JPH0150269B2 - - Google Patents
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- JPH0150269B2 JPH0150269B2 JP56183691A JP18369181A JPH0150269B2 JP H0150269 B2 JPH0150269 B2 JP H0150269B2 JP 56183691 A JP56183691 A JP 56183691A JP 18369181 A JP18369181 A JP 18369181A JP H0150269 B2 JPH0150269 B2 JP H0150269B2
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Landscapes
- Working-Up Tar And Pitch (AREA)
- Inorganic Fibers (AREA)
Description
本発明は優れた性能を有する炭素繊維の製造方
法に関する。 現在、炭素繊維は主にポリアクリロニトリルを
原料として製造されている。しかしながらポリア
クリロニトリルを原料とした場合、原料が高価で
あり、また加熱炭化時において繊維状の原形がく
ずれ易く、さらに炭化収率も悪いという欠点があ
る。 近年、この点に着目して安価なコールタールを
原料として炭素繊維を製造する方法が数多く報告
されている。しかしながら、コールタールを原料
として得られる炭素繊維は、ポリアクリロニトリ
ル系炭素繊維に比べ、強度が劣るという問題があ
る。従つて、もしこの問題点を解決し、また弾性
率をさらに向上し得ることができれば、安価に高
強度かつ高弾性率の炭素繊維を製造することが可
能となる。 しかしながらコールタールはカーボンブラツク
状のキノリンに不溶で不融性の物質を含有してお
り、これらは溶融紡糸時において不均一性の原因
となり紡糸性を悪くさせるばかりか、炭素繊維の
強度および弾性率に悪影響を及ぼす。また、予め
キノリンに不溶で不融性の物質を除去して用いた
としても加熱処理して前駆体ピツチ(以後、溶融
紡糸に用いるピツチを前駆体ピツチと呼ぶ)を調
製する段階で、キノリンに不溶な高分子量成分が
生成する。すなわち、熱処理の際に熱分解と重縮
合反応が併発し、低分子量成分は徐々に高分子量
化し、キノリンに不溶の高分子量成分となり、ま
た同時に高分子量成分はさらに高分子量化する。
これに伴つてピツチの軟化点も上昇する。このキ
ノリン不溶分の存在と高い軟化点は溶融紡糸の段
階で悪影響を及ぼす。すなわち、前駆体ピツチを
溶融紡糸するためには、前駆体ピツチが紡糸可能
な粘度になるまで紡糸温度を上げることが必要で
あつて、前駆体ピツチの軟化点が余りにも高過ぎ
れば、紡糸温度も当然高くせざるを得ず、その結
果、キノリン不溶分は一層高分子量化すると共
に、ピツチの熱分解が起こり軽質ガスが発生し、
均一な前駆体ピツチとはなり得ず、紡糸すること
が事実上不可能となる。 このように前駆体ピツチは、比較的低い軟化点
と紡糸するために適当な粘度を持つていなければ
ならない。また、紡糸時さらには炭化時に揮発性
成分を実質的に含有するものであつてはならな
い。 このため、生成したキノリン不溶分を加圧過
や溶剤分別等の手段により除去するとにより炭素
繊維製造用前駆体ピツチを調製することが行われ
ている(特開昭47−9804号、同50−142820号、同
55−1342号、同55−5954号)。しかしながら、こ
れらの手段を用いた場合には処理装置の複雑化お
よび処理費用の増大を招き、経済的観点から好ま
しいものではない。 もし、原料ピツチとして優れた性能を有するピ
ツチを用いることにより、メソ相化の加熱段階で
キノリン不溶分となる高分子量成分の生成を抑制
することができれば最も好ましいものである。 本発明者らは、これらの課題について鋭意研究
した結果、本発明を完成したものである。すなわ
ち、本発明者らは、前駆体ピツチを調製する段階
