JPH0217695B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は自動車等のエンジンの補機を運転す
る駆動装置に関するものである。

〔従来の技術〕

自動車等のエンジンにおいては、充電発電機、
水ポンプ、空調用コンプレツサー、油圧サーボス
テアリング用オイルポンプ等の補機がクランクシ
ヤフトの先端に設けられたクランクプーリにより
ベルト駆動される。この補機駆動はエンジンの高
速運転時に大きな動力損失を伴うので、それを回
避する手段としてエンジン回転速度に対しクラン
クプーリを変速して補機の運転速度を制限する方
法が従来から提案されている。

例えば、特開昭58−200838号公報に示された技
術はエンジンのクランクシヤフトとクランクプー
リ間に遊星ギア減速機と一方向クラツチとより成
る減速駆動系と、油圧ピストンで構成された直結
クラツチより成る直結駆動系を構成し、エンジン
回転速度に対しクランクプーリの回転速度を二段
階に選択的に切替えるようにしたものである。し
かしながら、この従来技術では速度切替え時に急
激な速度変化を伴なうので、補機の駆動力の変動
がエンジンの自動車駆動力に変動シヨツクを与
え、自動車の走行安定性を欠き、ドライバーに不
快感をもたらすばかりでなく、遊星ギア減速機の
耐久性、ひいては騒音の問題が発生しやすく実用
的でない。

一方、例えば実開昭58−86434号公報に提案さ
れた技術は有効ピツチ径を変えるピツチプーリを
利用したもので、可変ピツチの駆動プーリをクラ
ンクシヤフトに配し、これに従動し、補機駆動用
プーリを一体的に連結した一方の可変ピツチ従動
プーリを構成して、油圧シリンダによつて従動プ
ーリの可動シーブを制御し補機駆動速度を制御し
ようとするものである。

〔発明が解決しようとする問題点〕

この従来技術例では従動プーリの可動シーブを
制御する高い油圧源が必要であり、油圧アクチエ
ータの構造もかなり複雑となるばかりでなく、エ
ンジンのクランク軸方向に突出するかなりな取付
スペースが必要なことで、現在広く実用されるエ
ンジン横置の前輪駆動車のように設置スペースに
余裕のないものには適さない。

この発明は上記のような従来技術の問題点を解
消するためになされたもので、変速時のシヨツク
や騒音が少なく、取付スペースも通常のクランク
プーリに対して置き換え可能な大きさであり、し
かもエンジンの回転速度に対し補機駆動プーリの
回転速度を、任意に無段階に変えることが可能
で、各補機の運転条件に応答した細かい速度制御
が行なえる補機駆動装置を提供することを目的と
している。

〔問題点を解決するための手段〕

この発明に係るエンジンの補機駆動装置はクラ
ンクシヤフトとクランクプーリ間に摩擦伝動方式
の差動遊星機構無段変速機を構成し、該無段変速
機の変速制御アクチエータとして該無段変速機に
封入される摩擦伝動油を利用したプランジヤ形オ
イルポンプと該オイルポンプの供給油圧で駆動さ
れる油圧シリンダ、および該油圧シリンダに作用
する油圧の大きさを補機の運転条件に応じた電気
入力で制御するソレノイドバルブを一体的に構成
するようにしたものである。

〔作用〕

この発明の構成によれば、通常のクランクプー
リの内周空間に変速機及び変速アクチエータをコ
ンパクトに一体的に構成でき、摩擦伝動方式のた
め騒音の低い運転ができる。しかも自己駆動オイ
ルポンプの油圧力で作動する変速アクチエータが
補機の最適運転条件に基づく電気信号でクランク
プーリの速度を自動的に制御する。

