JP2919636B2 - 摺動材用ポリイミド系樹脂組成物 - Google Patents

摺動材用ポリイミド系樹脂組成物

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JP2919636B2 JP11615391A JP11615391A JP2919636B2 JP 2919636 B2 JP2919636 B2 JP 2919636B2 JP 11615391 A JP11615391 A JP 11615391A JP 11615391 A JP11615391 A JP 11615391A JP 2919636 B2 JP2919636 B2 JP 2919636B2
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  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
  • Polymers With Sulfur, Phosphorus Or Metals In The Main Chain (AREA)
  • Macromolecular Compounds Obtained By Forming Nitrogen-Containing Linkages In General (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】 本発明は摺動材用ポリイミド系
樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来開発されたポリイミドには優れた特
性を示すものが多いが、優れた耐熱性を有するけれども
加工性にとぼしいとか、また加工性向上を目的として開
発された樹脂は耐熱性、耐溶剤性に劣るなど性能に一長
一短があり、さらに結晶化に伴う熱処理過程での寸法変
化が大きいなどの欠点を有している。
【0003】これらの欠点を解決すべく、本出願人は特
開昭62−236858および特開昭62−25365
5等に、本発明の構成要素のひとつである式(1)〔化
12〕で表わされる繰り返し単位を有するポリイミド樹
脂を開発した。
【0004】
【化12】 そして、本発明者らは、上記ポリイミド樹脂を用いた摺
動材用樹脂組成物は優れた摺動特性を有することを見出
した(特開昭62−265350,特開昭 63−00
8455等)。しかし、本摺動材用樹脂組成物は、結晶
化に伴う熱処理過程での寸法変化が大きく、寸法安定性
に欠けるなどの欠点を有しており、それゆえに、摺動特
性を向上させるための結晶化に伴う熱処理を行うのが困
難であった。
【0005】さらに、本発明者らは、上記ポリイミド樹
脂の欠点を改良するには、上記ポリイミド樹脂にサーモ
トロピック液晶ポリマーを配合することが有効であるこ
とを見出し、特許出願した(特開平4−17537
)。この樹脂組成物は、耐熱性、強靱性、加工性など
に優れているため、従来、金属またはセラミックスの領
域と考えられていた分野への用途開発が進められてい
る。しかし、これらの樹脂組成物も、潤滑性および摺動
特性の点では未だ十分に満足のいくものではない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、優れ
た摺動特性を有し、上記のポリイミド樹脂の熱的性質を
付与したまま成形加工性を改良し、結晶化に伴う熱処理
が可能な摺動材用ポリイミド樹脂組成物を得ることにあ
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは前記の目的
を達成するために鋭意検討した結果、ポリイミド樹脂と
サーモトロピック液晶ポリマーを含有してなる樹脂組成
物に、フッ素樹脂、黒鉛および芳香族ポリアミド樹脂よ
りなる群より選ばれた少なくとも1種を配合することに
より、摺動特性が顕著に向上し、さらに、従来の摺動材
用ポリイミド系樹脂組成物と比べて、結晶化に伴う熱処
理時の寸法安定性が著しく向上し、熱処理が可能である
ことを見出し、本発明を完成した。
【0008】すなわち、本発明は、 (1) 式(1)〔化13〕で表わされる繰り返し単位
を有するポリイミド樹脂50〜99重量%と、サーモト
ロピック液晶ポリマーの1種または2種以上の混合物5
0〜1重量%とを含む樹脂組成物と、この樹脂組成物1
00重量部に対して、1〜150重量部のフッ素樹脂、
黒鉛および芳香族ポリアミド樹脂よりなる群より選ばれ
た少なくとも1種を含有してなり、370〜410℃の
範囲で射出成形することを特徴とする摺動材用ポリイミ
ド系樹脂組成物、
【0009】
【化13】 (式中、Xは直結、イオウ、炭素数1〜10の二価の炭
化水素基、六フッ素化されたイソプロピリデン基、カル
ボニル基、チオ基、スルホニル基、酸素基から成る群よ
り選ばれた基を表わし、Y、Y、Yおよび
はそれぞれ水素、塩素または臭素から成る群より
選ばれた基を表わし、またRは炭素数4〜9の脂肪
