JPH048473B2 - - Google Patents

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JPH048473B2
JPH048473B2 JP20396786A JP20396786A JPH048473B2 JP H048473 B2 JPH048473 B2 JP H048473B2 JP 20396786 A JP20396786 A JP 20396786A JP 20396786 A JP20396786 A JP 20396786A JP H048473 B2 JPH048473 B2 JP H048473B2
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Description

【発明の詳細な説明】
本発明は、高強度および高弾性率を有する炭素
繊維およびその他の炭素材料を含む炭素材を製造
するために適した光学的異方性炭素質ピツチを製
造する方法に関するものである。 今後の省エネルギー、省資源時代に航空機、自
動車その他に必要な軽量かつ高強度、高弾性の複
合材料の素材を構成する低コストの高性能炭素繊
維か、または、加圧成形して種々の用途に使用さ
れる高強度、高密度の成形炭素材料が強く要望さ
れている。 従来高性能炭素繊維の製造のために適した光学
的異方性ピツチの組成および構造について十分な
開示はなく、炭素質ピツチ物質の物性とその組成
および概略の構造との関係については、従来、不
明瞭であつてこれを工業的規模で安定に制御して
得られる技術は未だ完成されていない。 従来、開示されている光学的異方性ピツチ例え
ば、特開昭49−19127号、特開昭50−89635号公報
に記載されている光学的異方性ピツチは、光学的
異方性相部分が、ほぼ、キノリン不溶分(または
ピリジン不溶分)に相当し、光学的異方性相部分
を100%に近づけると、軟化点が著しく上昇し、
紡糸温度が400℃の近傍またはそれ以上となり、
紡糸時にピツチの分解ガスの発生及び重合が惹起
することから、従来の炭素繊維紡糸法は、光学的
異方性相部分の含有量を90%以下、好ましくは、
50%〜65%に抑えて紡糸温度を熱分解及び熱重合
が顕著に生じない温度に抑える方法を採用してい
る。 しかしながら、このようなピツチ組成物は、光
学的異方性相と相当量の光学的等方性相の混合物
であるため不均質なピツチであり、紡糸時に糸切
れが多いこと、繊維の太さが不均一になること、
または繊維の強度が低いという難点を包蔵するも
のである。 また、特公昭49−8634号公報で開示されている
ピツチ物質は、光学的異方性相が実質的に100%
のようにも見うけられるが、ピツチ分子の化学構
造を特定化した特殊のピツチであつて、クリセ
ン、フエナンスレン、テトラベンゾフエナジン等
の高価な純物質の熱重合で製造されたものであ
り、構造分子量が比較的整つたピツチであつて、
一般的な混合原料で製造した場合は軟化点が非常
に高い。一方、特公昭53−7533号公報に記載され
ている炭素繊維製造用原料としてのピツチは、軟
化点紡糸温度が低く、紡糸は容易であるが、光学
的異方性相の含有率が開示されていない。また、
原料炭化水素を塩化アルミニウム等のルイス酸触
媒を使用して重縮合しており、ピツチの組成と構
造は特殊であり、そのピツチから製造された炭素
繊維の強度および弾性率は小さい。また、触媒の
完全な除去も困難であるという問題も包含されて
いる。 更に、特開昭54−55625号公報で開示されてい
るピツチ物質は、実質上100%の光学的異方性相
から成る均質ピツチであるが、分子量分布がかな
り狭く、後で更に詳しく説明されるが本発明の光
学的異方性ピツチの重要な組成分であるn−ヘプ
タン可溶成分(以下「O成分」という)と、n−
ヘプタン不溶且つベンゼン可溶の成分(以下「A
成分」という)の含有量が少なく、更に他の残余
のベンゼン不溶成分中のキノリン可溶成分(以下
「B成分」という。)及びキノリン不溶成分(以下
「C成分」という)の含有量が比較的多いため、
その総合的な結果として該従来のピツチ物質の軟
化点は、約330℃以上であり、紡糸温度は、380℃
〜400℃以上に達することになり、この温度範囲
では、工業的に安定してピツチを紡糸することは
依然困難を伴うものである。 以上述べた如く、従来知られている光学的異方
性相が100%に近い均質な光学的異方性ピツチは、
いずれも軟化点が高く、安定した紡糸が困難であ
り、一方、軟化点の低いピツチは、特殊な出発原
料から製造した特殊な組成構造を有するもの以外
は、不均質であり、同様に紡糸が困難であつて、
この結果、晶質の優れた炭素繊維を製造すること
は難事である。 また、従来、一般に、光学的異方性ピツチを部
分的な化学構造または平均分子量またはキノリン
不溶分(もしくはピリジン不溶分)含有量で規定
しているが、これらの規定の方法では、高性能炭
素繊維その他の炭素材料を製造するために適した
均質かつ低軟化点の光学的異方性ピツチ組成物を
特定することができず、適確ではない。すなわ
ち、光学的異方性ピツチと呼ばれる組成物は、極
めて多種で複雑な広範囲の化学構造、分子量の化
合物の混合物であり、単純に一部分の、または全
体の平均的な化学構造の特徴のみで規定できるも
のではなく、また数百から数万、場合によつては
コークスに近い分子量まで含むような巾広い分子
量の組成物を平均分子量で規定してもピツチの品
質を適確に特定することができない。 本発明者らは、高性能炭素繊維を製造するため
に適した光学的異方性ピツチ組成物について種々
検討したところ、光学的異方性ピツチは、縮合多
環芳香族の積層構造の発達した分子配向性の良い
ピツチであるが、実際には種々のものが混在し、
そのうち、軟化点が低く、均質な炭素繊維の製造
に適したものは特定の化学構造と組成を有するこ
と、すなわち、光学的異方性ピツチにおいて、前
記したO成分即ちn−ヘプタン可溶成分、及びA
成分即ちn−ヘプタン不溶且つベンゼンの成分の
