JPH027974Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、港湾、護岸工事に用いられる鋼管矢
板の防食構造に関する。

〔従来の技術〕

鋼管矢板の干満域及び飛沫域は、マクロ電池の
作用によつて集中的に腐食することが知られてお
り、このため鋼管矢板の海側を耐食性のカバーパ
ネルで個々に被覆し、各カバー内にモルタル等を
充填する防食工事が行なわれている。しかし、こ
の種のパネル方式では、各鋼管を接続している金
属製の継手部分の防食が不十分になるので、最近
では、鋼管の外面にブラケツトとアングルを固着
し、このブラケツトにカバーパネルの両端を係止
させると共に継手被覆用の補助カバーをアングル
の内側へ上方から落とし込んでいる。

〔考案が解決しようとする問題点〕 しかし、上記の防食構造は、新規工事では有効
であるが、補修工事のように上方にコンクリート
が既に構築されている場合、補助カバーを上方か
らアングルに挿入できない難点がある。一方、ア
ングルやブラケツトの外面に補助カバーを固着す
ることは可能であるが、この場合には、多数のボ
ルト及びナツトを要し、それらの締め付け作業に
も手間がかかる。

本考案は、かかる事情に鑑みてなされたもので
あり、その目的は、ボルト等を要せずにアングル
等の係止部材に前面から容易にかつ所定位置に補
助カバーを取り付けられる鋼管矢板の防食構造を
提供することにある。

〔問題点を解決するための手段〕

上記目的を達成するため、本考案の防食構造
は、隣接する各鋼管の継手近傍にほぼ対向して固
着されたブラケツトと、ブラケツトに取り付けら
れて鋼管の海側を覆う防食カバーパネルと、各ブ
ラケツトに締結部材で取り付けられたアングル
と、対向したアングル間に挿入され前記締結部材
で支持された補助カバーと、補助カバーを屈曲可
能にするヒンジとから構成されている。

〔作 用〕

この構成により、補助カバーの係止部材である
アングル間隔が狭くても、一旦補助カバーを屈曲
させればアングルの間へ容易に挿入することがで
きる。アングルの内側に入つた補助カバーは、両
側の背面が締結部材によつて支持されるため奥に
入りすぎることはなく、その内部に充填剤が注入
されると充填剤の膨張圧でアングルの内面に自動
的に圧接する。

〔実施例〕

第１図は、本考案が適用された防食構造の簡略
平面図である。鋼管矢板１０は、海中に打ち込ま
れた複数の鋼管１２を継手１４により連結した構
築され、図中陸側をＡ、海側をＢで示してある。

各鋼管１２の海側には、円弧状の防食カバーパ
ネル１６がブラケツト１８により取り付けられて
いる。このパネル１６はFRP等の耐食性材料で
作られ、第４図に示すように鋼管１２の干満域及
び飛沫域を被覆する。パネル１６の下端は、内側
に湾曲または屈曲し、環状のシール２０が設けら
れている。図から分かるようにこのシール２０
は、鋼管１２の外面に当接して、鋼管１２とパネ
ル１６間を密封する作用を行なう。パネル１６と
鋼管１２との間には、スペーサ２２が介装されて
両者間を所定距離に維持しており、パネル１６の
上端にはフランジ１６ａが形成されている。

一方、継手１４の海側面には、第１図及び第２
図に示すように一対のボルトスタツド２４が溶接
されている。各ボルトスタツド２４は、鋼管外面
に沿う円弧形状で先端にブラケツト１８の一端が
嵌合し、ナツト２６により固定される。ブラケツ
ト１８は、予めパネル１６の両端に連結し、パネ
ル１６の位置決めをしてからブラケツト１８をボ
ルトスタツド２４に固定し、最終的にブラケツト
１８を鋼管１２に固定するのが望ましい。

継手１４の下方には、第３図に示すようにシー
ル用底板２８ａ，２８ｂが溶接されている。この
底板２８ａ，２８ｂは、継手１４及び継手付近の
鋼管面に適合する形状をなし、防食カバーの載置
台及び底部シールの役割を果たす。この実施例で
は、二つの底板２８ａ，２８ｂを中央部で重ね合
わせてから、鋼管１２及び継手１４に固着された
二本のロツド３０，３２により支持される。底板
２８ａ，２８ｂの取り付け手段は、この他に位置
決めをしてから全縁を鋼管１２に溶接したり、ブ
ラケツト１８の下端にボルトを設けて吊り構造と
してもよい。

