JP7472699B2 - 赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収微粒子分散体および赤外線吸収透明基材 - Google Patents

赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収微粒子分散体および赤外線吸収透明基材 Download PDF

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Description

本発明は、赤外線吸収微粒子分散液、赤外線吸収微粒子分散体および赤外線吸収透明基材に関する。
良好な可視光透過率を有し透明性を保ちながら日射透過率を低下させる日射遮蔽技術として、これまで様々な技術が提案されてきた。なかでも、導電性微粒子、導電性微粒子の分散体、および、合わせ透明基材を用いた日射遮蔽技術は、その他の技術と比較して日射遮蔽特性に優れ低コストであり電波透過性があり、さらに耐候性が高い等のメリットがある。
例えば特許文献1には、酸化錫微粉末を分散状態で含有させた透明樹脂や、酸化錫微粉末を分散状態で含有させた透明樹脂をシートまたはフィルムに成形したものを、透明合成樹脂基材に積層してなる赤外線吸収合成樹脂成形品が提案されている。
また例えば特許文献2には、少なくとも2枚の対向する板ガラスの間に、Sn、Ti、Si、Zn、Zr、Fe、Al、Cr、Co、Ce、In、Ni、Ag、Cu、Pt、Mn、Ta、W、V、Moといった金属、当該金属の酸化物、当該金属の窒化物、当該金属の硫化物、当該金属へのSbやFのドープ物、または、これらの混合物を分散させた中間膜を挟み込んだ合わせガラスが提案されている。
また、出願人は特許文献3にて、窒化チタン微粒子、ホウ化ランタン微粒子のうち少なくとも1種を分散した選択透過膜用塗布液や選択透過膜を開示している。
しかし、特許文献1~3に開示されている日射遮蔽構造体には、いずれも高い可視光透過率が求められたときの日射遮蔽特性が十分でないという問題点が存在した。
そこで出願人は、特許文献4にて、特許文献1~3に開示されている赤外線吸収合成樹脂成形体等の日射遮蔽構造体と比較して日射遮蔽特性が優れた赤外線遮蔽微粒子吸収体を開示している。
具体的には、赤外線吸収微粒子が媒体中に分散してなる赤外線遮蔽材料微粒子分散体であって、前記赤外線遮蔽材料微粒子が、一般式M(但し、元素Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物微粒子を含有し、当該複合タングステン酸化物微粒子が六方晶、正方晶、または立方晶の結晶構造を有する微粒子のいずれか1種類以上を含み、前記赤外線遮蔽材料微粒子の粒子径が1nm以上800nm以下であることを特徴とする赤外線遮蔽材料微粒子分散体を開示した。
特許文献4に開示される微粒子によれば、分散体に適用したときに、高い日射遮蔽特性を得ることができる。具体的には、可視光透過率が70%となるように分散体における微粒子濃度や厚さを調整したときに、日射透過率を50%を下回るまでに低減することができる。なかでも、元素MとしてCsやRb、Tlなど特定の元素から選択される少なくとも1種類を採用し、複合タングステン酸化物微粒子の結晶構造を六方晶とすることにより、より高い日射遮蔽特性を得ることができる。
特許文献1:特開平2-136230号公報
特許文献2:特開平8-259279号公報
特許文献3:特開平11-181336号公報
特許文献4:国際公開番号WO2005/037932号公報
ところで、赤外線吸収微粒子を含む分散体は窓材などにも適用されることから、分散体には意匠性に優れることが求められている。この点、特許文献4の分散体では、赤外線吸収微粒子として複合タングステン酸化物微粒子を用いていることで、分散体が青みを帯びてしまい、意匠性が損なわれることがある。青みを抑制するために赤外線吸収微粒子の濃度を低くすることもできるが、この場合、所望の赤外線吸収特性を得られないことがある。
また、特許文献4の分散体は、赤外光における波長700nm~1200nmの範囲での透過率が低くなるような光学特性を有するため、通信機器や撮像機器、センサー等で広く使用される波長800nm~900nmの光を吸収しやすい。そのため、例えば、分散体を窓に貼り付けた場合に、室内に置かれた赤外線発信機と室外に置かれた赤外線受信機との間の赤外光による通信が阻害され、装置が正常に動作しなくなることがある。
さらに、上述した特許文献4の分散体は、赤外光のなかでも、波長1200nm~1500nmの範囲における光の透過率は低いものの、波長2100nm付近における光の透過率が相対的に高く、この波長の光の吸収が不十分である。波長2100nmの光は、人の肌で吸収されやすく、ジリジリとした暑さを感じさせる。そのため、特許文献4の分散体では、窓材などに適用しても、ジリジリとした暑さを十分に抑制できないことがある。
本発明は、上記課題を解決するものであり、赤外線吸収微粒子を含む分散体において、優れた意匠性と、高い可視光透過率としたときに、波長800nm~900nmの光の透過率が高く、波長1200nm以上の光の透過率が低くなるような光学特性とを両立する技術を提供することを目的とする。
本発明の一態様によれば、
少なくとも複合タングステン酸化物微粒子および錫ドープ酸化インジウム微粒子を含む赤外線吸収微粒子が液状媒体に分散する赤外線吸収微粒子分散液であって、
前記複合タングステン酸化物微粒子は、当該微粒子による光吸収のみを算出したときの可視光透過率が80%であるときに、波長800~900nmの範囲における透過率の平均値が10%以上60%以下であり、波長1200~1500nmの範囲における透過率の平均値が20%以下であり、かつ、波長2100nmにおける透過率が22%以下であり、
前記赤外線吸収微粒子における前記錫ドープ酸化インジウム微粒子に対する複合タングステン酸化物微粒子の重量比Aが、5/95≦A<20/80の範囲であって、
前記赤外線吸収微粒子は、当該微粒子による光吸収のみを算出したときの可視光透過率が80%であるときに、波長800~900nmの範囲における透過率の平均値が30%以上80%以下であり、波長1200~1500nmの範囲における透過率の平均値が20%以下であり、波長2100nmにおける透過率が11%以下であり、かつ、L表色系のbの値が8.30以上である、赤外線吸収微粒子分散液が提供される。
本発明の他の態様によれば、
少なくとも複合タングステン酸化物微粒子および錫ドープ酸化インジウム微粒子を含む赤外線吸収微粒子が固体状のバインダー中に分散している赤外線吸収微粒子分散体であって、
前記複合タングステン酸化物微粒子は、当該微粒子による光吸収のみを算出したときの可視光透過率が80%であるときに、波長800~900nmの範囲における透過率の平均値が10%以上60%以下であり、波長1200~1500nmの範囲における透過率の平均値が20%以下であり、かつ、波長2100nmにおける透過率が22%以下であり、
前記赤外線吸収微粒子における前記錫ドープ酸化インジウム微粒子に対する複合タングステン酸化物微粒子の重量比Aが、5/95≦A<20/80の範囲であって、
前記赤外線吸収微粒子は、当該微粒子による光吸収のみを算出したときの可視光透過率が80%であるときに、波長800~900nmの範囲における透過率の平均値が30%以上80%以下であり、波長1200~1500nmの範囲における透過率の平均値が20%以下であり、波長2100nmにおける透過率が11%以下であり、かつ、L表色系のbの値が8.30以上である、赤外線吸収微粒子分散体が提供される。
本発明によれば、赤外線吸収微粒子を含む分散体において、可視光線を透過させつつ赤外光の一部を選択的に吸収させることができ、また青みを抑制して優れた意匠性を実現することができる。
<本発明者らの知見>
本発明者らは、分散体において複合タングステン酸化物微粒子(以下、単にMWO微粒子ともいう)による青みを抑制すべく、MWO微粒子の一部を他の赤外線吸収微粒子で代替する方法について検討を行った。
本発明者らは、MWO微粒子の代替物の選定に際し、微粒子を添加したときに分散体が帯びる色に着目した。MWO微粒子による青色は、L表色系でb値がマイナスで示される。一方、b値がプラスとなると、黄色となる。このことから、青く呈色させるMWO微粒子に対して、黄色く呈色させるb値の大きな微粒子を組み合わせることで、b値をプラス方向へと大きくシフトさせ、MWO微粒子による青みを相殺して色味を制御することを着想した。
そして、MWO微粒子以外の赤外線吸収微粒子による呈色を検討し、b値の大きな微粒子として、錫ドープ酸化インジウム(以下、ITOともいう)を選定した。ITO微粒子は、分散体を黄色く呈色させる傾向があり、青色または黒色に呈色させるアンチモンドープ酸化錫微粒子やホウ化物微粒子と比較して、MWO微粒子による青みをより低減できるためである。
