JPH048474B2 - - Google Patents

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JPH048474B2
JPH048474B2 JP28717387A JP28717387A JPH048474B2 JP H048474 B2 JPH048474 B2 JP H048474B2 JP 28717387 A JP28717387 A JP 28717387A JP 28717387 A JP28717387 A JP 28717387A JP H048474 B2 JPH048474 B2 JP H048474B2
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Description

【発明の詳細な説明】
(産業上の利用分野) 本発明はピツチ系高性能炭素繊維製造用に好適
な、軟化点が低く、均質なメソフエーズピツチを
効率良く製造する方法に関する。 さらに詳しくは、石炭系、石油系重質油もしく
はそれらを蒸留、熱処理又は水素化処理して得ら
れる重質成分であつて、実質的に単環の芳香族系
炭化水素溶剤に不溶の成分を含まないものである
か、もしくは上記重質油又は重質成分に単環の芳
香族系炭化水素溶剤またはこれと同等の溶解性を
もつ溶剤の該重質油又は重質成分に対して1〜5
重量倍量を加えたときに生成する不溶性成分を分
離除去した後に、溶剤を蒸留除去して得られる精
製された重質油又は重質成分(以後精製重質成分
と云う。)を原料とし、これを管式加熱炉におい
て、特定の条件下に加熱処理し、キノリン不溶分
を生成させることなく、新たに単環の芳香族系炭
化水素溶剤に不溶な成分を生成させる第1工程
と、この加熱処理物を蒸留又はフラツシングして
軽質成分の一部を除き、特定の性状の熱分解重質
成分を得る第2工程と、この熱分解重質成分から
BTX溶剤またはこれと同等の溶解性を持つ溶剤
に不溶の成分を高分子量歴青物として回収する第
3工工程と、第3工程で不溶性成分を除去した清
澄液から溶剤を蒸留除去して可溶性成分を得る第
4工程とからなる水素化原料調整工程において、
第4工程で得られる可溶性成分を第1工程に循環
しながら、第1〜第4工程を連続的に実施するこ
とにより、第3工程から高分子量歴青物を得、こ
れを水素供与性溶媒の存在下に加熱処理した後、
溶媒を蒸留除去して得られる水素化ピツチをさら
に加熱処理することによりメソフエーズピツチと
することから成る高性能炭素繊維製造用ピツチの
製造方法である。 本発明によれば、軟化点が低く均質なメソフエ
ーズピツチを効率良くまた安定して製造すること
ができる。 高性能炭素繊維は軽量であり、強度、弾性率が
大きいため、航空機用、スポーツ用、産業ロボツ
ト用等に用いられる複合材料の構成要素として注
目を集めており、今後の需要が大きく伸びると期
待されている材料である。 (従来の技術) 従来、高性能の炭素繊維としては、ポリアクリ
ロニトリル(PAN)を紡糸し、これを酸化雰囲
気中で不融化し、その後不活性雰囲気中で炭化も
しくは黒鉛化することにより製造されるPAN系
炭素繊維が主流であつたが、近年、原料として安
価なピツチからも、PAN系の炭素繊維と同等も
しくはそれ以上の特性をもつ高性能炭素繊維を製
造し得ることが見いだされ、安価な高性能炭素繊
維の製造法として注目を浴びている。 この様なピツチ系の高性能炭素繊維を製造する
場合には、その紡糸用ピツチが偏光顕微鏡下に観
察した時に、光学的に異方性をしめすメソフエー
ズをその主たる構成成分とした、いわゆるメソフ
エーズピツチであることが不可欠であると言われ
ている。 このメソフエーズは重質油又はピツチを加熱処
理する際に生成する一種の液晶であり、また、熱
重合により発達した芳香族平面分子が積層構造を
取るために異方性を示すものである。この様なメ
ソフエーズピツチを用いて、溶融紡糸法により繊
維を製造すると、発達した芳香族平面分子がノズ
ル孔を通過する際に加わる応力により、繊維軸方
向に配列し、この配向構造はその後の不融化、炭
化の際にも乱れることなく維持されるため、配向
性の良い炭素繊維が得られる。逆にメソフエーズ
を含まない等方性ピツチを用いた場合には、その
構成成分の平面構造が十分に発達していないた
め、ノズル孔を通過する際の応力によつても繊維
軸方向の配列が十分に起らず、配向性の低い繊維
となり、これを不融化、炭化しても強度の低い炭
素繊維しか得られないことになる。したがつて、
数多く提案されているピツチ系高性能炭素繊維の
製造方法は、その大半が紡糸用ピツチとしてのメ
ソフエーズピツチをいかに製造するかという事に
関するものである。 昭和40年代には、熱処理により生成したメソフ
エーズは、キノリン、ピリジン等の極性溶剤に不
溶であり、メソフエーズとこれらの極性溶剤不溶
分とほぼ同一であると考えられている。しかし、
その後のメソフエーズに関する研究により、偏光
顕微鏡下に異方性を示す部分が必ずしも極性溶剤
不溶分と同一ではなく、メソフエーズ中には極性
溶剤に可溶な成分と不溶な成分が存在することが
認められている。従つて最近、メソフエーズは
「偏光顕微鏡で観察した時に光学的に異方性を示
す部分」として定義されるのが一般的であり、メ
ソフエーズ含有量も偏光顕微鏡で観察した際の光
学的に異方性を示す部分と等方性を示す部分との
面積分率をもつて表すことが一般的である。 このメソフエーズ含有量は高性能炭素繊維を製
造しようとする時の紡糸性ならびに得られる炭素
繊維の特性に大きく影響するものである。特開昭
54−55625号には本質的に100%のメソフエーズを
含むピツチについての記載があり、等方性部分の
存在が紡糸操作を妨害するため、極力等方性部分
を少なくすることが望ましい旨の説明がなされて
いる。その理由は、メソフエーズ含有量が少ない
場合溶融状態においても、異方性を示すメソフエ
ーズより等方性部分のほうが粘度が低いため、こ
れら二相のピツチが分離する傾向にあるというこ
とである。しかし、メソフエーズ含有量を多くし
ようとすると、ピツチの軟化点と粘度が著しく高
くなり、紡糸が困難となる。メソフエーズピツチ
を用いた高性能炭素繊維の製造において最大の問
題は、メソフエーズピツチの軟化点が高いために
紡糸温度を著しく高くしなければならないという
ことである。紡糸温度を350℃以上の高温にしな
ければならない様なピツチの場合には、紡糸設備
内でのピツチの分解、変質あるいは熱重合が起
り、糸切れ、繊維強度の低下等の問題が発生す
る。紡糸温度はメトラー法で測定される軟化点よ
り20〜40℃高いのが一般的であるので、紡糸温度
を350℃以下にするためには、メソフエーズピツ
チの軟化点を320℃以下にする事が必要である。
しかし、特開昭54−55625号の方法は、ピツチを
比較的低い温度で長時間熱処理する方法であり、
その明細書中に示されている様に、得られるピツ
チの軟化点は330〜350℃とかなり高く、したがつ
て350℃以上という高い温度で紡糸を実施してい
る。 また、特開昭58−154792号には、キノリン可溶
性メソフエーズについての記載があり、キノリン
あるいはピリジンに不溶なメソフエーズはピツチ
の軟化点を高くするため、キノリンに可溶なメソ
フエーズを特定された量以上含有することが必要
であると規定している。ここではキノリンに不溶
なメソフエーズと可溶なメソフエーズについて詳
しく説明されていないが、著しく高分子量化した
ものがキノリン不溶分となるであろう事は容易に
理解される事であり、キノリン可溶なメソフエー
ズを多くしようとする試みは著しく高分子量化し
た成分の含有量を少なくし、分子量分布の狭い均
質なピツチを製造しようとする試みでもある。こ
の特開昭58−154792号の方法は特定の範囲の芳香
族水素含有率のピツチを熱処理するというもので
あり、紡糸ピツチの40%以上がキノリンに可溶な
メソフエーズであるが、キノリン不溶分も多くや
はり相当高い温度で紡糸を実施している。 このキノリン不溶分のみに注目して、これを減
少させることは、たとえば熱処理の条件をマイル
ドにする方法などにより容易に達成する事が可能
である。しかし、この場合にはメソフエーズ含有
量が著しく減少すると同時にキシレン等の溶剤に
可溶な低分子量成分の含有量が多くなる。このキ
シレン等の溶剤に可溶な低分子量成分は紡糸時の
配向を乱す原因となり、また紡糸温度において揮
発して糸切れの原因ともなる。従つて、良質な紡
糸ピツチを得ようとする場合には、キノリンに不
溶な著しく高分子量化した成分を少なくすること
のみでは十分ではなく、キシレン等に可溶な低分
子量成分の含有量をも減少させ、中間成分の多い
均質なピツチとすることが必要である。 この様な均質なピツチを得るための方法は、前
記以外にも、たとえば、等方性ピツチを溶媒で抽
出し、その不溶分を230〜400℃に加熱する方法
(特開昭54−160427号)、等方性ピツチを水素供与
性溶媒の存在下に水素化した後、加熱処理する方
法(特開昭58−214531号、特開昭58−196292号)、
等方性ピツチを熱処理し生成したメソフエーズを
分離除去して得たピツチを再度熱処理する方法
(特開昭58−136835号)、ピツチを熱処理したメソ
フエーズ含有量が20〜80%とした後、メソフエー
ズを沈降し回収する方法(特開昭57−119984号)
など数多く提案されている。しかし、これらの方
法は、あるものはメソフエーズ含有量を高くする
ことはできても軟化点を十分低くすることができ
ず、またあるものは軟化点は低くてもメソフエー
ズ含有量を高くすることができない。また、ある
