JPH0421573B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 「発明の属する技術分野」 本発明は、電磁波遮蔽筺体の製造方法に関する
ものである。更に詳しくは、電磁波遮蔽効果が優
れ、かつ、強度等の機能においても優れている筺
体を、能率的に製造する方法に関するものであ
る。

「従来の技術」 最近の電波技術の発達に伴い、極めて広い分野
に各種の波長、各種の強度の電波が利用されるよ
うになり、これら実用化されている電波が建築物
その他電波反射体から反射して存在する電波も多
くなつた。更に、各種のエンジンを搭載した車
輛、船舶、飛行機のエンジンにもとづく電波、自
然の雷にもとづく電磁波、各種電子機器にもとづ
く不要電波などがあり、空間の電波環境が一段と
多様化してきた。この種不要電波は、通例電磁障
害（Electro Magnetic Interference：EMI）、ま
たはラジオ周波数障害（Radio Frequency
Inteference：RFI）と称されている。

電磁波障害の身近な例としては、不要電磁波に
よるラジオやステレオ音声への突然の雑音の混
入、テレビジヨン画像の突然の歪みなどがあげら
れる。

電磁波障害の深刻な例としては、不要電磁波に
よる各種コンピユーターの誤動作があげられる。
今や、コンピユーターは、金融関係のオンライ
ン、飛行機、列車等の輸送システムの管理、制
御、各種製品製造工程の生産システムの管理、制
御等に利用され、日常生活に密接に結びついてい
る。従つて、これらに使用されているコンピユー
ターの誤動作は、日常生活に重大な影響を与える
こととなる。

このような背景から、例えば、米国において
は、デジタル技術を応用したあらゆる電子装置に
ついて発生する電磁波を規制する目的で、FCC
（Federal Communications Commission）より
規制が出されている。

電磁波遮蔽効果の観点のみからいえば、電子機
器のハウジング等には、金属材料を用いるのが最
良である。しかしながら、デザインの自由度、軽
量化、経済性等を総合して、金属材料から合成樹
脂材料への移行が顕著になつてきたため、電磁波
遮蔽と問題が、一段とクローズアツプされてき
た。

従来、合成樹脂成形品にEMI効果／RFI効果を
もたせるためには、基体合成樹脂材料に導電性フ
イラー、金属繊維、リボンフレーク等を添加する
方法（例えば特開昭59−86638号公報）、特開昭59
−102937号公報等参照）、成形品表面を導電性塗
料の塗着、金属溶射、金属箔貼着、真空蒸着、ス
パツタリング等により導電性被膜を形成する方法
がある。

前者の基体合成樹脂材料にフイラー等の添加物
を配合する方法では、添加物を多量配合しなけれ
ば効果が発現されない、多量配合すると成形品の
強度が劣る、成形品の外観が劣る、成形機の摩耗
がおこる、成形条件の選択がむずかしいという欠
点がある。

後者の成形品表面に導電性被膜を形成する方法
は、剥離の問題、設備費が高い（真空蒸着、スパ
ツタリング）、作業環境汚染、廃水汚染（金属溶
射、メツキ）等の問題があつた。

「発明が解決しようとした問題点」 本発明の目的は、電磁波遮蔽効果に優れ、か
つ、強度等の機能においても優れている筺体を、
能率的に製造する方法を提供することにある。

「問題点を解決するための手段」 しかして、本発明の要旨とするところは、電磁
波遮蔽筺体を製造するにあたり、少なくとも10％
の破断伸びを有する電磁波遮蔽層の少なくとも一
方の面に、厚さ0.2〜1.0mmの熱可塑性樹脂シート
を接着剤によつて接着積層する第一工程、 この積層体から熱成形法または冷間成形法によ
つて成形品とする第二工程、 この成形品を射出成形金型キヤビテイに挿入し
て型締めし、キヤビテイの残余部に、電磁波遮蔽
層に積層した熱可塑性樹脂シートと溶融接着可能
な樹脂を注入する第三工程、 を含むことを特徴とする電磁波遮蔽筺体の製造方
法に存する。

以下、本発明を詳細に説明する。

本発明方法では、第一工程で、少なくとも10％
の破断伸びを有する電磁波遮蔽層の少なくとも一
方の面に、厚さ0.2〜1.0mmの熱可塑性樹脂シート
を接着剤によつて接着積層したものを、まず調整
する。

電磁波遮蔽層は、筺体の各面にうめこまれて、
電磁波を遮蔽する機能を果すものである、この電
磁波遮蔽層は、繊維質又は有孔性材料で少なくと
も10％の破断伸びを有するものがよく、好ましく
は10〜200％の破断伸びを示すものがよい。この
電磁波遮蔽層は、次の第二工程において熱成形法
または冷間成形法で成形品としたのちにも、電磁
波遮蔽効果を維持するものがよい。