さらに、青みの抑制と所望の赤外線吸収特性とを両立する観点から、使用する複合タングステン酸化物微粒子やITO微粒子の配合比率を検討した。その結果、複合タングステン酸化物微粒子としては、光吸収のみを算出したときの可視光透過率が80%であるときに、波長800~900nmの範囲における透過率の平均値が10%以上60%以下、波長1200~1500nmの範囲における透過率の平均値が20%以下、かつ、波長2100nmにおける透過率が22%以下である微粒子を用いるとよく、この微粒子に対して、ITO微粒子に対するMWO微粒子の重量比Aが5/95≦A<20/80の範囲となるようITO微粒子を添加するとよいことを見出した。
このような構成により、分散体において、所望の赤外線吸収特性を維持しながらも、bの値を高くして、複合タングステン酸化物微粒子による青みを抑制することができる。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものである。
<本発明の一実施形態>
以下、本発明の一実施形態について説明する。
(1)赤外線吸収微粒子分散液
本実施形態の赤外線吸収微粒子分散液は、少なくともMWO微粒子およびITO微粒子を含む赤外線吸収微粒子と、液状媒体と、必要に応じて、その他の添加剤と、を含み、液状媒体に赤外線吸収微粒子が分散されて構成される。以下、各成分について説明する。
(1-1)複合タングステン酸化物微粒子
本実施形態の複合タングステン酸化物微粒子は、その微粒子による光吸収のみを算出したときの可視光透過率を80%に調整したときに、波長800~900nmの範囲における透過率の平均値が10%以上60%以下であり、波長1200~1500nmの範囲における透過率の平均値が20%以下であり、かつ、波長2100nmにおける透過率が22%以下となるような光学特性を有する。
ここで、複合タングステン酸化物微粒子による光吸収のみを算出するとは、MWO微粒子を含む分散液について、液状媒体をベースラインとして、MWO微粒子の光吸収特性を解析することを意味する。具体的には、分散液を透明容器に入れ、分光光度計を用いて、光の透過率を波長の関数として測定することができる。可視光透過率を80%に調整するとは、分散液を液状媒体もしくは液状媒体と相溶性を有する溶媒で所定の可視光透過率となるように希釈することを意味する。透過率の平均値とは、指定された波長範囲における透過率の相加平均を意味する。
複合タングステン酸化物微粒子は、一般式M(但し、元素Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3.0)で表記される微粒子であることが好ましい。このような一般式を有するMWO微粒子によれば、上述した光学特性を実現しやすくなる。
元素Mの添加量を表すx/yの値は、0.001以上1以下が好ましく、より好ましくは0.1以上0.5以下であり、さらに好ましくは0.18以上0.39以下である。xの値が0.18以上0.39以下であれば六方結晶単相が得やすく、赤外線吸収効果が十分に発現するためである。六方晶以外に正方晶やM0.36WO3.18(Cs1135)で示される斜方晶が析出することがあるが、これらの析出物は赤外線吸収効果に影響しない。理論的には、x/yの値が0.33となることで、添加する元素Mが六角形の空隙の全てに配置されると考えられる。
また、z/yの値は、2.0<z/y≦3.0であることが好ましく、より好ましくは2.2≦z/y≦3.0であり、さらに好ましくは2.6≦z/y3.0、さらに好ましくは2.7≦z/y≦3.0である。このz/yの値が2.0以上であれば、複合タングステン酸化物中に目的以外であるWOの結晶相が現れるのを回避することができると共に、材料としての科学的安定性を得ることができるので、有効な赤外線吸収材料として適用できるためである。一方、このz/yの値が3.0以下であれば、タングステン酸化物中に必要とされる量の自由電子が生成され、効率よい赤外線吸収材料となる。
さらには、複合タングステン酸化物において酸素の一部が他の元素で置換されていても構わない。当該他の元素としては、例えば、窒素や硫黄、ハロゲン等が挙げられる。
MWO微粒子の粒子径は、MWO微粒子やそれを含む分散液を用いて製造される分散体の使用目的に応じて適宜変更することができ、特に限定されないが、1nm~800nmであることが好ましい。粒子径が800nm以下であれば、MWO微粒子による強力な赤外線吸収能力を発揮でき、また、粒子径が1nm以上であれば、工業的な製造が容易であるからである。より好ましくは10nm~200nmであり、さらに好ましくは10nm~100nmである。このような粒子径とすることにより、後述する、MWO微粒子とITO微粒子とを混合した混合粒子としての赤外線吸収微粒子の分散粒子径を40nm以下に制御しやすくできる。
MWO微粒子のc軸の格子定数は、還元処理の強さや近赤外吸収能を反映する指標の1つである。MWO微粒子が上述した分散粒子径の範囲を有する場合、c軸の格子定数は7.560Å以上8.820Å以下であることが好ましく、7.560Å以上7.624Å以下であることがより好ましい。
なお、MWO微粒子には、耐候性を向上させる観点から、Si、Ti、Zr、Alから選択される1種類以上を含有する化合物、好ましくは酸化物で表面処理することが好ましい。表面処理は、従来公知の方法で行うとよく、例えば、赤外線吸収微粒子と有機ケイ素化合物とを混合し、加水分解処理を行うとよい。なお、後述するITO微粒子も同様に表面処理を施してもよい。
(1-2)複合タングステン酸化物微粒子による赤外線吸収特性の発現メカニズム
MWO微粒子が上記赤外線吸収特性を発現するメカニズムは以下のように推測される。
一般式Mで示される複合タングステン酸化物の赤外線吸収特性は、局在電子によるポーラロン吸収と、自由電子による局在表面プラズモン共鳴吸収と、の2種類の要素で構成される。これらは、それぞれ吸収する赤外光の波長領域が異なっている。具体的には、ポーラロン吸収は、波長780~1200nmの赤外線領域において顕著であると考えられている。ポーラロン吸収のピークエネルギーは1.5eV(波長826nm)である。一方、局在表面プラズモン共鳴吸収は、波長1200~1800nmの赤外線領域において顕著であると考えられている。なお、局在表面プラズモン共鳴のピークエネルギーは0.83eV(波長1494nm)である。
ポーラロン吸収は、MWO微粒子の結晶中に存在する酸素空孔により生じていると考えられている。ポーラロン吸収は、MWO微粒子を製造する際の還元処理が強いほど、例えば、使用する水素ガス濃度が許容される範囲において大きいほど、処理温度が高いほど、また、処理時間が長いほど、吸収が大きくなる。MWO微粒子においては還元処理により酸素空孔が導入されるため、還元処理が強く、酸素空孔の量が多くなるほど、ポーラロン吸収が大きくなる。
MWO微粒子の結晶中に酸素空孔が生じると、見かけ上、電子が2個発生するが、これらの電子は、周囲のタングステンイオンW6+を還元してW5+やW4+を生成する。これらのW5+やW4+は、周囲の陽イオン(Cs、W6+)を引き付け、周囲の陰イオンを(O2-)を排斥する。従ってW5+やW4+は、縦光学フォノンと強く相互作用し、自己の周囲に電気分極を引き起こし、分極場を引きずって運動する量子、すなわちポーラロンとなる。その一方で、歪みを伴う分極場は酸素空孔によって大きく格子緩和されるため、ポーラロンは酸素空孔に隣接して生成されると推測される。
ポーラロンとして捕獲された電子は、熱運動や電場によって運動するので、MWO微粒子に光が照射されると、その運動に伴って特有の波長の光を吸収する。MWO微粒子の結晶中で酸素空孔が多い場合、より多くのポーラロン電子が生成されるため、波長800~900nmの波長領域における光吸収がより強くなる。これに対して、酸素空孔が少ない場合、ポーラロン電子が減少して、波長800~900nmの波長領域における光吸収が弱くなる。その一方、波長1200nm~1800nmをボトムとし、波長1200~1500nmの赤外線吸収能力を担保したままとすることができる。つまり、還元処理を弱くして酸素空孔の量を少なくするほど、波長1200~1500nmの赤外線吸収能力を担保したまま、波長800~900nmにおける光の透過率を高くできると推測される。
MWO微粒子に光が照射されてポーラロンが生成する一方で、酸素空孔から電子が供給され、その一部が伝導帯の自由電子となって結晶全体に広がる。この自由電子はプラズモン共鳴に寄与する電子として働く。
MWO微粒子において酸素空孔が多い場合、自由電子密度が増加してプラズモン共鳴波長が0.83eV(波長1494nm)より僅かに短波長側に変化する。これに対して、酸素空孔が少ない場合、自由電子密度が減少して共鳴波長が僅かに長波長側へシフトする。これにより、波長2100nmの光の吸収を担保できると推測される。
このように、本実施形態のMWO微粒子は、酸素空孔が少なく構成されることで、光が照射したときにポーラロンの生成を抑制でき、波長1200~1500nmの光吸収を担保しながらも、波長800~900nmの光吸収を弱めることができる。また、自由電子密度を小さくできるので、局在表面プラズモン共鳴吸収を長波長側にシフトさせて、波長2100nmの光吸収を担保することができる。この結果、MWO微粒子は、可視光透過率が80%の場合に、波長800~900nmの範囲における透過率の平均値が10%~60%、波長1200~1500nmの範囲における透過率の平均値が20%以下、かつ、波長2100nmにおける透過率が22%以下となるような光学特性を有する。