〔発明の実施例〕 以下この発明の実施例を図について説明する。
第１図において、１はエンジンのクランク軸に直
結される入力軸、２は入力軸上の入力伝動メン
パ、３は入力軸１と入力伝動メンバ２との間に介
在された圧接力発生用のカム装置、４は複数個設
けられた円錐形の遊星コーンで、円錐母線上の摩
擦伝動面４ａ、円錐底面上の摩擦伝動面４ｂ、円
錐軸線周上の摩擦伝動面４ｃを有している。５は
遊星コーン４の摩擦伝動面４ａに摩擦係合すると
同時に軸方向に移動することで遊星コーン４の摩
擦伝動半径が変えられるリング状の変速リング、
６は遊星コーン４の摩擦伝動面４ｃに摩擦係合さ
れ、非回転で遊星コーン４の入力軸１の軸線上公
転を案内する軌道リングである。遊星コーン４の
摩擦伝動面４ｂは入力伝動メンバ２の外縁に摩擦
係合しておりカム装置３が入力伝動メンバ２を軸
方向に押し付けるカム力は遊星コーン４の摩擦伝
動面４ａ，４ｂ，４ｃの法線方向圧接力として働
き、それぞれ変速リング５、入力伝動メンバ２、
軌道リング６が受ける反力はベクトルとしてバラ
ンスをとるように設定されている。７は補機駆動
用のプーリ、７ａはプーリ７の内周面軸方向に複
数個設けたキー溝、８は変速リング５の回転力を
プーリ７に伝達すると同時に軸方向の移動を支え
るローラキーで、キー溝７ａに係合している。

変速リング５を軸方向に任意に移動させる変速
制御アクチエータの構成は、９，１０はプーリ７
の両端部に固着され該プーリ７を回転支承する側
板、１１は側板９に一体的に取り付けられ、径方
向に設けたプランジヤ軸が軌道リング６のカム部
６ａに当接摺動するプランジヤ形のオイルポン
プ、１２はピストン１２ａが変速リング５に軸方
向で当接した油圧シリンダ、１３は変速リング５
をピストン１２ａの反出力方向へ押圧するスプリ
ング、１２ｂはオイルポンプ１１の吐出油圧を油
圧シリンダ１２に導く流路、１４は流路１２ｂと
連通する逃がし流路、１５は流路１２ｂと逃がし
流路１４との間を開・閉路するソレノイドバルブ
で、バルブ１５ａ、リターンスプリング１５ｂ、
可動コア１５ｃ、電磁コア１５ｄ、電磁コイル１
５ｅで構成されている。１６は固定板で取付部１
６ａがエンジンの静止部材に固定、支持されてお
り、軌道リング６を固定係合し、電磁コイル１５
ｅを固定支持している。

以上のように構成された装置のプーリ７、側板
９，１０、入力軸１で閉塞される空間には摩擦伝
動の媒体として摩擦伝動油１７が封入され、オイ
ルポンプ１１にもこの油が常時供される状態にあ
る。

次にソレノイドバルブ１５の電気制御回路の一
例を示す。第２図において、２１は補機駆動用の
プーリ７の回転速度を検出するクランクプーリ回
転速度検出回路、２２は充電発電機の負荷電流検
出回路、２３は空調用のコンプレツサー負荷検出
回路、２４はエンジン冷却水を強制循環させる水
ポンプの必要運転条件を検出するためのエンジン
冷却水温検出回路、２５はエンジンの急加速時に
補機運転を一時的に最小動力に制限する制御のた
めのエンジン急加速状態検出回路、２６はこれら
検出回路２２，２３，２４，２５から最適な補機
の運転回転速度を決定する運転速度演算回路、２
７は運転速度演算回路２６信号とクランクプーリ
回転速度検出回路２１信号を比較する比較回路、
２８は比較回路２７の信号によつてソレノイドバ
ルブ１５の電磁コイル１５ｅをON−OFF制御す
るソレノイドバルブ制御回路である。第５図ａ〜
ｄはカム装置３の詳細図で、図において、２ａは
入力伝動メンバ２の内周側に円周上均等に３ケ所
設けられたカム面で、円周方向に傾斜したテーパ
部を各々有している。３０は入力軸１に固着され
たカムメンバで、上記入力メンバ２のカム面２ａ
に各々対向して、３ケ所のカム面３０ａを有して
おり、該カム面３０ａのテーパ部は上記カム面２
ａのテーパ部の反対方向へ延びるように形成され
ている。３１は上記カム面２ａと３０ａとの間に
各々装着された３個のボールで、入力軸１が回転
していない状態では、第５図ｃの如く位置に装着
されているが、入力軸１が回転すると、入力軸１
の回転力がカムメンバ３０からボール３１を介し
て入力伝動メンバ２に伝達され、第５図ｄの如く
ボール３１が各カム面のテーパ部に接することと
なり、このため、ボール３１を介して入力伝動メ
ンバ２には回転力に比例した軸方向分力が発生
し、入力伝動メンバ２を反カムメンバ３０側へ押
圧し、この押圧力が摩擦伝動面４ｂ，４ａ，４ｃ
に必要な圧接力を与えることとなる。

