JP6613674B2 - 熱線遮蔽微粒子および熱線遮蔽微粒子分散液 - Google Patents

熱線遮蔽微粒子および熱線遮蔽微粒子分散液 Download PDF

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本発明は、可視光透過性が良好で、且つ優れた熱線遮蔽機能を有しながら、所定の波長を有する近赤外光を透過する熱線遮蔽微粒子および熱線遮蔽微粒子分散液に関する。
良好な可視光透過率を有し透明性を保ちながら日射透過率を低下させる熱線遮蔽技術として、これまでさまざまな技術が提案されてきた。なかでも、導電性微粒子の分散体を用いた熱線遮蔽技術は、その他の技術と比較して熱線遮蔽特性に優れ低コストであり電波透過性があり、さらに耐候性が高い等のメリットがある。
例えば特許文献1には、酸化錫微粉末を分散状態で含有させた透明樹脂や、酸化錫微粉末を分散状態で含有させた透明合成樹脂をシートまたはフィルムに成形したものを、透明合成樹脂基材に積層してなる赤外線吸収性合成樹脂成形品が提案されている。
特許文献2には、少なくとも2枚の対向する板ガラスの間に、Sn、Ti、Si、Zn、Zr、Fe、Al、Cr、Co、Ce、In、Ni、Ag、Cu、Pt、Mn、Ta、W、V、Moといった金属、当該金属の酸化物、当該金属の窒化物、当該金属の硫化物、当該金属へのSbやFのドープ物、または、これらの混合物を分散させた中間層を、挟み込んだ合わせガラスが提案されている。
また、出願人は特許文献3にて、窒化チタン微粒子、ホウ化ランタン微粒子のうち少なくとも1種を分散した選択透過膜用塗布液や選択透過膜を開示している。
しかし、特許文献1〜3に開示されている赤外線吸収性合成樹脂成形品等の熱線遮蔽構造体には、いずれも高い可視光透過率が求められたときの熱線遮蔽性能が十分でない、という問題点が存在した。例えば、特許文献1〜3に開示されている熱線遮蔽構造体の持つ熱線遮蔽性能の具体的な数値の例として、JIS R 3106に基づいて算出される可視光透過率(本発明において、単に「可視光透過率」と記載する場合がある。)が70%のとき、同じくJIS R 3106に基づいて算出される日射透過率(本発明において、単に「日射透過率」と記載する場合がある。)は、50%を超えてしまっていた。
そこで出願人は、赤外線遮蔽材料微粒子が媒体中に分散してなる赤外線遮蔽材料微粒子分散体であって、前記赤外線遮蔽材料微粒子が、一般式M(但し、元素Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物微粒子を含有し、当該複合タングステン酸化物微粒子が六方晶、正方晶、または立方晶の結晶構造を有する微粒子のいずれか1種類以上を含み、前記赤外線遮蔽材料微粒子の粒子径が1nm以上800nm以下であることを特徴とする熱線遮蔽分散体を、特許文献4として開示した。
特許文献4に開示したように、前記一般式Mで表される複合タングステン酸化物微粒子を用いた熱線遮蔽分散体は高い熱線遮蔽性能を示し、可視光透過率が70%のときの日射透過率は50%を下回るまでに改善された。とりわけ元素MとしてCsやRb、Tlなど特定の元素から選択される少なくとも1種類を採用し、結晶構造を六方晶とした複合タングステン酸化物微粒子を用いた熱線遮蔽微粒子分散体は卓越した熱線遮蔽性能を示し、可視光透過率が70%のときの日射透過率は37%を下回るまでに改善された。
特開平2−136230号公報 特開平8−259279号公報 特開平11−181336号公報 国際公開番号WO2005/037932公報
しかしながら、前記一般式Mで表される複合タングステン酸化物微粒子や、それを用いた熱線遮蔽分散体が、市場での使用範囲を拡大した結果、新たな課題が見出された。その課題は、前記一般式Mで記載された複合タングステン酸化物微粒子を窓材等の構造体に適用した場合、当該窓材等を通過する光において、波長700〜1200nmの近赤外光の透過率も大きく低下してしまうことである。
当該波長領域の近赤外光は人間の眼に対してほぼ不可視であり、また安価な近赤外LED等の光源により発振が可能であることから、近赤外光を用いた通信、撮像機器、センサー等に広く利用されている。ところが、前記一般式Mで表される複合タングステン酸化物微粒子を用いた窓材等の構造体は、当該波長領域の近赤外光も、熱線と伴に強く吸収してしまう。
この結果、前記一般式Mで表される複合タングステン酸化物微粒子を用いた窓材等の構造体を介しての、近赤外光を用いた通信、撮像機器、センサー等の使用は断念せざるを得なかった。
例えば、特許文献4に記載された複合タングステン酸化物微粒子を用いた熱線遮蔽フィルムを一般住宅の窓に貼りつけた場合、室内に置かれた赤外線発振機と室外に置かれた赤外線受信機からなる侵入探知装置の間の近赤外光による通信が妨害され、装置は正常に動作しなかった。
