JPH0418723Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 従来、工作物の切削加工に用いられるスローア
ウエイチツプの一例として特開昭58−181502号公
報に記載されたものが知られている。このもの
は、第１６図及び第１７図に示すように長手軸１
に関して回転可能であり、スローアウエイチツプ
２を受容する凹所を有する本体４に、平板の外周
がほぼ三角形とされ、その各辺が凸円弧状の等し
い切刃刃先５，６，７とされ、外周に台形の切欠
き８が形成され、この切欠き８の一方の壁面９
は、この壁面９と前記凸円弧状の各辺（刃先５，
６，７）とこの交差部を通る前記凸円弧状の各辺
の円弧中心線１０上に位置させられ、前記切欠き
８の一方の壁面９と前記平板の状面１との交差部
が凸曲面１２に形成され、刃先の後部１３′がそ
の前部１３″よりも下面（底面）１４に近づいて
おり、上面１にスクイ面が設けられ、前記凸円弧
状の刃先５，６，７の後端に第２刃先１５が形成
され、スローアウエイチツプ２と工作物間の逆向
きの相対運動において工作物を加工できるように
なつており、また２つの隣り合う刃先６，７の間
に設けられた周縁間隙（切欠き）８が刃先７の後
端にある支持面１６によつて区切られ、支持面１
６は本体４の受台１７と協働してスローアウエイ
チツプ２を固定するようになつていて支持面１６
がスローアウエイチツプ２の中心に指向している
ものである。なお、１は回転中心軸でもあり、ス
ローアウエイチツプ２は本体４に正の軸方向取付
角をもつて取り付けられている。

〔考案が解決しようとする問題点〕

ところが、従来、このようなスローアウエイチ
ツプにおいては、スローアウエイチツプ１２の外
周に台形の切欠きが形成され、この切欠きの一方
の壁面９は、この壁面９と凸円弧状の各辺との交
差部を通る凸円弧状の各辺の円弧中心線上に位置
させられており、刃先最先部の凸曲面１２は、刃
先５，６，７に沿つて湾曲しているため、台形の
切欠きが比較的大きくなり、その分凸円弧状の切
刃刃先５，６，７の有効刃長が短くなり、所望す
る半径をカバーするに足る切刃が得られないとい
う問題があり、また第１１図に示すように、切刃
先端（切削始点）Ｓのノーズ部頂角が90°となる
ため切刃強度が低く、このノーズ部の欠損やチツ
ピングが多いという問題があり、切削性能が不十
分であるという欠点があつた。

本考案は、従来のものがもつ以上のような問題
点を解消したスローアウエイチツプを提供するこ
とを目的とする。

〔問題点を解決するための手段〕

本考案は、前記目的を達成するために次のよう
な構成としている。即ち、板部材の外周形状がほ
ぼ正三角形をなし、その各辺を、それぞれ前記正
三角形の外接円の半径より大きい半径の凸円弧状
をなす切刃とし、これら凸円弧状をなす各辺の交
差する位置に、前記板部材の上面から下面に達
し、かつ上面と直交する方向の平面視においてＶ
字状をなす切欠きを配設し、この切欠きの一方の
壁面は、前記平面視において、該壁面と前記凸円
弧状の各辺との交差部から前記板部材の内方側へ
向かうに従つて、前記交差部を通る前記凸円弧状
の円弧中心線から漸次当該切欠きの他方の壁面側
へ離間する傾斜面に形成し、前記切欠きの一方の
壁面と前記上面との交差部を、前記各辺の周面側
からの側面視において、前記壁面及び前記上面と
滑らかに連続する凸曲面状に形成している。

〔実施例〕 以下、本考案の一実施例を第１図乃至第１０図
に基づいて説明する。これらの図中２１はスロー
アウエイチツプであり、このスローアウエイチツ
プ２１は上面２２と下面（底面）２３とが平行な
平板からなつている。スローアウエイチツプ２１
の外周は、ほぼ正三角形２４とされ、その各辺
は、それぞれこの正三角形２４の各頂点を通る正
三角形２４の外接円２８の半径よりも大きい半径
の互いに等しい凸円弧からなる切刃２５，２６，
２７とされている。これら切刃２５，２６，２７
は、略1/4円とされている。

また、スローアウエイチツプ２１の外周には、
正三角形２４のコーナ部に位置してスローアウエ
イチツプ２１の上面２２から下面２３に達し、か
つ、スローアウエイチツプ２１の上面２２と直交
する方向からの平面視において略Ｖ字形をなす切
欠き２９が形成されている。

切欠き２９の一方の壁面３０は、第６図Ａに示
すように、スローアウエイチツプ２１のの平面視
において、当該一方の壁面３０と各辺（切刃２
５，２６，２７）との交差部３１から各辺の円弧
中心側へ向かうに従つて、前記交差部３１を通る
各辺の円弧中心線３２から漸次切欠き２９の他方
の壁面３４側へと離間する傾斜面に形成されてい
る。