ものは軟化点を低く、メソフエーズ含有量を高く
することはできても、キノリン等に不溶の著しく
高分子量化したメソフエーズ量が多くなり必ずし
も均質なピツチとは言えないなどの欠点を持つも
のであり、(1)軟化点が低く、(2)メソフエーズ含有
量が高く、(3)キノリン不溶成分が少なく、さらに
(4)キシレン可溶成分が少ないという、4つの特性
を同時に満足するメソフエーズピツチを与えるも
のではない。 これらの問題を解決するための方法として、特
開昭61−138721号には、コールタールピツチ又は
それを加熱処理したものを溶剤抽出して不溶分を
得、これを水素化し、さらに熱処理することによ
りメソフエーズピツチとする方法が開示されてい
る。この方法で得られるピツチはキノリン不溶分
が20%以下、メソフエーズ量が90%以上と均質な
ものであるが、それから得られた炭素繊維の強度
はその実施例にも示されているように、必ずしも
十分高いとは言えない。この方法の問題点は、出
発原料であるコールタール中に存在する溶剤不溶
分が、本来炭素繊維製造用の紡糸ピツチを製造す
る目的で調整されたものではないということであ
る。従つて、コールタール又はピツチから、もと
もと原料中に存在した溶剤不溶分を取りだして使
用する場合には、その原料がどういう工程を経て
製造された物であるかによつて、得られる紡糸ピ
ツチの性状もしくは炭素繊維の特性が左右される
ことになる。 炭素繊維製造用紡糸ピツチを製造する場合、ピ
ツチ自体が前記の4つの特性を満足していなけれ
ばならない事に加えて、それから得られる炭素繊
維の特性もすぐれたものでなければならない。 ピツチ等の歴青物を水素化した後、熱処理する
という方法は前記特開昭58−214531号、特開昭58
−196292号、特開昭61−138721号の他にもいつく
かの提案がなされており、軟化点の低い紡糸ピツ
チを製造するうえで有効ではあるが、これらの方
法においてもそのほとんどが水素化用の原料とし
て市販のピツチ等又はその中に含まれる溶剤不溶
分をそのまま水素化原料とすることを前提として
いる。すなわち、紡糸用ピツチ製造の為に特に調
整されたものを水素化するのではないので、得ら
れる紡糸ピツチの性状又は炭素繊維の特性が原料
性状に依存することはさけられない。従つて、原
料性状の変動を十分に吸収し、安定した紡糸ピツ
チを製造し得るプロセスの開発が望まれている。
また、コールタールピツチを熱処理して溶剤不溶
分を増加せしめる方法を採用する場合には、もと
もとそのコールタールピツチに存在した溶剤不溶
分はさらに加熱処理を受け、キノリンに不溶な成
分等の好ましくない高重合物を生成する。かかる
好ましくない高重合物を含む熱処理物からの溶剤
不溶分を水素化原料とすると、該溶剤不溶分を水
素化した後に多量の固形物をろ過分離しなければ
ならなくなる。しかし、この水素化溶媒中の不溶
分をろ過分離するという操作は必ずしも効率的で
はなく、ろ過速度が遅いこと、ろ布が目づまりを
おこし再利用ができないなど大型化する際の問題
をはらんでいる。さらにかかる水素化工程で多量
の不溶分が生成する様な原料を用いる場合には、
プロセスとして効率の良いたとえば管式加熱炉に
よる連続処理法等を採用することができず、効率
の悪いバツチ式の処理法を取らざるを得ない。 さらに、コールタールピツチから溶剤不溶分を
採取する方法についても特開昭61−138721号の本
文中に「5〜20倍量の溶剤を使用して、煮沸下又
はそれに近い温度で3〜12時間程度行なうことが
好ましい。」と説明されている様に、必ずしも効
率的な方法とは言えない。従つて溶剤不溶分を原
料とする場合には、その不溶分の採取法について
も十分考慮されなければならない。 以上の様に、ピツチ系高性能炭素繊維用の紡糸
ピツチを製造する方法において、紡糸用メソフエ
ーズピツチ性状に対する要求と炭素繊維特性に対
する要求を同時に満足する方法の開発が望まれて
おり、さらには、効率的かつ安定的であり、大型
化可能なプロセスの開発が望まれている。 (解決しようとする問題点) 本発明者らは、前記の様な数多くの要求を考慮
したうえで、高性能炭素繊維を製造するためのメ
ソフエーズピツチの製造方法について研究を重
ね、出発原料に含まれる単環の芳香族系炭化水素
溶剤に不溶の成分、もしくは出発原料を蒸留又は
熱処理したときに容易に生成する単環の芳香族系
炭化水素溶剤に不溶の成分をあらかじめ除去し、
精製重質成分を得、これを特定の条件下に加熱処
理し、この加熱処理によつて新たに生成した単環
の芳香族系炭化水素溶剤に不溶の成分を回収し、
これを水素供与性溶媒の存在下に加熱処理するこ
とにより水素化し、さらに減圧下又は不活性ガス
の吹き込み下に熱処理して得られるメソフエーズ
ピツチが前記4つの特性を同時に満足するもので
あることを見いだし、かかるメソフエーズピツチ
の製法を先に提案した(特願昭61−114221号)。
すなわち、石炭系重質油又は石油系重質油から得
られるピツチ等の高分子量歴青物を、水素供与性
溶媒の存在下に加熱処理することにより水素化
し、この水素化された高分子量歴青物を減圧下又
は不活性ガスの吹き込み下に加熱処理することに
よりメソフエーズピツチを製造する方法におい
て、その高分子量歴青物が石炭系重質油又は石油
系重質油もしくはそれらを蒸留又は熱処理して得
られる重質成分に、単環の芳香族系炭化水素溶剤
の一定量を加え、生成する不溶性成分を遠心分離
又はろ過により分離、除去した後、加えた単環の
芳香族系炭化水素溶剤を蒸留により除去して精製
された重質油又は重質成分を得る工程と、この精
製された重質油又は重質成分を沸点範囲が200〜
450℃の間にあり、かつ管式加熱炉における加熱
処理に際し、実質的に単環の芳香族系炭化水素溶
剤に対する不溶分を生成しない芳香族系油の0〜
1倍量の存在下又は非存在下に、管式加熱炉にお
いて加圧下に一定の条件で加熱処理する工程と、
この加熱処理物に単環の芳香族系炭化水素溶剤の
一定量を加え、生成する不溶性成分を遠心分離又
はろ過により回収する工程を経て得られる高分子
量歴青物であることを特徴とするメソフエーズピ
ツチの製造方法を先に提案した。この方法によれ
ば軟化点が低く極めて均質な紡糸ピツチを得るこ
とができた。 しかし、この方法では、精製された重質油又は
重質成分を特定の条件下で加熱処理することによ
つて、キノリン不溶分を実質的に生成させること
なく新しく単環の芳香族系炭化水素溶剤に不溶の
成分を生成させなければならないため、加熱処理
物中の不溶性成分の含有量をむやみに高くするこ
とはできず、従つて紡糸ピツチの収率も限られる
ものとなる。 本発明者らは、この様な問題を解決し、さらに
効率の良いプロセスとするため、さきに提案した
方法について引き続き鋭意研究を重ねた結果、特
定の条件で加熱処理して生成した不溶性成分を除
去した清澄液から溶剤を除去して得られる可溶性
成分を再度同一の条件で加熱処理することによ
り、新たにかなりの不溶性成分を生成させること
ができ、またこの不溶性成分を用いてメソフエー
ズピツチを調整し、炭素繊維を製造した場合には
さらにすぐれた特性の炭素繊維が得られることを
見いだし本発明に至つた。 従つて本発明の目的はピツチ系高性能炭素繊維
を製造するために用いられるメソフエーズピツチ
の製造法を与えるものであり、メトラー法で測定
される軟化点が310℃以下、偏光顕微鏡で観察し
たときの光学的異方性を示す部分の面積分率によ
るメソフエーズ含有量が90%以上、キノリン不溶
分が10重量%以下、キシレン可溶分が10重量%以
下という特性を同時に満足する特に均質なメソフ
エーズピツチを製造する方法を与えるものであ
る。本発明の方法で得られるメソフエーズピツチ
を用いて炭素繊維を製造した場合、容易に1000℃
における強度が300Kg/mm2以上、黒鉛化したとき
の強度400Kg/mm2以上、弾性率60ton/mm2以上の高
弾性率を持つ高性能炭素繊維が得られる。 また、本発明の別の目的は精製重質成分から得
られるメソフエーズピツチの収率を著しく向上さ
せること、および該収率向上の為の操作を連続的
に実施し得る方法を与えることにある。本発明に
よればプロセス全体の効率ひいては経済性を著し
く向上させることができる。 さらに本発明の別の目的は、紡糸ピツチに含ま
れてはならないコークス状固形物の生成をメソフ
エーズピツチ製造の全工程において防止すること
により、これらコークス状固形物を除去するとい
う困難な操作を排除することにある。本発明によ
ればすべての工程を連続化することも可能とな
り、極めて効率の良いプロセスを構成することが
できる。 また、さらに本発明の別の目的は、出発原料と
して用いる重質油の性状変化を吸収し得るフレキ
シビリテイーのあるプロセスを与えることにあ
り、換言すれば原料性状の変化に左右されず、安
定した性状のメソフエーズピツチを与えることに
ある。 そして、本発明の方法で得られる水素化ピツチ
ならびにメソフエーズピツチは炭素繊維製造用と
してのみならず、その他の炭素製品用の素原料と
して用いることができることは言うまでもない。 (問題点を解決するための手段) 本発明の要旨は、石炭系重質油、石油系重質油
もしくはそれらを蒸留、熱処理又は水素化処理し
て得られる重質成分であつて、実質的に単環の芳
香族系炭化水素溶剤に不溶の成分を含まないもの
であるか、もしくは上記重質油又は重質成分に単
環の芳香族系炭化水素溶剤またはこれと同等の溶
解性を持つ溶剤の該重質油又は重質成分に対して
1〜5重量倍量を加えたときに生成する不溶性成
分を分離除去した後に、溶剤を蒸留除去して得ら
れる精製された重質油又は重質成分を原料とし、
