JPH05230249A - 基材の表面処理方法 - Google Patents
基材の表面処理方法Info
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- JPH05230249A JPH05230249A JP31522591A JP31522591A JPH05230249A JP H05230249 A JPH05230249 A JP H05230249A JP 31522591 A JP31522591 A JP 31522591A JP 31522591 A JP31522591 A JP 31522591A JP H05230249 A JPH05230249 A JP H05230249A
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- JP
- Japan
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- thin film
- substrate
- inorganic oxide
- hydrophilicity
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- Coating Of Shaped Articles Made Of Macromolecular Substances (AREA)
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 基材本来の特性を実質的に損なず且つ所要の
親水性を有するとともに耐久性にも優れた親水性薄膜を
形成する新規な表面処理方法を提供する。 【構成】 表面温度が150°C以下に保持された基材
表面に、純度99.99%以上の無機酸化物からなる蒸
発源またはターゲットを用いて膜厚100Å以下の無機
酸化物薄膜を形成することにより、親水性並びに耐久性
に優れた薄膜を形成する。
親水性を有するとともに耐久性にも優れた親水性薄膜を
形成する新規な表面処理方法を提供する。 【構成】 表面温度が150°C以下に保持された基材
表面に、純度99.99%以上の無機酸化物からなる蒸
発源またはターゲットを用いて膜厚100Å以下の無機
酸化物薄膜を形成することにより、親水性並びに耐久性
に優れた薄膜を形成する。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、親水性があり且つ耐久
性にも優れた無機酸化物薄膜を基材表面に形成する方法
に関するものである。
性にも優れた無機酸化物薄膜を基材表面に形成する方法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、基材の表面改質には物理的、電気
的、化学的、機械的等のすべてにわたる数多くの技術が
採用されており、また基材材料や薄膜材料についても、
低分子および高分子、また天然および合成を含む有機物
質、無機物質、金属あるいはそれらの混合物等、夥しい
数にのぼっている。そのうち、基材に親水性を付与する
表面改質は、接着性、印刷性、染色性、帯電防止性、防
曇性、揆油性、耐汚染性、さらには生体適合性あるいは
生体親和性を改良する技術として、広く採用されてお
り、そのための技術手段は(イ)親水性材料による被
覆、塗装、積層等による処理、(ロ)酸化剤、火炎等に
よる酸化や化学反応による親水性官能基の導入、(ハ)
親水性モノマーによるグラフト重合、(ニ)反応性雰囲
気下での放電等によるプラズマ処理、(ホ)真空蒸着、
スパッタリング、イオンプレーティング等による親水性
薄膜形成のように多岐にわたっている。しかしながら、
上記(イ)では、基材表面と親水性材料との間の結合が
弱く、両者間の界面で分離し易いばかりか、基材本来の
特性を損なわない厚さ(例えば100Å以下)の薄膜を
形成することが実際的には不可能である。上記(ロ)は
クロム酸等の酸化剤、空気中の酸素等による酸化処理、
あるいは化学反応によってカルボキシル基等の親水性官
能基を導入するものであるが、処理可能な基材または基
材と反応試剤との組合せに制限があるのみならず、効果
も一時的であって、例えば空気中にしばらく放置しただ
けで処理効果が損なわれるという欠点がある。上記
(ハ)はアクリル酸、アクリルアミド等の親水性モノマ
ーをグラフト重合するものであるが、グラフト重合層が
柔らかいため、例えば洗浄を繰り返すことにより親水性
被覆膜が次第に摩耗するなど、耐久性に欠点がある。上
記(ニ)は酸素、窒素等の非重合性ガス雰囲気下でプラ
ズマにより処理して親水性官能基を導入したり、あるい
は含硫黄、含酸素、含窒素等の官能基を有する親水性プ
ラズマ重合膜を形成するものであるが、これらも、上記
(ロ)と同様空気中で放置するだけで親水性が低下した
り、あるいは基材とプラズマ重合膜との間の付着性が十
分でないなど、耐久性に問題がある。また上記(ホ)は
無機酸化物、金属、場合により有機物等を蒸発源あるい
はターゲットとしてそれらの薄膜を基材表面に形成する
ものであり、特に無機酸化物の場合は薄膜の硬度が大き
く耐擦傷性、耐摩耗性等にも優れているが、基材との接
着性あるいは付着性が十分でないため繰り返し使用して
いる間に基材から剥離してしまうなどの欠点がある。さ
らに従来のプラズマ重合膜や無機酸化物薄膜等を形成す
る表面改質技術では膜厚が一般に数百Å以上と厚く、基
材本来の特性(例えば酸素透過性)を実質的に保持して
いるとは言えないものである。即ち、これら従来の表面
改質技術はいずれも、基材本来の特性と所要の親水性を
保持しながら耐久性にも優れた親水性層を形成するとい
う観点では十分なものとはいえなかったのである。
的、化学的、機械的等のすべてにわたる数多くの技術が
採用されており、また基材材料や薄膜材料についても、
低分子および高分子、また天然および合成を含む有機物
質、無機物質、金属あるいはそれらの混合物等、夥しい
数にのぼっている。そのうち、基材に親水性を付与する
表面改質は、接着性、印刷性、染色性、帯電防止性、防
曇性、揆油性、耐汚染性、さらには生体適合性あるいは
生体親和性を改良する技術として、広く採用されてお
り、そのための技術手段は(イ)親水性材料による被
覆、塗装、積層等による処理、(ロ)酸化剤、火炎等に
よる酸化や化学反応による親水性官能基の導入、(ハ)
親水性モノマーによるグラフト重合、(ニ)反応性雰囲
気下での放電等によるプラズマ処理、(ホ)真空蒸着、
スパッタリング、イオンプレーティング等による親水性
薄膜形成のように多岐にわたっている。しかしながら、
上記(イ)では、基材表面と親水性材料との間の結合が
弱く、両者間の界面で分離し易いばかりか、基材本来の
特性を損なわない厚さ(例えば100Å以下)の薄膜を
形成することが実際的には不可能である。上記(ロ)は
クロム酸等の酸化剤、空気中の酸素等による酸化処理、
あるいは化学反応によってカルボキシル基等の親水性官
能基を導入するものであるが、処理可能な基材または基
材と反応試剤との組合せに制限があるのみならず、効果
も一時的であって、例えば空気中にしばらく放置しただ
けで処理効果が損なわれるという欠点がある。上記
(ハ)はアクリル酸、アクリルアミド等の親水性モノマ
ーをグラフト重合するものであるが、グラフト重合層が
柔らかいため、例えば洗浄を繰り返すことにより親水性
被覆膜が次第に摩耗するなど、耐久性に欠点がある。上
記(ニ)は酸素、窒素等の非重合性ガス雰囲気下でプラ
ズマにより処理して親水性官能基を導入したり、あるい
は含硫黄、含酸素、含窒素等の官能基を有する親水性プ
ラズマ重合膜を形成するものであるが、これらも、上記
(ロ)と同様空気中で放置するだけで親水性が低下した
り、あるいは基材とプラズマ重合膜との間の付着性が十
分でないなど、耐久性に問題がある。また上記(ホ)は
無機酸化物、金属、場合により有機物等を蒸発源あるい
