JPH05271538A - 摺動材用含油ポリイミド系樹脂組成物 - Google Patents

摺動材用含油ポリイミド系樹脂組成物

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JPH05271538A
JPH05271538A JP6806392A JP6806392A JPH05271538A JP H05271538 A JPH05271538 A JP H05271538A JP 6806392 A JP6806392 A JP 6806392A JP 6806392 A JP6806392 A JP 6806392A JP H05271538 A JPH05271538 A JP H05271538A
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善久 後藤
Toshiaki Takahashi
敏明 高橋
Hiroyasu Ochi
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 特定の構造のポリイミド樹脂、フェノール樹
脂硬化物、固体潤滑剤、潤滑油からなる摺動材用含油ポ
リイミド系樹脂組成物 【効果】 ポリイミド樹脂の特性を大きく損なうことな
く、高速時の摺動特性に優れており、各種機器類の高速
時の摺動部品(乾燥空気下及びオイル中)を得ることを
可能にした。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は摺動材用含油ポリイミド
系樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来開発されたポリイミドには優れた特
性を示すものが多いが、優れた耐熱性を有するけれども
加工性にとぼしいとか、また加工性向上を目的として開
発された樹脂は耐熱性、耐溶剤性に劣るなど性能に一長
一短があり、さらに結晶化に伴う熱処理過程での寸法変
化が大きいなどの欠点を有している。 これらの欠点を
解決すべく、本出願人は特開昭62−236858号公
報および特開昭62−253655号公報等に、本発明
の構成要素のひとつである式(1)〔化5〕
【0003】
【化5】 で表わされる繰り返し単位を有するポリイミド樹脂を開
発した。そして、本発明者らは、上記ポリイミド樹脂を
用いた摺動材用樹脂組成物は優れた摺動特性を有するこ
とを見いだした(特開昭62−265350号公報,特
開昭63−008455号公報等)。しかし、滑り速度
が高速下、即ち滑り速度が50m/min以上の高速下
において、本摺動材用樹脂組成物の摩擦特性は、低速下
(例えば5m/min)時にくらべて劣り、高速下で使
われる摺動材には適していなかった。さらに、成形時、
金型からの離型性が顕著に改良されていないという難点
も有していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ポリ
イミド樹脂を用いた摺動材用樹脂組成物の高速下におけ
る摺動特性を著しく改良し、さらに、成形時、金型から
の離型性を改良することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは前記の目的
を達成するために鋭意検討した結果、ポリイミド樹脂
と、フェノール樹脂硬化物および/または固体潤滑剤か
らなる樹脂組成物にオイルを配合することにより、高速
下における摺動特性を著しく改良し、さらに、成形時、
金型からの離型性を改良する摺動材用樹脂組成物を得る
ことができ、本発明を完成した。ただし、フェノール樹
脂硬化物は、あらかじめオイルを含浸したフェノール樹
脂硬化物を使用してもよい。すなわち、本発明は、 (1)式(1)〔化6〕で表わされる繰り返し単位を有
するポリイミド樹脂20〜70重量%と、フェノール樹
脂硬化物70〜20重量%と、固体潤滑剤10〜60重
量%を含む樹脂組成物100重量部に対して、0.1〜
11重量部の潤滑油を含むことを特徴とする摺動材用含
油ポリイミド系樹脂組成物、
【0006】
【化6】 (式中、Xは直結、イオウ、炭素数1〜10の二価の炭
化水素基、六フッ素化されたイソプロピリデン基、カル
ボニル基、チオ基、スルホニル基、エーテル基から成る
群より選ばれた基を表わし、Y1 、Y2 、Y3 およびY
4 はそれぞれ水素、低級アルキル基、低級アルコキシ
基、塩素または臭素から成る群より選ばれた基を表わ
し、またR1 は炭素数4〜9の脂肪族基、炭素数4〜1
0の単環式脂肪族基、単環式芳香族基、縮合多環式芳香
族基、芳香族基が直接又は架橋員より相互に連結された
非縮合多環式芳香族基から成る群より選ばれた4価の基
を表わす。) (2)フェノール樹脂硬化物がノボラック型またはレゾ
ール型フェノール樹脂を硬化した後粉砕し、平均粒径5
0μm以下でしかも80%以上が150μm以下の粒径
である(1)項記載の摺動材用含油ポリイミド系樹脂組
成物、 (3)フェノール樹脂硬化物が、硬化度を表示する尺度
として、硬化物のメタノール溶解度が20重量%以下の