以上のように構成された本発明実施例の動作に
ついて説明する。

入力軸１の駆動力はカム装置３を介して入力伝
動メンバ２に伝えられ遊星コーン４は円錐形の軸
を中心として自転すると同時に固定要素の軌道リ
ング６との摩擦伝動面に沿つて入力軸１の軸心を
中心として公転する。遊星コーン４の円錐母線上
の摩擦伝動面４ａに摩擦係合する変速リング５は
遊星コーン４の自転、公転の差動作用と伝動半径
比に基づいて入力軸１の軸心を中心とする駆動力
を受け、ローラキー８を介してプーリ７を駆動す
る。この時、入力軸１と変速リング５の回転速度
比は変速リング５と遊星コーン４の摩擦伝動有効
半径比が変わる変速リング５を軸方向に移動させ
ることで任意に設定できる。第３図は伝動系上の
各要素の有効半径ａ〜ｆを示す図で、入力軸１の
回転速度をN1、変速リング５を回転速度をN2と
すれば、 N2／N1＝ｄ（ec＋fa）／ｃ（ed＋fb） となり、ａ寸法を変えればN2／N1、すなわち入
力軸１に対するプーリ７の回転速度を任意に変速
できる。

有効半径ａ〜ｆは次の通りである。

ａ：変速リング５に対する遊星コーン４の摩擦伝
動面４ａの有効半径。

ｂ：入力伝動メンバ２に対する遊星コーン４の摩
擦伝動面４ｂの有効半径。

ｃ：変速リング５の内半径。

ｄ：入力伝動メンバ２の有効半径。

ｅ：軌道リング６に対する遊星コーン４の摩擦伝
動面４ｃの有効半径。

ｆ：軌道リング６の有効半径。

変速リング５の軸方向位置はソレノイドバルブ
１５で次のとおり任意に制御できる。すなわち、
プランジヤ形のオイルポンプ１１は側板９の回転
により、固定要素の軌道リング６のカム部６ａに
当接摺動するプランジヤ軸によつて摩擦伝動油１
７を流路１２ｂを通してシリンダ１２へ運転中常
時ポンプ作用をする。シリンダ１２のピストン１
２ａはリターンスプリング１３の作用力と平衡を
保ちつつ変速リング５の軸方向位置を決めるが、
この加減はシリンダ１２の油圧によつて決まる。
ソレノイドバルブ１５は流路１２ｂと逃がし流路
１４を常態時は閉栓、電磁コイル１５ｅがONす
ると開栓する作用をし、シリンダ１２の油圧を電
磁コイル１５ｅへの電気入力のON−OFFで制御
でき、従つて変速リング５の位置を連続時に任意
に制御できる。

次にソレノイドバルブ１５における電気制御に
よるプーリ７の回転速度制御の実施例を第２図お
よび第４図で説明する。

各補機の省動力運転に最適な回転速度は補機各
各によつて異なるし、各補機の運転負荷条件によ
つて異なるので各補機の負荷条件検出回路２２〜
２４、及びエンジン急加速時状態検出回路２５の
信号からエンジンの運転瞬時における最適な補機
駆動プーリの回転速度を運転速度演算回路２６で
決定して出力し、比較回路２７でクランクプーリ
回転速度検出回路２１の信号と比較し、ソレノイ
ドバルブ制御回路２８でソレノイドバルブ１５を
ON−OFF駆動して自動的に所定の補機駆動プー
リの回転速度を得ることができる。