族基、炭素数4〜10の単環式脂肪族基、単環式芳香族
基、縮合多環式芳香族基、芳香族基が直接又は架橋員よ
り相互に連結された非縮合多環式芳香族基から成る群よ
り選ばれた4価の基を表わす。) (2) サーモトロピック液晶ポリマーが、式(2)
〔化14〕、式(3)〔化15〕、式(4)〔化16〕
および式(5)〔化17〕の繰り返し単位を有する基本
構造からなる群より選ばれた少なくとも1種のものであ
ることを特徴とする1項記載の摺動材用ポリイミド系樹
脂組成物、
【0010】
【化14】
【0011】
【化15】
【0012】
【化16】
【0013】
【化17】 (3)フッ素樹脂が、次の(a)〜(f)からなる群よ
り選ばれた少なくとも1種である1項記載の摺動材用ポ
リイミド系樹脂組成物、 (a)分子内に、式、−(CF2CF2)−で表わされる
繰り返し構造単位を有する四フッ化エチレン樹脂 (b)分子内に、 式、−(CF2CF2)− および 式、−〔CF(CF3) CF2〕− で表わされる繰り返し構造単位を有する四フッ化エチレ
ン樹脂−六フッ化プロピレン共重合樹脂 (c)分子内に、 式、−(CF2CF2)− および 式、−〔CF(OCm2m++1)CF2〕(式中、mは正
の整数) で表される繰り返し構造単位を有する四フッ化エチレン
−パーフロロアルキルビニルエーテル共重合樹脂 (d)分子内に、 式、−(CF2CF2)− および 式、−(CH2CH2)− で表される繰り返し構造単位を有する四フッ化エチレン
−エチレン共重合樹脂 (e)分子内に、 式、−(CH2CH2)− および 式、−(CFClCF2) − で表される繰り返し構造単位を有する三フッ化塩化エチ
レン−エチレン共重合樹脂 (f)分子内に、式、−(CF2CH2)−で表わされる
繰り返し構造単位を有するフッ化ビニリデン樹脂 (4)芳香族ポリアミド樹脂が、式(6)〔化18〕、
式(7)〔化19〕および式(8)〔化20〕で表され
る群より選ばれた少なくとも1種のものであることを特
徴とする1項記載の摺動材用ポリイミド系樹脂組成物、
【0014】
【化18】
【0015】
【化19】
【0016】
【化20】 (5)式(1)で表わされる繰り返し構造単位を有する
ポリイミド樹脂の式中のR1 が、次の(a)〜(e)か
らなる群より選ばれた少なくとも1種である1項記載の
摺動材用ポリイミド系樹脂組成物、 (a) 炭素数4〜9の脂肪族基 (b) 炭素数4〜10の環式脂肪族基 (c) 次式〔化21〕で表される単環式芳香族基
【0017】
【化21】 (d) 次式〔化22〕で表される縮合多環式芳香族基
【0018】
【化22】 (e)次式〔化23〕で表わされる芳香族基が直接又は
架橋員より相互に連結された非縮合多環式芳香族基
【0019】
【化23】 である。
【0020】本発明の摺動材用ポリイミド系樹脂組成物
における式(1)で表わされる繰り返し単位を基本骨格
として有するポリイミド樹脂の原料として用いるジアミ
ン成分は、式(9)〔化24〕
【0021】
【化24】 (式中、Xは前記に同じ)に示すエーテルジアミンと式
(10)〔化25〕
【0022】
【化25】 (式中、R1 は前記に同じ)に示す1種以上のテトラカ
ルボン酸二無水物とを有機溶媒の存在下または不存在下
において反応させ、得られたポリアミド酸を化学的にま
たは熱的にイミド化して製造することができる。反応温
度は通常250℃以下であり、反応圧力は特に限定され
ず、常圧で充分実施できる。また反応時間は使用するテ
トラカルボン酸二無水物、溶剤の種類、反応温度により
異なり、通常中間生成物であるポリアミド酸の生成が完
了するのに充分な時間反応させる。反応時間は24時
間、場合によっては1時間以内で充分である。
【0023】このような反応により式(1)の繰り返し
単位に対応するポリアミド酸が得られ、ついでこのポリ
アミド酸を100〜400℃に加熱脱水するか、または
通常用いられるイミド化剤を用いて化学イミド化するこ
とにより式(1)の繰り返し構造単位を有するポリイミ
ドが得られる。また、ポリアミド酸の生成と熱イミド化
反応を同時に行ってポリイミドを得ることもできる。
【0024】この方法て使用される式(9)のエーテル
ジアミンとしては、式(9)中のXが脂肪属基であるも
のとして、〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕
メタン、1,1−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)
フェニル〕エタン、1,2−ビス〔4−(3−アミノフ
ェノキシ)フェニル〕エタン、2,2−ビス〔4−(3
−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2−〔4−
(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−2−〔4−(3