ものである(1)項記載の摺動材用含油ポリイミド系樹
脂組成物、 (4)固体潤滑剤がフッ素樹脂、黒鉛、二硫化モリブデ
ン、二硫化タングステン、フッ化黒鉛、窒化ホウ素、窒
化ケイ素及び一酸化鉛よりなる群より選ばれた少なくと
も1種のものである(1)項記載の摺動材用含油ポリイ
ミド系樹脂組成物、 (5)フッ素樹脂が、次の(a)〜(f)からなる群よ
り選ばれた少なくとも1種である(4)項記載の摺動材
用ポリイミド系樹脂組成物、 (a)分子内に、式、−(CF2 CF2 )−で表わされ
る繰り返し構造単位を有する四フッ化エチレン樹脂 (b)分子内に、式、−(CF2 CF2 )− および
式、−〔CF(CF3 ) CF2 〕−で表わされる繰り返
し構造単位を有する四フッ化エチレン樹脂−六フッ化プ
ロピレン共重合樹脂 (c)分子内に、式、−(CF2 CF2 )− および
式、−〔CF(OCm 2m++1)CF2 〕(式中、mは正
の整数)で表される繰り返し構造単位を有する四フッ化
エチレン−パーフロロアルキルビニルエーテル共重合樹
脂 (d)分子内に、式、−(CF2 CF2)− および式、
−(CH2CH2)−で表される繰り返し構造単位を有す
る四フッ化エチレン−エチレン共重合樹脂 (e)分子内に、式、−(CH2 CH2)− および式、
−(CFClCF2)−で表される繰り返し構造単位を有
する三フッ化塩化エチレン−エチレン共重合樹脂 (f)分子内に、式、−(CF2 CH2)−で表わされる
繰り返し構造単位を有するフッ化ビニリデン樹脂 (6)潤滑油が、熱重量減量測定において、300℃に
おける重量減量が10重量%以下である(1)項記載の
摺動材用含油ポリイミド系樹脂組成物、 (7)式(1)で表される繰り返し構造単位を有するポ
リイミド樹脂の式中のR1 が、次の(a)〜(e)から
なる群より選ばれた少なくとも1種である(1)項記載
の摺動材用含油ポリイミド系樹脂組成物、 (a) 炭素数4〜9の脂肪族基 (b) 炭素数4〜10の環式脂肪族基 (c) 次式〔化7〕で表される単環式芳香族基
【0007】
【化7】 (d) 次式〔化8〕で表される縮合多環式芳香族基
【0008】
【化8】 (e)次式〔化9〕で表わされる芳香族基が直接又は架
橋員より相互に連結された非縮合多環式芳香族基
【0009】
【化9】 である。
【0010】本発明の摺動材用ポリイミド系樹脂組成物
における式(1)で表わされる繰り返し単位を基本骨格
として有するポリイミド樹脂の原料として用いるジアミ
ン成分は、式(2)〔化10〕
【0011】
【化10】 (式中、Xは前記に同じ)に示すエーテルジアミンと式
(3)〔化11〕
【0012】
【化11】 (式中、R1 は前記に同じ)に示す1種以上のテトラカ
ルボン酸二無水物とを有機溶媒の存在下または不存在下
において反応させ、得られたポリアミド酸を化学的にま
たは熱的にイミド化して製造することができる。反応温
度は通常250℃以下であり、反応圧力は特に限定され
ず、常圧で充分実施できる。また反応時間は使用するテ
トラカルボン酸二無水物、溶剤の種類、反応温度により
異なり、通常中間生成物であるポリアミド酸の生成が完
了するのに充分な時間反応させる。反応時間は24時
間、場合によっては1時間以内で充分である。このよう
な反応により式(1)の繰り返し単位に対応するポリア
ミド酸が得られ、ついでこのポリアミド酸を100〜4
00℃に加熱脱水するか、または通常用いられるイミド
化剤を用いて化学イミド化することにより式(1)の繰
り返し構造単位を有するポリイミドが得られる。また、
ポリアミド酸の生成と熱イミド化反応を同時に行ってポ
リイミドを得ることもできる。
【0013】この方法て使用される式(2)のエーテル
ジアミンとしては、式(2)中のXが脂肪属基であるも
のとして、〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕
メタン、1,1−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)
フェニル〕エタン、1,2−ビス〔4−(3−アミノフ
ェノキシ)フェニル〕エタン、2,2−ビス〔4−(3
−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2−〔4−
(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−2−〔4−(3
−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル〕プロパ
ン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)−3
−メチルフェニル〕プロパン、2−〔4−(3−アミノ
フェノキシ)フェニル〕−2−〔4−(3−アミノフェ
ノキシ)−3,5−ジメチルフェニル〕プロパン、2,
2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)−3,5−ジ
メチルフェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(3−
アミノフェノキシ)フェニル〕ブタン、2,2−ビス
〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,
1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、
【0014】式中のXが直接結合のものとして、4,
4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,
4’−ビス(3−アミノフェノキシ)−3−メチルビフ
ェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)−
3,3’−ジメチルビフェニル、4,4’−ビス(3−
アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルビフェニル、
4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)−3,3’,
5,5’−テトラメチルビフェニル、4,4’−ビス
(3−アミノフェノキシ)−3,3’−ジクロロビフェ
ニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)−3,
5−ジクロロビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノ
フェノキシ)−3,3’,5,5’−テトラクロロビフ
ェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)−
3,3’−ジブロモビフェニル、4,4’−ビス(3−
アミノフェノキシ)−3,5−ジブロモビフェニル、
4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)−3,3’,
5,5’−テトラブロモビフェニル、
【0015】式中のXが−CO−基のものとして、ビス
〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビ
ス〔4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}
フェニル〕ケトン、式中のXが−S−基のものとして、
ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフ
ィド、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)−3−メト
キシフェニル〕スルフィド、〔4−(3−アミノフェノ
キシ)フェニル〕〔4−(3−アミノフェノキシ)3,
5−ジメトキシフェニル〕スルフィド、ビス〔4−(3
−アミノフェノキシ)−3,5−ジメトキシフェニル〕
スルフィド、式中のXが−SO2 −基のものとして、ビ
ス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホ
ン、ビス〔4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノ
キシ}フェニル〕スルホン、式中のXが−O−基のもの
として、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニ
ル〕エーテル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フ
ェニル〕エーテル、
【0016】式中のXがその他のものとして、1,4−
ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェノキシ〕ベン
ゼン、1,4−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フ
ェノキシ〕ベンゼン、1,4−ビス〔4−(3−アミノ
フェノキシ)ベンゾイル〕ベンゼン、1,3−ビス〔4
−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ベンゼン、ビ
ス〔4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}
フェニル〕スルホンなどが挙げられ、これらは単独ある
いは2種以上混合して用いられる。
【0017】また、上記熱可塑性ポリイミド樹脂の溶融
流動性を損なわない範囲で他のジアミンを混合して用い
ることもできる。混合して用いることのできるジアミン
としてはm−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジ
ルアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、
3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジ
アミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェ
ニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフ
ィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,
3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミ
ノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニル
スルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,
4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベ
ンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)
ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベン
ゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼ
ン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、
2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニ
ル〕プロパン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキ
シ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキ
シ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−アミノフェノキシ)
フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(4−アミノフェノ
キシ)フェニル〕スルホン等が挙げられ、これらのジア
ミンは通常30重量%以下、好ましくは5重量%以下混
合して用いられる。
【0018】また、式(1)で表されるポリイミドを製
造するのに用いられる一方の原料であるテトラカルボン
酸二無水物の具体例としては、式(3)において、式中
のR1 が脂肪族基であるエチレンテトラカルボン酸二無
水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、式中のR1
環式脂肪族基であるものとしてはシクロペンタンテトラ
カルボン12無水物、式中のR1 が単環式脂肪族基であ
るものとしてはピロメリット酸二無水物、1,2,3,
4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、式中のR1
次式〔化12〕で表され、
【0019】
【化12】 同式中のX1 が−CO−基である3,3’,4,4’−
ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,
3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、
同式中のX1 が直接結合である3,3’,4,4’−ビ
フェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,
3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、同式中の
1 が脂肪族基である2,2−ビス(3,4−ジカルボ
キシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,
3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1
−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水
物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無
水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二
無水物、同式中のX1 が−O−基であるビス(3,4−
ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、同式中のX
1 が−SO2 −基であるビス(3,4−ジカルボキシフ
ェニル)スルホン二無水物、また、式(3)中のR1
縮合多環式芳香族基である2,3,6,7−ナフタレン
テトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレ
ンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタ
レンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペ
リレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ア
ントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8
−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、同式中の
1 がその他のものとして、ビス(3,4ジカルボキ
シ)(p−フェニレンジオキシ)二無水物などであり、
これらテトラカルボン酸二無水物は単独または2種以上
混合して用いられる。
【0020】また、本発明に用いられる式(1)で表さ
れるポリイミド樹脂は、無水フタル酸、 2,3−ベンゾフ
ェノンジカルボン酸無水物、 3,4−ベンゾフェノンジカ
ルボン酸無水物、 2,3−ジカルボキシフェニルフェニル
エーテル無水物、 3,4−ジカルボキシフェニルフェニル
エーテル無水物、 2,3−ビフェニルジカルボン酸無水
物、 3,4−ビフェニルジカルボン酸無水物、 2,3−ジカ
ルボキシフェニルフェニルスルホン無水物、 3,4−ジカ
ルボキシフェニルフェニルスルホン無水物、 2,3−ジカ
ルボキシフェニルフェニルスルフィド無水物、 3,4−ジ
カルボキシフェニルフェニルスルフィド無水物、 1,2−
ナフタレンジカルボン酸無水物、 2,3−ナフタレンジカ
ルボン酸無水物、 1,8−ナフタレンジカルボン酸無水
物、 1,2−アントラセンジカルボン酸無水物、 2,3−ア
ントラセンジカルボン酸無水物、1,9−アントラセンジ
カルボン酸無水物等のジカルボン酸無水物で封止された
ものも使用可能である。
【0021】式(1)で表わされる繰り返し単位を有す
るポリイミド樹脂の対数粘度は通常0.35〜0.65
dl/g、好ましくは0.40〜0.60dl/gの範
囲のものである。この対数粘度が上記の範囲を越えて
0.35以下であると機械物性、耐久性が不十分とな
り、また0.60以上であると成形性悪化し射出成形困
難となる。この対数粘度はパラクロロフェノール/フェ
ノール(90/10重量比)の混合溶媒中、濃度0.5
g/100mlの溶媒で加熱溶解した後、35℃に冷却
して測定される。成形加工性が十分ではない。
【0022】本発明の摺動材用含油ポリイミド系樹脂組
成物は、上記のポリイミドにフェノール樹脂硬化物、固
体潤滑剤および潤滑油を含有してなるものである。フェ
ノール樹脂硬化物は、フェノール類にホルマリン発生化
合物を用いて製造されるノボラック型またはレゾール型
フェノール樹脂に必要に応じて公知の充填材を含有さ
せ、そのままもしくはヘキサミン等の架橋材を加えて加
熱し、硬化物とした後粉砕したものである。その製造方
法は、例えば、特開昭57−17701公報、同58−
17114号公報その他に数多く開示されており、市販
品としては、鐘紡社製のベルパール(登録商標)などを
挙げることができる。
【0023】本発明の組成物に含有されるフェノール樹
脂硬化物は、熱不融性の粒状もしくは粉末状樹脂であ
り、平均粒径が50ミクロン以下で、しかも80重量%
以上が150ミクロン以下の粒径のものが好ましい。フ
ェノール樹脂硬化物の粒径があまり大き過ぎると、成形
した際に粉末の各粒子間相互の密着が不十分となって成
形品のバラツキが生じ、成形体の摩耗性や曲げ強度等の
機械的強度が低下するので好ましくない。また、フェノ
ール樹脂硬化物は、十分に硬化していることが必要であ
り、例えば、硬化度を表す尺度である”メタノールに対
する溶解度”、すなわち、試料約10gを精秤し(その
秤量重量をW0 とする)、100%のメタノール約50
0mlの中で30分間還流下に加熱処理した後、ガラス
フィルターでろ過し、さらにフィルター残試料をフィル
ター上で約100mlのメタノールで洗浄し、ついでフ
ィルター残試料を70℃の温度で2時間乾燥し(その精
秤重量をW1 とする)、次式で求めたメタノール溶解度
が、 メタノール溶解度(重量%)=〔(W0 −W1 )/
0 〕×100 20重量%以下、好ましくは15重量%以下である。メ
タノール溶解度が20重量%を越えると、成型時に発泡
が起こり、成型体に空隙及び微小クラック等を生じるこ
とがあり、好ましくない。これらのフェノール樹脂硬化
物の配合量は、ポリイミド樹脂20〜70重量%と、フ
ェノール樹脂硬化物70〜20重量%と、固体潤滑剤1
0〜60重量%からなる樹脂組成物の範囲内である。フ
ェノール樹脂硬化物の配合量が20重量部未満では、耐
摩耗性効果が得られず、70重量部を越えると、組成物
の溶融粘度が高くなり、溶融成形が出来ないばかりか、
摩擦係数を低下させることができず、摺動材料として好
ましくない。
【0024】また、本発明の組成物に含有される固体潤
滑剤は、フッ素樹脂、黒鉛、二硫化モリブデン、二硫化
タングステン、フッ化黒鉛、窒化ホウ素、窒化ケイ素及
び一酸化鉛よりなる群より選ばれた少なくとも1種のも
のである。中でも、フッ素樹脂は、次の(a)〜(f)
からなる群より選ばれたものである。 (a)分子内に、式、−(CF2 CF2)−で表わされる
