JPH05179034A - 基材の表面処理方法 - Google Patents

基材の表面処理方法

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JPH05179034A
JPH05179034A JP3337947A JP33794791A JPH05179034A JP H05179034 A JPH05179034 A JP H05179034A JP 3337947 A JP3337947 A JP 3337947A JP 33794791 A JP33794791 A JP 33794791A JP H05179034 A JPH05179034 A JP H05179034A
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JP
Japan
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plasma
thin film
film
inorganic oxide
oxide thin
Prior art date
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Pending
Application number
JP3337947A
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English (en)
Inventor
Tetsuo Ito
徹男 伊藤
Toshiyuki Ninomiya
利幸 二宮
Kenji Yasuda
健二 安田
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JSR Corp
Original Assignee
Japan Synthetic Rubber Co Ltd
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Publication date
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  • Coating Of Shaped Articles Made Of Macromolecular Substances (AREA)
  • Treatments Of Macromolecular Shaped Articles (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 基材の表面処理により、親水性および耐久性
に優れ、且つ多様な特性、機能を有する物品を形成す
る。 【構成】 酸素原子および/または窒素原子を含有する
不飽和化合物によるプラズマ重合処理並びに不飽和化合
物と酸素および/または窒素との混合ガスによるプラズ
マ重合処理の少なくとも1種のプラズマ重合処理を基材
表面に行なったのち、無機酸化物薄膜を形成する工程を
含み、それによりプラズマ重合膜が基材表面の一部また
は全部を被覆しているとともに、無機酸化物薄膜が基材
表面の残りの少なくとも一部を直接被覆しているかおよ
び/または前記プラズマ重合膜を不連続に被覆している
物品を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、プラズマ重合膜が基材
表面の一部または全部を被覆しているとともに、無機酸
化物薄膜が基材表面の残りの少なくとも一部を直接被覆
しているかおよび/または前記プラズマ重合膜を不連続
に被覆している物品を形成することからなる、基材表面
に親水性被膜を形成する表面処理方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】従来、基材の表面改質には物理的、電気
的、化学的、機械的等のすべてにわたる数多くの技術が
採用されており、また基材材料や処理材料についても、
低分子および高分子、また天然および合成を含む有機物
質、無機物質、金属あるいはそれらの混合物等、夥しい
数にのぼっている。そのうち、基材に親水性を付与する
表面改質は、接着性、印刷性、染色性、帯電防止性、防
曇性、揆油性、耐汚染性、さらには生体適合性あるいは
生体親和性を改良する技術として、広く採用されてお
り、そのための技術手段は(イ)親水性材料による被
覆、塗装、積層等による処理、(ロ)酸化剤、火炎等に
よる酸化や化学反応による親水性官能基の導入、(ハ)
親水性モノマーによるグラフト重合、(ニ)反応性雰囲
気下での放電等によるプラズマ処理、(ホ)真空蒸着、
スパッタリング、イオンプレーティング等による親水性
薄膜形成のように多岐にわたっている。しかしながら、
上記(イ)では、基材表面と親水性材料との間の結合が
弱く、両者間の界面で分離し易いばかりか、被覆層の膜
厚を薄くするのに限度があり、基材本来の特性が十分確
保できるとは言えなかった。上記(ロ)はクロム酸等の
酸化剤、空気中の酸素等による酸化処理、あるいは化学
反応によってカルボキシル基等の親水性官能基を導入す
るものであるが、処理可能な基材または基材と反応試剤
との組合せが制約されるのみならず、効果も一時的であ
って、例えば空気中にしばらく放置しただけで処理効果
が損なわれるという欠点があった。上記(ハ)はアクリ
ル酸、アクリルアミド等の親水性モノマーをグラフト重
合するものであるが、グラフト重合層が柔らかいため、
例えば洗浄を繰り返すことにより、親水性被覆膜が次第
に磨耗する等の耐久性に欠点があった。上記(ニ)は酸
素、窒素等の非重合性ガス雰囲気下でプラズマにより処
理して親水性官能基を導入したり、あるいは含硫黄、含
酸素、含窒素等の官能基を有する親水性プラズマ重合膜
を形成するものであるが、これらも、上記(ロ)と同様
空気中で放置するだけで親水性が低下したり、あるいは
基材とプラズマ重合膜との間の付着性が十分でない等の
耐久性に問題があり、またプラズマ重合膜の形成速度が
数Å/秒程度と小さく、生産性が乏しいなどの欠点があ
った。さらに上記(ホ)は無機酸化物、金属、場合によ
り有機物等を蒸発源あるいはターゲットとしてそれらの
薄膜を基材表面に形成するものであり、特に無機酸化物
の場合は薄膜の硬度が大きく耐擦傷性、耐磨耗性等にも
優れているが、基材との接着性あるいは付着性が十分で