該原料を沸点範囲が200〜350℃の間にあり、かつ
管式加熱炉における加熱処理に際し、実質的に単
環の芳香族系炭化水素溶剤に不溶の成分を生成し
ない芳香族系油の上記原料に対して1重量倍量以
下の存在下又は非存在下に管式加熱炉において加
圧下に温度400〜600℃の条件で加熱処理して、実
質的にキノリン不溶分を生成させることなく、キ
シレン不溶分を加熱処理物中に2〜30重量%生成
させる連続的な第1工程と、第1工程で得られた
加熱処理物を350℃以下の温度で蒸留又はフラツ
シングして、軽質成分の一部を除き、熱分解重質
成分を得る連続的な第2工程と、該熱分解重質成
分に単環の芳香族系炭化水素溶剤又はこれと同等
の溶解性を持つ溶剤を該熱分解重質成分に対して
1〜5重量倍量加え、生成する不溶性成分を分離
回収して高分子量歴青物を得る連続的な第3工程
と、第3工程で不溶分を除去した清澄液から溶剤
を蒸留除去して単環の芳香族系炭化水素溶剤に可
溶の成分を得る連続的な第4工程とから成る水素
化原料調整工程において、第4工程で得られる可
溶性成分の全部又は一部を第1工程に循環しなが
ら第1〜第4工程を連続的に実施することによ
り、第3工程から高分子量歴青物を得、該高分子
量歴青物を水素供与性溶媒の存在下に加熱処理す
ることにより水素化した後、溶媒を除去して実質
的に等方性の水素化ピツチを得、これをさらに加
熱処理することによりメソフエーズピツチとする
ことを特徴とする高性能炭素繊維製造用メソフエ
ーズピツチの製造方法に存する。 本発明において原料として用いる石炭系重質油
とは、コールタール、コールタールピツチ、石炭
液化油等であり、石油系重質油とはナフサ分解に
おいて副生する分解残油(ナフサタール)、ガス
オイル分解において副生する分解残油(パイロリ
シスタール)、石油留分の流動接触分解において
副生する分解残油(デカント油)等であり、ま
た、これらの重質油等に蒸留、熱処理および水素
化処理等の操作を加えて得られるもの、あるいは
これらの混合物をも使用することができる(以下
重質油等と言う。)。 この重質油等の若干の例について物性例を示せ
ば第1表のとおりである。
【表】 また、本発明で言う単環の芳香族系炭化水素溶
剤とは、ベンゼン、トルエン、キシレン等であ
り、これらを混合して用いることもできる。これ
らは勿論純品である必要はなく、実質的にこれら
からなるものであればよい。また、本発明の方法
において原料重質油等からの不溶分の除去、もし
くは管式加熱炉において新たに生成した不溶性成
分の分離回収に用いられる溶剤は必ずしもこのベ
ンゼン、トルエン、キシレン等でなくても良く、
n−ヘキサン、n−ヘプタン、アセトン、メチル
エチルケトン、メタノール、エタノール、灯油、
軽油、ナフサ等に代表される様な溶解性の低い貧
溶剤と、キノリン、ピリジン、タール軽油、洗浄
油、カルボニル油、アントラセン油、もしくは重
質油を蒸留して得られる芳香族系の軽質油等に代
表される様な溶解性の高い良溶剤とを適当な比率
で混合して上記ベンゼン、トルエン、キシレン等
と同等の溶解性を持つ溶剤としたものを用いるこ
ともできる。しかし溶剤の回収工程を簡略化する
ためにはベンゼン、トルエン、キシレン等の様に
できるだけ単純な組成の溶剤を用いることが好ま
しい。上記貧溶剤と良溶剤の組合せによる溶剤も
その溶解性が同等であるという点においてベンゼ
ン、トルエン、キシレン等の単環の芳香族系炭化
水素溶剤の均等物とみなしうる。以下本発明の明
細書においては単環の芳香族系炭化水素溶剤を、
上記組合せ溶剤も含めて、単にBTX溶剤と略称
する。 本発明の第1工程である管式加熱炉における加
熱処理にフイードする原料は、該原料に対して1
〜5重量倍量のBTX溶剤に混合したときに不溶
な成分を実質的に生成しないものである必要があ
る。コールタールを例にとつて説明すると、コー
ルタールは石炭を高温で乾留する際に副生する重
質油であるため、一般にフリーカーボンと呼ばれ
る非常に微細なすす状炭素を含んでいる。このフ
リーカーボンは重質油等を加熱処理する際にメソ
フエーズの成長を阻害することが知られており、
また本来キノリンに不溶な固体であるためメソフ
エーズピツチ中に存在すると紡糸時の糸切れの原
因となる。また、コールタールはBTX溶剤に不
溶な高分子量成分を含んでおり、これは加熱処理
の際に容易にキノリン不溶分となる。また、この
コールタール中のBTX溶剤不溶分は、コールタ
ールの製造条件等によつてその量、質ともに変る
ものであり、本来炭素繊維用の素原料とするべく
調整されたものではないので、これを抽出して紡
糸ピツチの前駆物質として用いるコールタールの
性状変動が得られる紡糸ピツチの性状さらには炭
素繊維の特性にまで影響することになる。従つて
原料の重質油等からフリーカーボンやBTX溶剤
に不溶な成分を除去しておくことは、第1工程の
管式加熱炉における加熱に際し、コークス状固形
物の生成による管の閉塞を防ぐ上で重要であるば
かりでなく、最終的に得られるメソフエーズピツ
チ中のキノリン不溶分を減少させ安定した性状の
紡糸ピツチを製造するうえで重要である。 上記の原料の重質油等からのBTX溶剤による
不溶分の除去は、もし原料の重質油等がBTX溶
剤に不溶性の成分を含んでいないか、もしくはほ
とんど含んでいない場合には省略することができ
る。たとえばナフタールのごとき石油系重質油は
一般的にBTX溶剤にすべて可溶性の成分からな
り、また石炭系の重質油であつても何等かの理由
によつてそれがBTX溶剤に不溶の成分を含んで
いないか、またはほとんど含んでいない場合には
上記の精製処理を省略することができる。なぜな
らば、上記の精製処理を行なてつもそれによつて
除去される不良成分が存在しないため、実質的な
効果がえられないためである。この様にBTX溶
剤に不溶の成分を含まないか、もしくはほとんど
含まない重質油等は不溶分除去の処理を潜在的に
受けたものとみなし得るので、これを精製重質成
分の定義内にする。上記の場合精製工程を省略で
きるとは言うもののより均質な高品質のメソフエ
ーズピツチを得ようとする場合には、原料の重質
油等をあらかじめ熱処理し、BTX溶剤に不溶な
成分を原料に対して10%以下生成させこれを分離
除去することは好ましいことである。この熱処理
の方法は、オートクレーブによる熱処理の様なバ
ツチ式でも、管式加熱炉による熱処理の様な連続
式でも良いが、BTX溶剤により不溶分として除
去される量が多くなりすぎると、最終的に得られ
るメソフエーズピツチの収率低下をまねくため効
率が悪くなる。 たとえば、比重1.0751、キシレン不溶分0wt%
のナフサタールを、内径6mm、長さ40mのヒータ
ーチユーブを溶融塩浴中に浸漬した構造の管式加
熱炉において、圧力20Kg/cm2G、原料送入量17.5
Kg/hrとして加熱処理する場合、温度を440〜500
℃と変化させて得られる加熱処理物中のキシレン
不溶分を測定すると、処理温度440、460、480、
490、および500℃についてそれぞれキシレン不溶
分は0.2、1.2、4.0、8.1および27.6wt%であつた。
したがつて、上記の様な管式加熱炉を用いる連続
式加熱処理の場合は、温度460〜490℃で加熱処理
してキシレン不溶分を生成させ、これを除去する
ことが好ましい。また、同じナフサタールをオー
トクレーブを用いて、バツチ式で加熱処理する場
合、オートクレーブの圧力を15Kg/cm2G、処理時
間を2時間として、処理温度を400〜440℃と変化
させて、得られる加熱処理物中のキシレン不溶分
を測定すると、温度400、410、420、430および
440℃にいて、それぞれキシレン不溶分は0.3、
1.5、3.1、6.8おび13.5wt%であつた。したがつて
上記の様なバツチ式加熱処理の場合は温度410〜
430℃で加熱処理して、キシレン不溶分を生成さ
せ、これを除去することが好ましい。この様に、
同じナフサタールであつても、その加熱処理を管
式加熱炉において連続的に実施する場合と、オー
トクレーブの様なバツチ式で実施する場合の温度
等の条件は異なるので、用いる方法によつてその
処理条件を求めることが望ましい。 また、前記の例のうち、加熱処理を管式加熱炉
で実施した場合処理温度500℃で得られた加熱処
理中にはキノリン不溶分はほとんど存在しなかつ
たが、加熱処理をオートクレーブによるバツチ式
で温度440℃、処理時間2時間の条件で行なつた
ものの場合、加熱処理物中のキシレン不溶分が
13.5wt%と、管式加熱炉の場合より少ないにもか
かわらず、すでにキノリン不溶分が1.3wt%生成
していた。この結果からも明らかな様に、重質油
を加熱処理する場合には、その加熱処理の方法に
ついても十分考慮しなければならず、キノリン不
溶分の様に過度に熱重合した高分子量歴青物の生
成をさけようとする場合には、管式加熱炉による
連続的な処理をすることが好ましい。 不溶分の分離に用いられるBTX溶剤の量は、
処理しようとする重質油等の量に対して1〜5重
量倍量が適当である。溶剤量が少ないと、混合液
の粘度が高くなり不溶分の分離効率が悪くなる。
逆に溶剤量を多くすると処理量の増大をまねき不
経済である。通常BTX溶剤の使用量は重質油等
に対して1〜3重量倍量が好ましい。また、重質
油等にBTX溶剤を1〜5重量倍量加えた時に生
成する不溶分量と、物性のパラメーターとしての
溶剤不溶分量を測定する際の様に数十重量倍量以
上の多量の溶剤を加えた時に生成する不溶分量と
は必ずしも同じではなく、溶剤量が少ない時には
生成する不溶分量も少なくなる。従つて、溶剤量
を1〜5重量倍量として不溶分を生成させこれを