繰り返し構造単位を有する四フッ化エチレン樹脂 (b)分子内に、式、−(CF2 CF2)−および式、−
〔CF(CF3)CF2 〕−で表わされる繰り返し構造単
位を有する四フッ化エチレン樹脂−六フッ化プロピレン
共重合樹脂 (c)分子内に、式、−(CF2 CF2)− および式、
−〔CF(OCm 2m++1)CF2 〕(式中、mは正の整
数)で表される繰り返し構造単位を有する四フッ化エチ
レン−パーフロロアルキルビニルエーテル共重合樹脂 (d)分子内に、式、−(CF2 CF2)− および式、
−(CH2 CH2)−で表される繰り返し構造単位を有す
る四フッ化エチレン−エチレン共重合樹脂 (e)分子内に、式、−(CH2 CH2)− および式、
−(CFClCF2)−で表される繰り返し構造単位を有
する三フッ化塩化エチレン−エチレン共重合樹脂 (f)分子内に、式、−(CF2 CH2)−で表わされる
繰り返し構造単位を有するフッ化ビニリデン樹脂であ
る。この中のどのフッ素樹脂を用いてもよいが、好まし
くは、(a)のフッ素樹脂即ち四フッ化エチレン樹脂を
用いるのが、耐熱性を考えると良い。この固体潤滑材の
添加量は、ポリイミド樹脂20〜70重量%と、フェノ
ール樹脂硬化物70〜20重量%と、固体潤滑剤10〜
60重量%からなる樹脂組成物の範囲内である。固体潤
滑材の添加量が10重量%未満であると、摺動特性の改
良効果がなく、一方、60重量部を越えると、成形時、
射出成形機のスクリューと原料すなわち樹脂組成物がう
まく成形機の中に送りこめず、成形出来ない。仮に、成
形できたとしても、ポリイミド樹脂本来の機械的強度を
低減させ好ましくなくい。
【0025】更に、本発明の樹脂組成物に含有されるオ
イルは、高速時における摺動特性を改善するものであ
る。本発明の組成物を調製するための諸原材料を混合す
る際及び成形するときの温度は250〜400℃好まし
くは300〜400℃である。よって、本発明の樹脂組
成物に含有されるオイルは、耐熱性の優れたオイルであ
る。熱重量減量測定において、300℃における重量減
量が10%以下(室温よりの昇温測定)、好ましくは8
%以下であるオイルである。例えば、シリコンオイル、
パーフルオロポリエーテル油、フェニルエーテル油等で
ある。この潤滑油の添加量は、ポリイミド樹脂20〜7
0重量%と、フェノール樹脂硬化物70〜20重量%
と、固体潤滑剤10〜60重量%からなる樹脂組成物1
00重量部に対して、0.1〜11重量部である。潤滑
油の添加量が0.1重量部未満であると、高速時の摩擦
係数が大きくなり、さらに、成形時、金型からの離型性
が大きく改良されない。11重量部を越えると、成形
時、射出成形機のスクリューと原料すなわち樹脂組成物
がすべってしまい、樹脂組成物がうまく成形機の中に送
り込めず、成形できない。
【0026】尚、本発明の摺動材用ポリイミド系樹脂組
成物には、必要に応じ炭素繊維、ガラス繊維、光学繊
維、セラミック繊維、チタン酸カリウム繊維、金属繊
維、ボロン繊維、炭化ケイ素繊維、アスベスト、ロック
ウール等の繊維状強化材、炭酸カルシウム、マイカ、ガ
ラスビーズ、グラファイト、二硫化モリブデン、クレ
ー、シリカ、アルミナ、タルク、ケイソウ土、水和アル
ミナ、シラスバルーン等の充填剤、安定剤、着色剤、結
晶核剤の他、他の熱可塑性樹脂(例えば、ポリフェニレ
ンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサ
ルホン、ポリエーテルケトン、液晶ポリマー等)、熱硬
化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポ
リアミドイミド樹脂等)を併用してもよい。
【0027】本発明の摺動材用ポリイミド系樹脂組成物
を調製するための諸原材料を混合する手段は、特に限定
されるものではなく、原料を個別に溶融混合機に供給し
ても、また予めヘンシェルミキサー、ボールミキサー、
リボンブレンダー等の汎用の混合機を用いて2種以上の
ものを同時に混合してもよい。すなわち、あらかじめ潤
滑油を含浸させてあるフェノール樹脂硬化物を用いても
よい。通常、混合温度は、250〜420℃、好ましく
は300〜400℃である。又、混合の際、樹脂組成物
の原材料であるオイルの分解が激しいときは、ベント口
より、発生する分解ガスを除去すればよい。本発明の摺
動材用ポリイミド系樹脂組成物の成形方法も、圧縮成
形、焼結成形等を適用し得ることは勿論であるが、均一
溶融ブレンド体を形成し生産性の高い射出成形もしくは
押出成形を行うことができる。また、本樹脂組成物は乾
燥空気下、オイル中を問わず、どちらの雰囲気下におい
ても、高速時の摺動特性が優れたものである。
【0028】以下、本発明を実施例および比較例により
詳細に説明する。なお、実施例および比較例で用いたフ
ェノール樹脂硬化物、固体潤滑剤及び潤滑油は次の通り
である。 (1)フェノール樹脂硬化物 鐘紡社製 ベルパールC−2000 これは平均粒径が22ミクロン、メタノール溶解度0.