上記課題が存在するにも関わらず、複合タングステン酸化物微粒子などを用いた熱線遮蔽フィルムや窓材等の構造体は熱線を大きくカットする能力が高く、熱線遮蔽を望まれる市場分野においては使用が拡大した。しかし、このような熱線遮蔽フィルムや窓材等の構造体を用いた場合は、近赤外光を用いる無線通信、撮像機器、センサー等を使用することが出来ないものであった。
本発明は、上記課題に着目してなされたものである。そして、その解決しようとする課題は、熱線遮蔽特性を発揮しつつ、波長700〜1200nmの近赤外光への透過率を有することで、窓材等の構造体に適用した場合であっても、当該構造体を介した当該波長領域の近赤外光を用いる通信機器、撮像機器、センサー等の使用を可能とする熱線遮蔽微粒子、および、当該熱線遮蔽微粒子を含有する熱線遮蔽微粒子分散液を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決する為、さまざまな検討を行った。
例えば、波長700〜1200nmの領域における近赤外光の透過率を単に向上させるだけであれば、複合タングステン酸化物微粒子の膜中濃度を適宜減少させればよいとも考えられた。しかし、複合タングステン酸化物微粒子の膜中濃度を減少させた場合、波長1200〜1800nmの領域をボトムとする熱線吸収能力も同時に低下し、熱線遮蔽効果を低下させることになってしまう。
ここで本発明者らは研究を重ね、前記一般式Mで表される複合タングステン酸化物微粒子において、タングステン原子の一部を、Mo,Ru,Cr,Ni,V,Co,Fe,Mn、Ti,Ge,Sn,Ga,Pb,Bi,In,Sb,Pd,Tlのうちから選択される1種類以上の金属原子(本発明において「元素A」と記載する場合がある。)に置き換えることで、波長1200〜1800nmをボトムとする熱線吸収能力を担保したまま、波長700〜1200nmの領域における近赤外光の透過率を向上した熱線遮蔽微粒子が得られるという、画期的な知見を得た。
しかし、波長700〜1200nmの領域に近赤外光の透過率を有する熱線遮蔽微粒子は、複合タングステン酸化物微粒子の分散体における熱線遮蔽性能の評価基準として従来用いられていた指標、例えばJIS R 3106で評価される可視光透過率に対する日射透過率を用いて評価した場合、元素Aを含まない従来の複合タングステン酸化物と比較して、劣るのではないかとも考えられた。
そこで、当該観点から波長700〜1200nmの領域に近赤外光の透過率を有する熱線遮蔽微粒子をさらに検討したところ、当該熱線遮蔽微粒子は、従来の一般式Mで表される複合タングステン酸化物微粒子と比較して、熱線遮蔽微粒子としての性能において劣るものではないことを知見した。
これは、人間の皮膚の持つ吸光度が、波長700〜1200nmの近赤外光では小さい一方で、波長1500〜2100nmの熱線では大きい為であると考えられる。因みに、太陽光が、皮膚にじりじりと感じる暑さ(所謂、ジリジリ感)を与えるのは波長1500〜2100nmの熱線の影響が大きいためであると考えられた(例えば、尾関義一ほか、自動車技術会学術講演会前刷集 No.33−99、13(1999)参照。)。
つまり本発明に係る熱線遮蔽微粒子を用いることで、波長700〜1200nmの近赤外光の透過率が向上したとしても、波長1500〜2100nmの熱線の透過は抑制出来るので、ジリジリ感を低減する観点から見た熱線遮蔽材料としての特性は、従来の一般式Mで表される複合タングステン酸化物微粒子と同等であることを知見し、本発明を完成したものである。
本発明に係る熱線遮蔽微粒子は、具体的には、一般式Aで表記される。
但し、元素Aは、Mo,Ru,Cr,Ni,V,Co,Fe,Mn、Ti,Ge,Sn,Ga,Pb,Bi,In,Sb,Pd,Tlのうちから選択される1種類以上であってタングステン原子の一部を置換する元素である。元素Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属のうちから選択される1種類以上の元素である。Wは、タングステンであり、Oは、酸素である。
さらに、0.001≦a/b≦0.1、0.20≦b/(a+c)≦0.61、2.2≦d/(a+c)≦3.0で表記され、六方晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子であって、波長1200〜1800nmをボトムとする熱線吸収能力を担保したまま、波長700〜1200nmの領域における近赤外光の透過率が向上したものである。
ここで、タングステン原子の一部を置き換える元素Aは、複合タングステン酸化物の六方晶構造中に固溶しており、単に複合タングステン酸化物と元素Aを含む化合物との物理的混合ではない。従って、元素Aまたは元素Aを含む化合物が複合タングステン酸化物の結晶粒界などに偏析した形態をとるようなものではない。但し元素Aにおいて、複合タングステン酸化物の六方晶構造中に固溶している以外の成分が、工程上不可避的に元素Aを含む化合物として、結晶中または結晶粒界中に少量偏析する場合はある。