除去して得られる精製重質成分を、数十重量倍量
以上の溶剤を用いて分析すると少量の不溶分が検
出されることがある。しかしこの不溶分の存在
は、本発明方法の実施には支障がない。 不溶分の分離方法は遠心分離あるいはろ過等任
意の分離方法で良いが、フリーカーボン、触媒、
不純物等の微細な固形物を含むものの場合には、
それら固形物を完全に除去することが必要である
ためろ過の方法を取ることが好ましい。この様に
して不溶分を除去した清澄液からBTX溶剤を蒸
留除去して精製重質成分が得られる。 本発明の方法に用いられる精製重質成分に要求
される別の望ましい特性は、沸点が200〜350℃に
ある軽質成分を少なくとも10重量%以上、好まし
くは20重量%以上含み、かつ100℃における粘度
が100センチストークス以下であるということで
ある。BTX溶剤に不溶の成分を含まないもので
あつても、沸点350℃以下の軽質成分を全く含ま
ないものの場合、その溶融温度が著しく高くなる
ため、第1工程へその原料を送入するためのポン
プ等の設備を高温にしなければならないという不
都合が生じるうえ、軽質成分が存在しない状態で
加熱処理した場合には熱重合速度が速くなり、好
ましくないコークス状固形物を生成しやすくな
る。軽質成分の存在が熱重合速度に影響するとい
うことは、特開昭59−82417号、米国特許第
4522701号にも説明されている様に、すでに知ら
れていることである。一般に入手可能なコールタ
ール、ナフサタール、パイロリシスタールおよび
デカント油はこの特性を満足するものであるが、
これら重質油に蒸留、熱処理または水素化処理等
の操作を加えたものを用いる場合には、上記特性
の範囲から大きく逸脱しない重質成分を得ること
が望まれる。しかし、BTX溶剤に不溶の成分は
全く含まないが上記特性の範囲からはずれたもの
の場合には沸点範囲が200〜350℃の間にある芳香
族系油で希釈して用いることもできる。また、重
質油等が沸点200℃以下の軽質成分を多量に含む
ものである場合には、後記第1工程の管式加熱炉
での加熱処理における蒸気圧が高くなり、処理圧
力を高くしなければならないので不利である。 次に本発明の方法について詳細に説明すると、
第1工程は、上記精製重質成分を管式加熱炉にお
いて加熱処理し新たにキシレン不溶分を加熱処理
物中に3〜30重量%生成せしめる工程である。こ
の第1工程の加熱処理は加圧下に温度400〜600℃
で実施される。このとき、管式加熱炉の出口にお
いて温度400〜600℃、圧力1〜100Kg/cm2Gの範
囲とすることが好ましく、また温度450〜550℃、
圧力2〜50Kg/cm2Gの範囲とすることが特に好ま
しい。また、この加熱処理の際には沸点範囲が
200〜350℃の間にあり、かつ管式加熱炉における
加熱処理に際し実質的にBTX溶剤に不溶な成分
を生成しない芳香族系油を共存させることが好ま
しい。ここで言う芳香族系油とは、原料として用
いる重質油等を蒸留して得られる沸点範囲が200
〜350℃の間にあるものであり、たとえばコール
タールの240〜280℃の留分である洗浄油(吸収油
とも言う。)、280〜350℃の留分であるアントラセ
ン油あるいは石油系重質油の上記沸点範囲の芳香
族系油等である。プロセスの経済性を考えると、
異種原料から得られる芳香族系油を用いるより
も、メソフエーズピツチを製造しようとするその
原料重質油から得られる芳香族系油を用いること
が好ましいことは言うまでもない。この芳香族系
油を共存させることにより、管式加熱炉での過度
の熱重合を防ぎ精製重質成分に十分な熱分解を起
させるだけの滞留時間を与えることができると同
時に、コークス生成による管の閉塞を防ぐことが
できる。従つて、使用する芳香族系油自体が管式
加熱炉で著しく熱重合する様なものは、かえつて
管の閉塞を促進することになるため不都合であ
り、沸点の高い成分を多量に含むものは使用出来
ない。また、沸点が200℃より低い成分を多量に
含むものは、管式加熱炉でこれを液状に保つたた
めの圧力が著しく高くなり不利である。また、上
記目的のために使用する芳香族系油の量は精製重
質成分に対し1重量倍量以下で良い。また、精製
重質成分が上記沸点範囲の芳香族系油を十分に含
んでいるものの場合には、新しく芳香族系油を添
加もしくは追加しなくても良い。 加熱処理の温度と滞留時間は、加熱処理物中の
キシレン不溶分が3〜30重量%となる様に、かつ
キノリン不溶分が実質的に生成しない様に選択す
べきであり、一般的に言つて温度が低すぎるか又
は滞留時間が短かすぎるとBTX溶剤に不溶な成
分の生成量が少なく効率が悪いばかりでなく、得
られるBTX溶剤不溶性成分の分子量が低すぎる
ため、水素化後の熱処理においてメソフエーズ化
のための処理条件を厳しくする必要が生じ、その
ためにかえつてメソフエーズピツチ中のキノリン
不溶分量がやや増加するようである。逆に温度が
高すぎるか又は滞留時間が長すぎると、過度の熱
重合が起りキノリン不溶分が生成するばかりでな
く、コークスの生成による管の閉塞をまねく。温
度400〜600℃における滞留時間は通常10〜
2000secが適当であり、好ましくは30〜1000secで
ある。さらに重要なことは、この第1工程で生成
するBTX溶剤不溶分が実質的にキノリン不溶分
を含まないことに加え、その後の水素化処理で用
いる水素供与性溶媒に不溶の成分を多量に含有し
ない様な条件を選択すべきであるということであ
る。その量は水素供与性溶媒の種類によつて変る
ので定量的に限定することはできないが、生成し
たBTX溶剤不溶分を取りだし、これを水素供与
性溶媒の必要量に混合溶解した後、80〜100℃で
一昼夜静置したときに不溶物の沈殿分離が見られ
ない様であれば十分である。不溶性沈殿物が多量
に生成する様な場合には、水素化処理を連続的に
実施しようとすると、ポンプおよび配管の閉塞等
により運転不能となる。前記静置によつて沈降し
ない様な微細な不溶物の場合は水素化処理によつ
てそれが可溶性に改質されるうえ、溶媒自体が水
素を放出し溶解力を増すので問題とはならない。
この様なコントロールは第1工程の加熱処理原料
としてBTX溶剤に不溶な成分を実質的に含まな
い精製重質成分を用いることによつて初めて可能
となる。 また、加熱処理の圧力が低すぎる場合、精製重
質成分または芳香族系油中の軽質留分が気化し、
気液の分離が起り、液相部が著しく重合し易くな
りキノリン不溶分の生成と管の閉塞が起こり易く
なる。従つて圧力は高い方が好ましいと言える
が、圧力を100Kg/cm2G以上とすることは、装置
の建設費が高くなり経済的ではない。必要とされ
る圧力は加熱処理される精製重質成分または芳香
族系油を実質的に液相に保つに足りる圧力であれ
ばよい。 この第1工程における加熱処理は、最終的に得
られるメソフエーズピツチの特性、ひいては炭素
繊維の特性にまで影響を及ぼす。また、この加熱
処理は一般的に用いられているオートクレーブの
様なバツチ式の加圧加熱処理設備では到底実施出
来ないものである。なぜなら、バツチ式設備にお
いて10〜2000secという短い滞留時間をコントロ
ールすることは不可能であるため、時間単位の長
い滞留時間を持たせる様に処理温度を低くせざる
を得ない。この様な条件でBTX溶剤に不溶な成
分が生成するまで加熱処理する。キノリンに不溶
なコークス状固形物が多量に生成することを本発
明者らは経験している。十分に熱分解反応を起さ
せ、かつ過度の熱重合を防ぐためにはこの第1工
程を本発明の方法による管式加熱炉を用い、特定
された条件下で実施する必要がある。 上記の様なことを考慮して、この工程における
加熱処理条件が選定されるが、その条件が適当で
あるかどうかの判断をする一つの基準として、得
られる加熱処理物中のキノリン不溶分を測定する
方法がある。得られる加熱処理物中のキノリン不
溶分が1wt%以上となる様な条件は、すでに管式
加熱炉において過度の熱重合が起つていることを
示しており、管の閉塞を予想させるものである。
また、この様な厳しい条件で処理して得た加熱処
理物を用いる場合には、生成した高重合物をその
後の工程のどこかで分離除去することが不可欠と
なる。逆に、加熱処理物中のキノリン不溶分が
1wt%以下である場合は、その後の工程でこれを
除去しなくても良い。 加熱処理物中のキノリン不溶分量に関して、上
記の様な厳密なコントロールと評価が可能となつ
たのは、この工程の加熱処理を管式加熱炉で実施
することに加え、原料としてキシレン不溶分を含
まないかもしくはこれを除去したものを用いるこ
とによるものである。 また、管式加熱炉の直後にソーキングドラムを
設置して加熱処理の滞留時間を調整する方法が知
られており、本発明の方法においてもこのソーキ
ングドラムを必要に応じて設置することが出来
る。しかし、ソーキングドラムでの滞留時間を非
常に長くしなければならない様な温度等の条件を
選択すると、バツチ式処理の場合と同様にキノリ
ン不溶分生成の問題が発生するので好ましくな
い。 したがつて、必要に応じてソーキングドラムを
設置する場合であつても、管式加熱炉における前
記要件を十分考慮しておく必要がある。 次の第2工程は、第1工程で得られる加熱処理
物を常圧下又は減圧下に350℃(常圧換算)以下
の温度で蒸留又はフラツシングして熱分解重質成
分を得る工程である。この工程では、得られる重
質成分が、沸点範囲が200〜350℃の間にある軽質
成分を少なくとも10重量%以上、好ましくは20重
量%以上含み、100℃における粘度が1000センチ
ストークス以下となる様に蒸留又はフラツシング
の条件が選定される。 また、該重質成分から不溶分を除いて得られる