(1-3)複合タングステン酸化物微粒子の製造方法
上述したMWO微粒子は、タングステン化合物出発原料を還元性ガス雰囲気中で熱処理して製造することができる。
まず、タングステン化合物出発原料(以下、単に出発原料ともいう)を準備する。
タングステン化合物出発原料としては、タングステン、元素Mそれぞれの単体もしくは化合物を含有する混合物を用いることができる。タングステン原料としては、タングステン酸粉末、三酸化タングステン粉末、二酸化タングステン粉末、酸化タングステンの水和物粉末、六塩化タングステン粉末、タングステン酸アンモニウム粉末、または、六塩化タングステン粉末をアルコール中に溶解させた後乾燥して得られるタングステン酸化物の水和物粉末、または、タングステン酸アンモニウム水溶液を乾燥して得られるタングステン化合物粉末、金属タングステン粉末、から選ばれたいずれか1種類以上であることが好ましい。元素Mの原料としては、元素M単体、元素Mの塩化物塩、硝酸塩、硫酸塩、シュウ酸塩、酸化物、炭酸塩、タングステン酸塩、水酸化物等が挙げられるが、これらには限定されない。
続いて、上述した出発原料を秤量し、0.001≦x/y≦1を満たす所定量をもって配合し混合する。このとき、タングステン、元素Mに係るそれぞれの原料ができるだけ均一に、可能ならば分子レベルで均一混合していることが好ましい。均一に混合する観点から、各原料は溶液の形で混合することが好ましく、各原料が水や有機溶媒等の溶媒に溶解可能であることが好ましい。各原料が水や有機溶剤等の溶媒に可溶であれば、各原料と溶媒を十分に混合したのち溶媒を揮発させることで、出発原料を製造することができる。もっとも各原料に可溶な溶媒がなくとも、各原料をビールミル等の公知の手段で十分に均一に混合することで出発原料を製造してもよい。
続いて、出発原料を還元性ガス雰囲気中で熱処理する。これにより、MWO微粒子を製造することができる。
熱処理温度は、特に限定されないが、300℃以上900℃以下であることが好ましく、500℃以上800℃以下であることがより好ましく、500℃以上600℃以下であることがさらに好ましい。熱処理温度を300℃以上とすることで、六方晶構造を持つ複合タングステン酸化物の生成反応を進行させることができ、また900℃以下とすることで、六方晶以外の構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子や金属タングステンといった意図しない副反応物の生成を抑制することができる。
この時の還元性ガスは、特に限定されないが、Hが好ましい。そして、還元性ガスとしてHを用いる場合は、還元性雰囲気の組成として、例えば、Ar、N等の不活性ガスにHを体積比で0.1~0.8%混合したものが好ましく、より好ましくは0.1~0.5%混合したものである。Hが体積比で0.1~0.8%であれば、酸素空孔の発生を制御しつつ効率よく還元を進めることができる。還元温度および還元時間、還元性ガスの種類と濃度といった条件は、試料の量に応じて適宜選択するとよい。
なお、MWO微粒子は、必要に応じて、還元性ガス雰囲気中にて還元処理を行った後、不活性ガス雰囲気中にて熱処理を行ってもよい。この場合の不活性ガス雰囲気中での熱処理は400℃以上1200℃以下の温度で行うことが好ましい。
(1-4)錫ドープ酸化インジウム微粒子
錫ドープ酸化インジウム微粒子は、可視光波長領域での光の吸収および反射がほとんどなく、波長1500nm以上の領域でプラズモン共鳴に由来する反射・吸収が大きい。つまり、ITO微粒子の透過プロファイルは、可視光領域での光の透過率が高く、赤外線領域で長波長側に向かうに従い透過率が減少する。ITO微粒子としては、酸化インジウムに錫がドープされているものであればよく、特に限定されるものではない。
ITO微粒子の粒子径は、赤外線吸収微粒子を含む分散液を用いて製造される分散体の使用目的に応じて適宜変更することができ、特に限定されない。分散体における透明性を確保する、もしくはITO微粒子による赤外線吸収特性を得る観点からは、粒子径は10nm以上40nm以下であることが好ましく、20nm以上30nm以下であることがより好ましい。また、このような粒子径とすることにより、後述する、MWO微粒子とITO微粒子とを混合した混合粒子としての赤外線吸収微粒子の分散粒子径を40nm以下に制御しやすくできる。
ITO微粒子は、例えば、インジウムを含む水酸化物と、錫を含む水酸化物とを水溶液中で共沈させ、得られた沈殿物を500℃以上1100℃未満の温度で焼成することで得ることができる。焼成する際の雰囲気は不活性ガスまたは還元性ガスであり、還元性ガスであることが好ましい。これは、ITO微粒子中に微量の酸素欠陥を形成させることにより、ITO微粒子の赤外線領域における吸収を強くするためである。
(1-5)赤外線吸収微粒子
赤外線吸収微粒子は、少なくともMWO微粒子およびITO微粒子を含む混合粒子である。赤外線吸収微粒子は、上述した光学特性を有するMWO微粒子とITO微粒子とを所定の重量比Aで含む。ここで、重量比Aは、ITO微粒子に対するMWO微粒子の重量比を示し、5/95≦A<20/80である。言い換えると、MWO微粒子およびITO微粒子の合計を100としたときに、MWO微粒子の比率が5以上20未満、ITO微粒子の比率が80を超えて95以下である。好ましくは、重量比Aは10/90≦A<20/80である。
赤外線吸収微粒子は、各微粒子を重量比Aで含むことで、所定波長の赤外線を吸収できるような光学特性を有しながらも、bの値が大きくなるように構成される。具体的には、赤外線吸収微粒子は、赤外線吸収微粒子による光吸収のみを算出したときの可視光透過率が80%となるように調整したときに、波長800~900nmの範囲における透過率の平均値が30%以上80%以下であり、波長1200~1500nmの範囲における透過率の平均値が20%以下であり、波長2100nmにおける透過率が11%以下であり、かつ、L表色系のbの値が8.30以上となる。より好ましくは、波長1200~1500nmの範囲における透過率の平均値が10%以下にとすることであり、さらに好ましくは波長1200~1500nmの範囲における透過率の平均値が9%以下にとすることでる。つまり、波長1200~1800nmの領域をボトムとする赤外線吸収能力を持ち、波長800~900nmの赤外光の透過率を向上させつつ、肌へのジリジリ感を与える波長2100nm付近の赤外線の透過を抑制でき、なおかつ、分散体の青みを抑制することができる。
なお、赤外線吸収微粒子の光学特性は、MWO微粒子およびITO微粒子を含む赤外線吸収微粒子を分散する分散液に対して、上述の(1-1)で記載するMWO微粒子の光学特性の測定と同様に測定することができる。bの値は、得られた透過プロファイルから、JIS Z 8701に基づくL表色系(D65光源/10度視野)を用いて測定することができる。
赤外線吸収微粒子分散液に含まれる赤外線吸収微粒子の含有量は、特に限定されないが、0.01質量%以上80質量%以下であることが好ましい。含有量を0.01質量%以上とすることにより、後述する透明フィルム基材または透明ガラス基材から選択される透明基材上のコーティング層や、プラスチック成型体などの製造に好適な分散体を得ることができる。一方、含有量を80質量%以下とすることにより、分散体の工業的な生産が容易である。当該観点から、含有量は1質量%以上35質量%以下であることがより好ましい。
また、赤外線吸収微粒子の分散粒子径は、分散体の透明性を保持する観点から、40nm以下であることが好ましい。分散粒子径が40nm以下であれば、赤外線吸収微粒子によるミー散乱およびレイリー散乱による光の散乱が十分に抑制され、可視光波長領域の視認性を保持し、同時に効率よく透明性を保持することができる。また、分散体を自動車の風防など特に透明性が求められる用途に使用する場合は、さらに散乱を抑制する観点から、分散粒子径を30nm以下とすることがより好ましく、25nm以下とするのがさらに好ましい。下限は特に限定されないが、1nm以上であることが好ましい。なお、分散粒子径は、レーザー回折を利用した粒度分布径により測定される50%堆積累積粒度とする。
なお、赤外線吸収微粒子には、上述したMWO微粒子およびITO微粒子以外に赤外線吸収能力を有する公知の微粒子を、本発明の効果を損ねない範囲で適宜添加してもよい。
(1-6)液状媒体
液状媒体としては、赤外線吸収微粒子の分散性を保持し、かつ赤外線吸収微粒子分散液を塗布する際に塗布欠陥を生じさせないようなものであれば特に限定されず、例えば水、有機溶媒、油脂、液状樹脂、プラスチック用の液状の可塑剤あるいはこれらの混合物を用いることができる。
