JP7491314B2 - ydiJ遺伝子を過剰発現する腸内細菌科に属する細菌を用いたL-アミノ酸の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、広くは微生物工業に関し、特に、ydiJ遺伝子を過剰発現し、L-アミノ酸の生産が増強されるように改変された腸内細菌科(Enterobacteriaceae)に属する細菌の発酵によりL-アミノ酸を製造する方法に関する。
従来、L-アミノ酸は自然源から得られた微生物株あるいはそれらの変異体を利用した発酵法によって工業的に製造されてきた。典型的には、そのような微生物はL-アミノ酸の生産収率が高まるように改変されている。L-アミノ酸の生産収率を高めるための多くの技術が報告されており、組み換えDNAによる微生物の形質転換(例えば、U.S. Patent No. 4,278,765 Aを参照のこと)、プロモーター、リーダー配列及び/又はアテニュエーター、あるいはその他の当業者に知られた発現制御領域の改変(例えば、US20060216796 A1やWO9615246 A1を参照のこと)等がある。生産収率を高めるその他の技術としては、アミノ酸生合成に関与する酵素の活性を増加させること、及び/又は生成したL-アミノ酸による目的とする酵素のフィードバック阻害を解除すること(例えば、WO9516042 A1, EP0685555 A1, またはU.S. Patent Nos. 4,346,170 A, 5,661,012 A, および6,040,160 Aを参照のこと)が挙げられる。
L-アミノ酸の生産収率を高める別の方法としては、1種または数種の、目的とするL-アミノ酸の分解に関与する遺伝子、目的とするL-アミノ酸の生合成経路から該L-アミノ酸の前駆体を別の経路に逸らせる遺伝子、炭素、窒素、硫黄、及びリン酸の流れの再分配に関与する遺伝子、および毒素をコードする遺伝子等の発現を減少させることが挙げられる。
ydiJ遺伝子によってコードされるE. coli固有のYdiJタンパク質は、推定上のFAD結合型酸化還元酵素として特徴づけられる(EcoCyc database, https://ecocyc.org/, accession ID: G6913)。YdiJは、Fe4S4 FAD含有タンパク質であることが実証されている(Estellon J. et al., An integrative computational model for large-scale identification of metalloproteins in microbial genomes: a focus on iron-sulfur cluster proteins, Metallomics, 2014, 6(10):1913-1930)。
しかし、腸内細菌科に属するL-アミノ酸生産細菌の発酵によるL-アミノ酸の生産におけるydiJ遺伝子の過剰発現の影響を記載したデータは、これまでに報告されていない。
本明細書は、腸内細菌科に属する細菌の発酵によってL-アミノ酸を製造する、改善された方法を記載するものである。本発明によれば、腸内細菌科に属する細菌の発酵によるL-アミノ酸の製造を増加させることができる。具体的には、腸内細菌科に属する細菌の発酵によるL-アミノ酸の生産は、ydiJ遺伝子を過剰発現するように該細菌を改変し、以て改変された該細菌によるL-アミノ酸の生産を増強することにより、改善できる。
本発明は、下記のものを提供する。
本発明のひとつの態様は、L-アミノ酸を製造する方法であって、
(i)腸内細菌科(Enterobacteriaceae)に属するL-アミノ酸生産細菌を培地で培養し
て培地もしくは該細菌の菌体、またはその両者中にL-アミノ酸を生産および蓄積させる
こと、および
(ii)培地もしくは菌体、またはその両者からL-アミノ酸を回収すること
を含み、
前記細菌が、ydiJ遺伝子を過剰発現するように改変されている、方法を提供することである。
本発明の別の態様は、前記ydiJ遺伝子が、下記からなる群より選択される、前記方法を提供することである:
(A)配列番号1または3に示す塩基配列を含む遺伝子;
(B)配列番号2または4に示すアミノ酸配列を含むタンパク質をコードする遺伝子;
(C)配列番号2または4に示すアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基の置
換、欠失、挿入、および/または付加を含むアミノ酸配列を含むタンパク質をコードする遺伝子であって、該タンパク質が配列番号2または4に示すアミノ酸配列を含むタンパク質の活性を有する、遺伝子;
(D)配列番号2または4に示すアミノ酸配列全体に対して70%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質をコードする遺伝子であって、該タンパク質が配列番号2または4に示すアミノ酸配列を含むタンパク質の活性を有する、遺伝子:および
(E)配列番号1または3の変異体塩基配列を含む遺伝子であって、該変異体塩基配列が遺
伝暗号の縮重によるものである、遺伝子。
本発明の別の態様は、前記ydiJ遺伝子が、ydiJ遺伝子を導入すること、ydiJ遺伝子のコピー数を増加させること、および/またはydiJ遺伝子の発現制御領域を改変することにより過剰発現し、以て該遺伝子の発現が非改変細菌と比較して増強されている、前記方法を提供することである。
本発明の別の態様は、前記細菌が、エシェリヒア(Escherichia)属またはパントエア
(Pantoea)属に属する、前記方法を提供することである。
本発明の別の態様は、前記細菌が、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)またはパントエア・アナナティス(Pantoea ananatis)である、前記方法を提供することである。
本発明の別の態様は、前記L-アミノ酸が、芳香族L-アミノ酸、非芳香族L-アミノ酸、含硫L-アミノ酸、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、前記方法を提供することである。
本発明の別の態様は、前記芳香族L-アミノ酸が、L-フェニルアラニン、L-トリプトファン、L-チロシン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、前記方法を提供することである。
本発明の別の態様は、前記非芳香族L-アミノ酸が、L-アラニン、L-アルギニン、L-アスパラギン、L-アスパラギン酸、L-シトルリン、L-システイン、L-グルタミン酸、L-グルタミン、グリシン、L-ヒスチジン、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-リジン、L-メチオニン、L-オルニチン、L-プロリン、L-セリン、L-スレオニン、L-バリン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、前記方法を提供することである。
本発明の別の態様は、前記含硫L-アミノ酸が、L-システイン、L-メチオニン、L-ホモシステイン、L-シスチン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、前記方法を提供することである。
本発明のさらに他の目的、特徴、および付随する利点は、それに従って構築された実施形態の以下の詳細な説明を読めば当業者に明らかになるであろう。
1.細菌
本明細書に記載の細菌は、ydiJ遺伝子を過剰発現するように改変された腸内細菌科(Enterobacteriaceae)に属するL-アミノ酸生産菌である。本明細書に記載の細菌は、本明細書に記載の方法で使用できる。よって、同細菌に関する以下の説明は、本明細書に記載の方法で代替可能または等価に使用されるいずれの細菌にも準用できる。
本明細書に記載の方法で使用できる細菌は、その方法を用いて生産される目的のL-アミノ酸の種類に応じて適切に選択された細菌であり得る。
ydiJ遺伝子を過剰発現するように改変されたものであれば、腸内細菌科に属する任意のL-アミノ酸生産菌を本明細書に記載の方法で使用できる。例えば、ydiJ遺伝子を過剰発現するように改変され、以てL-アミノ酸の生産が非改変細菌と比較して増強され得るものであれば、腸内細菌科に属するL-アミノ酸生産菌を本明細書に記載の方法で使用できる。
「L-アミノ酸生産菌」の用語は、「L-アミノ酸を生産できる細菌」の用語または「L-アミノ酸を生産する能力を有する細菌」の用語と代替可能または等価に使用されてよい。
「L-アミノ酸生産菌」の用語は、当該細菌を培地で培養したときに、培地及び/又は該細菌の菌体(「細菌菌体」ともいう)中にL-アミノ酸を生成し、排出もしくは分泌し、且つ/又は蓄積する能力を有する腸内細菌科に属する細菌を意味し得る。
また、「L-アミノ酸生産菌」の用語は、例えば、非改変細菌と比較して、より多い量でL-アミノ酸を培地中に生成し、排出もしくは分泌し、且つ/又は蓄積する能力を有する細菌も意味し得る。「非改変細菌」の用語は、「非改変株」の用語と代替可能または等価に使用されてよい。「非改変株」の用語は、ydiJ遺伝子を過剰発現するように改変されていない対照株を意味し得る。非改変細菌としては、例えばEscherichia coli (E. coli)
K-12株(例えば、W3110 (ATCC 27325) やMG1655 (ATCC 47076))およびPantoea ananatis (P. ananatis) AJ13355等の、野生株または親株が挙げられる。また、「L-アミノ酸
生産菌」の用語は、例えば、0.1 g/L以上、0.5 g/L以上、あるいは1.0 g/L以上の量で目
的のL-アミノ酸を培地中に蓄積することができる細菌も意味し得る。また、「L-アミノ酸生産菌」の用語は、例えば、非改変細菌と比較して、より多い量でL-アミノ酸を培地中に生成し、排出もしくは分泌し、且つ/又は蓄積する能力を有し、且つ0.1 g/L以上
、0.5 g/L以上、あるいは1.0 g/L以上の量でL-アミノ酸を培地中に蓄積することができる細菌も意味し得る。
細菌は、本来的にL-アミノ酸生産能を有していてもよく、L-アミノ酸生産能を有するように改変されてもよい。そのような改変は、例えば、突然変異法またはDNA組み換え
技術により達成できる。前記細菌は、本来的にL-アミノ酸生産能を有する細菌において、またはL-アミノ酸生産能を既に付与された細菌において、ydiJ遺伝子を過剰発現させることにより取得できる。あるいは、前記細菌は、ydiJ遺伝子を過剰発現するように既に改変された細菌にL-アミノ酸生産能を付与することにより取得できる。あるいは、前記細菌は、ydiJ遺伝子を過剰発現するように改変されたことによりL-アミノ酸生産能を獲得したものであってもよい。本明細書に記載の細菌は、具体的には、例えば、後述する細菌株を改変することにより取得できる。
「L-アミノ酸生産能」の用語は、細菌を培地で培養したときに、培地及び/又は該細菌の菌体中にL-アミノ酸を生成し、排出もしくは分泌し、且つ/又は蓄積する、細菌の能力を意味し得る。「L-アミノ酸生産能」の用語は、具体的には、細菌を培地で培養したときに、培地及び/又は細菌菌体から回収できる程度に、培地及び/又は細菌菌体中にL-アミノ酸を生成し、排出もしくは分泌し、且つ/又は蓄積する、腸内細菌科に属する細菌の能力を意味し得る。
本明細書に記載の方法で使用され得る細菌について言及される「培養される(cultured)」という用語は、当業者に周知である「培養される(cultivated)」等の用語と代替可能または等価に使用されてよい。
細菌は、L-アミノ酸を、単独で、あるいはL-アミノ酸とL-アミノ酸とは異なる1種またはそれ以上の物質の混合物として、生産し得る。例えば、細菌は、目的のL-アミノ酸を、単独で、あるいは目的のL-アミノ酸と目的のL-アミノ酸とは異なる1種またはそれ以上のアミノ酸(例えばL体のアミノ酸(L-アミノ酸ともいう)等)の混合物として、生産し得る。言い換えると、細菌が2種またはそれ以上のL-アミノ酸を混合物として生産し得ることが許容される。さらに、例えば、細菌は、目的のL-アミノ酸を、単独で、あるいは目的のL-アミノ酸と他の1種またはそれ以上の有機酸(例えばカルボン酸等)の混合物として、生産し得る。
L-アミノ酸としては、特に制限されないが、L-アラニン、L-アルギニン、L-アスパラギン、L-アスパラギン酸、L-シトルリン、L-システイン、L-グルタミン酸、L-グルタミン、グリシン、L-ヒスチジン、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-リジン、L-メチオニン、L-オルニチン、L-フェニルアラニン、L-プロリン、L-セリン、L-スレオニン、L-トリプトファン、L-チロシン、及びL-バリンが挙げられる。
カルボン酸としては、特に制限されないが、ギ酸、酢酸、クエン酸、酪酸、乳酸、プロピオン酸、およびそれらの誘導体が挙げられる。
「L-アミノ酸」および「カルボン酸」の用語は、遊離形態のL-アミノ酸およびカルボン酸に限られず、それらの派生形態(塩、水和物、付加物、またはそれらの組み合わせ、等)も意味し得る。付加物は、L-アミノ酸またはカルボン酸と別の有機もしくは無機の化合物とで形成された化合物であり得る。すなわち、「L-アミノ酸」および「カルボン酸」の用語は、例えば、遊離形態、派生形態、またはそれらの混合物であるL-アミノ酸およびカルボン酸を意味し得る。「L-アミノ酸」および「カルボン酸」の用語は、例えば、特に、遊離形態のL-アミノ酸およびカルボン酸、それらの塩、またはそれらの混合物を意味し得る。「L-アミノ酸」および「カルボン酸」の用語は、例えば、それらの、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、一水和物、二水和物、三水和物、一塩酸塩、二塩酸塩等の塩のいずれも意味し得る。特記しない限り、水和状態について言及しない「L-アミノ酸」および「カルボン酸」の用語(例えば、「遊離形態のL-アミノ酸またはカルボン酸」の用語や「L-アミノ酸またはカルボン酸の塩」の用語)は、L-アミノ酸およびカルボン酸の非水和物を意味し得るものであり、また、L-アミノ酸およびカルボン酸の水和物を意味し得る。
L-アミノ酸は、1つまたはそれ以上のL-アミノ酸ファミリーに属し得る。一例として、L-アミノ酸は、L-アルギニン、L-グルタミン酸、L-グルタミン、およびL-プロリンを含むグルタミン酸ファミリー;L-システイン、グリシン、およびL-セリンを含むセリンファミリー;L-アスパラギン、L-アスパラギン酸、L-イソロイシン、
L-リジン、L-メチオニン、およびL-スレオニンを含むアスパラギン酸ファミリー;L-アラニン、L-イソロイシン、L-バリン、およびL-ロイシンを含むピルビン酸ファミリー;ならびにL-フェニルアラニン、L-トリプトファン、およびL-チロシンを含む芳香族ファミリーに属し得る。L-ヒスチジンは、イミダゾール環等の芳香族部位を有しているので、「芳香族L-アミノ酸」という用語は、上記芳香族L-アミノ酸に加えて、L-ヒスチジンを意味し得る。
L-アミノ酸は、非芳香族ファミリーにも属し得るものであり、その例としては、L-アラニン、L-アルギニン、L-アスパラギン、L-アスパラギン酸、L-シトルリン、L-システイン、L-グルタミン酸、L-グルタミン、グリシン、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-リジン、L-メチオニン、L-オルニチン、L-プロリン、L-セリン、L-スレオニン、L-バリンが挙げられる。L-フェニルアラニン、L-トリプトファン、L-チロシン等の芳香族アミノ酸の生合成経路はL-ヒスチジンの生合成経路とは異なるため、「非芳香族L-アミノ酸」という用語は、上記非芳香族L-アミノ酸に加えて、L-ヒスチジンを意味し得る。
さらに、L-アミノ酸は、含硫L-アミノ酸ファミリーにも属し得るものであり、その例としては、L-システイン、L-メチオニン、L-ホモシステイン、L-シスチンが挙げられる。
いくつかのL-アミノ酸は、特定のL-アミノ酸の生合成経路における中間アミノ酸であり得るので、上記アミノ酸ファミリーには、他のL-アミノ酸(例えば、非タンパク質生成L-アミノ酸)も含まれてよい。例えば、L-シトルリンおよびL-オルニチンは、アルギニン生合成経路のアミノ酸である。したがって、グルタミン酸ファミリーには、L-アルギニン、L-シトルリン、L-グルタミン酸、L-グルタミン、L-オルニチン、およびL-プロリンが含まれてよい。
腸内細菌科に属する細菌としては、エンテロバクター(Enterobacter)、エルビニア(Erwinia)、エシェリヒア(Escherichia)、クレブシエラ(Klebsiella)、モルガネラ(Morganella)、パントエア(Pantoea)、フォトルハブドゥス(Photorhabdus)、プロビ
デンシア(Providencia)、サルモネラ(Salmonella)、イェルシニア(Yersinia)等の
属に属する細菌が挙げられる。そのような細菌は、L-アミノ酸を生産する能力を有し得る。具体的には、NCBI(National Center for Biotechnology Information)のデータベ
ース(www.ncbi.nlm.nih.gov/Taxonomy/Browser/wwwtax.cgi?id=543)で用いられている
分類法により腸内細菌科に分類されている細菌を使用することができる。腸内細菌科に属する細菌としては、特に、Escherichia、Enterobacter、およびPantoea属に属する細菌が挙げられる。
Escherichia属細菌は特に限定されず、具体的には、Neidhardtらの著書(Bachmann, B.J., Derivations and genotypes of some mutant derivatives of E. coli K-12, p. 2460-2488. In F.C. Neidhardt et al. (ed.), E. coli and Salmonella: cellular and molecular biology, 2nded. ASM Press, Washington, D.C., 1996)に記載のものが挙げられる。Escherichia属細菌としては、特に、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli (E. coli))が挙げられる。E. coliとして、具体的には、プロトタイプ野生株であるE. coli K-12株(E. coli W3110(ATCC 27325)やE. coli MG1655(ATCC 47076)等)が挙げられる
Enterobacter属細菌としては、エンテロバクター・アグロメランス(Enterobacter agglomerans)やエンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)等が挙げられる。Pantoea属細菌としてはパントエア・アナナティス(Pantoea ananatis(P. ananatis
))等が挙げられる。エンテロバクター・アグロメランス(Enterobacter agglomerans)のいくつかの株は、近年、16S rRNAの塩基配列解析等によりパントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans)、パントエア・アナナティス(Pantoea ananatis)、またはパ
ントエア・スチューアルティ(Pantoea stewartii)に再分類されている。腸内細菌科に
分類された細菌であれば、Enterobacter属またはPantoea属のいずれに属するものであっ
ても使用することができる。P. ananatisとして、具体的には、Pantoea ananatis AJ13355株(FERM BP-6614)、AJ13356株(FERM BP-6615)、AJ13601株(FERM BP-7207)、及び
それらの派生株が挙げられる。これらの株は、分離された当時はEnterobacter agglomeransと同定され、Enterobacter agglomeransとして寄託されたが、上記のとおり最近16S rRNAの塩基配列解析等によりPantoea ananatisに再分類されている。
これらの株は、例えば、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC; Address: P.O. Box 1549, Manassas, VA 20108, United States of America)から入手することができる。すなわち各菌株には対応する登録番号が付与されており、この登録番号を利用して発注することができる(https://www.lgcstandards-atcc.orgを参照)。各菌株の
登録番号は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションのカタログに記載されている。これらの株は、例えば、各株が寄託された寄託機関から入手することもできる。
L-アミノ酸生産能の付与又は増強は、従来、コリネ型細菌又はエシェリヒア属細菌等のアミノ酸生産菌の育種に採用されてきた方法により行うことができる(アミノ酸発酵、(株)学会出版センター、1986年5月30日初版発行、第77~100頁参照)。そのよう
な方法としては、例えば、栄養要求性変異株の取得、L-アミノ酸のアナログ耐性株の取得、代謝制御変異株の取得、L-アミノ酸の生合成系酵素の活性が増強された組換え株の創製が挙げられる。L-アミノ酸生産菌の育種において、付与される栄養要求性、アナログ耐性、代謝制御変異等の性質は、単独であってもよく、2種又は3種以上であってもよい。また、L-アミノ酸生産菌の育種において、活性が増強されるL-アミノ酸生合成系酵素も、単独であってもよく、2種又は3種以上であってもよい。さらに、栄養要求性、アナログ耐性、代謝制御変異等の性質の付与と、生合成系酵素の活性の増強が組み合わされてもよい。
L-アミノ酸生産能を有する栄養要求性変異株、アナログ耐性株、又は代謝制御変異株は、親株又は野生株を通常の変異処理に供し、得られた変異株の中から、栄養要求性、アナログ耐性、又は代謝制御変異を示し、且つL-アミノ酸生産能を有するものを選択することによって取得できる。通常の変異処理としては、X線や紫外線の照射、N-メチル-N’-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(MNNG)、エチルメタンスルフォネート(EMS)、メチルメタンスルフォネート(MMS)等の変異剤による処理が挙げられる。
また、L-アミノ酸生産能の付与又は増強は、目的のL-アミノ酸の生合成に関与する酵素の活性を増強することによっても行うことができる。酵素活性の増強は、例えば、同酵素をコードする遺伝子の発現が増強するように細菌を改変することにより行うことができる。遺伝子の発現を増強する方法は、WO00/18935やEP1010755A等に記載されている。後述するydiJ遺伝子を過剰発現する方法は、任意のタンパク質の活性の増強または任意の遺伝子の発現の増強にも同様に適用できる。
また、L-アミノ酸生産能の付与又は増強は、目的のL-アミノ酸の生合成経路から分岐して目的のL-アミノ酸以外の化合物を生成する反応を触媒する酵素の活性を低下させることによっても行うことができる。なお、ここでいう「目的のL-アミノ酸の生合成経路から分岐して目的のL-アミノ酸以外の化合物を生成する反応を触媒する酵素」の用語は、目的のL-アミノ酸の分解に関与する酵素も意味し得る。後述する遺伝子の発現を弱化する方法は、任意のタンパク質の活性の低下または任意の遺伝子の発現の弱化にも適用
できる。
以下、L-アミノ酸生産菌、およびL-アミノ酸生産能を付与又は増強する方法について具体的に例示する。なお、以下に例示するようなL-アミノ酸生産菌が有する性質およびL-アミノ酸生産能を付与又は増強するための改変は、いずれも、単独で用いてもよく、適宜組み合わせて用いてもよい。
<L-アルギニン生産菌>
L-アルギニン生産菌およびL-アルギニン生産菌を誘導するために使用できる親株としては、例えば、1種またはそれ以上のL-アルギニン生合成系酵素の活性が増大した株が挙げられる。そのような酵素としては、制限されないが、N-アセチルグルタミン酸シンターゼ(argA)、N-アセチルグルタミン酸キナーゼ(argB)、N-アセチル-γ-グルタミルリン酸レダクターゼ(argC)、N-アセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼ(argD)、アセチルオルニチンデアセチラーゼ(argE)、オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ(argF, argI)、アルギニノコハク酸シンターゼ(argG)、アルギニノコハク酸リアーゼ(argH)、オルニチンアセチルトランスフェラーゼ(argJ)、カルバモイルリン酸シンターゼ(carAB)が挙げられる。酵素名の後のカッコ内には、その酵素をコ
ードする遺伝子の一例を示す(同一の命名法は、以下、タンパク質/酵素および遺伝子について言及する場合にも準用される)。N-アセチルグルタミン酸シンターゼ(argA)遺伝子としては、例えば、野生型の15位~19位に相当するアミノ酸残基が置換され、L-アルギニンによるフィードバック阻害が解除された変異型N-アセチルグルタミン酸シンターゼをコードする遺伝子を用いると好適である(EP1170361A)。
L-アルギニン生産菌およびL-アルギニン生産菌を誘導するために使用できる親株として、具体的には、例えば、E. coli 237株(VKPM B-7925;US2002-058315A1)、変異型