で高分子量成分の生成を抑制し、最適な粘度を有
し、また炭化初期の段階では芳香族平面が秩序だ
つて配列をし易い組成を持つことができる性能の
優れた原料ピツチを見出したものである。換言す
れば、本発明は軟化点が比較的低く保持され、か
つメソ相を容易に形成するような原料ピツチから
の炭素繊維の製造方法を提供するものである。 すなわち、本発明はコールタールを20Kg/cm2・
G以上の水素加圧下で、温度400〜500℃で熱処理
することにより得られる原料ピツチを温度340〜
450℃で加熱処理し、得られる前駆体ピツチを溶
融紡糸した後、不融化処理および炭化あるいはさ
らに黒鉛化処理して炭素繊維を製造する方法に関
し、本発明により高弾性率で、かつ高強度の炭素
繊維が得られる。 本発明者らは、詳細に検討を行つた結果、高弾
性率かつ高強度の炭素繊維の原料としての最適な
ピツチはコールタールをきわめて限られた熱処理
条件下に水素化触媒を用いることなく行わねばな
らないことを見出したものである。すなわち、コ
ールタールを20Kg/cm2・G以上の水素加圧下で温
度400〜500℃で熱処理して得られる本発明に係る
原料ピツチを用いてメソ相化反応を行わせしめた
場合、キノリン不溶分の生成が抑制されるばかり
か、ピツチが改質され、最終製品である炭素繊維
が一層高弾性率で、かつ高強度となり得たもので
あり、ことは全く予期され得ないものであつた。 以下本発明を詳述する。 本発明は原料ピツチを熱処理して、メソ相
(mosophase)と呼ばれる光学的異方性の液晶を
含有するピツチを得、このメソ相を含有するピツ
チを前駆体ピツチとして用い、この前駆体ピツチ
を溶融紡糸した後、不融化し、次いで炭化あるい
は更に黒鉛化することにより、弾性率および強度
が向上した炭素繊維を製造するものである。 本発明で使用する原料ピツチは、コールタール
を20Kg/cm2・G以上、例えば20〜350Kg/cm2・G、
好ましくは50〜300Kg/cm2・Gの水素加圧下で、
温度400〜500℃、好ましくは405〜450℃で熱処理
することにより得られる。 熱処理温度が400℃よりも低いと、得られるピ
ツチはメソ相化を行つた際、キノリン不溶分が多
量に生成するため溶融紡糸過程でのコーキング、
相分離、軟化点上昇等のトラブルが生じ易く、さ
らに得られる炭素繊維の性能も劣り好ましくな
い。また熱処理温度が500℃よりも高いと、原料
ピツチ製造の段階でコーキング等の問題が生じ、
実質上、原料ピツチ製造が困難となる。 熱処理を行つた後、必要であれば蒸留等の操作
により軽質分を除去することも好ましく採用され
る。 本発明で用いるコールタールとしては、低温タ
ールおよび高温タールのいずれも使用可能である
が、キノリン不溶分を除去したものが好ましい。
特に本発明においてはキノリン不溶分を除去した
高温タールが好ましく用いられる。 かくして得られる本発明に係る原料ピツチを用
いることにより、加熱処理してメソ相化を行つた
際、キノリン不溶分である高分子量成分の生成が
抑制されると同時にピツチの軟化点の上昇を防ぐ
ことができ、さらに芳香族平面が秩序だつて配列
し易い組成を持つた良好な前駆体ピツチとなる。
この結果、弾性率および強度がきわめて優れた炭
素繊維を得ることができる。 本発明に係る原料ピツチを用いて炭素繊維を製
造する方法は公知の方法を採用することができ
る。すなわち、原料ピツチを加熱処理してメソ相
化を行い、得られる前駆体ピツチを溶融紡糸した
後、不融化処理および炭化あるいはさらに黒鉛化
処理を行つて炭素繊維を製造する。 原料ピツチを加熱処理し、メソ相化を行つて前
駆体ピツチを得る段階での反応は、通常、温度
340〜450℃、好ましくは370〜420℃で、常圧ある
いは減圧下に窒素等の不活性ガスを通気すること
によつて行われる。この時の加熱処理時間は、温
度、不活性ガスの通気量等の条件により任意に行
い得るものであるが、通常、1〜50時間、好まし
くは3〜20時間で行う。不活性ガスの通気量は
0.7〜5.0scfh/1bピツチが好ましい。 前駆体ピツチを溶融紡糸する方法としては、押