1重量%以下である。 (2)固体潤滑剤 (a)ICI旭フロロ社製 PTFE L−181 (b)日本黒鉛社製 黒鉛 ACP (c)品川化工社製 一酸化鉛 リサージS号 (3)潤滑油 (a)東芝シリコーン社製 シリコーンオイル YF−
33−100 シリコーンオイル 458−100 (b)松村石油社製 フェニルエーテル油 モレスコハ
イルーブLB-100
【0029】
【実施例】
実施例1〜9,比較例1〜7 4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニルと
ピロメリット酸二無水物を原料として得られた対数粘度
0.46dl/gのポリイミドと各種原材料を第1表に
示すような割合で乾式混合した後、二軸押出機を用いて
350〜400℃で押出して造粒し、得られたペレット
を射出成形機(シリンダー温度360〜400℃、射出
圧力900kg/cm2 、金型温度180℃)に供給
し、後述する各試験法に定められた試験片を成形し、引
張強度、摩擦係数、摩耗係数を測定した。また、離型性
を下記の方法により測定した。各試験方法は下記に示し
た。尚、実施例1,3,5,6及び比較例3では、シリ
コーンオイルとして、YF−33−100を、実施例7
〜11及び比較例5では458−100を用いた。 1)引張強度:ASTM D−638に準じて測定し
た。 2)摩擦係数 スラスト型摩擦摩耗試験機を用い、面圧3kg/c
2 ,滑り速度毎分12m及び110m、相手材sus
45c、運転時間2時間時の摩擦係数を求める。 3)摩耗係数 円筒式摩耗試験機を用い、面圧kg/cm2 ,滑り速度
毎分120m、相手材sus45c、運転時間72時間
における摩耗試験結果から摩耗係数を求める。 4)上記の二軸押出機により得たペレットを用いて、外
寸50mm×50mmの升状容器を射出成形機により成
形した(シリンダー温度350〜400℃)。その際、
成形品を得るのに必要な最低射出圧力を求めるととも
に、成形した容器の金型からの離型抵抗をエジェクター
ピンにストレインゲージを設置して検出した。
【0030】第1表と第2表を比較すると、本樹脂組成
物は、高速下での摺動特性(動摩擦係数、摩耗係数)に
優れ、かつ金型からの離型性も改良されていることがわ
かる。高速下の摺動部材としては、動摩擦係数μはμ≦
0.20、摩耗係数KはK≦10(10-8cm3 min/kgmHr)
であることが好ましく、本樹脂組成物の高速下(V=1
10〜120m/min)のときの動摩擦係数μはμ≦
0.20、摩耗係数KはK≦10(10-8cm3min/kgmHr)
の条件を満たしていることは表1より明らかである。さ
らに、機械強度、離型抵抗の点も合わせると第2表(表
3)の比較例1〜7は実施例に比べていずれかが劣って
いることは明白である。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
【発明の効果】 本発明の摺動材用含油ポリイミド系樹
脂組成物は、ポリイミド樹脂の特性を大きく損なうこと
なく、高速時の摺動特性に優れたものであり、この本発
明の摺動材用含油ポリイミド系樹脂組成物のシート状、
フィルム状、棒状、繊維状、棒状その他の成形品は、電
気・電子機器、航空・宇宙機器、自動車機器、事務用機
器、一般産業機器その他各種機器類の高速時の摺動部品
(乾燥空気下及びオイル中)に広く利用することができ
るので、この発明は極めて大きいといえる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C08L 61/06 LMQ 8215−4J LMU 8215−4J C10M 107/00 7419−4H (72)発明者 大地 広泰 神奈川県横浜市栄区笠間町1190番地 三井 東圧化学株式会社内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 式(1)〔化1〕で表わされる繰り返し
    単位を有するポリイミド樹脂20〜70重量%と、フェ
    ノール樹脂硬化物70〜20重量%と、固体潤滑剤10
    〜60重量%を含む樹脂組成物100重量部に対して、
    0.1〜11重量部の潤滑油を含むことを特徴とする摺
    動材用含油ポリイミド系樹脂組成物。 【化1】 (式中、Xは直結、イオウ、炭素数1〜10の二価の炭
    化水素基、六フッ素化されたイソプロピリデン基、カル
    ボニル基、チオ基、スルホニル基、エーテル基から成る
    群より選ばれた基を表わし、Y1 、Y2 、Y3 およびY
    4 はそれぞれ水素、低級アルキル基、低級アルコキシ