組成、構造、分子量が極めて重要であることを見
出したのである。更に詳しく言えばO成分及びA
成分を特定量含有するピツチ組成物が完全な光学
的異方性ピツチとして存在し得ることおよびその
構成バランスを適切に調整することが高性能炭素
材料を実用的に製造するための光学的異方性ピツ
チ組成物の必須の条件であることを見出した。 更に又ピツチ組成物中の前記O成分及びA成分
以外の残余のベンゼン不溶成分であるキノリン可
溶成分(以下「B成分」という)と、キノリン不
溶成分(以下「C成分」という)を特定すること
により、更に優れた高性能炭素材料を製造するた
めの光学的異方性ピツチが提供されることが分つ
た。 本発明の主たる目的は、約90%以上の光学的異
方性相を含有し、高強度、高弾性率の炭素材、特
に、炭素繊維を製造するのに適した光学的異方性
相ピツチであつて、かつ、低軟化点を有する光学
的異方性炭素質ピツチを効率よく製造する方法を
提供することである。 本発明の他の目的は、特に上述した如き特定の
組成、構造及び分子量を持つたO成分、A成分、
B成分及びC成分から成る高強度、高弾性率の炭
素材の製造に適した光学的異方性炭素質ピツチの
製造法を提供することである。 上記本発明の諸目的は本発明に係る光学的異方
性炭素質ピツチの製造法にて達成される。要約す
れば、本発明は、ピツチ製造用原料を約380℃以
上の温度で熱分解重縮合に供し、重縮合物中の光
学的異方性相が約20%〜約80%生成したとき当該
重縮合物を約400℃以下に保持しつつ下層を分離
し、分離された下層をさらに約380℃以上で熱処
理することを特徴とする約90%以上の光学的異方
性相を含有する光学的異方性炭素質ピツチの製造
法である。 本発明については以下に更に詳しく説明する。 すなわち、本発明によれば、限定されるもので
はないが特に必須成分としてO成分分を約2重量
%〜約20重量%およびA成分を約15重量%〜約45
重量%含有し、残余の成分はベンゼン不溶分であ
り、光学的異方性相の体積含有率が約90%以上で
あり、約320℃以下の軟化点を有することを特徴
とする上述の如き炭素材料、特に炭素繊維の製造
用炭素質ピツチを好適に製造し得る。 本発明者らの知見によると、従来技術により製
造せられた光学的異方性ピツチにおいてはキノリ
ン不溶成分(又はピリジン不溶成分)のみが主要
成分であるか、又はベンゼン不溶分(B成分及び
C成分)までが特に重要な成分であつて、O成
分、A成分の含有量が少ないために、又はそれら
の特性が不適正なために妥当でなく、更に究明し
た結果前述の如く或る特性のO成分及びA成分が
特定量存在することが当該ピツチ組成にとつて不
可欠であることが明らかとなつた。 本発明は、種々の光学的異方性ピツチを調製
し、溶剤分離によりこれら炭素質ピツチよりO成
分およびA成分を分別し、各成分の個々の特性お
よび当該特性を有する各成分の含有量とピツチ全
体の物性、均質性、配向性等との関係について詳
しく検討した結果に基き完成したものであり、こ
れは、各成分が従来技術では認められなかつた範
囲の特定量含有され、かつ、各成分が特定の性状
を有するものであることが重要であることを見出
したことに基因するものである。すなわち、高性
能炭素繊維の製造に必要な高配向性、均質性およ
び低軟化点を有し、低温で安定した溶融紡糸の可
能な光学的異方性ピツチの構成成分の性状として
はC/H原子比、fa、数平均分子量、最高分子量
(低分子量側から99%積算した点の分子量)およ
び最低分子量(高分子量側から99%積算した点の
分子量)が以下に述べる如き範囲に特定されたも
のである。 O成分は、一般的には広範囲の特性のものがあ
るが、本発明においては、約1.3以上のC/H原
子比、約0.80以上のfaおよび約1000以下の数平均
分子量および約150以上の最小分子量を有するも
のであり、好ましいC/H原子比は、約1.3〜
1.6、faは、約0.80〜約0.95であり、数平均分子量
は、約250〜約700、最小分子量は約150以上であ
る。 また、A成分は、一般的には広範囲の特性のも
のがあるが、本発明においては約1.4以上のC/
H原子比、約0.80以上のfa、約2000以下の数平均
分子量および約10000以下の最高分子量を有する
ものであり、好ましいC/H原子比は約1.4〜約
1.7、faは約0.80〜約0.95、数平均分子量は約400
〜約10000、最高分子量は約5000以下である。さ
らに、各成分の、好適な含有量は、O成分につい
て約2重量%〜約20重量%であり、A成分につい
て約15重量%〜約45重量%である。さらに最適範
囲については、O成分は、約5重量%〜約15重量
%であり、A成分は、約15重量%〜約35重量%で
ある。 すなわち、O成分のC/H原子比及びfaが前述
の範囲より小さい場合と含有率が前述の範囲より
大きい場合は、ピツチは全体として等方性の部分
をかなり含有する不均質のものとなりやすく、ま
た、平均分子量が700より大きいか、または含有
率が前述の範囲よりも小さい場合は、低軟化点の
ピツチを得ることができない。また、A成分の
C/H原子比またはfaが前述の範囲より小さい場
合、数平均分子量が前述の範囲より小さいか、ま
たは含有量が前述範囲を越える場合には、ピツチ
全体は、等方性と異方性部分の混合した不均質な
ピツチとなつてしまうことが多い。また数平均分
子量又は最高分子量が上述の範囲よりも大きい場
合、又はA成分の構成比率が上述の範囲よりも小
さい場合は、ピツチは均質な光学的異方性である
が低軟化点とはならない。 本発明者が更に検討したところ、前記O成分及
びA成分は光学的異方性ピツチ中において積層構
造中に取り込まれ、溶媒的または可塑剤的な作用
をし、主にピツチの溶融性、流動性に関与し、そ
れ自体単独では積層構造を発現しにくく光学的異
方性を示さない成分であるが、更に残余成分であ
りそれ自体単独では溶融せず積層容易な成分であ
るベンゼン不溶のB成分及びC成分を前記O成分
及びA成分に対しその構成成分が特定の範囲内の
構成比率でバランスよく含有され、さらに、各構