N-アセチルグルタミン酸シンターゼをコードするargA遺伝子が導入されたその誘導株(ロシア特許出願第2001112869号, EP1170361A1)、237株由来の酢酸資化能が向上した株であるE. coli 382株(VKPM B-7926;EP1170358A1)、及び382株にE. coli K-12株由来の野生型ilvA遺伝子が導入された株であるE. coli 382ilvA+株等のEscherichia属に属する株
が挙げられる。E. coli 237株は、2000年4月10日にルシアン・ナショナル・コレクション・オブ・インダストリアル・マイクロオルガニズムズ(VKPM; 1stDorozhny proezd., 1, Moscow 117545, Russian Federation)にVKPM B-7925の受託番号で寄託され、2001年5月18日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管された。E. coli 382株は、2000年4月10日
にルシアン・ナショナル・コレクション・オブ・インダストリアル・マイクロオルガニズムズ(VKPM; 1stDorozhny proezd., 1, Moscow 117545, Russian Federation)にVKPM B-7926の受託番号で寄託され、2001年5月18日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管さ
れた。
L-アルギニン生産菌およびL-アルギニン生産菌を誘導するために使用できる親株としては、アミノ酸アナログ等への耐性を有する株も挙げられる。そのような株としては、例えば、α-メチルメチオニン、p-フルオロフェニルアラニン、D-アルギニン、アルギニンヒドロキサム酸、S-(2-アミノエチル)-システイン、α-メチルセリン、β-2-チエニルアラニン、またはスルファグアニジンに耐性を有するEscherichia coli変異株(特開昭56-106598を参照)が挙げられる。
<L-シトルリン生産菌およびL-オルニチン生産菌>
L-シトルリンおよびL-オルニチンは、L-アルギニン生合成経路における中間体である。よって、L-シトルリンまたはL-オルニチンの生産菌およびL-シトルリンまたはL-オルニチンの生産菌を誘導するために使用できる親株としては、例えば、1種またはそれ以上のL-アルギニン生合成系酵素の活性が増大した株が挙げられる。そのような
酵素としては、制限されないが、L-シトルリンについて、N-アセチルグルタミン酸シンターゼ(argA)、N-アセチルグルタミン酸キナーゼ(argB)、N-アセチル-γ-グルタミルリン酸レダクターゼ(argC)、N-アセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼ(argD)、アセチルオルニチンデアセチラーゼ(argE)、オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ(argF, argI)、オルニチンアセチルトランスフェラーゼ(argJ)、カルバモイルリン酸シンターゼ(carAB)が挙げられる。また、そのような酵素としては、制
限されないが、L-オルニチンについて、N-アセチルグルタミン酸シンターゼ(argA)、N-アセチルグルタミン酸キナーゼ(argB)、N-アセチル-γ-グルタミルリン酸レダクターゼ(argC)、N-アセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼ(argD)、アセチルオルニチンデアセチラーゼ(argE)、オルニチンアセチルトランスフェラーゼ(argJ)が挙げられる。
L-シトルリン生産菌およびL-シトルリン生産菌を誘導するために使用できる親株として、具体的には、制限されないが、変異型N-アセチルグルタミン酸シンターゼを保持するE. coli 237/pMADS11株、237/pMADS12株、及び237/pMADS13株(ロシア特許第2215783号, 欧州特許1170361 B1, および米国特許第6,790,647号B2)、フィードバック阻害に耐
性のカルバモイルリン酸シンセターゼを保持するEscherichia coli 333株(VKPM B-8084
)及び374株(VKPM B-8086)(ロシア特許第2,264,459号C2)、α-ケトグルタル酸シン
ターゼの活性が増大し、且つフェレドキシンNADP+レダクターゼ、ピルビン酸シンターゼ
、及び/又はα-ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼの活性がさらに改変されたEscherichia coli株(EP2133417 A1)等のEscherichia属に属する株や、コハク酸デヒドロゲナーゼ
およびα-ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼの活性が低下したPantoea ananantis NA1sucAsdhA株(米国特許出願No. 2009286290 A1)等が挙げられる。
また、L-シトルリン生産菌は、任意のL-アルギニン生産菌(例えばE. coli 382株
(VKPM B-7926)等)から、argG遺伝子にコードされるアルギニノコハク酸シンターゼ不
活化することにより容易に得ることができる。遺伝子を不活化する方法は、本明細書に記載されている。
L-オルニチン生産菌は、任意のL-アルギニン生産菌(例えばE. coli 382株(VKPM B-7926)等)から、argF及びargI遺伝子によりコードされるオルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ不活化することにより容易に得ることができる。
<L-システイン生産菌>
L-システイン生産菌およびL-システイン生産菌を誘導するために使用できる親株としては、例えば、1種またはそれ以上のL-システイン生合成系酵素の活性が増大した株が挙げられる。そのような酵素としては、特に制限されないが、セリンアセチルトランスフェラーゼ(cysE)や3-ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ(serA)が挙げられる。セリンアセチルトランスフェラーゼ活性は、例えば、システインによるフィードバック阻害に耐性の変異型セリンアセチルトランスフェラーゼをコードする変異型cysE遺伝子を細菌に導入することにより増強できる。変異型セリンアセチルトランスフェラーゼは、例えば、特開平11-155571やUS2005-0112731Aに開示されている。そのような変異型セリンアセチルトランスフェラーゼとして、具体的には、cysE5遺伝子にコードされる、野生型セリ
ンアセチルトランスフェラーゼの95位と96位のVal残基とAsp残基がそれぞれArg残基
とPro残基に置換された変異型セリンアセチルトランスフェラーゼが挙げられる(US2005-0112731A)。また、3-ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ活性は、例えば、セリンによるフィードバック阻害に耐性の変異型3-ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼをコードする変異型serA遺伝子を細菌に導入することにより増強できる。変異型3-ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼは、例えば、米国特許第6,180,373号に開示されている。
L-システイン生産菌およびL-システイン生産菌を誘導するために使用できる親株としては、例えば、L-システインの生合成経路から分岐してL-システイン以外の化合物を生成する反応を触媒する1種またはそれ以上の酵素の活性が低下した株も挙げられる。そのような酵素としては、例えば、L-システインの分解に関与する酵素が挙げられる。L-システインの分解に関与する酵素としては、特に制限されないが、シスタチオニン-β-リアーゼ(metC)(特開平11-155571号;Chandra et al., Biochemistry, 1982, 21:3064-3069)、トリプトファナーゼ(tnaA)(特開2003-169668;Austin N. et al., J. Biol. Chem., 1965, 240:1211-1218)、O-アセチルセリンスルフヒドリラーゼB(cysM
)(特開2005-245311)、malY遺伝子産物(特開2005-245311)、Pantoea ananatisのd0191遺伝子産物(特開2009-232844)、システインデスルフヒドラーゼ(aecD)(特開2002-233384)が挙げられる。
また、L-システイン生産菌およびL-システイン生産菌を誘導するために使用できる親株としては、例えば、L-システイン排出系および/または硫酸塩/チオ硫酸塩輸送系の活性が増大した株も挙げられる。L-システイン排出系のタンパク質としては、ydeD遺伝子にコードされるタンパク質(特開2002-233384)、yfiK遺伝子にコードされるタンパ
ク質(特開2004-49237)、emrAB、emrKY、yojIH、acrEF、bcr、およびcusAの各遺伝子に
コードされる各タンパク質(特開2005-287333)、yeaS遺伝子にコードされるタンパク質
(特開2010-187552)が挙げられる。硫酸塩/チオ硫酸塩輸送系のタンパク質としては、cysPTWA遺伝子クラスターにコードされるタンパク質が挙げられる。
L-システイン生産菌およびL-システイン生産菌を誘導するために使用できる親株として、具体的には、例えば、制限されないが、フィードバック阻害耐性の変異型セリンアセチルトランスフェラーゼをコードする種々のcysEアレルで形質転換されたEscherichia coli JM15(米国特許第6,218,168 B1号, ロシア特許出願第2279477 C2号)、細胞に毒性
の物質を排出するのに適したタンパク質をコードする遺伝子を過剰発現するEscherichia coli W3110(米国特許第5,972,663号)、システインデスルフヒドラーゼ活性が低下したEscherichia coli株(JP11155571 A2)、cysB遺伝子によりコードされる正のシステインレギュロンの転写制御因子の活性が上昇したEscherichia coli W3110(WO0127307 A1)等のEscherichia属に属する株や、硫黄同化に関与する遺伝子を過剰発現するPantoea ananatis EYPSG8やその派生株(EP2486123 B1)等が挙げられる。
<L-グルタミン酸生産菌>
L-グルタミン酸生産菌およびL-グルタミン酸生産菌を誘導するために使用できる親株としては、制限されないが、1種またはそれ以上のL-グルタミン酸生合成系酵素の活性が増大した株が挙げられる。そのような遺伝子としては、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(gdhA)、グルタミンシンテターゼ(glnA)、グルタミン酸シンターゼ(gltBD)、イ
ソクエン酸デヒドロゲナーゼ(icdA)、アコニテートヒドラターゼ(acnA, acnB)、クエン酸シンターゼ(gltA)、メチルクエン酸シンターゼ(prpC)、ピルビン酸カルボキシラーゼ(pyc)、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(ppc)、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(aceEF, lpdA)、ピルビン酸キナーゼ(pykA, pykF)、ホスホエノールピルビ
ン酸シンターゼ(ppsA)、エノラーゼ(eno)、ホスホグリセロムターゼ(pgmA, pgmI)
、ホスホグリセリン酸キナーゼ(pgk)、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナ
ーゼ(gapA)、トリオースリン酸イソメラーゼ(tpiA)、フルクトースビスリン酸アルドラーゼ(fbp)、ホスホフルクトキナーゼ(pfkA, pfkB)、グルコースリン酸イソメラー
ゼ(pgi)、6-ホスホグルコン酸デヒドラターゼ(edd)、2-ケト-3-デオキシ-6-ホスホグルコン酸アルドラーゼ(eda)、トランスヒドロゲナーゼをコードする遺伝子
が挙げられる。これらの酵素の中では、例えば、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、クエン酸シンターゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、及びメチルクエン酸シンターゼから選択される1種またはそれ以上の酵素の活性を増強するのが好ましい。
クエン酸シンターゼ遺伝子、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ遺伝子、および/またはグルタミン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子の発現が増大するように改変された腸内細菌科に属する株としては、EP1078989 A2、EP955368 A2、およびEP952221 A2に開示されたものが挙げられる。また、エントナー・ドゥドロフ経路の遺伝子(edd, eda)の発現が増大するように改変された腸内細菌科に属する株としては、EP1352966Bに開示されたものが挙げられる。
L-グルタミン酸生産菌およびL-グルタミン酸生産菌を誘導するために使用できる親株としては、L-グルタミン酸の生合成経路から分岐してL-グルタミン酸以外の化合物の生合成を触媒する酵素の活性が低下または消失した株も挙げられる。そのような酵素としては、特に制限されないが、イソクエン酸リアーゼ(aceA)、α-ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ(sucA)、ホスホトランスアセチラーゼ(pta)、酢酸キナーゼ(ack)、アセトヒドロキシ酸シンターゼ(ilvG)、アセト乳酸シンターゼ(ilvI)、ギ酸アセチルトランスフェラーゼ(pfl)、乳酸デヒドロゲナーゼ(ldh)、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(gadAB)、コハク酸デヒドロゲナーゼ(sdhABCD)、1-ピロリン-5-カルボン酸デヒドロゲナーゼ(putA)が挙げられる。これらの酵素の中では、例えば、α-ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ活性を低下又は欠損させることが好ましい。
α-ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ活性が欠損または低下したEscherichia属細菌、
及びそれらの取得方法は、米国特許第5,378,616号及び米国特許第5,573,945号に記載されている。これらの株として、具体的には、下記のものが挙げられる。
Escherichia coli W3110sucA::KmR
Escherichia coli AJ12624(FERM BP-3853)
Escherichia coli AJ12628(FERM BP-3854)
Escherichia coli AJ12949(FERM BP-4881)
Escherichia coli W3110sucA::KmRは、Escherichia coli W3110のα-ケトグルタル酸
デヒドロゲナーゼ遺伝子(以下、「sucA遺伝子」ともいう)を破壊することにより得られた株である。この株は、α-ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼを完全に欠損している。
L-グルタミン酸生産菌およびL-グルタミン酸生産菌を誘導するために使用できる親株としては、Pantoea ananatis AJ13355株(FERM BP-6614)、Pantoea ananatis SC17株
(FERM BP-11091)、Pantoea ananatis SC17(0)株(VKPM B-9246)等のPantoea属細菌も
挙げられる。AJ13355株は、静岡県磐田市の土壌から、低pHでL-グルタミン酸及び炭素
源を含む培地で増殖できる株として分離された株である。SC17株は、AJ13355株から、粘
液質低生産変異株として選択された株である(米国特許第6,596,517号)。SC17株は、2009年2月4日に、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(現、独立行政
法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター(NITE IPOD)、郵便番号:292-0818
、住所:日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号室)に寄託され、受託番号FERM BP-11091が付与されている。AJ13355株は、1998年2月19日に、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(現、NITE IPOD、郵便番号:292-0818、住所:日本国千葉県木更津市
かずさ鎌足2-5-8 120号室)に、受託番号FERM P-16644として寄託され、1999年1月11日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管され、受託番号FERM BP-6614が付与されている。SC17(0)株は、2005年9月21日にルシアン・ナショナル・コレクション・オブ・インダストリアル・マイクロオルガニズムズ(VKPM; 1stDorozhny proezd., 1, Moscow 117545, Russian Federation)にVKPM B-9246の受託番号で寄託された。
L-グルタミン酸生産菌およびL-グルタミン酸生産菌を誘導するために使用できる親株としては、α-ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ活性が欠損または低下したPantoea属
に属する変異株も挙げられ、上記のようにして取得できる。そのような株としては、AJ13355株のα-ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼのE1サブユニット遺伝子(sucA)欠損株で
あるPantoea ananatis AJ13356(米国特許第6,331,419号)、及びSC17株のsucA遺伝子欠
損株であるPantoea ananatis SC17sucA(米国特許第6,596,517号)が挙げられる。Pantoea ananatis AJ13356は、1998年2月19日に、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究
所(現、NITE IPOD、郵便番号:292-0818、住所:日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8
120号室)に受託番号FERM P-16645として寄託され、1999年1月11日にブダペスト条約に
基づく国際寄託に移管され、受託番号FERM BP-6615が付与されている。尚、AJ13356株は
、分離された当時はEnterobacter agglomeransと同定され、Enterobacter agglomerans AJ13356として寄託された。しかし、同株は、近年、16S rRNAの塩基配列解析などにより、Pantoea ananatisに再分類されている。AJ13356は、上記寄託機関にEnterobacter agglomeransとして寄託されているが、本明細書の目的ではPantoea ananatisとして記載する。Pantoea ananatis SC17sucAは、ブライベートナンバーAJ417が付与され、2004年2月26日に独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(現、NITE IPOD、郵便番号:292-0818、住所:日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号室)に受託番号FERM BP-8646として寄託されている。
L-グルタミン酸生産菌およびL-グルタミン酸生産菌を誘導するために使用できる親株としては、Pantoea ananatis SC17sucA/RSFCPG+pSTVCB株、Pantoea ananatis AJ13601
株、Pantoea ananatis NP106株、及びPantoea ananatis NA1株等のパントエア属に属する株も挙げられる。SC17sucA/RSFCPG+pSTVCB株は、SC17sucA株に、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)由来のクエン酸シンターゼ遺伝子(gltA)、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ遺伝子(ppc)、およびグルタミン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(gdhA)
を含むプラスミドRSFCPG、並びに、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)由来のクエン酸シンターゼ遺伝子(gltA)を含むプラスミドpSTVCBを導入して得られた。AJ13601株は、このSC17sucA/RSFCPG+pSTVCB株から低pH下で高濃度のL-グルタミン酸に耐性を示す株として選択された株である。NP106株は、AJ13601株からプラスミドRSFCPG+pSTVCBを脱落させて得られた。AJ13601株は、1999年8月18日に
、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(現、NITE IPOD、郵便番号:292-0818
、住所:日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号室)に受託番号FERM P-17516とし
て寄託され、2000年7月6日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管され、受託番号FERM
BP-7207が付与されている。
L-グルタミン酸生産菌およびL-グルタミン酸生産菌を誘導するために使用できる親株としては、栄養要求性変異株も挙げられる。栄養要求性変異株として、具体的には、例えば、E. coli VL334thrC+(VKPM B-8961;EP1172433)が挙げられる。E. coli VL334(VKPM B-1641)は、thrC遺伝子及びilvA遺伝子に変異を有するL-イソロイシン及びL-スレオニン要求性株である(米国特許第4,278,765号)。E. coli VL334thrC+は、thrC遺伝
子の野生型アレルをVL334に導入することにより得られた、L-イソロイシン要求性のL
-グルタミン酸生産菌である。thrC遺伝子の野生型アレルは、野生型E. coli K-12株(VKPM B-7)の細胞で増殖したバクテリオファージP1を用いる一般的形質導入法により導入された。
L-グルタミン酸生産菌およびL-グルタミン酸生産菌を誘導するために使用できる親株としては、アスパラギン酸アナログに耐性を有する株も挙げられる。これらの株は、例えば、α-ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ活性を欠損していてもよい。アスパラギン酸アナログに耐性を有し、α-ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ活性を欠損した株として、具体的には、例えば、Escherichia coli AJ13199(FERM BP-5807;米国特許第5,908,768
号)、さらにL-グルタミン酸分解能が低下したEscherichia coli FERM P-12379(米国
特許第5,393,671号)、Escherichia coli AJ13138(FERM BP-5565;米国特許第6,110,714
号)が挙げられる。
<L-ヒスチジン生産菌>
L-ヒスチジン生産菌およびL-ヒスチジン生産菌を誘導するために使用できる親株としては、1種またはそれ以上のL-ヒスチジン生合成系酵素の活性が増大した株が挙げられる。そのような酵素としては、特に制限されないが、ATPホスホリボシルトランスフェラーゼ(hisG)、ホスホリボシル-ATPピロホスファターゼ(hisE)、ホスホリボシル-AMPサイクロヒドロラーゼ(hisI)、二機能性ホスホリボシル-AMPサイクロヒドロラーゼ/ホスホリボシル-ATPピロホスファターゼ(hisIE)、ホスホリボシルフ
ォルミミノ-5-アミノイミダゾールカルボキサミドリボタイドイソメラーゼ(hisA)、アミドトランスフェラーゼ(hisH)、ヒスチジノールフォスフェイトアミノトランスフェラーゼ(hisC)、ヒスチジノールフォスファターゼ(hisB)、ヒスチジノールデヒドロゲナーゼ(hisD)が挙げられる。
hisG及びhisBHAFIにコードされるL-ヒスチジン生合成系酵素は、L-ヒスチジンにより阻害されることが知られている。従って、L-ヒスチジン生産能は、例えば、ATPホスホリボシルトランスフェラーゼにフィードバック阻害への耐性を付与する変異を導入することにより、効率的に増強することができる(ロシア特許第2,003,677号C1及びロシア