可溶性成分は第1工程への循環用重質成分となる
ので、該可溶性成分が第1工程に送入される加熱
処理用原料としての特性を満たす様にこの第2工
程で調整しておくことが好ましい。また、この工
程の蒸留又はフラツシングの条件は得られる熱分
解重質成分の沸点範囲が、第3工程で用いる
BTX溶剤の沸点よりも高くなる様に選定するこ
とが好ましい。なぜならば、熱分解重質成分中に
用いるBTX溶剤とほぼ同じ沸点範囲の熱分解軽
質油が含まれている場合には、第4工程の溶剤回
収に際しこの熱分解軽質油とBTX溶剤を分離す
るために分留効率の高い精留塔が必要となるから
である。 また、この第2工程で得られる熱分解重質成分
は、BTX溶剤不溶分を3〜30重量%、通常5〜
20重量%含み、キノリン不溶分を実質的に含まな
いものである。 また、この第2工程では、蒸留又はフラツシン
グされた沸点350℃以下の軽質成分をさらに沸点
範囲が200〜350℃の間にある成分とそれ以下の沸
点範囲の成分に分ける操作を同時におこなつても
良い。ここで得られる沸点範囲が200〜350℃の間
にある成分は、第1工程で芳香族系油を希釈油と
して用いる場合に、そのまま該第1工程の希釈油
として用いることができる。 次の第3工程は、熱分解重質成分にBTX溶剤
を加え、生成する不溶性成分を分離回収する工程
である。ここでは、BTX溶剤を加えようとする
熱分解重質成分が、該溶剤の沸点以下の温度で十
分流動性のある液状であることが望ましい。なぜ
なら、この熱分解重質成分が溶剤の沸点以上の温
度で固体もしくは著しく粘度の高いものである場
合には、それをBTX溶剤に混合溶解するための
特別な設備、例えば加圧加熱溶解設備のようなも
のが必要となり、また常温近辺の温度で混合溶解
を実施しようとすると、混合溶解のための時間が
著しく長くなり効率が悪いからである。 熱分解重質成分が溶剤の沸点以下の温度で十分
流動性のある液状である場合には、溶剤への溶解
が短時間で終了するため、熱分解重質成分を100
℃程度にしておき、この配管にBTX溶剤を送入
することで十分混合溶解が可能であり、また必要
に応じ簡単な溶解槽の様な設備を設置するだけで
十分である。上記した第2工程の諸条件を満たす
様にして取得された熱分解重質成分は、一般に溶
剤の沸点以下の温度で十分流動性のある液状とな
る。 従つて、第3工程における溶剤処理の条件は、
通常、常温から用いる溶剤の沸点までの温度で、
かつ当該熱分解重質成分が十分な流動性を持つに
足りる温度で、常圧〜2Kg/cm2G程度の圧力下
に、可溶性成分が溶解するに十分な時間撹拌する
のが適当であり、また、当該熱分解重質成分のみ
を加熱しておき、これに常温近辺の溶剤を加える
ことも可能である。 第3工程で用いるBTX溶剤の量は熱分解重質
成分に対し1〜5重量倍量が適当である。この範
囲が好ましい理由は、原料の精製における場合と
同様であり、下限は不溶性成分の分離効率から、
また上限は処理操作の経済性から規定されるもの
である。通常は熱分解重質成分に対して1〜3重
量倍量の溶剤を使用するのが好ましい。 また、この第3工程でBTX溶剤よりも溶解性
の著しく低い貧溶剤を用いた場合には得られる不
溶性成分の中にメソフエーズ化しにくい低分子量
成分が多量に含まれることになり均質なメソフエ
ーズピツチを得ることが困難になる。逆にBTX
溶剤よりも著しく溶解性の高い良溶剤を用いると
得られる不溶性成分の収率が低下するばかりでな
く、可溶成分中に高分子量の成分が含まれること
になり、これを循環して第1工程で加熱処理する
際にキノリン不溶分等の好ましくない成分が生成
することになる。 不溶性成分の分離回収の方法は沈降分離、液体
サイクロン、遠心分離あるいはロ過等任意の分離
方法で良いが、連続運転が可能な分離方法を選択
することが好ましい。また、分離、回収した不溶
性成分をくりかえしBTX溶剤で洗浄しても良い。
本発明の方法の場合、特に洗浄工程を取入れない
くても、十分目的とするメソフエーズピツチは得
られるが、メソフエーズ化の遅い成分を極力除去
するために2回以内の洗浄をすることは好ましい
ことである。不溶性成分分離または回収の条件
は、用いる溶剤の沸点以下の温度が好ましく、通
常、常温近辺の温度で十分である。また、原料の
精製に用いられる溶剤とこの第3工程で用いられ
る溶剤の組合せは特に限定されるものではない
が、同一の溶剤を用いることがより好ましい。 この第3工程で得られる不溶性成分すなわち高
分子量歴青物は、通常、キノリン不溶分が1重量
%以下、キシレン不溶分が40重量%以上、好まし
くは50重量%以上であり、かつ光学的に等方性で
ある。またこの高分子量歴青物中にはBTX溶剤
に可溶な成分も一部残存しうるが、それは第2工
程で設定した蒸留又はフラツシングの条件に対応
する沸点付近の比較的沸点の低い成分を含む重質
油であり、従つてその大半はたとえば減圧蒸留、
熱処理等によつて容易に除去されるものである。
上記本発明の第2工程の規定を逸脱して350℃以
上の高温で重質油等の加熱処理物を蒸留して高軟
化点ピツチとしたものからBTX溶剤不溶分を得
た場合には、洗浄が不十分であつたために残存す
る可溶性成分はすべに高温で蒸留して除去されな
かつた高沸点物であるため、それを後の処理で除
去するのは容易ではなく、従て洗浄を十分に行な
う必要があり不経済とならざるを得ない。この様
な高軟化点ピツチから得られるBTX溶剤不溶分
と本発明の第3工程で得られる高分子量歴青物と
では、その中に残存するBTX溶剤可溶分の組成、
性質にも違いがあり、この点も本発明の方法にお
いて特徴的なことである。また、この第3工程で
得られる高分子量歴青物は、その中のキシレン不
溶分がほぼ100重量%近くになるまで洗浄した場
合には、メトラー法で測定される軟化が350℃以
上となり、メトラー法による軟化点の測定が不能
となるが、キシレン不溶分が60〜80重量%である
場合には、150〜300℃程度の軟化点を示す。これ
らの高分子量歴青物は、350℃未満の温度で加熱、
融解し、冷却してもその組織はやはり光学的に等
方性であり、ほぼ全面異方性を示す様なメソフエ
ーズピツチとはならない。 次の第4工程は、第3工程で不溶性成分を除去
して得られる清澄液から溶剤を蒸留除去して、必
要に応じ該清澄液中に残存する余剰の軽質成分を
も留去して、可溶性成分を回収する工程である。
この第4工程は単なる蒸留操作であり特別の技術
を必要とするものではない。しかし、得られる可
溶性成分は、第2工程の蒸留又はフラツシングの
条件により低沸点側が、また第3工程のBTX溶
剤による不溶性成分の除去により高沸点側が決め
られた特定の組成を持つものであり、また、一般
に、実質的にBTX溶剤に不溶な成分を含まず、
沸点範囲が200〜350℃の間にある軽質成分を10重
量%以上、好ましくは20重量%以上含み、かつ
100℃における粘度が1000センチストローク以下
という特性を満足するという意味において、本質
的に第1工程に送入される精製重質成分と同じも
のであると言うことができる。 本発明の方法においては、この第4工程で得ら
れる可溶性成分は第1工程に連続的に循環されて
加熱処理を受け、新しくBTX溶剤に不溶の成分
を生成する。第4工程で得られる可溶性成分が第
1工程の原料として好適に使用できること、また
それから得られる炭素繊維の特性がすぐれたもの
であるということは次の例からも明らかである。 市販のコールタールAから沸点280℃以下の軽
質油を除去して得た重質成分に2重量倍量のキシ
レンを混合し、生成した不溶分をろ過により除去
した後、キシレンを蒸留除去して精製重質成分を
得た。この精製重質成分を内径6mm、長さ40mの
加熱管を溶融塩浴中に浸漬した構造を持つ管式加
熱炉において温度520℃、圧力20Kg/cm2G、原料
チヤージ量17.5Kg/hrの条件で加熱処理し、続い
て常圧下280℃にて蒸留して熱分解重質成分を得
た。これに2重量倍量のキシレンを入れ混合溶解
した後、生成した不溶分を連続的に遠心分離し
た。得られた不溶分をさらに2重量倍量のキシレ
ン中に分散混合した後、遠心分離して不溶分の洗
浄を行なつた。この不溶分を減圧乾燥して得られ
た高分子量歴青物は精製重質成分に対して11.1重
量%であつた。また、不溶分を除去して得た清澄
液からキシレンを蒸留除去して得た可溶性成分を
原料として、上記と同一条件で加熱処理、蒸留、
不溶分の採取および減圧乾燥を行なつたところ、
可溶性成分に対して8.4重量%の高分子量歴青物
が得られた。この2つの高分子量歴青物をそれぞ
れ3重量倍量の水素化アントラセン油に溶解し、
内径10mm、長さ100mの加熱管を溶融塩浴中に浸
漬した構造を持つ管式加熱炉において温度440℃、
圧力50Kg/cm2G、原料チヤージ量6.5Kg/hrの条
件下で加熱処理し、続いて常圧下400℃でフラツ
シユ蒸留することにより溶媒と軽質成分を除去し
て水素化ピツチを得た。それぞれの水素化ピツチ
を重合フラスコに入れ窒素吹き込み量80/min
(ピツチ1Kg当り)として、温度450℃で熱処理し
て、メトラー法軟化点約300℃の紡糸ピツチを調
整した。それぞれの紡糸ピツチから炭素繊維を製
造し、1000℃で炭化したものの特性を測定したと
ころ、もとの精製重質成分から得たものの強度は
289Kg/mm2であり、可溶性成分から得たものの強
度は303Kg/mm2であつた。 また、別のコールタールBを用いて同様の比較
テストを行なつた場合にも、精製重質成分から得
た炭素繊維の強度は300Kg/mm2、可溶性成分から
得たものの強度は317Kg/mm2であり、可溶性成分
