JP2003342400A - プラスチック親水処理方法および親水性プラスチック製造方法 - Google Patents

プラスチック親水処理方法および親水性プラスチック製造方法

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Mitsuru Sadamoto
満 貞本
Noriyuki Yanagawa
紀行 柳川
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 プラスチック表面への高度かつ持続的な親水
性付与を可能とする。 【解決手段】 プラスチックの表面を親水化するプラス
チック親水処理方法において、酸素ガスを用いて形成し
た電子密度が5×1010cm-3以上1×1011cm-3
下の範囲でかつ電子温度が5eV以下であるプラズマ
に、プラスチックを曝す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、親水性表面を有す
る機能性プラスチックの製造方法に関すし、プラスチッ
ク表面の親水性を向上させる親水処理方法に関する。よ
り詳細には、高度に親水化された状態を長期にわたり持
続することのできるプラスチックの製造方法および親水
処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】プラスチックフィルム表面に親水性を与
える方法は、大きく分けて湿式による方法と乾式による
方法に分けることができる。
【0003】乾式による方法では、代表的なものでコロ
ナ放電処理により親水性を付与することができる。これ
は、高電圧を印加したワイヤーと下地台との間にコロナ
放電を形成させた間を樹脂フィルムを通過させることに
より、プラスチックフィルム表面を親水化させる手法で
ある。このコロナ放電処理を行なうことにより、疎水性
であるために接着性、印刷特性に劣る表面を改善するこ
とができる。
【0004】しかし、一般的なコロナ処理による方法で
は、例えばポリエチレンフィルムの場合、未処理の状態
における水滴接触角が90°であるのに対し、せいぜい
40°程度にまで低下するのみである。また、この親水
性の持続時間は短く、1日もたたないうちにその水に対
する接触角は、70℃以上になってしまうのである。た
だ、この程度の接触角の状態でも、接着特性および印刷
特性の向上は図られている。
【0005】また、低圧水銀ランプにより発生した紫外
線を用いて形成したオゾン照射により親水処理する方法
もあるが、その親水化の程度は限られている。例えばポ
リエチレンフィルムの場合、10分ほどのオゾン暴露を
行なっても、水に対する接触角は70°程度にしかなら
ず、十分な親水性が与えられるとは言い難い。
【0006】一方で、フィルム同士の接着を行なう場合
にはその表面の親水性は重要な課題であり、実際にはプ
ライマー処理を行なって親水性を確保した後に接着剤を
用いるなどの工夫がなされているのが実情である。ま
た、印刷特性の更なる向上のためには、アクリル系の樹
脂コーティングを施すことが通常行なわれている操作で
ある。
【0007】これらの事情に鑑み、プラスチックフィル
ムの表面処理による親水性の向上には様々な努力がなさ
れてきた。
【0008】例えば、特開2000−143850号公
報においては、弗素系樹脂の表面粗さを増大させること
により、親水性を向上させる方法を開示している。この
方法は、プラズマエッチング、イオンビームエッチン
グ、コロナ処理、火炎処理、表面研磨などの手法にて、
表面粗さを0.1μm以上とするとともに、その表面上
にプラズマ重合、イオンビーム蒸着、スパッター蒸着、
熱蒸着、化学蒸着、プラズマ増強化学蒸着方法などを用
いて、24時間後の水に対する接触角を20°以下にす
ることができるとしている。
【0009】また、特開平1−161026号公報で
は、アミド基を含んでいるプラズマ重合膜および炭素数
4までのアルカン、アルケン、アルキレン化合物を少な
くとも一つ以上含むガスを用いて親水化することを試み
ている。ここでは、プラズマ処理直後は水に対する接触
角は10°以下であるが、その後については記載がな
く、長期の親水性を維持するまでに至らなかったものと
推定される。
【0010】特開平8−188658号公報において
は、基材上に優れた親水性を付与するとともに、その親
水性を長期間にわたり維持可能な表面処理方法と記載さ
れているが、現実には例えばポリエチレンテルフタレー
トの場合においても、処理直後で水に対する接触角が3
7°、7日後において43°であり、高度に親水化され
た状態であるとは言いがたい。