この回転速度制御特性の一例を示す第４図にお
いて、横軸にエンジン回転速度、縦軸に本発明補
機駆動装置におけるクランクプーリ回転速度とす
る関係は、図のOA線、OB線およびOC線はエン
ジン回転速度が低速でクランクプーリとエンジン
回転速度が同速領域、AA′線、BB′線および
CC′線はエンジン回転速度が上昇してもクランク
プーリが各々Ａ，Ｂ，Ｃ点速度でほゞ等速に制御
される領域である。図の変速点Ａ〜Ｃの選択は第
２図運転速度演算回路２６の出力信号によつて自
動的に制御される。

なお、上記実施例では、自動車等のエンジンを
原動機入力とし補機駆動の変速制御例を示した
が、プーリ７はスプロケツト、歯車等、他の伝動
出力部材で構成してもよく、また、入力側原動機
が電動機等における無段変速装置として、出力部
材を電気入力で自動的に変速制御する用途にも応
用できるものである。

〔発明の効果〕

以上のようにこの発明によれば、通常のクラン
クプーリの内周空間に摩擦伝動式の差動遊星機構
無段変速機及び該変速機の摩擦伝動油を利用した
自己駆動のオイルポンプ、シリンダ、ソレノイド
バルブから成る変速アクチエータをコンパクトに
一体的に構成し、該ソレノイドバルブを各補機の
運転条件に応じた電気入力信号で自動的に制御で
きる電気回路を構成したので、取付スペースが通
常のクランクプーリに対し置き替え可能な大きさ
で、運転騒音も伴なわず、しかも補機駆動プーリ
の回転速度を任意に無段階に変えることが可能で
各補機の運転条件に応答した細かい速度制御によ
る補機の省動力運転によつてエンジンの燃費や動
力性能の向上に大きく寄与するものである。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの発明の一実施例によるエンジンの
補機駆動装置を示す断面側面図、第２図は同じく
電気制御回路のブロツク図、第３図は第１図に示
すものの出力部材の回転速度と各要素の有効半径
との関係の説明用図面、第４図は本発明によるも
ののエンジン回転速度とクランクプーリの回転速
度の関係を示す説明図、第５図ａ〜ｄは本発明に
よるカム装置３の構成を示す詳細図である。 １……入力軸、２……入力伝動メンバ、４……
遊星コーン、５……変速リング、６……軌道リン
グ、７……プーリ、９，１０……側板、１１……
オイルポンプ、１２……シリンダ、１５……ソレ
ノイドバルブ、１５ｅ……電磁コイル、１６……
固定板、１７……摩擦伝動油、２８……ソレノイ
ドバルブ制御回路。なお、図中、同一符号は同一
部分を示す。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 入力軸から補機駆動用のプーリに至る伝動系
   に遊星運動を行う複数個の円錐形の遊星コーン
   と、この遊星コーンに摩擦伝動で係合され上記入
   力軸から自転回転力を与える入力伝動メンバと、
   上記遊星コーンに摩擦伝動で係合され上記遊星コ
   ーンの公転を案内し、カム部を有する固定要素の
   軌動リングと、上記遊星コーンの円錐母線上の摩
   擦伝動面に摩擦伝動で係合され上記入力軸軸線方
   向に移動可能な回転要素の変速リングを有し、こ
   の変速リングの回転力が上記プーリに伝達され上
   記プーリの内周空間内に装着された摩擦伝動形式
   の変速機、上記プーリと固着された回転要素の側
   板に装着され上記カム部と係合して上記変速機の
   摩擦伝動油を供給するオイルポンプ、上記側板に
   おける上記変速リング近傍に設けられ、上記オイ
   ルポンプの供給油圧で駆動され上記変速リングを
   軸方向に押圧する油圧シリンダ、上記オイルポン
   プと上記油圧シリンダとの油圧供給路に設けら
   れ、上記油圧シリンダに作用する油圧の大きさを
   制御するソレノイドバルブ、及び上記ソレノイド
   バルブをエンジンの補機の運転条件に応じて制御
   する電気回路を備えたエンジンの補機駆動装置。