底板２８ａ，２８ｂを二つに分割してあるの
は、隣接する鋼管１２，１２の隙間形状が必ずし
も一定ではないからである。即ち、継手１４の係
合状態により、必要とされる底板面積が変わるた
め、この実施例では面積が調整できるようになし
ている。従つて、一方の底板２８ａに穿設された
ボルト挿入孔は長孔にしておくことが必要であ
る。各鋼管１２が一線上に整列して隙間形状が一
定の場合には、一枚の底板でも差し支えない。

更に、底板２８ｂの先端と継手１４との間のシ
ールが問題となる場合には、第１図に示すように
この部分に詰物３４を充填する。底板２８ａ，２
８ｂの取り付けに当たつて前端が水平面より下が
るような場合には、第３図に示すように筋交い状
にロツド３６にて支持し、防食工事完成後にこれ
を除去すればよい。

一方、ブラケツト１８には、パネル１６と共に
アングル３８がボルト４０及びナツト４２により
固定されており、対向するアングル３８，３８間
に補助カバー４４が挿入される。補助カバー４４
にはパネル１６と同様にFRP等の耐食性材料が
使用され、下端は前述の底板２８ａ，２８ｂによ
り支持される。補助カバー４４が継手１４側に移
動するのを防止するには、第２図に示すように高
ナツト４２ａあるいはボルト４０の先端を利用す
る。更に、第５図に示すように、補助カバー４４
を二分割し、ヒンジ４５にて連結すれば、補助カ
バー４４は第５図に示すように屈曲可能となり、
既設鋼管のように上方にコンクリートが盛られて
いる場合でもアングル３８，３８間に正面から挿
入することができる。

以上のように構成された本考案の工事手順は次
の通りである。まず、継手１４の海側に一対のボ
ルトスタツド２４，２４を溶接し、詰物３４にて
隙間を埋める。続いて、予め両端にブラケツト１
８が連結されたパネル１６を鋼管１２の外面に配
置し、ブラケツト１８をナツト２６により各ボル
トスタツド２４に固定する。このとき必要ならば
各ブラケツト１８を鋼管１２に溶接して、パネル
１８の支持力を強化する。

次いで、シール用底板２８ａ，２８ｂを継手１
４に溶接し、位置合わせした後に連結してロツド
３０，３２により支持する。また、必要に応じて
ロツド３６にて底板２８ａ，２８ｂを下方から支
持する。この後、ブラケツト１８にアングル３８
を取り付けてナツト４２または４２ａにより固定
し、両アングル３８，３８間に補助カバー４４を
挿入する。最後に、パネル１６及び補助カバー４
４内にモルタル等の充填剤４６（第４図参照）を
注入して固化させる。充填剤４６は固化すると膨
張するから、補助カバー４４も外側に押されてア
ングル３８の内面に密着することになる。

尚、上記実施例では、ブラケツト１８をボルト
スタツド２４で支持しているが、鋼管１２との固
着力を大きくしてボルトスタツド２４を省略して
もよい。

〔考案の効果〕

以上詳述したように、本考案における鋼管矢板
の防食構造では、継手被覆用の補助カバーをヒン
ジ等で屈曲可能に構成すると共に補助カバーの背
面を締結部材で支持したから、既設鋼管のように
上方コンクリートがあつても、補助カバーを正面
からアングルの所定位置に挿入することができ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は本実施例の防食構造を示す平面図、第
２図は防食カバーの取り付け部分の拡大平面図、
第３図はシール用底板の取り付け状態を示す斜視
図、第４図は防食構造の縦断面図、第５図は屈曲
式補助カバーの平面図である。 １０……鋼管矢板、１２……鋼管、１４……継
手、１６……防食カバーパネル、１８……ブラケ
ツト、３８……アングル、４４……補助カバー、
４５……ヒンジ。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 隣接する各鋼管の継手近傍にほぼ対向して固着
   されたブラケツト１８と、ブラケツト１８に取り
   付けられて鋼管の海側を覆う防食カバーパネル１
   ６と、ブラケツト１８に締結部材４０，４２，４
   ２ａで取り付けられたアングル３８と、対向した
   アングル３８，３８間に挿入され前記締結部材で
   背面が支持された補助カバー４４と、補助カバー
   ４４を屈曲可能にするヒンジ４５と、から成る鋼
   管矢板の防食構造。