電磁波遮蔽層は、その伸びの基準に合致する適
当な材料から選択することができる。好適な材料
には、黒鉛繊維マツト、ニツケル被覆黒鉛繊維マ
ツト、金属繊維マツト、金属線編みメツシユおよ
び金属篩がある。マツト、メツシユ及び篩に有用
な金属繊維には、アルミニウム繊維、スチール繊
維及び錫被覆銅クラツド鋼繊維がある。金属繊維
を織り混ぜた熱可塑物、好ましくはポリアミドま
たはポリエステルの繊維も含まれる。

この電磁波遮蔽層の厚さは、余り薄いと第二工
程での成形の際に亀裂が生じたり、破れたりする
ので好ましくなく、余り厚すぎると第二工程での
成形が難しくなつたりして好ましくない。好まし
い厚さは、50〜500ミクロンの範囲であり、特に
好ましいのは80〜250ミクロンの範囲である。

金属篩等のすきまは、通常、電磁波波長の1/10
０以下とするのがよい。例えば、1GHz（ギカヘル
ツ＝1000メガヘルツ）で、波長は300mmであり、
従つてすきまは３mm以下とするのがよい。

上記電磁波遮蔽層に積層される熱可塑性樹脂シ
ートは、第二工程で得られる成形品の形状を維持
し、かつ、電磁波遮蔽層が第三工程における射出
樹脂圧によつて形がくずれないようにする機能を
果たす。この目的で使用可能な熱可塑性樹脂の種
類は、ポリアミド類；ポリエチレンテレフタレー
ト、ポリブチレンテレフタレート等の線状ポリエ
ステル；耐衝撃性ポリスチレン、ABS樹脂、
MBS樹脂等のスチレン系樹脂；その他ポリカー
ボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ
アセタール、ポリフエニレンオキサイド、ポリ塩
化ビニル等があげられる。このシートの厚さは、
余り厚すぎると第二工程での成形ができないの
で、0.2〜1.0mmの範囲で選ぶのがよく、中でも0.3
〜0.5mmの範囲で選ぶのが好ましい。

前記電磁波遮蔽層に、上記熱可塑性樹脂シート
を積層するには、接着剤を使用する。この際使用
できる接着剤としては、酢酸ビニル樹脂系接着
剤、アクリルエマルジヨン系接着剤、シアノアク
リレート系接着剤、ポリウレタン系接着剤、クロ
ロプレン系接着剤、ニトリルゴム系接着剤、
SBR系接着剤、天然ゴム系接着剤、セルロース
系接着剤などがあげられる。

本発明方法では、第二工程で、先きの工程で得
られた積層体から、熱成形法または冷間成形法に
よつて成形品とする。熱成形法とは、積層体を熱
可塑性樹脂シートの成形可能温度まで加熱し、積
層体を成形型に沿つて成形する方法をいう。冷間
成形法とは、積層体を加熱することなしに、圧縮
成形型に沿つて成形する方法をいう。

積層体が、電磁波遮蔽層の一方のみに熱可塑性
樹脂シートが積層されたものであるときは、どの
面を外側にしなければならないという制約はな
い。

第二工程終了後第三工程に移行する間に、必要
があれば、成形品に若干の加工を施してもよい。
例えば、機器部品とりつけ用部品を取りつける、
第三工程で成形品の内外両面に射出成形樹脂を形
成したいときは溶融樹脂が成形品の内外両面に廻
りこめるように穴をあけておく等の加工がそれで
ある。

本発明方法では、第三工程で、前工程で得られ
た成形品を、射出成形金型キヤビテイに挿入して
型締めし、キヤビテイ残余部に、電磁波遮蔽層に
積層した熱可塑性樹脂シートと溶融接着可能な樹
脂を注入して、一体化させる。

使用する射出成形金型は、第二工程で得た成形
品をキヤビテイ内に挿入しても、なお残余のキヤ
ビテイが存するような大きさのものとする。残余
のキヤビテイ部分は、第二工程で得た成形品の内
側表面または外側表面に、全面にわたつて設ける
のがよい。第三工程で形成される樹脂層の厚さ
は、筺体の用途、成形品全体の大きさ、形状、ゲ
ートの数等により種々選ぶことができ、中でも１
〜10mmの範囲で選ぶのが好ましい。

第三工程で使用できる熱可塑性樹脂は、電磁波
遮蔽層に積層した熱可塑性樹脂シートと溶融接着
可能なものから選ぶのがよい。これは、最終的に
得られる筺体の強度等を優れたものとするためで
ある。中でも、両樹脂は同種のものとするのが好
ましい。

「実施例」 以下、本発明を図面にもとづいて詳細に説明す
るが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の
例に限定されるものではない。

第１図および第２図は、第一工程で得られる積
層体の例の断面図、第３図および第４図は、第二
工程終了後の成形品の例の縦断側面図、第５図お
よび第６図は、第三工程遂行途中の成形品を金型
に挿入する状態を示す縦断側面略図、第７図およ
び第８図は、本発明方法で得られる筺体の例の拡
大縦断側面図である。