を加熱処理することにより新たに生成するBTX
溶剤不溶性成分を用いて炭素繊維を製造すると、
よりすぐれた特性の炭素繊維が得られることが見
いだされた。 すなわち本発明の構成が紡糸ピツチ収率を高く
し、さらに良質な紡糸ピツチおよび炭素繊維を製
造するうえで極めて効果的であると認識されたの
は上記の様な知見を得ることができたことによる
ものである。 また、第1工程に循環される量は、原料である
精製重質成分に対して1重量倍量以上であること
が好ましく、特に2〜6重量倍量であることが好
ましい。この循環量は原料である精製重質成分に
対する高分子量歴青物すなわち水素化用原料の収
率に大きく影響する。従つて循環量が非常に少な
いと、収率の大幅な向上が期待できない。また、
第4工程で得られる可溶性成分の量は、第1工程
の加熱処理の際にBTX溶剤不溶分をどの程度生
成させるかということと、第2工程で軽質成分を
どの程度除去するかということによつて決るもの
であり、循環可能な最大量はおのずと決るもので
ある。しかし、必ずしも万全量を循環する必要は
なく、原料と条件によつて決る循環可能最大量以
下の範囲で任意に選択できる。収率の向上、プロ
セスの効率を考えると循環量は2〜6重量倍量と
するのが特に好ましい。 本発明の方法によつて、水素化用高分子量歴青
物ひいては紡糸用メソフエーズピツチの収率が高
くなることを例をもつて説明する。 先に述べた市販のコールタールAから得た精製
重質成分を内径6mm、長さ27.5mの加熱管を溶融
塩浴中に浸漬した構造を持つ管式加熱炉において
温度510℃、圧力20Kg/cm2G、原料チヤージ量
12.0Kg/hrの条件で加熱処理した後、常圧下280
℃で蒸留して熱分解重質成分を得た。このものに
2重量倍量のキシレンを混合し生成した不溶分を
連続遠心分離機により回収し、さらに2重量倍量
のキシレンで洗浄後、キシレンを乾燥除去して得
た高分子量歴青物は精製重質成分に対して7.8重
量%であつた。一方、同じ精製重質成分を用い、
上記と同じ条件で加熱処理および不溶性成分の回
収を行なうと同時に、不溶性成分を除去した清澄
液からキシレンを蒸留除去して可溶性成分を回収
し、この可溶性成分を精製重質成分に対して3重
量倍量となる様に管式加熱炉に循環しながら、連
続的に運転を実施した。このとき、精製重質成分
の送入量は3.0Kg/hr、循環される可溶性成分の
量を9.0Kg/hrとし、管式加熱炉における滞留時
間が同じになる様にした。この運転で得られた不
溶性成分を2重量倍量のキシレンで洗浄後乾燥し
て得た高分子量歴青物は、もとの精製重質成分に
対して31.0重量%であつた。これは可溶性成分を
循環しなかつた場合の約4倍に相当する。循環量
を3重量倍にしたときに得られる高分子量歴青物
の収率が約4倍になるということは、可溶性成分
から精製重質成分とほぼ同じ量の高分子量歴青物
が得られていることになり、可溶性成分を単独に
加熱処理したときの結果からは予想できなかつた
ことである(前記したように、精製重質成分から
の不溶性成分の収率が11.1重量%に場合可溶性成
分の単独循環では不溶性成分の収率は8.4重量%
にすぎない。)。また、この運転では、可溶性成分
が精製重質成分に対して約23重量%余剰であつた
ので、循環量をさらに多くすることが可能であ
り、高分子量歴青物の収率はさらに多くすること
ができると予想される。この様に本発明の方法に
より水素化用の高分子量歴青物の収率を飛躍的に
向上させることができる。 前述の様にして本発明の第1〜第4工程を経
て、さらに第4工程から第1工程に可溶性成分を
循環しながら連続的に加熱処理と不溶分の回収を
行ない、このとき第3工程から得られる不溶性成
分、すなわち高分子量歴青物は続いて水素化処理
を受ける。 この高分子量歴青物はそのまま触媒を用いて、
水素ガス加圧下に水素化することは困難であるた
め、水素供与性溶媒の存在下に加熱処理して水素
化する必要がある。また第3工程で得られる高分
子量歴青物は、使用したBTX溶剤を含んだまま
のものであるので、これを除去することが望まし
い。その除去方法は、常圧下または減圧下におけ
る単なる加熱蒸発あるいは蒸留等任意の手段が良
く、またその除去の時期も特に限定の要なく、た
とえば水素供与性溶媒と混合する前でも良く、あ
るいは溶剤を含んだままのペースト状の不溶成分
をそのまま水素供与性溶媒に混合した後にBTX
溶剤を選択的に除去することもできる。 また、水素供与性溶媒を用いたピツチ等高分子
量歴青物の水素化は、特開昭58−196292号、特開
昭58−214531号、特開昭58−18421号などにより
すでに公知の方法を用いることができるが、触媒
を用いる処理はその触媒を分離する工程が必要と
なるので、無触媒下での処理が経済的で望まし
い。ここで用いる水素供与性溶媒とはテトラヒド
ロキノリン、テトラリン、ジヒドロナフタリン、
ジヒドロアントラセン、水添した洗浄油、水添し
たアントラセン油、ナフサタール又はパイロリシ
スタールの軽質分を部分水添したものが含まれる
が、先に述べた様に、水素供与性溶媒の選択にあ
たつては、第3工程で得られる高分子量歴青物に
対する溶解性を十分に考慮する必要があり、高分
子量歴青物に対する溶解力を考えると、テトラヒ
ドロキノリン、水添した洗浄油、水添したアント
ラセン油が好適である。 また、水素化の方法は、オートクレーブの様な
バツチ式で自生圧下に行なうこともできるが、バ
ツチ式の場合、大型化するにしたがつてその温度
コントロールが難しくなると同時に、容器内外の
温度差が大きくなることなどの理由から、水素化
処理時にコークス状の固形物が生成しやすくな
る。この固形物を水素化後にろ過等の方法により
除去するのは容易ではないので、水素化処理時に
固形物を生成しない方法が好ましい。その好まし
い方法の一つは、高分子量歴青物を水素供与性溶
媒の1〜5重量倍量の存在下に、管式加熱炉にお
いて温度400〜460℃、圧力20〜100Kg/cm2Gの条
件下に連続的に水素化する方法である。この方法
によれば、水素化が連続的に実施できるので効率
が良いばかりでなく、コークス状固形物を生成さ
せることなく、高分子量歴青物を水素化すること
ができる。用いる溶媒の量は高分子量歴青物の水
素化が十分効果的であり、かつ経済的な理由から
上記の様に1〜5重量倍量とするのが好ましい。
また、この方法の場合、温度400〜460℃における
滞留時間は通常10〜120分の範囲が好ましい。 次に水素化された混合液は、蒸留等任意の方法
により溶媒を除去して水素化ピツチを得る。この
方法は通常のバツチ式または連続式の蒸留設備で
実施し得るが、本発明の方法により第3工程から
得られる高分子量歴青物はBTX溶剤に可溶な比
較的沸点の低い成分を含んでいるので、水素化処
理の後、処理された混合液を、フラツシユ蒸留塔
において圧力0〜3Kg/cm2A、温度300〜530℃の
条件下に連続的にフラツシユ蒸留することによ
り、溶媒と高分子量歴青物中の低沸点成分および
水素化処理により生成した軽質成分等を同時に分
離除去して、フラツシユ蒸留塔底から水素化され
たピツチを得る方法が好適である。この方法によ
れば、軟化点が100〜200℃、キノリン不溶分が1
重量%以下、キシレン不溶分が40重量%以上の光
学的に等方性である水素化ピツチを連続的に得る
ことができる。上記以外の方法を用いて水素化及
び溶媒除去を実施する場合においても、水素化ピ
ツチの性状が上の範囲になる様にすることが望ま
しい。キノリン不溶分についてはすでに述べた通
りであるが、キシレン不溶分についてはこれが著
しく少ない場合には次の熱処理でメソフエーズ含
有量を90%以上とするための処理条件が厳しくな
りすぎるため、この熱処理においてキノリン不溶
分が多量に生成することになり好ましくない。ま
た、溶媒や軽質成分が多量に残留したものを次の
熱処理にかけるのは処理量の増大をまねき好まし
くない。これらの条件を満足する水素化ピツチの
軟化点は通常100〜200℃の範囲となる。 溶媒を蒸留除去して得られた水素化ピツチは次
に熱処理される。この方法は、減圧下もしくは不
活性ガスの吹き込み下に350〜500℃の温度で10〜
300分間熱処理するというすでに公知の方法を採
用することができるが380〜480℃、時間10〜180
分とすることが好ましい。また、この溶媒を除去
して得られた水素化ピツチを、たとえば減圧下又
は常圧下に不活性ガス等の流通下薄膜蒸発装置、
流下膜式熱処理装置等を用いて連続的に350〜500
℃の温度で熱処理をしても良い。 この熱処理過程でピツチのメソフエーズ化が起
り、実質的に等方性の水素化ピツチが、ほぼ全面
異方性を示すメソフエーズピツチへと転換され
る。本発明の方法で得られる高分子量歴青物を用
いる場合には、それが特定の方法と条件で製造さ
れた厳選された成分であるため、容易に全面異方
性のメソフエーズピツチへと転換することが可能
であり、従来技術では製造できなかつた(1)軟化点
が低く、(2)メソフエーズ含有量がが高く、(3)キノ
リン不溶分が少なく、さらに(4)キシレン可溶分が
少ないという4つの特性を同時に満足する特に均
質なメソフエーズピツチを製造することができ
る。 さらに図面をもつて本発明の第1〜第4工程を
説明する。 第1図において、1はBTX溶剤不溶分を除去
した精製重質成分タンクであり、この精製重質成
分はライン2を通り管式加熱炉5に送られる。こ
のとき必要に応じて芳香族系油タンク3からライ
ン4を通り希釈用の芳香族系油がライン2に混合
される。管式加熱炉5で加熱処理された処理液は
ライン6を通つて蒸留塔7に送られ、ここで軽質