すなわち、前記平面視において、各壁面３０は
各切刃の前記交差部３１を通る円弧中心線３２に
大して所定角度α傾斜する傾斜面とされ、各壁面
３０と各切刃２５，２６，２７の前記交差部３１
における接線とがなす角θ′は鈍角とされている。

また、壁面３０とスローアウエイチツプ２１の
上面２２との交差部は第２図及び第６図Ａに示す
ように、スローアウエイチツプ２１の各辺側から
の側面視において各切欠き２９の一方の壁面３０
及び上面２２と滑らかに連続する凸曲面に形成さ
れている。この凸曲面３３の形成に当り、上面２
２には切欠き２９の他方の壁面３４が延長されて
なる段部３５が形成されている。

各壁面３４と切刃とのなす角は第９図に示すよ
うに鈍角βとされ、さらに壁面３４と切刃２５，
２６，２７との交差部はノーズ３６とされてい
る。なお、３７は取付け孔であり、スローアウエ
イチツプ２１はその側面３８が下面２３に垂直な
いわゆるネガテイブタイプのものでもよく、上面
２２と鋭角をなすいわゆるポジテイブタイプのも
のでもよい。

次に、第３図乃至第５図に基づいてこの考案の
スローアウエイチツプ２１を用いたエンドミルに
ついて説明する。これらの図中４１はチツプポケ
ツト４２を有する工具本体（エンドミル本体）で
あり、チツプポケツト４２にはチツプ座４３が形
成されている。チツプ座４３の所定箇所には突起
部４４が設けられている。

スローアウエイチツプ２１は、壁面３０，３４
を突起部４４に当接させられ、かつチツプ先端
（切削始点）４５と回転中心線４６との間隔Ｅが
約０〜0.3m／ｍとなつてスローアウエイチツプ
２１の先端が回転中心軸４６付近を通るように、
さらに第３図に示すように切削中、一の切刃２７
を回転中心軸４６の回りに回転させたときの軌跡
が半球面となるように、すなわち一の切刃２７の
円弧中心が工具の回転中心軸４６と一致するよう
にチツプ座４３上に配置され、取付け孔３７に嵌
入されたねじによりチツプ座４３に軸方向取付角
を正として取り付けられている。

次に、本実施例の効果を第６図乃至第１５図に
基づいて説明する。これらの図中第６図乃至第１
０図は本考案のスローアウエイチツプ２１を示
し、第１１図乃至第１５図は第１６図及び第１７
図に示した従来のスローアウエイチツプ２を示し
ている。

第１１図Ａに示すように、従来のスローアウエ
イチツプ２においては、切欠き８の一方の壁面９
が刃先の接線と直交（同図中θにより示してい
る）して各刃先の円弧中心線１０上に位置してい
る。これに対して第６図Ａに示すように、本実施
例のスローアウエイチツプ２１では、切欠き２９
の一方の壁面３０が前述のように円弧中心線３２
に対して所定角度α傾斜しているため、切刃２
５，２６，２７の刃先位置における接線と前記円
弧中心線３２とがなす角度が鈍角θ′となり、同様
の角度が直角θとされた従来例よりも刃先強度が
高まつている。

また、第１１図Ａ及びＢに示すように、従来の
チツプでは凸曲面１２が刃先５，６，７に沿つて
湾曲しているから、凸曲面１２をチツプ上面と直
交しかつ切刃の円弧中心を含む平面で断面視（同
図Ｂ）したときの稜線m₁が凸曲面１２の母線と
一致する。これに対して、第６図Ａ及びＢに示す
ように、本実施例のスローアウエイチツプ２１で
は、切欠き２９の一方の壁面３０を円弧中心線３
２に対してα傾く傾斜面に形成したため、凸曲面
３３も当該壁面３０に沿つて円弧中心線３２から
傾斜している。従つて、凸曲面３３をチツプ上面
と直交しかつ切刃の円弧中心を含む平面で断面視
（同図Ｂ）したときの稜線m₂が凸曲面３３の母線
と一致することなく、スローアウエイチツプ２１
の周面側から中心側へと向かうに従つて漸次チツ
プ上面側へ突出することとなる。このため、従来
のチツプの刃先角度φよりも刃先角度φ′が増大し
て切刃強度が一層高まる。

さらに、本実施例のチツプでは、切欠き２９の
壁面３０が円弧中心線３２に対して傾斜している
ので、切欠き２９が小形となり、円弧状切刃２
５，２６，２７の有効刃長が大きくなるという効
果も得られる。