はターゲットとしてそれらの薄膜を基材表面に形成する
ものであり、特に無機酸化物の場合は薄膜の硬度が大き
く耐擦傷性、耐摩耗性等にも優れているが、基材との接
着性あるいは付着性が十分でないため繰り返し使用して
いる間に基材から剥離してしまうなどの欠点がある。さ
らに従来のプラズマ重合膜や無機酸化物薄膜等を形成す
る表面改質技術では膜厚が一般に数百Å以上と厚く、基
材本来の特性(例えば酸素透過性)を実質的に保持して
いるとは言えないものである。即ち、これら従来の表面
改質技術はいずれも、基材本来の特性と所要の親水性を
保持しながら耐久性にも優れた親水性層を形成するとい
う観点では十分なものとはいえなかったのである。
【0003】一方従来においても、基材表面にプラズマ
重合膜や無機酸化物薄膜等の膜厚を100Åあるいはそ
れ以下とする例(特開昭56−147829号公報、特
公昭56−40325号公報)が見られる。しかしなが
ら特開昭56−147829号公報の発明は基材表面に
有機プラズマ重合層を形成したのち、プラズマ重合条件
を維持しつつ有機ー無機複合膜をスパッタリング等によ
り形成するものであって、必ずしも基材に親水性層を形
成できるものではなく、また特公昭56−40325号
公報の発明はポリシロキサンレンズを膜厚100〜80
00Åのガラスで被覆するものであるが、その100Å
の膜厚の場合でも処理後の酸素透過性が処理前に比べて
約85%以下であって、酸素透過性の観点から見ても基
材本来の特性を十分保持しているとはいえないものであ
る。しかもこれらの発明では、親水性薄膜の耐久性と膜
厚との関係等についてはとくに検討されておらず、基材
本来の特性、親水性並びに耐久性を総合的にみた前記問
題点を解決するに至ってはいない。
重合膜や無機酸化物薄膜等の膜厚を100Åあるいはそ
れ以下とする例(特開昭56−147829号公報、特
公昭56−40325号公報)が見られる。しかしなが
ら特開昭56−147829号公報の発明は基材表面に
有機プラズマ重合層を形成したのち、プラズマ重合条件
を維持しつつ有機ー無機複合膜をスパッタリング等によ
り形成するものであって、必ずしも基材に親水性層を形
成できるものではなく、また特公昭56−40325号
公報の発明はポリシロキサンレンズを膜厚100〜80
00Åのガラスで被覆するものであるが、その100Å
の膜厚の場合でも処理後の酸素透過性が処理前に比べて
約85%以下であって、酸素透過性の観点から見ても基
材本来の特性を十分保持しているとはいえないものであ
る。しかもこれらの発明では、親水性薄膜の耐久性と膜
厚との関係等についてはとくに検討されておらず、基材
本来の特性、親水性並びに耐久性を総合的にみた前記問
題点を解決するに至ってはいない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】したがって本発明が解
決しようとする課題は、基材本来の特性を実質的に損な
わず且つ所要の親水性を有するとともに耐久性にも優れ
た親水性薄膜を形成する新規な表面処理方法を提供する
ことにある。
決しようとする課題は、基材本来の特性を実質的に損な
わず且つ所要の親水性を有するとともに耐久性にも優れ
た親水性薄膜を形成する新規な表面処理方法を提供する
ことにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
に基づき、とくに材質的に耐擦傷性、耐摩耗性等が良好
な無機酸化物について、所要の親水性を有するとともに
基材との接着性、付着性等を含めた耐久性に優れた薄膜
を形成でき、且つ基材本来の特性も実質的に保持できる
方法について鋭意研究した結果、蒸発源またはターゲッ
トとなる無機酸化物の純度と薄膜の膜厚との間に密接な
関係があることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、表面温度が150°C以下に保持された
基材表面に、純度99.99%以上の無機酸化物からな
る蒸発源またはターゲットを用いて膜厚100Å以下の
無機酸化物薄膜を形成することを特徴とするものであ
る。
に基づき、とくに材質的に耐擦傷性、耐摩耗性等が良好
な無機酸化物について、所要の親水性を有するとともに
基材との接着性、付着性等を含めた耐久性に優れた薄膜
を形成でき、且つ基材本来の特性も実質的に保持できる
方法について鋭意研究した結果、蒸発源またはターゲッ
トとなる無機酸化物の純度と薄膜の膜厚との間に密接な
関係があることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、表面温度が150°C以下に保持された
基材表面に、純度99.99%以上の無機酸化物からな
る蒸発源またはターゲットを用いて膜厚100Å以下の
無機酸化物薄膜を形成することを特徴とするものであ
る。
【0006】以下本発明について、具体的に説明する。
本発明において薄膜形成の蒸発源またはターゲットとし
て使用される無機酸化物は、処理生成物の機能、特性、
用途等に応じて種々選択できるが、一般に周期律表II
I〜VIII族元素の酸化物が使用される。好ましい無
機酸化物は周期律表III〜VI族元素の酸化物であ
り、その例としては酸化アルミニウム、酸化ガリウム、
酸化インジウム、酸化珪素、酸化ゲルマニウム、酸化
錫、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、
酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化モリブデン、酸化タン
グステン等が挙げられ、とくに酸化珪素、酸化アルミニ
ウム等が好ましい。上記無機酸化物は純度が99.99
%以上であることが必要である。純度が99.99%未
満では、膜厚100Å以下の薄膜を形成したときに十分
な親水性を得ることができず、また空気中に放置したり
繰り返し使用する際の薄膜の耐久性が不十分となる。
本発明において薄膜形成の蒸発源またはターゲットとし
て使用される無機酸化物は、処理生成物の機能、特性、
用途等に応じて種々選択できるが、一般に周期律表II
I〜VIII族元素の酸化物が使用される。好ましい無
機酸化物は周期律表III〜VI族元素の酸化物であ
り、その例としては酸化アルミニウム、酸化ガリウム、
酸化インジウム、酸化珪素、酸化ゲルマニウム、酸化
錫、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、
酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化モリブデン、酸化タン
グステン等が挙げられ、とくに酸化珪素、酸化アルミニ
ウム等が好ましい。上記無機酸化物は純度が99.99
%以上であることが必要である。純度が99.99%未
満では、膜厚100Å以下の薄膜を形成したときに十分
な親水性を得ることができず、また空気中に放置したり
繰り返し使用する際の薄膜の耐久性が不十分となる。
【0007】本発明において無機酸化物の純度が生成薄
膜の親水性および耐久性に影響を及ぼすメカニズムは必
ずしも明確ではないが、膜厚100Å以下という極めて
薄い薄膜では少量でも含まれる不純物あるいは異物の影
響が無視できず、不純物等の存在が薄膜に部分的な組成
の不均質をもたらし、このことが薄膜の親水性の低下、
耐久性の劣化を招くことになるものと考えられる。この
ように本発明においては、無機酸化物の純度はできるだ
け高い方が好ましい。現実に無機酸化物を入手する観点
からみると自ずとその純度には限度があるが、純度9
9.99%以上の無機酸化物は既に市販されている。と
ころで、純度が99.99%程度の無機酸化物を使用し
て基材表面に薄膜を形成すること自体は全く新しいこと
ではなく、例えば特開昭60−210641号公報に純
度99.99%の酸化珪素を用いた例が示されている。