【0011】このように、表面処理は簡便な方法である
が故に、多くの試みがなされているものの、プラスチッ
ク表面の接触角が10°以下に保たれるような高度に親
水化された状態を長期にわたり持続するような方法はい
まだ開発されていないのが実情である。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、フィ
ルム等のプラスティックの表面を高度に親水化でき、か
つそれを長期間維持できる親水処理方法を提供すること
であり、また、親水性に優れる表面を有するプラスチッ
クの製造方法を提供することである。
【0013】より詳しくは、ポリエチレンテレフタレー
トやナイロンのような汎用のプラスチックに対し、プラ
ズマ処理を用いた簡便な方法によって、水に対する接触
角が10°以下の高度な親水性を付与するとともに、与
えた親水性を長期にわたり持続できる親水処理方法、ま
たこのように親水性に優れるプラスチックの製造方法を
提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明により、プラスチ
ックの表面の親水性を向上させるプラスチック親水処理
方法において、酸素ガスを用いて形成した電子密度が5
×1010cm-3以上1×1011cm-3以下の範囲でかつ
電子温度が5eV以下であるプラズマに、プラスチック
を曝すことを特徴とするプラスチック親水処理方法が提
供される。
【0015】この方法において、前記プラズマを、真空
チャンバーの構成要素である石英板の外側に配されたコ
イルに高周波電流を印加することによりプラズマを形成
する誘導結合型プラズマ装置によって発生させることが
好ましい。
【0016】また本発明によれば、真空チャンバーの構
成要素である石英板の外側に配されたコイルに高周波電
流を印加することによりプラズマを形成する誘導結合型
プラズマ装置により、酸素ガスを用いて、電子密度が5
×1010cm-3以上1×10 11cm-3以下の範囲でかつ
電子温度が5eV以下であるプラズマを形成し、該プラ
ズマ中にプラスチックを曝すことにより、水に対する接
触角が10°以下である表面を有するプラスチックを形
成することを特徴とする親水性プラスチック製造方法が
提供される。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明によって、プラスチックフ
ィルムを好適に親水処理することができ、また優れた親
水性プラスチックフィルムを製造できるが、本発明を適
用可能なプラスチックの形態としては、フィルムの他
に、繊維、不織布、シート、板、固体等、様々な形態を
挙げることができる。また、これらの表面全体を親水処
理する形態でも、表面の一部を親水処理する形態でもよ
い。例えば、フィルムの一部分を適宜マスキングし、プ
ラズマに露出した部分だけを選択的に親水処理すること
も容易に行いうる。
【0018】電子温度及び電子密度は、トリプルプロー
ブで測定できるが、電子温度の測定においてはマックス
ウェル(Maxwell)分布を仮定する。
【0019】ガラス転移温度は、示差熱天秤(DTA)
によって測定できる。
【0020】本発明を実施するために好適な誘導結合型
プラズマ装置の一例についてその概略図を図1に示し
た。ここではプラスチックがフィルムである例について
述べる。
【0021】本発明においては、酸素ガスを用いたプラ
ズマ発生のために、真空チャンバーの構成要素である石
英板(3)の外側に配されたコイル(2)に高周波電流
を印加することによりプラズマを形成する誘導結合型プ
ラズマ装置を用いることが好ましい。誘導結合型プラズ
マ装置を用いることにより、従来の容量結合型プラズマ
装置を用いた場合に比較して、高い電子密度を容易に得
ることができるためである。酸素ガスを用いた場合に
は、酸素分子および原子状酸素が電子を付着しやすい分
子および原子であり、負イオン化しやすい性質を有して
いる。そのために、負イオンが形成された分だけ電子が
消失するので、アルゴンなどのような原子分子に比較し
てプラズマの電子密度は上がりにくい傾向にある。しか
し、それでも5×1010cm-3以上の電子密度を得るこ
とは誘導結合型プラズマ装置によれば比較的容易であ
る。外側に配されたコイル(2)は、一巻きのコイルを
用いることが標準的である。ただしチャンバーの直径が
20cmを超える場合などには、複数の巻き数のコイル
を用いることも可能であり、適宜、決定することが可能
である。
【0022】図1に示した誘導結合型プラズマ装置にお
いて、基材(8)となるプラスチックフィルムはアース
接続された基材設置台(4)上に設置される。基材に印
