に15
0回,つまりフィルムの幅方向0.3mmにわたって行い,解
析装置にデータを記憶させる。次に,解析装置を用いて
突起密度の高さ分布を求める。このとき,±0.00625μ
mのヒステリシス幅を超えて突起と認識されるもののみ
をカウントする。そして,突起数が最も多くカウントさ
れる面を基準面とし,突起数が1個/0.01mm2となる面の
基準面からの高さを求め,これを0.01mm2の区域内で最
も高い突起の高さh(max)とし,μm単位で表す。
(4)破裂ボイド数 走査型電子顕微鏡を用い,拡大倍率1000倍でフィルム
表面50mm2を観察し,破裂ボイドが認められる部位を更
に5000倍に拡大し,その長径が2μm以上のものの個数
をカウントし,1mm2当りの個数に換算する。第2図は破
裂ボイドを有しないフィルム9の断面,第3図は破裂ボ
イドを有するフィルム9の断面を示したものであり,図
中,10と10aは滑剤粒子,11はボイド,9aは突起,9bは破裂
フィルムである。
(5)フィルムの密度 JIS−K7112に準じ,密度勾配管を用いる。
(6)高さ0.54μm以上の突起数 フィルム表面にアルミニウムを薄く蒸着し,Nache社製
二光束干渉顕微鏡を用いて,拡大倍率800倍で1cm2の面
積をくまなく観察し,高さ0.54μm以上の突起の数をカ
ウントする。
(7)高さ0.2μm以上の突起数および高さ0.025μm以
上0.2μm未満の突起数 フィルム表面を(株)小坂研究所製3次元表面粗さ計
(ET30−HK)を用い,フィルム長手方向に対して45゜方
向にカットオフ0.08mmで,0.25mmにわたって測定し,0.5
μmピッチで500点に分割し,各点の高さを3次元粗さ
解析装置(SPA−11)に記憶させる。これと同様の操作
を0.5μm間隔で連続的に150回,つまりフィルムの長手
方向に対して−45゜方向に幅0.075mmにわたって行い,
解析装置にデータを記憶させる。次に,解析装置を用い
て突起密度の高さ分布を求める。このとき,±0.00625
μmのヒステリシス幅を超えて突起と認識されるものの
みをカウントする。そして,突起数が最も多くカウント
される面を基準面とし,基準面から0.2μm高いレベル
において認識される突起数を,1mm2当りの個数に換算し
て,高さ0.2μm以上の突起数とする。また,高さ0.025
μm以上の突起数から高さ0.2μm以上の突起数を差し
引いて,高さ0.025μm以上0.2μm未満の突起数とす
る。
(8)平均粒子径,粒子径のばらつき度および外接円に
対する面積率 滑剤粒子を走査型電子顕微鏡を用いて観察し,写真撮
影したものから任意に200個の滑剤を選び,その外形を
トレースする。このトレース像から,ニコン(株)製画
像処理装置L−2Dを用いて,水平方向のフェレ径を測定
し,その平均値を平均粒子径とする。また,同装置を用
いて,粒子径の標準偏差を求め,下記式により粒子径の
ばらつき度を算出する。
ばらつき度=(粒子径の標準偏差/平均粒子径)×10
0 また,同装置を用いて,各粒子の外接円に対する面積
率(%)を求め,その平均値を外接円に対する面積率と
する。
(9)フィルムのハンドリング性 広幅のミルロールからフィルムを高速でスリットし,
小幅のロール(幅100mm,長さ3000m)に巻き直し,得ら
れたロールについて,その外観を,ロール端部の巻ず
れ,にきび状の突出部,バブル状の突出部,縦しわ等の
欠点がないか詳細に検査する。同様の検査を,種々に巻
取条件を変更したロールについて行い,以下の基準に従
ってハンドリング性を4段階に評価する。
1級:欠点の無いロールを得ることが極めて困難 2級:欠点の無いロールが得られる(歩留まり不良) 3級:欠点の無いロールが安定して得られる(歩留まり
少) 4級:容易に欠点の無いロールが得られる(歩留まりほ
とんど無し) また,フィルムのB面がフリーロールを通過するとき