有機溶媒としては、アルコール系、ケトン系、炭化水素系、グリコール系、水系など、種々のものを選択することが可能である。具体的には、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコールなどのアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン系溶剤;3-メチル-メトキシ-プロピオネートなどのエステル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテートなどのグリコール誘導体;フォルムアミド、N-メチルフォルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンなどのアミド類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;エチレンクロライド、クロルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類などを挙げることができる。これらの中でも極性の低い有機溶剤が好ましく、特に、イソプロピルアルコール、エタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸n-ブチルなどがより好ましい。これらの溶媒は1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
液状樹脂としては、メタクリル酸メチルやスチレン等の重合などにより硬化するモノマーやオリゴマーや、熱可塑性樹脂等を液状の媒体に溶解したものを用いることができる。
プラスチック用の液状の可塑剤としては、一価アルコールと有機酸エステルとの化合物である可塑剤や、多価アルコール有機酸エステル化合物等のエステル系である可塑剤、有機リン酸系可塑剤等のリン酸系である可塑剤などが好ましい例として挙げられる。なかでもトリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサオネート、トリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、テトラエチレングリコールジ-2-エチルヘキサオネートは、加水分解性が低いため、さらに好ましい。
(1-7)その他の添加剤
赤外線吸収微粒子分散液には、上述した成分に加え、用途に応じて、その他の添加剤を添加してもよい。その他の添加剤としては、例えば分散剤やカップリング剤、界面活性剤などを用いることができる。これらの添加剤は、アミンを含有する基、水酸基、カルボキシル基、または、エポキシ基を官能基として有することが好ましい。これらの官能基は、MWO微粒子の表面に吸着してMWO微粒子の凝集を抑制するため、分散体中にMWO微粒子を均一に分散させることができる。
好適に用いることのできる分散剤としては、リン酸エステル化合物、高分子系分散剤、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、等があるが、これらに限定されるものではない。高分子系分散剤としては、アクリル系高分子分散剤、ウレタン系高分子分散剤、アクリル・ブロックコポリマー系高分子分散剤、ポリエーテル類分散剤、ポリエステル系高分子分散剤などが挙げられる。
分散剤の添加量は、赤外線吸収微粒子100重量部に対し10重量部~1000重量部の範囲であることが好ましく、20重量部~200重量部の範囲であることがより好ましい。分散剤の添加量が上記範囲にあれば、液状媒体において赤外線吸収微粒子の凝集を抑制することができ、分散安定性を維持することができる。
(2)赤外線吸収微粒子分散液の製造方法
上述した赤外線吸収微粒子分散液は、少なくともMWO微粒子およびITO微粒子を液状媒体に分散させることで得られる。例えば、MWO微粒子を含む粉末とITO微粒子を含む粉末とを混合した後、その混合粒子を粉砕し液状媒体に分散させることで赤外線吸収微粒子分散液を製造することができる。また例えば、MWO微粒子を含む分散液とITO微粒子を含む分散液とを準備し、これらを混合することで、赤外線吸収微粒子分散液を製造することができる。なお、液状媒体には、必要に応じて分散剤やカップリング剤、界面活性剤などを適宜添加してもよい。
液状媒体への赤外線吸収微粒子の分散は、赤外線吸収微粒子を液状媒体に均一に分散できる方法であれば特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、超音波分散などの方法を用いることができる。このとき均一に分散するために各種添加剤や分散剤を添加したり、pHを調整したりしてもよい。
(3)赤外線吸収微粒子分散体
続いて、上述した赤外線吸収微粒子分散液を用いて製造される赤外線吸収微粒子分散体(以下、単に分散体ともいう)について説明する。
本実施形態の分散体は、少なくともMWO微粒子およびITO微粒子を含む赤外線吸収微粒子が固体状のバインダーに分散して構成されるものである。
固体状のバインダーとしては、赤外線吸収微粒子を分散させた状態で固化できるものであれば特に限定されず、例えば金属アルコキシドを加水分解等によって得られる無機バインダーや樹脂等の有機バインダーなどを用いることができる。なお、固体状のバインダーは、分散体の製造過程では液状であってもよく、最終的に固体となるものを示す。
無機バインダーとしては、金属アルコキシドを用いたものであればよく、金属アルコキシドとしては、Si、Ti、Al、Zr等のアルコキシドが代表的である。これら金属アルコキシドを用いたバインダーは、加熱等により加水分解・縮重合させることで、酸化物膜を形成することが可能である。
有機バインダーとしては、目的に応じて、例えばUV硬化性樹脂や熱硬化樹脂、電子線硬化樹脂、常温硬化樹脂、熱可塑樹脂などを適宜選択して用いるとよい。具体的には、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ふっ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、単独使用であっても混合使用であっても良い。
有機バインダーとしては、熱可塑性樹脂およびUV硬化性樹脂の少なくとも一方を含むことが好ましい。
熱可塑性樹脂としては特に限定されるものではなく、要求される透過率や、強度等に応じて任意に選択することができる。熱可塑性樹脂としては例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアセタール樹脂の樹脂群から選択される1種類の樹脂、または、前記樹脂群から選択される2種類以上の樹脂の混合物、または、前記樹脂群から選択される2種類以上の樹脂の共重合体、のいずれかを好ましく用いることができる。
UV硬化性樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えばアクリル系UV硬化性樹脂を好適に用いることができる。
分散体に含まれる赤外線吸収微粒子の含有量は、分散体の用途に応じて適宜変更することができ、特に限定されない。その含有量は、例えば、0.001質量%以上80.0質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上70.0質量%以下であることがより好ましい。含有量を0.001質量%以上とすることにより、分散体において所望の赤外線吸収特性を得るために、分散体の厚さを過度に厚くする必要がなく、また使用用途が限定されず、搬送も容易だからである。また、含有量を80.0質量%以下とすることにより、分散体において固体状のバインダーの割合を担保して、所望の強度を得られるからである。
分散体において所望の赤外線吸収特性を得る観点からは、分散体に含まれる赤外線吸収微粒子の単位投影面積あたりの含有量は、0.04g/m以上10.0g/m以下であることが好ましい。なお、単位投影面積あたりの含有量とは、分散体において、光が通過する単位面積(m)あたり、その厚み方向に含有されている赤外線吸収微粒子の重量(g)を意味する。
なお、固体状のバインダーとして熱可塑性樹脂を用いた分散体を例えば透明基材等の間に中間層として配置する場合、中間層の柔軟性や透明基材等との密着性を向上させる観点からは、分散体に可塑剤を添加することが好ましい。例えば熱可塑性樹脂としてポリビニルアセタール樹脂を用いる場合は、可塑剤を添加することが好ましい。
可塑剤としては特に限定されるものではなく、用いる熱可塑性樹脂に対して可塑剤として機能できる物質であれば用いることができる。例えば熱可塑性樹脂としてポリビニルアセタール樹脂を用いる場合、可塑剤としては、一価アルコールと有機酸エステルとの化合物である可塑剤、多価アルコール有機酸エステル化合物等のエステル系の可塑剤、有機リン酸系可塑剤等のリン酸系の可塑剤等を好ましく用いることができる。可塑剤は、室温で液状であることが好ましいことから、多価アルコールと脂肪酸から合成されたエステル化合物であることが好ましい。
分散体は、用途に応じて任意の形状に成型することができる。分散体は例えばシート形状、ボード形状またはフィルム形状を有することができ、様々な用途に適用できる。