特許第2,119,536号C1)。
L-ヒスチジン生産菌およびL-ヒスチジン生産菌を誘導するために使用できる親株として、具体的には、制限されないが、Escherichia coli 24株(VKPM B-5945;RU2003677 C1)、Escherichia coli NRRL B-12116~B-12121(米国特許第4,388,405号)、Escherichia coli H-9342(FERM BP-6675)及びH-9343(FERM BP-6676)(米国特許第6,344,347号B1)、Escherichia coli H-9341(FERM BP-6674;EP1085087 A2)、Escherichia coli AI80/pFM201(米国特許第6,258,554号B1)、L-ヒスチジン生合成系酵素をコードするDNAを保持するベクターで形質転換したEscherichia coli FERM P-5038及びFERM P-5048(JP 56-005099 A)、アミノ酸排出用の遺伝子であるrhtで形質転換したEscherichia coli株(EP1016710 A2)、スルファグアニジン、DL-1,2,4-トリアゾール-3-アラニン、及びストレプトマイシンに対する耐性を付与したEscherichia coli 80株(VKPM B-7270;RU2119536 C1)、Escherichia coli MG1655+hisGr hisL'_Δ ΔpurR(RU2119536 and Doroshenko V.G. et al., The directed modification of Escherichia coli MG1655 to obtain histidine-producing mutants, Prikl. Biochim. Mikrobiol. (Russian), 2013, 49(2):149-154)等のEscherichia属に属する株が挙げられる。
<L-イソロイシン生産菌>
L-イソロイシン生産菌およびL-イソロイシン生産菌を誘導するために使用できる親株としては、制限されないが、1種またはそれ以上のL-イソロイシン生合成系酵素の活性が増大した株が挙げられる。そのような酵素としては、特に制限されないが、スレオニンデアミナーゼやアセトヒドロキシ酸シンターゼが挙げられる(特開平2-458, EP0356739A, 米国特許第5,998,178号)。
L-イソロイシン生産菌およびL-イソロイシン生産菌を誘導するために使用できる親株として、具体的には、制限されないが、6-ジメチルアミノプリンに耐性を有する変異株(JP 5-304969 A)、チアイソロイシン、イソロイシンヒドロキサメート等のイソロイ
シンアナログに耐性を有する変異株、さらにDL-エチオニン及び/またはアルギニンヒドロキサメートに耐性を有する変異株(JP 5-130882 A)等のEscherichia属細菌が挙げられる。
<L-ロイシン生産菌>
L-ロイシン生産菌およびL-ロイシン生産菌を誘導するために使用できる親株としては、1種またはそれ以上のL-ロイシン生合成系酵素の活性が増大した株が挙げられる。そのような酵素としては、特に制限されないが、leuABCDオペロンの遺伝子にコードされ
る酵素が挙げられる。また、酵素活性の増強には、例えば、L-ロイシンによるフィードバック阻害が解除されたイソプロピルマレートシンターゼをコードする変異leuA遺伝子(米国特許第6,403,342号)が好適に利用できる。
また、L-ロイシン生産菌およびL-ロイシン生産菌を誘導するために使用できる親株としては、細菌菌体からL-アミノ酸を排出するタンパク質をコードする遺伝子の発現が増大した株も挙げられる。そのような遺伝子としては、b2682およびb2683遺伝子(ygaZH
遺伝子)が挙げられる(EP1239041 A2)。
L-ロイシン生産菌およびL-ロイシン生産菌を誘導するために使用できる親株として、具体的には、制限されないが、ロイシン耐性のEscherichia coli株(例えば、57株(VKPM B-7386;米国特許第6,124,121号))、β-2-チエニルアラニン、3-ヒドロキシロイシン、4-アザロイシン、5,5,5-トリフルオロロイシン等のロイシンアナログに耐性のEscherichia coli株(JP 62-34397 BおよびJP 8-70879 A)、WO96/06926に記載さ
れた遺伝子工学的方法で得られたEscherichia coli株、Escherichia coli H-9068(JP 8-70879 A)等のEscherichia属に属する株が挙げられる。
<L-リジン生産菌>
L-リジン生産菌およびL-リジン生産菌を誘導するために使用できる親株としては、Escherichia属に属し、且つL-リジンアナログに耐性を有する変異株が挙げられる。L
-リジンアナログはEscherichia属に属する細菌の生育を阻害するが、この阻害は、L-
リジンが培地に共存するときには完全にまたは部分的に脱感作される。L-リジンアナログとしては、制限されないが、オキサリジン、リジンヒドロキサメート、S-(2-アミノエチル)-L-システイン(AEC)、γ-メチルリジン、α-クロロカプロラクタム等
が挙げられる。これらのリジンアナログに対して耐性を有する変異株は、Escherichia属
に属する細菌を通常の人工変異処理に付すことによって得ることができる。
L-リジン生産菌およびL-リジン生産菌を誘導するために使用できる親株としては、1種またはそれ以上のL-リジン生合成系酵素の活性が増大した株が挙げられる。そのような酵素としては、制限されないが、ジヒドロジピコリン酸シンターゼ(dihydrodipicolinate synthase)(dapA)、アスパルトキナーゼIII(aspartokinase III)(lysC)、ジヒドロジピコリン酸レダクターゼ(dihydrodipicolinate reductase)(dapB)、ジアミ
ノピメリン酸デカルボキシラーゼ(diaminopimelate decarboxylase)(lysA)、ジアミ
ノピメリン酸デヒドロゲナーゼ(diaminopimelate dehydrogenase)(ddh)(米国特許第6,040,160号)、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(phosphoenolpyruvate carboxylase)(ppc)、アスパラギン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(aspartate semialdehyde dehydrogenase)(asd)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(aspartate aminotransferase)(アスパラギン酸トランスアミナーゼ(aspartate transaminase))(aspC)、ジアミノピメリン酸エピメラーゼ(diaminopimelate epimerase)(dapF)
、テトラヒドロジピコリン酸スクシニラーゼ(tetrahydrodipicolinate succinylase)(dapD)、スクシニルジアミノピメリン酸デアシラーゼ(succinyl diaminopimelate deacylase)(dapE)、及びアスパルターゼ(aspartase)(aspA)(EP1253195 A1)をコード
する遺伝子が挙げられる。これらの酵素の中では、例えば、ジヒドロジピコリン酸レダクターゼ、ジアミノピメリン酸デカルボキシラーゼ、ジアミノピメリン酸デヒドロゲナーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、ジアミノピメリン酸エピメラーゼ、アスパラギン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、テトラヒドロジピコリン酸スクシニラーゼ、及びスクシニルジアミノピメリン酸デアシ
ラーゼの1種またはそれ以上の活性を増強するのが好ましい。また、L-ヒスチジン生産菌およびL-ヒスチジン生産菌を誘導するために使用できる親株では、エネルギー効率に関与する遺伝子(cyo)(EP1170376 A1)、ニコチンアミドヌクレオチドトランスヒドロ
ゲナーゼ(nicotinamide nucleotide transhydrogenase)をコードする遺伝子(pntAB)
(米国特許第5,830,716号A)、ybjE遺伝子(WO2005/073390)、またはこれらの組み合わ
せの発現レベルが増大していてもよい。アスパルトキナーゼIII(lysC)はL-リジンに
よるフィードバック阻害を受けるので、同酵素の活性を増強するには、L-リジンによるフィードバック阻害が解除されたアスパルトキナーゼIIIをコードする変異型lysC遺伝子
を利用してもよい(米国特許第5,932,453号)。L-リジンによるフィードバック阻害が
解除されたアスパルトキナーゼIIIとしては、318位のメチオニン残基のイソロイシン残基への置換、323位のグリシン残基のアスパラギン酸残基への置換、352位のスレオニン残基のイソロイシン残基への置換等の1つまたはそれ以上の変異を有するエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)由来のアスパルトキナーゼIIIが挙げられる(米国特許第5,661,012号、米国特許第6,040,160号)。また、ジヒドロジピコリン酸合成酵素(dapA)はL-リ
ジンによるフィードバック阻害を受けるので、同酵素の活性を増強するには、L-リジンによるフィードバック阻害が解除されたジヒドロジピコリン酸合成酵素をコードする変異型dapA遺伝子を利用してもよい。L-リジンによるフィードバック阻害が解除されたジヒドロジピコリン酸合成酵素としては、118位のヒスチジン残基がチロシン残基に置換され
る変異を有するエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)由来のジヒドロジピコリン酸合成酵素が挙げられる(米国特許第6,040,160号)。
L-リジン生産菌またはL-リジン生産菌を誘導するために使用できる親株では、L-アミノ酸の生合成経路から分岐して他の化合物を生成する反応を触媒する酵素の活性が低下または消失していてよい。また、L-リジン生産菌またはL-リジン生産菌を誘導するために使用できる親株では、L-リジンの合成または蓄積に対して負に作用する酵素の活性が低下または消失していてよい。そのような酵素としては、制限されないが、ホモセリンデヒドロゲナーゼ(homoserine dehydrogenase)、リジンデカルボキシラーゼ(lysine
decarboxylase;cadA, ldcC)、リンゴ酸酵素(malic enzyme)が挙げられ、これらの酵素の活性が低下または欠損した株は、WO95/23864, WO96/17930, WO2005/010175等に開示
されている。lysine decarboxylase活性は、例えば、lysine decarboxylaseをコードするcadAおよびldcC遺伝子の両方の発現を低下させることにより、低下または欠損させることができる。両遺伝子の発現は、例えば、WO2006/078039に記載の方法により、低下させる
ことができる。
L-リジン生産に有用な細菌株として、具体的には、例えば、E. coli AJ11442(FERM BP-1543, NRRL B-12185;米国特許第4,346,170号を参照のこと)及びE. coli VL611が挙
げられる。これらの株では、アスパルトキナーゼにおけるL-リジンによるフィードバック阻害が解除されている。
L-リジン生産菌またはL-リジン生産菌を誘導するために使用できる親株として、具体的には、Escherichia coli WC196株(FERM BP-5252, U.S. Patent No. 5,827,698)、Escherichia coli WC196ΔcadAΔldcC株(FERM BP-11027;「WC196LC」とも呼ばれる)、Escherichia coli WC196ΔcadAΔldcC/pCABD2株(WO2006/078039)も挙げられる。
WC196株は、E. coli K-12に由来するW3110株にAEC耐性を付与することにより育種され
た(米国特許第5,827,698号)。WC196株は、E. coli AJ13069と命名され、1994年12月6日に、工業技術院生命工学工業技術研究所(現、NITE IPOD、郵便番号:292-0818、住所:
日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号室)に受託番号FERM P-14690として寄託さ
れ、1995年9月29日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管され、受託番号FERM BP-5252が付与されている(米国特許第5,827,698号)。
WC196ΔcadAΔldcC株は、WC196株より、リジンデカルボキシラーゼをコードするcadA及びldcC遺伝子を破壊することにより構築された。WC196ΔcadAΔldcC株は、AJ110692と命
名され、2008年10月7日に、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(
現、NITE IPOD、郵便番号:292-0818、住所:日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号室)に受託番号FERM BP-11027として国際寄託された。
WC196ΔcadAΔldcC/pCABD2株は、WC196ΔcadAΔldcC株に、リジン生合成系遺伝子を含
むプラスミドpCABD2(米国特許第6,040,160号)を導入することにより構築された。pCABD2は、L-リジンによるフィードバック阻害が解除される変異(H118Y)を有するエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)由来のジヒドロジピコリン酸合成酵素(DDPS)をコードする変異型dapA遺伝子と、L-リジンによるフィードバック阻害が解除される変異(T352I)を有するエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)由来のアスパルトキナーゼIIIをコードする変異型lysC遺伝子と、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)由来のジヒドロジピコリン酸レダクターゼをコードするdapB遺伝子と、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)由来ジアミノピメリン酸デヒドロゲナー
ゼをコードするddh遺伝子を含んでいる。
L-リジン生産菌またはL-リジン生産菌を誘導するために使用できる親株としては、Escherichia coli AJIK01株(NITE BP-01520)も挙げられる。AJIK01株は、Escherichia coli AJ111046と命名され、2013年1月29日に、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NITE NPMD;郵便番号:292-0818、住所:日本国千葉県木更津市か
ずさ鎌足2-5-8 122号室)に寄託され、2014年5月15日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管され、受託番号NITE BP-01520が付与されている。
<L-メチオニン生産菌>
L-メチオニン生産菌およびL-メチオニン生産菌を誘導するために使用できる親株としては、特に制限されないが、Escherichia coli AJ11539株(NRRL B-12399)、AJ11540
株(NRRL B-12400)、AJ11541株(NRRL B-12401)、AJ 11542株(NRRL B-12402)(特許GB2075055);L-メチオニンアナログであるノルロイシンに耐性のEscherichia coli 218株(VKPM B-8125;RU2209248 C2)および73株(VKPM B-8126;RU2215782 C2);等のEscherichia属に属する株が挙げられる。Escherichia coli 73株は、2001年5月14日にルシア
ン・ナショナル・コレクション・オブ・インダストリアル・マイクロオルガニズムズ(VKPM; 1stDorozhny proezd., 1, Moscow 117545, Russian Federation)にVKPM B-8126の受託番号で寄託され、2002年2月1日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管された。また、メチオニンリプレッサー欠損株やL-メチオニン生合成に関与するタンパク質(ホモセリントランススクシニラーゼやシスタチオニンγ-シンターゼ等)をコードする遺伝子で形質転換した組み換え株(JP 2000-139471 A)も、L-メチオニン生産菌または親株として用いることができる。Escherichia属のL-メチオニン生産菌およびL-メチオニン生
産菌を誘導するために使用できる親株の他の例は、L-メチオニン生合成系のリプレッサー(MetJ)を欠損し、細胞内のホモセリントランスクシニラーゼ(homoserine transsuccinylase)(MetA)活性が増大したE. coli株(US7611873 B1)、コバラミン非依存性メチオニン合成酵素(cobalamin-independent methionine synthase)(MetE)活性が抑制さ
れ、コバラミン依存性メチオニン合成酵素(cobalamin-dependent methionine synthase
)(MetH)活性が増大したE. coli株(EP2861726 B1)、L-スレオニンを生産する能力
を有し、スレオニンデヒドラターゼ(threonine dehydratase)(tdcB, ilvA)と、少な
くとも、O-スクシニルホモセリンリアーゼ(O-succinylhomoserine lyase)(metB)、シスタチオニンβ-リアーゼ(cystathionine beta-lyase)(metC)、5,10-メチレンテトラヒドロフォレートレダクターゼ(5,10-methylenetetrahydrofolate reductase)(metF)、およびセリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ(serine hydroxymethyltr
ansferase)(glyA)を発現するベクターで形質転換されたE. coli株(US7790424 B2)、トランスヒドロゲナーゼ(transhydrogenase)(pntAB)の活性が増強されたE. coli株(EP2633037 B1)等であり得る。
L-メチオニン生産菌は、システインシンターゼ(cysteine synthase)遺伝子を過剰
発現するように改変されていてもよい。
「システインシンターゼ(cysteine synthase)遺伝子」の用語は、cysteine synthaseをコードする遺伝子を意味し得る。「システインシンターゼ(cysteine synthase)」の
用語は、cysteine synthase活性(EC 2.5.1.47)を有するタンパク質を意味し得る。cysteine synthase遺伝子としては、cysM遺伝子やcysK遺伝子が挙げられる。cysM遺伝子は、
チオ硫酸を基質とするcysteine synthase Bをコードしてよい。cysK遺伝子は、硫化物を
基質とするcysteine synthase Aをコードしてよい。cysteine synthase遺伝子として、具体的には、P. ananatis固有のcysM遺伝子が挙げられる。P. ananatis固有のcysM遺伝子の塩基配列を配列番号14に示す。
L-メチオニン生産菌は、変異型metA遺伝子を有するように改変されていてもよい。
metA遺伝子は、ホモセリントランスクシニラーゼ(homoserine transsuccinylase)MetAをコードする(EC 2.3.1.46)。「変異型metA遺伝子」の用語は、変異型MetAタンパク質をコードする遺伝子を意味し得る。「変異型MetAタンパク質」の用語は、R34C変異(これは、野生型MetAタンパク質のアミノ酸配列における34位のアルギニン(Arg)残基がシス
テイン(Cys)残基で置換される変異である)を有するMetAタンパク質を意味し得る。「
野生型metA遺伝子」の用語は、野生型MetAタンパク質をコードする遺伝子を意味し得る。「野生型MetAタンパク質」の用語は、R34C変異を有しないMetAタンパク質を意味し得る。野生型metA遺伝子としては、P. ananatis固有のmetA遺伝子や、その変異体であってコー
ドされるタンパク質のR34C変異をもたらす変異を有しないものが挙げられる。野生型MetAタンパク質としては、P. ananatis固有のMetAタンパク質や、その変異体であってR34C変
異を有しないものが挙げられる。言い換えると、変異型metA遺伝子は、コードされるタンパク質のR34C変異をもたらす変異を有すること以外は、任意の野生型metA遺伝子と同一であってもよい。また、変異型MetAタンパク質は、R34C変異を有すること以外は、任意の野生型MetAタンパク質と同一であってもよい。P. ananatis固有のMetAタンパク質のアミノ
酸配列を配列番号36に示す。具体的には、変異型MetAタンパク質のアミノ酸配列の一例は配列番号38に示すアミノ酸配列であり得るものであり、それは配列番号37に示す塩基配列を有する変異型metA遺伝子にコードされ得る。すなわち、変異型metA遺伝子は配列番号37に示す塩基配列を有する遺伝子(例えばDNA)であってもよく、変異型MetAタンパク質は
配列番号38に示すアミノ酸配列を有するタンパク質であってもよい。変異型metA遺伝子は、配列番号37の変異体塩基配列であってコードされるタンパク質のR34C変異をもたらす変異を有する塩基配列を有する遺伝子(例えばDNA)であってもよい。変異型MetAタンパク
質は、配列番号38の変異体アミノ酸配列であってR34C変異を有するアミノ酸配列を有するタンパク質であってもよい。変異型MetAタンパク質は、L-メチオニンによるフィードバック阻害に耐性のhomoserine transsuccinylaseであってもよい。言い換えると、変異型MetAタンパク質は、homoserine transsuccinylase活性を有し、L-メチオニンによるフィードバック阻害に耐性のタンパク質であってもよい。後述するydiJ遺伝子およびYdiJタンパク質の変異体に関する記載は、metA遺伝子の変異体およびMetAタンパク質の変異体にも準用できる。「34位」との用語は、必ずしも野生型MetAタンパク質のアミノ酸配列における絶対的な位置を示すものはなく、野生型MetAタンパク質における配列番号36に示すアミノ酸配列に基づく相対的な位置を示すものである。
L-メチオニン生産菌は、metJ遺伝子の発現が弱化するように改変されていてもよい。
metJ遺伝子は、Metリプレッサーをコードし、それはメチオニンレギュロンの発現とSAM合成に関与する酵素の発現を抑制し得る。metJ遺伝子としては、P. ananatis等の宿主細
菌に固有のものが挙げられる。P. ananatis固有のmetJ遺伝子の塩基配列を配列番号25に
示す。
Pantoea属のL-メチオニン生産菌およびL-メチオニン生産菌を誘導するために利用
できる親株としては、特に制限されないが、P. ananatis AJ13355株(FERM BP-6614)が
挙げられる。
<L-フェニルアラニン生産菌>
L-フェニルアラニン生産菌およびL-フェニルアラニン生産菌を誘導するために使用できる親株としては、制限されないが、Escherichia coli AJ12739(tyrA::Tn10, tyrR)(VKPM B-8197)、変異型pheA34遺伝子を保持するEscherichia coli HW1089(ATCC 55371、米国特許第5,354,672号)、Escherichia coli MWEC101-b(KR8903681)、Escherichia coli NRRL B-12141、NRRL B-12145、NRRL B-12146、及びNRRL B-12147(米国特許第4,407,952号)、Escherichia coli K-12 [W3110 (tyrA)/pPHAB](FERM BP-3566)、Escherichia coli K-12 [W3110 (tyrA)/pPHAD](FERM BP-12659)、Escherichia coli K-12 [W3110 (tyrA)/pPHATerm](FERM BP-12662)、並びにAJ12604と命名されたEscherichia coli K-12 [W3110 (tyrA)/pBR-aroG4, pACMAB](FERM BP-3579、EP488424 B1)が挙げられる。さ
らに、L-フェニルアラニン生産菌およびL-フェニルアラニン生産菌を誘導するために使用できる親株としては、yedA遺伝子またはyddG遺伝子によりコードされるタンパク質の活性が増強されたEscherichia属に属するL-フェニルアラニン生産菌も挙げられる(米
国特許第7,259,003号及び第7,666,655号)。
<L-プロリン生産菌>
