JPH0245911Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この考案は、押鍵時に指に感じる鍵の重さ、す
なわち鍵タツチ感を好みに合わせて自由に変化さ
せ得るようにした鍵盤楽器の鍵タツチ可変装置に
関する。

〔従来の技術〕

ピアノの演奏時において、指先に感じる鍵タツ
チの重さは、一般に鍵の予め定められた箇所に鉛
等の重量物を埋設しておくことにより標準の重さ
に設定されている。

〔考案が解決しようとする問題点〕

しかし、上述した通り鍵タツチの重さは製作時
に所定の重さに設定されるため、その後鍵に一旦
取付けた重りを取り替えたり、新たな重りを付加
したりすることは面倒で、時間を要し、また重り
を取り外した後はその孔に埋木して、打鍵の際に
横方向から孔が見えないようにする必要もあり、
実際には鍵タツチの重さを変えることは極めて困
難であつた。また、演奏者によつてそれぞれ個人
差があるため鍵タツチ感がマツチしない場合には
心理的にも演奏内容にも大きな影響を及ぼすとい
う問題が生じ、そのため鍵タツチ感を自由に可変
し得るピアノが要請されている。

そこで、本出願人はアクシヨン機構のハンマー
アツセンブリにウエイトを取付け、鍵タツチの重
さを変えるようにした鍵タツチ可変装置（特願昭
59−164298号、特開昭61−42692号）を既に提案
したが、このような装置においても、構造上取付
けが面倒であつたり、演奏時に位置ずれしたりあ
るいはまたウエイトの取付け位置を連続的に変え
ることができなかつたりして未だ満足し得ず、改
良の余地があつた。

〔問題点を解決するための手段〕

この考案に係る鍵盤楽器の鍵タツチ可変装置は
上述したような問題を解決すべくなされたもの
で、鍵に連動して作動するアクシヨン機構のハン
マーに、該ハンマーの重心位置を変化させるウエ
イトを着脱可能に取付けてなり、該ウエイトに前
記ハンマーを弾性的に抱持する抱持部と、前記ハ
ンマーに食い込みウエイトの移動を防止する拘止
手段とを設けて構成したものである。

〔作用〕

この考案のおいてはウエイトがハンマーを弾性
的に抱持する抱持部と、移動防止用の爪等の拘止
手段とを備えているので、取付け、取外し操作が
簡単で、また取付け位置を容易に調整でき、しか
も演奏時における位置ズレを確実に防止する。

〔実施例〕

以下、この考案を図面に示す実施例に基づいて
詳細に説明する。

第１図はこの考案に係る鍵タツチ可変装置をグ
ランドピアノのアクシヨン機構に適用した場合の
一実施例を示す側断面図、第２図および第３図は
同装置の斜視図および側面図である。第１図にお
いて、２は鍵、３はこの鍵２に対応して張設され
た弦で、これらの間に従来周知のアクシヨン機構
１が配設されている。

前記アクシヨン機構１は、後端６ａがサポート
レール４にサポートフレンジ５を介して上下方向
に回動自在に枢支され自由端側が前記鍵２の後端
部上面に植設されたキヤプスタン７上に載置され
ているサポート６と、屈曲部がサポート６の前端
６ｂに回動自在に枢支された略Ｌ字形のジヤツク
８と、前記サポート６の上方にレペテイシヨンレ
バーフレンジ９を介して前後上下方向に揺動自在
に配設されたレペテイシヨンレバー１０と、この
レペテイシヨンレバー１０の上方に配設されたハ
ンマー１１と、前記ジヤツク８およびレペテイシ
ヨンレバー１０にそれぞれ図中反時計方向の復帰
習性を付与する１本のレペテイシヨンレバースプ
リング１５等で構成されている。

前記ハンマー１１は、前端がシヤンクレール１
６にシヤンクフレンジ１７を介して上下方向に回
動自在に枢支されたハンマーシヤンク１２と、こ
のハンマーシヤンク１２の後端にハンマーウツド
１３を介して取付けられたハンマーフエルト１４
およびハンマーシヤンク１２の回動支点部側下面
に取付けられ前記レペテイシヨンレバー１０の前
端部上面にて受け止められるハンマーローラ１８
とで構成され、前記ハンマーシヤンク１２にこの
考案の要旨をなす鍵タツチ可変装置としてのウエ
イト２０（後述する）が配設されている。