加する直流、交流の電圧は100V以下が好ましく、電
圧を印加しないことがより好ましい。電圧を基材に印加
すると、プラズマ中に発生したイオンがプラスチック表
面に衝突し、その結果プラスチックの構成分子の結合が
切断される場合があるが、上記範囲に印加電圧を抑える
ことにより、このような切断を防止することができるか
らである。
【0023】図2は、図1に示す石英板の外側に配され
たコイルの一巻きの場合について図示したものである。
コイルは、一巻きの場合であり、図示したコイルの両端
に高周波電流を流すための端子が接続される。図2には
コイル面を上から見た図(a)とともに、縦断面Aで見
た図(b)と、横断面Bで見た図(c)を示した。
【0024】本発明に用いるプラズマは、5×1010
-3以上1×1011cm-3以下の範囲にある高い電子密
度を有しているため、表面処理において高い効果をもた
らすことができるのである。
【0025】本発明によれば、水に対する接触角が10
°以下という高度な親水性をプラスチック表面に与える
とともに、与えた親水性能を長期にわたり持続すること
ができる。高分子表面への親水性付与は、従来から行な
われているものの、これまで10°以下という高度な親
水性を長期にわたり持続することができなかった理由
は、親水基によって修飾された高分子鎖がそれ自身の高
い表面エネルギーによって、エネルギーの偏りを生じて
しまっていることに原因がある。エネルギーに偏りが生
じている場合には、周囲へのエネルギーの散逸を行なう
ことにより系自体の安定化を図るというエントロピー増
大の方向で向かう動きにそって、結果的に親水基の修飾
された高分子鎖の内部へのもぐり込み運動が生じること
になるのである。結果的に、表面親水基が内部へともぐ
りこむことによって、親水性が消失してしまうのであ
る。
【0026】この高分子鎖の動きを止めるには、内部に
存在する高分子鎖にも多くの親水基を修飾することによ
り、内部もエネルギーの高い状態にすることにより、結
果的にエネルギーの散逸に伴う動きを抑制することにな
り、表面の親水性を維持することが可能となるのであ
る。
【0027】このような高いエネルギー状態を内部にま
で作り込むためには、多くの酸素ラジカルを表面から拡
散により供給するという手段により達成することができ
る。このために、できるだけ高い電子密度が必要にな
る。
【0028】一方で、高分子鎖に対する反応は、表面の
C−H結合からの水素の引き抜き反応にとどめる必要が
ある。そのためには、反応性には富むがC−C結合の切
断までを起こしかねない高エネルギー成分の供給はでき
るだけ抑えたい。そのためには、電子温度を低くするこ
とにより、低いエネルギーを有する分子状の酸素ラジカ
ルを多く形成することが可能になる。
【0029】5×1010cm-3以上1×1011cm-3
下の範囲にある高い電子密度を有するとともに、電子温
度を5eV以下に保つことにより、高分子鎖自体の切断
にまでは至らないが高分子鎖に親水基にて修飾すること
ができる程度の親水性を付与することが可能となるとと
もに、内部の高分子鎖に対しても拡散により親水基の修
飾を行なわしめることが可能となり、結果として高度な
親水性を長期にわたり維持し続けることが可能となる。
【0030】また電子温度は0.5eV以上とすること
が好ましい。これによりプラズマ中において酸素分子を
容易に励起活性化することができるからである。
【0031】ただし、多量の酸素ラジカルの供給ととも
に電子の供給も行なわれるために、熱的な影響も無視で
きないものとなる。結果的に、耐熱温度の低いプラスチ
ックの場合には高分子鎖の切断とともにプラスチックの
収縮が発生し、表面近くの高分子の構造変化が生じるこ
とがある。その結果、親水基の修飾を受けた高分子鎖も
内部へのもぐり込みにより、表面での親水性が失われる
こともある。
【0032】従って、本発明にあるような条件でのプラ
ズマ処理での親水化処理を行なうためのプラスチックに
は好ましい条件が存在する。本発明者らは、その条件が
ガラス転移温度によって規定できることを見出した。
【0033】すなわち、本発明における5×1010cm
-3以上1×1011cm-3以下の範囲にある高い電子密度
を有するとともに、電子温度5eV以下の条件でのプラ
ズマにて親水化可能なプラスチックとしては、ガラス転
移温度Tgが20℃以上のものが好ましい。ガラス転移
温度が20℃以上のものは一般に耐熱性であり、例えば
ポリn−ブチルメタクリレートはガラス転移温度は22
℃と低いものの融点は222℃であり、耐熱性である。
【0034】また、プラスチックは分子量1000以下
の低分子炭素分子の連続体からなるものであって、分子