しかしながら、該公報の発明は同時にアンモニア、水
素、酸素等の反応性物質を添加するものであって、本発
明のように高純度無機酸化物そのものから薄膜を形成す
るものではなく、また薄膜の膜厚についても単に100
0Åとする実施例が示されているだけであり、しかも薄
膜の親水性および耐久性の総合特性と酸化珪素の純度、
膜厚等との関連については全く言及されておらず、該公
報の発明は、前述した薄膜の親水性、耐久性並びに基材
本来の特性を総合的に捉えた本発明の課題を何ら開示あ
るいは示唆していないばかりか、以下に詳述する本発明
の効果についても全く教示するものではない。
膜の親水性および耐久性に影響を及ぼすメカニズムは必
ずしも明確ではないが、膜厚100Å以下という極めて
薄い薄膜では少量でも含まれる不純物あるいは異物の影
響が無視できず、不純物等の存在が薄膜に部分的な組成
の不均質をもたらし、このことが薄膜の親水性の低下、
耐久性の劣化を招くことになるものと考えられる。この
ように本発明においては、無機酸化物の純度はできるだ
け高い方が好ましい。現実に無機酸化物を入手する観点
からみると自ずとその純度には限度があるが、純度9
9.99%以上の無機酸化物は既に市販されている。と
ころで、純度が99.99%程度の無機酸化物を使用し
て基材表面に薄膜を形成すること自体は全く新しいこと
ではなく、例えば特開昭60−210641号公報に純
度99.99%の酸化珪素を用いた例が示されている。
しかしながら、該公報の発明は同時にアンモニア、水
素、酸素等の反応性物質を添加するものであって、本発
明のように高純度無機酸化物そのものから薄膜を形成す
るものではなく、また薄膜の膜厚についても単に100
0Åとする実施例が示されているだけであり、しかも薄
膜の親水性および耐久性の総合特性と酸化珪素の純度、
膜厚等との関連については全く言及されておらず、該公
報の発明は、前述した薄膜の親水性、耐久性並びに基材
本来の特性を総合的に捉えた本発明の課題を何ら開示あ
るいは示唆していないばかりか、以下に詳述する本発明
の効果についても全く教示するものではない。
【0008】本発明による無機酸化物薄膜の形成は、蒸
発源またはターゲットを使用する通常の薄膜形成法を使
用して行なうことができ、その代表的な例は、真空蒸着
法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等であ
る。真空蒸着法は、真空室内で蒸発源である無機酸化物
を加熱、電子線照射あるいはレーザ照射(連続発振レー
ザまたはパルス発振レーザ)により蒸発させ、この無機
酸化物蒸気を一般に蒸発源と対向配置される基材表面に
凝縮させることにより薄膜を形成するものである。イオ
ンプレーティング法は、アルゴン等の非反応性ガス雰囲
気下にある真空室内で、蒸発源である無機酸化物(陽
極)と基材(陰極)との間に高電圧の直流電界を印加し
て両極間にグロー放電を起こさせ、その状態で無機酸化
物を加熱蒸発させてイオン化させ、電界により加速して
基材表面に打ち込み無機酸化物薄膜を形成するものであ
る。またスパッタリング法は、アルゴン等の非反応性ガ
ス雰囲気下にある真空室内で、ターゲットとなる無機酸
化物と基材との間に高電圧直流電界あるいは高周波電界
を印加することにより、加速された非反応性ガスイオン
により無機酸化物をプラズマ状態に放出させ、基材表面
に凝縮させることにより無機酸化物薄膜を形成するもの
である。このスパッタリング法では、処理雰囲気中に存
在する電子が効率よくターゲットに戻るように、真空室
内に磁場を印加しておくこともできる。これらの方法に
よる薄膜形成においては、基材表面の清浄化等のため、
基材を予めプラズマ放電、スパッターエッチング等で予
備処理をしておくことができる。これらの予備処理は、
薄膜を形成する真空室内で行なうことができ、また当該
真空室とは別の室内で実施することもできる。
発源またはターゲットを使用する通常の薄膜形成法を使
用して行なうことができ、その代表的な例は、真空蒸着
法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等であ
る。真空蒸着法は、真空室内で蒸発源である無機酸化物
を加熱、電子線照射あるいはレーザ照射(連続発振レー
ザまたはパルス発振レーザ)により蒸発させ、この無機
酸化物蒸気を一般に蒸発源と対向配置される基材表面に
凝縮させることにより薄膜を形成するものである。イオ
ンプレーティング法は、アルゴン等の非反応性ガス雰囲
気下にある真空室内で、蒸発源である無機酸化物(陽
極)と基材(陰極)との間に高電圧の直流電界を印加し
て両極間にグロー放電を起こさせ、その状態で無機酸化
物を加熱蒸発させてイオン化させ、電界により加速して
基材表面に打ち込み無機酸化物薄膜を形成するものであ
る。またスパッタリング法は、アルゴン等の非反応性ガ
ス雰囲気下にある真空室内で、ターゲットとなる無機酸
化物と基材との間に高電圧直流電界あるいは高周波電界
を印加することにより、加速された非反応性ガスイオン
により無機酸化物をプラズマ状態に放出させ、基材表面
に凝縮させることにより無機酸化物薄膜を形成するもの
である。このスパッタリング法では、処理雰囲気中に存
在する電子が効率よくターゲットに戻るように、真空室
内に磁場を印加しておくこともできる。これらの方法に
よる薄膜形成においては、基材表面の清浄化等のため、
基材を予めプラズマ放電、スパッターエッチング等で予
備処理をしておくことができる。これらの予備処理は、
薄膜を形成する真空室内で行なうことができ、また当該
真空室とは別の室内で実施することもできる。
【0009】本発明により処理される基材自体は、従来
から薄膜形成に使用されている基材でありとくに限定さ
れないが、フィルム、シート、繊維状物、織物、編み
物、中空体、多孔体(例えばスポンジ)、網体等の形態
をとることができ、あるいはレンズ、プリズム、レコー
ド、細胞培養用シャーレ、各種人工臓器・器官等の特定
成形品であることができる。また基材は、本発明による
処理を受ける表面あるいは他の表面が火炎処理、放電処
理、紫外線照射処理、放射線照射処理、サンドブラスト
処理、溶剤処理、薬品処理、グラフト重合等の他の処理
を受けたものであってもよい。さらに本発明による薄膜
形成処理は、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッ
タリング、気相反応法、プラズマ重合法等により、本発
明の処理条件以外の条件によって予め薄膜が形成された
基材に対しても適用することができるものであり、これ
により、予め形成された薄膜の親水性および耐久性の総
合特性を改善することができる場合がある。上記基材の
材料はとくに制限されないが、親水性薄膜を形成するも
のであることから、基材が疎水性である場合に本発明の
効果が十二分に発揮されると言うことができる。本発明
により処理することができる基材材料の例としては、オ
レフィン系ポリマー(ポリエチレン、ポリプロピレン、
エチレンープロピレン共重合体、エチレンープロピレン
ブロック共重合体等)、スチレン系ポリマー(ポリスチ
レン、耐衝撃性ポリスチレン、ABS樹脂等)、ハロゲ
ン化オレフィン系ポリマー(塩化ビニル、塩化ビニリデ
ン、テトラフルオロエチレン等の重合体または共重合
体)、ビニルアルコール系ポリマー(ポリビニルアルコ
ール、エチレンービニルアルコール共重合体等)、アク
リル系ポリマー(メチルメタクリレート、ヒドロキシア
ルキルメタクレート、フルオロアルキルメタクリレー
ト、シリルアルキルメタクリレート、アクリロニトリル
等の重合体または共重合体)、ジエン系ポリマー(ポリ
ブタジエン、ポリイソプレン、スチレンーブタジエン共
重合体、スチレンーブタジエンブロック共重合体等)、
スチレンーブタジエンブロック共重合体の水素添加物、
ポリアセタール、ポリエーテル(ポリフェニレンエーテ
