JPH0353116B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 (A) 産業上の利用分野 本発明はオフセツト輪転印刷機（以降「オフ輪
印刷機」という）に刷版を装着する方法に関する
ものであり、特に溝はめ込式テンシヨン軸を備え
た版胴に紙あるいは合成樹脂フイルムを支持体と
する刷版を安定的に固定することのできる方法及
びその固定治具に関するものである。

(B) 従来技術及びその問題点 オフ輪印刷機で印刷に供される代表的な刷版と
してアルミ板を支持体とする所謂PS版
（Presensitized Plate）が知られているが、PS版
は製版工程が繁雑なことから、近年銀塩方式ある
いは電子写真方式等のダイレクト製版による刷版
が伸長してきている。これらの刷版は低コストの
実現から紙、両面樹脂コート紙あるいは合成樹脂
フイルム等が支持体として用いられるのが普通で
あるが、これらの紙や合成樹脂フイルムを支持体
として用いた刷版は、アルミ板を支持体とする刷
版用に設計された印刷機に必ずしも適用できると
は限らないという実態がある。

例えば第１図に示すような溝はめ込式テンシヨ
ン軸を備えた版胴のオフ輪印刷機はPS版用に設
計されたものであり、アルミ板を支持体とする刷
版は問題なく装着できるが、紙が合成樹脂フイル
ムを支持体とする刷版は安定して版胴に固定する
ことができず、印刷できる状態に装着することは
できない。

印刷版をオフ輪印刷機に装着するための具体的
な作業は版胴面に刷版を巻きつけることである
が、支持体がアルミ板の場合、予め版曲げ機でア
ルミ板の弾性限界以上の力で所定の角度に折曲げ
ると元の形状に復元せず、折曲つた状態が所定の
角度で保持されるので、テンシヨン軸で引張るこ
とによつて版胴面に密着した状態で固定される。
ところが、支持体が紙や合成樹脂フイルムの場合
には所定の角度に折曲げても元の形状、すなわち
平担な状態に復元しようとする力が働くので、折
曲げられた所定の角度が保持されず、テンシヨン
軸で引張るとテンシヨン軸の溝から刷版が抜けて
しまつて版胴に固定できないという問題がある。

(C) 発明の目的 本発明の目的は前述の如き溝はめ込式テンシヨ
ン軸を備えた版胴に、紙、合成樹脂フイルム等を
支持体とする刷版を安定的に固定することのでき
るオフ輪印刷機に刷版を装着する方法を提供する
にある。

本発明の他の目的は溝はめ込式テンシヨン軸を
備えた版胴に紙、合成樹脂フイルム等を支持体と
する刷版を簡単かつ確実に固定することができる
オフ輪印刷機用刷版固定治具を提供するにある。

(D) 発明の構成 本発明の目的は次に示す方法により達成するこ
とができる。すなわち本発明は溝はめ込式テンシ
ヨン軸を備えた版胴に紙又は合成樹脂フイルムを
支持体とする刷版を装着する方法であつて、前記
刷版の端部及び刷版固定治具を前記テンシヨン軸
の溝にはめ込むことにより、版胴に刷版を固定で
きるようにしたことを特徴とするオフセツト輪転
印刷機に刷版を装着する方法である。

本発明の特徴は版胴のテンシヨン軸の溝に刷版
固定治具をはめ込んで、版胴に刷版を固定できる
ようにしたところにある。

本発明に用いられる刷版固定治具としては、基
本的に刷版の端部（通常咬え尻部）と共に版胴の
テンシヨン軸の溝にはめ込んで刷版と版胴に固定
できるものであればよく、形状、材質等は特に限
定されないが、種々検討の結果、略版胴巾の長さ
を有し、かつ、その側断面が全巾に渡り「く」の
字型形状であり、加えて弾性を有する材質が好ま
しく、さらに「く」の字型形状の少なくとも一方
の片に切欠き部を有するものが特に好ましい。

第３図及び第４図は本発明の刷版固定治具の形
状の例を示したものであるが、第３図は曲げ角度
が略直角、第４図は曲げ角度が鈍角の各々「く」
の字型形状の刷版固定具である。材質としては金
属板、硬質樹脂等が使用できるが、中でも弾性を
有するものが刷版の固定状態の安定性に優れ、又
形状の復元性があるので繰返し使用できる点でよ
り好ましく、鋼が特に優れている。第３図及び第
４図において７及び８は板状基材を「く」の字型
に折曲げて形成された片であり、９は切欠き部で
ある。テンシヨン軸の溝には通常片８がはめ込ま
れる。切欠き部９は無くてもよいが、無い場合に
は印刷中に刷版にしわが生じる場合があり、切欠
き部９を設けることにより、このしわの発生を防
止することができるので、有る方が好ましい。切
欠き部９の数及び切欠き部９間の長さは特に限定
されず、刷版固定治具の長さ等に応じ適宜決定さ
れる。

第５図は第３図に示された刷版固定治具の上面
図ａ、裏面図ｂ、下面図ｃ、正面図ｄ及び側面図
ｅを示したものである。

本発明に用いられる刷版の版材としては酸化亜
鉛−樹脂分散型の電子写真オフセツトマスター、
銀錯塩拡散転写方式の銀塩オフセツトマスター、
光感光性樹脂を用いたオフセツトマスター、直描
型オフセツトマスター等種々のものが挙げられる
がこれらに限定されない。