前記ジヤツク８の上端部８ａは、前記レペテイ
シヨンレバー１０の前端部に形成された長孔２１
に前後方向に移動自在に挿入され、かつその頂端
面が前記ハンマーローラ１８の下面に当接してい
る。したがつて、鍵２の押鍵操作に伴いサポート
６がキヤプスタン７によつて突き上げられて反時
計方向に回動すると、これに伴つてジヤツク８も
サポート６と共に上昇してハンマーローラ１８を
突き上げるため、ハンマー１１は上方に回動飛翔
され、もつてハンマーフエルト１４が弦３を打撃
するように構成されている。そして、打弦動作後
弦３の反撥力と自重によつて回動復帰するハンマ
ー１１は、レペテイシヨンレバー１０によつて受
け止められ初期位置へと復帰する。この時、レペ
テイシヨンレバー１０は、ハンマー１１の落下衝
撃により回動中心Ａを中心としてレペテイシヨン
レバースプリング１５に抗して時計方向に回動さ
れることにより前記落下衝撃を吸収緩和すると共
にハンマーローラ１８のはね返りを防止し、同一
鍵２による速い連打を可能にしている。

また、前記ジヤツク８は上昇途中においてジヤ
ツク小８Ａがレギユレチングボタン２３に当接し
て上昇を阻止されることにより、前記レペテイシ
ヨンレバースプリング１５に抗して時計方向に小
角度回動されて前記ハンマーローラ１８の下部よ
り一時的に脱進し、打弦動作後サポート６の回動
下降に伴つて回動復帰し、ハンマーローラ１８の
下部に入り込むように構成されている。

なお、２６はレペテイシヨンレバー１０の反時
計方向の回動を規制するレペテイシヨンボタン、
２７，２８はジヤツク８を初期位置に係止するジ
ヤツクボタンおよびジヤツクストツプである。

さて、前記ウエイト２０は第２図および第３図
に適切に示すように板ばね材を略コ字状もしくは
Ｕ字状に折曲して形成されることにより、互いに
対向する一対の抱持部２０ａ，２０ｂと、これら
一対の抱持部２０ａ，２０ｂの一端を互いに連結
する連結部２０ｃとを一体に備え、これら抱持部
２０ａ，２０ｂおよび連結部２０ｃによつてハン
マーシヤンク１２の適宜箇所を弾性的に抱持する
如く該シヤンク１２に下方もしくは側方から嵌着
されるように構成されている。この場合、一対の
抱持部２０ａ，２０ｂはその自由端側の間隔が前
記ハンマーシヤンク１２の径より十分小さく設定
されることにより、内側方向の弾性力を有してハ
ンマーシヤンク１２を挾持保持する。また、各抱
持部２０ａ，２０ｂの自由端は取付け時において
ハンマーシヤンク１２への引掛りを防止するため
外側方向に略半円形に湾曲している。前記連結部
２０ｃの両側面中央部には、該連結部２０ｃの下
面側にそれぞれ折曲され先端部が略Ｖ字形に尖つ
た拘止手段としての一対の移動防止用爪３１，３
２が一体に設けられており、これらの移動防止用
爪３１，３２を前記ハンマーシヤンク１２の周面
にそれぞれ差し込むことにより、ウエイト２０が
ハンマーシヤンク１２の軸方向および周方向に移
動するのを防止している。

この場合、ウエイト２０の移動防止用爪３１，
３２は連結部２０ｃの両側面に設けられるものに
限らず、例えば第４図に示すように連結部２０ｃ
の中央に開口３３を打抜き形成すると同時にその
両側縁に移動防止用爪３１，３２を切り起こし形
成したり、あるいはまた第５図に示すように連結
部２０ｃの移動防止用爪３１，３２に加えて各抱
持部２０ａ，２０ｂに移動防止用爪３８，３９を
設けてもよい。ここで、移動防止用爪としては、
その表裏面がハンマーシヤンク１２の木理方向
（第２図矢印Ａ−Ｂ方向）と直交するように形成
されたもの（第３図および第４図参照）に比べ
て、木理方向と平行に形成されたもの（第５図参
照）の方がハンマーシヤンク１２に対する刺し込
み性に優れ、また該シヤンク１２の折損事故をよ
り少なくする利点を有する。

かくして、このような構成からなるウエイト２
０をハンマーシヤンク１２に取付けて該シヤンク
１２の重量を増大させると、打弦動作時にジヤツ
ク８がハンマーローラ１８を突き上げるために大
きな突上力を必要とするため、鍵タツチ感が重く
なる。しかも、ウエイト２０はハンマーシヤンク
１２に対して着脱可能でその取付け位置を該シヤ
ンク１２の長手方向に変えたり、あるいはまたウ
エイト自体の材質、大きさ、板厚等を変えること
により鍵タツチ感を自在に変えることができるた
め、鍵２自体に鉛等の重りを埋め込む従来方式に
比べて鍵タツチ感の変更が極めて容易であり、し
かもウエイト２０を取り外せば予め定められた標
準の鍵タツチ感に戻すことができる。また、ウエ
イト２０によるハンマーシヤンク１２の重量増加
は、少しの増加であつても鍵２側における重量増
加に比べてハンマー１１の回転モーメントを効果
的に増加させることができるので、小さくて軽い
ウエイトでも十分にその機能を発揮する。さらに
ウエイト２０は移動防止用爪３１，３２からなる
拘止手段によつて移動を防止されているので、演
奏時にズレたりすることがない。