本実施形態の分散体は、上述した光学特性を有するMWO微粒子およびITO微粒子を含む赤外線吸収微粒子が固体状のバインダーに分散されて構成されることで、可視光透過率を80%に調整したときに、波長800~900nmの範囲における透過率の平均値が45%以上80%以下であり、波長1200~1500nmの範囲に存在する透過率の平均値が10%以下であり、かつ、波長2100nmの透過率が5%以下であり、bの値が8.30以上となることが好ましい。より好ましくは、可視光透過率が80%のときに、波長800~900nmの範囲における透過率の平均値が45%以上80%以下であり、波長1200~1500nmの範囲に存在する透過率の平均値が9%以下であり、かつ、波長2100nmの透過率が5%以下であり、bの値が8.30以上となる。
ここで、可視光透過率を80%に調整するとは、上述した分散液、分散粉、可塑剤分散液またはマスターバッチに含有される赤外線吸収微粒子の濃度、樹脂組成物を調製する際の赤外線吸収微粒子、分散粉、可塑剤分散液またはマスターバッチの添加量、さらにはフィルムやシートの膜厚等を調整することにより、容易である。
(4)赤外線吸収微粒子分散体の製造方法
赤外線吸収微粒子分散体は、例えば、赤外線吸収微粒子と上述したバインダーとを混合し、所望の形状に成形した後、バインダーを硬化させることで製造することができる。
例えば、硬化後に、上述した固体状のバインダーとなる成分(プラスチックまたはモノマーなど)を上述の分散液に混合し、塗布液を調製する。この塗布液を例えば透明基材上に塗布し、塗布液に含まれる液状媒体を蒸発させ、所定の方法により樹脂を硬化させることで、分散体としてのコーティング膜を形成することができる。
また例えば、上述した赤外線吸収微粒子分散液を用いて、後述するように、赤外線吸収微粒子分散粉、可塑剤分散液、もしくはマスターバッチを製造し、次いで、赤外線吸収微粒子分散粉等を用いて分散体を製造することができる。以下、それぞれの製造方法について具体的に説明する。
赤外線吸収微粒子分散粉を製造する方法について説明する。ここでは、有機バインダーとして熱可塑性樹脂を用いた場合を例として説明する。
まず、上述した赤外線吸収微粒子分散液と熱可塑性樹脂とを混合する。続いて、これらの混合物から、分散液に由来する溶媒成分を除去する。これにより、熱可塑性樹脂中に、または、分散液に分散剤が含まれる場合であれば、熱可塑性樹脂および分散剤の混合物中に赤外線吸収微粒子が高濃度に分散した赤外線吸収微粒子分散粉(以下、単に分散粉ともいう)を得ることができる。
分散液と熱可塑性樹脂との混合物から溶媒成分を除去する方法としては、特に限定されないが、減圧乾燥法が好ましい。減圧乾燥法では、分散液と熱可塑性樹脂との混合物を攪拌しながら減圧乾燥するとよい。これにより、分散粉と溶媒成分とを分離することができる。減圧乾燥法によれば、分散液と熱可塑性樹脂との混合物から溶媒を効率よく除去することができる。また、分散粉が高温度で長時間にわたって曝されることがないので、分散粉中に分散している赤外線吸収微粒子の凝集を抑制することができる。また、分散粉の生産性を向上させることができるだけでなく、蒸発させた溶媒を回収することで環境負荷を低減することができる。なお、減圧乾燥に用いる装置としては、真空攪拌型の乾燥機が挙げられるが、上記機能を有する装置であれば良く、特に限定されない。また、乾燥工程の減圧の際の圧力値は特に限定されるものではなく任意に選択することができる。
次に、可塑剤分散液を製造する方法について説明する。
まず、上述した分散液と可塑剤とを混合する。続いて、分散粉の製造と同様にして、これらの混合物から、分散液に由来する溶媒成分を除去する。これにより、可塑剤中に赤外線吸収微粒子が高濃度に分散した可塑剤分散液を得ることができる。
なお、分散液と可塑剤との混合物から溶媒を除去する方法は、分散粉の製造と同様に減圧乾燥法が好ましい。
次に、マスターバッチを製造する方法について説明する。
まず、上述した分散液、または分散液から製造した分散粉を樹脂中に分散させ、この樹脂混合物をペレット化することで製造することができる。
また別の方法として、以下のように製造してもよい。まず、分散液や分散粉と、熱可塑性樹脂の粉粒体またはペレット、および必要に応じて他の添加剤を均一に混合する。この混合物を、ベント式一軸若しくは二軸の押出機で混練し、一般的な溶融押出されたストランドをカットする方法によりペレット状に加工することによって、マスターバッチを製造することができる。この場合、その形状としては円柱状や角柱状のものを挙げることができる。また、溶融押出物を直接カットするいわゆるホットカット法を採ることも可能である。この場合には球状に近い形状をとることが一般的である。
次に、上述した分散粉、可塑剤分散液またはマスターバッチを固体状のバインダーに均一に分散するよう混合し、所望の形状に成形することで、本実施形態の分散体を得る。固体状のバインダーとしては、上述した無機バインダーもしくは有機バインダーを用いることができる。
例えば固体状のバインダーとして熱可塑性樹脂を用いる場合であれば、まず、分散粉、可塑剤分散液またはマスターバッチと、熱可塑性樹脂と、所望に応じて可塑剤その他添加剤とを混練する。続いて、この混練物を、押出成形法、射出成形法、カレンダーロール法、押出法、キャスティング法、インフレーション法等の各種成形方法により、例えばシート形状やボート形状、フィルム形状などの任意の形状に成形し、分散体を製造することができる。
(5)赤外線吸収透明基材
次に、上述した分散体を備える赤外線吸収透明基材について説明する。
赤外線吸収透明基材は、透明基材上に上述した分散体が設けられたものである。
透明基材としては、透明性を有するものであれば特に限定されず、例えばガラスから形成されるガラス基材や樹脂から形成される樹脂基材を用いることができる。樹脂基材の形成材料としては、例えばPET、アクリル、ウレタン、ポリカーボネート、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル、ふっ素樹脂等が各種目的に応じて使用可能である。樹脂基材としては、ポリエステルフィルムであることが好ましく、PETフィルムであることがより好ましい。なお、透明基材はフィルム状でもよく、ボードでもよい。以下では、透明基材として樹脂基材を用いたものを赤外線吸収フィルム、ガラス基材を用いたものを赤外線吸収ガラスともいう。
透明基材が樹脂基材、例えば樹脂フィルムである場合、分散体との接着を容易にするため、樹脂フィルムの表面は表面処理されていることが好ましい。
分散体は、透明基材上に設けられている。赤外線吸収フィルムや赤外線吸収ガラスにおいてコーティング層として形成される分散体の厚さは、特に限定されないが、実用上は10μm以下であることが好ましく、6μm以下であることがより好ましい。これはコーティング層の厚みが10μm以下であれば、十分な鉛筆硬度を発揮して耐擦過性を有することに加えて、コーティング層における溶媒の揮散およびバインダーの硬化の際に、透明基材の反り発生等の工程異常発生を回避できるからである。
コーティング層としての分散体に含まれる赤外線吸収微粒子の含有量は、特に限定されないが、フィルム/ガラス/コーティング層の投影面積あたりの含有量、0.04g/m以上10.0g/m以下であることが好ましい。これは、含有量が0.04g/m以上であれば赤外線吸収微粒子を含有しない場合と比較して有意に赤外線吸収特性を発揮でき、含有量が10.0g/m以下であれば赤外線吸収フィルム/ガラス/コーティング層が可視光の透過性を十分に保つからである。
透明基材上にコーティング層としての分散体を設ける方法は、基材表面へ分散液を均一に塗布できる方法であればよく、特に限定されない。例えば、バーコート法、グラビヤコート法、スプレーコート法、ディップコート法等を挙げることができる。
例えばUV硬化性樹脂を用いたバーコート法によれば、適度なレベリング性を持つよう液濃度および添加剤を適宜調整した塗布液を、コーティング膜の厚みおよび赤外線吸収微粒子の含有量を合目的に満たすことのできるバー番号のワイヤーバーを用いて透明基材上に塗膜を形成することができる。そして塗布液中に含まれる有機溶媒を乾燥により除去したのち紫外線を照射し硬化させることで、透明基材上にコーティング層を形成することができる。このとき、塗膜の乾燥条件としては、各成分、溶媒の種類や使用割合によっても異なるが、通常では60℃~140℃の温度で20秒~10分間程度である。紫外線の照射には特に制限はなく、例えば超高圧水銀灯などのUV露光機を好適に用いることができる。
その他、コーティング層の形成の前工程または後工程において、基板とコーティング層の密着性、コーティング時の塗膜の平滑性、有機溶媒の乾燥性などを調整することもできる。前工程としては、例えば基板の表面処理工程、プリベーク(基板の前加熱)工程などがあり、後工程としては、ポストベーク(基板の後加熱)工程などが挙げられ、適宜選択することができる。プリベーク工程および/あるいはポストベーク工程における加熱温度は80℃~200℃、加熱時間は30秒~240秒であることが好ましい。