ないため繰り返し使用している間に基材から剥離してし
まうなどの問題があった。しかも従来の基材の表面処理
技術では、所要箇所に連続した被覆膜を形成することだ
けが意図されていたため、処理された基材の特性、機能
等は基本的には基材あるいは処理剤の選択に依存して変
えられるに過ぎず、多様な特性、機能等を有する物品を
提供する方法としては不十分なものであった。
【0003】一方、上記プラズマ重合膜および無機酸化
物薄膜に見られる欠点を解消するため、まず基材表面に
有機モノマー等によるプラズマ重合処理を行って有機ポ
リマー層を形成し、ついでプラズマ重合条件下で無機酸
化物等を蒸着して有機質ー無機質複合層を形成する方法
が提案されている(特開昭56−147829号公
報)。しかしながら、この方法は有機質ー無機質複合層
を形成する工程の制御が困難であるとともに、必ずしも
最外層が十分な親水性を有するとは言ないものであっ
た。しかもこの方法も、有機ポリマー層および有機質ー
無機質複合層がともに基材上に連続して存在するもので
あり、上記した多様な特性、機能等を有する物品を提供
できるとは言えなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明が
解決しようとする課題は、常に十分な親水性を有し且つ
耐久性にも優れた被覆膜を有するのみならず、多様な特
性、機能等を有する有用な物品を効率よく製造できる新
規な方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明における上記課題
を解決するための手段は、基材の表面処理において、酸
素原子および/または窒素原子を含有する不飽和化合物
によるプラズマ重合処理並びに不飽和化合物と酸素およ
び/または窒素との混合ガスによるプラズマ重合処理の
少なくとも1種のプラズマ重合処理を基材表面に行なっ
たのち、無機酸化物薄膜を形成する工程を含み、それに
よりプラズマ重合膜が基材表面の一部または全部を被覆
しているとともに、無機酸化物薄膜が基材表面の残りの
少なくとも一部を直接被覆しているかおよび/または前
記プラズマ重合膜を不連続に被覆している物品を形成す
ることを特徴とするものである。これにより、本発明
は、プラズマ重合膜並びに無機酸化物薄膜についての以
下に詳述する新規且つ特異な被覆形態に基づき、十分な
親水性を有し且つ耐久性にも優れた多様な物品を効率よ
く製造できるものである。
【0006】以下、本発明について具体的に説明する。
まず、本発明により処理される基材は親水性の被覆膜を
形成することができるものであれば特に限定されない
が、例えば、フィルム、シート、繊維状物、織物、編み
物、多孔体(例えばスポンジ)、網体等の形態をとるこ
とができ、あるいはレンズ、プリズム、レコード、細胞
培養用シャーレ、各種人工臓器・器官等の特定成形品で
あることができる。また基材は、本発明による処理を受
ける表面あるいは他の表面が火炎処理、放電処理、紫外
線照射処理、放射線照射処理、サンドブラスト処理、溶
剤処理、薬品処理、グラフト重合等の他の処理を受けた
ものであってもよい。さらに本発明による処理は、真空
蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反
応法、プラズマ重合法等により予め表面処理した基材に
対しても適用することができるものであり、これによ
り、予め形成された膜の親水性及び耐久性の総合特性を
改善することができる場合がある。上記基材の材質はと
くに制限されないが、本発明が親水性膜を形成するもの
であることから、基材が疎水性である場合に本発明の効
果が十二分に発揮されると言うことができる。本発明に
より処理することができる基材材質の例としては、オレ
フィン系ポリマー(ポリエチレン、ポリプロピレン、エ
チレンープロピレン共重合体、エチレンープロピレンブ
ロック共重合体等)、スチレン系ポリマー(ポリスチレ
ン、耐衝撃性ポリスチレン、ABS樹脂等)、ハロゲン
化オレフィン系ポリマー(塩化ビニル、塩化ビニリデ
ン、テトラフルオロエチレン等の重合体)、ビニルアル
コール系ポリマー(ポリビニルアルコール、エチレンー
ビニルアルコール共重合体等)、アクリル系ポリマー
(メチルメタクリレート、ヒドロキシアルキルメタクレ
ート、フルオロアルキルメタクリレート、シリルアルキ
ルメタクリレート、アクリロニトリル等の重合体)、ジ
エン系ポリマー(ポリブタジエン、ポリイソプレン、ス
チレンーブタジエン共重合体、スチレンーブタジエンブ
ロック共重合体等)、スチレンーブタジエンブロック共
重合体の水素添加物、ポリアセタール、ポリエーテル
(ポリフェニレンエーテル等)、ケトン系ポリマー(ポ
リエーテルエーテルケトン、ポリアリールエーテルケト
ン、ポリケトンサルファイド等)、ポリウレタン、ポリ
カーボネート、ポリエステル(ポリブチレンテレフタレ
ート、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート
等)、ポリアミド(ナイロン46、ナイロン11、ポリ
パラフェニレンテレフタルアミド等)、ポリエステルー
アミド、ポリイミド(ポリエーテルイミド、ポリエステ
ルーイミド、ポリアミドーイミド等)、ポリウレタン、
ポリサルファイド(ポリフェニレンサルファイド等)、
ポリスルホン(ポリエーテルスルホン、ポリアリールス
ルホン等)、ポリシロキサン(ジメチルポリシロキサ
ン、メチルフェニルポリシロキサン、フルオロアルキル
ポリシロキサン、シアノアルキル系ポリシロキサン、ジ
アリールポリシロキサン等)、ポリフェニレン、ポリキ
シリレン、天然ゴム、セルロース、絹、羊毛、あるいは
上記材料から得られる誘導体、前記2種以上の材料のポ
リマーブレンドあるいはポリマーアロイ、液晶材料、有
機半導体材料等の有機物質、ガラス、セラミック(Al
−O系、Mg−O系、Zr−O系、Al−Si−O系、
Al−Mg−Si−O系、Al−Ti−O系、Al−N
系、Si−C系、Si−N系、Al−Si−O−N系、
Ti−N系、B−N系、Ti−B系等)、無機半導体材
料、石材、金属等の無機物質、さらには上記材料の2種
以上からなる複合材料が挙げられる。
【0007】つぎに、本発明において使用される酸素原
子および/または窒素原子を有する不飽和化合物は、脂