成分が塔頂からライン17を通して系外に除去さ
れ、塔底液として熱分解重質成分が得られる。管
式加熱炉5での加熱処理に希釈剤として芳香族系
油を使用する場合には、蒸留塔7においてこの留
分を分離し、これをライン8を通して芳香族系油
タンク3にもどす。蒸留塔7の塔底液である熱分
解重質成分はライン9を通つて不溶分離機10へ
送られ、そのときBTX溶剤タンク11からBTX
溶剤がライン12を通つて送られ熱分解重質成分
と混合される。このときライン9とライン12の
合流点の後、不溶分分離機10の前に混合タンク
を設置しても良い。熱分解重質成分とBTX溶剤
の混合物は、不溶分分離機10に送られここで溶
剤不溶分すなわち高分子量歴青物がライン18を
通して回収される。不溶分を除去した清澄液はラ
イン13を通つて溶剤回収塔14に送られ、ここ
で溶剤が回収されライン15を通つてBTX溶剤
タンク11にもどされる。一方、溶剤回収塔14
の塔底液として得られる可溶性成分はライン16
を通つてライン2へ循環されさらに加熱処理を受
ける。回収した溶剤可溶性成分の一部のみを循環
する場合は、ライン16の任意の場所から系外に
副生油として取り出すことができる。 第1図は本発明の第1〜第4工程が理解され易
い様にするために簡略化して書かれているが、本
発明の方法はこの図に制約されるものではない。
たとえば、第1図中の第2工程の蒸留塔7をフラ
ツシユ塔又はフラツシユドラムにし、このフラツ
シユ塔又はフラツシユドラムでは除去すべき軽質
成分の一部のみを除去し、第4工程の溶剤回収塔
14を分留塔にして、この分留塔において溶剤の
回収と残余の軽質成分の除去を同時に行なう様に
するなど、本発明の必須の構成を逸脱することな
く設備やその組合わせの変更をすることは可能で
ある。 なお、この明細書中で用いたキシレン不溶分お
よびキノリン不溶分の定量は下記の手段によつ
た。 試料1gを遠沈管に精秤し、これに30c.c.の溶剤
(キシレン又はキノリン)を入れ、80℃の湯浴中
に遠沈管を浸し、約1時間撹拌しながら溶解す
る。遠沈管を湯浴から取り出し、室温まで冷却し
た後、5000rpmの遠心分離機により10分間遠心分
離する。遠沈管の上澄み液を注射器にて静かに抜
き出す。遠沈管に30c.c.の溶剤を入れ、80℃の湯浴
中約30分間撹拌しながら沈でん物を洗浄分散させ
る。遠沈管を湯浴から取り出し室温にて上記遠心
分離を行なう。上澄み液を注射器により抜き出し
た後、再度溶剤30c.c.を加え、上記洗浄分散と遠心
分離操作を行なう。上澄み液を抜き出し、遠沈管
に残つた不溶分をキシレンにより洗い出し、G−
4ガラスフイルターに移し吸引ろ過する。ガラス
フイルター中の内容物をキシレン約10c.c.で2回洗
浄し、さらにアセトン10c.c.で洗浄した後、110℃
の乾燥器中で乾燥して秤量する。 (発明の効果) 本発明の方法は、BTX溶剤に不溶な成分を実
質的に含まない精製重質成分を、特定の方法と条
件で加熱処理したてときに新たに生成するBTX
溶剤に不溶な成分を回収し、これをメソフエーズ
ピツチ製造用の原料とするため、従来の方法では
得ることのできなかつた軟化点が低く極めて均質
なメソフエーズピツチを製造することが可能であ
る。さらに本発明の方法で得られたメソフエーズ
ピツチからは特に優れた特性をもつ炭素繊維を得
ることができる。すなわち本発明の方法で得られ
るメソフエーズピツチは(1)軟化点が低く(メトラ
ー法軟化点310℃以下)、(2)メソフエーズ含有量が
高く(90%以上)、(3)キノリン不溶分が少なく
(10重量%以下)、(4)キシレン可溶分が少なく(10
重量%以下)、さらに(5)それから1000℃で炭化し
たものの強度300Kg/mm2以上、黒鉛化したときの
強度400Kg/mm2、弾性率60ton/mm2以上の高性能炭
素繊維が容易に得られるという、5つの特性を同
時に満足するということにおいて従来のメソフエ
ーズピツチとは明らかに異なるものである。 さらに、特定の条件下に処理することによつ
て、回収される可溶性成分を原料の精製重質成分
と本質的に同等のものとすることができるため、
これを循環して使用することにより水素化用高分
子量歴青物の収率を飛躍的に高めることが可能で
あり、またその工程を連続的に実施できるので極
めて効率的である。また、BTX溶剤不溶分を実
質的に含まない精製重質成分を原料とし、特定の
方法と条件で処理するため、メソフエーズピツチ
を製造するすべての工程においてコークス状固形
物の生成を防ぐことができ、従つてこの固形物を
除去する工程を必ずしも必要としない点において
も極めて効率的である。 さらに本発明の方法では、水素化用高分子量歴
青物がすべて人為的に造り出されるものであるた
め、その性状のコントロール、ひいてはメソフエ
ーズピツチの性状のコントロールが容易である。
このことは、本発明の方法が出発原料の性状変化
に十分対応できるということを意味し、効率的で
ある上に、フレキシビリテイーのあるプロセスで
あるといえる。さらに本発明の方法で得られたメ
ソフエーズピツチからは極めてすぐれた特性の炭
素繊維を製造することが可能である。 (実施例) 以下、実施例および比較例をあげて本発明をさ
らに具体的に説明する。以下の実施例および比較
例において「%」および「倍量」はそれぞれ特記
しない限り「重量%」および「重量倍量」を意味
する。 実施例 1 第2表に示す性状の市販のコールタールを280
℃で蒸留して軽質成分を除去し、重質成分を得
た。これに2倍量のキシレンを加え混合溶解後、
生成した不溶性成分を常温下に連続ろ過機(川崎
重工リーフフイルター)にてろ過し、不溶性成分
を除去した。得られたろ液を蒸留してキシレンを
除去し、もとのコールタールに対し70.0%の収率
で精製重質成分を得た。 この精製重質成分を原料として、第1図に示し
た方法で第1工程の加熱処理から第4工程の可溶
成分の回収までを連続的に実施した。各工程の以
下の運転条件はに設定した。
【表】
【表】 この運転で得られた不溶性成分は精製重質成分
に対して94.5%であつた。このものはキシレンと
キシレン可溶性成分を含んでいるので、さらに2
倍量のキシレン中に分散し、常温下に混合して前
と同じ遠心分離機で再度不溶性成分を分離回収す
ることにより洗浄を行なつた。洗浄を行なつて得
た不溶性成分を減圧下に加熱してキシレンを除去
した不溶性成分すなわち高分子量歴青物を得た。
このものの収率は精製重質成分に対し31.0%であ
り、キシレン不溶分74.7%、キノリン不溶分0.2
%で全面等方性であつた。また、この運転中、各
工程での生成物をサンプリングし、分析した結果
は第3表の様であつた。次にこの高分子量歴青物
を3倍量の水素化アントラセン油に混合溶解した
後、内径10mm、長さ100mの加熱管を溶融塩浴中
に浸漬した構造を持つ管式加熱炉において温度
440℃、圧力50Kg/cm2G、原料チヤージ量6.5Kg/
hrの条件で加熱処理することにより連続的に水素
化し、この処理液を直ちにフラツシユ蒸留塔に送
り常圧下、400℃でフラツシユ蒸留して水素化ピ
ツチを得た。水素化ピツチの収率は高分子量歴青
物に対して86.8%であり、軟化点139℃(JIS環球
法)、キシレン不溶分56.2%、キノリン不溶分0.2
%であつた。 さらにこの水素化ピツチを重合フラスコに入れ
常圧下窒素を80/min(水素化ピツチ1Kg当り)
吹き込みながら、450℃の塩浴中で45〜55分熱処
理した。得られたメソフエーズピツチの性状は第
4表の様であつた。メソフエーズピツチの水素化
ピツチに対する収率は、実験番号1では74%、実
験番号2では72%であつた。 また第4表の実験番号2のメソフエーズピツチ
を径0.25mm、長さ0.75mm、のノズル孔を持つ紡糸
機にて温度330℃、巻取速度700m/minで紡糸
し、空気中1℃/minの昇温速度で320℃まで昇
温し、320℃の温度で20分加熱することにより不
融化し、続いて窒素雰囲気中1000℃で炭化し、さ
らに2500℃で黒鉛化した。得られた炭素繊維の特
性は第5表に示す様であつた。
【表】
【表】
【表】
【表】 実施例 2 実施例1と同じ精製重質成分を原料として、運
転条件のうち第1工程の管式加熱炉における加熱
処理の温度を520℃とする以外は実施例1と同一
条件で第1〜第4工程、さらに第4工程から第1
工程への循環を行なう運転を実施し、第3工程か
ら溶剤不溶性成分を得た。この不溶性成分を2倍
量のキシレンに分散した後遠心分離するという洗
浄操作を2回くりかえし、得られた不溶性成分を
減圧下に加熱してキシレンを除去し、高分子量歴
青物を得た。このもののキシレンン不溶分は83.5
%、キノリン不溶分は0.2%であつた。また、そ
の収率はもとの精製重質成分に対して38.9%であ
つた。 この高分子量歴青物を実施例1と同様にして連
続的に水素化した後、熱処理してメトラー法軟化
点303℃の紡糸ピツチを得た。なお、水素化ピツ
チの高分子量歴青物に対する収率は94.6%、紡糸
ピツチ(メソフエーズピツチ)の水素化ピツチに
対する収率は76%であつた。この紡糸ピツチはメ
ソフエーズが100%であり、キノリン不溶分4.7
%、キシレン可溶分5.3%であつた。また、この
紡糸ピツチから前記と同様にして紡糸、不融化、
炭化および黒鉛化して得た炭素繊維の特性は第6
表に示す様であつた。
【表】 比較例 1 実施例1で用いた精製重質成分を原料とし、こ
の重質成分の第1工程への送入量を12Kg/hrとし
て管式加熱炉における加熱処理を実施した。この
とき第4工程で得られる可溶性成分を第1工程に
循環しない以外は実施例1と同一条件で第1〜4