−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル〕プロパ
ン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)−3
−メチルフェニル〕プロパン、2−〔4−(3−アミノ
フェノキシ)フェニル〕−2−〔4−(3−アミノフェ
ノキシ)−3,5−ジメチルフェニル〕プロパン、2,
2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)−3,5−ジ
メチルフェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(3−
アミノフェノキシ)フェニル〕ブタン、2,2−ビス
〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,
1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、式中のXが
直接結合のものとして、4,4’−ビス(3−アミノフ
ェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフ
ェノキシ)−3−メチルビフェニル、4,4’−ビス
(3−アミノフェノキシ)−3,3’−ジメチルビフェ
ニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)−3,
5−ジメチルビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノ
フェノキシ)−3,3’,5,5’−テトラメチルビフ
ェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)−
3,3’−ジクロロビフェニル、4,4’−ビス(3−
アミノフェノキシ)−3,5−ジクロロビフェニル、
4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)−3,3’,
5,5’−テトラクロロビフェニル、4,4’−ビス
(3−アミノフェノキシ)−3,3’−ジブロモビフェ
ニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)−3,
5−ジブロモビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノ
フェノキシ)−3,3’,5,5’−テトラブロモビフ
ェニル、式中のXが−CO−基のものとして、ビス〔4
−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス
〔4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フ
ェニル〕ケトン、式中のXが−S−基のものとして、ビ
ス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィ
ド、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)−3−メトキ
シフェニル〕スルフィド、〔4−(3−アミノフェノキ
シ)フェニル〕〔4−(3−アミノフェノキシ)3,5
−ジメトキシフェニル〕スルフィド、ビス〔4−(3−
アミノフェノキシ)−3,5−ジメトキシフェニル〕ス
ルフィド、式中のXが−SO2 −基のものとして、ビス
〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、
ビス〔4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキ
シ}フェニル〕スルホン、式中のXが−O−基のものと
して、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕
エーテル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニ
ル〕エーテル、式中のXがその他のものとして、1,4
−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェノキシ〕ベ
ンゼン、1,4−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)
フェノキシ〕ベンゼン、1,4−ビス〔4−(3−アミ
ノフェノキシ)ベンゾイル〕ベンゼン、1,3−ビス
〔4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ベンゼ
ン、ビス〔4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノ
キシ}フェニル〕スルホンなどが挙げられ、これらは単
独あるいは2種以上混合して用いられる。
【0025】また、上記熱可塑性ポリイミド樹脂の溶融
流動性を損なわない範囲で他のジアミンを混合して用い