赤外線吸収透明基材の光学特性は、上述した分散液を用いて製造することにより、可視光透過率を80%に調整したときに、波長800~900nmの範囲における透過率の平均値が30%以上80%以下であり、波長1200~1500nmの範囲に存在する透過率の平均値が20%以下であり、かつ、波長2100nmの透過率が11%以下であり、bの値が8.30以上となる。好ましくは、可視光透過率が80%のときに、波長800~900nmの範囲における透過率の平均値が45%以上80%以下であり、波長1200~1500nmの範囲に存在する透過率の平均値が10%以下であり、かつ、波長2100nmの透過率が5%以下であり、bの値が8.30以上となる。より好ましくは、可視光透過率が80%のときに、波長800~900nmの範囲における透過率の平均値が45%以上80%以下であり、波長1200~1500nmの範囲に存在する透過率の平均値が9%以下であり、かつ、波長2100nmの透過率が5%以下であり、bの値が8.30以上となる。なお、可視光透過率を80%に調整することは、コーティング液中の赤外線吸収微粒子濃度の調整、または、コーティング層の膜厚の調整により、容易になされる。
なお、透明基材と分散体との接着性を向上させる観点からは、透明基材上に中間層を形成し、中間層上に分散体を形成することも好ましい。中間層の構成は特に限定されるものではなく、例えばポリマフィルム、金属層、無機層(例えば、シリカ、チタニア、ジルコニア等の無機酸化物層)、有機/無機複合層等により構成することができる。
また、分散体に紫外線吸収機能を付与させるため、無機系の酸化チタンや酸化亜鉛、酸化セリウムなどの粒子、有機系のベンゾフェノンやベンゾトリアゾールなどの少なくとも1種以上を添加してもよい。
<本実施形態に係る効果>
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
本実施形態の赤外線吸収微粒子分散液によれば、赤外線吸収微粒子として、少なくともMWO微粒子およびITO微粒子を含み、ITO微粒子に対するMWO微粒子の重量比Aが5/95≦A<20/80の範囲となっている。MWO微粒子の一部をITO微粒子に置き換えることで、分散体における青みの要因であるMWO微粒子を減らすことができる。また、ITO微粒子により、MWO微粒子による青みをL表色系のbの値でプラス方向へとシフトさせて、青みを相殺することができる。これらの相乗効果により、分散体において青みを抑制し、優れた意匠性を得ることができる。具体的には、分散体においてL表色系のbの値を8.30以上とすることができる。
また、MWO微粒子として、MWO微粒子による光吸収のみを算出したときの可視光透過率が80%であるときに、波長800~900nmの範囲における透過率の平均値が10%以上60%以下であり、波長1200~1500nmの範囲における透過率の平均値が20%以下であり、かつ、波長2100nmにおける透過率が22%以下である微粒子を用いている。また、ITO微粒子は、波長1500nm以上の領域で光の吸収が大きく、波長1500nm以上における透過率が小さくなっている。本実施形態では、これらの微粒子を上記重量比Aで混合することにより、波長800~900nmの範囲における透過率を高く維持しながらも、波長1200~1500nmや波長2100nmの光の透過率を小さくして光吸収を強くすることができる。具体的には、MWO微粒子およびITO微粒子を混合した赤外線吸収微粒子による光吸収のみを算出したときの可視光透過率が80%であるときに、波長800~900nmの範囲における透過率の平均値を30%以上80%以下、波長1200~1500nmの範囲における透過率の平均値を20%以下、波長2100nmにおける透過率を11%以下とすることができる。
このように本実施形態の分散液によれば、分散体を製造したときに、可視光線を透過させつつ赤外光の一部を選択的に吸収させることができ、また青みを抑制して優れた意匠性を実現することができる。
また、MWO微粒子は、一般式M(但し、元素Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3.0)で表記されるものであることが好ましい。このような一般式で示されるMWO微粒子によれば、上述した光学特性をより確実に満たすことができる。
また、MWO微粒子は、六方晶の結晶構造を含むことが好ましい。MWO微粒子の結晶構造を六方晶とすることにより、上述した光学特性を発現させ、所望の赤外線吸収特性を得ることができる。
本実施形態の赤外線吸収微粒子分散体は、上述の分散液を例えばプラスチックやモノマーと混合して硬化させて形成され、赤外線吸収微粒子が固体状のバインダー中に分散して構成される。この分散体は、上述した光学特性を有しており、所望の赤外線吸収特性を有する。しかも、青みが抑制され、L表色系のbの値が8.30以上である、
本実施形態の赤外線吸収透明基材によれば、上述した分散体を備えるので、青みが少なく意匠性に優れており、赤外線通信で使用される波長800~900nmの光を過度に吸収させない一方で、ジリジリとした暑さを感じさせる波長1200~1500nmや波長2100nmの光を吸収させることができる。そのため、赤外線吸収透明基材を窓材などに適用したときに、意匠性を損なうことがない。また、可視光を透過させるだけでなく、例えば赤外線通信に使用される光を過度に吸収することなく透過させることができる。その一方で、暑さを感じさせる光を選択的に吸収することができる。
以下、実施例を参照しながら本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
まず、実施例、比較例における試料の評価方法として、平均分散粒子径、分光透過率と可視光透過率、およびc軸の格子定数のそれぞれの評価方法について説明する。
(平均分散粒子径)
以下の実施例、比較例において、赤外線吸収微粒子分散液中の赤外線吸収微粒子の平均分散粒子径は、50%体積累計粒度であり、レーザー回折を利用した粒度分布計であるマイクロトラック(登録商標)粒度分布計(日機装(株)製)により測定した。
(分光透過率と可視光透過率)
以下の実施例、比較例において、赤外線吸収微粒子分散液の波長320~2200nmの光に対する透過率は、分光光度計用セル(ジーエルサイエンス株式会社製、型番:S10-SQ-1、材質:合成石英、光路長:1mm)に分散液を保持して、日立製作所(株)製の分光光度計U-4100を用いて測定した。
当該測定の際、分散液の溶媒(メチルイソブチルケトンなど、以下MIBKと略称する)を、上述のセルに満たした状態で透過率を測定し、透過率測定のベースラインを求めた。この結果、以下に説明する分光透過率、および可視光透過率は、分光光度計用セル表面の光反射や、溶媒の光吸収による寄与が除外され、赤外線吸収微粒子による光吸収のみが算出されることとなる。
また、赤外線吸収透明基材である赤外線吸収ガラスや赤外線吸収シートについての波長320~2200nmの光に対する透過率も、日立製作所(株)製の分光光度計U-4100を用いて測定した。可視光透過率は、波長380~780nmの光に対する透過率から、JIS R 3106に基づいて算出した。
また、表色系はJIS Z 8701に基づくL表色系(D65光源/10度視野)を用い、bの値を測定した。
(c軸の格子定数)
近赤外線吸収微粒子のX線回折パターンを、粉末X線回折装置(スペクトリス株式会社PANalytical製X´Pert-PRO/MPD)を用いて粉末X線回折法(θ-2θ法)により測定した。得られたX線回折パターンからリートベルト法を用いてc軸の格子定数を算出した。
<実施例1>
(1)赤外線吸収微粒子分散液の調製
本実施例では、複合タングステン酸化物微粒子を含む分散液と、錫ドープ酸化インジウム微粒子を含む分散液をそれぞれ調製し、これらを混合することで、赤外線吸収微粒子分散液を調製した。
まず、複合タングステン酸化物微粒子を作製した。具体的には、タングステン酸(HWO)と水酸化セシウム(CsOH)の各粉末を、Cs/W(モル比)=0.33/1.00相当となる割合で秤量したのちメノウ乳鉢で十分混合して混合粉末とした。当該混合粉末を、Nガスをキャリアーとした0.6体積%Hガス供給下で加熱し550℃の温度で3時間の還元処理を行った後、Nガス雰囲気下で800℃、1時間焼成して、六方晶を有したセシウムタングステンブロンズ粉末(以下、「粉末A」と略称する。)を得た。
続いて、粉末Aを20質量%、官能基としてアミンを含有する基を有するアクリル系高分子分散剤(アミン価48mgKOH/g、分解温度250℃のアクリル系分散剤。以下、「分散剤a」と略称する)を8質量%、液状の媒体であるMIBKを72質量%秤量した。これらを、0.3mmφZrOビーズを入れたペイントシェーカーに装填し、10時間粉砕・分散処理し、複合タングステン酸化物微粒子を含む分散液(以下、「分散液A」と略称する)を得た。