本発明に係る熱線遮蔽微粒子が、波長1200〜1800nmをボトムとする熱線吸収能力を担保したまま、波長700〜1200nmの領域における近赤外光の透過率を向上する理由は、明確に解明されたわけではない。尤も、本発明者らは、当該理由が複合タングステン酸化物微粒子の電子構造、および、電子構造に由来する光吸収機構に起因するものと考えている。
即ち、複合タングステン酸化物微粒子が近赤外光領域に持つ幅広い吸収は、自由電子による局在表面プラズモン吸収と局在電子によるスモールポラロンの2つの吸収機構の結合からなると考えられる(例えば、J.Appl.Phys.112,074308(2012)参照。)。そして、波長700〜1200nmの波長領域の近赤外光に対する強力な吸収をもたらしているのはスモールポラロンによる吸収であると考えられる。尚、スモールポラロンの遷移エネルギーは1.5eV(波長826nm)である。
一方、波長1200〜1800nmをボトムとするさらに大きな熱線の吸収は自由電子による局在表面プラズモン共鳴による吸収である。尚、局在表面プラズモン共鳴のエネルギーの中心は0.83eV(波長1494nm)であると考えられる。
複合タングステン酸化物微粒子において、タングステン原子(W5+)を元素Aで置換することによって波長1200〜1800nmをボトムとする熱線吸収能力を担保したまま、波長700〜1200nmの領域における近赤外光の透過率を向上する理由は、元素Aが複合タングステン酸化物の結晶構造に挿入され、タングステン元素を置換することで電子構造が変化し、元素Aが結晶中で電子の吸収源となり、W5+の量を減少させることで、スモールポラロンによる吸収が弱化するためではないかと考察している。
本発明に係る熱線遮蔽微粒子を、任意の液状媒体に分散させた分散液は、従来の複合タングステン酸化物微粒子の分散液と同様に、フィルムやガラス上へのコーティング、フィルム状やシート状および板状の樹脂、マスターバッチ他の、多様な熱線遮蔽組成物を製造するための原料として利用可能であることも知見された。
すなわち、上述の課題を解決する第1の発明は、
一般式A Cs で表記される複合タングステン酸化物微粒子であって、
元素AはMo,Ru,Cr,Ni,V,Co,Fe,Mn、Ti,Ge,Sn,Ga,Pb,Bi,In,Sb,Pd,Tlのうちから選択される1種類以上の元素であり、
Csは、セシウムであり、
Wは、タングステンであり、
Oは、酸素であり、
且つ、0.001≦a/b≦0.1、0.20≦b/(a+c)≦0.61、2.2≦d/(a+c)≦3.0である六方晶の結晶構造を持つ熱線遮蔽微粒子である。
第2の発明は、
前記熱線遮蔽微粒子の粒子径が1nm以上800nm以下である、第1の発明に記載の熱線遮蔽微粒子である。
第3の発明は、
第1または第2の発明に記載の熱線遮蔽微粒子が、液状媒体中に分散して含有されている分散液であって、前記液状媒体が水、有機溶媒、油脂、液状樹脂、液状プラスチック用可塑剤、またはこれらの混合物から選択される熱線遮蔽微粒子分散液である。
第4の発明は、
前記液状媒体中に含有されている熱線遮蔽微粒子の含有量が、0.01質量%以上50質量%以下である第3の発明に記載の熱線遮蔽微粒子分散液である。
第5の発明は、
前記熱線遮蔽微粒子による光吸収のみを算出したときの可視光透過率が85%のときに、波長850nmの光における透過率が23%以上45%以下であり、且つ、波長1200〜1800nmの範囲に存在する透過率の最小値が15%以下であることを特徴とする第3または第4の発明に記載の熱線遮蔽微粒子分散液である。
本発明によれば、熱線遮蔽特性を発揮しつつ、波長700〜1200nmの近赤外光への透過率を有する熱線遮蔽微粒子、および、当該熱線遮蔽微粒子を、液状の媒体に分散させた熱線遮蔽微粒子分散液を得ることが出来た。
以下、本発明の実施の形態について、[a]熱線遮蔽微粒子、[b]熱線遮蔽微粒子の製造方法、[c]熱線遮蔽微粒子を含有する熱線遮蔽微粒子分散液の製造方法、の順で説明する。
[a]熱線遮蔽微粒子
本発明に係る熱線遮蔽微粒子は、一般式Aで表記される複合タングステン酸化物微粒子である。但し、元素AはMo,Ru,Cr,Ni,V,Co,Fe,Mn、Ti,Ge,Sn,Ga,Pb,Bi,In,Sb,Pd,Tlのうちから選択される1種類以上の元素であり、Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、のうちから選択される1種類以上の元素であり、Wはタングステンであり、Oは酸素である。そして、0.001≦a/b≦0.1、0.20≦b/(a+c)≦0.61、2.2≦d/(a+c)≦3.0を満たす、六方晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子である。