ることもできる。混合して用いることのできるジアミン
としてはm−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジ
ルアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、
3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジ
アミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェ
ニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフ
ィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,
3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミ
ノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニル
スルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,
4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベ
ンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)
ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベン
ゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼ
ン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、
2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニ
ル〕プロパン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキ
シ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキ
シ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−アミノフェノキシ)
フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(4−アミノフェノ
キシ)フェニル〕スルホン等が挙げられ、これらのジア
ミンは通常30重量%以下、好ましくは5重量%以下混
合して用いられる。
【0026】また、式(1)で表されるポリイミドを製
造するのに用いられる一方の原料であるテトラカルボン
酸二無水物の具体例としては、式(10)において、式
中のR1 が脂肪族基であるエチレンテトラカルボン酸二
無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、式中のR1
が環式脂肪族基であるものとしてはシクロペンタンテト
ラカルボン酸二無水物、式中のR1 が単環式脂肪族基で
あるものとしてはピロメリット酸二無水物、1,2,
3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、式中のR
1 が次式〔化26〕で表され、
【0027】
【化26】 同式中のX1 が−CO−基である3,3’,4,4’−
ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,
3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、
同式中のX1 が直接結合である3,3’,4,4’−ビ
フェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,
3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、同式中の
1 が脂肪族基である2,2−ビス(3,4−ジカルボ
キシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,
3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1
−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水
物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無
水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二
無水物、同式中のX1 が−O−基であるビス(3,4−
ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、同式中のX