成成分の化学構造特性分子量が特定の範囲内に存
在するならば一層、優れた均質で低軟化点の高性
能炭素繊維を製造するために必要な光学的異方性
ピツチが得られることも見出した。 すなわち、O成分を約2重量%〜約20重量%お
よびA成分を約15重量%〜約45重量%を含有し、
さらに、B成分(ベンゼン不溶キノリン可溶成
分)を約5重量%〜約40重量%およびC成分(ベ
ンゼン不溶キノリン不溶成分)を約20重量%〜約
70重量%含有し、その光学的異方性相の含有率が
体積で約90%以上であり、軟化点が約320℃以下
の光学的異方性炭素質ピツチは、後述の如き一層
安定した高性能の炭素繊維を提供することができ
る。 上記B成分及びC成分に関して、高性能炭素繊
維の製造に必要な高配向性、均質性および低軟化
点を有し、低温で安定した溶融紡糸の可能な光学
的異方性ピツチの構成成分の好ましい性状として
はC/H原子比、fa、数平均分子量、最高分子量
(低分子量側から99%積算した点の分子量)が以
下に述べる如き範囲に特定されたものである。 すなわち、B成分(ベンゼン不溶、キノリン可
溶分)は、一般には非常に広範囲の特性のものが
あるが、好ましい性状としては、約1.5以上の
C/H原子比、約0.80以上のfa、約2000以下の数
平均分子量および約10000以下の最高分子量を有
するものであり、好ましいC/H原子比は約1.5
〜約1.9、faは約0.80〜約0.95および数平均分子量
は、約80〜約2000であり、C成分(ベンゼン不溶
キノリン不溶分)は、これも一般的に非常に広範
囲の特性のものがあるが好ましい性状としては、
約2.3以下のC/H原子比、約0.85以上のfa、約
3000以下の推定数平均分子量および30000以下の
最高分子量を有するものであり、好ましいC/H
原子比は、約1.8〜約2.3であり、faは、約0.85〜
約0.95であり、数平均分子量は約1500〜約3000の
ものである。 両成分の含有量については、B成分は約5重量
%〜約55重量%であり、好ましい含有量は、約5
重量%〜約40重量%である。C成分の含有量は、
約20重量%〜約70重量%であり、好ましい含有量
は、約25重量%〜約65重量%である。 高性能の炭素繊維を提供する好ましい光学的異
方性炭素質ピツチの態様は、前述の如く、炭素質
ピツチの構成成分たる4成分が特定の特性値を有
し、特定の組成比で含有することである。以下、
本発明に従つた製造方法にて極めて好適に製造さ
れる上記光学的異方性炭素質ピツチを便宜上まと
めて説明する。 本明細書で使用される「光学的異方性相」とい
う語句の意味は、必ずしも学界または種々の技術
文献において統一して用いられているとは言い難
いので、本明細書では、「光学的異方性相」とは、
ピツチ構成成分の一つであり、常温近くで固化し
たピツチ塊の断面を研摩し、反射型偏光顕微鏡で
直交ニコル下で観察したとき、試料または直交ニ
コルを回転して光輝が認められるすなわち光学的
異方性である部分を意味し、光輝が認められな
い、すなわち光学的異方性相である部分は光学的
等方性と呼ぶ。 光学的異方性相は、光学的異方性相に比べて多
環芳香族の縮合環の平面性がより発達した化学構
造の分子が主成分で、平面を積層したかたちで凝
集、会合しており、溶融温度では一種の液晶状態
であると考えられる。従つてこれを細い口金から
押し出して紡糸するときは分子の平面が繊維軸の
方向に平行に近い配列をするために、この光学的
異方性ピツチから作つた炭素繊維は高弾性を示す
ことになる。又光学的異方性相の定量は偏光顕微
鏡直交ニコル下で観察、写真撮影して光学的異方
性部分の占める面積率を測定して行うので、これ
は実質的に体積%を表わす。 ピツチの均質性に関して、本発明に従つて製造
したピツチでは上述の光学的異方性相の測定結果
が90〜100体積%の間にあり、反射型顕微鏡観察
でピツチ断面に固形粒子(粒径1μ以上)を実質
上検出せず、溶融紡糸温度で揮発物による発泡が
実質上ないものが、実際の溶融紡糸において良好
な均質性を示すものでこのようなものを実質上均
質な光学的異方性ピツチと呼ぶ。 光学的等方性相を10%以上含有する実質的に不
均質な光学的異方性ピツチの場合、高粘度の光学
的異方性相と低粘度の光学的等方性相との明らか
な二層の混合物であるため粘度の著しく異なるピ
ツチ混合物を紡糸することになり、糸切れ頻度が
多く、高速紡糸がし難く、十分細い繊維太さのも
のが得られず、また、繊維太さにもバラツキがあ
り、結果として高性能の炭素繊維が得られない。
又溶融紡糸のとき、ピツチ中に不融性の固体微粒
子や低分子量の揮発性物質を含有すると、紡糸性
が阻害されることはいうまでもなく、紡糸したピ
ツチ繊維に気泡や固形異物を含有し欠陥の原因と
なる。 本発明でいう、ピツチの軟化点とは、ピツチが
固体から液体の間を転移する温度をいうが、差動
走査型熱量計を用いてピツチの融解又は凝固する
潜熱の吸放出のピーク温度で測定する。この温度
はピツチ試料について他のリングアンドボール
法、微量融点法などで測定したものと±10℃の範
囲で一致する。本発明でいう低軟化点とは、230
〜320℃の範囲の軟化点を意味する。軟化点はピ
ツチの溶融紡糸温度と密接な関係があり、ピツチ
による違いはあるが通常の紡糸法で紡糸する場
合、一般に軟化点より60〜100℃高い温度が紡糸
に適した流動性を示す温度である。従つて、320
℃より高い軟化点の場合、熱分解重縮合が起る
380℃より高い温度となるため、分解ガスの発生
および不融物の生成により紡糸性が阻害されるこ
とはいうまでもなく、紡糸したピツチ繊維に気泡
や固形異物を含有し欠陥の原因となる。一方230
℃以下の低い軟化点の場合、不融化処理工程にお
いて低温で長時間処理が必要になるとは複雑で高
価な処理が必要となり好ましくない。 本発明でいうピツチ構成成分O成分、A成分、
B成分、C成分とは、粉末ピツチを1μの平均孔
径を有する円筒フイルターに入れ、ソツクスレー
抽出器を用いてn−ヘプタンで20時間熱抽出して
得られるn−ヘプタン可溶分をO成分、ひきつづ