加えて、本実施例はグランドピアノに適用した
場合を示すため、ウエイト２０を取付ける場合は
アクシヨン機構１を鍵２と共にピアノ本体から引
き出す必要があるが、アツプライトピアノの場合
は屋根板もしくは上前板を開くとアクシヨン機構
が弦に邪魔されることなく視認されるため、アク
シヨン機構を引き出すことなく簡単に取付けるこ
とができる利点を有する。

第６図はこの考案の他の実施例を示すウエイト
の斜視図である。この実施例では拘止手段として
の移動防止用爪に代えて目的主体との当接部に移
動防止用孔４２，４３を設けたもので、孔の縁が
目的主体に食い込むことによつてウエイトの移動
が防止される。また、第７図に示すように移動防
止用波状部４４，４５，４６を設けて食い込ま
せ、拘止手段としてもよい。この場合、移動防止
用波状部４４，４５，４６は平目ローレツトやプ
レス等で加工でき、また、連結部２０ｃ側と抱持
部２０ａ，２０ｂ側とで波状部の向きを直交させ
てある。

第８図はこの考案の他の実施例を示すウエイト
の斜視図である。本実施例は一対の抱持部２０
ａ，２０ｂをハンマーシヤンク（図示せず）の断
面形状に合わせて湾曲させると共に各抱持部２０
ａ，２０ｂの先端部を内側に折曲し、その先端面
に移動防止用爪４０，４１を全幅に亘つて連続的
に設けたものである。

このような構成からなるウエイト２０において
も上記実施例と同様の効果が得られることは明ら
かであろう。

なお、上記実施例はいずれもハンマーシヤンク
１２にウエイト２０を取付けた場合について説明
したが、この考案はこれに限らずハンマーウツド
１３に取付けてもよいことは勿論である。

また、上記実施例はグランドピアノのアクシヨ
ン機構に適用したが、アツプライトピアノ、電気
ピアノ等のアクシヨン機構にもそのまま実施し得
るものである。

〔考案の効果〕

以上説明したようにこの考案に係る鍵盤楽器の
鍵タツチ可変装置は、ウエイトをハンマーに、該
ハンマーを弾性的に抱持する如く着脱可能に取付
け、このウエイトに設けた移動防止用爪等からな
る拘止手段を前記ハンマーに食い込ませて構成し
たので、指先に感じる鍵の重さ、すなわち鍵タツ
チ感を演奏者の好みに応じて自由に変えることが
できる。また、ウエイト着脱自在で、拘止手段の
食い込み位置を変えて取付けることにより、鍵タ
ツチ感の微妙な調整が可能で、全鍵に亘つて鍵タ
ツチ感を等しく設定したり、特定の鍵のタツチ感
のみを重くすることができ、しかも一定期間重く
した後はウエイトを取り外して元の標準の鍵タツ
チ感に戻すことが可能である。また、拘止手段に
よりウエイトが演奏中に移動したりすることもな
い。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの考案をグランドピアノのアクシヨ
ン機構に適用した場合の一実施例を示す側断面
図、第２図はウエイトの斜視図、第３図は同ウエ
イトの側面図、第４図〜第８図はそれぞれウエイ
トの他の実施例を示す斜視図である。 １……アクシヨン機構、２……鍵、３……弦、
１１……ハンマー、１２……ハンマーシヤンク、
２０……ウエイト、２０ａ，２０ｂ……抱持部、
２０ｃ……連結部、３１，３２……移動防止用爪
（拘止手段）。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 (1) 鍵に連動して作動するアクシヨン機構のハン
   マーに、該ハンマーの重心位置を変化させるウ
   エイトを着脱可能に取り付けてなり、このウエ
   イトは前記ハンマーを弾性的に抱持する抱持部
   と、前記ハンマーに食い込み該ウエイトの移動
   を防止する抱止手段とを備えたことを特徴とす
   る鍵盤楽器の鍵タツチ可変装置。 (2) ウエイトが板ばね材によつて略Ｕ字形に形成
   されていることを特徴とする実用新案登録請求
   の範囲第１項記載の鍵盤楽器の鍵タツチ可変装
   置。