肪族および/または芳香族の炭素ー炭素不飽和結合を有
する、プラズマ重合条件下でガス化あるいは蒸気化でき
る化合物であり、前記脂肪族不飽和結合は二重結合ある
いは三重結合であることができる。また脂肪族および/
または芳香族の不飽和結合は1分子中に2以上存在する
こともできる。このような酸素原子及び/又は窒素原子
を有する不飽和化合物の例としては、イ) 2−プロピン
−1−オール、アリルアルコール、ベンジルアルコール
等のアルコール類、ロ) フェノール、クレゾール等のフ
ェノール類、ハ) ジビニルエーテル、エチルビニルエー
テル、ブチルビニルエーテル、メトキシベンゼン、p−
ジメトキシベンゼン、エトキシベンゼン、エトキシエチ
レン、メトキシアセチレン、エトキシアセチレン、ベン
ジルエチルエーテル、フラン、2−メチルフラン等のエ
ーテル類、ニ) 3−ペンテン−2−オン、4−メチル−
3−ペンテン−2−オン、アセトフェノン等のケトン
類、ホ) ベンズアルデヒド、プロピオールアルデヒド等
のアルデヒド類、ヘ) アクリル酸、メタクリル酸、プロ
ピン酸、4−ペンテン酸等の不飽和カルボン酸、ト) ア
クリル酸あるいはメタクリル酸のアルキルエステル、フ
ッ素含有アルキルエステルまたはシロキサニルアルキル
エステル等の不飽和カルボン酸エステル類、チ) アニリ
ン、N,N−ジメチルアニリン、ニトロベンゼン、ピリ
ジン、ピラゾロン、ニトロトルエン、ニトロエチレン、
2−ペンテンジニトリル、アリルアミン、ピロール、ピ
コリン、2,4−ジメチルピリジン等の窒素含有不飽和
化合物が挙げられ、これらは単独または2種以上を混合
して使用される。これらの酸素原子および/または窒素
原子を有する不飽和化合物のうち好ましいのは、2−プ
ロピン−1−オール、アリルアルコール、ジビニルエー
テル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、
メトキシベンゼン、エトキシベンゼン、エトキシエチレ
ン、メトキシアセチレン、エトキシアセチレン、フラ
ン、2−メチルフラン、3−ペンテン−2−オン、プロ
ピオールアルデヒド、アクリル酸、メタクリル酸、プロ
ピン酸、4−ペンテン酸、アクリル酸メチル、アクリル
酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、ア
クリル酸トリフルオロエチル、アクリル酸ヘキサフルオ
ロプロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチ
ル、メタクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸ヘ
キサフルオロプロピル等の酸素原子含有不飽和化合物、
ピリジン、ニトロエチレン、アリルアミン、ピロール、
ピコリン等の窒素原子含有不飽和化合物である。
【0008】さらに、本発明において酸素および/また
は窒素と混合して使用される不飽和化合物は、脂肪族お
よび/または芳香族の炭素ー炭素不飽和結合を有する、
プラズマ重合条件下でガス化あるいは蒸気化できる化合
物であり、前記脂肪族不飽和結合は二重結合あるいは三
重結合であることができる。また脂肪族および/または
芳香族の不飽和結合は1分子中に2以上存在することも
できる。このような不飽和化合物の例には、リ) 前記
イ) 〜チ) に挙げた酸素原子および/または窒素原子を
有する不飽和化合物のほか、ヌ) エチレン、プロピレ
ン、1−ブテン、2−ブテン、イソブチレン、2−メチ
ル−2−ブテン、1,3−ブタジエン、1,3,5−ヘ
キサトリエン、2−ビニル−1,3−ブタジエン、2−
ペンテン、2−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−
ペンテン、1,4−ペンタジエン等の鎖状炭化水素類、
ル) ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、
スチレン、メチルスチレン、ジビニルベンゼン、シクロ
ペンテン、シクロブタジエン、シクロヘキセン、ピネン
等の環状炭化水素類が挙げられる。好ましい不飽和化合
物は、鎖状炭化水素類では、エチレン、プロピレン、1
−ブテン、2−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等、
環状炭化水素類では、ベンゼン、トルエン、シクロペン
テン等である。
【0009】本発明において使用される前記不飽和化合
物並びに酸素および/または窒素は、純粋のものでもよ
いが、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、アルゴン、ヘリ
ウム、空気等の他のガス成分も全体の10モル%以下混
合することができる。
【0010】前記不飽和化合物と酸素および/または窒
素との混合比は、酸素および/または窒素に対する不飽
和化合物の容量比として通常0.05〜10であるが、
好ましい混合比は0.2〜4.0である。混合比が0.
05未満では無機酸化物薄膜の基材との密着性が乏しく
なり、また10を超えると基材に着色を生じ易くなる。
【0011】本発明においては、酸素原子および/また
は窒素原子を含有する不飽和化合物によるプラズマ重合
処理あるいは不飽和化合物と酸素および/または窒素と
の混合ガスによるプラズマ重合処理をそれぞれ単独で行
なうことができ、またこれらの2つのプラズマ重合処理
を組み合わせて実施することもできる。例えば、酸素原
子および/または窒素原子を含有する不飽和化合物、他
の不飽和化合物並びに酸素および/または窒素をすべて
含む混合ガスによるプラズマ重合処理を行なうことがで
き、また酸素および/または窒素と混合して使用される
不飽和化合物自体が酸素原子および/または窒素原子を
含有する不飽和化合物である場合には、結果的に両プラ
ズマ重合処理が同時に行なわれることになる。何れにせ
よ、本発明によるプラズマ重合処理により、酸素原子お
よび/または窒素原子含有極性基を有する親水性重合膜
が形成されることになる。
【0012】つぎに、本発明においてプラズマ重合膜が
形成された基材を被覆するのに使用される無機酸化物
は、処理生成物の機能、特性、用途等に応じて種々選択
できるが、一般に周期律表III〜VIII族元素の酸
化物、ガラス等が使用される。好ましい無機酸化物は周