量が10000以上のものが好ましい。
【0035】本発明に用いることのできるプラスチック
の材質として、具体的には、ナイロン−6(Tg=50
℃)、ナイロン−66(Tg=50℃)、ナイロン−1
1(Tg=46℃)、ナイロン−610(Tg=40
℃)、ポリエチレンテレフタレート(Tg=69℃)、
ポリブチレンテレフタレート(Tg=22℃)、ポリエ
ーテルエーテルケトン(Tg=143℃)、ポリαメチ
ルスチレン(Tg=175℃)、ポリカーボネート(T
g=150℃)、ポリメタクリルニトリル(Tg=12
0℃)、ポリアクリル酸(Tg=106℃)、ポリメチ
ルメタクリレート(Tg=105℃)、ポリアクリルニ
トリル(Tg=104℃)、ポリスチレン(Tg=10
0℃)、ポリ塩化ビニル(Tg=83℃)、ポリエチル
メタクリレート(Tg=65℃)、ポリ塩化ビニル(T
g=83℃)、ポリ酢酸ビニル(Tg=29℃)、ポリ
n−ブチルメタクリレート(Tg=22℃)、ポリ乳酸
(Tg=59℃)等がある。
【0036】ガラス転移温度が20℃よりも低いポリエ
チレンやポリプロピレンは、本発明のプラズマ条件によ
ってプラスチック自身の収縮が生じやすく、本発明によ
る高度な親水化とその持続を行なわしめることが困難で
ある。
【0037】高度に親水性であることの目安として、水
に対する接触角が10°以下であることを挙げることが
できるが、これはこのような範囲の接触角であれば表面
に堆積した汚れが降雨等によってきれいにされるセルフ
クリーニングが十分に起きること、また表面付着水の凝
縮によって発生する曇りを防止できることによる。本発
明によれば、このように高度に親水性である状態を持続
させることができる。
【0038】
【実施例】〔実施例1〕図1に示した構成の、直径12
cmの1ターンコイル(2)を備えた誘導結合型プラズ
マ装置にて、5cm角に切りそろえた東洋紡製のポリエ
ステルフィルム(A−4100フィルム、厚み50μ
m)を基材フィルム8として設置した。この誘導結合型
プラズマは、直径30cmのステンレス鋼製チャンバー
(1)の上部に直径20cmの石英板(3)を設け、そ
の上に水冷式の1ターンコイルを設置したものである。
このコイルには、2kWまでの高周波電力を投入できる
高周波印加電源(5)が接続される。
【0039】基材フィルムは、チャンバーの中に石英板
と平行に設置した台の上に、その4隅をポリイミド製の
粘着テープで張り付けることにより設置した。基材フィ
ルムの設置箇所は、石英板から120mmの位置に固定
したものである。
【0040】真空排気口(7)に接続された不図示の真
空ポンプにより、チャンバー内の圧力を1.3×10-3
Pa以下にまで真空引きした後、ガス供給口(6)から
酸素ガスを100sccm(20℃、0.101MPa
基準のcc/分)供給してチャンバー内の圧力を15P
aになるようにした。この状態で、高周波電力500W
を1ターンコイルに印加して、1分間のプラズマ処理を
行なった。
【0041】プラズマ処理後、基材フィルムを取り出し
て、その水に対する接触角を接触角計(CA−X型、協
和界面科学株式会社製)を用いて測定したところ、4°
であった。さらに、15日間、大気中に室温状態で放置
し、再度水に対する接触角を測定したところ、4°であ
った。このデータを図3に示す。本図において横軸は親
水処理直前をゼロとする時間軸(放置日数)である。な
お、水に対する接触角は、0.9マイクロリットルの水
滴を水平状態にあるプラスチック表面にたらしたものに
ついて5回測定し、5点の測定値のうち、最大および最
小を除いた3点の平均値として求めた。
【0042】以上のように本発明によって行なわれたプ
ラズマ処理によって、水に対する接触角10°以下を長
期にわたり持続できることを実証した。
【0043】〔実施例2〕実施例1において用いた装置
を用い、実施例と同じ条件で酸素ガスを用いてプラズマ
を発生させ、その状態での電子密度と電子温度を測定し
た。電子温度、電子密度ともに、ニチメン電子工研製の
トリプルプローブを用いて測定した。
【0044】石英板から120mm離れた位置における
中心における電子密度は、8×10 10cm-3であり、電
子温度は3.2eVであった。さらに、トリプルプロー
ブの先端をずらし、中心から5cm水平方向に離れた位
置における電子密度を測定したところ、6×1010cm
-3でああり、電子温度は2.8eVであった。
【0045】さらに、石英板近くの電子密度と電子温度
を測定した。石英板の中心付近でかつ直下8.5cmに
おける位置での電子密度と電子温度はそれぞれ、9×1
10cm-3であり、電子温度は4.9eVであった。さ