L-プロリン生産菌およびL-プロリン生産菌を誘導するために使用できる親株としては、制限されないが、ilvA遺伝子を欠損し、L-プロリンを生産できるEscherichia coli
702ilvA(VKPM B-8012、EP1172433 A1)等のEscherichia属に属する株が挙げられる。L-プロリン生産菌およびL-プロリン生産菌を誘導するために使用できる親株としては、L-プロリン生合成に関与する1種またはそれ以上の遺伝子の発現が増強された株も挙げ
られる。L-プロリン生産菌において使用することができるそのような遺伝子の例としては、L-プロリンによるフィードバック阻害が解除されたグルタメートキナーゼをコードするproB遺伝子が挙げられる(DE3127361 A1)。さらに、L-プロリン生産菌およびL-プロリン生産菌を誘導するために使用できる親株としては、細菌の細胞からのL-アミノ酸の排出を担うタンパク質をコードする遺伝子の1種またはそれ以上遺伝子の発現が増強
された株も挙げられる。このような遺伝子の例としては、b2682遺伝子及びb2683遺伝子(ygaZH遺伝子)(EP1239041 A2)が挙げられる。
L-プロリン生産能を有するEscherichia属に属する細菌としては、NRRL B-12403及びNRRL B-12404(英国特許第2075056号)、VKPM B-8012(ロシア特許第2207371 C2号)、DE3127361 A1に記載のプラスミド変異株、Bloom F.R. et al “The 15th Miami winter symposium, 1983, p.34”に記載のプラスミド変異株等のEscherichia coli株が挙げられる。
<L-スレオニン生産菌>
L-スレオニン生産菌およびL-スレオニン生産菌を誘導するために使用できる親株としては、1種またはそれ以上のL-スレオニン生合成系酵素の活性が増大した株が挙げられる。そのような酵素としては、特に制限されないが、アスパルトキナーゼIII(lysC)
、アスパラギン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(asd)、アスパルトキナーゼI(thrA)、ホモセリンキナーゼ(homoserine kinase)(thrB)、スレオニンシンターゼ(threo
nine synthase)(thrC)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(アスパラギン酸
トランスアミナーゼ)(aspC)が挙げられる。これらの酵素の中では、アスパルトキナーゼIII、アスパラギン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ、アスパルトキナーゼI、ホモセリンキナーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、スレオニンシンターゼ等の1種またはそれ以上の酵素の活性を増強するのが好ましい。L-スレオニン生合成系遺伝子は、スレオニン分解が抑制された株に導入してもよい。スレオニン分解が抑制された株としては、例えば、スレオニンデヒドロゲナーゼ活性が欠損したE. coli TDH6株(特開2001-346578)が挙げられる。
L-スレオニン生合成系酵素の活性は、最終産物のL-スレオニンによって阻害される。従って、L-スレオニン生産菌を構築するためには、L-スレオニンによるフィードバック阻害を受けないようにL-スレオニン生合成系遺伝子を改変するのが好ましい。上記thrA、thrB、thrC遺伝子は、スレオニンオペロンを構成しており、スレオニンオペロンは、アテニュエーター構造を形成している。スレオニンオペロンの発現は、培養液中のイソロイシン、スレオニンに阻害を受け、アテニュエーションにより抑制される。スレオニンオペロンの発現の増強は、アテニュエーション領域のリーダー配列あるいはアテニュエーターを除去することにより達成できる(Lynn S.P. et al., J. Mol. Biol., 1987, 194:59-69; WO02/26993; WO2005/049808; WO2003/097839)。
スレオニンオペロンの上流には固有のプロモーターが存在するが、同プロモーターを非天然のプロモーターに置換してもよい(WO98/04715)。また、スレオニン生合成関与遺伝子がラムダファ-ジのリプレッサーおよびプロモーターの制御下で発現するようにスレオニンオペロンを構築してもよい(EP0593792B)。また、L-スレオニンによるフィードバック阻害を受けないように改変された細菌は、L-スレオニンアナログであるα-amino-
β-hydroxyisovaleric acid(AHV)に耐性な菌株を選抜することによっても取得できる。
このようにL-スレオニンによるフィードバック阻害を受けないように改変されたスレオニンオペロンは、コピー数の上昇により、あるいは強力なプロモーターに連結されることにより、宿主内での発現量が向上しているのが好ましい。コピー数の上昇は、スレオニンオペロンを含むプラスミドを宿主に導入することにより達成できる。また、コピー数の上昇は、トランスポゾン、Muファージ等を利用して、宿主のゲノム上にスレオニンオペロンを転移させることによっても達成できる。
また、L-スレオニン生産能を付与又は増強する方法としては、宿主にL-スレオニン耐性を付与する方法やL-ホモセリン耐性を付与する方法も挙げられる。耐性の付与は、例えば、L-スレオニンに耐性を付与する遺伝子、L-ホモセリンに耐性を付与する遺伝子の発現を強化することにより達成できる。耐性を付与する遺伝子としては、rhtA遺伝子(Livshits V.A. et al., Res. Microbiol., 2003, 154:123-135)、rhtB遺伝子(EP0994190A)、rhtC遺伝子(EP1013765A)、yfiK遺伝子、yeaS遺伝子(EP1016710A)が挙げられる。宿主にL-スレオニン耐性を付与する方法としては、EP0994190AやWO90/04636に記載の方法が挙げられる。
L-スレオニン生産菌およびL-スレオニン生産菌を誘導するために使用できる親株として、具体的には、制限されないが、Escherichia coli TDH-6/pVIC40(VKPM B-3996、米国特許第5,175,107号及び第5,705,371号)、Escherichia coli 472T23/pYN7(ATCC 98081、米国特許第5,631,157号)、Escherichia coli NRRL B-21593(米国特許第5,939,307号
)、Escherichia coli FERM BP-3756(米国特許第5,474,918号)、Escherichia coli FERM BP-3519及びFERM BP-3520(米国特許第5,376,538号)、Escherichia coli MG442(Gusyatiner et al., Genetika (Russian), 1978, 14:947-956)、Escherichia coli VL643及
びVL2055(EP1149911 A2)、Escherichia coli VKPM B-5318(EP0593792 A1)等のEscher
ichia属に属する株が挙げられる。
TDH-6株は、thrC遺伝子を欠損し、スクロース資化性であり、そのilvA遺伝子がリーキ
ー(leaky)変異を有する。この株は、また、rhtA遺伝子に、高濃度のスレオニンまたは
ホモセリンに対する耐性を付与する変異を有する。VKPM B-3996株は、プラスミドpVIC40
を保持する株であり、TDH-6株にプラスミドpVIC40を導入することにより得られたもので
ある。プラスミドpVIC40は、変異型thrA遺伝子を含むthrA*BCオペロンをRSF1010由来ベクターに挿入することにより得たものである。この変異型thrA遺伝子は、スレオニンによるフィードバック阻害が実質的に解除されたアスパルトキナーゼホモセリンデヒドロゲナーゼIをコードする。VKPM B-3996株は、1987年11月19日にAll-Union Scientific Center of Antibiotics(Russian Federation, 117105 Moscow, Nagatinskaya Street 3-A)に受
託番号RIA 1867で寄託されている。VKPM B-3996株は、1987年4月7日にRussian National Collection of Industrial Microorganisms(VKPM; 1st Dorozhny proezd., 1, Moscow 117545, Russian Federation)にも受託番号B-3996で寄託されている。
B-5318株は、イソロイシン非要求性であり、プラスミドpVIC40中のスレオニンオペロンの制御領域が温度感受性ラムダファージC1リプレッサー及びPRプロモーターにより置換されている。VKPM B-5318株は、1990年5月3日にRussian National Collection of Industrial Microorganisms(VKPM)に受託番号VKPM B-5318で寄託されている。
L-スレオニン生産菌またはL-スレオニン生産菌を誘導するために使用できる親株は、下記の遺伝子の1種またはそれ以上の発現が増強されるようにさらに改変されていても
よい:
- スレオニンによるフィードバック阻害に対して耐性のアスパルトキナーゼホモセリンデヒドロゲナーゼIをコードする変異型thrA遺伝子、
- ホモセリンキナーゼをコードするthrB遺伝子、
- スレオニンシンターゼをコードするthrC遺伝子;
- スレオニン及びホモセリン排出系の推定膜貫通型タンパク質をコードするrhtA遺伝子、
- アスパルテート-β-セミアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードするasd遺伝子、
- アスパルテートアミノトランスフェラーゼ(アスパルテートトランスアミナーゼ)をコードするaspC遺伝子。
Escherichia coliのアスパルトキナーゼI-ホモセリンデヒドロゲナーゼIをコードするthrA遺伝子は明らかにされている(KEGG、Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes、エントリーNo. b0002、GenBank accession No. NC_000913.2、ヌクレオチド位置337~2,799、Gene ID 945803)。thrA遺伝子は、Escherichia coli K-12の染色体においてthrL遺伝
子とthrB遺伝子との間に位置する。
Escherichia coliのホモセリンキナーゼをコードするthrB遺伝子は明らかにされている(KEGG、エントリーNo. b0003、GenBank accession No. NC_000913.2、ヌクレオチド位置2,801~3,733、Gene ID 947498)。thrB遺伝子は、Escherichia coli K-12の染色体にお
いてthrA遺伝子とthrC遺伝子との間に位置する。
Escherichia coliのスレオニンシンターゼをコードするthrC遺伝子は明らかにされている(KEGG、エントリーNo. b0004、GenBank accession No. NC_000913.2、ヌクレオチド位置3,734~5,020、Gene ID 945198)。thrC遺伝子は、Escherichia coli K-12株の染色体
においてthrB遺伝子とyaaX遺伝子との間に位置する。これらの3つの遺伝子全部が、単一のスレオニンオペロンthrABCとして機能する。スレオニンオペロンの発現を増強するためには、転写に影響するアテニュエーター領域をオペロンから除去することが望ましい(WO
2005/049808 A1、WO2003/097839 A1)。
スレオニンによるフィードバック阻害に対して耐性のアスパルトキナーゼI-ホモセリンデヒドロゲナーゼIをコードする変異型thrA遺伝子、ならびにthrB遺伝子及びthrC遺伝子
は、Escherichia coliスレオニン生産株VKPM B-3996に存在する周知のプラスミドpVIC40
から単一のオペロンとして取得できる。プラスミドpVIC40の詳細は、米国特許第5,705,371号に記載されている。
Escherichia coliのスレオニン及びホモセリン排出系(内膜輸送体)のタンパク質をコードするrhtA遺伝子は明らかにされている(KEGG、エントリーNo. b0813、GenBank accession No. NC_000913.2、ヌクレオチド位置848,433~849,320、相補鎖、Gene ID 947045)。rhtA遺伝子は、Escherichia coli K-12株の染色体上、グルタミン輸送系の要素をコー
ドするglnHPQオペロン近くのdps及びompX遺伝子の間に位置する。rhtA遺伝子はybiF遺伝
子(KEGG、エントリーNo. B0813)と同一である。
Escherichia coliのアスパルテート-β-セミアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードするasd遺伝子は明らかにされている(KEGG、エントリーNo. b3433、GenBank accession No. NC_000913.2、ヌクレオチド位置3,571,798~3,572,901、相補鎖、Gene ID 947939)。asd遺伝子は、Escherichia coli K-12株の染色体上、同じ鎖上に位置するglgB及びgntU遺伝
子の間に位置する(yhgN遺伝子は反対鎖上)。
また、Escherichia coliのアスパルテートアミノトランスフェラーゼをコードするaspC遺伝子は明らかにされている(KEGG、エントリーNo. b0928、GenBank accession No. NC_000913.2、ヌクレオチド位置983,742~984,932、相補鎖、Gene ID 945553)。aspC遺伝子は、Escherichia coli K-12の染色体上、反対鎖上のycbL遺伝子と同一鎖上のompF遺伝子
との間に位置している。
<L-トリプトファン生産菌>
L-トリプトファン生産菌およびL-トリプトファン生産菌を誘導するために使用できる親株としては、制限されないが、変異型trpS遺伝子にコードされるトリプトファニル-tRNAシンテターゼを欠損したEscherichia coli JP4735/pMU3028(DSM10122)及びJP6015/pMU91(DSM10123)(米国特許第5,756,345号)、セリンによるフィードバック阻害を受け
ないホスホグリセリレートデヒドロゲナーゼをコードするserAアレル及びトリプトファンによるフィードバック阻害を受けないアントラニレートシンターゼをコードするtrpEアレルを有するEscherichia coli SV164(pGH5)(米国特許第6,180,373 B1号)、酵素トリプトファナーゼを欠損するEscherichia coli AGX17(pGX44)(NRRL B-12263)及びAGX6(pGX50)aroP(NRRL B-12264)(米国特許第4,371,614号)、ホスホエノールピルビン酸生産能が
増強されたEscherichia coli AGX17/pGX50,pACKG4-pps(WO97/08333、米国特許第6,319,696 B1号)等のEscherichia属に属する株が挙げられる。L-トリプトファン生産菌およびL-トリプトファン生産菌を誘導するために使用できる親株としては、yedA遺伝子またはyddG遺伝子によりコードされるタンパク質の活性が増強されたEscherichia属に属するL
-トリプトファン生産菌も挙げられる(米国特許出願公開第2003148473 A1号及び第2003157667 A1号)。
L-トリプトファン生産菌およびL-トリプトファン生産菌を誘導するために使用できる親株としては、アントラニレートシンターゼ、ホスホグリセレートデヒドロゲナーゼ、トリプトファンシンターゼの1種またはそれ以上の活性が増強された株も挙げられる。アントラニレートシンターゼ及びホスホグリセレートデヒドロゲナーゼは共にL-トリプトファン及びL-セリンによるフィードバック阻害を受けるので、フィードバック阻害を解除する変異をこれらの酵素に導入してもよい。そのような変異を有する株の具体例として
は、フィードバック阻害が解除されたアントラニレートシンターゼを保持するEscherichia coli SV164、及びフィードバック阻害が解除されたホスホグリセレートデヒドロゲナーゼをコードする変異型serA遺伝子を含むプラスミドpGH5(WO94/08031 A1)をEscherichia
coli SV164に導入することにより得られた形質転換株が挙げられる。
L-トリプトファン生産菌およびL-トリプトファン生産菌を誘導するために使用できる親株としては、阻害解除型アントラニレートシンターゼをコードする遺伝子を含むトリプトファンオペロンが導入された株(特開昭57-71397号、特開昭62-244382号、米国特許
第4,371,614号)も挙げられる。さらに、トリプトファンオペロン(trpBA)中のトリプトファンシンターゼをコードする遺伝子の発現を増強することによりL-トリプトファン生産能を付与してもよい。トリプトファンシンターゼは、それぞれtrpA及びtrpB遺伝子によりコードされるα及びβサブユニットからなる。さらに、イソシトレートリアーゼ-マレ
ートシンターゼオペロンの発現を増強することによりL-トリプトファン生産能を改良してもよい(WO2005/103275)。
<L-バリン生産菌>
L-バリン生産菌およびL-バリン生産菌を誘導するために使用できる親株としては、制限されないが、ilvGMEDAオペロンを過剰発現するように改変された株(米国特許第5,998,178号)が挙げられる。ilvGMEDAオペロン中のアテニュエーションに必要な領域を除去
し、生産されるL-バリンによりオペロンの発現が減衰しないようにすることが望ましい。さらに、オペロン中のilvA遺伝子が破壊され、スレオニンデアミナーゼ活性が減少していることが望ましい。
L-バリン生産菌およびL-バリン生産菌を誘導するために使用できる親株としては、アミノアシルt-RNAシンテターゼに変異を有する変異株(米国特許第5,658,766号)も挙げられる。そのような株の例としては、イソロイシンtRNAシンテターゼをコードするileS遺伝子に変異を有するEscherichia coli VL1970が挙げられる。Escherichia coli VL1970は、1988年6月24日に、Russian National Collection of Industrial Microorganisms(VKPM; 1st Dorozhny proezd., 1, Moscow 117545, Russian Federation)に、受託番号VKPM B-4411で寄託されている。
さらに、増殖にリポ酸を要求し、且つ/又は、H+-ATPアーゼを欠損している変異株もL-バリン生産菌またはその親株として用いることができる(WO96/06926 A1)。
L-バリン生産菌およびL-バリン生産菌を誘導するために使用できる親株としては、Escherichia coli H81株(VKPM B-8066、例えばEP1942183 B1参照)、Escherichia coli NRRL B-12287及びNRRL B-12288(米国特許第4,391,907号)、Escherichia coli VKPM B-4411(米国特許5,658,766号)、Escherichia coli VKPM B-7707(EP1016710 A2)なども挙げられる。
L-アミノ酸生産菌の育種に用いられる遺伝子およびタンパク質は、例えば、上記例示した遺伝子およびタンパク質の公知の塩基配列およびアミノ酸配列をそれぞれ有していてよい。また、L-アミノ酸生産菌の育種に用いられる遺伝子およびタンパク質は、元の機能(例えば、タンパク質の場合はそれぞれの酵素活性)が維持されている限り、上記例示した遺伝子およびタンパク質のバリアント(例えば、そのような公知の塩基配列およびアミノ酸配列を有する遺伝子およびタンパク質のバリアント)であってもよい。遺伝子およびタンパク質のバリアントについては、本明細書に記載のydiJ遺伝子およびコードされるタンパク質のバリアントについての記載を準用できる。
本明細書に記載の細菌は、ydiJ遺伝子を過剰発現するように改変されている。
P. ananatis固有のydiJ遺伝子は、推定上のFAD結合型酸化還元酵素YdiJ(BioCyc database, https://biocyc.org/, accession ID: PAJ_RS05850; UniParc, accession No. UPI0002FB0FA6; KEGG entry No. PAJ_1060)をコードする。P. ananatis固有のydiJ遺伝子は
配列番号1に示す塩基配列を有し、同遺伝子にコードされるYdiJタンパク質のアミノ酸配
列を配列番号2に示す。
E. coli固有のydiJ遺伝子は、推定上のFAD結合型酸化還元酵素YdiJ(EcoCyc database,
https://ecocyc.org/, accession ID: G6913; UniProt accession No. P77748; KEGG entry No. b1687)をコードし、E. coli K-12株の染色体において、同一ストランド上のmenI遺伝子とydiK遺伝子の間に位置する。E. coli固有のydiJ遺伝子は配列番号3に示す塩基
配列を有し、同遺伝子にコードされるYdiJタンパク質のアミノ酸配列を配列番号4に示す
すなわち、ydiJ遺伝子は配列番号1または3に示す塩基配列を有する遺伝子(例えば、DNA)であってよく、YdiJタンパク質は配列番号2または4に示すアミノ酸配列を有するタン
パク質であってよい。「遺伝子またはタンパク質が塩基配列またはアミノ酸配列を有する」という表現は、特記しない限り、遺伝子またはタンパク質が当該塩基配列または当該アミノ酸配列をより長い配列中に含むことを意味し得るものであり、遺伝子またはタンパク質が当該塩基配列または当該アミノ酸配列のみを有することも意味し得る。
腸内細菌科に属する種々の細菌に固有のYdiJタンパク質のホモログは公知であり、その例を表1に示す。
Figure 0007491314000001
配列番号1に示す塩基配列を有する遺伝子についての以下の説明は、本明細書に記載の
方法において配列番号1に示す塩基配列を有する遺伝子と代替可能または同等に使用でき
る任意の遺伝子(配列番号3に示す塩基配列を有する遺伝子を含む)にも準用できる。同
様に、配列番号2に示すアミノ酸配列を有するタンパク質についての以下の説明は、本明
細書に記載の方法において配列番号2に示すアミノ酸配列を有するタンパク質と代替可能
または同等に使用できる任意のタンパク質(配列番号4に示すアミノ酸配列を有するタン
パク質を含む)にも準用できる。
腸内細菌科に属する細菌の属、種、または株間でDNA配列に相違があり得る。従って、ydiJ遺伝子は、配列番号1に示す塩基配列を有する遺伝子に限定されず、配列番号1に対す
る変異体塩基配列を有し、且つYdiJタンパク質(配列番号2に示すアミノ酸配列を有する
タンパク質やその変異体タンパク質を含む)をコードする遺伝子を包含してもよい。同様に、YdiJタンパク質は、配列番号2に示すアミノ酸配列を有するタンパク質に限定されず
、配列番号2の変異体アミノ酸配列を有するタンパク質を包含してもよい。
「変異体塩基配列」の用語は、標準遺伝子暗号表(例えば、Lewin B., “Genes VIII”, 2004, Pearson Education, Inc., Upper Saddle River, NJ 07458を参照)による任意
の同義のアミノ酸コドンを使用してYdiJタンパク質(例えば、配列番号2に示すアミノ酸
配列を有するタンパク質)をコードする塩基配列を意味し得る。従って、配列番号2に示
すアミノ酸配列を有するYdiJタンパク質をコードするDNAは、遺伝暗号の縮重による配列
番号1の変異体塩基配列を有する遺伝子であり得る。
「変異体塩基配列」の用語は、配列番号2に示すアミノ酸配列を有するタンパク質の活
性または機能が維持されているか、その三次元構造が配列番号2に示すアミノ酸配列を有
する非改変型タンパク質に対して顕著には変更されていないタンパク質をコードする限り、配列番号1に示す配列に相補的な塩基配列または該塩基配列から調製し得るプローブと
ストリンジェントな条件下でハイブリダイズ可能な塩基配列も意味し得る。「ストリンジェントな条件」の用語は、特異的なハイブリッド、例えばコンピュータプログラムblastnを使用する場合のパラメーター「同一性」として定義される相同性が70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上
、97%以上、98%以上、または99%以上のハイブリッド、が形成され、非特異的なハイブリ
ッド、例えば上記より相同性が低いハイブリッド、が形成されない条件を意味し得る。ストリンジェントな条件としては、例えば、1×SSC(標準クエン酸ナトリウムまたは標準塩化ナトリウム)、0.1% SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)の塩濃度で60℃において、0.1×SSC、0.1% SDSの塩濃度で60℃において、または0.1×SSC、0.1% SDSの塩濃度で65℃において1回以上、別の例では2または3回洗浄する条件が挙げられる。洗浄時間は、ブロッティングに使用されたメンブレンの種類に依存し得るが、一般的には製造者により推奨されるものとすべきである。例えば、Amersham HybondTM-N+正荷電ナイロンメンブレン(GE Healthcare)のストリンジェントな条件下での推奨洗浄時間は15分である。洗浄工程は2