タングステンおよび元素Aの合計に対する元素Mのモル添加量;b/(a+c)は、0.2以上0.6以下が好ましく、0.30以上0.45以下がより好ましい。これは、b/(a+c)の値が0.2以上あれば熱線吸収効果が十分に発現し、0.6以下であれば、Csを始めとする元素Aの化合物が析出して、熱線吸収効果が低減してしまう事態を回避出来るからである。
また元素Aの元素Mに対する添加割合;a/bは、0.001以上0.1以下であることが好ましく、0.04以上0.1以下がより好ましい。これは、b/(a+c)の値が0.001以上あれば波長700〜1200nmの近赤外光の透過率を増加させる効果が得られ、0.1以下であれば波長1200〜1800nmの熱線吸収効果を担保出来るからである。
また、dの値は、2.2≦d/(a+c)≦3.0であることが好ましい。これは、酸素が、酸化タングステンおよび元素Aに対する化学量論比よりも少ない;d/(a+c)<3.0においても、上述した元素Mの添加による自由電子の供給がある為である。自由電子の供給により、当該自由電子に起因する局在表面プラズモン共鳴による強力な近赤外吸収が発現するからである。尤も、光学特性の観点から、2.80≦d/(a+c)≦3.00であることがより好ましい。
また、複合タングステン酸化物において酸素の一部が他の元素で置換されていても構わない。当該他の元素としては、例えば、窒素や硫黄、ハロゲン等が挙げられる。
上述した、一般式Aで表される複合タングステン酸化物微粒子のうちでも、特に好ましい特性を持つものの例として、Mo0.02Cs0.330.98、Pb0.02Cs0.330.98、Sb0.02Cs0.330.98、Bi0.03Cs0.330.97、Sn0.02Cs0.330.98、Mo0.02Sn0.01Cs0.330.97等を挙げることができる。尤も、a、b、c、dの値が上述の範囲に収まるものであれば、上述した本発明に係る有用な熱線遮蔽特性を得ることができる。
本発明にかかる熱線遮蔽微粒子の粒子径は、当該熱線遮蔽微粒子や熱線遮蔽微粒子分散液を用いて製造される熱線遮蔽膜/熱線遮蔽基材の使用目的によって適宜選定することができるが、粒子径が1nm以上800nmであることが好ましい。これは粒子径が800nm以下であれば、本発明にかかる熱線遮蔽微粒子による強力な近赤外吸収を発揮でき、また粒子径が1nm以上であれば、工業的な製造が容易であるからである。
熱線遮蔽膜を透明性が求められる用途に使用する場合は、当該熱線遮蔽微粒子が40nm以下の分散粒子径を有していることが好ましい。当該熱線遮蔽微粒子が40nmよりも小さい分散粒子径を有していれば、微粒子のミー散乱およびレイリー散乱による光の散乱が十分に抑制され、可視光波長領域の視認性を保持し、同時に効率よく透明性を保持することが出来るからである。自動車の風防など特に透明性が求められる用途に使用する場合は、さらに散乱を抑制するため、複合タングステン酸化物の分散粒子径を30nm以下、好ましくは25nm以下とするのが良い。
[b]熱線遮蔽微粒子の製造方法
本発明に係る一般式Aで表記される熱線遮蔽微粒子は、タングステン化合物出発原料を不活性ガス雰囲気または還元性ガス雰囲気中で熱処理して得ることができる。
まず、タングステン化合物出発原料について説明する。
本発明にかかるタングステン化合物出発原料は、タングステン、元素A、元素Mそれぞれの単体もしくは化合物を含有する混合物である。タングステン原料としてはタングステン酸粉末、三酸化タングステン粉末、二酸化タングステン粉末、酸化タングステンの水和物粉末、六塩化タングステン粉末、タングステン酸アンモニウム粉末、または、六塩化タングステン粉末をアルコール中に溶解させた後乾燥して得られるタングステン酸化物の水和物粉末、または、六塩化タングステンをアルコール中に溶解させたのち水を添加して沈殿させこれを乾燥して得られるタングステン酸化物の水和物粉末、または、タングステン酸アンモニウム水溶液を乾燥して得られるタングステン化合物粉末、金属タングステン粉末、から選ばれたいずれか1種類以上であることが好ましい。元素Aまたは元素Mの原料としては、元素AまたはM単体、元素AまたはMの塩化物塩、硝酸塩、硫酸塩、シュウ酸塩、酸化物、炭酸塩、タングステン酸塩、水酸化物等が挙げられるが、これらには限定されない。
上述したタングステン化合物出発原料を秤量し、0.001≦a/b≦0.1、0.20≦b/(a+c)≦0.61を満たす所定量をもって配合し混合する。このとき、タングステン、元素A、元素Mに係るそれぞれの原料ができるだけ均一に、可能ならば分子レベルで均一混合していることが好ましい。したがって前述の各原料は溶液の形で混合することがもっとも好ましく、各原料が水や有機溶剤等の溶媒に溶解可能であることが好ましい。
各原料が水や有機溶剤等の溶媒に可溶であれば、各原料と溶媒を十分に混合したのち溶媒を揮発させることで、本発明にかかるタングステン化合物出発原料を製造することができる。もっとも各原料に可溶な溶媒がなくとも、各原料をボールミル等の公知の手段で十分に均一に混合することで、本発明にかかるタングステン化合物出発原料を製造することができる。