きベンゼンで20時間熱抽出して得られるn−ヘプ
タン不溶でベンゼン可溶分をA成分、ベンゼン不
溶分をキノリンを溶剤として遠心分離法(JIS K
−2425)により分離して得られるベンゼン不溶で
キノリン可溶分いわゆるβ−レジンをB成分、キ
ノリン不溶分をC成分と呼ぶ。このような構成成
分の分別は例えば石油学会誌20巻(1)、第45頁
(1977年)に記載の方法により行なうことができ
る。ある出発原料から作つたピツチ構成成分O成
分、A成分、B成分、C成分ではピツチの特性値
であるC/H原子比、fa、数平均分子量、最低お
よび最高分子量はいずれもO成分<A成分<C成
分の順に大きくなるのが一般的である。 本発明者の研究によれば、O成分は、ピツチ構
成成分中最も分子の平面構造性が小さく、即ち、
総合芳香族環が小さく側鎖の数が多く長さが長い
ものであり、又分子の巨大さ(平均分子量、最高
分子量)の小さい成分で、それ自体単独では積層
構造を発発現し難く、光学的異方性を示さない
が、A成分、その他の重質部分(B成分、C成
分)と相溶し溶媒的に作用する性質を有し、高配
向性を損わないで、主にピツチの流動性及び溶融
性に関与する成分である。 A成分は、O成分とB成分の間の分子の平面構
造性と、分子巨大さを有する成分でO成分と同じ
くそれ自体単独では積層構造を発現し難く、光学
的異方性を示さないが、O成分及び重質部分と相
溶し、重質部分に対して溶媒的に作用する性質を
有し、高配向性を損わないで重質部分と共存して
配向性を表わす特性を有するが主にピツチの可塑
性及び溶融性に関与する成分である。 B成分は、A成分とC成分の間の分子の平面構
造性と分子の巨大さを有する成分で、それ自体単
独では縮合多環芳香族の積層構造の形成や光学的
異方性は小さく軟化点も400℃以上にあるので、
それ自体単独では高温に加熱しても溶融しないで
炭化するが、O成分、A成分と相溶することによ
り、溶融性をもちそれがさらにC成分に対して溶
媒的に作用する性質を有しC成分と共存して主に
ピツチの高配向性に関与する成分である。 C成分は、ピツチ構成成分中最も大きい分子平
面構造性と分子量の巨大さを有する成分で、光学
的異方性ピツチの骨格となる縮合多環芳香族の積
層構造を形成し光学的異方性を発現し易いが、B
成分と同じく軟化点が400℃以上にあるのでそれ
自体単独では高温で加熱しても溶融しないで炭化
するが、O成分、A成分、B成分と相溶すること
により溶融性可塑性をもち、ピツチの高配向性に
関与する成分である。 このように光学的異方性ピツチは、他の成分と
相溶し主にピツチの配向性に関与する成分と他の
成分に対して溶媒的に作用し、配向性を損わずに
主にピツチの溶融性に関与する成分から成り立つ
ており、いずれの成分も重要であり、とりわけ高
性能炭素繊維製造用の高配向性で均質な低い軟化
点を有する光学的異方性ピツチにおいては、構成
成分の構造特性とそのような特性を有する構成成
分の含有量のバランスが重要である。すなわち、
あまりにもB成分とC成分が多量に含有され相対
的にA成分とO成分の含有が少ないピツチは確か
に分子配向性が発現し、全体が光学的異方性とな
つても軟化点が高く紡糸が困難となり、極端な場
合は全く溶融しない。他方、O成分、A成分を多
く、相対的にC成分、B成分を少なくすると、軟
化点が低なり、350℃付近で紡糸のために十分な
液体流動性を得ることは容易であるが、分子配向
性の優れたピツチ部分、すなわち光学的異方性ピ
ツチ部分と、分子配向性の小さい等方性ピツチ部
分とが二相に分かれた不均質なピツチとなりこれ
も前述の如く紡糸が困難である。 このように、従来から光学的異方性ピツチの主
要構成成分として認められていたC成分の他に、
B成分、特に従来ほとんど認識されていなかつた
O成分とA成分の存在が、高性能炭素繊維用ピツ
チの構成成分としては重要である。 また、みかけ上構成成分の比率が同じであつて
もそれぞれの成分の構造特性によつてピツチの特
性が影響されることは、いうまでもなく、例えば
あまりにも分子量の大きい、または分子平面構造
性の劣るB成分やC成分を含有する場合は、極め
て軟化点の高いピツチとなるし、他方、あまりに
も分子量の小さいO成分を含有するときは、ピツ
チの軟化点は低くなつても、全体の均質性が失わ
れる。 次に、高性能炭素繊維製造用ピツチの分子配向
性、均質性または相溶性および軟化点とピツチの
構成成分の特性値との関係を詳しく説明する。い
うまでもなく、ピツチの如き複雑な混合物につい
ては厳密には個々の構成成分分子の構造は、検出
も考察もできないので構造特性については前述の
ように分別した構成成分それぞれの平均的分子
量、分子量分布、fa、C/H原子比が最も適切な
指標となる。 まず、ピツチの分子配向性すなわち光学的異方
性の発現傾向は、ピツチ構成成分の分子の平面構
造性および、ある温度での液体流動性と相関があ
る。すなわちピツチ分子の平面構造部分である縮
合多環芳香族構造がより発達し、分子量が適度の
大きさであるとき、平面状分子が相互に積層会合
しやすく、同時に溶融状態で分子の再配列が十分
よく行なわれ、光学的異方性ピツチが得られる。 ここで、ピツチ分子の平面構造性は、多環芳香
族の縮合環の大きさ、ナフテン環含有の数、側鎖
の数と長さにより決まるから、分子の平面構造性
は、C/H原子比、および、芳香族構造分率、fa
(芳香族構造に属する炭素原子の全炭素原子に対
する比率)でほぼ表わすことができる。すなわち
縮合多環芳香族構造部分が大きいほど、またその
中のナフテン環構造が少ないほど、また側鎖の数
と長さが小さいほど、ピツチ分子の平面構造性は
良く、また一般にその傾向に従つてC/H原子比
は大きく、faも大きくなる。分子の平面構造性を
大きくする観点だけからいえば分子量は十分に大
きくてもよい。またピツチのある温度での液体流
動性は、分子間の相互運動の自由さによつて決る
と考えられるから、それは、ピツチ分子の巨大さ
すなわち数平均分子量と分子量分布(特に最高分
子量の大きさ)と、分子の平面構造性を指標とし