出法、遠心法、霧吹法等の公知の方法を用いるこ
とができる。 溶融紡糸されて得られるピツチ繊維は、次に酸
化性ガス雰囲気下で不融化処理が施される。酸化
性ガスとしては、通常、酸素、オゾン、空気、窒
素酸化物、ハロゲン、亜硫酸ガス等の酸化性ガス
を1種あるいは2種以上用いる。この不融化処理
は、被処理体である溶融紡糸されたピツチ繊維が
軟化変形しない温度条件下で実施される。例えば
20〜360℃、好ましくは20〜300℃の温度が採用さ
れる。また処理時間は通常、5分〜10時間であ
る。 不融化処理されたピツチ繊維は、次に不活性ガ
ス雰囲気下で炭化あるいは更に黒鉛化を行い、炭
素繊維を得る。炭化は通常、温度800〜2500℃で
行う。一般には炭化に要する処理時間は0.5分〜
10時間である。さらに黒鉛化を行う場合には、温
度2500〜3500℃で、通常1秒〜1時間行う。 また、不融化、炭化あるいは黒鉛化処理の際、
必要であれば収縮や変形等を防止する目的で、被
処理体に若干の荷重あるいは張力をかけておくこ
ともできる。 以下に実施例および比較例をあげて本発明を具
体的に説明するが、本発明はこれらに制限される
ものではない。 実施例 1 高温タール(性状を第1表に示す)からキノリ
ン不溶分を除去したもの(以下タールQS分と略)
150mlを内容積300mlの撹拌機付きオートクレーブ
中で水素初圧100Kg/cm2・Gで、昇温速度3℃/
分にて440℃まで加熱し、440℃で3時間保持し
た。しかる後、加熱を停止し、室温まで冷却し
た。得られた液状生成物を250℃/1mmHgで蒸留
して軽質分を留出させ原料ピツチを得た。このピ
ツチの軟化点は70℃、キノリン不溶分は3%であ
り、収率は40wt%であつた。 次に、この原料ピツチ30gに対し、窒素を600
ml/分で通気しながら撹拌し、温度400℃で10時
間熱処理を行い、軟化点290℃、キノリン不溶分
46wt%、メソ相含量70%のピツチを、50%の収
率で得た。このピツチをノズル径0.3mmφ、L/
D=2の紡糸器を用い345℃で溶融紡糸し、13μ
のピツチ繊維をつくり、さらに下記に示す条件に
て不融化、炭化および黒鉛化処理して炭素繊維を
得た。 Γ不融化条件:空気雰囲気中で、200℃までは3
℃/分、300℃までは1℃/分の昇温速度で加
熱し、300℃で30分間保持。 Γ炭化条件:窒素雰囲気中で、5℃/分で昇温し
1000℃で30分間保持。 Γ黒鉛化条件:アルゴン気流中で、25℃/分の昇
温速度で、2500℃まで加熱処理。 得られた炭素繊維の径は11μであり、引張強度
は250Kg/mm2、ヤング率は40ton/mm2であつた。
法に関する。 現在、炭素繊維は主にポリアクリロニトリルを
原料として製造されている。しかしながらポリア
クリロニトリルを原料とした場合、原料が高価で
あり、また加熱炭化時において繊維状の原形がく
ずれ易く、さらに炭化収率も悪いという欠点があ
る。 近年、この点に着目して安価なコールタールを
原料として炭素繊維を製造する方法が数多く報告
されている。しかしながら、コールタールを原料
として得られる炭素繊維は、ポリアクリロニトリ
ル系炭素繊維に比べ、強度が劣るという問題があ
る。従つて、もしこの問題点を解決し、また弾性
率をさらに向上し得ることができれば、安価に高
強度かつ高弾性率の炭素繊維を製造することが可
能となる。 しかしながらコールタールはカーボンブラツク
状のキノリンに不溶で不融性の物質を含有してお
り、これらは溶融紡糸時において不均一性の原因
となり紡糸性を悪くさせるばかりか、炭素繊維の
強度および弾性率に悪影響を及ぼす。また、予め
キノリンに不溶で不融性の物質を除去して用いた
としても加熱処理して前駆体ピツチ(以後、溶融
紡糸に用いるピツチを前駆体ピツチと呼ぶ)を調
製する段階で、キノリンに不溶な高分子量成分が
生成する。すなわち、熱処理の際に熱分解と重縮
合反応が併発し、低分子量成分は徐々に高分子量
化し、キノリンに不溶の高分子量成分となり、ま
た同時に高分子量成分はさらに高分子量化する。
