JPH037928Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔考案の技術分野〕 この考案は電圧または電流を変換する樹脂モー
ルド形変成器のコイル、特に低圧コイルの巻終り
口出線取出し部分の構成の改良に関するものであ
る。

〔従来技術〕

従来のこの種のコイルとして第１図および第２
図に示すものがあつた。

第１図および第２図において、１は厚板の絶縁
板を円筒状に形成してなる巻枠、２は絶縁被覆し
た導線を巻枠１の外周に奇数層巻回してなる低圧
コイルであり、このように奇数層巻回される場合
は第２図により明瞭に示すように巻終り口出線２
Ａを最外層（最終層）の外周に接し、巻終り口出
線２Ｂと同一方向に取出すように形成している。
３はプラスチツクフイルムなどの材料からなる薄
葉絶縁紙を低圧コイル(2)の外周に巻回してなる絶
縁層、４は絶縁被覆した導線を絶縁層３の外周に
巻回してなる高圧コイル、５は高圧コイル４の巻
始めおよび巻終りにそれぞれ接続された一次端
子、６は巻枠１、低圧コイル、絶縁層３、高圧コ
イル４および一次端子５を一体とし、合成樹脂を
含浸または注型しかつ成形してなる外被樹脂、７
はコ字状の鉄心で、一方の脚部を巻枠１に、他方
の脚部を外被樹脂６の空間部６Ａに貫挿すると共
に固定している。８は外被樹脂６の底面６ｂに取
付けられた取付足である。

従累のコイルは以上のように構成されてお、薄
葉絶縁紙を低圧コイル２に巻回して絶縁層３を形
成した状態では、第１図において明らかなように
低圧コイル２の巻終り口出線２Ａの部分が極端に
脹れ上がつている。従つて、絶縁層３に局部的な
応力が集中し、絶縁層３が均一なテンシヨンで巻
回されない。

このように、絶縁層３に局部的な応力が集中す
ると、その部分が経時的な熱履歴を受け絶縁耐力
が低する。また、樹脂モールド形変成器の使用時
においても、前記の脹れ上がり部が局部的な電極
を構成しているので電界集中を起こし易く、低圧
コイル２と高圧コイル４との間に開閉サージまた
は雷インパルスが印加されると絶縁破壊を発生す
るなどの欠点を有していた。

〔考案の概要〕

この考案はこうした欠点を除去するためになさ
れたもので、低圧コイルの巻終り口出線を低圧コ
イルの層間に配設した重ね合せ状態の絶縁板の間
を通して巻始め口出線の方向に取出すことによ
り、絶縁板の部分における絶縁層の脹らみをゆる
やかにすると共に、絶縁板に樹脂通過孔を形成し
て巻終り口出線の周囲に樹脂を充填することによ
り、絶縁層の絶縁低下および高低圧コイル間に作
用する開閉サージまたは雷インパルスなどによる
絶縁層の絶縁破壊などの発生しない樹脂モールド
形変成器のコイルを提供することを目的とするも
のである。

〔考案の実施例〕

次に本考案の一実施例を第３図および第４図に
ついて説明する。図において低圧コイル２の巻終
り口出線２Ａは一部を折曲げ、巻回された低圧コ
イル２の最外層２Ｃと、この最外層の前層２Ｄと
の間を通して巻始め口出線２Ｂ方向に取出してい
る。９は折返すことによつて巻枠の径方向に重ね
合せられた絶縁板で、適当な数の樹脂通過孔９Ａ
が形成され、低圧コイル２の巻終わり口出線２Ａ
の最外層２Ｃおよびその前層２Ｄのコイルと交錯
する部分を重ね合せ部に挾挿することにより隠蔽
すると共に、絶縁板の外周側に位置する低圧コイ
ルの層がなだらかに脹らむようにするものであ
る。１０は巻終り口出線２Ａと絶縁板９との間に
形成された空間、１１は反対側の空間である。他
の構成部品は従来のものと同一につき図示省略す
る。

このように低圧コイル２の巻終り口出線２Ａを
最外層２Ｃの下に配設した重ね合せ状態の絶縁板
９の間を通して取出すことにより、最外層がなだ
からに脹らみ、従つてまた絶縁層３の帳らみも同
様になだらかになる。このため絶縁層３に極端な
応力が作用することがらなく、均一なテンシヨン
を得ることができる。また、樹脂は空間１０へは
コイルの軸方向に侵入しにくいが、絶縁板９に樹
脂通過孔９Ａが形成されているため、空間１１内
に入つた樹脂（この空間には絶縁板がないため樹
脂が入りやすい）が導線と絶縁板９との間の空間
を通して樹脂通過孔９Ａに到り、ここから空間１
０内に侵入しこの空間１０に充填される。樹脂通
過孔９Ａの数、形状、場所等は巻終り口出線２Ａ
の絶縁に支障のないように選定するのが好まし
い。