期律表III〜VI族元素の酸化物であり、その例には
酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化インジウム、酸
化珪素、酸化ゲルマニウム、酸化錫、酸化チタン、酸化
ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ニオブ、酸化タン
タル、酸化モリブデン、酸化タングステン等が挙げられ
る。とくに酸化珪素および酸化アルミニウムが好まし
い。また無機酸化物の場合、薄膜の親水性、耐久性等の
観点から高純度(例えば純度99.99%以上)のもの
が好ましい。これらの無機酸化物は何れも親水性薄膜を
もたらすものである。
【0013】本発明においては、以上に説明した材料を
使用して少なくとも2段階からなる工程により基材を表
面処理するが、以下にそれらの処理条件及び処理装置に
ついて説明する。まず酸素原子および/または窒素原子
を含有する不飽和化合物によるプラズマ重合処理並びに
不飽和化合物と酸素および/または窒素との混合ガスに
よるプラズマ重合処理の少なくとも1種のプラズマ重合
処理に際しては、酸素原子および/または窒素原子を含
有する不飽和化合物の場合、該不飽和化合物をガスとし
て、あるいは常温で非ガス体のものでは蒸気化して、ま
た不飽和化合物と酸素および/または窒素との混合ガス
の場合、該不飽和化合物を必要ならば蒸気化して酸素お
よび/または窒素と混合して、あるいは混合しないで別
々に、真空室からなる処理系にそれぞれ供給される。処
理電場は直流でも交流でもよい。処理条件は通常のプラ
ズマ重合処理におけるものと同様であり、とくに限定さ
れるものでないが、例えば真空度が0.01〜10To
rr、交流の場合の周波数が50〜50MHz、放電電
力が0.2〜1000W、重合時間は30秒〜数十分で
あり、また基材温度は、処理中の基材の変質を抑えるた
め100°C以下とすることが好ましい。交流の場合、
10MHz程度以下の周波数では電極を処理装置の内部
に配置することもできるが、数MHz以上の高周波、マ
イクロ波等を用いる場合は、処理系から電極金属の影響
を取り除き、真空装置に電極端子を取り付ける必要がな
いなどの理由から、外部電極方式が好ましい場合もあ
る。この外部電極方式では、プラズマへのエネルギー供
給は容量結合あるいは誘導結合によって行なわれるが、
強力な電磁波が放出されやすいので、一般に電磁気シー
ルドを施すことが好ましい。。さらにプラズマは磁場の
影響を強く受けるので、処理系に磁場をかけ、それによ
りプラズマを局在化させて安定な放電を行なわせること
もできる。本発明による表面処理の対象となる基材は一
般に誘電体であるので、とくに有機ポリマーからなる基
材の場合には電荷の蓄積による絶縁破壊を避けるよう配
慮することが望ましく、そのためには、放電周波数を比
較的高くするか放電電流を小さくする等の方策を講じる
ことができる。
【0014】本発明におけるプラズマ重合処理はバッチ
式でも、半連続式でも、また連続式でも実施できる。バ
ッチ式の場合のプラズマ重合処理室(即ち真空室)は1
室あるいは2以上の室から構成することができ、後者で
はプラズマ重合処理の予備段階(例えば基材を清浄化す
るための、スパッタエッチングやプラズマ処理等)をプ
ラズマ重合処理とは別室で実施することができる。半連
続式は一般に基材がプラズマ重合領域を移動するもので
あるが、このプラズマ重合領域は、例えば基材がフィル
ムの場合送り出し室や巻取り室と同一であっても別であ
ってもよい。連続式は基本的にはプラズマ重合処理領域
が真空室となっており、基材の送り出し、巻取り・取り
出し等の付帯設備が真空室外(即ち空気中)にあるもの
である。この連続式は付帯設備が空気中にあるためプラ
ズマ重合を中断しないで基材を取り扱える利点がある
が、真空室と他の区域との接続がやや困難である。これ
らの半連続式および連続式は基材が連続体(フィルム、
織物等)であっても多数の単体(レンズ、板材等の成形
品)であっても適用することができ、またバッチ式と同
様に、予めスパッタエッチングやプラズマ処理を行なっ
て基材を清浄化しておくこともできる。本発明において
使用することができるプラズマ重合処理装置の具体例
は、例えば特公平3−29084号公報および特開昭5
9−22933号公報に記載されている。
【0015】本発明によるプラズマ重合処理は、基材
(例えばフィルム、シート、レンズ等)の全ての表面に
対して実施することができるが、一般には基材の主要表
面(例えばレンズの場合では、前面および/または後
面)に対して実施される。特定の主要表面だけにプラズ
マ重合処理する場合には、通常他の主要表面をマスクす
ることが必要となる。本発明におけるプラズマ重合膜は
基材表面の一部または全部を被覆しているが、その何れ
の場合であっても、基材表面上に連続して存在すること
ができ、あるいは不連続に存在することができる。この
場合、プラズマ重合膜は最初基材表面の海の上に島状に
分散した海島構造をとるが、膜厚を厚くするに従って海
島が逆転してプラズマ重合膜が連続部分となり、さらに
膜厚を厚くすると基材表面全体が連続したプラズマ重合
膜で覆われることになる。したがって、連続して存在す
るプラズマ重合膜は一般に膜厚が比較的厚い場合に形成
され、不連続なプラズマ重合膜は一般に膜厚が比較的薄
い場合に形成される。しかしながら本発明においては、
プラズマ重合膜の膜厚自体は特に限定されるものではな
く、通常採用される膜厚(一般に5000Å以下)の範
囲内から適宜に選定することができるものである。プラ
ズマ重合膜が連続膜から不連続膜に移行する膜厚は使用
成分、処理条件等によって変わり一概には言えないが、
一般に150Å以下の膜厚では不連続プラズマ重合膜が
形成されやすくなる。また本発明における不連続なプラ
ズマ重合膜は、基材表面に微細な孔の空いたマスク、ネ
ット等を被せてプラズマ重合処理することによっても形
成することができるものである。
【0016】つぎに本発明における第2段階、即ち無機
酸化物薄膜を形成する方法について、説明する。この段
階においては、好ましくは高純度の前記した無機酸化物
を蒸発源あるいはターゲットとして使用して、真空蒸着
法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等の通