または3回行うことができる。プローブとしては、配列番号1に示す配列に相補的な配列
の一部を使用してもよい。そのようなプローブは、配列番号1に示す配列に基づいて調製
されたオリゴヌクレオチドをプライマーとして使用し、塩基配列を含むDNA断片を鋳型と
して使用するPCR(polymerase chain reaction;White T.J. et al., The polymerase chain reaction, Trends Genet., 1989, 5:185-189を参照のこと)によって調製することができる。プローブの長さは、50 bpを超えることが推奨されるが、ハイブリゼーション条
件により適切に選択することができ、通常100 bp ~1 kbpである。例えば、約300 bpの長さを有するDNA断片をプローブとして使用する場合、ハイブリダイゼーション後の洗浄条
件は、例えば、50℃、60℃、または65℃における2×SSC、0.1%SDSの条件であり得る。
「変異体塩基配列」の用語は、変異体タンパク質をコードする塩基配列も意味し得る。
「変異体タンパク質」の用語は、配列番号2の変異体アミノ酸配列を有するタンパク質
を意味し得る。
「変異体タンパク質」の用語は、具体的には、配列番号2に示すアミノ酸配列と比較し
て、1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、及び/又は付加のいずれであるに
せよ、1つまたはそれ以上の変異を配列中に有するタンパク質であって、配列番号2に示すアミノ酸配列を有するタンパク質の活性または機能が維持されているか、その三次元構造が配列番号2に示すアミノ酸配列を有する非改変型タンパク質に対して顕著には変更され
ていないタンパク質を意味し得る。変異体タンパク質中の変異の数は、タンパク質の三次元構造中のアミノ酸残基の位置またはアミノ酸残基の種類による。変異体タンパク質中の変更の数は、厳密に限定されるものではないが、配列番号2において1~300、別の例では1~250、別の例では1~200、別の例では1~150、別の例では1~100、別の例では1~90、別の例では1~80、別の例では1~70、別の例では1~60、別の例では1~50、別の例では1~40、別の例では1~30、別の例では1~20、別の例では1~15、別の例では1~10、あるいは
別の例では1~5であってよい。これは、アミノ酸は互いに高い相同性を有し得るものであり、タンパク質の活性または機能が影響を受けないか、タンパク質の三次元構造が配列番号2に示すアミノ酸配列を有する非改変型タンパク質に対して顕著には変化しないから可
能である。従って、変異体タンパク質は、配列番号2に示すアミノ酸配列を有するタンパ
ク質の活性または機能が維持されているか、タンパク質の三次元構造が配列番号2に示す
アミノ酸配列を有する非改変型タンパク質に対して顕著には変更されていない限り、配列番号2のアミノ酸配列全体に対して70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、91%
以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、あるいは99%以上の、コンピュータプログラムblastpを使用する際のパラメーター「同一性」として定義される相同性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質であってよい。本明細書において、「相同性」の用語は、「同一性」(これは、アミノ酸残基間の同一性である)を意味してよい。2つの配列間の配列同一性は、2つの配列を最大一致となるように整列した際の2つの配列間で一致する残基の比率として算出される。
1若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、及び/又は付加の例としては、保存的変異が挙げられる。保存的変異の代表的なものは保存的置換であり得る。保存的置換は、制限されないが、置換部位が芳香族アミノ酸である場合には、Phe、Trp、Tyr間で、
置換部位が疎水性アミノ酸である場合には、Ala、Leu、Ile、Val間で、置換部位が親水性アミノ酸である場合にはGlu、Asp、Gln、Asn、Ser、His、Thr間で、置換部位が極性アミ
ノ酸である場合には、Gln、Asn間で、置換部位が塩基性アミノ酸である場合にはLys、Arg、His間で、置換部位が酸性アミノ酸である場合には、Asp、Glu間で、置換部位がヒドロ
キシル基を有するアミノ酸である場合には、Ser、Thr間で、互いに置換する置換である。保存的置換の例としては、AlaからSerまたはThrへの置換、ArgからGln、HisまたはLysへ
の置換、AsnからGlu、Gln、Lys、HisまたはAspへの置換、AspからAsn、GluまたはGlnへの置換、CysからSerまたはAlaへの置換、GlnからAsn、Glu、Lys、His、AspまたはArgへの置換、GluからAsn、Gln、LysまたはAspへの置換、GlyからProへの置換、HisからAsn、Lys、Gln、ArgまたはTyrへの置換、IleからLeu、Met、ValまたはPheへの置換、LeuからIle、Met、ValまたはPheへの置換、LysからAsn、Glu、Gln、HisまたはArgへの置換、MetからIle
、Leu、ValまたはPheへの置換、PheからTrp、Tyr、Met、IleまたはLeuへの置換、SerからThrまたはAlaへの置換、ThrからSerまたはAlaへの置換、TrpからPheまたはTyrへの置換、TyrからHis、PheまたはTrpへの置換、及びValからMet、IleまたはLeuへの置換が挙げられる。また、上記のようなアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、又は付加等は、アミノ酸配列が由来する生物の個体差によって天然に生じる変異を包含する。
1若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、及び/又は付加の例としては、非保存的変異も挙げられるが、ただし、その変異は、アミノ酸配列の異なる位置の1つまた
はそれ以上の第2の変異により、変異体タンパク質の活性または機能が維持されるか、あ
るいは配列番号2に示すアミノ酸配列を有する非改変型タンパク質に対してタンパク質の
三次元構造が顕著には変更されないように、補償されるものである。
ポリペプチドの同一性のパーセンテージは、blastpアルゴリズムにより算出できる。より具体的には、ポリペプチドの同一性のパーセンテージは、National Center for Biotechnology Information(NCBI)より提供されるblastpアルゴリズムによりデフォルト設定
のScoring Parameters(Matrix:BLOSUM62;Gap Costs:Existence=11, Extension=1;Compositional Adjustments:Conditional compositional score matrix adjustment)を用いて算出できる。ポリヌクレオチドの同一性のパーセンテージは、blastnアルゴリズムにより算出できる。より具体的には、ポリヌクレオチドの同一性のパーセンテージは、NCBIより提供されるblastnアルゴリズムによりデフォルト設定のScoring Parameters(Match/Mismatch Scores=1,-2;Gap Costs=Linear)を用いて算出できる。
「細菌がydiJ遺伝子を過剰発現するように改変された」の用語は、改変された細菌において、非改変株(例えば、野生株または親株)と比較して、対応する遺伝子産物(例えば、YdiJタンパク質)の総量および/または総活性が増加する(すなわち、より高くなる)ように、あるいはydiJ遺伝子の発現レベル(すなわち発現量)が増加する(すなわち、より高くなる)ように、細菌が改変されていることを意味し得る。上記比較のための対照となり得る非改変株としては、腸内細菌科に属する細菌の野生株(例えば、E. coli W3110
株(ATCC 27325)、E. coli MG1655株(ATCC 47076)、P. ananatis AJ13355株(FERM BP-6614)等)等が挙げられる。
すなわち、「ydiJ遺伝子が過剰発現する」の用語は、非改変株と比較して、対応する遺伝子産物(例えば、YdiJタンパク質)の総量および/または総活性が増加する(すなわち、より高くなる)ことを意味し得る。対応する遺伝子産物(例えば、YdiJタンパク質)の総量および/または総活性は、例えば、遺伝子の発現レベルを非改変細菌株と比較して増加させる(すなわち増強する)ことにより、または遺伝子にコードされるタンパク質の分子あたりの活性(比活性ともいう)を非改変株(例えば、野生株または親株)と比較して増加させることにより、増加し得る。タンパク質の総量または総活性の増加は、例えば、細胞当たりのタンパク質の量または活性(これは細胞当たりのタンパク質の平均量または平均活性であってよい)の増加として測定され得る。細菌は、細胞あたりのYdiJタンパク質の量および/または活性が、非改変細菌株における量および/または活性の150%以上、200%以上、または300%以上に増加するように改変され得る。
「配列番号2に示すアミノ酸配列を有するタンパク質の活性」の用語は、フラビンアデ
ニンジヌクレオチド(FADと略す)を補酵素として利用し、ある分子から別の分子への電
子の移動の触媒作用を引き起こすことができるタンパク質の活性を意味し得る。「配列番号4に示すアミノ酸配列を有するタンパク質の活性」の用語についても同様である。FADを補酵素として利用し、ある分子から別の分子への電子の移動の触媒作用を引き起こすことができるタンパク質の活性を測定する方法としては、FADとその還元型(例えばFADHやFADH2)との相互変換を評価できる分光光度法によるアッセイが挙げられる(例えば、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)アッセイキット(Abcam, cat. No. ab204710)を参照
)。
タンパク質濃度は、ウシ血清アルブミン(BSA)を標準としてクマシー色素を用いたBradfordタンパク質アッセイまたはLowry法により決定することができる(Bradford M.M., Anal. Biochem., 1976, 72:248-254; Lowry O.H. et al., J. Biol. Chem., 1951, 193:265-275)。
「ydiJ遺伝子が過剰発現する」の用語は、非改変株と比較して、ydiJ遺伝子の発現レベル(すなわち発現量)が増加する(すなわち、より高くなる)ことも意味し得る。従って、「ydiJ遺伝子が過剰発現する」の用語は、「ydiJ遺伝子の発現が増強される、または増加する」の用語または「ydiJ遺伝子の発現レベルが増強される、または増加する」の用語
と代替可能または同等に用いられ得る。遺伝子の発現レベルの増加は、例えば、細胞当たりの遺伝子の発現レベル(これは細胞当たりの遺伝子の平均発現レベルであってよい)の増加として測定され得る。「遺伝子の発現レベル」または「遺伝子の発現量」の用語は、例えば、遺伝子の発現産物の量(例えば、同遺伝子のmRNAの量または同遺伝子にコードされるタンパク質の量)を意味し得る。細菌は、例えば、細胞あたりのydiJ遺伝子の発現レベルが、非改変株における発現レベルの150%以上、200%以上、または300%以上に増加するように改変されてよい。
ydiJ遺伝子の遺伝子の発現を増強するために使用できる方法としては、制限されないが、遺伝子のコピー数、例えば、細菌ゲノム(すなわち染色体)における遺伝子のコピー数および/または細菌に保持された自律複製するベクター(例えばプラスミド)における遺伝子のコピー数、を増加させる方法が挙げられる。遺伝子のコピー数は、例えば、遺伝子を細菌の染色体に導入すること、および/または、遺伝子を含む自律複製するプラスミドを細菌に導入することにより、増加させることができる。そのような遺伝子のコピー数の増加は、当業者に周知の遺伝子工学的手法により実施できる。
腸内細菌科の細菌で使用できるベクターとしては、制限されないが、条件付き複製ベクター(例えば、pAH162ベクター等のR6K(oriRγ)起点で複製するベクター等)、狭宿主
域プラスミド(例えばpMW118/119、pBR322、pUC19等)、広宿主域プラスミド(RSF1010、RP4等)が挙げられる。ydiJ遺伝子は、例えば、相同組み換えまたはMuドリブンインテグ
レーション等によって細菌の染色体DNAに導入することもできる。ydiJ遺伝子は、1コピ
ーのみ導入されてもよく、2コピーまたはそれ以上導入されてもよい。例えば、染色体DNA中に複数のコピーが存在する塩基配列をターゲットとして相同組み換えを実施すること
により、染色体DNAに複数コピーのydiJ遺伝子を導入することができる。染色体DNA中に複数のコピーが存在する塩基配列としては、制限されないが、レペティティブDNAや転移因
子の末端に存在するインバーテッドリピートが挙げられる。さらに、遺伝子をトランスポゾンに組み込んで転移させることにより、染色体DNAに複数コピーの遺伝子を導入するこ
とができる。染色体DNAに複数コピーの遺伝子を導入するためには、染色体間増幅法を使
用できる。Mu-driven転移により、3コピーより多い遺伝子を受容株の染色体DNAに1ステップで導入できる(Akhverdyan V.Z. et al., Biotechnol. (Russian), 2007, 3:3-20)
本明細書に記載の細菌に導入される遺伝子は、プロモーターの下流に接続できる。プロモーターは、宿主細菌において機能するものが選択される限り特に制限されず、宿主細菌由来のプロモーターであってもよく、異種由来のプロモーターであってもよい「宿主細菌において機能するプロモーター」の用語は、宿主細菌においてプロモーター活性を有するプロモーターを意味し得る。腸内細菌科の細菌において機能するプロモーターとして、具体的には、制限されないが、下記例示する強力なプロモーターが挙げられる。
ydiJ遺伝子等の遺伝子の発現を増強するために使用できる方法としては、遺伝子の発現制御領域を改変することにより、遺伝子の発現レベルを増加させる方法が挙げられる。遺伝子の発現制御領域の改変は、遺伝子のコピー数の増加と組み合わせて採用できる。遺伝子の発現制御領域は、例えば、遺伝子の生来の発現制御領域を生来(native)の及び/又は改変された外来の発現制御領域で置換することにより、改変することができる。「発現制御領域」の用語は、「発現制御配列」の用語と代替可能または同等に用いられ得る。ydiJ遺伝子が他の1つまたはそれ以上の遺伝子とオペロン構造に編成されてもよい場合、同遺伝子の発現を増強するために使用できる方法は、オペロンの発現制御領域の改変により同遺伝子を含むオペロンの発現レベルを増加させることも含み、改変は、例えば、オペロンの生来の発現制御領域を生来(native)の及び/又は改変された外来の発現制御領域で置換することにより実施できる。この方法では、ydiJ遺伝子を含む2つまたはそれ以上の
遺伝子の発現を同時に増強することができる。
発現制御領域としては、プロモーター、エンハンサー、オペレーター、アテニュエーターと終結シグナル、抗終結シグナル、リボソーム結合部位(RBS)、及びその他の発現制
御エレメント(例えば、リプレッサーまたはアクチベーターが結合する領域、及び/又は、例えば転写されたmRNA中の転写及び翻訳の制御タンパク質の結合部位)が挙げられる。このような制御領域は、例えば、公知の文献(例えば、Sambrook J., Fritsch E.F. and Maniatis T., “Molecular Cloning: A Laboratory Manual”, 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989); Pfleger B.F. et al., Combinatorial engineering of intergenic regions in operons tunes expression of multiple genes, Nat. Biotechnol., 2006, 24:1027-1032; Mutalik V.K. et al., Precise and reliable gene expression via standard transcription and translation initiation elements, Nat. Methods, 2013, 10:354-360)に記載されている。遺伝子の発現制御領域の改変は、遺伝子のコピー数の増加と組み合わせることができる(例えば、Akhverdyan V.Z. et al., Appl. Microbiol. Biotechnol., 2011, 91:857-871; Tyo K.E.J. et al., Nature Biotechnol., 2009,
27:760-765を参照)。
ydiJ遺伝子の発現を増強するのに適したプロモーターとしては、強力なプロモーターが挙げられる。「強力なプロモーター」の用語は、ydiJ遺伝子の生来のプロモーターより強いプロモーターを意味し得る。腸内細菌科の細菌において機能する強力なプロモーターとしては、制限されないが、lacプロモーター、trpプロモーター、trcプロモーター、tacプロモーター、tetプロモーター、araBADプロモーター、rpoHプロモーター、msrAプロモー
ター、Pm1プロモーター(Bifidobacterium属由来)、Pnlp8プロモーター(WO2012/137689)、およびラムダ(λ)ファージのPRまたはPLプロモーターが挙げられる。強力なプロモーターとしては、各種レポーター遺伝子を用いることにより、在来のプロモーターの高活性型のものを取得してもよい。例えば、プロモーター領域内の-35および-10領域をコンセンサス配列に近づけることにより、プロモーターの強度を高めることができる(WO0018935 A1)。プロモーターの強度は、RNA合成の開始作用の頻度により定義され得る。プロモ
ーターの強度の評価法および強力なプロモーターの例は、Goldstein M.A. et al.の論文
(Prokaryotic promoters in biotechnology. Biotechnol. Annu. Rev., 1, 105-128 (1995))等に記載されている。細菌(例えば、腸内細菌科の細菌等)において高いレベルの
遺伝子発現を与える強力なプロモーターを使用できる。あるいは、プロモーターの効果は、例えば、ydiJ遺伝子のプロモーター領域に変異を導入してより強いプロモーター機能を得ることにより増強することができ、以て、該プロモーターの下流に位置するydiJ遺伝子の転写レベルを増加させることができる。さらに、シャイン・ダルガルノ(SD)配列、及び/又はSD配列と開始コドンの間のスペーサー、及び/又はリボソーム結合部位中の開始コドンの直ぐ上流または下流の配列における数個のヌクレオチドの置換がmRNAの翻訳効率に大きく影響することが知られている。よって、これらの領域は、遺伝子の発現制御領域の一例であり得る。例えば、開始コドンに先行する3つのヌクレオチドの性質に依存して
、20倍の範囲の発現レベルが見出されている(Gold L. et al., Annu. Rev. Microbiol.,
1981, 35:365-403; Hui A. et al., EMBO J., 1984, 3:623-629)。
遺伝子のコピー数または遺伝子の存在あるいは不在は、例えば、染色体DNAを制限処理
した後、遺伝子配列に基づいたプローブを使用するサザンブロッテイング、または蛍光in
situハイブリダイゼーション(FISH)等を行うことにより、測定することができる。遺
伝子発現のレベルは、ノーザンブロッティングや定量的RT-PCR等の様々な周知の方法を使用して遺伝子から転写されたmRNAの量を測定することにより決定することができる。遺伝子によってコードされるタンパク質の量は、SDS-PAGEと、その後の免疫ブロッティング(ウェスタンブロッティング)やタンパク質試料の質量分析等の公知の方法により測定することができる。
プラスミドDNAの調製、DNAの切断、DNAの結合、DNAの形質転換、プライマーとしてのオリゴヌクレオチドの選択、変異の導入等の、DNAの組み換え分子の操作及び分子クローニ
ングのための方法は、当業者に周知の通常の方法であってよい。そのような方法は、例えば、Sambrook J., Fritsch E.F. and Maniatis T., “Molecular Cloning: A Laboratory
Manual”, 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)またはGreen M.R. and Sambrook J.R., “Molecular Cloning: A Laboratory Manual”, 4th ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press (2012); Bernard R. Glick, Jack J. Pasternak and Cheryl L. Patten, “Molecular Biotechnology: principles and applications of recombinant DNA”, 4th ed., Washington, DC, ASM Press (2009)に記載されている。
組み換えDNAを用いた操作法としては、例えば、形質転換、トランスフェクション、感染、接合、可動等の従来の方法を含め、任意の方法を用いることができる。タンパク質をコードするDNAを用いた細菌の形質転換、トランスフェクション、感染、接合、または可動により、当該細菌に当該DNAによりコードされるタンパク質を合成する能力を付与することができる。形質転換、トランスフェクション、感染、接合、および可動の方法としては、任意の方法が挙げられる。例えば、効率的なDNAの形質転換およびトランスフェクションのために、E. coliK-12の細胞のDNAに対する透過性が高まるように受容
細胞を塩化カルシウムで処理する方法が報告されている(Mandel M. and Higa A., Calcium-dependent bacteriophage DNA infection, J. Mol. Biol., 1970, 53:159-162)。特
殊化および/または一般化された形質転換の方法が記載されている(Morse M.L. et al.,
Transduction in Escherichia coli K-12, Genetics, 1956, 41(1):142-156; Miller J.H., Experiments in Molecular Genetics. Cold Spring Harbor, N.Y.: Cold Spring Harbor La. Press, 1972)。宿主微生物へのDNAのランダムおよび/または標的化された
組み込みのための他の方法、例えば、「Mu-driven integration/amplification」(Akhverdyan V.Z. et al., Appl. Microbiol. Biotechnol., 2011, 91:857-871)、「Red/ET-driven integration」または「λRed/ET-mediated integration」(Datsenko K.A. and Wanner B.L., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2000, 97(12):6640-45; Zhang Y., et al., Nature Genet., 1998, 20:123-128)、を適用できる。さらに、所望の遺伝子の多重挿入のためには、Mu駆動の複製的転移(Akhverdyan V.Z. et al., Appl. Microbiol. Biotechnol., 2011, 91:857-871)や所望の遺伝子の増幅をもたらすrecA依存性相同組み換えに基づく化学的に誘導可能な染色体進化(Tyo K.E.J. et al., Nature Biotechnol., 2009, 27:760-765)に加えて、転移、部位特異的および/または相同的なRed/ETを介した組み換え、
および/またはP1を介した一般化形質導入の種々の組み合わせを利用する他の方法(例えば、Minaeva N.I. et al., BMC Biotechnology, 2008, 8:63; Koma D. et al., Appl. Microbiol. Biotechnol., 2012, 93(2):815-829を参照のこと)を利用できる。
細菌種(例えば、P. ananatisおよびE. coliやその他の表1に列挙したもの)に固有のydiJ遺伝子の塩基配列および同遺伝子にコードされるYdiJタンパク質のアミノ酸配列は既に解明されている(上記参照)ので、そのような細菌種に固有の同遺伝子またはその変異体塩基配列は、同細菌種のDNAと、同細菌種に固有のydiJ遺伝子の塩基配列に基づいて調
製したオリゴヌクレオチドプライマーを用いたPCRによる同細菌種からのクローニングに
より、またはydiJ遺伝子を含むDNAを例えばヒドロキシルアミンでin vitro処理する突然