らに、トリプルプローブをずらし、中心から5cm離れ
た位置での電子温度を測定したところ、電子密度と電子
温度はそれぞれ、7×1010cm-3であり、電子温度は
4.0eVであった。
【0046】この結果より、水に対する接触角を10°
以下とする高度な親水性を与えることのできるプラズマ
の電子密度は5×1010cm-3から1×1011cm-3
範囲に存在し、電子温度は5eV以下であることが分か
った。
【0047】〔比較例1〕実施例1において用いたポリ
エステルフィルムの代わりに、ガラス転移温度が−20
℃であるポリプロピレンフィルムを、実施例1と同じよ
うに誘導結合型プラズマ装置に設置し、実施例と同じ
く、高周波の放電電力を500Wとし、処理時間を1分
として処理を行なった後にその親水性を評価した。処理
終了後に取り出したフィルムは、若干の収縮をみせてい
た。そのため、水に対する接触角を正確に測定すること
は困難であったが、水滴をたらしたところ、基材フィル
ムと同じように、水滴がフィルム上で玉状になり、親水
化されていないことは明白であった。
【0048】〔比較例2〕高周波の投入電力を200W
とした以外は実施例1と同様にして、ポリエステルフィ
ルムの親水処理の検討を行なった。処理後の水に対する
接触角を測定したところ、30°であった。親水化は図
られているものの、高度な親水化にはほど遠い状態であ
った。
【0049】さらに、この状態のプラズマの電子密度を
測定すると、中心部分において電子密度は5×109
-3であり、電子温度は4.0eVであった。電子密度
が低い状態であったために、十分な親水性が付与できな
かったと考えられる。なお、中心部分はチャンバーの石
英板の中央点を基準として鉛直方向の直線を中心線とし
た位置での中心線に沿った部分である。
【0050】
【発明の効果】本発明により、セルフクリーニングおよ
び防曇効果を有する等、優れた特性の得られる高度な親
水性の状態を長期にわたり持続できるプラスチック親水
処理方法が提供され、またこのように優れた親水性プラ
スチックの製造方法が提供され、様々な分野での用途展
開を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施するに好適に用いられる誘導結合
型プラズマ装置の一例を示す模式図である。
【図2】図1に示す誘導結合型プラズマ装置の石英板の
外側に配されたコイル部分(一巻きの場合)を示す模式
図である。
【図3】実施例1において得られたポリエステルフィル
ムの親水性の経時変化を示すグラフである。
【符号の説明】
1…チャンバー本体 2…ターンコイル 3…石英板 4…基材設置台 5…高周波印加電源 6…ガス供給口 7…真空排気口 8…基材(プラスチックフィルム)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4F073 AA01 BA13 BA17 BA18 BA19 BA23 BA24 BA26 BA27 BA29 BB01 BB02 BB08 CA01 CA04 CA07 CA62 HA03

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 プラスチックの表面の親水性を向上させ
    るプラスチック親水処理方法において、 酸素ガスを用いて形成した電子密度が5×1010cm-3
    以上1×1011cm-3以下の範囲でかつ電子温度が5e
    V以下であるプラズマに、プラスチックを曝すことを特
    徴とするプラスチック親水処理方法。
  2. 【請求項2】 前記プラズマを、真空チャンバーの構成
    要素である石英板の外側に配されたコイルに高周波電流
    を印加することによりプラズマを形成する誘導結合型プ
    ラズマ装置によって発生させる請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 真空チャンバーの構成要素である石英板
    の外側に配されたコイルに高周波電流を印加することに
    よりプラズマを形成する誘導結合型プラズマ装置によ
    り、酸素ガスを用いて、電子密度が5×1010cm-3
    上1×1011cm-3以下の範囲でかつ電子温度が5eV
    以下であるプラズマを形成し、該プラズマ中にプラスチ
    ックを曝すことにより、水に対する接触角が10°以下
    である表面を有するプラスチックを形成することを特徴
    とする親水性プラスチック製造方法。
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