次に、不活性ガス雰囲気または還元性ガス雰囲気中における熱処理について説明する。まず、不活性ガス雰囲気中における熱処理条件としては、400℃以上1000℃以下が好ましい。400℃以上で熱処理された出発原料は十分な熱線吸収力を有し、熱線遮蔽微粒子として効率が良い。不活性ガスとしてはAr、N等の不活性ガスを用いることがよい。
また、還元性雰囲気中における熱処理条件としては、出発原料を300℃以上900℃以下で熱処理することが好ましい。300℃以上であれば本発明にかかる六方晶構造を持つ複合タングステン酸化物の生成反応が進行し、900℃以下であれば六方晶以外の構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子や金属タングステンといった意図しない副反応物が生成し難く好ましい。
この時の還元性ガスは、特に限定されないが、Hが好ましい。そして、還元性ガスとしてHを用いる場合は、還元性雰囲気の組成として、例えば、Ar、N等の不活性ガスにHを体積比で0.1%以上を混合することが好ましく、さらに好ましくは0.2%以上混合したものである。Hが体積比で0.1%以上であれば効率よく還元を進めることができる。還元温度および還元時間、還元性ガスの種類と濃度といった条件は、生成物である複合タングステン酸化物の構造中の酸素の元素Mおよびタングステンに対するモル比が2.2≦d/(a+c)≦3.0を満たすよう適宜選択することができる。
必要に応じて、還元性ガス雰囲気中にて還元処理を行った後、不活性ガス雰囲気中にて熱処理を行ってもよい。この場合の不活性ガス雰囲気中での熱処理は400℃以上1200℃以下の温度で行うことが好ましい。
本発明に係る熱線遮蔽微粒子が表面処理され、Si、Ti、Zr、Alから選択される1種類以上を含有する化合物、好ましくは酸化物で被覆されていることは、耐候性向上の観点から好ましい。当該表面処理を行うには、Si、Ti、Zr、Alから選択される1種類以上を含有する有機化合物を用いて、公知の表面処理を行えばよい。例えば、本発明に係る熱線遮蔽微粒子と有機ケイ素化合物とを混合し、加水分解処理を行えばよい。
[c]熱線遮蔽微粒子分散液
本発明に係る熱線遮蔽微粒子を液状の媒体中に分散させることで、本発明に係る熱線遮蔽微粒子分散液を製造することができる。当該熱線遮蔽微粒子分散液は、その他従来の近赤外線を強く吸収する材料、例えば特許文献4で示された複合タングステン酸化物が用いられていたさまざまな分野において、従来の複合タングステン酸化物微粒子の分散液と同様に用いることができる。
以下、[1]熱線遮蔽微粒子分散液の製造方法、[2]熱線遮蔽微粒子分散液の使用例、の順に記載する。なお、本発明において、熱線遮蔽微粒子分散液を単に「分散液」と記載する場合がある。
[1]熱線遮蔽微粒子分散液の製造方法
本発明に係る熱線遮蔽微粒子および所望により適量の分散剤、カップリング剤、界面活性剤等を、液状の媒体へ添加し分散処理を行うことで、本発明に係る熱線遮蔽微粒子分散液を得ることができる。当該熱線遮蔽微粒子分散液の媒体には、熱線遮蔽微粒子の分散性を保つための機能と、熱線遮蔽微粒子分散液を塗布する際に塗布欠陥を生じさせないための機能が要求される。
媒体としては水、有機溶媒、油脂、液状樹脂、液状のプラスチック用可塑剤あるいはこれらの混合物を選択し熱線遮蔽分散液を製造することができる。上記の要求を満たす有機溶媒としては、アルコール系、ケトン系、炭化水素系、グリコール系、水系など、種々のものを選択することが可能である。具体的には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコールなどのアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン系溶剤;3−メチル−メトキシ−プロピオネートなどのエステル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテートなどのグリコール誘導体;フォルムアミド、N−メチルフォルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;エチレンクロライド、クロルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類などを挙げることができる。これらの中でも極性の低い有機溶剤が好ましく、特に、イソプロピルアルコール、エタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸n−ブチルなどがより好ましい。これらの溶媒は1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