変異法またはydiJ遺伝子を有する細菌種を紫外線(UV)照射もしくはそのような処理に通常用いられるN-メチル-N'-ニトロ-ニトロソグアニジン(NTG)や亜硝酸等の変異剤で処理する突然変異法により、または全長遺伝子構造物として化学合成することにより、取得できる。他の細菌種を含む他の任意の生物に固有のydiJ遺伝子およびその変異体塩基配列も同様に取得できる。
タンパク質または核酸に言及する際の「固有の(native to)」の用語は、タンパク質
または核酸が特定の生物(例えば、哺乳類、植物、昆虫、細菌、またはウイルス等)に固有であることを意味し得る。すなわち、特定の生物に固有のタンパク質または核酸は、それぞれ、当該生物に天然に存在するタンパク質または核酸を意味し得る。特定の生物に固有のタンパク質または核酸は、当該生物から単離でき、当業者に知られた方法により配列解析できる。さらに、タンパク質または核酸が存在する生物からそれぞれ単離されたタンパク質または核酸のアミノ酸配列または塩基配列は容易に決定することができるので、タンパク質または核酸に言及する際の「固有の」の用語は、得られるタンパク質または核酸のアミノ酸配列または塩基配列が当該生物に天然に存在する、天然に発現する、且つ/又は天然に製造されるタンパク質または核酸のアミノ酸配列または塩基配列と同一である限り、任意の手段、例えば、組み換えDNA技術を含む遺伝子工学的手法または化学合成法等、により得られるタンパク質または核酸も意味し得る。「タンパク質」の用語は、限定されるものではないが、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、酵素等のいずれも意味し得る。「核酸」の用語は、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)を意味し得るものであり、限定されるものではないが、特に、プロモーター、アテニュエーター、ターミネーター等を含む発現調節配列、遺伝子、遺伝子間配列、シグナルペプチド、タンパク質のプロ部位、人工アミノ酸配列等をコードする塩基配列のいずれも意味し得る。例えば、遺伝子は、特に、DNAであり得る。アミノ酸配列および塩基配
列ならびに各種生物に固有のそれらのホモログは本明細書に記載されており、これらの例としては、配列番号2に示すアミノ酸配列を有するタンパク質(これは、P. ananatis種の細菌に固有であり得るものであり、配列番号1に示す塩基配列を有する遺伝子にコードさ
れ得る)。
遺伝子(例えば、「非改変遺伝子」)およびタンパク質(例えば、「非改変タンパク質」)について言及する際の「非改変(non-modified)」の用語(これは、「生来(native)」、「天然(natural)」、および「野生型(wild-type)」の用語と代替可能または同等に用いられ得る)は、それぞれ、生物に、具体的には、細菌の非改変株に、天然に存在する、天然に発現する、且つ/又は天然に製造される生来の遺伝子およびタンパク質を意味し得る。そのような生物としては、対応する遺伝子またはタンパク質を有する任意の生物が挙げられ、具体的には、例えば、E. coli W3110株、E. coli MG1655株、P. ananatis
13355株が挙げられる。非改変遺伝子は、非改変タンパク質をコードし得る。
「細菌が遺伝子の発現が弱化するように改変された」の用語は、改変された細菌において遺伝子の発現が弱化するように、細菌が改変されていることを意味し得る。遺伝子の発現は、例えば、同遺伝子の不活化により弱化し得る。
「遺伝子が不活化される」の用語は、改変された遺伝子が、無機ピロフォスファターゼ(inorganic pyrophosphatase)活性を有するタンパク質をコードする遺伝子と比較して
、完全に不活性または機能しないタンパク質をコードすることを意味し得る。改変されたDNA領域は、遺伝子の一部の欠損もしくは遺伝子全体の欠損、遺伝子がコードするタンパ
ク質のアミノ酸置換をもたらす1塩基以上の置換(ミスセンス変異)、終止コドンの導入
(ナンセンス変異)、遺伝子のリーディングフレームシフトをもたらす1塩基または2塩基の欠失、薬剤耐性遺伝子および/もしくは転写終結シグナルの挿入、または発現制御領域(プロモーター、エンハンサー、オペレーター、アテニュエーターと終結シグナル、抗終結シグナル、リボソーム結合部位(RBS)、およびその他の発現制御エレメント、等)の
改変により、自然には遺伝子を発現できなくてよい。遺伝子の不活化は、例えば、紫外線照射またはニトロソグアニジン(N-メチル-N'-ニトロ-N-ニトロソグアニジン)を用いた
変異処理、部位特異的変異導入、相同組み換えを用いた遺伝子破壊、および/または「Red/ET-driven integration」または「λRed/ET-mediated integration」に基づく挿入-欠失変異導入(Yu D. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2000, 97(11):5978-5983; Datsenko K.A. and Wanner B.L., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2000, 97(12):6640-6645;
Zhang Y. et al., Nature Genet., 1998, 20:123-128)等の常法により実施できる。
「細菌が遺伝子の発現が弱化するように改変された」の用語は、改変された細菌が作動可能に遺伝子に連結された領域(これは、プロモーター、エンハンサー、オペレーター、アテニュエーターと終結シグナル、リボソーム結合部位(RBS)、およびその他の発現制
御エレメント、等の遺伝子の発現を制御する配列を含む)であって、非改変株と比較して遺伝子の発現レベルが弱化するように改変されたものを有すること;およびその他の例(例えば、WO95/34672; Carrier T.A. and Keasling J.D., Biotechnol. Prog., 1999, 15:58-64を参照のこと)も意味し得る。遺伝子について言及する際の「作動可能に連結され
た(operably linked)」の用語は、制御領域が、遺伝子の発現(例えば、増強された、
増加した、構成的な、基底の、抗終結された、弱化した、制御解除された、低下した、または抑制された発現)を達成できるように、および/または、遺伝子のmRNAおよび/または遺伝子にコードされるアミノ酸配列(発現産物ともいう)が遺伝子の発現の結果として生産できるように、遺伝子の塩基配列に連結されていることを意味し得る。
「細菌が遺伝子の発現が弱化するように改変された」の用語は、改変された細菌において、遺伝子の発現レベル(すなわち発現量)が非改変株(例えば、野生株または親株)と比較して弱化するように、細菌が改変されていることも意味し得る。遺伝子の発現レベルの低下は、例えば、細胞当たりの遺伝子の発現レベル(これは細胞当たりの遺伝子の平均発現レベルであってよい)の低下として測定され得る。「遺伝子の発現レベル」または「遺伝子の発現量」の用語は、例えば、遺伝子の発現産物の量(例えば、同遺伝子のmRNAの量または同遺伝子にコードされるタンパク質の量)を意味し得る。細菌は、細胞あたりの遺伝子の発現レベルが、例えば、非改変株の50%以下、20%以下、10%以下、5%以下、また
は0%に低下するように改変されてよい。
「細菌が遺伝子の発現が弱化するように改変された」の用語は、改変された細菌において、非改変株と比較して、対応する遺伝子産物(すなわちMetリプレッサー)の総量およ
び/または総活性低下するように、細菌が改変されていることを意味し得る。タンパク質の総量または総活性の低下は、例えば、細胞当たりのタンパク質の量または活性(これは細胞当たりのタンパク質の平均量または平均活性であってよい)の低下として測定され得る。細菌は、細胞あたりのMetリプレッサーの量および/または活性が、例えば、非改変
株の50%以下、20%以下、10%以下、5%以下、または0%に低下するように改変され得る。
遺伝子の発現は、具体的には、例えば、染色体DNA上のプロモーター等の遺伝子の発現
制御配列をより弱いものに置換することによっても弱化させることができる。プロモーターの強度は、RNA合成の開始作用の頻度により定義され得る。プロモーターの強度の評価
法の例は、Goldstein M.A. et al.(Goldstein M.A. and Doi R.H., Prokaryotic promoters in biotechnology. Biotechnol. Annu. Rev., 1, 105-128 (1995))等に記載されて
いる。また、WO0018935 A1に開示されているように、遺伝子のプロモーター領域に1つまたはそれ以上の塩基置換を導入することによりプロモーターを弱くなるように改変することもできる。さらに、シャイン・ダルガルノ(SD)配列、及び/又はSD配列と開始コドンの間のスペーサー、及び/又はリボソーム結合部位中の開始コドンの直ぐ上流および/または下流の配列における数個のヌクレオチドの置換がmRNAの翻訳効率に大きく影響することが知られている。
遺伝子の発現は、具体的には、例えば、遺伝子のコード領域(U.S. Patent No. 5,175,107)もしくは遺伝子発現を制御する領域にトランスポゾンまたは挿入配列(IS)を挿入
することによって、または紫外線照射またはニトロソグアニジン(N-メチル-N'-ニトロ-N-ニトロソグアニジン;NTG)による変異導入等の常法によって、弱化させることもできる。さらに、部位特異的な変異の組み込みは、例えば、λRed/ETを介した組み換え(Datsen
ko K.A. and Wanner B.L., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2000, 97(12):6640-6645)に
基づく公知の染色体編集法により実施できる。
細菌は、本発明の範囲から逸脱することなく、上記のような性質に加えて、様々な栄養要求性、薬物耐性、薬物感受性、薬物依存性等の特定の性質を有することができる。
2.方法
本明細書に記載の方法は、本明細書に記載の細菌を用いてL-アミノ酸を製造する方法を含む。本明細書に記載の細菌を用いてL-アミノ酸を製造する方法は、前記細菌を培地で培養(cultivating(culturingともいう))してL-アミノ酸を培地もしくは該細菌の菌体(「細菌菌体」ともいう)、またはその両者中に生成させ、排出もしくは分泌させ、且つ/又は蓄積させる工程と、培地及び/又は細菌菌体からL-アミノ酸を回収する工程を含み得る。同方法は、さらに、任意で(optionally)、培地及び/又は細菌菌体からL-アミノ酸を精製する工程を含み得る。L-アミノ酸は、上記のような形態で製造され得る。L-アミノ酸は、特に、遊離形態、もしくはその塩、またはそれらの混合物として製造され得る。例えば、L-アミノ酸のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等の塩または両性イオン等の分子内塩が、前記方法により製造され得る。これは、アミノ酸が発酵条件下で、互いに、あるいは無機または有機の酸またはアルカリ性物質等の中和剤と、典型的な酸塩基中和反応により反応して塩を生成し得ることから可能であり、これは当業者に明らかなアミノ酸の化学的特徴である。具体的には、L-システインの一塩酸塩(L-システイン×HCl)またはL-システイン一水和物の一塩酸塩(L-システイン×H2O×HCl)が、前記方法により製造され得る。
細菌の培養、ならびに培地等からのL-アミノ酸の回収および任意で精製は、微生物を使用してL-アミノ酸を製造する従来の発酵法と同様に実施することができる。すなわち、細菌の培養、ならびに培地等からのL-アミノ酸の回収および精製は、当業者に周知の、細菌の培養に適した条件ならびにL-アミノ酸の回収および精製に適した条件を適用することにより実施してよい。
使用される培地は、少なくとも炭素源を含有し、且つ本明細書に記載の細菌が増殖してL-アミノ酸を生産できる限り、特に制限されない。培地は、炭素源、窒素源、硫黄源、リン源、無機イオン、並びにその他の有機及び無機成分を必要に応じて含む典型的な培地等の、合成培地あるいは天然培地でよい。炭素源としては、グルコース、シュクロース、ラクトース、ガラクトース、フルクトース、アラビノース、マルトース、キシロース、トレハロース、リボース、澱粉加水分解物等の糖類、エタノール、グリセロール、マンニトール、ソルビトール等のアルコール、グルコン酸、フマル酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸等の有機酸、および脂肪酸等を使用することができる。窒素源としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機アンモニウム塩、大豆加水分解物等の有機窒素、アンモニアガス、およびアンモニア水等を使用することができる。さらに、ペプトン、酵母エキス、肉エキス、麦芽エキス、およびコーンスティープリカー等も使用することができる。培地は、これらの窒素源の1種またはそれ以上を含むことができ
る。硫黄源としては、硫酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸鉄、硫酸マンガン、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウム、硫化ナトリウム、硫化アンモニウム等が挙げられる。培地は、炭素源、窒素源、及び硫黄源に加えて、リン源を含んでもよい。リン源としては、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、ピロ燐酸等のリン酸ポリマー等を使用することができる。ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ニコチン酸、ニコチンアミド、ビタミンB12等のビタミンや、その他の必要物質、例えばアデニン、RNA等の核酸、アミノ酸、ペプトン、カザミノ酸、酵母エキス等の有機栄養素等を、適当量(痕跡量であってもよい)存在させることができる。これら以外に、必要であれば、少量のリン酸カルシウム、鉄イオン、マンガンイオン等を加えてもよい。その他の有機及び無機成分と
しては、1種の成分を用いてもよく、2種またはそれ以上の成分を組み合わせて用いてもよい。また、生育にアミノ酸等を要求する栄養要求性株を用いる場合、要求される栄養素を培地に補填するのが好ましい。
培養は、L-アミノ酸を製造する方法で使用される細菌の培養に適した条件で実施することができる。例えば、培養は、好気的条件下で16~72時間、または16~24時間実施することができる。培養中の培養温度は、30~45℃、または30~37℃の範囲内に制御することができる。pHは、5~8の間、または6~7.5の間に調節することができる。pHは、無機もしくは有機の酸性またはアルカリ性物質、例えば、尿素、炭酸カルシウム、無機酸、無機アルカリ、またはアンモニアガス、を使用することにより調節することができる。
培養後、培地からL-アミノ酸を回収することができる。具体的には、菌体外に存在するL-アミノ酸を培地から回収することができる。また、培養後、細菌の菌体からL-アミノ酸を回収することができる。具体的には、菌体を破砕し、菌体や菌体破砕懸濁物(細胞デブリともいう)等の固形分を除去して上清を取得し、上清からL-アミノ酸を回収することができる。菌体の破砕は、例えば、高周波音波を用いた超音波破砕等の周知の方法により実施することができる。固形分の除去は、例えば、遠心分離または膜ろ過により実施することができる。培地や上清等からのL-アミノ酸の回収は、例えば、濃縮、晶析、膜処理、イオン交換クロマトグラフィー、フラッシュクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、中圧または高圧の液体クロマトグラフィー、またはそれらの組み合わせ等の慣用の技術により実施することができる。これらの方法は、単独で、あるいは適宜組み合わせて使用してよい。
下記の非限定的な実施例を参照して本発明をより正確に説明する。
実施例1 ydiJ遺伝子の発現を増強したP. ananatis株の構築
P. ananatis SC17株のydiJ遺伝子(配列番号1)のプロモーター領域をλRed依存的組み込みによりPnlp8プロモーターに置換した。この目的のために、P. ananatis SC17(0)株(U.S. patent No. 8383372 B2, VKPM B-9246)をLB液体培地(Sambrook J. and Russell D.W., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (3rded.), Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001)で一晩培養した。その後、培養液1 mLを、終濃度1 mMのイソプロピル
β-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)を含むLB液体培地100 mLに接種し、菌体を32℃で3時間、振盪(250 rpm)培養した。菌体を回収し、10%グリセロールで3回洗浄し
てコンピテントセルを得た。プラスミドDNA pMW-Km-Pnlp8(WO2011043485を参照)を鋳型として、プライマーP1(配列番号5)およびP2(配列番号6)を用いてPCRを行い、ydiJ遺
伝子のプロモーター領域の組み換え配列を両末端に有する増幅DNA断片を得た。PCR条件は以下の通りである:95℃で3分間の変性ステップ;95℃で1分、50℃で30秒、72℃で40秒の2回の第1サイクルのプロファイル;94℃で20秒、54℃で20秒、72℃で90秒の最後の30サ
イクルのプロファイル;72℃で5分の最終ステップ。増幅したDNA断片(約1,6 kbpサイズ
)をアガロースゲル電気泳動で精製し、エレクトロポレーション法でコンピテントセルに導入した。菌体をSOC培地(Sambrook J. and Russell D.W., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (3rd ed.), Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001)で2時間培養
した後、20 mg/Lのカナマイシンを含むLBプレート上に塗布し、34℃で一晩、各コロニー
が可視化されるまで培養した。プライマーP3(配列番号7)およびP4(配列番号8)を用いたPCR解析により、所望の形質転換体を同定した。その結果、P. ananatis SC17(0)-Pnlp8-ydiJ株が得られた。
実施例2 ydiJ遺伝子の発現を増強したP. ananatis株によるL-システインの生産
L-システイン生産におけるydiJ遺伝子の発現増強の効果を試験するために、SC17(0)-
Pnlp8-ydiJ株から染色体DNAを単離し、10 μgをエレクトロポレーションによるP. ananatis EYP197(s)の形質転換に用いた。P. ananatisのL-システイン生産株EYP197(s)は、RU2458981 C2またはWO2012/137689に記載されたようにして構築した。すなわち、P. ananatis EYP197(s)株は、P. ananatis SC17から、cysE5およびyeaS遺伝子を導入し、cysPTWA遺伝子クラスターの生来のプロモーターをPnlp8プロモーターに置換することにより構築し
た。形質転換体を20 mg/Lのカナマイシンを含むLBプレート上に塗布し、34℃で一晩、各
コロニーが可視化されるまで培養した。プライマーP3(配列番号7)およびP4(配列番号8)を用いたPCR解析により、所望の形質転換体を同定した。その結果、P. ananatis EYP Pnlp8-ydiJ株が得られた。
P. ananatis EYP197(s)株およびEYP Pnlp8-ydiJ株をそれぞれLB液体培地を用いて32℃
で18時間培養した。次に、得られた培養液0.2 mLを20×200 mmの試験管に入れた表2に示す発酵培地2 mLに接種し、グルコースが消費されるまで250 rpmの回転式振盪機上で32℃
で24時間培養した。
Figure 0007491314000002
培養後、培地中に蓄積したL-システインの量を、Gaitonde M.K.(Biochem J., 104(2):627-633 (1967))に記載の方法を以下のように一部変更して用いて測定した:各試料150 μLを1 M H2SO4 150 μLと混合し、20℃で5分間インキュベートした後、700 μLのH2O
を混合液に加え、得られた混合液150 μLを新しいバイアルに移し、800 μLのA液(1 M Tris-HCl pH 8.0, 5 mM ジチオスレイトール(DTT))を添加した。得られた混合液を20℃で5分間インキュベートし、13000 rpmで10分間回転させた後、100 μLの混合液を20×200
mmの試験管に移した。次に、400 μLのH2O、500 μLの氷酢酸、および500 μLのB液(0.63 gのニンヒドリン, 10 mLの氷酢酸, 10 mLの36% HCl)を添加し、混合液を沸騰水浴中
で10分間インキュベートした。その後、4.5 mLのエタノールを添加し、OD560を測定した
。システインの濃度は、式:C (Cys, g/L) = 11.3 × OD560を用いて算出した。
8つの独立した試験管での発酵の結果(平均値±標準偏差として)を表3に示す。表3から分かるように、改変株P.ananatis EYP Pnlp8-ydiJは、対照株P.ananatis EYP197(s)
と比較して、より多量のL-システインを蓄積することができた。
Figure 0007491314000003
実施例3:ydiJ遺伝子の発現を増強したP. ananatis株によるL-メチオニンの生産
L-メチオニン生産におけるydiJ遺伝子の発現増強の効果を試験するために、SC17(0)-Pnlp8-ydiJ株(実施例1)の染色体DNAを単離し、10 μgのDNAをエレクトロポレーションによるP. ananatis C3568の形質転換に用いた。P. ananatisのL-メチオニン生産株C3568は、予備実施例に記載されたようにして構築した。形質転換体を20 mg/Lのカナマイシンを含むLBプレート上に塗布し、34℃で一晩、各コロニーが可視化されるまで培養した。プライマーP3(配列番号7)およびP4(配列番号8)を用いたPCR解析により、所望の形質転
換体を同定した。その結果、P. ananatis C3568 Pnlp8-ydiJ株が得られた。
P. ananatis C3568株およびC3568 Pnlp8-ydiJ株をそれぞれ32℃で18時間、LB液体培地
で培養した。その後、得られた培養物0.2 mLを20×200 mm試験管中の表4に示す発酵培地2 mLに接種し、250 rpmの回転式振盪機上で32℃で48時間、グルコースが消費されるまで
培養した。
Figure 0007491314000004
培養後、培地に蓄積したL-メチオニンの量をAgilent 1260 amino-acid analyzerで測定した。
4つの独立した試験管発酵の結果(平均値±標準偏差として)を表5に示す。表5から分かるように、改変株P. ananatis C3568 Pnlp8-ydiJは、親株P. ananatis C3568と比較
して、より多い量のL-メチオニンを蓄積することができた。
Figure 0007491314000005
実施例4 ydiJ遺伝子の発現を増強したE. coli MG1655株の構築
4.1 E. coli MG1655 Ptac-ydiJ (Km)株の構築
E. coli MG1655(ATCC 700926)/pKD46株をLB液体培地で一晩培養する。その後、培養
液1 mLを、終濃度50 mMのイソプロピルアラビノースと50 mg/Lのアンピシリンを含むLB液体培地100 mLに接種し、菌体を37℃で2時間、振盪(250 rpm)培養する。菌体を回収し、氷冷した10%グリセロールで3回洗浄してコンピテントセルを得る。増幅したλattL-KmR-λattR-Ptac断片(後述する実施例4.2)を、Wizard PCR Prep DNA Purification System(Promega)を用いて精製し、エレクトロポレーション法でコンピテントセルに導入す
る。菌体をSOC培地で2時間培養した後、25 mg/Lのカナマイシンを含むL-寒天プレート
上で37℃で18~24時間培養する。出現したコロニーを同じ培地で純化する。次に、染色体上のydiJ遺伝子のプロモーター領域がattL-KmR-attR-Ptac断片で置換されていることを確認するために、プライマーP5(配列番号9)およびP6(配列番号10)を用いてPCR反応を実施する。そうして、E. coli MG1655 Ptac-ydiJ (Km)株を得る。
4.2 λattL-KmR-λattR-Ptac断片の構築
λattL-KmR-λattR-Ptac断片(配列番号11)は、以下のようにして構築する。P. ananatis SC17(0) λattL-KmR-λattR-Ptac-lacZ株(U.S. patent No. 9,051,591 B2)の染色
体を鋳型として、プライマーP7(配列番号12)およびP8(配列番号13)とPrime Star polymerase(Takara Bio Inc.)を用いてPCRを実施する。反応液はキットに添付されている
組成にしたがって調製し、1 kbpあたり98℃10秒、55℃5秒、および72℃1分の30サイクル
でDNAを増幅する。その結果、ydiJ遺伝子のプロモーター領域の組み換え配列と両末端にydiJ遺伝子の隣接領域に相補的な領域を有するλattL-KmR-λattR-Ptac遺伝子断片(配列
番号11)を得る。