すなわち、第６図Ｃに示すように、切欠き２９
の壁面３０や凸曲面３３を形成するに際しては、
壁面３０の前方にこれら壁面３０等を加工する工
具、例えば砥石などを逃がすためのスペースを設
ける必要があり、このため、切刃２５，２６，２
７を壁面３０の内周端を通過して該壁面３０と直
交する壁面３４と当該チツプの外周との交点P₁
を越えて壁面３０側へ延ばすことはできず、かか
る交点P₁の位置が切刃後端位置となる。このよ
うな前提の下において、従来通り切欠き２９の壁
面３０を切刃２５，２６，２７の先端を通過する
円弧中心線３２と一致させた場合（図中２点鎖線
で示す）と、本実施例のように壁面３０をα傾斜
させた場合とを比較すると、壁面３０を円弧中心
線３２に対してα傾斜させた方が壁面３０の前方
に必要なスペースが減少して切刃２５，２６，２
７の後端P₁が壁面３０側に接近した位置P₂に移
るため、有効刃長が大きくなることが明らかであ
る。

また、第１２図に示すように従来のスローアウ
エイチツプ２においては、切刃の後部１３′側は
スローアウエイチツプ２の下面１４に近づいてい
る。

これに対して、第７図に示すように本実施例の
スローアウエイチツプ２１は、切刃２５，２６，
２７の最先部以外は上面２２と底面２３とが平行
となつている。

このため、従来のスローアウエイチツプ２に比
し、本実施例のスローアウエイチツプ２１は、
加工精度誤差が少ない。（回転中心軸から切刃が
離れる量（第１２図に示すＡ）が大きい程補正値
が必要となる。）切刃強度が一定である。（従来
ののもにおいては、切刃後部が極端に底面に近づ
くと薄いチツプと同じこととなり、切屑厚みの厚
くなる切刃後部では強度不足となる。） また、第１３図に示すように従来のスローアウ
エイチツプ２においては、刃先５，６，７の円弧
中心Ｂ側に、Ｂ−Ｃ断面において、Ｄ，Ｂ−Ａ断
面においてD′でスクイ面が設けられている。

これに対して、第８図に示すように本実施例の
スローアウエイチツプ２１は切刃２５，２６，２
７の最先部以外は上面２２と下面２３とが平行と
なつている。

このため、従来のスローアウエイチツプ２に比
し、本実施例のスローアウエイチツプ２１は、切
屑排出性がきわめて良い（チツプ上面に障害物が
なく、切屑は自然カールする。）。（従来のチツプ
においては第１３図に示すスクイ面Ｄ，D′が立
壁となつており、これらスクイ面Ｄ，D′に切屑
が当たるため、切屑排出性が悪く、チツプがビビ
リ振動を起こす。） また、第１４図に示すように従来のスローアウ
エイチツプ２においては、刃先５，６，７の後部
に第２刃先１５が形成されており、この第２刃先
１５と円弧上の刃先の接線とのなす角γが鈍角と
なつている。

これに対して、第９図に示すように本実施例の
スローアウエイチツプ２１においては、切欠き２
９の他方の壁面３４が第２切刃となり、壁面３４
と切刃の接線とのなす角βが鈍角となり、さらに
刃と壁面３４との交差部がノーズ曲面となつてい
る。

このため、従来のスローアウエイチツプ２に比
し、本実施例のスローアウエイチツプ２１におい
ては、軸方向のスクイ角が負であつても使用可
能である。（切刃後部壁面３４をポジにすること
によるが、ネガでも使用可能であるのはもちろん
のことである。）切刃と壁面３４との交差部が
ノーズ曲面であるため、よりチツピング防止効果
が大となつた。

また、第１５図に示すように従来のスローアウ
エイチツプ２においては、刃先５，６，７の最後
部に支持面１６を有し、この支持面１６がスロー
アウエイチツプ２の中心に指向している。

これに対して第１０図に示すように本実施例の
スローアウエイチツプ２１では、切欠き２９の両
壁面３０，３４が支持面となり、これらに工具本
体の支持部（例えば突起部４４）が当接してい
る。

このため、従来のスローアウエイチツプ２に比
して、本実施例のスローアウエイチツプ２１にお
いては、チツプの回り止め効果が大である。（丸
形若しくは丸形に近い形状のスローアウエイチツ
プは、右回転の工具であれば横送り切削において
右回りし易く、縦送り切削においては左回りし易
いが、本実施例のものではチツプの右回り左回り
を両壁面３０，３４で受けとめしている。） さらに、本実施例においては、第１図に示すよ
うに、各切刃２５，２６，２７が正三角形２４の
外接円２８よりも径方向内方に後退するため、真
球面を精度良く加工できるという効果を奏する。