液状の樹脂としては、メタクリル酸メチル等が好ましい。液状のプラスチック用可塑剤としては、一価アルコールと有機酸エステルとの化合物である可塑剤や、多価アルコール有機酸エステル化合物等のエステル系である可塑剤、有機リン酸系可塑剤等のリン酸系である可塑剤などが好ましい例として挙げられる。なかでもトリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサオネート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、テトラエチレングリコールジ−2−エチルヘキサオネートは、加水分解性が低い為、さらに好ましい。
分散剤、カップリング剤、界面活性剤は用途に合わせて選定可能であるが、アミンを含有する基、水酸基、カルボキシル基、または、エポキシ基を官能基として有することが好ましい。これらの官能基は、複合タングステン酸化物微粒子の表面に吸着し、複合タングステン酸化物微粒子の凝集を防ぎ、熱線遮蔽膜中でも本発明に係る熱線遮蔽微粒子を均一に分散させる効果を持つ。
好適に用いることのできる分散剤としては、リン酸エステル化合物、高分子系分散剤、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、等があるが、これらに限定されるものではない。高分子系分散剤としては、アクリル系高分子分散剤、ウレタン系高分子分散剤、アクリル・ブロックコポリマー系高分子分散剤、ポリエーテル類分散剤、ポリエステル系高分子分散剤などが挙げられる。
当該分散剤の添加量は、熱線遮蔽微粒子100重量部に対し10重量部〜1000重量部の範囲であることが望ましく、より好ましくは20重量部〜200重量部の範囲である。分散剤添加量が上記範囲にあれば、熱線遮蔽微粒子が液中で凝集を起こすことがなく、分散安定性が保たれる。
分散処理の方法は当該熱線遮蔽微粒子が均一に液状媒体中へ分散する方法であれば公知の方法から任意に選択でき、たとえばビーズミル、ボールミル、サンドミル、超音波分散などの方法を用いることができる。
均一な熱線遮蔽微粒子分散液を得るために、各種添加剤や分散剤を添加したり、pH調整したりしても良い。
上述した熱線遮蔽微粒子分散液中における熱線遮蔽微粒子の含有量は0.01質量%〜50質量%であることが好ましい。0.01質量%以上であれば後述するコーティング膜やプラスチック成型体などの製造に好適に用いることができ、50質量%以下であれば工業的な生産が容易である。さらに好ましくは1質量%以上35質量%以下である。
このような熱線遮蔽微粒子を液体媒体中に分散させた本発明に係る熱線遮蔽微粒子分散液は、適当な透明容器に入れ、分光光度計を用いて、光の透過率を波長の関数として測定することができる。本発明に係る熱線遮蔽微粒子分散液は、熱線遮蔽微粒子による光吸収のみを算出したときの可視光透過率が85%(本発明に係る実施例において、単に「可視光透過率が85%」と記載する場合がある。)のときに、波長850nmにおける近赤外光の透過率が23%以上45%以下であり、且つ、波長1200〜1800nmの範囲に存在する熱線の透過率の最小値が15%以下である。
尚、当該測定において、熱線遮蔽微粒子分散液に含まれる熱線遮蔽微粒子による光吸収のみを算出したときの可視光透過率を85%に調整することは、その分散溶媒または分散溶媒と相溶性を有する適宜な溶媒で希釈することにより、容易になされる。
上述した本発明に係る熱線遮蔽微粒子分散液の光の透過率プロファイルは、一般に、タングステンが元素Aで置換されていないことを除けば、本発明にかかる熱線遮蔽微粒子と等価な組成を有する複合タングステン酸化物微粒子を用いた場合の光の透過プロファイルに比べて、波長1200〜1800nm範囲に存在する日射透過率の最小値を大きく上げることなく、可視光透過バンドの幅が長波長側に広がっており、波長700〜1200nm範囲の近赤外光の透過率を有するものである。
[2]熱線遮蔽微粒子分散液の使用例
本発明にかかる熱線遮蔽微粒子または熱線遮蔽微粒子分散液を、固体状の媒体へ分散することで、分散粉やマスターバッチ、熱線遮蔽フィルム、熱線遮蔽プラスチック成形体などを製造することができる。
一般的な使用方法の例として、本発明にかかる熱線遮蔽微粒子分散液を用いた熱線遮蔽フィルムの製造方法について述べる。前述した熱線遮蔽微粒子分散液をプラスチックあるいはモノマーと混合して塗布液を作製し、公知の方法で基材上にコーティング膜を形成することで、熱線遮蔽フィルムを作製することができる。
上記コーティング膜の媒体は、例えば、UV硬化樹脂、熱硬化樹脂、電子線硬化樹脂、常温硬化樹脂、熱可塑樹脂等が目的に応じて選定可能である。具体的には、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ふっ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、単独使用であっても混合使用であっても良い。また、金属アルコキシドを用いたバインダーの利用も可能である。上記金属アルコキシドとしては、Si、Ti、Al、Zr等のアルコキシドが代表的である。これら金属アルコキシドを用いたバインダーは、加熱等により加水分解・縮重合させることで、酸化物膜を形成することが可能である。