に,フィルム上に折れシワが多量に生じたものは1級と
した。
(10)走行性 温度23℃,相対湿度65%の条件下,第4図の装置を用
いて試験した。第4図において,19は長さ40mmのクラン
ク,20は回転自在のガイドローラ,21は張力検出装置,22
は市販の家庭用VTRの金属製ガイドポスト(最大粗さRt
=0.15μm,平均粗さRa=0.008μm)であり,幅12.5mm
のフィルム9を図示のようにガイドローラ20,張力検出
装置21,ガイドポスト22に通し,このガイドポスト22に
対する接触角度を3π/4ラジアンに設定し,上記フィル
ム9の一端をクランク19に接続し,他端に重さ50gのウ
エイト23を吊るし,クランク19を8rpmの速度で回転さ
せ,フィルム9を100往復させて摩擦係数(μk)を求
め,下記のように3段階に評価し,ランク付けした。
○………μk≦0.25 △………0.25<μk≦0.035 ×………μk>0.35 (11)耐摩耗性 幅12.5にスリットしたフィルムを市販の剃刀に接触さ
せ,60m/分の速度で走行させたとき,剃刀に付着する白
粉の量で評価し,次の3段階にランク付けした。
○………白粉の発生がほとんど無い △………白粉の発生が多い ×………白粉の発生が非常に多い (12)電磁変換特性 フィルムに磁気塗工を施し,VHS規格のビデオテープを
得たのち,株式会社ジパング製TG−7/1型NTSCTV試験信
号発生器および925D/1型NTSCカラービデオノイズ測定器
を用い,標準テープに対するクロマS/Nを測定し,下記
の3段階に評価し,ランク付けした。
○………S/N≧+1dB △………+1dB>S/N≧−1 ×………−1db≧S/N 実施例1 滑剤としての炭酸カルシウム粉末(平均粒径0.6μm,
外接円に対する面積率70%)50重量部をメタノール250
重量部に分散したスラリーに,テトラメトキシシラン加
水分解物を,テトラメトキシシランに換算したとき炭酸
カルシウムに対して2.5重量部となるように添加した。
この混合物を15分間撹拌した後,ロータリーエバポレー
ターでメタノールを除去して得られる粉末を140℃で2.5
時間処理して第1段処理品を得た。この第1段処理品を
再びメタノールに分散し,γ−グリシドキシプロピルジ
エトキシメチルシラン加水分解物をγ−グリシドキシプ
ロピルジエトキシメチルシランとして2.5重量部を添加
し,第1段処理品と同様に処理して第2段処理品を得
た。次いで,この炭酸カルシウム粉末の第2段処理品5
重量部をエチレングリコール100重量部中にトリポリリ
ン酸ナトリウムの100g/水溶液0.64重量部と共に混合
し,高圧式均質分散器(三和機械社製H−20型)に供給
して分散処理を行った。
撹拌装置,分縮器,原料仕込口および生成物取り出し
口を設けた2段の完全混合層よりなる連続エステル化反
応装置を用い,その第1エステル化反応のエステル化反
応生成物が存在する系にテレフタール酸のエチレングリ
コールスラリー(テレフタール酸に対するエチレングリ
コールのモル比を1.7に調整し,かつ三酸化アンチモン
を三酸化アンチモン原子としてテレフタール酸単位当り
289ppm含有する)を連続的に供給した。同時に上記スラ
リーの供給口とは別の供給口から酢酸マグネシウム四水
塩のエチレングリコール溶液を,上記反応缶内を通過す
る反応生成物中のポリエステル単位ユニット当りMg原子
として100ppmとなるように連続的に供給し,常圧にて平
均滞留時間4.5時間,温度255℃で反応させた。この反応
生成物を系外に取り出して第2エステル化反応缶に供給
し,この第2エステル化反応缶を通過する反応生成物中
のポリエステル単位ユニットに対してエチレングリコー
ル0.5重量部,トリメチルホスフェートのエチレングリ
コール溶液をP原子として64ppm,および前記炭酸カルシ
ウムのエチレングリコールスラリーを炭酸カルシウムと
して2000ppmとなるようにそれぞれ別個の供給口から連