これに伴つてピツチの軟化点も上昇する。このキ
ノリン不溶分の存在と高い軟化点は溶融紡糸の段
階で悪影響を及ぼす。すなわち、前駆体ピツチを
溶融紡糸するためには、前駆体ピツチが紡糸可能
な粘度になるまで紡糸温度を上げることが必要で
あつて、前駆体ピツチの軟化点が余りにも高過ぎ
れば、紡糸温度も当然高くせざるを得ず、その結
果、キノリン不溶分は一層高分子量化すると共
に、ピツチの熱分解が起こり軽質ガスが発生し、
均一な前駆体ピツチとはなり得ず、紡糸すること
が事実上不可能となる。 このように前駆体ピツチは、比較的低い軟化点
と紡糸するために適当な粘度を持つていなければ
ならない。また、紡糸時さらには炭化時に揮発性
成分を実質的に含有するものであつてはならな
い。 このため、生成したキノリン不溶分を加圧過
や溶剤分別等の手段により除去するとにより炭素
繊維製造用前駆体ピツチを調製することが行われ
ている(特開昭47−9804号、同50−142820号、同
55−1342号、同55−5954号)。しかしながら、こ
れらの手段を用いた場合には処理装置の複雑化お
よび処理費用の増大を招き、経済的観点から好ま
しいものではない。 もし、原料ピツチとして優れた性能を有するピ
ツチを用いることにより、メソ相化の加熱段階で
キノリン不溶分となる高分子量成分の生成を抑制
することができれば最も好ましいものである。 本発明者らは、これらの課題について鋭意研究
した結果、本発明を完成したものである。すなわ
ち、本発明者らは、前駆体ピツチを調製する段階
で高分子量成分の生成を抑制し、最適な粘度を有
し、また炭化初期の段階では芳香族平面が秩序だ
つて配列をし易い組成を持つことができる性能の
優れた原料ピツチを見出したものである。換言す
れば、本発明は軟化点が比較的低く保持され、か
つメソ相を容易に形成するような原料ピツチから
の炭素繊維の製造方法を提供するものである。 すなわち、本発明はコールタールを20Kg/cm2・
G以上の水素加圧下で、温度400〜500℃で熱処理
することにより得られる原料ピツチを温度340〜
450℃で加熱処理し、得られる前駆体ピツチを溶
融紡糸した後、不融化処理および炭化あるいはさ
らに黒鉛化処理して炭素繊維を製造する方法に関
し、本発明により高弾性率で、かつ高強度の炭素
繊維が得られる。 本発明者らは、詳細に検討を行つた結果、高弾
性率かつ高強度の炭素繊維の原料としての最適な
ピツチはコールタールをきわめて限られた熱処理
条件下に水素化触媒を用いることなく行わねばな
らないことを見出したものである。すなわち、コ
ールタールを20Kg/cm2・G以上の水素加圧下で温
度400〜500℃で熱処理して得られる本発明に係る
原料ピツチを用いてメソ相化反応を行わせしめた
場合、キノリン不溶分の生成が抑制されるばかり
か、ピツチが改質され、最終製品である炭素繊維
が一層高弾性率で、かつ高強度となり得たもので
あり、ことは全く予期され得ないものであつた。 以下本発明を詳述する。 本発明は原料ピツチを熱処理して、メソ相
(mosophase)と呼ばれる光学的異方性の液晶を
含有するピツチを得、このメソ相を含有するピツ
チを前駆体ピツチとして用い、この前駆体ピツチ
を溶融紡糸した後、不融化し、次いで炭化あるい
は更に黒鉛化することにより、弾性率および強度
が向上した炭素繊維を製造するものである。 本発明で使用する原料ピツチは、コールタール
を20Kg/cm2・G以上、例えば20〜350Kg/cm2・G、
好ましくは50〜300Kg/cm2・Gの水素加圧下で、
温度400〜500℃、好ましくは405〜450℃で熱処理
することにより得られる。 熱処理温度が400℃よりも低いと、得られるピ
ツチはメソ相化を行つた際、キノリン不溶分が多
量に生成するため溶融紡糸過程でのコーキング、
相分離、軟化点上昇等のトラブルが生じ易く、さ
らに得られる炭素繊維の性能も劣り好ましくな
い。また熱処理温度が500℃よりも高いと、原料
ピツチ製造の段階でコーキング等の問題が生じ、