実施例5:ydiJ遺伝子の発現を増強したE. coli株によるL-アルギニンの生産
L-アルギニン生産におけるydiJ遺伝子の発現増強の効果を試験するため、MG1655 Ptac-ydiJ (Km)株(実施例4)の染色体からのDNA断片を、E. coliのL-アルギニン生産株382ilvA+にP1トランスダクションにより導入し、E. coli 382ilvA+ Ptac-ydiJ (Km)株を得る。
382ilvA+株は、L-アルギニン生産株382(VKPM B-7926, EP1170358 A1)から、E. coli K-12株の野生型ilvA遺伝子のP1トランスダクションにより得る。382株は、2000年4月10日にRussian National Collection of Industrial Microorganisms(VKPM; 1st Dorozhny
proezd., 1, Moscow 117545, Russian Federation)に受託番号VKPM B-7926で寄託され
、その後2001年5月18日にブダペスト条約に基づく寄託に移管されている。
E. coli 382ilvA+株および382ilvA+ Ptac-ydiJ (Km)株を、それぞれ、37℃で18時間、3
mLの栄養培地中で振盪培養し、得られた培養物0.3 mLを20×200 mm試験管中の2 mLの表
6に示す発酵培地に接種し、回転式振盪機上、32℃で48時間培養する。
培養後、培地に蓄積するL-アルギニンの量を、ブタン-1-オール:酢酸:水=4:1:1(v/v)からなる移動相を使用するペーパークロマトグラフィーで測定する。ニンヒドリン溶液(2%;アセトン中)を可視化試薬として使用する。アルギニンを含むスポットを切り出し、0.5% CdCl2水溶液でL-アルギニンを溶出させ、L-アルギニンの量を540 nmで分光測定する。
Figure 0007491314000006
実施例6:ydiJ遺伝子の発現を増強したE. coli株によるL-シトルリンの生産
L-シトルリン生産におけるydiJ遺伝子の発現増強の効果を試験するため、MG1655 Ptac-ydiJ (Km)株(実施例4)の染色体からのDNA断片を、E. coliのL-シトルリン生産株382ΔargGにP1トランスダクションにより導入し、E. coli 382ΔargG Ptac-ydiJ (Km)株を得る。
382ΔargG株は、「λRed/ET-mediated integration」と呼ばれるDatsenko K.A.とWanner B.L.により最初に開発された方法(Datsenko K.A. and Wanner B.L., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2000, 97(12):6640-6645)によりE. coliのアルギニン生産株382(VKPM B-7926、EP1170358 A1)の染色体上のargG遺伝子を削除することにより得られる。この方法に従い、argG遺伝子と鋳型プラスミド中の抗生物質耐性を与える遺伝子に隣接する領域の両領域に相同なPCRプライマーを構築する。プラスミドpMW118-λattL-cat-λattR(WO05/010175)をPCRの鋳型として使用する。
E. coli 382ΔargG株および382ΔargG Ptac-ydiJ (Km)株を、それぞれ、37℃で18時間
、3 mLの栄養培地中で振盪培養する。その後、得られた培養物0.3 mLをそれぞれ20×200 mm試験管中の2 mLの表7に示す発酵培地に接種し、回転式振盪機上、32℃で48時間培養する。
培養後、培地に蓄積するL-シトルリンの量を、ブタン-1-オール:酢酸:水=4:1:1(v/v)からなる移動相を使用するペーパークロマトグラフィーで測定する。ニンヒドリン溶液(2%;アセトン中)を可視化試薬として使用する。L-シトルリンを含むスポットを切り出し、0.5% CdCl2水溶液でL-シトルリンを溶出させ、L-シトルリンの量を540 nmで分光測定する。
Figure 0007491314000007
実施例7:ydiJ遺伝子の発現を増強したE. coli株によるL-グルタミン酸の生産
L-グルタミン酸生産におけるydiJ遺伝子の発現増強の効果を試験するため、MG1655 Ptac-ydiJ (Km)株(実施例4)の染色体からのDNA断片を、E. coliのL-グルタミン酸生
産株VL334thrC+(EP1172433 A1)にP1トランスダクションにより導入し、E. coli VL334thrC+ Ptac-ydiJ (Km)株を得る。
VL334thrC+株は、2004年12月6日にRussian National Collection of Industrial Microorganisms(VKPM; 1st Dorozhny proezd., 1, Moscow 117545, Russian Federation)に
受託番号VKPM B-8961で寄託され、その後2004年12月8日にブダペスト条約の規定に基づく国際寄託に移管されている。
E. coli VL334thrC+株およびVL334thrC+ Ptac-ydiJ (Km)株を、それぞれ、37℃で18~24時間、L-アガープレートで培養する。その後、1白金耳分の細胞を20×200 mmの試験管中の2 mLの表8に示す発酵培地へ移し、30℃で3日間振盪培養する。
培養後、培地に蓄積するL-グルタミン酸の量を、ブタン-1-オール:酢酸:水=4
:1:1(v/v)からなる移動相を使用するペーパークロマトグラフィーで測定し、ニンヒ
ドリン(アセトン中の1%溶液)で染色し、0.5% CdCl2を含む50%エタノールでL-グルタ
ミン酸を溶出させ、L-グルタミン酸の量を540 nmで測定する。
Figure 0007491314000008
実施例8:ydiJ遺伝子の発現を増強したE. coli株によるL-ヒスチジンの生産
L-ヒスチジン生産におけるydiJ遺伝子の発現増強の効果を試験するため、MG1655 Ptac-ydiJ (Km)株(実施例4)の染色体からのDNA断片を、E. coliのL-ヒスチジン生産株80にP1トランスダクションにより導入し、E. coli 80 Ptac-ydiJ (Km)株を得る。
80株は、Russian Patent No. 2119536 C1に記載されており、1999年10月15日にRussian
National Collection of Industrial Microorganisms(VKPM; 1st Dorozhny proezd., 1, Moscow 117545, Russian Federation)に受託番号VKPM B-7270で寄託され、その後2004年7月12日にブダペスト条約の規定に基づく国際寄託に移管されている。
E. coli 80株および80 Ptac-ydiJ (Km)株を、それぞれ、29℃で6時間、2 mLのL-ブロス中で培養する。その後、得られた培養物0.1 mLを20×200 mmの試験管中の2 mLの表9に示す発酵培地にそれぞれ接種し、回転式振盪機(350 rpm)上、29℃で65時間培養する。
Figure 0007491314000009
培養後、培地に蓄積するL-ヒスチジンの量を薄層クロマトグラフィー(TLC)により
測定する。非蛍光性指示薬(Stock Company Sorbpolymer, Krasnodar, Russian Federation)を含むSorbfilシリカゲルの0.11 mmの層で被覆した10×15 cm TLCプレートを使用す
る。Sorbfilプレートは、プロパン-2-オール:アセトン:25%アンモニア水:水(6:6:1.5:1(v/v))からなる移動相で展開する。ニンヒドリン溶液(2%, w/v;アセトン中)を可視化試薬として使用する。展開後、プレートを乾燥し、Camag TLCスキャナ3を用いて、winCATSソフトウェア(バージョン1.4.2)により520 nmで検出する吸光度モードで走査する。
実施例9:ydiJ遺伝子の発現を増強したE. coli株によるL-ロイシンの生産
L-ロイシン生産におけるydiJ遺伝子の発現増強の効果を試験するため、MG1655 Ptac-ydiJ (Km)株(実施例4)の染色体からのDNA断片を、E. coliのL-ロイシン生産株57(VKPM B-7386, U.S. Patent No. 6,124,121)にP1トランスダクションにより導入し、てE. coli 57 Ptac-ydiJ (Km)株を得る。
57株は、1997年5月19日にRussian National Collection of Industrial Microorganisms(VKPM; 1st Dorozhny proezd., 1, Moscow 117545, Russian Federation)に受託番号VKPM B-7386で寄託されている。
E. coli 57株および57 Ptac-ydiJ (Km)株を、それぞれ、37℃で18~24時間、L-アガ
ープレートで培養する。20×200 mmの試験管中の4%スクロースを含む2 mLのL-ブロス中、回転式振盪機(250 rpm)上、32℃で18時間、各株を生育させ、種素材を得る。その後
、発酵培地に0.2 mL(10%)の種素材を接種する。発酵は、20×200 mmの試験管中の2 mL
の最小発酵培地で行う。菌体は32℃で48~72時間、250 rpmで振盪して生育させる。
培養後、培地に蓄積するL-ロイシンの量を、ブタン-1-オール:酢酸:水=4:1:1(v/v)からなる移動相を使用するペーパークロマトグラフィーで測定する。
Figure 0007491314000010
実施例10:ydiJ遺伝子の発現を増強したE. coli株によるL-リジンの生産
L-リジン生産におけるydiJ遺伝子の発現増強の効果を試験するため、MG1655 Ptac-ydiJ (Km)株(実施例4)の染色体からのDNA断片を、E. coliのL-リジン生産株WC196LC/pCABD2にP1トランスダクションにより導入し、E. coli WC196LC Ptac-ydiJ (Km)/pCABD2株を得る。
E. coliのL-リジン生産株WC196LCは、EP 2083083 A1に記載されたようにして構築す
る。dapA、dapB、lysC、およびddh遺伝子を搭載したL-リジン生産用プラスミドpCABD2
(WO95/16042およびWO01/53459)で常法によりWC196LC株を形質転換し、以てWC196LC/pCABD2株を得る。
プラスミドpCABD2は、L-リジンによるフィードバック阻害が解除される変異を有するE. coli由来のジヒドロジピコリン酸合成酵素(dihydrodipicolinate synthase)をコー
ドする変異型dapA遺伝子、L-リジンによるフィードバック阻害が解除される変異を有するE. coli由来のアスパルトキナーゼIII(aspartokinase III)をコードする変異型lysC
遺伝子、E. coli由来のジヒドロジピコリン酸レダクターゼ(dihydrodipicolinate reductase)をコードするdapB遺伝子、およびBrevibacterium lactofermentum由来ジアミノピ
メリン酸デヒドロゲナーゼ(diaminopimelate dehydrogenase)をコードするddh遺伝子を含む(WO95/16042およびWO01/53459)。
E. coli WC196LC/pCABD2株およびWC196LC Ptac-ydiJ (Km)/pCABD2株を、それぞれ、37
℃で、ストレプトマイシン(20 mg/L)を含むL-培地で培養する。
その後、得られた培養物0.3 mLをそれぞれ20×200 mmの試験管中の2 mLの発酵培地に接種し、回転式振盪機(240 rpm)上、34℃で48時間培養する。発酵培地の組成は、30 mg/Lのストレプトマイシンを添加したこと以外は、実施例5に記載したのと同一である。
培養後、培地に蓄積するL-リジンの量を実施例5に記載したようにして推定する。
実施例11:ydiJ遺伝子の発現を増強したE. coli株によるL-オルニチンの生産
L-オルニチン生産におけるydiJ遺伝子の発現増強の効果を試験するため、MG1655 Ptac-ydiJ (Km)株(実施例4)の染色体からのDNA断片を、E. coliのL-オルニチン生産株382ΔargFΔargIにP1トランスダクションにより導入し、E. coli 382ΔargFΔargI Ptac-ydiJ (Km)株を得る。
382ΔargFΔargI株は、「λRed/ET-mediated integration」と呼ばれる、Datsenko K.A.とWanner B.L.によって最初に開発された方法(Datsenko K.A. and Wanner B.L., Proc.
Natl. Acad. Sci. USA, 2000, 97(12):6640-6645)により、E. coliのアルギニン生産株382(VKPM B-7926, EP1170358 A1)の染色体上のargFおよびargI遺伝子を順次削除することにより得られる。この方法に従い、argFまたはargI遺伝子に隣接する領域と、鋳型プラスミド中の抗生物質耐性を付与する遺伝子に隣接する領域の両領域に相同な2対のPCRプライマーが構築される。プラスミドpMW118-λattL-cat-λattR(WO05/010175)をPCRの鋳型として使用する。
E. coli 382ΔargFΔargI株および382ΔargFΔargI Ptac-ydiJ (Km)株を、それぞれ、37℃で18時間、3 mLの栄養培地中で振盪培養する。その後、得られた培養物0.3 mLをそれ
ぞれ20×200 mm試験管中の2 mLの表11に示す発酵培地に接種し、回転式振盪機上で、32℃で48時間培養する。
培養後、培地に蓄積するL-オルニチンの量を、ブタン-1-オール:酢酸:水=4:1:1(v/v)からなる移動相を使用するペーパークロマトグラフィーで測定する。ニンヒドリン溶液(2%;アセトン中)を可視化試薬として使用する。オルニチンを含むスポットを切り出し、0.5% CdCl2水溶液でオルニチンを溶出させ、オルニチンの量を540 nmで分光測定する。
Figure 0007491314000011
実施例12:ydiJ遺伝子の発現を増強したE. coli株によるL-フェニルアラニンの生産
L-フェニルアラニン生産におけるydiJ遺伝子の発現増強の効果を試験するため、MG1655 Ptac-ydiJ (Km)株(実施例4)の染色体からのDNA断片を、E. coliのL-フェニルア
ラニン生産株AJ12739にP1トランスダクションにより導入し、E. coli AJ12739 Ptac-ydiJ
(Km)株を得る。
AJ12739株は、2001年11月6日にRussian National Collection of Industrial Microorganisms(VKPM; 1st Dorozhny proezd., 1, Moscow 117545, Russian Federation)に受託番号VKPM B-8197で寄託され、その後2002年8月23日にブダペスト条約の規定に基づく国際寄託に移管されている。
E. coli AJ12739株およびAJ12739 Ptac-ydiJ (Km)株を、それぞれ、37℃で18時間栄養
培地中で培養する。その後、得られた培養物0.3 mLを20×200 mmの試験管中の3 mLの表12に示す発酵培地にそれぞれ接種し、回転式振盪機上、37℃で48時間培養する。
培養後、培地に蓄積するL-フェニルアラニンの量を薄層クロマトグラフィー(TLC)
により測定する。非蛍光性指示薬を含むSorbfilシリカゲル(Stock Company Sorbpolymer, Krasnodar, Russian Federation)の0.11 mmの層で被覆した10×15 cm TLCプレートを
使用する。Sorbfilプレートは、プロパン-2-オール:酢酸エチル:25%アンモニア水:水(40:40:7:16(v/v))からなる移動相で展開する。ニンヒドリン溶液(2%;アセトン中)を可視化試薬として使用する。
Figure 0007491314000012
実施例13:ydiJ遺伝子の発現を増強したE. coli株によるL-プロリンの生産
L-プロリン生産におけるydiJ遺伝子の発現増強の効果を試験するため、MG1655 Ptac-ydiJ (Km)株(実施例4)の染色体からのDNA断片を、E. coliのL-プロリン生産株702ilvAにP1トランスダクションにより導入し、E. coli 702ilvA Ptac-ydiJ (Km)株を得る。
702ilvA株は、2000年7月18日にRussian National Collection of Industrial Microorganisms(VKPM; 1st Dorozhny proezd., 1, Moscow 117545, Russian Federation)に受託番号VKPM B-8012で寄託され、その後2001年5月18日にブダペスト条約の規定に基づく国際寄託に移管されている。
E. coli 702ilvA株および702ilvA Ptac-ydiJ (Km)株を、それぞれ、37℃で18~24時間
、L-アガープレートで培養する。その後、これらの株を実施例7(L-グルタミン酸の生産)と同様の条件下でそれぞれ培養する。
実施例14:ydiJ遺伝子の発現を増強したE. coli株によるL-トリプトファンの生産
L-トリプトファン生産におけるydiJ遺伝子の発現増強の効果を試験するため、MG1655
Ptac-ydiJ (Km)株(実施例4)の染色体からのDNA断片を、E. coliのL-トリプトファ
ン生産株SV164(pGH5)にP1トランスダクションにより導入し、E. coli SV164(pGH5) Ptac-ydiJ (Km)株を得る。
SV164(pGH5)株は、E. coli SV164株にプラスミドpGH5を導入することにより得られた株である。SV164株は、トリプトファンによるフィードバック阻害を受けないアントラニレ
ートシンターゼ(anthranilate synthase)をコードするtrpEアレルを有する。SV164株は、E. coli YMC9株(ATCC 33927)のtrpE遺伝子に変異を導入することにより得られた株である。YMC9株は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(P.O. Box 1549, Manassas, VA 20108, United States of America)から入手可能である。プラスミドpGH5は
、セリンによるフィードバック阻害を受けないホスホグリセレートデヒドロゲナーゼ(phosphoglycerate dehydrogenase)をコードする変異型serA遺伝子を含む。SV164(pGH5)株
については、米国特許第6,180,373 B1号あるいはEP0662143 B1に詳細に記載されている。
E. coli SV164(pGH5)株およびSV164(pGH5) Ptac-ydiJ (Km)株を、それぞれ、37℃で18
時間、テトラサイクリン(20 mg/L、pGH5プラスミドのマーカー)を含む3 mLの栄養培地
中で振盪培養する。その後、得られた培養物0.3 mLを20×200 mmの試験管中のテトラサ
イクリン(20 mg/L)を含む3 mLの発酵培地にそれぞれ接種し、250 rpmの回転式振盪機上、37℃で48時間培養する。
培養後、培地に蓄積するL-トリプトファンの量を実施例12(L-フェニルアラニンの生産)に記載したようにしてTLCにより測定する。発酵培地成分を表13に示す。発酵
培地成分は表に示すそれぞれの群(A、B、C、D、E、F、G、およびH)で別々に滅菌し、滅菌中の好ましくない相互作用を回避する。
Figure 0007491314000013
実施例15: ydiJ遺伝子の発現を増強したE. coli株によるL-バリン生産
L-バリン生産におけるydiJ遺伝子の発現増強の効果を試験するため、MG1655 Ptac-ydiJ (Km)株(実施例4)の染色体からのDNA断片を、E. coliのL-バリン生産株H81にP1トランスダクションにより導入し、E. coli H81 Ptac-ydiJ (Km)株を得る。
H81株は、2001年1月30日にRussian National Collection of Industrial Microorganisms(VKPM; 1st Dorozhny proezd., 1, Moscow 117545, Russian Federation)に受託番号VKPM B-8066で寄託され、2002年2月1日にブダペスト条約の規定に基づく国際寄託に移管
されている。
E. coli H81株およびH81 Ptac-ydiJ (Km)株を、それぞれ、37℃で18時間、栄養ブロス
中で培養する。得られた培養物0.1 mLをそれぞれ20×200 mm試験管中の2 mLの表14に示す発酵培地に接種し、回転式振盪機(250 rpm)上、32℃で72時間培養する。
培養後、培地に蓄積したL-バリンの量をTLCで測定する。蛍光指示薬を含まないSorbfilシリカゲル(Stock Company Sorbpolymer, Krasnodar, Russian Federation)の0.11 mmの層で被覆した10×15 cm TLCプレートを使用する。Sorbfilプレートは、プロパン-2
-オール:酢酸エチル:25%アンモニア水:水(40:40:7:16(v/v))からなる移動相
で展開する。ニンヒドリン溶液(2%;アセトン中)を可視化試薬として使用する。
Figure 0007491314000014
実施例16:ydiJ遺伝子の発現を増強したE. coli株によるL-スレオニンの生産
L-スレオニン生産におけるydiJ遺伝子の発現増強の効果を試験するため、MG1655 Ptac-ydiJ (Km)株(実施例4)の染色体からのDNA断片を、E. coliのL-スレオニン生産株B-3996ΔtdhにP1トランスダクションにより導入し、E. coli B-3996Δtdh Ptac-ydiJ (Km)株を得る。
B-3996Δtdh株は、E. coli B-3996(U.S. Patent Nos. 5,175,107および5,705,371)の染色体上のtdh遺伝子をλRed/ET-mediated integration法(Datsenko K.A. and Wanner B.L., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2000, 97(12):6640-6645)で欠失することにより得
る。
E. coli B-3996ΔtdhおよびB-3996Δtdh Ptac-ydiJ (Km)を、それぞれ、20×200 mmの
試験管中の4% (w/w)グルコースを添加した2 mLのL-ブロス中、32℃で18時間培養する。その後、得られた培養物0.2 mLをそれぞれ20×200 mm試験管中の2 mLの表15に示す発酵培地に接種し、回転式振盪機(250 rpm)上、32℃で65時間培養する。
Figure 0007491314000015
培養後、培地に蓄積するL-スレオニンの量を、以下の移動相:ブタノール:酢酸:水=4:1:1(v/v)を使用するペーパークロマトグラフィーで測定できる。ニンヒドリン溶液(2%;アセトン中)を可視化試薬として使用する。展開後、プレートを乾燥し、Camag TLCスキャナ3を用いて、winCATSソフトウェア(バージョン1.4.2)により520 nmで検出する吸光度モードで走査する。
予備実施例 P. ananatisのL-メチオニン生産株C3568の構築
1. P. ananatis SC17(0)λattL-kanR-λattR-Pnlp8sd22-cysM株の構築
cysM遺伝子(配列番号14)のプロモーター領域がカセットλattL-kanR-λattR-Pnlp8sd22で置換されたP. ananatis SC17(0)λattL-kanR-λattR-Pnlp8sd22-cysM株を、λRed依
存的組み込みにより構築した。この目的のために、P. ananatis SC17(0)株(U.S. Patent
No. 8383372 B2, VKPM B-9246)をLB液体培地で一晩培養した。その後、培養液1 mLを、終濃度1 mMのIPTGを含むLB液体培地100 mLに接種し、菌体を32℃で3時間、振盪(250 rpm)培養した。菌体を回収し、10%グリセロールで3回洗浄してコンピテントセルを得た。
プライマーP9(配列番号15)およびP10(配列番号16)を用い、pMW118-attL-kan-attR-pnlp8sd22プラスミド(配列番号17)を鋳型としてPCRを行い、cysM遺伝子のプロモーター領域の組み換え配列を両末端に有するλattL-kanR-λattR-Pnlp8sd22の増幅DNA断片を得た
。得られたDNA断片を、Wizard PCR Prep DNA Purification System(Promega)を用いて
精製し、エレクトロポレーション法でコンピテントセルに導入した。菌体をSOC培地で2時間培養した後、35 mg/Lのカナマイシンを含むLBプレート上に塗布し、34℃で16時間培養
した。出現したコロニーを同じ培地で純化した。次に、染色体上のcysM遺伝子のプロモーター領域がλattL-kanR-λattR-Pnlp8sd22カセットで置換されていることを確認するため
に、プライマーP11(配列番号18)およびP12(配列番号19)を用いてPCR解析(TaKaRa Speed Star(R);92℃10秒、56℃10秒、72℃60秒を40サイクル)を実施した。その結果、P. ananatis SC17(0)λattL-kanR-λattR-Pnlp8sd22-cysM株(略称:C2338)が得られた。