上記基材としては上述したようにフィルムでも良いが、所望によってはボードでも良く、形状は限定されない。透明基材材料としては、PET、アクリル、ウレタン、ポリカーボネート、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル、ふっ素樹脂等が、各種目的に応じて使用可能である。また、樹脂以外ではガラスを用いることができる。
以下、実施例を参照しながら本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
各実施例における熱線遮蔽微粒子分散液の波長300〜2100nmの光に対する透過率は、分光光度計用セル(ジーエルサイエンス株式会社製、型番:S10−SQ−1、材質:合成石英、光路長:1mm)に分散液を保持して、日立製作所(株)製の分光光度計U−4100を用いて測定した。
当該測定の際、分散液の溶媒(メチルイソブチルケトン)を、上述のセルに満たした状態で透過率を測定し、透過率測定のベースラインを求めた。この結果、以下に説明する分光透過率、および可視光透過率は、分光光度計用セル表面の光反射や、溶媒の光吸収による寄与が除外され、熱線遮蔽微粒子による光吸収のみが算出されることとなる。
可視光透過率は、波長380〜780nmの光に対する透過率から、JIS R 3106に基づいて算出した。熱線遮蔽微粒子の平均分散粒子径は、日機装(株)製のマイクロトラック粒度分布計を用いて測定した。
[実施例1](Mo0.015Cs0.330.985のMIBK分散液)
タングステン酸(HWO)と水酸化セシウム(CsOH)、三酸化モリブデン(MoO)の各粉末を、Mo/Cs/W(モル比)=0.015/0.33/0.985相当となる割合で秤量したのちメノウ乳鉢で十分混合して混合粉末とした。当該混合粉末を、Nガスをキャリアーとした5%Hガスを供給下で加熱し600℃の温度で1時間の還元処理を行った後、Nガス雰囲気下で800℃、30分間焼成して請求項1に係るMo0.015Cs0.330.985で表わされる熱線遮蔽微粒子粉末(以下、「粉末A」と略称する。)を得た。
粉末A20質量%、官能基としてアミンを含有する基を有するアクリル系高分子分散剤(アミン価48mgKOH/g、分解温度250℃のアクリル系分散剤)(以下、「分散剤a」と略称する。)10質量%、メチルイソブチルケトン70質量%を秤量した。これらを、0.3mmφZrOビーズを入れたペイントシェーカーに装填し、10時間粉砕・分散処理し、熱線遮蔽微粒子分散液(以下、「分散液A」と略称する)を得た。ここで、分散液A内における熱線遮蔽微粒子の平均分散粒子径を測定したところ19nmであった。
粉末AをX線回折法で測定した結果、純粋な六方晶であり、三酸化モリブデンや二酸化モリブデンの回折線は観察されなかった。また透過電子顕微鏡で観察した結果、熱線遮蔽微粒子の粒界にはモリブデン化合物などの偏析は観察されなかった。従って添加したモリブデン成分は、六方晶セシウムタングステンブロンズの結晶中に完全に固溶していると判断された。
分散液Aを適宜MIBKで希釈して10mm厚の矩形容器に入れ、分光透過率を測定した。可視光透過率が85%になるように希釈率を調整して測定した時の透過率プロファイルから、波長850nmにおける透過率は37%、透過率の最小値は波長1610nmで10%となった。これは以下の比較例1に示すモリブデンを固溶しないセシウムタングステンブロンズに比べて、可視光透過バンドが明らかに広がっていることが確認された。測定結果を表1に記載した。
[比較例1](Cs0.33WOのMIBK分散液)
実施例1の手順において、三酸化モリブデンを添加原料として加えない以外は全く同様にして、比較例1に係るCs0.33WOで表わされる組成の粉末を得た。この粉末を分散剤と溶媒と共にペイントシェーカーを用いて分散液を作製したところ、その平均分散粒子径は20nmであった。
そして、可視光透過率が85%になるように希釈率を調整して測定した時の分光透過率を測定したところ、透過率プロファイルから、波長850nmにおける透過率は22%、透過率の最小値は波長1515nmで10%となった。
以上より、波長850nmにおける近赤外光の透過率は実施例1に比べて15%も低いことが確認された。測定結果を表1に記載した。
[実施例2〜19](ACsのMIBK分散液)
元素A、元素M(Cs)およびタングステンの比(モル比)であるa,b,cが、表1に示す数値となるようにタングステン化合物出発原料の配合量を調整して混合し、実施例1と同様に焼成して、実施例2〜19に係る熱線遮蔽微粒子粉末を調製した。ただし焼成時間は複合タングステン酸化物の構造中の酸素の元素Mおよびタングステンに対するモル比d/(a+c)が表1に示した値となるよう適宜調整した。その際、すべての焼成粉末についてX線回折測定と透過電子顕微鏡観察とを行ない、元素Aが六方晶のセシウムタングステンブロンズ微粒子結晶内に固溶していることを確認した。