ル等)、ケトン系ポリマー(ポリエーテルエーテルケト
ン、ポリアリールエーテルケトン、ポリケトンサルファ
イド等)、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエス
テル(ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、
ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロン
46、ナイロン11、ポリパラフェニレンテレフタルア
ミド等)、ポリエステルーアミド、ポリイミド(ポリエ
ーテルイミド、ポリエステルーイミド、ポリアミドーイ
ミド等)、ポリウレタン、ポリサルファイド(ポリフェ
ニレンサルファイド等)、ポリスルホン(ポリエーテル
スルホン、ポリアリールスルホン等)、ポリシロキサン
(ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキ
サン、フルオロアルキルポリシロキサン、シアノアルキ
ル系ポリシロキサン、ジアリールポリシロキサン等)、
ポリフェニレン、ポリキシリレン、天然ゴム、セルロー
ス、絹、羊毛、あるいは上記材料から得られる誘導体、
前記2種以上の材料のポリマーブレンドあるいはポリマ
ーアロイ、液晶材料、有機半導体材料等の有機物質、ガ
ラス、セラミック(Al−O系、Mg−O系、Zr−O
系、Al−Si−O系、Al−Mg−Si−O系、Al
−Ti−O系、Al−N系、Si−C系、Si−N系、
Al−Si−O−N系、Ti−N系、B−N系、Ti−
B系等)、無機半導体材料、石材、金属等の無機物質等
が挙げられる。
から薄膜形成に使用されている基材でありとくに限定さ
れないが、フィルム、シート、繊維状物、織物、編み
物、中空体、多孔体(例えばスポンジ)、網体等の形態
をとることができ、あるいはレンズ、プリズム、レコー
ド、細胞培養用シャーレ、各種人工臓器・器官等の特定
成形品であることができる。また基材は、本発明による
処理を受ける表面あるいは他の表面が火炎処理、放電処
理、紫外線照射処理、放射線照射処理、サンドブラスト
処理、溶剤処理、薬品処理、グラフト重合等の他の処理
を受けたものであってもよい。さらに本発明による薄膜
形成処理は、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッ
タリング、気相反応法、プラズマ重合法等により、本発
明の処理条件以外の条件によって予め薄膜が形成された
基材に対しても適用することができるものであり、これ
により、予め形成された薄膜の親水性および耐久性の総
合特性を改善することができる場合がある。上記基材の
材料はとくに制限されないが、親水性薄膜を形成するも
のであることから、基材が疎水性である場合に本発明の
効果が十二分に発揮されると言うことができる。本発明
により処理することができる基材材料の例としては、オ
レフィン系ポリマー(ポリエチレン、ポリプロピレン、
エチレンープロピレン共重合体、エチレンープロピレン
ブロック共重合体等)、スチレン系ポリマー(ポリスチ
レン、耐衝撃性ポリスチレン、ABS樹脂等)、ハロゲ
ン化オレフィン系ポリマー(塩化ビニル、塩化ビニリデ
ン、テトラフルオロエチレン等の重合体または共重合
体)、ビニルアルコール系ポリマー(ポリビニルアルコ
ール、エチレンービニルアルコール共重合体等)、アク
リル系ポリマー(メチルメタクリレート、ヒドロキシア
ルキルメタクレート、フルオロアルキルメタクリレー
ト、シリルアルキルメタクリレート、アクリロニトリル
等の重合体または共重合体)、ジエン系ポリマー(ポリ
ブタジエン、ポリイソプレン、スチレンーブタジエン共
重合体、スチレンーブタジエンブロック共重合体等)、
スチレンーブタジエンブロック共重合体の水素添加物、
ポリアセタール、ポリエーテル(ポリフェニレンエーテ
ル等)、ケトン系ポリマー(ポリエーテルエーテルケト
ン、ポリアリールエーテルケトン、ポリケトンサルファ
イド等)、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエス
テル(ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、
ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロン
46、ナイロン11、ポリパラフェニレンテレフタルア
ミド等)、ポリエステルーアミド、ポリイミド(ポリエ
ーテルイミド、ポリエステルーイミド、ポリアミドーイ
ミド等)、ポリウレタン、ポリサルファイド(ポリフェ
ニレンサルファイド等)、ポリスルホン(ポリエーテル
スルホン、ポリアリールスルホン等)、ポリシロキサン
(ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキ
サン、フルオロアルキルポリシロキサン、シアノアルキ
ル系ポリシロキサン、ジアリールポリシロキサン等)、
ポリフェニレン、ポリキシリレン、天然ゴム、セルロー
ス、絹、羊毛、あるいは上記材料から得られる誘導体、
前記2種以上の材料のポリマーブレンドあるいはポリマ
ーアロイ、液晶材料、有機半導体材料等の有機物質、ガ
ラス、セラミック(Al−O系、Mg−O系、Zr−O
系、Al−Si−O系、Al−Mg−Si−O系、Al
−Ti−O系、Al−N系、Si−C系、Si−N系、
Al−Si−O−N系、Ti−N系、B−N系、Ti−
B系等)、無機半導体材料、石材、金属等の無機物質等
が挙げられる。
【0010】本発明における薄膜形成はバッチ式、半連
続式あるいは連続式のいずれの方法でも実施することが
できる。バッチ式の真空室は1室あるいは2以上の室か
ら構成することができ、1室の場合必要ならば蒸発源と
基材との間に適当なシャッターを設けて、薄膜形成処理
の予備段階と薄膜形成段階との間を区切ることができ
る。半連続式は一般に基材が薄膜形成領域を移動するも
のであり、この場合の薄膜形成領域は、例えば基材がフ
ィルムの場合送り出し室や巻取り室と同一であっても別
であってもよい。この方法は基材が連続体(フィルム、
織物等)であっても多数の単体(レンズ、板材等の成形
品)であっても適用することができる。連続式は基本的
には蒸着源またはターゲットが位置する薄膜形成領域の
みが真空室となっており、基材の送り出し、巻取り、取
り出し等の付帯設備が真空室外にあるものである。この
連続式は付帯設備が真空室外にあるため、処理を中断し
ないで基材を取り扱える利点があるが、真空室と他の区
域との接続がやや困難である。さらに本発明による処理
は、基材(例えばフィルム、シート、レンズ等)の両面
に対して実施することができるが、一方の表面が親水性
で他方の表面が疎水性であることが望ましい場合は、例
えば疎水性基材の一方の表面に対してのみ本発明による
処理を行なうことができる。
続式あるいは連続式のいずれの方法でも実施することが
できる。バッチ式の真空室は1室あるいは2以上の室か
ら構成することができ、1室の場合必要ならば蒸発源と
基材との間に適当なシャッターを設けて、薄膜形成処理
の予備段階と薄膜形成段階との間を区切ることができ
る。半連続式は一般に基材が薄膜形成領域を移動するも
のであり、この場合の薄膜形成領域は、例えば基材がフ
ィルムの場合送り出し室や巻取り室と同一であっても別
であってもよい。この方法は基材が連続体(フィルム、
織物等)であっても多数の単体(レンズ、板材等の成形
品)であっても適用することができる。連続式は基本的
には蒸着源またはターゲットが位置する薄膜形成領域の
みが真空室となっており、基材の送り出し、巻取り、取
り出し等の付帯設備が真空室外にあるものである。この
連続式は付帯設備が真空室外にあるため、処理を中断し
ないで基材を取り扱える利点があるが、真空室と他の区
域との接続がやや困難である。さらに本発明による処理