続的に供給し,常圧にて平均滞留時間5.0時間,温度260
℃で反応させた。第1エステル化反応缶の反応生成物の
エステル化率は98%であった。この第2エステル化反応
の反応生成物を撹拌装置,分縮器,原料仕込口および生
成物取り出し口を設けた2段の連続重縮合反応装置に連
続的に供給して重縮合を行い,固有粘度0.620のポリエ
ステル(PET−1)を得た。
上記PET−1におけるテトラメトキシシラン加水分解
物の添加処理およびγ−グリシドキシプロピルジエトキ
シメチルシラン加水分解物の添加処理を省略し,添加す
べき滑剤としてシリカ粒子(平均粒径0.2μm,粒子径の
ばらつき度15%,外接円に対する面積率95%)を用い,
ポリエステルに対して1000ppmとなるように滑剤の添加
量を調節すること以外は,PET−1と同様の方法でポリエ
ステル(PET−2)を得た。
これらのポリエステル(PET−1,PET−2)をそれぞれ
別個に乾燥し,次いで290℃で溶融し,それぞれ同量の
溶融ポリエステルをTダイを用い積層して冷却ドラム上
に共押出し,未延伸のポリエステルフィルムを得た。こ
のフィルムを加熱ロールを用いて120℃に加熱し,低速
ロールと高速ロールとの周速差を利用して,長手方向に
3.2倍延伸した。ついで,これを冷却した後,ステンタ
ー中で110℃に加熱し,幅方向に3.3倍延伸し,引き続き
上記のステンター中で220℃,5秒間の熱処理を行って厚
さ15μmの二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。
なお,PET−1から成る層をA層,PET−2から成る層をB
層とした。
実施例2 上記実施例1と全く同様の方法で得られた未延伸の積
層ポリエステルフィルムをステンター中に導き,90℃に
加熱して幅芳香に3.2倍延伸した。ついで,これを常温
に冷却した後,80℃に加熱したロール,および表面温度6
00℃のIRヒーター(フィルムから20mm離れた位置に3本
設置)を用いて加熱し,低速ロールと高速ロールとの周
速差を利用して長手方向に4.2倍延伸した。さらにこれ
を再度ステンター中に導き,220℃の熱処理を行いながら
幅方向に4%の弛緩処理を行って,厚さ10μmの二軸配
向積層ポリエステルフィルムを得た。
実施例3 前記PET−1に用いる滑剤を,平均粒径が0.4μm,外接
円に対する面積率が75%の炭酸カルシウム粒子とし,そ
のポリエステルに対する添加量が2500ppmとなるように
調整すること以外は,PET−1と同様のポリエステル(PE
T−3)を得た。
また,前記PET−2に用いる滑剤を,平均粒径が0.2μ
m,粒子径のばらつき度が15%,外接円に対する面積率が
95%のシリカ粒子1000ppm,および平均粒径が0.3μm,粒
子径のばらつき度が20%,外接円に対する面積率が75%
の炭酸カルシウム粒子300ppmとすること以外は,PET−2
と同様の方法でポリエステル(PET−4)を得た。
上記ポリエステル(PET−3,PET−4)を用いること以
外は前記実施例1と全く同様の方法で,厚さ15μmの二
軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。なお,PET−3
から成る層をA層,PET−4から成る層をB層とした。
実施例4 平均粒径0.12μmの球状シリカがイソプロピルアルコ
ールに均一に分散されたオルガノゾル(SiO2含有量20重
量%)5重量部を水50重量部,イソプロピルアルコール
50重量部の混合溶液と混合分散させた。次いで,該分散
液80重量部に対し,ポリエステル系共重合樹脂の水系分
散液20重量部を混合し均一になるまでよく撹拌して塗布
液とした。塗布液の固形分中のSiO2は10重量%,共重合
ポリエステル樹脂は90重量%とした。次いで,実施例1
に用いたポリエステル(PET−1)と全く滑剤を含まな