調製した熱線遮蔽微粒子粉末と溶媒と分散剤とを、共にペイントシェーカー中で混合・分散して、実施例2〜19に係る熱線遮蔽微粒子分散液を調製した。
実施例2〜19に係る熱線遮蔽微粒子の平均分散粒子径を、測定し表1に記載した。また、実施例2〜19に係る熱線遮蔽微粒子分散液の希釈率をそれぞれ適宜調整し、分光光度計で透過率を測定し、可視光透過率が85%となるときの、波長850nmにおける近赤外光の透過率と、波長1200〜1800nmにおける熱線の透過率の最小値とを測定した。測定結果を表1に記載した。
[比較例2](WO2.72のMIBK分散液)
三酸化タングステン(WO)粉末を、Nガスをキャリアーとした3%Hガス供給下で加熱し、600℃の温度で1時間の還元処理を行い、タングステン酸化物WO2.72(以下、微粒子βと略称する。)を得た。
微粒子β20質量%、分散剤a10質量%、メチルイソブチルケトン70質量%を秤量した。これらを、0.3mmφZrOビーズを入れたペイントシェーカーに装填し、13時間粉砕・分散処理し、複合タングステン酸化物微粒子分散液(以下、分散液βと略称する)を得た。ここで、分散液βに含有される複合タングステン酸化物微粒子の平均分散粒子径を測定したところ31nmであった。
分散液βを適宜MIBKで希釈して、可視光透過率が85%となるときの光学特性を測定したところ、波長850nmの近赤外光の透過率は68%、波長1200〜1800nmにおける熱線の透過率の最小透過率は58%であった。測定結果を表1に記載した。
[比較例3](LaBのMIBK分散液)
六ホウ化ランタン(LaB)粉末5質量%、分散剤a3質量%、メチルイソブチルケトン92質量%を秤量した。これらを、0.3mmφZrOビーズを入れたペイントシェーカーに装填し、20時間粉砕・分散処理し、六ホウ化ランタン微粒子分散液(以下、分散液γと略称する)を得た。ここで、分散液γ含有される六ホウ化ランタン微粒子の平均分散粒子径を測定したところ34nmであった。
分散液γを適宜MIBKで希釈して、可視光透過率が85%となるときの光学特性を測定したところ、波長850nmの近赤外光の光の透過率は44%であった。しかし、透過率の最小値は波長1200〜1800nmよりも短い波長領域に存在し、波長975nmにおける透過率は38%であった。測定結果を表1に記載した。
[実施例1〜19および比較例1〜3の評価]
実施例1〜19に係る熱線遮蔽微粒子においては、従来の複合タングステン酸化物微粒子である比較例1と比較して、可視光透過率が85%のとき、波長850nmの近赤外光の透過率が高い。この結果、複合タングステン酸化物が発揮する高い遮熱特性を担保しながら、波長700〜1200nmの近赤外光では高い透過率が得られることが判明した。
これに対し、熱線遮蔽微粒子としてWO2.72や六ホウ化ランタンを用いた比較例2および3では、可視光透過率が85%のときの、波長850nmの近赤外光の透過率こそ高いものの、波長1200〜1800nmの熱線の吸収が十分ではないために、本発明に係る熱線遮蔽微粒子のような高い熱線遮蔽特性を持たなかった。
Figure 0006613674

Claims (5)

  1. 一般式A Cs で表記される複合タングステン酸化物微粒子であって、
    元素AはMo,Ru,Cr,Ni,V,Co,Fe,Mn、Ti,Ge,Sn,Ga,Pb,Bi,In,Sb,Pd,Tlのうちから選択される1種類以上の元素であり、
    Csは、セシウムであり、
    Wは、タングステンであり、
    Oは、酸素であり、
    且つ、0.001≦a/b≦0.1、0.20≦b/(a+c)≦0.61、2.2≦d/(a+c)≦3.0である六方晶の結晶構造を持つ熱線遮蔽微粒子。
  2. 前記熱線遮蔽微粒子の粒子径が1nm以上800nm以下である、請求項1に記載の熱線遮蔽微粒子。
  3. 請求項1または2に記載の熱線遮蔽微粒子が、液状媒体中に分散して含有されている分散液であって、前記液状媒体が水、有機溶媒、油脂、液状樹脂、液状プラスチック用可塑剤、またはこれらの混合物から選択される熱線遮蔽微粒子分散液。
  4. 前記液状媒体中に含有されている熱線遮蔽微粒子の含有量が、0.01質量%以上50質量%以下である請求項3に記載の熱線遮蔽微粒子分散液。
  5. 前記熱線遮蔽微粒子による光吸収のみを算出したときの可視光透過率が85%のときに、波長850nmの光における透過率が23%以上45%以下であり、且つ、波長1200〜1800nmの範囲における透過率の最小値が15%以下であることを特徴とする請求項3または4に記載の熱線遮蔽微粒子分散液。
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