すなわち、従来のスローアウエイチツプ２のよ
うに、各切刃の円弧中心が一致する形状のものに
あつては、各切刃の円弧中心を工具の回転中心軸
と一致させて切削を行う場合、一の切刃と回転中
心軸を挟んで対向する他の切刃が当外一の切刃で
形成される真球状の加工面と干渉する。この干渉
を避けるためには、一の切刃を工具側方へ突出さ
せる、すなわち、前記他の切刃を工具内方へと後
退させる必要があるが、これでは一の切刃の描く
軌跡が真球面にならず（一の切刃の円弧中心と回
転中心軸とが一致しない）、加工誤差を生じる。

これに対して、本実施例では第３図に示すよう
に、一の切刃２７の円弧中心がチツプの中心位置
を挟んで反対側に位置するため、一の切刃２７の
円弧中心を回転中心軸４６と一致させたとき、一
の切刃２７と回転中心軸４６を挟んで対向する他
の切刃２６が、一の切刃２７によつて形成される
真球状の加工面４８と干渉しない。従つて、真球
形状を精度良く加工できる。

なお、本実施例のスローアウエイチツプ２１
は、切刃に凸曲面３３が形成されているので、切
削荷重が切削の進行に伴い漸次増大し、切刃に一
度に切削荷重がかからないため、切刃に対して大
きな衝撃力とならない。

なお、前記実施例においては、本考案をスロー
アウエイチツプの先端が回転中心軸４６付近を通
るエンドミルに適用したが、これに限られること
なく、中心の先端が回転中心軸４６付近を通らな
いラジアスタイプのエンドミルに適用することも
できる。

〔考案の効果〕

本考案によれば、板部材の外周形状をほぼ正三
角形となし、その各辺を、それぞれ前記正三角形
の各頂点の外接円の半径より大きい半径の凸円弧
状切刃とし、かつ上面から下面に達する切欠きを
各切刃の交差部に配設し、この切欠きの一方の壁
面を、この壁面と前記凸円弧状の各辺との交差部
を通る前記凸円弧状の各辺の円弧中心線に対し所
定角度傾斜して形成し、前記切欠きの一方の壁面
と前記上面との交差部を凸曲面上に形成した構成
としたので以下のような効果を奏する。

まず、Ｖ字形の切欠きの一方の壁面を傾斜面と
したために、切欠きそのものが小形となり、この
結果、有効刃長が長くなつて所望する切削半径を
十分にカバーすることができる。

また、切欠きの壁面を傾斜面としたために各切
刃のチツプ上面側からの平面視における刃先角度
が増加するとともに、各切刃の凸曲面に沿う部分
の円弧中心線に沿う断面視における刃先角度も増
大し、この結果刃先強度が向上して高速、高送り
切削や高硬度材料の切削に対する耐久性が改善さ
れる。

さらに、一の切刃の円弧中心を工具の回転中心
軸と一致させて切削を行つても、残る切刃が加工
面に干渉しないので、真球形状を精度良く加工す
ることができ、ひいては切削性能を大幅に向上さ
せることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図乃至第１０図は本考案の実施例を示すも
ので、第１図は正面図、第２図は側面図、第３図
は回転中のスローアウエイチツプと被削材との関
係を示す図、第４図は本考案のスローアウエイチ
ツプをエンドミル本体に取り付けた状態を示す正
面図、第５図は本考案のスローアウエイチツプを
エンドミル本体に取り付けた状態を示す側面図、
第６図乃至第１０図は従来のスローアウエイチツ
プとの差異を示すための説明図、第１１図乃至第
１５図は従来のスローアウエイチツプの特徴を示
す図、第１６図は従来のスローアウエイチツプの
一例を示す側面図、第１７図は従来のスローアウ
エイチツプの一例を示す正面図である。 ２１……スローアウエイチツプ、２２……上
面、２３……底面、２４……正三角形、２８……
外接円、２９……切欠き、３０，３４……壁面、
３３……凸曲面。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 板部材の外周形状がほぼ正三角形をなし、その
   各辺は、それぞれ前記正三角形の外接円の半径よ
   り大きい半径の凸円弧状をなす切刃とされ、 これら凸円弧状をなす各辺の交差する位置に、
   前記板部材の上面から下面に達し、かつ上面と直
   交する方向の平面視においてＶ字形をなす切欠き
   が配設され、 この切欠きの一方の壁面は、前記平面視におい
   て、該壁面と前記凸円弧状の各辺との交差部から
   前記板部材の内方側へ向かうに従つて、前記交差
   部を通る前記凸円弧状の円弧中心線から漸次当該
   切欠きの他方の壁面側へ離間する傾斜面に形成さ
   れ、 前記切欠きの一方の壁面と前記上面との交差部
   が、前記各辺の周面側からの側面視において、前
   記壁面及び前記上面と滑らかに連続する凸曲面状
   に形成されたことを特徴とするスローアウエイチ
   ツプ。