は、基材(例えばフィルム、シート、レンズ等)の両面
に対して実施することができるが、一方の表面が親水性
で他方の表面が疎水性であることが望ましい場合は、例
えば疎水性基材の一方の表面に対してのみ本発明による
処理を行なうことができる。
【0011】本発明による薄膜形成処理時の基材温度
は、所要特性を有する薄膜を形成させ、また処理中の基
材の変質を抑えるために、150°C以下に保持される
が、好ましい基材温度は120°C以下、特に好ましく
は100°C以下である。この基材温度は、基材保持部
を冷却する等の方法により制御することができる。
は、所要特性を有する薄膜を形成させ、また処理中の基
材の変質を抑えるために、150°C以下に保持される
が、好ましい基材温度は120°C以下、特に好ましく
は100°C以下である。この基材温度は、基材保持部
を冷却する等の方法により制御することができる。
【0012】本発明において形成される無機酸化物薄膜
の膜厚は、100Å以下でなければならず、好ましくは
90Å以下である。これは、膜厚が100Åを越えると
薄膜の親水性は所要レベルに達するとしても、基材との
付着性が低下して薄膜の耐久性が劣化し、しかも基材本
来の特性、とくに酸素透過性が許容レベル以上に損なわ
れるからである。本発明により高純度無機酸化物から形
成される膜厚100Å以下の薄膜を有する処理生成物に
おいては、少なくとも膜厚が50Å程度以下では薄膜部
分が不連続となり基材表面上に分散して存在すると考え
られる。また、この薄膜部分が不連続に分散して存在す
る状態は、本発明による処理生成物を基材のガラス転移
点(Tg)以上の温度、例えばポリメチルメタクリレー
トの場合には100〜120°C、で10分ないし数1
0時間アニーリング処理を行なうことによって変化させ
ることも可能である。このように薄膜が不連続に存在す
る場合の薄膜面積の非付着表面に対する割合は、概略1
0/90〜90/10がよく、好ましくは30/70〜
70/30である。薄膜部分が10%未満では、表面性
能が未処理の場合とほとんど変わらない結果となり、ま
た、90%を超えると均質膜と同等になる。薄膜部分が
不連続に分散して存在する場合の処理面積に対する無機
酸化物薄膜の重量は、例えば0.13〜2.55μg/
cm2 である。そして膜厚が50Å程度以下では、薄膜
の親水性および耐久性それ自体は比較的厚い(即ち約5
0〜100Å)場合と同様に維持されるのであるが、そ
の薄膜部分が基材表面上で不連続であるという特異な存
在状態に起因して、例えば基材が疎水性である場合、薄
膜の親水性表面と基材の疎水性表面とを併せ持つことと
なり優れた抗血栓性を発揮することができる。即ち、基
材に抗血栓性を付与する一つのアプローチは基材表面に
アルブミン(1種のタンパク質)との親和性を高めるこ
とであるが、基材表面が親水性と疎水性とを併せ持つ場
合にアルブミンの接着性あるいは吸着性が高くなるから
である。そしてこの様な基材は生体適合性にも優れたも
のとなるのである。したがって、本発明により形成され
る親水性薄膜が疎水性基材表面上に不連続に分散して存
在する材料は、細胞培養用器材、人工臓器・器官、外科
・看護用器具等に好適に使用することができる。しかも
このような材料は、今日医用材料として広く使用されて
いる軟質ポリ塩化ビニルが可塑剤を多量に含み、この可
塑剤のブリーディングや溶出が問題となっているのに対
して、基材自体に軟質で可撓性のあるものを選ぶことに
より、可塑剤の溶出等の弊害もなく使用することができ
るものである。また、弗素や珪素を含むポリマーのよう
に疎水性の強い基材から得られる親水性表面と疎水性表
面とを併せ持つ処理生成物では、両表面間の表面エネル
ギーの差を大きくすることができる。以上説明したよう
に、親水性薄膜を基材表面上に不連続に存在させること
ができる点が本発明による重要な効果の一つである。こ
れは、本発明において、99.99%以上の高純度の無
機酸化物を採用し且つ形成される薄膜の膜厚を100Å
以下としたことにより始めて見出されたものである。
の膜厚は、100Å以下でなければならず、好ましくは
90Å以下である。これは、膜厚が100Åを越えると
薄膜の親水性は所要レベルに達するとしても、基材との
付着性が低下して薄膜の耐久性が劣化し、しかも基材本
来の特性、とくに酸素透過性が許容レベル以上に損なわ
れるからである。本発明により高純度無機酸化物から形
成される膜厚100Å以下の薄膜を有する処理生成物に
おいては、少なくとも膜厚が50Å程度以下では薄膜部
分が不連続となり基材表面上に分散して存在すると考え
られる。また、この薄膜部分が不連続に分散して存在す
る状態は、本発明による処理生成物を基材のガラス転移
点(Tg)以上の温度、例えばポリメチルメタクリレー
トの場合には100〜120°C、で10分ないし数1
0時間アニーリング処理を行なうことによって変化させ
ることも可能である。このように薄膜が不連続に存在す
る場合の薄膜面積の非付着表面に対する割合は、概略1
0/90〜90/10がよく、好ましくは30/70〜
70/30である。薄膜部分が10%未満では、表面性
能が未処理の場合とほとんど変わらない結果となり、ま
た、90%を超えると均質膜と同等になる。薄膜部分が
不連続に分散して存在する場合の処理面積に対する無機
酸化物薄膜の重量は、例えば0.13〜2.55μg/
cm2 である。そして膜厚が50Å程度以下では、薄膜
の親水性および耐久性それ自体は比較的厚い(即ち約5
0〜100Å)場合と同様に維持されるのであるが、そ
の薄膜部分が基材表面上で不連続であるという特異な存
在状態に起因して、例えば基材が疎水性である場合、薄
膜の親水性表面と基材の疎水性表面とを併せ持つことと
なり優れた抗血栓性を発揮することができる。即ち、基
材に抗血栓性を付与する一つのアプローチは基材表面に
アルブミン(1種のタンパク質)との親和性を高めるこ
とであるが、基材表面が親水性と疎水性とを併せ持つ場
合にアルブミンの接着性あるいは吸着性が高くなるから
である。そしてこの様な基材は生体適合性にも優れたも
のとなるのである。したがって、本発明により形成され
る親水性薄膜が疎水性基材表面上に不連続に分散して存
在する材料は、細胞培養用器材、人工臓器・器官、外科
・看護用器具等に好適に使用することができる。しかも
このような材料は、今日医用材料として広く使用されて
いる軟質ポリ塩化ビニルが可塑剤を多量に含み、この可
塑剤のブリーディングや溶出が問題となっているのに対
して、基材自体に軟質で可撓性のあるものを選ぶことに
より、可塑剤の溶出等の弊害もなく使用することができ
るものである。また、弗素や珪素を含むポリマーのよう
に疎水性の強い基材から得られる親水性表面と疎水性表
面とを併せ持つ処理生成物では、両表面間の表面エネル
ギーの差を大きくすることができる。以上説明したよう
に、親水性薄膜を基材表面上に不連続に存在させること
ができる点が本発明による重要な効果の一つである。こ
れは、本発明において、99.99%以上の高純度の無
機酸化物を採用し且つ形成される薄膜の膜厚を100Å
以下としたことにより始めて見出されたものである。
【0013】本発明により形成される無機酸化物薄膜の
膜厚の下限には必ずしも臨界的な制約があるわけではな
いが、一般的には抗血栓性や生体適合性は膜厚とともに
連続して変化すると考えることができる。そして膜厚が
極めて薄いと(例えば10Å未満では)、処理条件の制
御・維持が困難となり、また形成される薄膜の性状が再
現性に乏しくなる傾向がある。したがって本発明におい
ては、無機酸化物薄膜の膜厚は約10Å以上とすること
が好ましい。さらに本発明においては、上記したような
無機酸化物薄膜が基材表面上に不連続に存在する処理生
成物は、微細な孔を開けたマスク、ネット等を被処理基
材表面に被せて無機酸化物薄膜を形成することによって
も得られるものである。