常の薄膜化技術により薄膜を形成する。真空蒸着法は真
空室内で蒸発源である無機酸化物を加熱あるいは電子線
照射により蒸発させ、この無機酸化物蒸気を一般に蒸発
源と対向配置される基材表面上に凝縮させることにより
薄膜を形成するものである。イオンプレーティング法は
アルゴン等の非反応性ガス雰囲気下にある真空室内で、
蒸発源である無機酸化物(陽極)と基材(陰極)との間
に高電圧の直流電圧を印加して両極間にグロー放電を起
こさせ、その状態で無機酸化物を加熱蒸発させてイオン
化させ、電界により加速して基材表面に打ち込み無機酸
化物薄膜を形成するものである。またスパッタリング法
はアルゴン等の非反応性ガス雰囲気下または酸素、アン
モニア等の反応性ガス雰囲気下にある真空室内で、ター
ゲットとなる無機酸化物と基材との間に高電圧直流電流
あるいは高周波電界を印加することにより、加速された
ガスイオンにより無機酸化物をプラズマ状態に放出さ
せ、基材表面上に凝縮させることにより無機酸化物薄膜
を形成するものである。なおスパッタリング法では、処
理雰囲気中に存在する電子が効率よくターゲットに戻る
よう真空室内に磁場を印加しておくこともできる。
【0017】本発明における無機酸化物薄膜の形成は、
既にプラズマ重合処理された基材に対して行なうが、そ
の無機酸化物薄膜は、基材表面の残りの少なくとも一部
(即ち基材表面のうちプラズマ重合膜で被覆されていな
い領域の一部または全部)を直接被覆しているかおよび
/または基材表面上に形成されたプラズマ重合膜を不連
続に被覆している。この無機酸化物薄膜も、プラズマ重
合膜と同様に、連続膜あるいは不連続膜として存在する
ことができ、また無機酸化物薄膜が形成される面は、プ
ラズマ重合処理された側の基材表面とすることも、未だ
プラズマ重合処理されていない側の基材表面とすること
も、さらにはこれらの両表面とすることもできる。不連
続な無機酸化物薄膜は、プラズマ重合膜の場合と同様に
海島構造と考えることができるものである。
【0018】本発明における無機酸化物薄膜の膜厚は3
0〜2000Åであることが好ましい。膜厚が30Å未
満では基材表面の親水性が不十分となる傾向があり、ま
た2000Åを超えると無機酸化物薄膜が剥離しやすく
なったり、コンタクトレンズ等のように酸素等のガス透
過性が要求される基材の場合には、その透過性を損なう
おそれがあるからである。不連続な無機酸化物薄膜の形
成は、一般に該薄膜の膜厚を比較的薄く、好ましくは1
00Å以下とすることにより達成されるものであるが、
また不連続な無機酸化物薄膜はプラズマ重合処理した基
材の表面所定箇所に微細な孔の空いたマスク、ネット等
を被せて薄膜形成することによっても得ることができ
る。後者の場合には、薄膜を不連続とするために膜厚が
とくに制限されることはない。
【0019】ここで、本発明における無機酸化物薄膜の
被覆形態を、最も一般的な2つの主要表面を有する基材
に基づいて説明する。まず基材の特定の主要表面(即
ち、1つの主要表面)に着目すると、プラズマ重合膜の
被覆形態には、(1)当該主要表面の一部のみを被覆し
ている場合と(2)当該主要表面全体を被覆している場
合との2つのがある。前記(1)の場合、無機酸化物薄
膜は当該主要表面を連続または不連続に被覆することが
できる。そして(1−1)無機酸化物薄膜が連続して基
材主要表面を被覆するときは、一般に無機酸化物薄膜が
基材表面上のプラズマ重合膜が存在する領域からプラズ
マ重合膜が存在しない領域にかけて主要表面全体を被覆
することになり、また(1−2)無機酸化物薄膜が基材
主要表面を不連続に被覆するときは、一般に、プラズマ
重合膜が存在する領域およびプラズマ重合膜が存在しな
い領域を含めて、主要表面上に無機酸化物薄膜がランダ
ムに形成されることになる。この(1−2)のケースで
は、場合により、例えば疎水性の基材表面の一部を露出
あるいは残存させておき、疎水性表面と親水性表面とを
併せもつ物品を製造することもできる。前記(2)場合
は、(2−1)無機酸化物薄膜が該主要表面上のプラズ
マ重合膜を不連続に被覆することになる。
【0020】つぎに、基材の一方の主要表面がプラズマ
重合膜で被覆されているが、他方の主要表面がプラズマ
重合膜で被覆されていない場合に基づき、これらの2つ
の主要表面を関連づけて説明すると、この場合のプラズ
マ重合膜の被覆形態には、(3)片方の主要表面を不連
続に被覆している場合と(4)片方の主要表面全体を被
覆している場合との2つがある。前記(3)の場合、連
続した無機酸化物薄膜は、(3−1)プラズマ重合膜で
被覆された主要表面あるいは(3−2)プラズマ重合膜
で被覆されない主要表面を被覆することができ、また不
連続な無機酸化物薄膜は、(3−3)プラズマ重合膜で
被覆された主要表面あるいは(3−4)プラズマ重合膜
で被覆されない主要表面を被覆することができる。そし
て、前記(3−1)は前記(3−2)及び(3−4)と
組合せることができ、前記(3−2)は前記(3−3)
と組合せることができ、また前記(3−3)は前記(3
−4)と組合せることができる。前記(4)の場合、無
機酸化物薄膜は、連続膜としては、(4−1)プラズマ
重合膜で被覆されていない主要表面のみ、あるいは(4
−2)プラズマ重合膜で被覆されていない主要表面とプ
ラズマ重合膜で被覆された主要表面との両面を被覆で
き、そして不連続膜としては、(4−3)プラズマ重合
膜で被覆された主要表面あるいは(4−4)プラズマ重
合膜で被覆されていない主要表面を被覆することができ
る。そして、前記(4−1)は前記(4−3)と組合せ
ることができ、また前記(4−3)は前記(4−4)と
組合せることができる。前記(4−4)の場合には、連
続無機酸化物薄膜がさらにプラズマ重合膜上を被覆して
いることもできる。
【0021】前記組合せのうち、例えば、(3−1)と
(3−2)とを組合せた物品は、一方の主要表面に不連
続プラズマ重合膜が形成された基材の両面に対して、さ
らに連続無機酸化物薄膜を形成したものと考えることも
でき、また(4−3)と(4−4)とを組合せた物品
は、一方の主要表面に連続プラズマ重合膜が形成された
基材の両面に対して、さらに不連続無機酸化物薄膜を形
成したものと考えることもできるものである。
【0022】さらに、プラズマ重合膜が基材の2つの主