て判断することができる。すなわち数平均分子量
が小さく、最高分子量も十分小さく、分子の平面
構造性、従つてC/H原子比やfaが適度に大きい
ことが、ピツチの液体流動性が大きいために必要
である。 次に光学的異方性ピツチの均質性は、ピツチ構
成成分の相溶性ともいえるが、それは、ピツチ構
成成分分子の化学構造の類似性および、ある温度
での液体流動性と相関があると推定される。すな
わちピツチ構成成分分子が相互に化学構造形態お
よび分子量分布の点であまりかけ離れたものでな
いとき相互に親和性、溶解性があり、それぞれが
ある温度で十分な液体流動性を有するとき、相互
に流動混合して熱力学的に安定的に均質なピツチ
となる。従つて、光学的異方性ピツチの均質性
は、構成成分それぞれのC/H原子比、faが十分
大きく極度に小さい分子量のものを含まず、数平
均分子量、最高分子量が十分小さく、かつ、それ
らが相互にあまりかけ離れていないことによつて
実現されると考えられる。 次に光学的異方性ピツチの軟化点はピツチが固
体から液体の間を転移する温度を意味することか
ら、これは、前述のある温度のピツチの液体流動
性と良い相関がある。従つて、光学的異方性ピツ
チの軟化点は、構成成分それぞれのC/H原子
比、faが適度に大きく、平均分子量が十分小さ
く、特に最高分子量が小さいことによつて低くな
るものである。 以上を総合すると、分子配向性の優れた、均質
な、低軟化点の、光学的異方性ピツチを得るため
には、C/H原子比とfaが十分大きく、かつ、そ
れらが構成成分間で類似していて、平均分子量は
平面分子の配向性を発現するよう十分に大きい
が、低軟化点のためには、それがあまり大きすぎ
ないこと、特に最高分子量があまり大きなものを
含まないこと、また、ピツチの均質性の観点か
ら、極度に低分子量の成分を含まないことも要件
であることが理解されよう。このようなピツチ
は、大量安価に入手できる石油や石炭工業から産
出される重質油やタール物質を出発原料にする場
合は、出発原料の分子構造が多様であり、分子量
分布も広いために完全に、理想的に化学構造と分
子量の分布を狭く制御することはできないが、本
発明者等の研究によれば完全に理想的に狭い化学
構造を分子量の制御をせずとも、ピツチの構成成
分それぞれの化学構造特性と分子量が、ある好ま
しい範囲内に存在し、かつそのような構成成分が
ある好ましい範囲内の構成比率でバランスよく含
有されてピツチを構成するとき、十分満足される
分子配向性、均質性、および軟化点の光学的異方
性ピツチが得られることが分つた。 次に、このようなピツチ構成成分の化学構造特
性と分子量の好ましい範囲、及び構成成分の構成
比率の好ましい範囲について特に、B成分及びC
成分について詳しく具体的に説明する。 まずO成分は、まだ分子量もあまり大きくはな
く、芳香族構造も、他の成分ほど十分に発達して
いない、一般にC/H原子比が1.6以下、faが0.95
以下、数平均分子量が1000以下の油状物質である
が、光学的異方性ピツチの中に含有されて、その
分子配向性を損わず、全成分に対して溶媒ないし
は可塑剤的役割をする重要な成分である。 A成分は、構造特性および分子量としては、一
般にO成分とB成分の中間に位置するものであ
り、O成分よりもやゝ分子配向性への寄与が大き
いと推定され、かつO成分と共に相溶して、B成
分、C成分に対する溶剤又は可塑剤的な役割をす
ると考えられ、これも、低軟化点の均質な光学的
異方性ピツチの形成に不可欠な構成成分である。 B成分は、構造特性値および分子量が一般にA
成分とC成分の中間に位置するものであり、O成
分、A成分に比べれば縮合多環芳香族の平面構造
がかなり発達し、その積層会合によつて分子配向
を作りやすい成分であり、C成分と相溶して、光
学的異方性、すなわち分子配向の骨格を形成する
成分であり、また同時にO成分、A成分とも相溶
して、可塑剤的作用も果たしこのB成分がさらに
重縮合が進むとC成分に変化すると推定されてい
る。B成分の特性として好ましいものは、C/H
原子比が1.5〜1.9、faが0.80〜0.95で、後述の水素
添加反応処理によつて、クロロホルムに100%可
溶化し推定数平均分子量が800〜2000、推定最高
分子量が、10000以下であり、また、B成分の構
成比率として好ましい範囲は主としてC成分の含
有率とのかね合いで決まり、ピツチ全体の5〜40
重量%である。すなわち、この成分においてC/
H原子比または、faが上述の範囲より小さい場
合、あるいはこの成分の構成比率が上述範囲より
小さい場合は、ピツチの分子配向性が不十分とな
つて均質な光学的異方性ピツチとはならないこと
が多く、この場合、共存するC成分の構成比率が
十分に大きいときは、光学的異方性の均質ピツチ
となるが、軟化点が高い。また、推定数平均分子
量、または推定最高分子量が上述の範囲より大き
い場合、または、B成分の構成比率が上述の範囲
より大きい場合は、均質な光学的異方性ピツチと
なるとしても、軟化点が高くなりすぎて、紡糸が
困難であり、これは本発明の目的とするピツチで
はない。 C成分は、ピツチ構成成分中で最も分子平面構
造性が発達し、分子量の大きい成分であり、容易
にその平面分子が積層状に会合し、光学的異方性
を発現するので、ピツチ中にあつて、他の成分と
相溶して、光学的異方性を示す構造の骨格になる
役割を果すものである。C成分の特性として好ま
しいものはC/H原子比が1.8以上で、faが0.85以
上であり、後述の水素添加反応処理によつてクロ
ロホルムに実質的に全て可溶化され、推定数平均
分子量が1500〜3000で、推定最高分子量が30000
以下であり、またC成分の構成比率として好まし
い範囲は、主としてB成分とのかね合いでピツチ
全体の25〜65重量%である。すなわち、C成分の
C/H原子比、あるいはfaが上述の範囲よりも小
さい場合、または、構成比率が上述の範囲より小
さい場合は、ピツチ全体の分子配向性が不十分と
なつて、等方性部分をかなり含む不均質ピツチと
なるか、他の成分とのバランスによつては軟化点