膜厚の下限には必ずしも臨界的な制約があるわけではな
いが、一般的には抗血栓性や生体適合性は膜厚とともに
連続して変化すると考えることができる。そして膜厚が
極めて薄いと(例えば10Å未満では)、処理条件の制
御・維持が困難となり、また形成される薄膜の性状が再
現性に乏しくなる傾向がある。したがって本発明におい
ては、無機酸化物薄膜の膜厚は約10Å以上とすること
が好ましい。さらに本発明においては、上記したような
無機酸化物薄膜が基材表面上に不連続に存在する処理生
成物は、微細な孔を開けたマスク、ネット等を被処理基
材表面に被せて無機酸化物薄膜を形成することによって
も得られるものである。
【0014】本発明における膜厚100Å以下の薄膜
は、蒸発源またはターゲットの温度、基材と蒸発源との
間の電圧、処理雰囲気中の無機酸化物の分圧等を制御す
ることにより形成され、一般にこれらの値が小さいほど
薄い薄膜となる。それぞれの適当な条件は相互に関連す
るので一概には言えないが、一般に、真空蒸着法(電子
線照射蒸着の場合)は、通常、加速電圧5〜50KVの
電子ビームを照射し、処理圧力10-6〜10-7Torr
で行なわれる。イオンプレーティング法(高周波励起の
場合)は、通常、13.56MHzの振動電界で処理圧
力10-4Torr程度で行なわれる。スパッタリング法
(高周波励起マグネトロン電極の場合)は、通常、1
3.56MHzの振動電界で処理圧力10-2〜10-3T
orr程度、処理電力10〜400Wで行なわれる。い
ずれの場合も、処理時間は一般的には10〜300秒程
度である。
は、蒸発源またはターゲットの温度、基材と蒸発源との
間の電圧、処理雰囲気中の無機酸化物の分圧等を制御す
ることにより形成され、一般にこれらの値が小さいほど
薄い薄膜となる。それぞれの適当な条件は相互に関連す
るので一概には言えないが、一般に、真空蒸着法(電子
線照射蒸着の場合)は、通常、加速電圧5〜50KVの
電子ビームを照射し、処理圧力10-6〜10-7Torr
で行なわれる。イオンプレーティング法(高周波励起の
場合)は、通常、13.56MHzの振動電界で処理圧
力10-4Torr程度で行なわれる。スパッタリング法
(高周波励起マグネトロン電極の場合)は、通常、1
3.56MHzの振動電界で処理圧力10-2〜10-3T
orr程度、処理電力10〜400Wで行なわれる。い
ずれの場合も、処理時間は一般的には10〜300秒程
度である。
【実施例】つぎに実施例及び比較例により、本発明の具
体的態様並びに効果をさらに説明する。
体的態様並びに効果をさらに説明する。
【0015】実施例1 マグネトロン型低温高速スパッタリング装置の基材ホル
ダー上にトリストリメトキシシリルプロピルメタクリレ
ートとヘキサフルオロイソプロピルメタクリレートとを
主成分とする硬質コンタクトレンズ素材からなる直径1
5mm、厚さ0.5mmの円板試料を取り付け、その表
面に、純度99.99%のSiO2 をターゲットとしア
ルゴンガスを流して、処理電力60W、雰囲気圧力0.
05Torrでスパッタリングを行い、膜厚60ÅのS
iO2 薄膜を形成した。薄膜の膜厚は、基材ホルダーに
試料とともに保持したシリコンウエハー上に形成された
薄膜をエリプソメーターによって測定した値である。親
水性(水の接触角から測定)、耐久性および薄膜の酸素
透過性についての測定結果を表1に示す。就中、耐久性
の測定は(イ)空気中放置テスト、(ロ)スポンジテス
トおよび(ハ)亀裂テストの3点について行なった。
(イ)空気中放置テストでは、1週間、3カ月および6
カ月放置後の水の接触角を測定した。(ロ)スポンジテ
ストでは、その片面を両面接着テープで試料台に固定し
た試料の他方の面を、1Kgの荷重をかけた水を含むコ
ンタクトレンズ洗浄用スポンジで前後に1000回(前
後それぞれを1回にカウント)擦った後の親水性を測定
した。(ハ)亀裂テストでは、試料を折り曲げたときの
薄膜表面の微細な亀裂の発生の有無を実体顕微鏡(倍率
50倍)で調べた。その結果、処理直後の親水性は水の
接触角が22度と良好であった。また、6カ月空気中放
置後並びに通常の使用条件をはるかに越える過酷なスポ
ンジテスト後の水の接触角がそれぞれ29度並びに34
度であり、また折り曲げても亀裂が発生することがな
く、本発明により形成された薄膜が極めて優れた耐久性
を有することが明らかとなった。さらに試料の酸素透過
性は処理直後でも処理前の99%以上を保持しており、
本発明の処理によりほとんど影響を受けなかった。
ダー上にトリストリメトキシシリルプロピルメタクリレ
ートとヘキサフルオロイソプロピルメタクリレートとを
主成分とする硬質コンタクトレンズ素材からなる直径1
5mm、厚さ0.5mmの円板試料を取り付け、その表
面に、純度99.99%のSiO2 をターゲットとしア
ルゴンガスを流して、処理電力60W、雰囲気圧力0.
05Torrでスパッタリングを行い、膜厚60ÅのS
iO2 薄膜を形成した。薄膜の膜厚は、基材ホルダーに
試料とともに保持したシリコンウエハー上に形成された
薄膜をエリプソメーターによって測定した値である。親
水性(水の接触角から測定)、耐久性および薄膜の酸素
透過性についての測定結果を表1に示す。就中、耐久性
の測定は(イ)空気中放置テスト、(ロ)スポンジテス
トおよび(ハ)亀裂テストの3点について行なった。
(イ)空気中放置テストでは、1週間、3カ月および6
カ月放置後の水の接触角を測定した。(ロ)スポンジテ
ストでは、その片面を両面接着テープで試料台に固定し
た試料の他方の面を、1Kgの荷重をかけた水を含むコ
ンタクトレンズ洗浄用スポンジで前後に1000回(前
後それぞれを1回にカウント)擦った後の親水性を測定
した。(ハ)亀裂テストでは、試料を折り曲げたときの
薄膜表面の微細な亀裂の発生の有無を実体顕微鏡(倍率
50倍)で調べた。その結果、処理直後の親水性は水の
接触角が22度と良好であった。また、6カ月空気中放
置後並びに通常の使用条件をはるかに越える過酷なスポ
ンジテスト後の水の接触角がそれぞれ29度並びに34
度であり、また折り曲げても亀裂が発生することがな
く、本発明により形成された薄膜が極めて優れた耐久性
を有することが明らかとなった。さらに試料の酸素透過
性は処理直後でも処理前の99%以上を保持しており、
本発明の処理によりほとんど影響を受けなかった。
【0016】実施例2 実施例1と同様の装置を用いて、基材ホルダー上にジメ
チルポリシロキサンからなる直径15mm、厚さ0.5
mmの円板試料を取り付け、その表面に、純度99.9
9%のSiO2 をターゲットとし処理電力を60Wとし
て、実施例1と同様にしてスパッタリングを行い、膜厚
40ÅのSiO2 薄膜を形成した。実施例1と同様に測
定した結果を表1に示す。その結果、薄膜の親水性およ
び耐久性は、ともに実施例1とほぼ同レベルであり極め
て優れていた。また処理直後の酸素透過性は処理前にく
らべて5%程度低下したのみであり、高い水準を維持し
ていた。
チルポリシロキサンからなる直径15mm、厚さ0.5
mmの円板試料を取り付け、その表面に、純度99.9
9%のSiO2 をターゲットとし処理電力を60Wとし
て、実施例1と同様にしてスパッタリングを行い、膜厚
40ÅのSiO2 薄膜を形成した。実施例1と同様に測
定した結果を表1に示す。その結果、薄膜の親水性およ
び耐久性は、ともに実施例1とほぼ同レベルであり極め
て優れていた。また処理直後の酸素透過性は処理前にく
らべて5%程度低下したのみであり、高い水準を維持し
ていた。
【0017】実施例3 実施例1と同様の装置を用いて、基材ホルダー上にポリ
メチルメタクリレートの直径15mm、厚さ0.5mm
の円板状試料を取り付け、その表面に、純度99.99
%のAl2 O3 をターゲットとして実施例1と同様にス
パッタリングを行い、膜厚100ÅのAl2 O3 薄膜を
形成した。実施例1と同様に測定した結果を表1に示