巻終り口出線２Ａを第３図のように最外層２Ｃ
とその前層２Ｄとの間を通して取出すには、前記
前層２Ｄまで巻回した時に、巻終り口出線２Ａよ
り若干太いピンを絶縁板９で挾挿した状態で前記
前層２Ｄの上に置きその上に最外層２Ｃを巻回す
る。最外層(2)Ｃの巻回が終了すれば、前記ピンを
層２Ｃ，２Ｄ間から引抜きつつ巻終り口出線２Ａ
をそのあとに挿入すれば良い。

前記実施例では絶縁板９は巻終り口出線２Ａの
部分だけに設けているが、第５図のように全周に
わたつて設け、その一端を折返して重ね合せ部を
形成し、この重ね合せ部に巻終り口出線２Ａを挾
挿するようにしても良い。樹脂通過孔９Ａを重ね
合せ部に形成することは言うまでもない。このよ
うに絶縁板９を全周に亘つて設けるとこの層間の
絶縁性が向上する利点がある。

なお、低圧コイル２がコイル層間に層間絶縁紙
を有するものである場合には、絶縁板９（第５
図）はかかる層間絶縁紙で兼ねることができる。
勿論、絶縁板９を層間絶縁紙に追加して設けても
良い。

更に前記実施例では巻終り口出線２Ａは最外層
２Ｃとその前層２Ｄとの間に通しているが、低圧
コイル２の他の層間、例えば外周からかぞえて第
二層と第三層との間に通しても良い。

〔考案の効果〕

以上のようにこの考案は、低圧コイルの巻終り
口出線を低圧コイルの層間に配設した重ね合せ状
態の絶縁板の間を通して取出すことにより絶縁板
の外周側に位置する低圧コイルの層が絶縁板の部
分でなだらかに脹らむようにしたので、低圧コイ
ルの外周に巻回される絶縁層の局部的な脹らみが
なくなり、応力の局部的集中が緩和される。この
ため、絶縁層の絶縁耐力が経時劣することがなく
なる。また、絶縁板に樹脂通過孔を形成したこと
により、巻終り口出線の周囲にも合成樹脂が充填
されるので、開閉サージや雷インパルスが印され
ても絶縁層が破壊されることもなくなるので変成
器の信頼性および性能が向上する効果が得られ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来のコイルを有する変成器の横断面
図、第２図は第１図のものの低圧コイルの斜視
図、第３図はこの考案の変成器コイルの一実施例
における低圧コイルの斜視図、第４図は第３図の
実施例における絶縁板の斜視図、第５図は絶縁板
の他の形式のものを示す斜視図であり、図中同一
符号は同一部または相当部を示す。なお図中、１
は巻枠、２は低圧コイル、３は絶縁層、４は高圧
コイル、２Ａは低圧コイル２の巻終り口出線、２
Ｂは巻始め口出線、２Ｃは低圧コイル２の最外
層、２Ｄはその前層、９は絶縁板、９Ａは樹脂通
過孔である。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 (1) 巻枠の外周に低圧コイル、絶縁層および高圧
   コイルを順次同心状に巻回し、これらを合成樹
   脂でモールドしてなる変成器コイルであつて、
   低圧コイルが奇数層に巻回されているものにお
   いて、前記巻枠の径方向に重ね合せられ樹脂通
   過孔が形成された絶縁板を前記低圧コイルの層
   間に設けて前記絶縁板の外周側に位置する低圧
   コイルの層が前記絶縁板の部分でならだかに脹
   らむようにし、前記重ね合せられた絶縁板の間
   を通して前記低圧コイルの巻終り口出線を巻始
   め口出線の方向に取出すと共に、前記樹脂通過
   孔を通して前記絶縁板の間に樹脂を充填するよ
   うにした樹脂モールド変成器のコイル。 (2) 巻終り口出線の取出しを低圧コイルの最外層
   とその前層との間で行なつた実用新案登録請求
   の範囲第１項記載の樹脂モールド形変成器のコ
   イル。 (3) 絶縁板を巻終り口出線の部分に局部的に設け
   ると共に折返して重ね合せ部を形成し、この重
   ね合せ部に巻終り口出線を挾挿した実用新案登
   録請求の範囲第１項記載の樹脂モールド形変成
   器のコイル。 (4) 絶縁板を巻終り口出線を取出す層間の全周に
   亘つて設けると共に、その一端を折返して重ね
   合せ部を形成し、この重ね合せ部に巻終り口出
   線を挾挿した実用新案登録請求の範囲第１項記
   載の樹脂モールド形変成器のコイル。 (5) 絶縁板を低圧コイルの層間絶縁紙で兼ねた実
   用新案登録請求の範囲第４項記載の樹脂モール
   ド形変成器のコイル。