が高いものとなる。また、後述の水素添加反応に
よつてもクロロホルムに完全には可溶化されない
ようなC成分もあるが、このようなものは、分子
量の推定が不可能なほど非常に高分子量の縮合多
環芳香族化合物を含むか、又はカーボン等の不融
物を含むので不適当である。さらにこの水素添加
反応を加えてクロロホルムに可溶化した後、測定
したC成分の推定数平均分子量または最高分子量
が上述の範囲より大きいような場合と、C成分の
構成比率が上述の範囲を越える場合は、ピツチ全
体が光学的異方性となるとしても、軟化点が高
く、従つて高い紡糸温度を要するか、紡糸が不可
能なことが多い。 本明細書でいうfa(芳香族構造炭素分率;芳香
族構造に属する炭素原子の数の全炭素原子の数に
対する比率)は、ピツチ成分試料の炭素と水素の
含有率分析値と、赤外線吸収分光分析により加藤
らの方法(燃料協会誌55 244、(1976))に従つ
て、次式によつて計算されたものを用いる。 fa=1−H/C/2・(1+2・D3030/D2920) H/C:水素と炭素の原子数比 D3030/D2920:3030cm-1の吸光度と2920cm-1
吸光度の比 また本明細書でいう、数平均分子量は、クロロ
ホルムを溶媒として一般的な手法である蒸気圧平
衡法を用いて測定する。た分子量分布は、ピツチ
試料を、クロロホルムを溶媒としてゲルパーミエ
ーシヨンクロマトグラフイで10ケの分子量区分に
分取し、分取したそれぞれの区分の数平均分子量
を、前述の蒸気圧平衡法で測定し、各区分の溶出
容量と数平均分子量の関係で、このゲルパーミエ
ーシヨンクロマトグラフイーの検量線を作成し、
これを用いて、各ピツチの各構成成分に分子量分
布を測定した。この場合、溶出液の屈折率の変化
がその重量濃度の変化にほゞ比例する。 B成分とC成分はクロロホルム不溶分を含むも
ので、そのままでは上述の分子量測定が不可能で
あるが、これらも炭素・炭素結合を破壊しない
で、芳香族構造の一部に水素を付加するような温
和な水素添加反応を加えると分子の炭素骨格はほ
とんど変化せず、ベンゼンやクロロホルムなどに
溶解する分子構造となることが知られている。
又、B成分とC成分は、予め金属リチウムとエチ
レンジアミンを用いる温和な水添反応によつて、
クロロホルム可溶化処理を行ない(この方法は、
文献:Fuel 41 67〜69(1962)に従つた)その
後、上述の分子量測定方法を用いて数平均分子
量、最高分子量、最低分子量を求める。 上述の如き炭素質ピツチは、本発明に係る光学
的異方性炭素質ピツチの製造方法により極めて好
適に製造される。 すなわち、出発原料として、いわゆる重質炭化
水素油、タール、又はピツチを使用し、これを約
380℃以上の温度、好ましくは400℃〜440℃で熱
分解重縮合反応に供し、重縮合物中の光学的異方
性相が、20〜80%、好ましくは30〜60%生成した
とき、当該重合物を、約400℃以下、好ましくは
360℃〜380℃に保持しつつ5分間〜1時間程度静
置し、又は極めてゆつくり撹拌しつつ下層に密度
の大きい光学的異方性相ピツチ部分を濃度高く沈
積せしめ、しかる後、光学的異方性相の濃度の大
きい下層を光学的異方性相の濃度の小さい上層と
およそ分離して抜き出し、分離された下層の光学
的異方性相含有率が70〜90%であるピツチを、次
に約380℃以上、好ましくは390℃〜440℃でさら
に短時間熱処理し、光学的異方性相含有率が90%
以上の所望のピツチとすることができる。 また、本発明にて製造された光学的異方性ピツ
チは、上述の如きピツチ構成成分が、各々特定の
特性値を有し、かつ、当該構成成分が各々特定の
割合で含有することができるが、もし製造された
ピツチの構成成分の組成および特性値が、一連の
工程の後、上記範囲内に含まれない場合には、別
途の製法又は工程条件で製造した所望の構成成分
の組成と特性値を有するピツチを複数種、所望の
割合で混合することによつて、上記範囲内のピツ
チ組成および特性値を満し所望の物性を有する光
学的異方性ピツチを製造することができる。 次に、本発明に従つた製造法により得られた光
学的異方性相含有率90%以上の光学的異方性ピツ
チを溶融紡糸して得られたピツチ繊維および紡糸
方法について説明する。紡糸方法は、従来、使用
されている方法を採用することができ、例えば、
下方に直径0.1mm〜0.5mmの紡糸口金を有する、金
属製紡糸容器にピツチを張り込み、不活性ガス雰
囲気下で、280〜370℃の間の一定温度にピツチを
保持して溶融状態に保つて、不活性ガスの圧力を
数10mmHgに上げると、口金より溶融ピツチが押
出され流下するので、その流下部の温度、雰囲気
を制御しつつ、流下したピツチ繊維を高速で回転
するボビンに巻取るかまたは、集束させて、気流
で引取りつつ下方の集積槽の中へ集積する。この
際、紡糸容器へのピツチの供給を、予め溶融した
ピツチを、ギアポンプなどで加圧供給すると連続
的に紡糸することが可能である。さらに上述の方
法で、口金の近傍で、一定に温度制御された高速
で下降するガスでピツチ繊維を延糸しつつ引取
り、下方のベルトコンベア上に長繊維又は短繊
維、あるいは相互に交絡したマツト状のピツチ繊
維不織布を作る方法も用いうる。また、周壁に紡
糸口金を有する円筒状の紡糸容器を高速で回転さ
せ、これに溶融ピツチを連続的に供給し、円筒紡
糸器の同壁より遠心力で押し出され、回転の作用
で延糸されるピツチ繊維を集積するような紡糸方
法も用いられる。いずれの方法においても、本発
明のピツチを用いるときは溶融状態であり紡糸を
するのに好適な温度(紡糸機中での最高温度)
が、280〜370℃の範囲と、従来よりも低いことが
特徴であり、従つて紡糸工程での熱分解や熱重合
が極めて少なく、その結果紡糸後のピツチ繊維
は、紡糸前のピツチ組成物とほとんど同じ組成物
であることが特徴である。 すなわち、このようにして得られた炭素質ピツ
チ繊維は、その繊維軸方向の断面を研磨して偏光
顕微鏡で観察すると、全面が光学的異方性であ
り、しかも、繊維軸方向へ配向していることおよ
び繊維軸と直角方向の断面をみると、ほとんど等