実質上、原料ピツチ製造が困難となる。 熱処理を行つた後、必要であれば蒸留等の操作
により軽質分を除去することも好ましく採用され
る。 本発明で用いるコールタールとしては、低温タ
ールおよび高温タールのいずれも使用可能である
が、キノリン不溶分を除去したものが好ましい。
特に本発明においてはキノリン不溶分を除去した
高温タールが好ましく用いられる。 かくして得られる本発明に係る原料ピツチを用
いることにより、加熱処理してメソ相化を行つた
際、キノリン不溶分である高分子量成分の生成が
抑制されると同時にピツチの軟化点の上昇を防ぐ
ことができ、さらに芳香族平面が秩序だつて配列
し易い組成を持つた良好な前駆体ピツチとなる。
この結果、弾性率および強度がきわめて優れた炭
素繊維を得ることができる。 本発明に係る原料ピツチを用いて炭素繊維を製
造する方法は公知の方法を採用することができ
る。すなわち、原料ピツチを加熱処理してメソ相
化を行い、得られる前駆体ピツチを溶融紡糸した
後、不融化処理および炭化あるいはさらに黒鉛化
処理を行つて炭素繊維を製造する。 原料ピツチを加熱処理し、メソ相化を行つて前
駆体ピツチを得る段階での反応は、通常、温度
340〜450℃、好ましくは370〜420℃で、常圧ある
いは減圧下に窒素等の不活性ガスを通気すること
によつて行われる。この時の加熱処理時間は、温
度、不活性ガスの通気量等の条件により任意に行
い得るものであるが、通常、1〜50時間、好まし
くは3〜20時間で行う。不活性ガスの通気量は
0.7〜5.0scfh/1bピツチが好ましい。 前駆体ピツチを溶融紡糸する方法としては、押
出法、遠心法、霧吹法等の公知の方法を用いるこ
とができる。 溶融紡糸されて得られるピツチ繊維は、次に酸
化性ガス雰囲気下で不融化処理が施される。酸化
性ガスとしては、通常、酸素、オゾン、空気、窒
素酸化物、ハロゲン、亜硫酸ガス等の酸化性ガス
を1種あるいは2種以上用いる。この不融化処理
は、被処理体である溶融紡糸されたピツチ繊維が
軟化変形しない温度条件下で実施される。例えば
20〜360℃、好ましくは20〜300℃の温度が採用さ
れる。また処理時間は通常、5分〜10時間であ
る。 不融化処理されたピツチ繊維は、次に不活性ガ
ス雰囲気下で炭化あるいは更に黒鉛化を行い、炭
素繊維を得る。炭化は通常、温度800〜2500℃で
行う。一般には炭化に要する処理時間は0.5分〜
10時間である。さらに黒鉛化を行う場合には、温
度2500〜3500℃で、通常1秒〜1時間行う。 また、不融化、炭化あるいは黒鉛化処理の際、
必要であれば収縮や変形等を防止する目的で、被
処理体に若干の荷重あるいは張力をかけておくこ
ともできる。 以下に実施例および比較例をあげて本発明を具
体的に説明するが、本発明はこれらに制限される
ものではない。 実施例 1 高温タール(性状を第1表に示す)からキノリ
ン不溶分を除去したもの(以下タールQS分と略)
150mlを内容積300mlの撹拌機付きオートクレーブ
中で水素初圧100Kg/cm2・Gで、昇温速度3℃/
分にて440℃まで加熱し、440℃で3時間保持し
た。しかる後、加熱を停止し、室温まで冷却し
た。得られた液状生成物を250℃/1mmHgで蒸留
して軽質分を留出させ原料ピツチを得た。このピ
ツチの軟化点は70℃、キノリン不溶分は3%であ
り、収率は40wt%であつた。 次に、この原料ピツチ30gに対し、窒素を600
ml/分で通気しながら撹拌し、温度400℃で10時
間熱処理を行い、軟化点290℃、キノリン不溶分
46wt%、メソ相含量70%のピツチを、50%の収
率で得た。このピツチをノズル径0.3mmφ、L/
D=2の紡糸器を用い345℃で溶融紡糸し、13μ
のピツチ繊維をつくり、さらに下記に示す条件に
て不融化、炭化および黒鉛化処理して炭素繊維を
得た。 Γ不融化条件:空気雰囲気中で、200℃までは3
℃/分、300℃までは1℃/分の昇温速度で加
熱し、300℃で30分間保持。 Γ炭化条件:窒素雰囲気中で、5℃/分で昇温し
1000℃で30分間保持。 Γ黒鉛化条件:アルゴン気流中で、25℃/分の昇