2. P. ananatis C2597株(SC17(0)ΔmdeA::λattL-kanR-λattR-Pnlp8sd22-cysM)の
構築
サイレント遺伝子mdeA(配列番号20)をカセットλattL-kanR-λattR-Pnlp8sd22-cysM
で置換したP. ananatis SC17(0)ΔmdeA::λattL-kanR-λattR-Pnlp8sd22-cysM株を、λRed依存的組み込みにより構築した。この目的のために、P. ananatis SC17(0)株をLB液体培地で一晩培養した。その後、培養液1 mLを、終濃度1 mMのIPTGを含むLB液体培地100 mLに接種し、菌体を32℃で3時間、振盪(250 rpm)培養した。菌体を回収し、10%グリセロールで3回洗浄してコンピテントセルを得た。プライマーP13(配列番号21)およびP14(配
列番号22)を用い、C2338株(予備実施例1)から単離した染色体を鋳型としてPCRを行い、mdeA遺伝子の組み換え配列を両末端に有するλattL-kanR-λattR-Pnlp8sd22-cysMの増
幅DNA断片を得た。得られたDNA断片を、Wizard PCR Prep DNA Purification System(Promega)を用いて精製し、エレクトロポレーション法でコンピテントセルに導入した。菌体をSOC培地で2時間培養した後、35 mg/Lのカナマイシンを含むLBプレート上に塗布し、34
℃で16時間培養した。出現したコロニーを同じ培地で純化した。次に、染色体上のmdeA遺伝子がλattL-kanR-λattR-Pnlp8sd22-cysMカセットで置換されていることを確認するた
めに、プライマーP15(配列番号23)およびP16(配列番号24)を用いてPCR解析(TaKaRa Speed Star(R);92℃10秒、56℃10秒、72℃60秒を40サイクル)を実施した。その結果、P. ananatis SC17(0)ΔmdeA::λattL-kanR-λattR-Pnlp8sd22-cysM株(略称:C2597)が得られた。
3. P. ananatis C2603株(SC17ΔmdeA::λattL-kanR-λattR-Pnlp8sd22-cysM)の構築
C2597株(SC17(0) ΔmdeA::λattL-kanR-λattR-Pnlp8sd22-cysM)から、EdgeBio PurElute Bacterial Genomic kitを製造元の指示の通りに用いて染色体DNAを単離した。得ら
れた染色体DNAを、P. ananatis SC17株(FERM BP-11091)の形質転換に用いた。この目的のために、P. ananatis SC17株をLB液体培地で一晩培養した。その後、培養液1 mLをLB液体培地100 mLに接種し、菌体を32℃で2時間、振盪(250 rpm)培養した。菌体を回収し
、10%グリセロールで3回洗浄してコンピテントセルを得た。C2597株(予備実施例2)から単離した染色体DNAをエレクトロポレーション法でコンピテントセルに導入した。菌体
をSOC培地で2時間培養した後、35 mg/Lのカナマイシンを含むLBプレート上に塗布し、34
℃で16時間培養した。出現したコロニーを同じ培地で純化した。次に、染色体上のmdeA遺伝子の置換を確認するために、予備実施例2に記載したようにしてPCR解析を実施した。
その結果、P. ananatis SC17ΔmdeA::λattL-kanR-λattR-Pnlp8sd22-cysM株(略称:C2603)が得られた。
4. C2603株(SC17ΔmdeA::λattL-kanR-λattR-Pnlp8sd22-cysM)からのkan遺伝子の
欠失
RSF(TcR)-int-xisプラスミド(US20100297716 A1)を用いてC2603株からカナマイシン
耐性遺伝子(kan)を欠失させた。RSF(TcR)-int-xisはエレクトロポレーション法によりC2603株に導入し、テトラサイクリン(15 mg/L)を含むLB培地に菌体を塗布して30℃で培
養し、C2603/RSF(TcR)-int-xis株を得た。
得られたプラスミド保有株を、テトラサイクリン(15 mg/L)および1 mM IPTGを含むLB培地で純化し、シングルコロニーを得た。次に、50 mg/Lのカナマイシンを含む培地上に
シングルコロニーを塗布し、37℃で一晩、振盪(250 rpm)培養した。カナマイシン感受
性株を、RSF(TcR)-int-xisプラスミドを同株から除去するために、10%スクロース(重量比)と1 mM IPTGを含むLB培地上に塗布し、37℃で一晩培養した。テトラサイクリン感受
性のコロニーを選択し、対応する株をC2614とした。
5. P. ananatis SC17(0)ΔmetJ::λattL-catR-λattR株の構築
metJ遺伝子(配列番号25)を欠損したP. ananatis SC17(0)ΔmetJ::λattL-catR-λattR株を、λRed依存的組み込みにより構築した。この目的のために、P. ananatis SC17(0)
株をLB液体培地で一晩培養した。その後、培養液1 mLを、終濃度1 mMのIPTGを含むLB液体培地100 mLに接種し、菌体を32℃で3時間、振盪(250 rpm)培養した。菌体を回収し、10%グリセロールで3回洗浄してコンピテントセルを得た。プライマーP17(配列番号26)およびP18(配列番号27)を用い、pMW118-attL-cat-attRプラスミド(Minaeva N.I. et al., BMC Biotechnol., 2008, 8:63)を鋳型としてPCRを行い、metJ遺伝子の組み換え配列を両末端に有するλattL-catR-λattRの増幅DNA断片を得た。得られたDNA断片を、Wizard PCR Prep DNA Purification System(Promega)を用いて精製し、エレクトロポレーション法でコンピテントセルに導入した。菌体をSOC培地で2時間培養した後、35 mg/Lのクロラ
ムフェニコールを含むLBプレート上に塗布し、34℃で16時間培養した。出現したコロニーを同じ培地で純化した。次に、染色体上のmetJ遺伝子がλattL-catR-λattRカセットで置換されていることを確認するために、プライマーP19(配列番号28)およびP20(配列番号29)を用いてPCR解析(TaKaRa Speed Star(R);92℃10秒、56℃10秒、72℃60秒を40サイ
クル)を実施した。その結果、P. ananatis SC17(0)ΔmetJ::λattL-catR-λattR株(略
称:C2607)が得られた。
6. P. ananatis C2634株(C2614ΔmetJ::λattL-catR-λattR)の構築
C2607株(SC17(0)ΔmetJ::λattL-catR-λattR)から、EdgeBio PurElute Bacterial Genomic kitを製造元の指示の通りに用いて染色体DNAを単離した。得られた染色体DNAを、C2614株(予備実施例4)の形質転換に用いた。この目的のために、C2614株をLB液体培地で一晩培養した。その後、培養液1 mLをLB液体培地100 mLに接種し、菌体を32℃で2時間、振盪(250 rpm)培養した。菌体を回収し、10%グリセロールで3回洗浄してコンピテントセルを得た。C2607株(予備実施例5)から単離した染色体DNAをエレクトロポレーション法でコンピテントセルに導入した。菌体をSOC培地で2時間培養した後、35 mg/Lのクロ
ラムフェニコールを含むLBプレート上に塗布し、34℃で16時間培養した。出現したコロニーを同じ培地で純化した。次に、染色体上のmetJ遺伝子の置換を確認するために、予備実施例5に記載したようにしてPCR解析を実施した。その結果、P. ananatis C2614ΔmetJ::λattL-catR-λattR株(略称:C2634)が得られた。
7. P. ananatis C2605株(SC17(0)attL-kanR-attR-Ptac71φ10-metA)の構築
metA遺伝子(配列番号30)のプロモーター領域がカセットλattL-kanR-λattR-Ptac71
φ10で置換されたP. ananatis SC17(0)λattL-kanR-λattR-Ptac71φ10-metA株を、λRed依存的組み込みにより構築した。この目的のために、P. ananatis SC17(0)株をLB液体培
地で一晩培養した。その後、培養液1 mLを、終濃度1 mMのIPTGを含むLB液体培地100 mLに接種し、菌体を32℃で3時間、振盪(250 rpm)培養した。菌体を回収し、10%グリセロールで3回洗浄してコンピテントセルを得た。プライマーP21(配列番号31)およびP22(配
列番号32)を用い、pMW118-attL-kan-attR-Ptac71φ10プラスミド(配列番号33)を鋳型
としてPCRを行い、metA遺伝子のプロモーター領域の組み換え配列を両末端に有するλattL-kanR-λattR-Ptac71φ10の増幅DNA断片を得た。得られたDNA断片を、Wizard PCR Prep DNA Purification System(Promega)を用いて精製し、エレクトロポレーション法でコンピテントセルに導入した。菌体をSOC培地で2時間培養した後、35 mg/Lのカナマイシンを
含むLBプレート上に塗布し、34℃で16時間培養した。出現したコロニーを同じ培地で純化した。次に、SC17(0)株の染色体上のmetA遺伝子のプロモーター領域がλattL-kanR-λattR-Ptac71φ10カセットで置換されていることを確認するために、プライマーP23(配列番
号34)およびP24(配列番号35)を用いてPCR解析(TaKaRa Speed Star(R);92℃10秒、56℃10秒、72℃60秒を40サイクル)を実施した。その結果、P. ananatis SC17(0)λattL-ka
nR-λattR-Ptac71φ10-metA株(略称:C2605)が得られた。
8. P. ananatis C2611株(SC17λattL-kanR-λattR-Ptac71φ10-metA)の構築
C2605株(SC17(0)λattL-kanR-λattR-Ptac71φ10-metA)(予備実施例7)から、EdgeBio PurElute Bacterial Genomic kitを製造元の指示の通りに用いて染色体DNAを単離し
た。得られた染色体DNAを、SC17株の形質転換に用いた。この目的のために、P. ananatis
SC17株をLB液体培地で一晩培養した。その後、培養液1 mLをLB液体培地100 mLに接種し
、菌体を32℃で2時間、振盪(250 rpm)培養した。菌体を回収し、10%グリセロールで3回洗浄してコンピテントセルを得た。C2605株から単離した染色体DNAをエレクトロポレーション法でコンピテントセルに導入した。菌体をSOC培地で2時間培養した後、35 mg/Lの
カナマイシンを含むLBプレート上に塗布し、34℃で16時間培養した。出現したコロニーを同じ培地で純化した。次に、染色体上のmetA遺伝子のプロモーター領域の置換を確認するために、予備実施例7に記載したようにしてPCR解析を実施した。その結果、P. ananatis
SC17λattL-kanR-λattR-Ptac71φ10-metA株(略称:C2611)が得られた。
9. P. ananatis C2619株(C2611ΔmetJ::λattL-catR-λattR)の構築
C2607株(SC17(0)ΔmetJ::λattL-catR-λattR)(予備実施例5)から、EdgeBio PurElute Bacterial Genomic kitを製造元の指示の通りに用いて染色体DNAを単離した。得ら
れた染色体DNAを、C2611株(予備実施例8)の形質転換に用いた。この目的のために、C2611株をLB液体培地で一晩培養した。その後、培養液1 mLをLB液体培地100 mLに接種し、
菌体を32℃で2時間、振盪(250 rpm)培養した。菌体を回収し、10%グリセロールで3回洗浄してコンピテントセルを得た。C2607株から単離した染色体DNAをエレクトロポレーション法でコンピテントセルに導入した。菌体をSOC培地で2時間培養した後、35 mg/Lのク
ロラムフェニコールを含むLBプレート上に塗布し、34℃で16時間培養した。出現したコロニーを同じ培地で純化した。次に、染色体上のmetJ遺伝子の置換を確認するために、予備実施例5に記載したようにしてPCR解析を実施した。その結果、P. ananatis C2611ΔmetJ::λattL-catR-λattR株(略称:C2619)が得られた。
10. フィードバック耐性型MetAをコードするmetA遺伝子の変異型アレルを有するP. ananatis株の選抜
C2619株(SC17λattL-kanR-λattR-Ptac71φ10-metA ΔmetJ::λattL-catR-λattR)の菌体を、LB液体培地を入れた50 mLフラスコにOD600が0.05になるように接種し、34℃で2
時間、通気(250 rpm)培養した。OD600が0.25となった同株の対数増殖期の細胞培養物をN-メチル-N'-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(NTG)(終濃度25 mg/L)で20分間処理した
。得られた培養物を遠心分離し、新鮮なLB液体培地で2回洗浄した後、グルコース(0.2%)とノルロイシン(600 g/L)を含有するM9寒天プレートに播種した。得られた変異株に
ついて、L-メチオニンの生産能を調べた。L-メチオニン産生能の最も高い株を選択し、その株のmetA遺伝子の塩基配列を決定した。配列解析により、metA遺伝子において、野生型MetAのアミノ酸配列(配列番号36)における34位のアルギニン(Arg)残基のシステ
イン残基への置換(R34C変異)をもたらす変異が見出された。R34C変異を有する変異型MetAタンパク質のアミノ酸配列を配列番号38に、変異型MetAタンパク質をコードする変異型metA遺伝子の塩基配列を配列番号37に示す。このようにして、P. ananatis SC17λattL-kanR-λattR-Ptac71φ10-metA(R34C)ΔmetJ::λattL-catR-λattR株(略称:C2664)を構
築した。
11. P. ananatis C2669株(C2634λattL-kanR-λattR-Ptac71φ10-metA(R34C))の構築
C2664株(SC17λattL-kanR-λattR-Ptac71φ10-metA(R34C)ΔmetJ::λattL-catR-λattR)から、EdgeBio PurElute Bacterial Genomic kitを製造元の指示の通りに用いて染色
体DNAを単離した。得られた染色体DNAを、C2634株(予備実施例6)の形質転換に用いた
。この目的のために、P. ananatis C2634株をLB液体培地で一晩培養した。その後、培養
液1 mLをLB液体培地100 mLに接種し、菌体を32℃で2時間、振盪(250 rpm)培養した。
菌体を回収し、10%グリセロールで3回洗浄してコンピテントセルを得た。C2664株から単離した染色体DNAをエレクトロポレーション法でコンピテントセルに導入した。菌体をSOC培地で2時間培養した後、35 mg/Lのカナマイシンを含むLBプレート上に塗布し、34℃で16時間培養した。出現したコロニーを同じ培地で純化した。次に、染色体上のmetA遺伝子のプロモーター領域の置換を確認するために、予備実施例7に記載したようにしてPCR解析
を実施した。その結果、P. ananatis C2634λattL-kanR-λattR-Ptac71φ10-metA(R34C)
株(略称:C2669)が得られた。
12. C2669株(C2614ΔmetJ::λattL-catR-λattR λattL-kanR-λattR-Ptac71φ10-metA(R34C))からのkanおよびcat遺伝子の欠失
RSF(TcR)-int-xisプラスミドを用いてC2669株(予備実施例11)からカナマイシンお
よびクロラムフェニコール耐性遺伝子(kanおよびcatに相当)を欠失させた。RSF(TcR)-int-xisはエレクトロポレーション法によりC2669株(予備実施例11)に導入し、テトラ
サイクリン(15 mg/L)を含むLB培地に菌体を塗布して30℃で培養し、C2669/RSF(TcR)-int-xis株を得た。
得られたプラスミド保有株を、テトラサイクリン(15 mg/L)および1 mM IPTGを含むLB培地で純化し、シングルコロニーを得た。次に、50 mg/Lのカナマイシンと35 mg/Lのクロラムフェニコールを含む培地上にシングルコロニーを塗布し、37℃で一晩、振盪(250 rpm)培養した。カナマイシンとクロラムフェニコールの両方に感受性の株を、RSF(TcR)-int-xisプラスミドを同株から除去するために、10%スクロース(重量比)と1 mM IPTGを含むLB培地上に塗布し、37℃で一晩培養した。テトラサイクリン感受性のコロニーを選択し、対応する株をC2691とした。
13. P. ananatis C3208株(SC17(0)λattL-catR-λattR-Ptac71φ10-C)の構築
PAJ_RS05335遺伝子(配列番号39;略称:C遺伝子)のプロモーター領域がカセットλattL-catR-λattR-Ptac71φ10で置換されたP. ananatis SC17(0)λattL-catR-λattR-Ptac71φ10-C株を、λRed依存的組み込みにより構築した。この目的のために、P. ananatis SC17(0)株をLB液体培地で一晩培養した。その後、培養液1 mLを、終濃度1 mMのIPTGを含むLB液体培地100 mLに接種し、菌体を32℃で3時間、振盪(250 rpm)培養した。菌体を回収
し、10%グリセロールで3回洗浄してコンピテントセルを得た。プライマーP25(配列番号41)およびP26(配列番号42)を用い、pMW118-attL-cat-attR-Ptac71φ10プラスミド(配列番号43)を鋳型としてPCRを行い、C遺伝子のプロモーター領域の組み換え配列を両末端に有するλattL-catR-λattR-Ptac71φ10の増幅DNA断片を得た。得られたDNA断片を、Wizard PCR Prep DNA Purification System(Promega)を用いて精製し、エレクトロポレー
ション法でコンピテントセルに導入した。菌体をSOC培地で2時間培養した後、35 mg/Lの
クロラムフェニコールを含むLBプレート上に塗布し、34℃で16時間培養した。出現したコロニーを同じ培地で純化した。次に、SC17(0)株の染色体上のC遺伝子のプロモーター領域がλattL-catR-λattR-Ptac71φ10カセットで置換されていることを確認するために、プ
ライマーP27(配列番号44)およびP28(配列番号45)を用いてPCR解析(TaKaRa Speed Star(R);92℃10秒、56℃10秒、72℃60秒を40サイクル)を実施した。その結果、P. ananatis SC17(0)λattL-catR-λattR-Ptac71φ10-C株(略称:C3208)が得られた。
14. C3293株(SC17(0)ΔybhK::λattL-catR-λattR-Ptac71φ10-CE2)の構築
サイレント遺伝子ybhK(配列番号46)をカセットλattL-catR-λattR-Ptac71φ10-CE2
(これは、Ptac71φ10プロモーターの制御下にPAJ_RS05335遺伝子(配列番号39;略称:C遺伝子)とPAJ_RS05340遺伝子(配列番号40;略称:E2遺伝子)を含む)で置換したP. ananatis ΔybhK::λattL-catR-λattR-Ptac71φ10-CE2株を、λRed依存的組み込みにより
構築した。この目的のために、P. ananatis SC17(0)株をLB液体培地で一晩培養した。そ
の後、培養液1 mLを、終濃度1 mMのIPTGを含むLB液体培地100 mLに接種し、菌体を32℃で3時間、振盪(250 rpm)培養した。菌体を回収し、10%グリセロールで3回洗浄してコン
ピテントセルを得た。プライマーP29(配列番号47)およびP30(配列番号48)を用い、C3208株(予備実施例13)から単離した染色体を鋳型としてPCRを行い、ybhK遺伝子の組み換え配列を両末端に有するλattL-catR-λattR-Ptac71φ10-CE2の増幅DNA断片を得た。得られたDNA断片を、Wizard PCR Prep DNA Purification System(Promega)を用いて精製
し、エレクトロポレーション法でコンピテントセルに導入した。菌体をSOC培地で2時間培養した後、35 mg/Lのカナマイシンを含むLBプレート上に塗布し、34℃で16時間培養した
。出現したコロニーを同じ培地で純化した。次に、染色体上のybhK遺伝子がλattL-catR-λattR-Ptac71φ10-CE2カセットで置換されていることを確認するために、プライマーP31(配列番号49)およびP32(配列番号50)を用いてPCR解析(TaKaRa Speed Star(R);92℃10秒、56℃10秒、72℃60秒を40サイクル)を実施した。その結果、P. ananatis SC17(0)
ΔybhK::λattL-catR-λattR-Ptac71φ10-CE2株(略称:C3293)が得られた。
15. C3568株(C2691ΔybhK::λattL-catR-λattR-Ptac71φ10-CE2)の構築
C3293株(SC17(0)ΔybhK::λattL-catR-λattR-Ptac71φ10-CE2)から、EdgeBio PurElute Bacterial Genomic kitを製造元の指示の通りに用いて染色体DNAを単離した。得られた染色体DNAを、C2691株の形質転換に用いた。この目的のために、C2691株(予備実施例
12)をLB液体培地で一晩培養した。その後、培養液1 mLをLB液体培地100 mLに接種し、菌体を32℃で2時間、振盪(250 rpm)培養した。菌体を回収し、10%グリセロールで3回洗浄してコンピテントセルを得た。C3293株(予備実施例14)から単離した染色体DNAをエレクトロポレーション法でコンピテントセルに導入した。菌体をSOC培地で2時間培養した後、35 mg/Lのカナマイシンを含むLBプレート上に塗布し、34℃で16時間培養した。出
現したコロニーを同じ培地で純化した。次に、染色体上のybhK遺伝子の置換を確認するために、予備実施例14に記載したようにしてPCR解析を実施した。その結果、P. ananatis
C2691ΔybhK::λattL-catR-λattR-Ptac71φ10-CE2株(略称:C3568)が得られた。
本発明を例示的な態様を参照して詳細に説明したが、本発明の範囲から逸脱することなく種々の変更や等価物の採用が可能であることは当業者に明らかであろう。
本発明の方法は、細菌の発酵によりL-アミノ酸を製造するのに有用である。

Claims (3)

  1. L-アミノ酸を製造する方法であって、
    (i)腸内細菌科(Enterobacteriaceae)に属するL-アミノ酸生産細菌を培地で培養し
    て培地もしくは該細菌の菌体、またはその両者中にL-アミノ酸を生産および蓄積させること、および
    (ii)培地もしくは菌体、またはその両者からL-アミノ酸を回収すること
    を含み、
    前記細菌が、ydiJ遺伝子を過剰発現するように改変されており
    前記ydiJ遺伝子が、下記からなる群より選択され:
    (A)配列番号1に示す塩基配列を含む遺伝子;
    (B)配列番号2に示すアミノ酸配列を含むタンパク質をコードする遺伝子;
    (C)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、および/または付加を含むアミノ酸配列を含むタンパク質をコードする遺伝子である、遺伝子;
    (D)配列番号2に示すアミノ酸配列全体に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列
    を含むタンパク質をコードする遺伝子である、遺伝子;および
    (E)配列番号1の変異体塩基配列を含む遺伝子であって、該変異体塩基配列が遺伝暗号の縮重によるものである、遺伝子;
    前記細菌が、パントエア(Pantoea)属に属する細菌であり、
    前記L-アミノ酸が、L-システイン、L-メチオニン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、方法。
  2. 前記ydiJ遺伝子が、ydiJ遺伝子を導入すること、ydiJ遺伝子のコピー数を増加させること、および/またはydiJ遺伝子の発現制御領域を改変することにより過剰発現し、以て該遺伝子の発現が非改変細菌と比較して増強されている、請求項1に記載の方法。
  3. 前記細菌が、パントエア・アナナティス(Pantoea ananatis)である、請求項1または2に記載の方法。
JP2021549564A 2019-02-22 2020-02-21 ydiJ遺伝子を過剰発現する腸内細菌科に属する細菌を用いたL-アミノ酸の製造方法 Active JP7491314B2 (ja)

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