要表面の両方を連続あるいは不連続に被覆している場合
も、上記と同様に考えることができるのであり、また3
つ以上の主要表面を考えなければならない基材について
も、プラズマ重合膜および無機酸化物薄膜全体の被覆形
態は、上記と同様にして理解することができる。
【0023】本発明により基材が不連続に被覆される場
合について、プラズマ重合膜と無機酸化物薄膜との配置
関係を観点を変えて説明すると、プラズマ重合膜あるい
は無機酸化物薄膜の形成時にマスク、ネット等を使用し
ない場合は、被覆膜が形成される領域を正確に予測する
ことは困難であるが、例えばプラズマ重合膜も不連続で
ある場合、不連続な無機酸化物薄膜が形成される領域は
プラズマ重合膜で被覆された部分のみであることもで
き、またプラズマ重合膜で被覆されない部分のみである
こともできる。しかし通常の処理条件下では、両部分に
おいてランダムに無機酸化物薄膜が形成されると言え
る。プラズマ重合膜あるいは無機酸化物薄膜の形成時に
マスク、ネット等を使用する場合は、それらの孔の位
置、大きさ、形等を調節することによって基本的には任
意の領域に被覆膜を形成させることができる。したがっ
て、例えばプラズマ重合処理時にもマスク、ネット等を
使用して不連続な重合膜を形成させたときは、これらの
孔の位置と無機酸化物薄膜形成時のマスク、ネット等の
孔の位置とを適切に対応させることによって、両被覆膜
の配置関係を調節することができる。
【0024】本発明により処理される基材表面の範囲や
場所はとくに制限されるものではなく、プラズマ重合膜
あるいは無機酸化物薄膜で被覆することによる実用上の
メリット等を考慮して適宜選定することができるもので
ある。この場合、適当なマスク等を使用することによ
り、例えば基材の特定主要表面の限定された範囲(例え
ば、主要表面の半分)あるいは特定の場所だけにプラズ
マ重合膜あるいは無機酸化物薄膜を形成することができ
る。さらに、本発明によるプラズマ重合膜あるいは無機
酸化物薄膜それぞれが基材の前面、後面など異なる2以
上の主要表面上に存在する被覆形態は、個々の被覆形態
に応じて、一回のプラズマ重合処理あるいは無機酸化物
薄膜の形成処理により達成でき、またこれらの処理を各
主要表面に対して段階的に実施することによっても達成
することができる。そして、例えばプラズマ重合膜が2
以上の主要表面で被覆形態が相違する場合(即ち、一方
の主要表面で連続で他方の主要表面では不連続である場
合)は、各主要表面に対して段階的にプラズマ重合処理
を行なうか、または他方の主要表面にマスク等を被せて
両主要表面同時にプラズマ重合処理を行なう。これは無
機酸化物薄膜の場合も同様である。
【0025】上記した本発明におけるプラズマ重合膜並
びに無機酸化物薄膜の被覆形態の例を、プラズマ重合膜
が基材の特定の主要表面のみに形成された場合につい
て、断面図で模式的に図1〜図4に示す。図中、1は基
材、2はプラズマ重合膜、3、3′は無機酸化物薄膜で
ある。図1は基材1の特定主要表面上に不連続プラズマ
重合膜2が形成され、さらにその上に連続無機酸化物薄
膜3が形成された場合を、図2は基材1の一方の主要表
面上に不連続プラズマ重合膜2が形成されるとともに、
その上に不連続無機酸化物薄膜3が形成され、且つ基材
の他方の主要表面上に連続無機酸化物薄膜3′が形成さ
れた場合を、図3は基材1の特定主要表面上に連続プラ
ズマ重合膜2が形成され、且つその上に不連続無機酸化
物薄膜3が形成された場合を、図4は基材1の一方の主
要表面上に連続プラズマ重合膜2と連続無機酸化物薄膜
3とが形成され、且つ他方の主要表面上に不連続無機酸
化物薄膜3′が形成された場合を、それぞれ例示してい
る。
【0026】これらの図示した物品の製造例を挙げる
と、図1の物品は、一方の主要表面に不連続プラズマ重
合膜2を形成したのち、連続無機酸化物薄膜3を形成す
ることによって、図2の物品は、一方の主要表面にとも
に不連続なプラズマ重合膜2と無機酸化物薄膜3とを段
階的に形成したのち、他方の主要表面に連続無機酸化物
薄膜3′を形成することによって、図3の物品は、一方
の主要表面に連続プラズマ重合膜2を形成したのち、さ
らに不連続無機酸化物薄膜3を形成することによって、
また図4の物品は、一方の主要表面にともに連続したプ
ラズマ重合膜2と無機酸化物薄膜3とを段階的に形成し
たのち、他方の主要表面に不連続無機酸化物薄膜3′を
形成することによって、それぞれ製造することができ
る。あるいは、図2および図4の物品は、予め他方の主
要表面に連続または不連続な無機酸化物薄膜3′を形成
させた基材に対して、本発明を実施したものと考えるこ
ともできる。なお前述したように、図4の物品から他方
の主要表面上にある不連続無機酸化物薄膜3′を取り除
いたものは、本発明では製造されないことに留意すべき
である。また、図1〜図4に示した被覆形態はあくまで
模式的且つ限定的に例示したものであり、実際の被覆形
態は、個々の膜の被覆範囲、被覆場所、形状、膜厚等の
数多くの要素が複雑に組合されたものとなるのであっ
て、図示したものよりはるかに複雑且つ変化に富んでい
ることは理解されなければならない。
【0027】さらに本発明においては、酸素原子および
/または窒素原子を含有する不飽和化合物によるプラズ
マ重合処理並びに不飽和化合物と酸素および/または窒
素との混合ガスによるプラズマ重合処理の少なくとも1
種のプラズマ重合処理、あるいは無機酸化物薄膜の形成
を繰り返すことにより、3層以上の多層膜構造を得るこ
とができる。例えば無機酸化物薄膜単独では膜厚が50
0Å以上になると、とくに柔軟な基材に被覆した場合、
薄膜にクラック等が生じやすく耐久性に問題があるが、
無機酸化物薄膜をさらにプラズマ重合膜で被覆した3層
以上の多層構造とすることにより、無機酸化物薄膜の膜
厚が比較的厚い場合のクラック等の発生を防止すること
ができる。このような3層以上の多層構造においては、
3層目以降のプラズマ重合膜あるいは無機酸化物薄膜の
膜厚、それらが存在する状態(連続、不連続)や範囲等
は、とくに制約されるものではない。
【0028】以上詳述したように、本発明においては、
プラズマ重合膜と無機酸化物薄膜とを有する基材を多様
な形態、構造等で得ることがきるものである、したがっ
て本発明により製造される物品の特性、機能等も多様性