温速度で、2500℃まで加熱処理。 得られた炭素繊維の径は11μであり、引張強度
は250Kg/mm2、ヤング率は40ton/mm2であつた。
【表】
* レツドウツド粘度計で測定
比較例 1 実施例1で使用したタールQS分150mlを内容積
300mlの撹拌機付きオートクレーブ中で水素初圧
100Kg/cm2・Gで昇温速度3℃/minで300℃まで
加熱し、300℃で3時間保持した。しかる後、加
熱を停止し、室温まで冷却した。 得られた液状生成物を250℃/1mmHgで蒸留し
て軽質分を留出させ原料ピツチを得た。このピツ
チの軟化点は58℃、キノリン不溶分は0%であ
り、収率は60wt%であつた。 次にこのピツチ30gに対し、窒素を600ml/分
で通気しながら撹拌し、温度400℃で10時間熱処
理を行い、軟化点315℃、キノリン不溶分53wt
%、メソ相割合70%のピツチを40%の収率で得
た。このピツチを実施例1と同様の方法で溶融紡
糸を行つたところ、均一な紡糸をすることができ
なかつた。
比較例 1 実施例1で使用したタールQS分150mlを内容積
300mlの撹拌機付きオートクレーブ中で水素初圧
100Kg/cm2・Gで昇温速度3℃/minで300℃まで
加熱し、300℃で3時間保持した。しかる後、加
熱を停止し、室温まで冷却した。 得られた液状生成物を250℃/1mmHgで蒸留し
て軽質分を留出させ原料ピツチを得た。このピツ
チの軟化点は58℃、キノリン不溶分は0%であ
り、収率は60wt%であつた。 次にこのピツチ30gに対し、窒素を600ml/分
で通気しながら撹拌し、温度400℃で10時間熱処
理を行い、軟化点315℃、キノリン不溶分53wt
%、メソ相割合70%のピツチを40%の収率で得
た。このピツチを実施例1と同様の方法で溶融紡
糸を行つたところ、均一な紡糸をすることができ
なかつた。
Claims (1)
- 1 コールタールを20Kg/cm2・G以上の水素加圧
下で、温度400〜500℃で熱処理することにより得
られる原料ピツチを温度340〜450℃で加熱処理
し、得られる前駆体ピツチを溶融紡糸した後、不
融化処理および炭化あるいはさらに黒鉛化処理し
て炭素繊維を製造する方法。
Priority Applications (6)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP18369181A JPS5887188A (ja) | 1981-11-18 | 1981-11-18 | 炭素繊維の製造方法 |
GB08232570A GB2110232B (en) | 1981-11-18 | 1982-10-15 | Process for the production of ethane |
GB08232570A GB2111524B (en) | 1981-11-18 | 1982-11-15 | Starting pitches for carbon fibers |
US06/441,670 US4460557A (en) | 1981-11-18 | 1982-11-15 | Starting pitches for carbon fibers |
FR8219331A FR2516556B1 (fr) | 1981-11-18 | 1982-11-18 | Matieres premieres constituees par des brais pour la preparation de fibres de carbone |
DE19823242629 DE3242629A1 (de) | 1981-11-18 | 1982-11-18 | Ausgangspeche fuer kohlefasern |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP18369181A JPS5887188A (ja) | 1981-11-18 | 1981-11-18 | 炭素繊維の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPS5887188A JPS5887188A (ja) | 1983-05-24 |