す。なお、ポリメチルメタクリレートは酸素を透過させ
ず、また折り曲げもできなかったので、酸素透過性の測
定および亀裂の有無の評価は行なわなかった。その結
果、硬質基材であるポリメチルメタクリレートの場合に
おいても、処理直後、1週間〜6カ月放置後並びにスポ
ンジテスト後のいずれにおいても、親水性は極めて良好
であり、Al2 O3 薄膜の耐久性も優れていた。
メチルメタクリレートの直径15mm、厚さ0.5mm
の円板状試料を取り付け、その表面に、純度99.99
%のAl2 O3 をターゲットとして実施例1と同様にス
パッタリングを行い、膜厚100ÅのAl2 O3 薄膜を
形成した。実施例1と同様に測定した結果を表1に示
す。なお、ポリメチルメタクリレートは酸素を透過させ
ず、また折り曲げもできなかったので、酸素透過性の測
定および亀裂の有無の評価は行なわなかった。その結
果、硬質基材であるポリメチルメタクリレートの場合に
おいても、処理直後、1週間〜6カ月放置後並びにスポ
ンジテスト後のいずれにおいても、親水性は極めて良好
であり、Al2 O3 薄膜の耐久性も優れていた。
【0018】比較例1 実施例1と同様の装置を用いて、基材ホルダー上にジメ
チルポリシロキサンからなる直径15mm、厚さ0.5
mmの円板試料を取り付け、その表面に、純度99.9
9%のSiO2 をターゲットとして処理電圧を160W
とし、実施例1と同様のスパッタリングを行い、膜厚1
50ÅのSiO2 薄膜を形成した。実施例1と同様にし
て測定した結果を表1に示す。その結果、薄膜の処理直
後の親水性並びに耐久性のうち空気中放置テストおよび
スポンジテストはいずれも良好であったが、亀裂テスト
では折り曲げにより亀裂が発生し、また処理直後の酸素
透過性は処理前の20%強に過ぎなかった。この150
Åという膜厚が従来の薄膜形成法においても極く薄い部
類に入ることからみると、本例の亀裂テストおよび酸素
透過性の結果は、99.99%以上の高純度無機酸化物
による薄膜形成においては、膜厚が極めて臨界的な意味
を持つことを示している。
チルポリシロキサンからなる直径15mm、厚さ0.5
mmの円板試料を取り付け、その表面に、純度99.9
9%のSiO2 をターゲットとして処理電圧を160W
とし、実施例1と同様のスパッタリングを行い、膜厚1
50ÅのSiO2 薄膜を形成した。実施例1と同様にし
て測定した結果を表1に示す。その結果、薄膜の処理直
後の親水性並びに耐久性のうち空気中放置テストおよび
スポンジテストはいずれも良好であったが、亀裂テスト
では折り曲げにより亀裂が発生し、また処理直後の酸素
透過性は処理前の20%強に過ぎなかった。この150
Åという膜厚が従来の薄膜形成法においても極く薄い部
類に入ることからみると、本例の亀裂テストおよび酸素
透過性の結果は、99.99%以上の高純度無機酸化物
による薄膜形成においては、膜厚が極めて臨界的な意味
を持つことを示している。
【0019】比較例2 実施例1と同様の装置を用いて、基材ホルダー上にジメ
チルポリシロキサンからなる直径15mm、厚さ0.5
mmの円板試料を取り付け、その表面に、純度99.9
8%のSiO2 をターゲットとして処理電力40Wと
し、実施例1と同様にしてスパッタリングを行い、膜厚
40ÅのSiO2 薄膜を形成した。実施例1と同様にし
て測定した結果を表1に示す。その結果、耐久性のうち
の亀裂テストおよび酸素透過性はともに良好であった
が、親水性は処理直後でも水の接触角が62度と極めて
悪く、耐久性の空気中放置テストでは3カ月以上放置す
ることにより、またスポンジテストによっても、親水性
が顕著に劣化した。この親水性、空気中放置テストおよ
びスポンジテストの結果を同様に膜厚が40Åである実
施例2と対比すると、膜厚100Å以下の極めて薄い無
機酸化物薄膜の形成においては、無機酸化物の純度が9
9.99%以上であることが所要の処理生成物を得るた
めに必須であることが明らかである。
チルポリシロキサンからなる直径15mm、厚さ0.5
mmの円板試料を取り付け、その表面に、純度99.9
8%のSiO2 をターゲットとして処理電力40Wと
し、実施例1と同様にしてスパッタリングを行い、膜厚
40ÅのSiO2 薄膜を形成した。実施例1と同様にし
て測定した結果を表1に示す。その結果、耐久性のうち
の亀裂テストおよび酸素透過性はともに良好であった
が、親水性は処理直後でも水の接触角が62度と極めて
悪く、耐久性の空気中放置テストでは3カ月以上放置す
ることにより、またスポンジテストによっても、親水性
が顕著に劣化した。この親水性、空気中放置テストおよ
びスポンジテストの結果を同様に膜厚が40Åである実
施例2と対比すると、膜厚100Å以下の極めて薄い無
機酸化物薄膜の形成においては、無機酸化物の純度が9
9.99%以上であることが所要の処理生成物を得るた
めに必須であることが明らかである。
【0020】
【表1】
【0021】実施例4 実施例1と同様の装置を用いて、基材ホルダー上にポリ
スチレン製シャーレを取り付け、その表面に、純度9
9.99%のSiO2 をターゲットとして、実施例1と
同様の条件下でスパッタリングを行い、膜厚40ÅのS
iO2 薄膜を形成した。処理後のシャーレを24時間空
気中に放置したのち、エチレンオキサイドガス滅菌し
た。滅菌後のシャーレを流量1リットル/分の窒素ガス
を流したデシケータ中に1週間放置して残留エチレンオ
キサイドガスをパージした。ついで、別途培養しておい
た正常2倍体繊維芽細胞Flow2000を0.25重
量%のトリプシン溶液により遊離の細胞とし、上記処理
済シャーレに植え込んだ。その後、牛胎児血清を10重
量%含有するイーグルMEM培地を用い、炭酸ガス5容
量%、空気95容量%の雰囲気下にあるインキュベータ
ー中、37°Cで細胞を培養した。その後、培養時間が
120分に達した時にシャーレをインキュベーターから
取り出し、リン酸緩衝生理食塩水で洗浄したのち、プロ
ナーゼEDTA溶液1ミリリットルを加えて培養床表面
に接着していた細胞を遊離させ、遊離した細胞数を血球
カウンターで測定した。これから、シャーレ表面に接着
していた細胞数の全細胞数に対する割合(細胞接着率)
を求めたところ95%であり、極めて高かった。
スチレン製シャーレを取り付け、その表面に、純度9
9.99%のSiO2 をターゲットとして、実施例1と
同様の条件下でスパッタリングを行い、膜厚40ÅのS
iO2 薄膜を形成した。処理後のシャーレを24時間空
気中に放置したのち、エチレンオキサイドガス滅菌し
た。滅菌後のシャーレを流量1リットル/分の窒素ガス
を流したデシケータ中に1週間放置して残留エチレンオ
キサイドガスをパージした。ついで、別途培養しておい
た正常2倍体繊維芽細胞Flow2000を0.25重
量%のトリプシン溶液により遊離の細胞とし、上記処理
済シャーレに植え込んだ。その後、牛胎児血清を10重
量%含有するイーグルMEM培地を用い、炭酸ガス5容
量%、空気95容量%の雰囲気下にあるインキュベータ
ー中、37°Cで細胞を培養した。その後、培養時間が
120分に達した時にシャーレをインキュベーターから
取り出し、リン酸緩衝生理食塩水で洗浄したのち、プロ
ナーゼEDTA溶液1ミリリットルを加えて培養床表面
に接着していた細胞を遊離させ、遊離した細胞数を血球
カウンターで測定した。これから、シャーレ表面に接着
していた細胞数の全細胞数に対する割合(細胞接着率)
を求めたところ95%であり、極めて高かった。
【0022】比較例3 実施例1と同様の装置を用いて、基材ホルダー上にポリ
スチレン製シャーレを取り付け、その表面に、純度9
9.99%のSiO2 をターゲットとして、実施例1と
同様の条件下でスパッタリングを行い、膜厚200Åの
SiO2 薄膜を形成した。処理後のシャーレを実施例3
と同様に細胞培養に供して細胞接着率を求めたところ、