いポリエステルとを積層して押し出し,実施例1と同様
の方法で二軸配向フィルムを得る過程において,縦延伸
が終了した時点で前記の塗布液をロールコーター方式で
塗布し70℃の熱風で乾燥した後,ステンターに導くこと
以外は実施例1と同様の方法で厚さ15μmの二軸配向積
層ポリエステルフィルムを得た。なお,PET−1で構成さ
れた面をA面,塗布によって形成された面をB面とし
た。
比較例1 実施例3に用いたものと同じポリエステル(PET−3,P
ET−4)を用いること以外は,前記実施例2と全く同様
の方法で厚さ10μの二軸配向積層ポリエステルフィルム
を得た。
比較例2 実施例3に用いたポリエステル(PET−4)の替り
に,無滑剤のポリエステル(PET−5)を用いること以
外は,実施例3と全く同様の方法で厚さ15μの二軸配向
積層ポリエステルフィルムを得た。なお,PET−3から成
る層をA層,PET−5から成る層をB層とした。
比較例3 前記PET−1に用いる滑剤を,平均粒径が0.8μmのカ
オリナイト粒子とし,そのポリエステルに対する添加量
が3500ppmとなるように調整すること以外は,PET−1と
同様の方法でポリエステル(PET−6)を得た。
A面を構成するポリエステルとしてPET−6,B面には無
滑剤のポリエステル(PET−5)を用いること以外は,
実施例1と同様の方法で二軸配向積層ポリエステルフィ
ルムを得た。
比較例4 前記実施例1において,B面を構成するポリエステルと
して用いたPET−2の替りに,PET−3を用いること以外
は,実施例1と同様の方法で二軸配向積層ポリエステル
フィルムを得た。
上記実施例1〜3及び比較例1〜4で得られた二軸配
向積層ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。表1
で明らかなように,フィルム表面の平均粗さ及び空気抜
け速さが本発明の要件を満たす実施例1〜3は,いずれ
もハンドリング性,電磁変換特性,走行性,耐摩耗性が
ほぼ要求を満たすことができたのに対し,A面の平均粗さ
が過大な比較例3,B面面の平均粗さが過大な比較例4
は,いずれも電磁変換特性が十分ではなく,また空気抜
け速さが過大な比較例1,比較例2では,フィルムのハン
ドリング性が悪かった。
(発明の効果) 本発明の二軸配向積層ポリエステルフィルムは,ハン
ドリング性,電磁変換特性,走行性,耐摩耗性に優れて
おり,磁気記録媒体用のフィルムとして極めて好適であ
る。
【図面の簡単な説明】
第1図はフィルムの空気抜け速さを測定するための試験
器の模式図,第2図は破裂ボイドを有しないフィルムの
断面図,第3図は破裂ボイドを有するフィルムの断面
図,第4図はフィルムの走行性を測定するための試験器
の模式図である。 9……フィルム,9a……突起,9b……破裂フィルム片,10,
10b……滑剤粒子,11……ボイド,12……破裂ボイド。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B32B 27/36 B29C 55/00 - 55/30 G11B 5/704 B29K 67:00 B29L 9:00

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】滑剤を含み,表面に微細な多数の突起を有
    する二軸配向積層ポリエステルフィルムにおいて, 該フィルムの露出する一方の面(A面)は,平均粗さ
    (RaA)が0.01〜0.03μmである易滑面を与え, 該フィルムの露出する他方の面(B面)は,平均粗さ
    (RaB)が0.15μm未満であり,かつRaB<RaAである平
    坦面を与え, かつ二枚のフィルム間での空気抜け速さが300秒以内で
    ある二軸配向積層ポリエステルフィルム。
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