1 が−SO2 −基であるビス(3,4−ジカルボキシフ
ェニル)スルホン二無水物、また、式(10)中のR1
が縮合多環式芳香族基である2,3,6,7−ナフタレ
ンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタ
レンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフ
タレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−
ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−
アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,
8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、同式中
のR1 がその他のものとして、ビス(3,4ジカルボキ
シ)(p−フェニレンジオキシ)二無水物などであり、
これらテトラカルボン酸二無水物は単独または2種以上
混合して用いられる。また、本発明に用いられる式
(1)で表されるポリイミド樹脂は、無水フタル酸、
2,3−ベンゾフェノンジカルボン酸無水物、 3,4−ベン
ゾフェノンジカルボン酸無水物、 2,3−ジカルボキシフ
ェニルフェニルエーテル無水物、 3,4−ジカルボキシフ
ェニルフェニルエーテル無水物、 2,3−ビフェニルジカ
ルボン酸無水物、 3,4−ビフェニルジカルボン酸無水
物、 2,3−ジカルボキシフェニルフェニルスルホン無水
物、 3,4−ジカルボキシフェニルフェニルスルホン無水
物、 2,3−ジカルボキシフェニルフェニルスルフィド無
水物、 3,4−ジカルボキシフェニルフェニルスルフィド
無水物、 1,2−ナフタレンジカルボン酸無水物、 2,3−
ナフタレンジカルボン酸無水物、 1,8−ナフタレンジカ
ルボン酸無水物、 1,2−アントラセンジカルボン酸無水
物、 2,3−アントラセンジカルボン酸無水物、1,9 −ア
ントラセンジカルボン酸無水物等のジカルボン酸無水物
で封止されたものも使用可能である。
【0028】式(1)で表わされる繰り返し単位を有す
るポリイミド樹脂の対数粘度は通常0.35〜0.65
dl/g、好ましくは0.40〜0.60dl/gの範
囲のものである。この対数粘度が上記の範囲を越えて
0.35以下であると機械物性、耐久性が不十分とな
り、また0.60以上であると成形性悪化し射出成形困
難となる。この対数粘度はパラクロロフェノール/フェ
ノール(90/10重量比)の混合溶媒中、濃度0.5
g/100mlの溶媒で加熱溶解した後、35℃に冷却
して測定される。
【0029】また、本発明で用いられるサーモトロピッ
ク液晶ポリマーは、前記の式(2)、式(3)、式
(4)および式(5)から選ばれた少なくとも1種の基
本構造からなる熱可塑性樹脂である。
【0030】これらサーモトロピック液晶ポリマーで市
販されている代表的なものには、日本石油化学(株)
「ザイダー」(商標)、住友化学工業(株)「エコノー
ル」(商標)、ポリプラスチック(株)「ベクトラ」
(商標)として市販されている。
【0031】本発明の摺動材用ポリイミド系樹脂組成物
において、ポリイミドとサーモトロピック液晶ポリマー
とを含む樹脂組成物の両者の配合割合は、ポリイミド樹
脂50〜99重量%とサーモトロピック液晶ポリマー5
0〜1重量%である。サーモトロピック液晶ポリマーの
配合割合が、50重量%を越えると得られる樹脂組成物
のウエルド強度が低下し、また、異方性が目立つように
なる。また、1重量%未満では得られる樹脂組成物の成
形加工性が十分ではなく、結晶化に伴う熱処理過程での
成形品の寸法安定性も改良されない。
【0032】本発明の摺動材用ポリイミド系樹脂組成物
は、上記の樹脂組成物に必須の成分としてフッ素樹脂、
黒鉛および芳香族ポリアミド樹脂よりなる群より選ばれ
た少なくとも1種を含有してなるものである。
【0033】上記のフッ素樹脂とは、分子中にフッ素原
子(F)を含有する合成高分子のことであり、一般に他
の合成樹脂と比較して耐熱性、耐薬品性、電気特性に優
れ、また特有の低摩擦特性、非粘着性をそなえている。
【0034】その具体例としては、 (a)分子内に、式、−(CF2CF2)−で表わされる
繰り返し構造単位を有する四フッ化エチレン樹脂、 (b)分子内に、 式、−(CF2CF2)− および 式、−〔CF(CF3) CF2〕− で表わされる繰り返し構造単位を有する四フッ化エチレ
ン樹脂−六フッ化プロピレン共重合樹脂、 (c)分子内に、 式、−(CF2CF2)− および 式、−〔CF(OCm2m++1)CF2〕(式中、mは正
の整数) で表される繰り返し構造単位を有する四フッ化エチレン
−パーフロロアルキルビニルエーテル共重合樹脂、 (d)分子内に、 式、−(CF2CF2)− および 式、−(CH2CH2)− で表される繰り返し構造単位を有する四フッ化エチレン