JPH0150269B2 true JPH0150269B2 (ja) | 1989-10-27 |
Family
ID=16140242
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP18369181A Granted JPS5887188A (ja) | 1981-11-18 | 1981-11-18 | 炭素繊維の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPS5887188A (ja) |
Families Citing this family (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS60190492A (ja) * | 1984-03-10 | 1985-09-27 | Kawasaki Steel Corp | 炭素繊維用プリカ−サピツチの製造方法 |
JPS60238387A (ja) * | 1984-05-10 | 1985-11-27 | Idemitsu Kosan Co Ltd | 炭素材用ピツチの製造方法 |
JPS6147826A (ja) * | 1984-08-15 | 1986-03-08 | Teijin Ltd | ピツチ系炭素繊維の製造法 |
JPS61138721A (ja) * | 1984-12-07 | 1986-06-26 | Osaka Gas Co Ltd | 炭素繊維の製造方法 |
JPS61241392A (ja) * | 1985-12-26 | 1986-10-27 | Toa Nenryo Kogyo Kk | メソ相ピツチの製造方法 |
JPS63264916A (ja) * | 1987-04-17 | 1988-11-01 | Osaka Gas Co Ltd | ピツチ系黒鉛化繊維の製造方法 |
Citations (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS55157679A (en) * | 1979-05-29 | 1980-12-08 | Hai Max:Kk | Preparation of high-purity petroleum pitch or coke |
JPS56100895A (en) * | 1980-01-18 | 1981-08-13 | Agency Of Ind Science & Technol | Hydrogenation treatment of heavy bitumen substance |
-
1981
- 1981-11-18 JP JP18369181A patent/JPS5887188A/ja active Granted
Patent Citations (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS55157679A (en) * | 1979-05-29 | 1980-12-08 | Hai Max:Kk | Preparation of high-purity petroleum pitch or coke |
JPS56100895A (en) * | 1980-01-18 | 1981-08-13 | Agency Of Ind Science & Technol | Hydrogenation treatment of heavy bitumen substance |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPS5887188A (ja) | 1983-05-24 |
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