本発明に用いられる刷版の紙又は合成樹脂フイ
ルム支持体としては紙、樹脂被覆紙（例えば両面
ポリエチレン被覆紙）、合成樹脂フイルム（例え
ば、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレ
ン、ポリプロピレン、ポリエチレン−ポリエチレ
ンテレフタレート積層フイルム等）があるがこれ
らに限定されない。

(E) 実施例 次に本発明の実施例について図に基づき説明す
るが、本発明はこれに限定されない。

第２図は本発明に用いられるオフ輪印刷機の溝
はめ込式テンシヨン軸を備えた版胴に刷版を装着
する一般的な状況を模式的に示した側断面図であ
る。第１図ａにおいて、予め両端部を版曲げ機で
折曲げた刷版１の咬え頭部を版胴２の一方の咬え
５にかませた後、版胴２の面に沿わせて巻きつ
け、その咬え尻部をテンシヨン軸３の溝４にはめ
込む。この状態では刷版１は版胴２の面に密接せ
ず浮いた状態となつているが、第１図ロのように
テンシヨン軸３をテンシヨンクランプ（図示せ
ず）で少し回転させ（この場合は左側に回転させ
る）て締めつけ、刷版１を版胴２の面に密接させ
て装着が完了する。この場合、支持体としてアル
ミ板を用いた版板はこれで版胴に安定的に固定さ
れ印刷が開始できるが、支持体として紙や合成樹
脂フイルムを用いた刷版は咬え５及びテンシヨン
軸３の溝の入口部での刷版の折曲げ角度が固定さ
れずにゆるみが生じ、著しい場合には刷版１の咬
え尻が溝４から抜けてテンシヨン軸３による刷版
の引張りがきかなくなり、刷版が版胴面に安定的
に固定されない。

第２図は本発明の１例を第１図の版胴の咬え部
を拡大して示した説明図である。刷版１としてポ
リエチレンテレフタレートフイルムを支持体とす
る銀錯塩拡散転写法により製版された銀塩方式の
ダイレクトオフセツト印刷版を使用した。予め版
曲げ機で刷版１の両端を十分に折曲げ、その咬え
頭部を版胴２の一方の咬え５にかませた後、第１
図ａと同じ要領で刷版１を巻き、咬え尻部をテン
シヨン軸３の溝４にはめ込み、さらに第２図イに
示したように本発明のステンレス鋼製の刷版固定
治具６をはめ込む。次に第２図ｂのように第１図
ロと同じ要領でテンシヨン軸３を左方向に少し回
転させて引張り、版胴２に刷版１を固定し、オフ
輪印刷機で印刷を行つたところ何ら問題を生じ
ず、安定的に固定できることが確認された。ここ
で用いられた本発明の刷版固定治具は第３図に示
した型のものであり（詳細は第５図参照）、寸法
は以下の通りである。基材のステンレス鋼板厚み
0.2mm、固定治具の全長840mm、片７の長さ10mm、
片８の長さ15mm、切欠き部９の巾１mm、切欠き部
９の数９カ所、切欠き部９間の長さは約80mmであ
る。

第２図ロに示したように刷版１は刷版固定治具
６によりその両端部、すなわち咬え尻部と咬え頭
部が押さえつけられ固定される。この押さえ圧は
固定治具６の材質に弾性の強いものを用いること
によつて大きくなり、さらに形状を「く」の字型
とすることにより大きくなる。

(F) 発明の効果 本発明によれば版胴のテンシヨン軸の溝に刷版
の端部と共に刷版固定治具をはめ込むことによ
り、紙、合成樹脂フイルム等を支持体とする刷版
を溝はめ込式テンシヨン軸を備えた版胴に安定的
に固定することができる。又、刷版固定治具を特
定の形状及び材質とすることにより、簡単かつ確
実に刷版を固定でき、オフ輪印刷機による印刷に
供することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明に用いられるオフセツト輪転印
刷機の版胴に刷版を装着する一般的な状況を模式
的に示した側断面図、第２図は本発明の方法を構
式的に示したくわえ部の部分拡大断面図、第３図
及び第４図は本発明の刷版固定治具の１例を示し
た斜視図、第５図は第３図の刷版固定治具の上面
図ａ、裏面図ｂ、下面図ｃ、正面図ｄ及び側面図
ｅである。 １……刷版、２……版胴、３……テンシヨン
軸、４……溝、６……刷版固定治具。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 溝はめ込み式テンシヨン軸を備えた版胴に紙
   又は合成樹脂フイルムを支持体とする刷版を装着
   する方法であつて、該溝に相当する垂直面に刷版
   の端部を挿入し、該端部上に略版胴部の長さを有
   し、且つ側断面が全巾に亘り「く」の字型形状の
   固定治具を押圧して刷版を版胴に固定することを
   特徴とするオフセツト輪転印刷機に刷版を装着す
   る方法。 ２ 溝はめ込み式テンシヨン軸を備えた版胴に紙
   又は合成樹脂フイルムを支持体とする刷版を固定
   するための治具であつて、刷版の端部と共に前記
   溝にはめ込むことのできる厚さと略版胴巾の長さ
   を有し、側断面が全巾に亘り「く」の字型形状で
   あり、かつ弾性を有する基材からなること特徴と
   するオフセツト輪転印刷機用刷版固定治具。 ３ 「く」の字型形状の少なくとも一方の片に切
   欠き部を有することを特徴とする特許請求の範囲
   第２項記載のオフセツト輪転印刷機用刷版固定治
   具。