ここで、分散液Aについて、複合タングステン酸化物微粒子の平均分散粒子径について上述した方法で測定したところ25nmであった。また、得られた分散液Aを、X線回折ピークが検出されない方向に結晶面を揃えた単結晶シリコン基板上へ塗布し、MIBKを除去した後の試料についてX線回折パターンを測定し、c軸の格子定数を算出したところ7.6095Åであった。
また、得られた分散液Aを、複合タングステン酸化物微粒子による光吸収のみを算出したときの可視光透過率が80%になるようにMIBKで希釈した後、分光光度計用セルに入れ、分光透過率を測定した。得られた透過率プロファイルから、波長800~900nmにおける透過率の平均値は13.87%、波長1200~1500nmにおける透過率の平均値は5.50%、波長2100nmの透過率は13.11%となった。
次に、錫ドープ酸化インジウム微粒子を含む分散液を調製した。具体的には、錫ドープ酸化インジウム粉末を20質量%、官能基としてカルボキシル基を有する高分子分散剤を6重量%、MIBKを74重量%秤量した。これらを、0.3mmφZrOビーズを入れたペイントシェーカーに装填し、5時間粉砕・分散処理し、錫ドープ酸化インジウム微粒子を含む分散液(以下、「分散液B」と略称する)を得た。ここで、分散液Bについて、錫ドープ酸化インジウム微粒子の平均分散粒子径について上述した方法で測定したところ10nmであった。
次に、分散液Aと分散液Bとを、複合タングステン酸化物微粒子(セシウムタングステンブロンズ微粒子)と錫ドープ酸化インジウム微粒子の混合比(重量比A)が、セシウムタングステンブロンズ微粒子/錫ドープ酸化インジウム微粒子=19/81となるように混合させ、実施例1の赤外線吸収微粒子分散液(以下、「分散液C」と略称する)を調製した。当該混合比(重量比)を表1に記載した。
また、得られた分散液Cを、赤外線吸収微粒子による光吸収のみを算出したときの可視光透過率が80%になるようにMIBKで希釈した後、分光光度計用セルに入れ、分光透過率を測定した。得られた透過率プロファイルから、波長800~900nmにおける透過率の平均値は59.77%、波長1200~1500nmにおける透過率の平均値は8.43%、波長2100nmの透過率は0.02%となった。また、透過プロファイルから、JIS Z 8701に基づくL表色系(D65光源/10度視野)を用い、表色系を測定したところ、L表色系のうち、bの値は8.35であった。実施例1の分散液Cについての測定結果を表1に記載する。
(2)赤外線吸収ガラスの作製および評価
次に、得られた分散液Cを用いて、赤外線吸収透明基材として赤外線吸収ガラスを作製し、その光学特性を評価した。
具体的には、分散液C100重量部に対し、ハードコート用紫外線硬化樹脂である東亜合成製アロニックスUV-3701(以下、UV-3701と記載する)を50重量部混合して赤外線吸収微粒子塗布液(以下、塗布液C)とし、この塗布液を3mm青版ガラス(帝人製HPE-50)上へバーコーターを用いて塗布し、塗布膜を形成した。続いて、塗布膜を設けたガラスを、70℃で60秒間乾燥し溶剤を蒸発させた後、高圧水銀ランプで硬化させることで、赤外線吸収微粒子を含有したコーティング膜がガラス上に設けられた赤外線吸収フィルムを作製した。
なお、本実施例では、赤外線吸収ガラスを作製する際に、塗布液Cに含まれる赤外線吸収微粒子の濃度またはコーティング膜の膜厚を、赤外線吸収ガラスの可視光透過率が80%となるように、調整した。
この赤外線吸収ガラスについて光学特性を評価したところ、透過プロファイルから、波長800~900nmにおける透過率の平均値は59.66%、波長1200~1500nmにおける透過率の平均値は8.52%、波長2100nmの透過率は0.03%となった。また、表色系については、L表色系のうち、bの値は8.40であった。当該測定結果を表1に記載する。
(3)赤外線吸収シートの作製および評価
次に、得られた分散液Cを用いて、赤外線吸収透明基材として赤外線吸収シートを作製し、その光学特性を評価した。
具体的には、得られた分散液Cへ、さらに分散剤aを添加し、分散剤aと赤外線吸収微粒子との質量比が[分散剤a/複合タングステン酸化物]=3となるように調整した。続いて、スプレードライヤーを用いて、調整した分散液からメチルイソブチルケトンを除去し、複合タングステン酸化物微粒子分散粉(以下「分散粉」と記載する場合がある)を得た。
熱可塑性樹脂であるポリカーボネート樹脂に対して、製造される赤外線吸収シート(1.0mm厚)の可視光透過率が80%となるように、所定量の分散粉を添加し、赤外線吸収シートの製造用組成物を調製した。
この赤外線吸収シートの製造用組成物を、二軸押出機を用いて280℃で混練し、Tダイより押出して、カレンダーロール法により1.0mm厚のシート材とし、実施例1の赤外線吸収シートを得た。
この赤外線吸収シートについて光学特性を測定したところ、可視光透過率は80%であり、透過プロファイルから、波長800~900nmにおける透過率の平均値は59.76%、波長1200~1500nmにおける透過率の平均値は8.63%、波長2100nmの透過率は0.03%となった。また、表色系については、L表色系のうち、bの値は8.40であった。当該測定結果を表1に記載する。
<実施例2~4>
実施例2~4では、表1に示すように、複合タングステン酸化物微粒子(セシウムタングステンブロンズ微粒子)と錫ドープ酸化インジウム微粒子との混合比(重量比A)を適宜変更した以外は、実施例1と同様に、分散液Cを調製した。具体的には、重量比Aについて、実施例1の19/81から、実施例2では15/85、実施例3では10/90、実施例4では5/95にそれぞれ変更した。そして、得られた分散液を用いて、実施例1と同様に赤外線吸収ガラスおよび赤外線吸収シートを作製し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
<比較例1>
比較例1では、実施例1のようにMWO微粒子を含む分散液AとITO微粒子を含む分散液Bとを混合せずに、分散液Aのみをそのまま使用した以外は、実施例1と同様に赤外線吸収ガラスおよび赤外線吸収シートを作製し、評価を行った。評価結果を表1に示す。なお、比較例1における赤外線吸収微粒子分散液の光学特性は、MWO微粒子を含む分散液Aについて測定した光学特性を示す。
<比較例2~4>
比較例2~4では、表1に示すように、重量比Aを適宜変更した以外は、実施例1と同様に、分散液Cを調製した。具体的には、重量比Aについて、比較例2では80/20、比較例3では50/50、比較例4では20/80にそれぞれ変更した以外は実施例1と同様に分散液Cを調製した。そして、得られた分散液Cを用いて、実施例1と同様に赤外線吸収ガラスおよび赤外線吸収シートを作製し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
<比較例5>
比較例5では、実施例1のようにMWO微粒子を含む分散液AとITO微粒子を含む分散液Bとを混合せずに、分散液Bのみをそのまま使用して、MWO微粒子を併用しない以外は、実施例1と同様に分散液Bについて評価を行った。評価結果を表1に示す。なお、比較例5における赤外線吸収微粒子分散液の光学特性は、ITO微粒子を含む分散液Bについて測定した光学特性を示す。
(4)評価結果
表1に示すように、実施例1~4では、MWO微粒子とITO微粒子とを、所定の重量比Aで混合したため、分散体において青みを抑制でき、表色系Lのうちbの値を8.30以上にすることができた。また、光学特性において、赤外線通信で使用される波長800nm~900nmの光を過度に吸収することなく、またジリジリとした暑さを感じさせる波長1200~1500nmや波長2100nmの光を好適に吸収できることが確認された。
これに対して、比較例1~4では、所望の赤外線吸収特性を得られたものの、青みが強く、bの値が8.30よりも小さくなることが確認された。また比較例5では、ITO微粒子のみを使用することで、青みを抑制できるものの、波長800~900nmの透過率が80%を超え、各波長範囲での赤外線吸収特性にバラつきが生じることが確認された。また、波長1200~1500nmの光の透過率が実施例1~4と比べて高く、ジリジリとした暑さを十分に低減できないことが確認された。
<本発明の好ましい態様>
以下、本発明の好ましい態様を付記する。
(付記1)
本発明の一態様によれば、
少なくとも複合タングステン酸化物微粒子および錫ドープ酸化インジウム微粒子を含む赤外線吸収微粒子が液状媒体に分散する赤外線吸収微粒子分散液であって、
前記複合タングステン酸化物微粒子は、当該微粒子による光吸収のみを算出したときの可視光透過率が80%であるときに、波長800~900nmの範囲における透過率の平均値が10%以上60%以下であり、波長1200~1500nmの範囲における透過率の平均値が20%以下であり、かつ、波長2100nmにおける透過率が22%以下であり、
前記赤外線吸収微粒子における前記錫ドープ酸化インジウム微粒子に対する複合タングステン酸化物微粒子の重量比Aが、5/95≦A<20/80の範囲であって、