工程の運転を行なつて、第3工程から溶剤不溶性
成分を回収し、これをキシレンでもう一度洗浄し
て高分子量歴青物を得た。このものの収率は精製
重質成分に対して7.8%であつた。また、このも
ののキシレン不溶分は70.9%、キノリン不溶分は
0.3%であつた。 この高分子量歴青物を実施例1と同一条件で連
続的に水素化し、さらに熱処理してメトラー法軟
化点299℃のメソフエーズピツチを得た。このも
のの組織はメソフエーズ100%であり、キシレン
可溶分5.8%、キノリン不溶分5.5%であつた。 このメソフエーズピツチを実施例1と同様にし
て紡糸、不融化後1000℃で炭化して炭素繊維を製
造し、その特性を測定したところ繊維径は8.1μ、
強度282Kg/mm2、弾性率17.3ton/mm2、伸度1.63%
であつた。 比較例 2 比重1.302、キシレン不溶分30.3%、キノリン
不溶分0.7%、軟化点91℃(JIS環球法)の性状を
持つ市販のピツチを4mm(5mesh)以下の大きさ
に粉砕したもの1.5Kgに2倍量のキシレン3Kgを
加え、撹拌しながらキシレンの沸点温度で6時間
煮沸溶解した。一晩放冷後、この混合物を遠心分
離して不溶性成分を採取し、これにさらに3Kgの
キシレンを加え、上記と同様にして撹拌しながら
6時間煮沸溶解した。放冷後、遠心分離して不溶
性成分を回収し、さらに3Kgのキシレンを用いて
上記同様の操作をもう一度実施した。得られた不
溶性成分を今度はアセトン中に分散した後グラス
フイルターでろ過することにより不溶性成分の洗
浄を行なつた。これを減圧乾燥して得た不溶性成
分すなわち高分子量歴青物はもとのピツチに対し
て39.0%であり、キシレン不溶分は89.1%であつ
た。 このものを水素化アントラセン油の3倍量に混
合溶解したところかなりの不溶分が認められ、管
式加熱炉による連続的な水素化を実施することが
できなかつた。そこで、この混合物をオートクレ
ーブに入れ、自生圧下に温度440℃で60分加熱処
理することにより水素化した。このときオートク
レーブの最終圧力は153Kg/cm2Gに達した。オー
トクレーブを放冷後、内容物を取り出したところ
オートクレーブの内壁にコークス状の固形物がか
なり付着していた。また、この処理液をグラスフ
イルターでろ過したところ水素化前の高分子量歴
青物に対して約17%の不溶分が生成していること
が認められた。次にこのろ液を減圧蒸留して400
℃までの留分を除去してもとのピツチに対して
29.9%の収率で水素化ピツチを得た。これを実施
例1と同様にして熱処理メトラー法軟化点298℃
のメソフエーズピツチを得た。このものの組織は
ほぼメソフエーズ100%でありまたキシレン可溶
分9.7%、キノリン不溶分0.1%と均質なものであ
つた。 このメソフエーズピツチを実施例1と同様にし
て紡糸し、不融化後1000℃で炭化して得た炭素繊
維の特性は繊維径8.4μ、強度216Kg/mm2、弾性率
15.6ton/mm2、伸度1.39%であり、メソフエーズ
ピツチが均質であるにもかかわらず得られた炭素
繊維の特性は低いものであつた。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の一つの実施態様を示す概略図
である。第1図において、1は精製重質成分タン
ク、3は芳香族系油タンク、5は管式加熱炉、7
は蒸留塔、10は不溶分分離機、11はBTX溶
剤タンク、14は溶剤回収塔である。

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1 石炭系重質油、石油系重質油もしくはそれら
    を蒸留、熱処理又は水素化処理して得られる重質
    成分であつて、実質的に単環の芳香族系炭化水素
    溶剤に不溶の成分を含まないものであるか、もし
    くは上記重質油又は重質成分に単環の芳香族系炭
    化水素溶剤またはこれと同等の溶解性を持つ溶剤
    の該重質油又は重質成分に対して1〜5重量倍量
    を加えたときに生成する不溶性成分を分離除去し
    た後、溶剤を蒸留除去して得られる精製された重
    質油又は重質成分を原料とし、該原料を沸点範囲
    が200〜350℃の間にあり、かつ管式加熱炉におけ
    る加熱処理に際し、実質的に単環の芳香族系炭化
    水素溶剤に不溶の成分を生成しない芳香族系油の
    上記原料に対して1重量倍量以上の存在下又は非
    存在下に管式加熱炉において加圧下に温度400〜
    600℃の条件で加熱処理して、実質的にキノリン
    不溶分を生成させることなく、キシレン不溶分を
    加熱処理物中に3〜30重量%生成させる連続的な
    第1工程と、第1工程で得られた加熱処理物を
    350℃以下の温度で蒸留又はフラツシングして、
    軽質成分の一部を除き、熱分解重質成分を得る連
    続的な第2工程と、該熱分解重質成分に単環の芳
    香族系炭化水素溶剤又はこれと同等の溶解性を持
    つ溶剤を該熱分解重質成分に対して1〜5重量倍
    量加え、生成する不溶性成分を分離回収して高分
    子量歴青物を得る連続的な第3工程と、第3工程
    で不溶分を除去した清澄液から溶剤を蒸留除去し
    て単環の芳香族系炭化水素溶剤に可溶の成分を得
    る連続的な第4工程から成る水素化用原料調整工
    程において、第4工程で得られる可溶性成分の全
    部又は一部を第1工程に循環しながら第1〜第4
    工程を連続的に実施することにより、第3工程か
    ら高分子量歴青物を得、該高分子量歴青物を水素
    供与性溶媒の存在下に加熱処理することにより水
    素化した後、溶媒を除去して実質的に等方性の水
    素化ピツチを得、これをさらに加熱処理すること
    によりメソフエーズピツチとすることを特徴とす
    る高性能炭素繊維製造用メソフエーズピツチの製
    造方法。 2 第1工程の管式加熱炉における加熱処理の条
    件が、管式加熱炉の出口において温度400〜600
    ℃、圧力1〜100Kg/cm2Gである特許請求の範囲
    第1項に記載の方法。 3 加熱処理の条件が、管式加熱炉の出口におい
    て温度450〜550℃、圧力2〜50Kg/cm2Gである特
    許請求の範囲第2項に記載の方法。 4 第4工程で得られる可溶性成分を第1工程に
    循環する循環量が原料の重質油又は重質成分に対
    して1重量倍量以上である特許請求の範囲第1項
    に記載の方法。 5 循環量が2〜6重量倍量の範囲にある特許請
    求の範囲第4項に記載の方法。 6 第3工程で得られる高分子量歴青物の水素化
    処理が、該高分子量歴青物に対して1〜5重量倍
    量の水素供与性溶媒の存在下に、管式加熱炉にお
    いて、温度400〜460℃、圧力20〜100Kg/cm2Gの
    条件下に連続的に実施される特許請求の範囲第1
    項に記載の方法。 7 第3工程で得られる高分子量歴青物の水素化
    処理を、該高分子量歴青物に対して1〜5重量倍
    量の水素供与性溶媒の存在下に、管式加熱炉にお
    いて、温度400〜460℃、圧力20〜100Kg/cm2Gの
    条件下に連続的に実施し、続いて水素化処理され
    た処理液を蒸留塔において、圧力0〜3Kg/cm2
    A、温度300〜530℃の条件下に蒸留して、該蒸留
    塔底から水素化されたピツチを連続的に得る特許
    請求の範囲第1項に記載の方法。 8 水素化された高分子量歴青物の加熱処理が、
    減圧下もしくは常圧下に、不活性ガスの吹き込み
    又は流通下に、温度350〜500℃の条件下に実施さ
    れる特許請求の範囲第1項に記載の方法。 9 単環の芳香族系炭化水素溶剤がベンゼン、ト
    ルエンおよびキシレンからなる群から選択された
    少なくとも一種である特許請求の範囲第1項に記
    載の方法。 10 第3工程で用いる溶剤が単環の芳香族系炭
    化水素溶剤である特許請求の範囲第1項に記載の
    方法。 11 第1工程に原料として送入される重質油ま
    たは重質成分および第2工程で得られる熱分解重
    質成分が、沸点範囲200〜350℃にある軽質成分を
    少なくとも10重量%以上含み、かつ100℃におけ
    る粘度が1000センチストークス以下である特許請
    求の範囲第1項に記載の方法。 12 第3工程で得られる高分子量歴青物がキノ
    リン不溶分1重量%以下、キシレン不溶分40重量
    %以上であり、かつ光学的に等方性の高分子量歴
    青物である特許請求の範囲第1項に記載の方法。 13 水素化されたピツチが実質的に光学的に等
    方性であり、環球法軟化点が100〜200℃、キノリ
    ン不溶分が1重量%以下、キシレン不溶分が40重
    量%以上である特許請求の範囲第1項に記載の方
    法。 14 メソフエーズピツチがメトラー法軟化点
    310℃以下、偏光顕微鏡で観察したときの光学的
    異方性を示す部分の面積分率によるメソフエーズ
    含有量が90%以上、キノリン不溶分が10重量%以
    下、そしてキシレン可溶分が100重量%以下の特
    性を有する特許請求の範囲第1項に記載の方法。
JP62287173A 1987-06-18 1987-11-13 メソフェーズピッチの製造方法 Granted JPH01129092A (ja)

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