を有する。これは、本発明により達成される顕著な効果
の1つである。本発明により製造される物品特有の特
性、機能等について主なものを挙げると、次の通りであ
る。即ち、基材表面に形成されたプラズマ重合膜が酸素
原子および/または窒素原子含有極性基を有するため、
プラズマ重合膜上に位置する無機酸化物薄膜が強固に付
着し耐久性に優れたものとなる。また基材の主要表面に
形成されたプラズマ重合膜および/または無機酸化物薄
膜が不連続で且つ疎水性の基材表面が露出している物品
では、親水性表面と疎水性表面とが適度に分布したもの
となるため、例えばアルブミンの吸着能が高くなり、抗
血栓性や生体適合性に優れるのみならず、細胞培養にお
ける細胞接着率も高いものとなる。しかも、例えばコン
タクトレンズの場合、その前面(フロントカーブ側)に
無機酸化物薄膜を形成し、後面(ベースカーブ側)にプ
ラズマ重合膜を形成することにより、前面への涙成分や
塵等の汚れの付着、固着等を防止できるとともに、角膜
上でのコンタクトレンズの動きをスムーズにでき、眼球
の動きに適切に対応できるものとすることができる。さ
らに本発明により3層以上に被覆された物品では、比較
的膜厚の厚い無機酸化物薄膜の場合であっても、クラッ
ク等の発生を防止でき、耐久性の優れたものとなる。
【0029】本発明により製造される物品は、その特異
な被覆形態と優れた特性から、コンタクトレンズを始め
とする各種の人工臓器・器官、細胞培養用器材、外科・
看護用器具等の幅広い分野において好適に使用すること
ができるものである。
【0030】
【実施例】つぎに実施例および比較例により、本発明の
実施態様並びに効果をさらに具体的に説明する。 実施例1 平行平板型電極を有する内容積160リットルのプラズ
マ重合装置を用い、その中央の支持台上に幅10mm、
長さ30mm、厚さ0.5mmのポリメチルメタクリレ
ート(PMMA)基材を保持し、装置内を0.03To
rrの真空度に保ち、アリルアルコールとアルゴンの等
モル混合ガスを20cc/分の流量で導入し、高周波電
源を使用し10分間放電させて、基材の両面にプラズマ
重合処理を行なった。ここで処理された基材両面は、膜
厚約100Åのプラズマ重合膜を有し、且つ島状の未被
覆部が残存していた。ついで、マグネトロン型低温高速
スパッタリング装置を用いて、酸化珪素をターゲット材
料とし、アルゴンガスを流して、処理圧力0.05To
rr、出力80Wで基材の片面に1分間スパッタリング
処理を行なった。ここで処理された基材片面は、膜厚約
100Åの酸化珪素薄膜を有し、且つ島状の未被覆部が
残存していた。得られた基材について、処理直後、空気
中に3ヵ月放置後およびスポンジテスト後について、水
の接触角を測定した。スポンジテストでは、基材の片面
を両面接着テープで試料台に固定し、水を含んだスポン
ジに1Kgの荷重をかけて基材の他方の表面を前後に1
000回(但し、前後それぞれを1回にカウント)擦っ
た。測定結果を表1に示す。
【0031】実施例2 実施例1と同様に平行平板型電極を有するプラズマ重合
装置を用い、その中央の支持台上に非含水ソフトコンタ
クトレンズ((株)リッキーコンタクトレンズ製ソフィ
ーナ)を保持し、プラズマ重合装置内を0.03Tor
rの真空度に保ち、アクリル酸とアルゴンの等モル混合
ガスを20cc/分の流量で導入し、高周波電源を使用
して10分間放電させて、コンタクトレンズの両面にプ
ラズマ重合処理を行なった。ここで処理されたコンタク
トレンズ両面は、膜厚約100Åのプラズマ重合膜を有
し、且つ島状の未被覆部を残存していた。ついで、マグ
ネトロン型低温高速スパッタリング装置を用いて、酸化
珪素をターゲット材料とし、アルゴンガスを流して、処
理圧力0.05Torr、出力40Wでコンタクトレン
ズの両面にそれぞれ1分間スパッタリング処理を行なっ
た。ここで処理されたコンタクトレンズ両面は、膜厚約
40Åの酸化珪素薄膜を有し、且つ島状の未被覆部を残
存していた。その後さらに、0.05Torrの真空度
に保ったプラズマ重合装置を使用して、アクリル酸とア
ルゴンとの等モル混合ガスを20cc/分の流量で導入
し、高周波電源を使用して10分間放電させて、コンタ
クトレンズの両面にプラズマ重合処理を行った。ここで
処理されたコンタクトレンズ両面は、膜厚約100Åの
プラズマ重合膜を有し、且つ島状の未被覆部を残存して
いた。ついで酸化珪素をターゲット材料とし、アルゴン
ガスを流して、処理圧力0.05Torr、出力80W
でコンタクトレンズの前面のみに1分間スパッタリング
処理を行なった。ここで処理されたコンタクトレンズ前
面は、膜厚約100Åの酸化珪素薄膜を有し、且つ島状
の未被覆部を残存していた。得られたコンタクトレンズ
について、実施例1と同様にして水の接触角を測定し
た。その結果を表1に示す。処理されたコンタクトレン
ズは、前面、後面とも極めて水濡れ性が良好で、3ヵ月
装用後も汚れの固着は全く見られず、また角膜上での動
きも良好であった。
【0032】実施例3 実施例1と同様に平行平板型電極を有するプラズマ重合
装置を用い、その中央の支持台上に実施例2と同様の非
含水ソフトコンタクトレンズを保持し、プラズマ重合装
置内を0.05Torrの真空度に保ち、アクリル酸と
アルゴンとの等モル混合ガスを20cc/分の流量で導
入し、高周波電源を使って20分間放電させて、コンタ
クトレンズの両面にプラズマ重合処理を行なった。ここ
で処理されたコンタクトレンズ両面は、膜厚約180Å
のプラズマ重合膜で全面が被覆されていた。ついでマグ
ネトロン型低温高速スパッテリング装置を用いて、酸化
珪素をターゲット材料とし、アルゴンガスを流して、処
理圧力0.05Torr、出力60Wでコンタクトレン
ズの前面に1分間スパッタリング処理を行なった。ここ
で処理されたコンタクトレンズ前面は、膜厚約60Åの
酸化珪素薄膜を有し、且つ島状の未被覆部を残存してい
た。得られたコンタクトレンズについて、実施例1と同
様にして水の接触角を測定した。その結果を表1に示
す。処理されたコンタクトレンズは、前面、後面とも極
めて水濡れ性が良好で、3ヵ月装用後も汚れの固着は全
く見られず、また角膜上での動きも良好であった。
【0033】実施例4 平行平板型電極を有するプラズマ重合装置を用い、その
中央の支持台上に幅10mm、長さ30mm、厚さ0.