    基、塩素または臭素から成る群より選ばれた基を表わ
    し、またR1 は炭素数4〜9の脂肪族基、炭素数4〜1
    0の単環式脂肪族基、単環式芳香族基、縮合多環式芳香
    族基、芳香族基が直接又は架橋員より相互に連結された
    非縮合多環式芳香族基から成る群より選ばれた4価の基
    を表わす。)
  2. 【請求項2】 フェノール樹脂硬化物がノボラック型ま
    たはレゾール型フェノール樹脂を硬化した後粉砕し、平
    均粒径50μm以下でしかも80%以上が150μm以
    下の粒径である請求項1記載の摺動材用含油ポリイミド
    系樹脂組成物。
  3. 【請求項3】 フェノール樹脂硬化物が、硬化度を表示
    する尺度として、硬化物のメタノール溶解度が20重量
    %以下のものである請求項1記載の摺動材用含油ポリイ
    ミド系樹脂組成物。
  4. 【請求項4】 固体潤滑剤がフッ素樹脂、黒鉛、二硫化
    モリブデン、二硫化タングステン、フッ化黒鉛、窒化ホ
    ウ素、窒化ケイ素及び一酸化鉛よりなる群より選ばれた
    少なくとも1種のものである請求項1記載の摺動材用含
    油ポリイミド系樹脂組成物。
  5. 【請求項5】 フッ素樹脂が、次の(a)〜(f)から
    なる群より選ばれた少なくとも1種である請求項4記載
    の摺動材用ポリイミド系樹脂組成物。 (a)分子内に、式、−(CF2 CF2 )−で表わされ
    る繰り返し構造単位を有する四フッ化エチレン樹脂 (b)分子内に、 式、−(CF2 CF2 )− および 式、−〔CF(CF3 ) CF2 〕− で表わされる繰り返し構造単位を有する四フッ化エチレ
    ン樹脂−六フッ化プロピレン共重合樹脂 (c)分子内に、 式、−(CF2 CF2 )− および 式、−〔CF(OCm 2m++1 )CF2 〕(式中、mは
    正の整数) で表される繰り返し構造単位を有する四フッ化エチレン
    −パーフロロアルキルビニルエーテル共重合樹脂 (d)分子内に、 式、−(CF2 CF2 )− および 式、−(CH2 CH2 )− で表される繰り返し構造単位を有する四フッ化エチレン
    −エチレン共重合樹脂 (e)分子内に、 式、−(CH2 CH2 )− および 式、−(CFClCF2 ) − で表される繰り返し構造単位を有する三フッ化塩化エチ
    レン−エチレン共重合樹脂 (f)分子内に、式、−(CF2 CH2 )−で表わされ
    る繰り返し構造単位を有するフッ化ビニリデン樹脂
  6. 【請求項6】 潤滑油が、熱重量減量測定において、3
    00℃における重量減量が10重量%以下である請求項
    1記載の摺動材用含油ポリイミド系樹脂組成物。
  7. 【請求項7】 式(1)で表される繰り返し構造単位を
    有するポリイミド樹脂の式中のR1 が、次の(a)〜
    (e)からなる群より選ばれた少なくとも1種である請
    求項1記載の摺動材用含油ポリイミド系樹脂組成物。 (a) 炭素数4〜9の脂肪族基 (b) 炭素数4〜10の環式脂肪族基 (c) 次式〔化2〕で表される単環式芳香族基 【化2】 (d) 次式〔化3〕で表される縮合多環式芳香族基 【化3】 (e)次式〔化4〕で表わされる芳香族基が直接又は架
    橋員より相互に連結された非縮合多環式芳香族基 【化4】
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007131802A (ja) * 2005-11-14 2007-05-31 Asahi Kasei Construction Materials Co Ltd フェノール樹脂発泡体の製造方法
JP2010126574A (ja) * 2008-11-26 2010-06-10 Mitsubishi Engineering Plastics Corp ポリカーボネート樹脂組成物及びその成形体
US9399789B2 (en) 2010-07-16 2016-07-26 Fujikura Ltd. Base body and method of manufacturing base body
CN112251022A (zh) * 2020-08-21 2021-01-22 湖南国柔科技有限公司 一种高次数反复折弯cpi膜及其制备方法
US11702608B2 (en) * 2018-08-06 2023-07-18 Eneos Corporation Lubrication method

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