45%に過ぎなかった。この細胞接着率を実施例4と対
比すると、無機酸化物薄膜の膜厚が100Å以上では細
胞接着率が著しく低下することが明らかとなる。これ
は、膜厚が100Åを越えると、たとえ無機酸化物とし
て純度99.99%以上のものを使用しても、スパッタ
リング処理済シャーレの生体(とくにそのタンパク質)
との適合性あるいは親和性が顕著に悪くなることを示し
ている。
スチレン製シャーレを取り付け、その表面に、純度9
9.99%のSiO2 をターゲットとして、実施例1と
同様の条件下でスパッタリングを行い、膜厚200Åの
SiO2 薄膜を形成した。処理後のシャーレを実施例3
と同様に細胞培養に供して細胞接着率を求めたところ、
45%に過ぎなかった。この細胞接着率を実施例4と対
比すると、無機酸化物薄膜の膜厚が100Å以上では細
胞接着率が著しく低下することが明らかとなる。これ
は、膜厚が100Åを越えると、たとえ無機酸化物とし
て純度99.99%以上のものを使用しても、スパッタ
リング処理済シャーレの生体(とくにそのタンパク質)
との適合性あるいは親和性が顕著に悪くなることを示し
ている。
【0023】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明は、蒸発源
またはターゲットとなる無機酸化物の純度を99.99
%以上とし且つ形成される薄膜の膜厚を100Å以下と
することを有機的に結合することにより、優れた親水性
を有するとともに、空気中放置、洗浄の繰り返し、取り
扱い(例えば折り曲げ等)等によっても薄膜の表面状態
(即ち親水性、表面平滑性等)が何ら損なわれないばか
りか、薄膜が基材から剥離することもなく、また酸素透
過性、光透過性等の基材本来の特性を実質的に低下させ
ることがない薄膜を、硬質または軟質を問わず幅広い基
材に対して形成することができるものであり、さらには
膜厚を50Å程度以下とすることにより、薄膜領域が基
材表面上に不連続あるいは島状に存在することにより、
例えば抗血栓性や生体適合性に優れ、また表面各領域間
の表面エネルギー差の大きな特異且つ有用な材料を提供
することができるものであって、その効果は、従来の薄
膜形成技術から予期できない優れたものである。
またはターゲットとなる無機酸化物の純度を99.99
%以上とし且つ形成される薄膜の膜厚を100Å以下と
することを有機的に結合することにより、優れた親水性
を有するとともに、空気中放置、洗浄の繰り返し、取り
扱い(例えば折り曲げ等)等によっても薄膜の表面状態
(即ち親水性、表面平滑性等)が何ら損なわれないばか
りか、薄膜が基材から剥離することもなく、また酸素透
過性、光透過性等の基材本来の特性を実質的に低下させ
ることがない薄膜を、硬質または軟質を問わず幅広い基
材に対して形成することができるものであり、さらには
膜厚を50Å程度以下とすることにより、薄膜領域が基
材表面上に不連続あるいは島状に存在することにより、
例えば抗血栓性や生体適合性に優れ、また表面各領域間
の表面エネルギー差の大きな特異且つ有用な材料を提供
することができるものであって、その効果は、従来の薄
膜形成技術から予期できない優れたものである。
Claims (1)
- 【請求項1】 表面温度が150°C以下に保持された
基材表面に、純度99.99%以上の無機酸化物からな
る蒸発源またはターゲットを用いて膜厚100Å以下の
無機酸化物薄膜を形成することを特徴とする基材の表面
処理方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP31522591A JPH05230249A (ja) | 1991-11-05 | 1991-11-05 | 基材の表面処理方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP31522591A JPH05230249A (ja) | 1991-11-05 | 1991-11-05 | 基材の表面処理方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH05230249A true JPH05230249A (ja) | 1993-09-07 |
Family
ID=18062903
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP31522591A Pending JPH05230249A (ja) | 1991-11-05 | 1991-11-05 | 基材の表面処理方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH05230249A (ja) |
Cited By (7)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US6667075B2 (en) * | 2000-05-16 | 2003-12-23 | Nippon Sheet Glass Co., Ltd. | Method for imparting hydrophilicity to substrate |
US7154045B2 (en) | 2001-11-13 | 2006-12-26 | Nitto Denko Corporation | Wired circuit board |
WO2007032208A1 (ja) * | 2005-09-15 | 2007-03-22 | Nippon Sheet Glass Company, Limited | 細胞培養基板 |
WO2007097273A1 (ja) * | 2006-02-24 | 2007-08-30 | Kuraray Co., Ltd. | 樹脂製細胞培養容器およびその製造方法 |
WO2007105418A1 (ja) * | 2006-02-24 | 2007-09-20 | Kuraray Co., Ltd. | 細胞培養容器およびその製造方法 |
JP2009038981A (ja) * | 2007-08-06 | 2009-02-26 | Dainippon Printing Co Ltd | 心筋細胞培養支持体 |
JP2017077240A (ja) * | 2015-10-21 | 2017-04-27 | 株式会社日本触媒 | 接着性細胞培養用基材、ならびにこれを利用した細胞培養容器および細胞培養方法 |
-
1991
- 1991-11-05 JP JP31522591A patent/JPH05230249A/ja active Pending
Cited By (9)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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JPWO2007097273A1 (ja) * | 2006-02-24 | 2009-07-16 | 株式会社クラレ | 樹脂製細胞培養容器およびその製造方法 |
US8435782B2 (en) | 2006-02-24 | 2013-05-07 | Kuraray Co., Ltd. | Cell culture container and method of producing the same |
JP2009038981A (ja) * | 2007-08-06 | 2009-02-26 | Dainippon Printing Co Ltd | 心筋細胞培養支持体 |
JP2017077240A (ja) * | 2015-10-21 | 2017-04-27 | 株式会社日本触媒 | 接着性細胞培養用基材、ならびにこれを利用した細胞培養容器および細胞培養方法 |
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