前記赤外線吸収微粒子は、当該微粒子による光吸収のみを算出したときの可視光透過率が80%であるときに、波長800~900nmの範囲における透過率の平均値が30%以上80%以下であり、波長1200~1500nmの範囲における透過率の平均値が20%以下であり、波長2100nmにおける透過率が11%以下であり、かつ、L表色系のbの値が8.30以上である、赤外線吸収微粒子分散液である。
(付記2)
付記1の態様において、好ましくは、
前記複合タングステン酸化物微粒子は、一般式M(但し、元素Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物微粒子である。
(付記3)
付記1又は2の態様において、好ましくは、
前記複合タングステン酸化物微粒子が、六方晶の結晶構造を含む。
(付記4)
本発明の他の態様によれば、
少なくとも複合タングステン酸化物微粒子および錫ドープ酸化インジウム微粒子を含む赤外線吸収微粒子が固体状のバインダー中に分散している赤外線吸収微粒子分散体であって、
前記複合タングステン酸化物微粒子は、当該微粒子による光吸収のみを算出したときの可視光透過率が80%であるときに、波長800~900nmの範囲における透過率の平均値が10%以上60%以下であり、波長1200~1500nmの範囲における透過率の平均値が20%以下であり、かつ、波長2100nmにおける透過率が22%以下であり、
前記赤外線吸収微粒子における前記錫ドープ酸化インジウム微粒子に対する複合タングステン酸化物微粒子の重量比Aが、5/95≦A<20/80の範囲であって、
前記赤外線吸収微粒子は、当該微粒子による光吸収のみを算出したときの可視光透過率が80%であるときに、波長800~900nmの範囲における透過率の平均値が30%以上80%以下であり、波長1200~1500nmの範囲における透過率の平均値が20%以下であり、波長2100nmにおける透過率が11%以下であり、かつ、L表色系のbの値が8.30以上である、赤外線吸収微粒子分散体である。
(付記5)
付記4の態様において、好ましくは、
前記複合タングステン酸化物微粒子は、一般式M(但し、元素Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物微粒子である。
(付記6)
付記4又は5の態様において、好ましくは、
前記バインダーが、熱可塑性樹脂およびUV硬化性樹脂の少なくとも一方を含む。
(付記7)
付記6の態様において、好ましくは、
前記熱可塑性樹脂が、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアセタール樹脂という樹脂群から選択される1種の樹脂、
または、前記樹脂群から選択される2種以上の樹脂の混合物、
または、前記樹脂群から選択される2種以上の樹脂の共重合体、のいずれかである。
(付記8)
付記4~7のいずれかの態様において、好ましくは、
前記赤外線吸収微粒子を0.001質量%以上80.0質量%以下含む。
(付記9)
付記4~8のいずれかの態様において、好ましくは、
前記赤外線吸収微粒子分散体が、シート形状、ボード形状またはフィルム形状である。
(付記10)
付記4~9のいずれかの態様において、好ましくは、
前記赤外線吸収微粒子分散体に含まれる単位投影面積あたりの前記赤外線吸収微粒子の含有量が、0.04g/m以上10.0g/m以下である。
(付記11)
本発明のさらに他の態様によれば、
透明基材の少なくとも一方の面上に、付記4~10のいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散体が形成されている、赤外線吸収透明基材である。
(付記12)
付記11の態様において、好ましくは、
前記赤外線吸収微粒子分散体の厚さが10μm以下である。
(付記13)
付記11又は12の態様において、好ましくは、
可視光透過率が80%のとき、波長800~900nmの範囲における透過率の平均値が30以上80%以下であり、波長1200~1500nmの範囲における透過率の平均値が20%以下であり、かつ、波長2100nmにおける透過率が11%以下であり、かつ、L表色系のbの値が8.30以上である。

Claims (11)

  1. 少なくとも複合タングステン酸化物微粒子および錫ドープ酸化インジウム微粒子を含む赤外線吸収微粒子が液状媒体に分散する赤外線吸収微粒子分散液であって、
    前記複合タングステン酸化物微粒子は、一般式M (但し、元素Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3.0)で表記され、当該微粒子による光吸収のみを算出したときの可視光透過率が80%であるときに、波長800~900nmの範囲における透過率の平均値が10%以上60%以下であり、波長1200~1500nmの範囲における透過率の平均値が20%以下であり、かつ、波長2100nmにおける透過率が22%以下であり、
    前記赤外線吸収微粒子における前記錫ドープ酸化インジウム微粒子に対する複合タングステン酸化物微粒子の重量比Aが、5/95≦A<20/80の範囲であって、
    前記赤外線吸収微粒子は、当該微粒子による光吸収のみを算出したときの可視光透過率が80%であるときに、波長800~900nmの範囲における透過率の平均値が30%以上80%以下であり、波長1200~1500nmの範囲における透過率の平均値が20%以下であり、波長2100nmにおける透過率が11%以下であり、かつ、L表色系のbの値が8.30以上である、赤外線吸収微粒子分散液。
  2. 前記複合タングステン酸化物微粒子が、六方晶の結晶構造を含む、請求項に記載の赤外線吸収微粒子分散液。
  3. 少なくとも複合タングステン酸化物微粒子および錫ドープ酸化インジウム微粒子を含む赤外線吸収微粒子が固体状のバインダー中に分散している赤外線吸収微粒子分散体であって、
    前記複合タングステン酸化物微粒子は、一般式M (但し、元素Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3.0)で表記され、当該微粒子による光吸収のみを算出したときの可視光透過率が80%であるときに、波長800~900nmの範囲における透過率の平均値が10%以上60%以下であり、波長1200~1500nmの範囲における透過率の平均値が20%以下であり、かつ、波長2100nmにおける透過率が22%以下であり、
    前記赤外線吸収微粒子における前記錫ドープ酸化インジウム微粒子に対する複合タングステン酸化物微粒子の重量比Aが、5/95≦A<20/80の範囲であって、
    前記赤外線吸収微粒子は、当該微粒子による光吸収のみを算出したときの可視光透過率が80%であるときに、波長800~900nmの範囲における透過率の平均値が30%以上80%以下であり、波長1200~1500nmの範囲における透過率の平均値が20%以下であり、波長2100nmにおける透過率が11%以下であり、かつ、L表色系のbの値が8.30以上である、赤外線吸収微粒子分散体。
  4. 前記バインダーが、熱可塑性樹脂およびUV硬化性樹脂の少なくとも一方を含む、請求項3に記載の赤外線吸収微粒子分散体。
  5. 前記熱可塑性樹脂が、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアセタール樹脂という樹脂群から選択される1種の樹脂、
    または、前記樹脂群から選択される2種以上の樹脂の混合物、
    または、前記樹脂群から選択される2種以上の樹脂の共重合体、のいずれかである、請求項に記載の赤外線吸収微粒子分散体。
  6. 前記赤外線吸収微粒子を0.001質量%以上80.0質量%以下含む、請求項からのいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散体。
  7. 前記赤外線吸収微粒子分散体が、シート形状、ボード形状またはフィルム形状である、請求項からのいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散体。
  8. 前記赤外線吸収微粒子分散体に含まれる単位投影面積あたりの前記赤外線吸収微粒子の含有量が、0.04g/m以上10.0g/m以下である、請求項からのいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散体。
  9. 透明基材の少なくとも一方の面上に、請求項からのいずれかに記載の赤外線吸収微粒子分散体が形成されている、赤外線吸収透明基材。
  10. 前記赤外線吸収微粒子分散体の厚さが10μm以下である、請求項に記載の赤外線吸収透明基材。
  11. 可視光透過率を80%に調整したとき、波長800~900nmの範囲における透過率の平均値が30以上80%以下であり、波長1200~1500nmの範囲における透過率の平均値が20%以下であり、かつ、波長2100nmにおける透過率が11%以下であり、かつ、L表色系のbの値が8.30以上である、請求項9又は10に記載の赤外線吸収透明基材。
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