図において、１０，２０は積層体、１，１１，
１４はそれぞれ熱可塑性樹脂シート、２，１２は
それぞれ電磁波遮蔽層、３，１３，１５はそれぞ
れ接着剤、１６，２７はそれぞれ射出成形雄型、
１７，２６はそれぞれ射出成形雌型、３０は成形
品、１８，２８はそれぞれ溶融樹脂流路、１９，
２９はそれぞれ金型取付け用固定板、２１，３１
はそれぞれ金型取付け用可動板、２２，３２はそ
れぞれ射出成形機ノズル、３３，３５はそれぞれ
射出成形法で形成された部分、３４，３６はそれ
ぞれ機能部品取付けボス、４０，４１筺体であ
る。

本発明の第一工程では、電磁波遮蔽層の少なく
とも一方の面に、熱可塑性樹脂シートを接着剤に
よつて接着積層した積層体を調製する。第１図に
示した例は、一方の面に、第２図に示した例は双
方の面に熱可塑性樹脂シートを積層した積層体で
ある。

本発明の第二工程では、第一工程で調製した積
層体を、熱成形法または冷間成形法によつて、成
形品とする。第３図に示した例は第１図に示した
積層体より得た成形品であり、第４図に示した例
は第２図に示した積層体より得た成形品である。

本発明の第三工程では、第二工程で得られた成
形品を射出成形金型に挿入して型締めし、キヤビ
テイ残余部に溶融樹脂を注入して、目的の筺体と
する。成形品を射出成形金型に挿入する方式は、
第５図に示したように雄型側であつてもよいし、
第６図に示したように雌型側であつてもよい。成
形品を第５図のようにして金型に挿入した場合
は、最終的には、第８図に示したような筺体が得
られる。成形品を第６図のようにして金型に挿入
した場合は、最終的には、第７図に示したような
筺体が得られる。

射出成形法で形成された部分を３３，３５を成
形する際に、機能部品取付けボス３４，３６のよ
うな部分を所望の箇所に同時に形成しておくと、
これら部分に機能部品を容易に取付けられるので
好ましい。また、第三工程を行なう前に、成形品
の所望の箇所に、所望の数のインサートを固定し
射出成形法で形成される部分に埋没させることも
できる。更には、第三工程終了後に得られる筺体
の所望の箇所に、あと加工で機能部品を取付ける
ための穴を設けることもできる。

本発明方法で得られる筺体の形状は、図では角
錐台型の例を示したがこれに限られるものではな
く、半円型、カマボコ型、その他種々変更でき
る。本発明方法で得られる筺体の大きさは、小は
マツチ箱のような大きさから、容量150〜200リツ
トル程度の大きさまでである。

本発明方法で得られる筺体は、IC部品の収納
容器、コンピユーター機器、医療機器、測定機
器、通信機器、車輛、船舶等の電子機器を収納す
る筺体として、好適に使用することができる。

「発明の効果」 本発明は以上説明したとおりであり、次のよう
に特別に顕著な効果を奏し、産業上の利用価値は
極めて大である。

(1) 本発明方法によるときは、特別な設備を準備
することなしに、電磁波遮蔽性能の優れた筺体
を製造することができる。

(2) 本発明方法によるときは、外観、強度ともに
優れ、かつ、電磁波遮蔽効果に優れている筺体
を、能率的に製造することができる。

(3) 本発明方法によつて得られる筺体は、電磁波
減衰率が高く、安定しており、熱冷サイクル、
継続的な振動によつても影響をうけない。

【図面の簡単な説明】

第１図および第２図は、第一工程で得られる積
層体の例の断面図、第３図および第４図は、第二
工程終了後の成形品の例の縦断側面図、第５図お
よび第６図は、第三工程遂行途中の成形品を金型
に挿入する状態を示す縦断側面略図、第７図およ
び第８図は、本発明方法で得られる筺体の例の拡
大縦断側面図である。 図において、１０，２０は積層体、３０は成形
品、４０，４１は筺体、１６，２７はそれぞれ射
出成形雄型、１７，２６はそれぞれ射出成形雌
型、３３，３５はそれぞれ射出成形法で形成され
た部分を示す。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 電磁波遮蔽筺体を製造するにあたり、少なく
   とも10％の破断伸びを有する電磁波遮蔽層の少な
   くとも一方の面に、厚さ0.2〜1.0mmの熱可塑性樹
   脂シートを接着剤によつて接着積層する第一工
   程、 この積層体から熱成形法、または冷間成形法に
   よつて成形品とする第二工程、 この成形品を射出成形金型キヤビテイに挿入し
   て型締めし、キヤビテイの残余部に、電磁波遮蔽
   層に積層した熱可塑性樹脂シートと溶融接着可能
   な樹脂を注入する第三工程、 を含むことを特徴とする電磁波遮蔽筺体の製造方
   法。 ２ 電磁波遮蔽層が、黒鉛繊維マツト、ニツケ
   ル、被覆黒鉛マツト、金属線編みメツシユ、錫被
   覆銅クラツド鋼繊維メツシユ、不織金属繊維マツ
   ト、有孔金属シート、金属篩からなる群より選択
   されたものであることを特徴とする、特許請求の
   範囲第１項記載の電磁波遮蔽筺体の製造方法。