−エチレン共重合樹脂、 (e)分子内に、 式、−(CH2CH2)− および 式、−(CFClCF2) − で表される繰り返し構造単位を有する三フッ化塩化エチ
レン−エチレン共重合樹脂、 (f)分子内に、式、−(CF2CH2)−で表わされる
繰り返し構造単位を有するフッ化ビニリデン樹脂、等が
あげられる。
【0035】上記の中でも 式(a)の四フッ化エチレ
ン樹脂(以下、PTFEという)はこれらの性質が抜群
であり、本発明では最も好ましく用いられる。本発明の
摺動材用ポリイミド系樹脂組成物に使用するフッ素樹脂
は、通常粉末状であり、約1〜25ミクロン、好ましく
は約5〜10ミクロンの粒度を有している。
【0036】また、本発明で併用される芳香族ポリアミ
ド樹脂は、比較的新しく開発された耐熱性樹脂であり、
多くの特異な特性を活かして各分野への展開が期待され
ている。例えば、代表的な例として前記の式(6),式
(7),式(8)等の繰り返し構造式単位を有するもの
が挙げられ、分子内に、少なくともこれらの1種または
2種以上の繰り返し構造単位を有するものまたはそれら
の混合物が用いることができる。
【0037】これらのポリアミド樹脂は、例えば、デュ
ポン社商品名”Kevlar”、デュポン社商品名”N
omex”、帝人社商品名”Conex”、帝人者商品
名”テクノーラ”等として市販されているものを使用す
ることができる。
【0038】その他オルト,メタ,パラ位の異性構造に
より各種骨格の芳香族ポリアミド樹脂が与えられるが、
中でも式(6)のパラ位−パラ位結合のものは軟化点お
よび融点が非常に高く耐熱性樹脂として本発明では最も
好ましく用いられる。
【0039】本発明におけるフッ素樹脂、黒鉛および芳
香族ポリアミド樹脂の添加量は、ポリイミド樹脂とサー
モトロピック液晶ポリマーからなる前記樹脂組成物10
0重量部に対して、フッ素樹脂、黒鉛および芳香族ポリ
アミド樹脂よりなる群より選ばれた少なくとも1種を含
有してなるものの添加量1〜150重量%の範囲であ
る。
【0040】ポリイミド樹脂とサーモトロピック液晶ポ
リマーからなる前記樹脂組成物100重量部に対して、
フッ素樹脂、黒鉛および芳香族ポリアミド樹脂よりなる
群より選ばれた少なくとも1種を含有してなるものの添
加量が1%未満では、耐摩擦性改良効果が小さく、また
添加量が150重量%を越えると、得られる樹脂組成物
の機械的特性,成形加工性が悪くなり、または、結晶化
を伴う熱処理前後の寸法変化が大きくなり、好ましくな
い。
【0041】尚、本発明の摺動材用ポリイミド系樹脂組
成物には、必要に応じ炭素繊維、ガラス繊維、光学繊
維、セラミック繊維、チタン酸カリウム繊維、金属繊
維、ボロン繊維、炭化ケイ素繊維、アスベスト、ロック
ウール等の繊維状強化材、炭酸カルシウム、マイカ、ガ
ラスビーズ、グラファイト、二硫化モリブデン、クレ
ー、シリカ、アルミナ、タルク、ケイソウ土、水和アル
ミナ、シラスバルーン等の充填剤、滑剤、離型剤、安定
剤、着色剤、結晶核剤の他、他の熱可塑性樹脂(例え
ば、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミ
ド、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルケトン等)、
熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹
脂、ポリアミドイミド樹脂等)を併用してもよい。
【0042】本発明の摺動材用ポリイミド系樹脂組成物
を調製するための諸原材料を混合する手段は、特に限定
されるものではなく、原料を個別に溶融混合機に供給し
ても、また予めヘンシェルミキサー、ボールミキサー、
リボンブレンダー等の汎用の混合機を用いて2種以上の
ものを同時に混合してもよい。通常、混合温度は、25
0〜420℃、好ましくは300〜400℃である。
【0043】本発明の摺動材用ポリイミド系樹脂組成物
を成形方法も、圧縮成形、焼結成形等を適用し得ること
は勿論であるが、均一溶融ブレンド体を形成し生産性の
高い射出成形もしくは押出成形を行うことができる。
【0044】上記の本発明の樹脂組成物は、耐熱性、耐
薬品性、機械的強度に優れているため、歯車、カム、プ
ッシング、プーリー、スリーブ、軸受け等の機械部品
や、コネクター、ボビン、ICソケット等の電気・電子
部品、また、インペラ、マニホールド、バルブガイド、
バルムステム、ピストンスカート、オイルパン、フロン
トカバー、ロッカーカバー等の自動車部品に使用でき
る。
【0045】
【実施例】以下、本発明を実施例および比較例により詳
細に説明する。なお、実施例および比較例で用いたサー
モトロピック液晶ポリマー、フッ素樹脂、黒鉛および芳