5mmのポリメチルメタクリレート(PMMA)基材を
保持し、プラズマ重合装置内を0.03Torrの真空
度に保ち、エチレンと酸素とをそれぞれ10cc/分の
流量で装置内に導入し、高周波電源を使用して10分間
放電させて、基材の両面にプラズマ重合処理を行なっ
た。ここで処理された基材両面は、膜厚約100Åのプ
ラズマ重合膜を有し、且つ島状の未被覆部を残存してい
た。ついでマグネトロン型低温高速スパッタリング装置
を用いて、酸化アルミニウムをターゲット材料とし、ア
ルゴンガスを流して、処理圧力0.05Torr、出力
60Wで基材の片面に2分間スパッタリング処理を行な
った。ここで処理された基材片面は、膜厚約80Åの酸
化アルミニウム薄膜を有し、且つ島状の未被覆部を残存
していた。得られた基材について、実施例1と同様にし
て水の接触角を測定した。その結果を表1に示す。
【0034】実施例5 実施例1と同様に平行平板型電極を有するプラズマ重合
装置を用い、その中央の支持台上に実施例2と同様の非
含水ソフトコンタクトレンズを保持し、プラズマ重合装
置内を0.05Torrの真空度に保ち、4−メチル−
1−ペンテンを10cc/分の流量、窒素を15cc/
分の流量で導入し、高周波電源を使用して10分間放電
させて、コンタクトレンズの両面にプラズマ重合処理を
行なった。ここで処理されたコンタクトレンズ両面は、
膜厚約100Åのプラズマ重合膜を有し、且つ島状の未
被覆部を残存していた。ついでマグネトロン型低温高速
スパッタリング装置を用いて、酸化珪素をターゲット材
料とし、アルゴンガスを流して、処理圧力0.05To
rr、出力60Wでコンタクトレンズの両面にスパッタ
リング処理を行なった。ここで処理されたコンタクトレ
ンズ両面は、膜厚約40Åの酸化珪素薄膜を有し、且つ
島状の未被覆部を残存していた。得られたコンタクトレ
ンズについて、実施例1と同様に水の接触角を測定し
た。その結果を表1に示す。処理されたコンタクトレン
ズは、前面、後面とも水濡れ性が極めて良好であり、3
ヵ月装用後も汚れの固着は全く見られず、また角膜上で
の動きも良好であった。
【0035】実施例6 実施例1と同様に平行平板型電極を有するプラズマ重合
装置を用い、その中央の支持台上に実施例1と同様のP
MMAを保持し、装置内を0.03Torrの真空度に
保ち、エチレン3モルおよび酸素1モルの割合で混合し
た混合ガスを20cc/分の流量で導入し、高周波電源
を使用して30分間放電させて、基材の両面にプラズマ
重合処理を行なった。ここで処理された基材両面は、膜
厚約240Åのプラズマ重合膜で全面が被覆されてい
た。ついで、マグネトロン型低温高速スパッタリング装
置を用いて、酸化珪素をターゲット材料とし、アルゴン
ガスを流して、処理圧力0.05Torr、出力40W
でPMMA基材の片面に5分間スパッタリング処理を行
なった。ここで処理された基材片面は、膜厚約200Å
の酸化珪素薄膜で全面が被覆されていた。得られた基材
について、実施例1と同様にして酸化珪素薄膜面の水の
接触角を測定した。その結果を表1に示す。
【0036】比較例 実施例1と同様のマグネトロン型低温高速スパッタリン
グ装置を用い、酸化珪素をターゲット材料とし、アルゴ
ンガスを流して、処理圧力0.05Torr、出力80
Wで、実施例2と同様の非含水ソフトコンタクトレンズ
の両面に2分間スパッタリング処理を行なった。ここで
処理されたコンタクトレンズ両面は、膜厚約200Åの
酸化珪素薄膜で全面が被覆されていた。得られたコンタ
クトレンズについて、実施例1と同様に水の接触角を測
定した。その結果を表1に示す。処理されたコンタクト
レンズは前面、後面とも水濡れ性は良好であったが、3
ヵ月装用後の表面に汚れが認められ、この汚れは洗浄剤
で洗浄しても除去できなかった。この3ヶ月装用後のコ
ンタクトレンズ表面の肉眼観測では部分的に水はじきが
認められるとともに、顕微鏡観測では表面に微細なひび
割れ、欠損が認められ、酸化珪素薄膜が基材表面から剥
がれていることが明らかとなった。
【0037】
【表1】
【0038】表1から明らかなように、本発明により表
面処理された基材はいずれも初期水濡れ性に優れ、しか
も空気中に3ヶ月放置後並びに通常の使用条件をはるか
に越える過酷なスポンジテスト後であっても十分な親水
性を保持しているのに対して、無機酸化物薄膜のみを形
成した比較例では、処理表面の空気中3ヶ月放置後及び
スポンジテスト後の水濡れ性の低下が著しい。これは、
同様の無機酸化物薄膜を外側被覆層として有する場合で
あっても、本発明のように予めプラズマ重合膜を形成さ
せることにより、該無機酸化物薄膜の耐久性が顕著に改
善されることを示している。
【0039】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明は、プラズ
マ重合処理と無機酸化物薄膜の形成とを組み合わせ、且
つ基材表面の少なくとも一部をプラズマ重合膜により被
覆するとともに、基材表面の残りの少なくとも一部を無
機酸化物薄膜により直接被覆するかおよび/またはプラ
ズマ重合膜を無機酸化物薄膜により不連続に被覆するこ
とによって、良好な親水性を有するとともに、汚れが付
着し難く且つ空気中放置や繰り返される洗浄にも十分耐
えることができ、また長期間の使用しても基材と被覆膜
との密着が十分保たれる等、優れた物品を製造すること
ができる。しかも本発明においては、プラズマ重合処理
と無機酸化物薄膜の形成とを適切に組合せて実施するこ
とにより、例えばコンタクトレンズの場合には眼球の動
きへの対応性に優れ、また抗血栓性や生体適合性が良好
な親水性と疎水性とがバランスした基材表面を効率よく
達成できるのみならず、比較的厚い無機酸化物薄膜を形
成した場合でも十分な耐久性を持たせることができる
等、優れた特性を備えた多様な物品を効率よく製造でき
るものである。本発明により製造される物品は、種々の
人工臓器・器官、細胞培養用器材、外科・看護用器具等
のほか、表面が親水性であることが望まれる他の一般器
具・器材として、好適に使用することができるものであ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】基材の特定主要表面上に不連続プラズマ重合膜
と連続無機酸化物薄膜とが形成された、本発明による物
品の模式断面図である。
【図2】基材の一方の主要表面上に不連続プラズマ重合
膜と不連続無機酸化物薄膜が形成され、且つ他方の主要
表面上に連続無機酸化物薄膜が形成された、本発明によ
る物品の模式断面図である。
【図3】基材の特定主要表面上に連続プラズマ重合膜と
不連続無機酸化物薄膜が形成された、本発明による物品
の模式断面図である。
【図4】基材の一方の主要表面上に連続プラズマ重合膜
と連続無機酸化物薄膜とが形成され、且つ他方の主要表
面上に不連続無機酸化物薄膜が形成された、本発明によ
る物品の模式断面図である。
【符号の説明】 1 基材 2 プラズマ重合膜 3 無機酸化物薄膜 3′ 無機酸化物薄膜

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 酸素原子および/または窒素原子を含有
    する不飽和化合物によるプラズマ重合処理並びに不飽和
    化合物と酸素および/または窒素との混合ガスによるプ
    ラズマ重合処理の少なくとも1種のプラズマ重合処理を
    基材表面に行なったのち、無機酸化物薄膜を形成する工
    程を含み、それによりプラズマ重合膜が基材表面の一部
    または全部を被覆しているとともに、無機酸化物薄膜が
    基材表面の残りの少なくとも一部を直接被覆しているか
    および/または前記プラズマ重合膜を不連続に被覆して
    いる物品を形成することを特徴とする、基材の表面処理
    方法。
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Cited By (9)

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