方性ないしは、極めて微細な異方性部分がモザイ
ク状にランダムに集合していることが認められ
る。この現象は、恐らくは、本発明に従つて製造
したピツチが特にO成分、A成分という流動性の
大きな成分をバランスよく含有されている場合に
は紡糸過程で繊維軸方向にはよく分子配向し、繊
維軸に直角方向には比較的自由に柔軟に分子配向
しうることが起因していると思われる。また、当
該ピツチ繊維を粉砕し、有機溶剤を使用してO成
分、A成分、B成分およびC成分に分別して分析
すると、紡糸前のピツチの組成および特性とほぼ
同一の値が得られる。 従来の光学的異方性ピツチの場合、少なくとも
紡糸機中のある部分で380〜430℃といつた高温で
溶融状態を保ち紡糸を行なうことが実態であり、
この場合熱分解や熱重合が顕著に起ることから紡
糸後のピツチ繊維の組成構造は、紡糸前のピツチ
より炭化の進んだものとなることが多い。 このように、本発明の製造法に従つて製造さ
れ、且つ特に本発明の製造法にて製造されたピツ
チが特定の構成成分と組成を有している場合に
は、斯るピツチから製造されたピツチ繊維は、紡
糸前のピツチと物質組成としてはほとんど変らな
いので、もし紡糸工程で何らかの故障があつてピ
ツチ繊維として品質管理限界以下のものが製造さ
れた場合、これを再溶融して用いることができる
という利点がある。 本発明に従つて製造された光学的異方性ピツチ
は、光学的異方性相を90〜100%含有する実質上
均質なピツチであるにも拘らず、極めて低い軟化
点(320℃以下)を有するから、十分に低い溶融
紡糸温度(380℃以下、ふつう実施態様としては
300〜360℃)で紡糸することができる。従つて、
次の利点が得られる。すなわち、熱分解重縮合
の顕著な温度より十分低い温度で紡糸することが
でき、また、均質なピツチであるから、ピツチの
紡糸性(糸切れ、糸の細さ、糸径の均一さ)が良
好であり、紡糸工程の生産性が向上する。さら
に、紡糸中のピツチの変質が生じないため、製品
炭素繊維の品質が安定であること、紡糸中の分
解ガスの発生および不融物の発生が極めて少ない
から、紡糸されたピツチ繊維の欠陥(気泡または
固形異物粒子の含有)が少なく、製造した炭素繊
維の強度が大きくなること、本発明の炭素質ピ
ツチは、実質上、ほとんど全体が分子配向性の優
れた液晶状であるから、これを紡糸して通常の方
法で不融化処理及び炭化処理を行ない製造した炭
素繊維は繊維軸方向の黒鉛構造の配向性がよく発
達し、弾性率が大きいこと、および製造した炭
素繊維は、繊維軸に直角方向の断面の構造が、緻
密で、かつフイプリルの断面方向の配向が小さ
く、同心円状とか放射状にならないために繊維軸
方向に割れ目のないものとなること等の予期する
以上の効果を奏するものである。 実施例 1 石油の接触分解で副生するタール状物質を常圧
に換算して450℃まで減圧蒸溜して得た炭素含有
率90.0wt%、水素含有率7.8wt%、比重1.07、キ
ノリン不溶分0%のタールを出発原料とした。原
料1000grを内容積1.45のステンレス製反応装置
に張込み、窒素ガス気流下で十分撹拌しながら
415℃に保つて2.5時間熱分解重縮合反応に供し、
残溜ピツチとして軟化点187℃、比重1.32、キノ
リン不溶分7.9wt%で、偏光顕微鏡で観察すると
光学的等方性の母相中に直径が100μm以下の真球
状の光学的異方性球体を約40%含むピツチが、原
料に対して17.0wt%の収率で得られた。次にこの
ピツチ100.0grを約300mlの円筒型ガラス製容器に
とり、窒素雰囲気下360℃で30分間、撹拌せずに
保持し、次にこれを放冷し、ガラス製容器を破壊
してピツチをとり出した。このピツチは肉眼でも
上層と下層が分離していることが、その光沢のち
がいから認められ、上層のピツチ塊と下層のピツ
チ塊をはく離して分別することができ、下層ピツ
チは約32gr、得られた。偏光顕微鏡で観察すると
上層ピツチは直径が50μm以下の光学的異方性球
を約15%含む大部分が光学的等方性のピツチあ
り、下層ピツチは、50μm程度の直径の光学的等
方性の球を約20%含む大部分が光学的異方性のピ
ツチ、すなわち約80%の光学的異方性相の含有率
を示すピツチであつた。次にこの下層ピツチを50
mlのガラス製容器に入れ撹拌しつつ400℃で30分
間熱処理して約30gr、のピツチを得た。このピツ
チの軟化点を測定すると、257℃でありその光学
的異方性相の含有率は約95%以上であつた。次に
このピツチのn−ヘプタン可溶分(O成分)およ
びn−ヘプタン不溶でベンゼン可溶の成分(A成
分)を定量すると、O成分が10.1wt%、A成分が
29.6wt%も含有されることが認められた。該ピツ
チの残余はベンゼン不溶成分であつて。 次に、このピツチを、直径0.5mmのノズルを有
する紡糸器に充填し、340℃で溶融し、100mmHg
の窒素圧で押出し、高速で回転するボビンに巻取
つて紡糸したところ500m/分の引取り速度でほ
とんど糸切れなく、繊維径8〜12μmのピツチ繊
維が得られた。このピツチ繊維の一部を、酸素雰
囲気中230℃で1時間保持し、次に窒素ガス中で
30℃/分の昇温速度で1500℃迄加熱して、すぐ放
冷し、炭素繊維を得たところこの炭素繊維の引張
り強度は約3GPa、引張り弾性率は約2.2×
102GPaを示した。 また、ピツチ繊維の残部より1grをとり、n−
ヘプタン可溶成分(O成分)とn−ヘプタン不溶
かつベンゼン可溶の成分(A成分)を定量したと
ころ、O成分は8.9wt%、A成分は29.8wt%であ
つた。 比較例 1 実施例1と同じタールを出発原料として、その
1000grを内容積1.45のステンレス製反応装置に
張り込み、窒素ガス気流下で十分撹拌しながら
415℃に保つて5時間、熱分解重縮合反応に供し、
残留ピツチとして軟化点312℃、比重1.36、キノ
リン不溶分60%のピツチを110gr、得た。このピ
ツチを偏光顕微鏡で観察すると直径が約50μm以
下の光学的等方性の球体をところどころに含む、
ほとんど全体が光学的異方性のピツチ、すなわち