香族ポリアミド樹脂は次の通りである。 (1)サーモトロピック液晶ポリマー: 日本石油化学社製 Xydar SRT−500 住友化学工業社製 エコノール E−6000 ポリプラスチック社製 ベクトラ A−950 (2)フッ素樹脂: ダンキン社製 PTFE L−5 (3)黒鉛:日本黒鉛社製 ACP (4)芳香族ポリアミド樹脂: デュポン社製 芳香族ポリアミド樹脂 KEVLAR
49 実施例1〜10 4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニルと
ピロメリット酸二無水物を原料として得られた対数粘度
0.46dl/gのポリイミドと各種原材料を第1表に
示すような割合で乾式混合した後、二軸押出機を用いて
370〜400℃で押出して造粒し、得られたペレット
を射出成形機(シリンダー温度370〜410℃、射出
圧力900kg/cm2 、金型温度180℃)に供給
し、後述する各試験法に定められた試験片を成形し、摩
擦係数、曲げ強度、結晶化に伴う熱処理による寸法変化
率、限界PV値を測定した。結果を第1表に示す。な
お、各試験方法は次の通りである。
【0046】1)摩擦係数:スラスト型摩擦摩耗試験機
を用い、摺動荷重10kg/cm2 、滑り速度毎分7
m、相手材ステンレススチール45C、無潤滑、運転時
間40分時の摩擦係数を求める。 2)限界PV値:スラスト型摩擦摩耗試験機を用い、摺
動荷重40kg/cm2 、相手材SUS304、無潤滑
のときの未処理品の限界PV値を求めた。また、結晶化
に伴う熱処理(3段階の加熱ステップ、すなわち、第1
段階は150℃×20時間、第2段階は260℃×20
時間、第3段階は300×2時間)を施した試験片につ
いても、同様に限界PV値を求めた。 3)曲げ強度:ASTM−D790による。 4)結晶化に伴う熱処理による寸法変化率 上記の条件で射出成形した平板(75mm×100mm
×1.5mmt )に熱処理を施し、熱処理前後における
流動方向(以下MDと言う)とその垂直方向(以下TD
と言う)の寸法変化を測定した。なお、熱処理は、3段
階の加熱ステップ、すなわち、第1段階は150℃×2
0時間、第2段階は260℃×20時間、第3段階は3
00℃×2時間で実施した。
【0047】
【表1】 比較例1〜4 諸原材料の配合割合を第2表に示したようにした以外は
全て実施例1と全く同様の操作を行って試験片を作製
し、それぞれの性質を測定し、得られた結果を第2表に
併記した。
【0048】
【表2】 実施例11〜17 4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニルと
ピロメリット酸二無水物を原料として得られた対数粘度
0.46dl/gのポリイミドと各種原材料を第3表に
示すような割合で乾式混合した後、二軸押出機を用いて
370〜400℃で押出して造粒し、得られたペレット
を射出成形機(シリンダー温度370〜410℃、射出
圧力900kg/cm2 、金型温度180℃)に供給
し、後述する各試験法に定められた試験片を成形し、摩
擦係数、摩耗係数、結晶化に伴う熱処理による寸法変化
率、限界PV値を測定した。結果を第3表に示す。な
お、各試験方法は次の通りである。 1)摩擦係数:実施例1と同条件で測定を行った。 2)限界PV値:実施例1と同条件で測定を行った。 3)結晶化に伴う熱処理による寸法変化率 実施例1と同条件で測定を行った。 4)摩耗係数:円筒式摩耗試験機を用い、摺動荷重5k
g/cm2 、滑り速度毎分90m、相手材ステンレスス
チール45C、無潤滑、運転時間40分時の摩耗係数を
求める。
【0049】
【表3】 比較例5〜9 諸原材料の配合割合を第4表に示したようにした以外は
全て実施例11と全く同様の操作を行って試験片を作製
し、それぞれの性質を測定し、得られた結果を第4表に
併記した。
【0050】
【表4】 (第1表,第3表)と(第2表,第4表)を比較する
と、実施例1〜17はいずれも安定した低摩擦係数、寸
法安定性(熱処理後)を有しており、かつ、熱処理によ
り限界PV値を向上させることができる。一方、比較例
1〜9は、これらのいずれかの特性が著しく劣っている
か、または機械強度の低下が著しい等の欠点を有してい
ることは明白である。
【0051】
【発明の効果】以上のことから明らかなようにこの発明
の摺動材用ポリイミド系樹脂組成物からなる成形品は、
基材樹脂であるポリイミド樹脂およびサーモトロピック
液晶ポリマーからなる樹脂組成物本来の特性を損なうこ
となく、摺動特性も非常に優れたものである。さらに、
従来の摺動材用ポリイミド系樹脂組成物では、変形がひ
どく行えなかった熱処理も、この発明の摺動材用ポリイ
ミド系樹脂組成物では可能になり、その結果、従来の摺
動材用ポリイミド系樹脂組成物と比べても、摺動特性は
向上した。
【0052】したがって、この発明の摺動材用ポリイミ
ド系樹脂組成物のシート状、フィルム状、棒状、繊維状
などの成形品は、電気・電子機器、航空・宇宙機器、自
動車機器、事務用機器、一般産業機器その他各種機器類
の摺動部品に広く利用することができるので、この発明
の意義は極めて大きいといえる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C08L 77/10 C08L 77/10 (72)発明者 堤 敏彦 神奈川県横浜市栄区笠間町1190番地 三 井東圧化学株式会社内 (72)発明者 高橋 敏明 神奈川県横浜市栄区笠間町1190番地 三 井東圧化学株式会社内 (72)発明者 森川 修一 神奈川県横浜市栄区笠間町1190番地 三 井東圧化学株式会社内 (56)参考文献 特開 昭62−185748(JP,A) 特開 昭63−8455(JP,A) 特開 昭62−265350(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C08L 79/08 C08L 27/12 C08L 67/00 - 67/04 C08L 77/10 CA(STN) REGISTRY(STN)

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 式(1)〔化1〕で表わされる繰り返し
    単位を有するポリイミド樹脂50〜99重量%と、サー
    モトロピック液晶ポリマーの1種または2種以上の混合
    物50〜1重量%とを含む樹脂組成物と、この樹脂組成
    物100重量部に対して、1〜150重量部のフッ素樹
    脂、黒鉛および芳香族ポリアミド樹脂よりなる群より選
    ばれた少なくとも1種を含有してなり、370〜410
    ℃の温度範囲で射出成形するを特徴とする摺動材用ポリ
    イミド系樹脂組成物。 【化1】 (式中、Xは直結、イオウ、炭素数1〜10の二価の炭
    化水素基、六フッ素化されたイソプロピリデン基、カル
    ボニル基、チオ基、スルホニル基、酸素基から成る群よ
    り選ばれた基を表わし、Y、Y、Yおよび
    はそれぞれ水素、塩素または臭素から成る群より
    選ばれた基を表わし、またRは炭素数4〜9の脂肪
    族基、炭素数4〜10の単環式脂肪族基、単環式芳香族
    基、縮合多環式芳香族基、芳香族基が直接又は架橋員よ
    り相互に連結された非縮合多環式芳香族基から成る群よ
    り選ばれた4価の基を表わす。)
  2. 【請求項2】 サーモトロピック液晶ポリマーが、式
    (2)〔化2〕、式(3)〔化3〕、式(4)〔化4〕
    および式(5)〔化5〕の繰り返し単位を有する基本構
    造からなる群より選ばれた少なくとも1種のものである
    ことを特徴とする請求項1記載の摺動材用ポリイミド系
    樹脂組成物。 【化2】 【化3】 【化4】 【化5】
  3. 【請求項3】フッ素樹脂が、次の(a)〜(f)からな
    る群より選ばれた少なくとも1種である請求項1記載の
    摺動材用ポリイミド系樹脂組成物。 (a)分子内に、式、−(CF2CF2)−で表わされる
    繰り返し構造単位を有する四フッ化エチレン樹脂 (b)分子内に、 式、−(CF2CF2)− および 式、−〔CF(CF3) CF2〕− で表わされる繰り返し構造単位を有する四フッ化エチレ
    ン樹脂−六フッ化プロピレン共重合樹脂 (c)分子内に、 式、−(CF2CF2)− および 式、−〔CF(OCm2m++1)CF2〕(式中、mは正
    の整数) で表される繰り返し構造単位を有する四フッ化エチレン
    −パーフロロアルキルビニルエーテル共重合樹脂 (d)分子内に、 式、−(CF2CF2)− および 式、−(CH2CH2)− で表される繰り返し構造単位を有する四フッ化エチレン
    −エチレン共重合樹脂 (e)分子内に、 式、−(CH2CH2)− および 式、−(CFClCF2) − で表される繰り返し構造単位を有する三フッ化塩化エチ
    レン−エチレン共重合樹脂 (f)分子内に、式、−(CF2CH2)−で表わされる
    繰り返し構造単位を有するフッ化ビニリデン樹脂
  4. 【請求項4】芳香族ポリアミド樹脂が、式(6)〔化
    6〕、式(7)〔化7〕および式(8)〔化8〕で表さ
    れる群より選ばれた少なくとも1種のものであることを
    特徴とする請求項1記載の摺動材用ポリイミド系樹脂組
    成物。 【化6】 【化7】 【化8】
  5. 【請求項5】式(1)で表わされる繰り返し構造単位を
    有するポリイミド樹脂の式中のR1 が、次の(a)〜
    (e)からなる群より選ばれた少なくとも1種である請
    求項1記載の摺動材用ポリイミド系樹脂組成物。 (a) 炭素数4〜9の脂肪族基 (b) 炭素数4〜10の環式脂肪族基 (c) 次式〔化9〕で表される単環式芳香族基 【化9】 (d) 次式〔化10〕で表される縮合多環式芳香族基 【化10】 (e)次式〔化11〕で表わされる芳香族基が直接又は
    架橋員より相互に連結された非縮合多環式芳香族基 【化11】
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