光学的異方性相が約95%以上のピツチであつた。 このピツチを実施例1と同じ紡糸器で紡糸する
と380℃以下の温度では非常に紡糸が困難であり、
390〜410℃で一応紡糸が可能であつたが、紡糸口
付近から白煙を生じやすく、また300m/secの引
取り速度でも1分間に1回以上の糸切れを生じ、
また繊径は15〜18μmとなつた。ここで得られた
ピツチ繊維の一部を実施例1と同じ方法を用い
て、不融化、次いで炭化し、炭素繊維としてその
引張り強度、引張弾性率を測定したところ前者は
約1.2GPa、後者は約2×102GPaであつた。この
ピツチのn−ヘプタン可溶成分(O成分)、およ
びn−ヘプタン不溶かつベンゼン可溶の成分(A
成分)を定量するとO成分が1.3wt%、A成分が
14.2wt%であつた。 実施例 2 石油の接触分解で副生するタール状物質を常圧
に換算して450℃まで減圧蒸溜して得た炭素含有
率89.4wt%、水素含有率8.9wt%、比重1.06、キ
ノリン不溶分0%のタールを出発原料とした。原
料1000gr.を内容積1.45のステンレス製反応装
置に張込み、窒素ガス気流下で、十分撹拌しなが
ら、440℃に保つて1時間熱分解重縮合反応に供
し、残溜ピツチとして、軟化点220℃、比重1.33、
キノリン不溶分(C成分)14wt%で、偏光顕微
鏡で観察すると、光学的等方性の母相中に、直径
が200μm以下の真球状の光学的異方性球体を約60
%含むピツチが、原料に対して22wt%の収率で
得られた。次にこのピツチを下部に抜き出し用バ
ルブを備えた内径4cm、長さ70cmの円筒形容器に
とり、窒素雰囲気下で毎分15回転で撹拌しつつ、
380℃で30分間保持した後、窒素加圧下100mmHg
で容器の下部バルブを開き、やゝ粘稠な下層のピ
ツチを、静かに流下させ、窒素ガスを流通してあ
る容器に捕集した。このようにして流下するピツ
チの粘度が顕著に低下するまで抜き取つたピツチ
を下層ピツチと呼びその収率は張込量に対し約
38wt%であつた。さらに容器に容器に残つた上
層のピツチを流出させ別に捕集したピツチを上層
ピツチと呼びその収率は、張込量に対して約
61wt%であつた。上層ピツチは主として直径が
20μ以下の真球状の光学的異方性相小球体を約20
%含む大部分は光学的等方性相のピツチであり、
軟化点195℃、比重1.31、C成分約4wt%、B成分
約38wt%、AA成分約36wt%、O成分約22wt%
のピツチであつた。一方下層ピツチは、等方性相
を15〜20%包含する大部分は大きな流れ模様をも
つた光学的異方性相から成り、その軟化点は252
℃、比重1.35、C成分約21wt%、B成分約37wt
%、A成分約33wt%、O成分約9wt%、のピツチ
であつた。次にこの下層ピツチをさらに250mlの
反応容器中で窒素雰囲気下で十分撹拌しつつ390
℃の約30分間熱処理して得られたピツチを試料
2、約50分間熱処理して得られたピツチを試料1
とすると、試料1は偏光顕微鏡の観察によつて、
全て光学的異方性相であり、約260℃の軟化点、
試料2はまた約5%の光学的等方性相を微小球状
に包含する大部分が光学等方性相のピツチで、軟
化点は257℃であつた。次にこれら試料1と2を
溶剤分離分析によつてO成分、A成分、B成分、
C成分に分離しその組成比と、各成分のC/H原
子比、fa、数平均分子量最低、および最高分子量
を測定した。その結果を第1表に示した。 また試料1および2のピツチを、直径0.5mmの
ノズルを有する紡糸器に充填し、350℃近傍の温
度で溶融し、200mmHg以下の窒素圧で押出し、高
速で回転するボビンに巻取つて紡糸したところい
ずれのピツチも500m/分の高速で、糸切れも少
なく繊維径の5〜10μmのピツチ繊維を長時間に
わたつて紡糸することができた。その結果を第2
表に示した。 比較例 2 実施例2と同じタールを出発原料とした。原料
1000grを内容積1.45の熱処理装置に張り込み、
窒素ガス気流下で十分撹拌しながら430℃で1.5時
間熱処理し、軟化点217℃、比重1.33、キノリン
不溶分(C成分)13wt%で、偏光顕微鏡で観察
すると、光学的等方性の母相中に直径が200μ以
下の真球状の光学的異方性小球体を約60%含むピ
ツチが原料に対し19.6wt%の収率で得られた。こ
れを、試料3とする。 次に、この試料を実施例2と同様の操作で溶剤
分離し各成分の含有量および特性値を求め、その
結果を第1表に示した。さらに、この試料を実施
例2と同様に紡糸したところ、500m/分では紡
糸不可能であり、300m/分でも糸切れ頻度が多
く、また、繊維太さの細いピツチ繊維は得られな
かつた。結果を第2表に示した。
【表】
【表】

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1 ピツチ製造用原料を約380℃以上の温度で熱
    分解重縮合に供し、重縮合物中の光学的異方性相
    が約20%〜約80%生成したとき当該重縮合物を約
    400℃以下に保持しつつ下層を分離し、分離され
    た下層をさらに約380℃以上で熱処理することを
    特徴とする約90%以上の光学的異方性相を含有す
    る光学的異方性炭素質ピツチの製造法。 2 ピツチ製造用原料として重質炭化水素油、タ
    ール又はピツチを使用する特許請求の範囲第1項
    記載の光学的異方性炭素質ピツチの製造法。 3 熱分解重縮合を約400℃〜約440℃で行なう特
    許請求の範囲第1項記載の光学的異方性炭素質ピ
    ツチの製造法。 4 約400℃以下に保持しつつ分離した下層の光
    学的異方性相の含有量が約70%〜約90%である特
    許請求の範囲第1項記載の光学的異方性炭素質ピ
    ツチの製造法。 5 熱処理を約390℃〜440℃で行なう特許請求の
    範囲第1項記載の光学的異方性炭素質ピツチの製
    造法。
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